...

複合材料の連続体損傷力学

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

複合材料の連続体損傷力学
「連続体損傷力学」
サンプルページ
この本の定価・判型などは,以下の URL からご覧いただけます.
http://www.morikita.co.jp/books/mid/066651
※このサンプルページの内容は,初版 1 刷発行当時のものです.
本書のサポート情報などをホームページに掲載する場合が
あります.下記のアドレスにアクセスしご確認ください.
http://www.morikita.co.jp/support
■本書の無断複写は,著作権法上での例外を除き禁じられています.
複写される場合は,その都度事前に
(株)
日本著作出版権管理システム
の許諾を得てください.
(電話 03-3817-5670,FAX 03-3815-8199)
i
序
文
機械や構造物,あるいはその他の物体が壊れるとき,はじめはもっとも弱い部分,すな
わち強度的にもっとも過酷な条件にある部分が傷み(損傷を受け)
,やがてそこにき裂が発
生する.そして,き裂先端付近の材料がさらに大きな損傷を受け,これがまた新しいき裂
となって発達し,全体的な破壊に至る.
したがって,物体内部の各点ごとの損傷の程度を適切な物理量によって表現することが
できれば(たとえば,物体各部分の熱さ・冷たさの程度を温度で表すように)
,物体全体の
損傷の様相と破壊の危険性を定量的に示すことができる.このような損傷の程度を表す物
理量は,損傷変数とよばれている.
たとえば,コンピュータのディスプレイ画面の中に,機械,構造物,あるいはそれらの部
材を映し,その各部分の損傷の程度(損傷変数の大きさ)を青(損傷変数 0,非損傷状態)
,
緑,黄,赤(損傷変数 1,破壊状態)などで示す.そして,材料が荷重を受けて損傷変数が
増大する法則を数式で表すことができれば,機械あるいは構造物の弱い部分が,青色から,
緑色,黄色,赤色に変わり,そこでき裂が発生し,さらに赤いき裂がしだいに成長する様
子が,連続体力学(あるいは計算固体力学)により計算できる.このように,材料の損傷
状態を適切な物理量(損傷変数)によって表現し,機械や構造物の損傷と破壊の進行過程
を連続体力学的観点から解析する力学理論を,連続体損傷力学,あるいは損傷力学という.
これまで種々の破壊解析法が発達してきた.連続体損傷力学は,これらの解析法とは異
なり,物体中での損傷の発生から,き裂の発生・発達,その合体による最終的破壊までの
全過程に対する統一的な解析手段として発達している.
本書では,連続体損傷力学の考え方と,材料損傷の力学的な表現方法を説明するととも
に,そのための数学的ならびに連続体力学的基礎,破壊強度解析へのその応用の方法・手
順について及ぶかぎり平易に解説する.
材料中の損傷状態を,損傷変数という新しい物理量で表現しようとする考え方は,ソビ
エト連邦(当時)の非弾性変形研究の権威 L. M. Kachanov 教授の 1958 年の論文に遡る.
彼は,多結晶金属材料の脆性的なクリープ破断時間を予測する目的から,材料の「損傷」と
いう定量的概念をはじめて提案した.
連続体損傷力学の系統的な研究が始まったのは,1960 年代後半以降,宇宙開発と原子力
開発の要請により,高温強度とクリープ変形に対しても連続体力学的研究が活発になって
からである.特にフランスでは,Cachan の LMT (Laboratoire de Mécanique et Tech-
nologie) の J. Lemaitre 教授と ONERA (Office National d’Études et de Recherches
Aérospatiales) の J. L. Chaboche 博士が中心となって,不可逆熱力学理論に基づく損傷
理論の体系化が行われた.
ii
一方イギリスでは,Leicester 大学の F. A. Leckie 教授と D. R. Hayhurst 博士(当時)
が,多軸応力状態でのクリープ損傷発展法則と,損傷材料のクリープ変形法則を発展させた.
そしてスウェーデン Chalmers 工科大学の J. Hult 教授らは,このように体系化され始
めた損傷理論を損傷力学 (Damage Mechanics) と名づけた.
筆者もこの時期にヨーロッパで学び,金属の粘塑性変形とクリープ変形の研究の端緒に
出会った.そして金属材料の損傷,特に異方損傷理論の研究を開始し,これらの畏友たち
とともに揺籃期にあった損傷力学の発展に立ち会う幸運に恵まれた.また 1992 年には,
Southern Illinois 大学(当時)の C. L. Chow 教授が中心となって,損傷力学の初めての
国際雑誌 “International Journal of Damage Mechanics” が Technomic 出版社から創
刊され,その編集に携わることとなった.
金属材料のクリープ損傷から出発した損傷力学の研究対象はその後,コンクリート,岩
石のような地質材料,ならびに高分子,金属,セラミックスを母材とする複合材料などに
も及んだ.そして扱いうる損傷の範囲も,弾塑性損傷,弾性 脆性損傷,疲労損傷など,広
範囲の損傷現象に拡大し,この力学分野はいちじるしい発展を遂げた.損傷力学の研究者
も,仏,英,独を中心とするヨーロッパ各国,アメリカ,カナダを中心とする北米,中国,
インドを中心とするアジア各国に亘るようになった.
これに対して,わが国での損傷力学の研究活動の水準,研究者層の厚さとも,諸外国に誇
りうる状況にはない.これはひとえに,長年に亘ってこの分野の研究に従事してきた筆者
じくじ
の非力さと努力不足のなせるわざと,忸怩するとともに,大きな責任を感じざるを得ない.
筆者が本書の上梓を思い立ったのは,この有望な分野の発展の現状と,その可能性を広
くわが国の固体力学と強度設計分野の学生,研究者,技術者に紹介するとともに,本書を
この精緻な学問を習得するための手がかりとして役立ててほしいと念じたからである.こ
れにより,わが国でもこの学問分野の研究が豊かに開花し,その成果を世界の学会,産業
界に誇りうる日がくることを期待したい.
損傷力学という学問分野が形成されてからちょうど半世紀が経過し,その発展の成果は
五指に余るすぐれた解説書として刊行されている.しかし,この分野全体の発展を俯瞰し,
整理した書物は多くはない.このため,本書の執筆にあたっては,筆者の立ち会った損傷力
学の発展を及ぶ限り展望し,現在までの主要な研究成果を整理して示したいと思った.そ
して同時に,この分野に習熟していない読者にも,必要な文献を読み通せるような数学的
ならびに連続体力学的基礎を解説することにも努めた.
本書の刊行に至るまでには,多くの方々のお世話になった.はじめにポーランド科学ア
カデミーの P. Perzyna 教授と故 A. Sawczuk 教授には格別の御礼を申し上げたい.彼ら
は,1960 年代の日本の若い機械工学者に非線形連続体力学の洗礼を施すとともに,世界の
固体力学社会への扉を開いてくださった.また,早い時期から知遇を得た Lemaitre 教授,
Chaboche 博士,ならびに Hult 教授には,この上ないお世話になった.特に Lemaitre 教
授の友情と,彼から受けた研究上の啓発には,心から御礼を申し上げたい. Lemaitre 教授
は,Chaboche 博士をはじめとする多くの優秀な研究者とともに,損傷力学を確固たる学
iii
問分野に発展させた.本書の多数のか所での説明は,彼と彼の共同研究者の著書,研究成
果に負うところが少なくない.
Manchester 大学の Hayhurst 教授にも深く感謝する.彼は Leckie 教授とともに,損傷
力学の初期の基礎を固め,その後も多くの独創的成果を残した.本書の多くのか所では,彼
らの研究成果を紹介させていただいた.
Michigan 大学 Dearborn 校(現在)の Chow 教授へも深甚の謝意を表したい.彼はアジア
の優秀な研究者たちとともに,一般的応力状態での弾塑性損傷における損傷異方性について,
精細な研究成果を残した.そしてこの分野の国際雑誌 “International Journal of Damage
Mechanics” の創刊と,その後の発展に尽力した.本書の執筆にあたっては,彼らの多くの
論文を参考にし,また引用させていただいた.このほか,詳細な紹介は割愛するが,多くの
すぐれた著書,論文のお世話になった.著者の方々には,ここで厚く御礼を申し上げたい.
本書の執筆,刊行は,わが国の多方面の方々のご高配,ご支援によるところが大きい.名
古屋大学大学院 田中英一 教授は,長年にわたり筆者の身近でゆき届いたご支援,ご教示,
ご助言を惜しまれなかった.また同大大学院 大野信忠 教授には,筆者が損傷力学の研究
に着手し,国際学会での活動の礎を築く時期に多大のご協力をいただいた.両教授には心
から御礼を申し上げる.さらに,損傷力学の研究活動において,筆者のもっとも実り多い
時期を支えて下さった多くの方々に深く感謝する.また本書の刊行について,貴重なご示
唆を頂いたメディア教育開発センター 児玉晴男 教授には格別の御礼を申し上げる.
あず
本書の草稿の推敲に際しても,多数の方々のご理解とご尽力に与かった.わけても京都
大学 井上達雄 名誉教授,東京大学 都井 裕 教授,名古屋大学大学院 市川康明 准教授,筑
波大学大学院 河井昌道 教授,神戸大学 冨田佳宏 教授,広島大学 吉田総仁 教授,静岡大
学 早川邦夫 准教授,埼玉大学大学院 鈴木章彦 教授,大阪市立大学 元木信弥 教授,名城
大学 藤山一成 教授,原子力研究開発機構 青砥紀身 博士,株式会社日立製作所 桜井茂雄
博士ならびに株式会社神戸製鋼所 栄輝 博士には,初期の草稿を細心に,忍耐強く通読さ
れ,原稿の不具合,式の不備などのご指摘から,原稿改善のための貴重なご示唆までいた
だいた.本書を現在の体裁にまとめることができたのも,ひとえにこれらの貴重なご教示,
ご助言のお蔭と,厚く御礼申し上げる.また長い歳月を費やした本書の完成を待ち,暖か
い励ましを続けて下さった方々にも心から御礼を申し上げたい.
最後に本書の刊行を快くお引き受け下さった森北出版株式会社,特に森北博巳 社長のご
高配には衷心より御礼申し上げる.また第一出版部 石田昇司 部長,石井智也 氏には,数々
の身勝手なお願いをお聞き入れ下さり,印刷,装丁とも本書を誠に立派な書物に仕上げて
いただいた.両氏のご尽力に深く感謝する.
2008 年 4 月
村上
澄男
iv
目
主要記号一覧
次
vii
I. 連続体損傷力学の基礎
1. 材料の損傷と連続体損傷力学
2
..........................................................................
1.1 損傷とその微視的機構
2
1.2 代表体積要素と連続体損傷力学 .............................................................. 8
2. テンソル解析の基礎
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6
2.7
ベクトル積とテンソル積,テンソルの成分 .............................................. 15
直交変換,テンソルの不変量と固有値 .................................................... 23
テンソル場の微分と積分 ...................................................................... 31
テンソル関数の微分 ............................................................................ 38
テンソル関数の表現定理 ...................................................................... 43
テンソルとテンソル関係式の行列表示 .................................................... 45
3. 損傷の力学的表現と損傷変数
3.1
3.2
3.3
3.4
11
ベクトルとテンソル ............................................................................ 11
59
損傷のモデル化 .................................................................................. 59
3 次元損傷状態の力学的表現 ................................................................ 65
有効応力と力学的等価性の仮説 ............................................................. 73
損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル .............................................. 84
4. 損傷材料の熱力学
94
..................................................................................
94
4.1 連続体の熱力学
4.2 内部変数による熱力学的非弾性構成式 .................................................. 101
5. 等方損傷材料の非弾性構成式と損傷発展式
5.1
5.2
5.3
5.4
108
等方損傷材料の 1 次元非弾性構成式..................................................... 108
等方損傷材料の 3 次元非弾性構成式..................................................... 112
弾塑性損傷におけるひずみエネルギー解放率と損傷応力規準 .................... 124
全エネルギー等価性の仮説による非弾性損傷理論 ................................... 132
目
次
v
6. 異方損傷材料の非弾性構成式と損傷発展式
136
6.1 2 階対称損傷テンソルによる弾塑性 異方損傷理論 .................................. 136
6.2 応力空間における弾塑性 異方損傷理論 ................................................ 143
6.3 4 階対称損傷テンソルとその弾塑性 脆性損傷への応用 ............................ 149
II. 連続体損傷力学の応用
7. 弾塑性損傷
7.1
7.2
7.3
7.4
7.5
7.6
弾塑性損傷の構成式と発展式,延性損傷,脆性損傷,準脆性損傷 ..............
延性損傷と延性破壊 ..........................................................................
金属の成形加工への応用 ....................................................................
異方損傷理論による薄板成形限界の解析 ...............................................
ボイド材料の延性損傷に対する構成式 ..................................................
塑性圧縮性を考慮した連続体損傷力学理論 ............................................
162
162
172
183
190
196
206
8. 疲労損傷
209
8.1 高サイクル疲労 ................................................................................ 209
8.2 低サイクル疲労 ................................................................................ 214
8.3 超低サイクル疲労 ............................................................................. 217
9. クリープ損傷とクリープ 疲労損傷
9.1
9.2
9.3
9.4
クリープ損傷と現象論的クリープ損傷理論 ............................................
クリープ損傷に対する粘塑性損傷理論 ..................................................
クリープ 疲労損傷 ...........................................................................
クリープき裂先端応力場に対する損傷場の影響 ......................................
10. 弾性 脆性損傷
10.1
10.2
10.3
10.4
10.5
弾性 脆性材料の損傷 ......................................................................
コンクリートの等方損傷理論 ............................................................
2 階対称損傷テンソルによる異方脆性損傷理論.....................................
弾性係数テンソルを損傷変数とする異方脆性損傷理論 ...........................
弾性コンプライアンステンソルを損傷変数とする異方脆性損傷理論 .........
11. 複合材料の連続体損傷力学
220
220
229
232
243
247
247
250
254
259
261
267
........................................................................
267
11.1 積層複合材料の損傷
vi
目 次
11.2 セラミックス基複合材料の弾性 脆性損傷 ........................................... 275
11.3 複合材料に対する局所的損傷理論 ...................................................... 280
12. 損傷と破壊の局所的解析法
12.1
12.2
12.3
12.4
12.5
参 考 書
引用文献
索
引
連続体損傷力学と有限要素法に基づく局所的破壊解析法 ........................
時間非依存変形における有限要素依存性 .............................................
時間非依存変形におけるひずみ局所化の抑制 .......................................
時間依存変形における有限要素依存性 ................................................
時間依存変形における有限要素依存性の原因 .......................................
303
305
319
288
288
291
295
298
300
11
第
2章
テンソル解析の基礎
1 章で学んだように,連続体損傷力学の手順は,おもにテンソル損傷変数による損傷状
態の表現,ならびにこの損傷変数の発展式と損傷材料の構成式の定式化からなる.そして
その具体的な展開は,各種テンソル関数の適切な決定とその微積分演算を中心として進め
られる.
この章では,以下の各章での議論の便宜のために,テンソル解析の基礎を簡単に紹介す
る.はじめの 2.1∼2.4 節では 3 次元 Euclid 空間でのテンソル解析の基本事項を説明する.
つづく 2.5∼2.7 節では,テンソル関数の微分とテンソル関数の表現定理,テンソルとテン
ソル関係式の行列表示について概説する.これらは連続体損傷力学の理解のための重要な
基礎を与える.テンソル解析についてのいっそうくわしい解説を望まれる読者には,巻末
にあげたこの分野のすぐれた書物が参考になる.
本書ではいろいろな記号を使用するが,特にことわらないかぎり,巻頭の主要記号一覧
のとおりとする.
2.1 ベクトルとテンソル
2.1.1 Euclid ベクトル空間とテンソル
初等幾何学におけるベクトル空間では,任意の二つのベクトル u と v から一つのスカラー
u · v = |u| |v| cos θ
(2.1)
を定める乗法が定義できる.これをベクトル u と v のスカラー積 (scalar product),ある
いは内積 (inner product) という.ここで,|u| と |v| は,u と v のノルム (norm) あるい
は大きさであり,
|u| =
√
u·u,
|v| =
√
v·v
(2.2)
のように与えられる.また θ は,u と v のなす角である.
このようなスカラー積は,ベクトル u,v ,w と実数 a,b に対して,つぎのような性質
をもつ.
1)u · v = v · u
2)u · (av + bw) = a(u · v ) + b(u · w)
3)任意の u に対して u · v = 0 であれば,v = 0 である.
12
2 章 テンソル解析の基礎
4)u = 0 であれば,u · u > 0 である.
そこで実数体の上で定義された一般の有限次元のベクトル空間 E n を考える.そして任
意の二つのベクトル u,v に対して,条件 1)∼4)を満足する実数 u · v を与えるような合
成則が存在するとき,このベクトル空間 E n を Euclid ベクトル空間 (Euclidean vector
space) という.
3 次元 Euclid ベクトル空間 E 3 では,一組みの正規直交基底 (orthonormal base)
{ei } = {e1 , e2 , e3 } ,
ei · ej = δij ,
(i, j = 1, 2, 3)
(2.3)
を定めることができる.ここで,ei と ej はそれぞれ,三つの量 e1 ,e2 ,e3 のいずれかを表
しており,記号 i,j を指標 (index) とよぶ.また,δij は Kronecker のデルタ (Kronecker
delta) であり,つぎのように定義される.
1, i = j
δij =
0, i =
j
(2.4)
式 (2.3) のベクトル ei を基底ベクトル (basis vector) という.基底ベクトルを用いれ
ば,任意のベクトル u は,
u=
3
ui ei = ui ei
(2.5)
i=1
と表すことができる (図 2.1).ここで,ui を,正規直交基底 {ei } に関するベクトル u の
Descartes 成分 (Cartesian component),あるいは簡単に,成分 (component) とよぶ.
式 (2.5) の右辺のように,一つの項において同じ指標が 2 回(2 回よりも多くなく,また少
なくもない)繰返して現れる場合には,指標のとる範囲全体についての,その項の総和を
表す.これを総和規約 (summation convention) という.
式 (2.5) の i のように,総和をとる指標のことを擬標 (dummy index) とよび,そうで
ない指標(たとえば式 (2.6) の i)を自由標 (free index) という.式 (2.5) からわかるよう
に,擬標にはどのような記号を用いてもよい.しかし同一の式内で他の指標と重複しない
ように選ぶ必要がある.
図 2.1 ベクトル u とその成分 u1 ,u2 ,u3
2.1 ベクトルとテンソル
13
図 2.2 ベクトル u と ei のスカラー積
式 (2.5) の両辺と ei とのスカラー積をとれば,
u · ei = (uj ej ) · ei = uj δji = ui
(2.6a)
となる.したがって,ベクトル u の成分 ui は,つぎのように与えられる(図 2.2).
ui = u · ei
(2.6b)
式 (2.1)∼(2.5) を用いれば,u と v のスカラー積とノルムはまた,
u·v =
3
i=1
3
ui ei ·
vj ej = ui ei · vj ej
j=1
= ui vj ei · ej = ui vj δij = ui vi
√
√
|u| = ui ui ,
|v| = vi vi
(2.7a)*
(2.7b)
と書ける.
一つのベクトルを他のベクトルに変換する線形変換をテンソル (tensor) という.このた
めテンソル解析では,線形変換とテンソルは同義語として用いられている.
線形変換,すなわち,テンソル S が一つのベクトル u を他のベクトル v へ変換する場
合,これを
v = Su
(2.8)**
と書く.図 2.3 はこの関係を示す.この変換の具体的演算は,テンソル S とベクトル u の
スカラー積をとって新しいベクトル v を与えることを意味する.このことは,テンソルの
成分を定義する 2.2.2 項以後の説明で明らかになる.
変換 S は線形であるから,すべてのベクトル u,v とすべてのスカラー a に対して,
S (au + v ) = aSu + Sv
(2.9)
が成り立つ.
∗ テンソル解析では,式 (2.7a) の左辺のように,太字を使ってベクトルあるいはテンソルを表す表記
法を直接表記法 (direct notation) あるいは絶対表記法 (absolute notation) とよぶ.そして同
式 2 行目の右辺のように,ベクトルあるいはテンソルの成分で表す表記法を指標表記法 (indicial
notation) という.
∗∗ 慣行では,テンソルとベクトル,あるいは二つのテンソルの間の一つのスカラー積の場合,これ
を表す記号 ( · ) を省略する.すなわち S · u,S · T とは書かない.
14
2 章 テンソル解析の基礎
図 2.3 テンソル S によるベクトル u からベクトル v への変換
また,線形変換 S と T の和,線形変換 S とスカラー a との積,ならびに二つの線形変
換 S ,T の積もそれぞれ線形変換であって,つぎのようになる.
(S + T )u = Su + T u
(2.10)
(aS )u = a(Su)
(2.11)
(ST )u = S (T u)
(2.12)**
2.1.2 テンソルの積と転置
任意のベクトル u を零ベクトル 0 へ変換する線形変換を零線形変換 O ,また,ベクトル
u をそれ自身 u へ変換する線形変換を単位線形変換あるいは恒等線形変換 I とよび,それ
ぞれ,
Ou = 0
(2.13)
Iu = u
(2.14)
と書く.線形変換 O と I はまた,それぞれ零テンソル (zero tensor),ならびに単位テン
ソル (unit tensor) あるいは恒等テンソル (identity tensor) ともよばれる.
式 (2.8) の変換に対して,
S −1 v = u
となるような線形変換 S
い,S
−1
(2.15)
−1
が定義できるとき,テンソル S は可逆 (invertible) であるとい
を S の逆変換あるいは逆テンソル (inverse tensor) とよぶ.この場合,式 (2.12),
(2.15) により,
SS −1 = S −1 S = I
(2.16)
が成り立つ.
テンソルの積 (ST ) と逆テンソルの積 (T −1 S −1 ) との積をとり,式 (2.15) を用いると
(ST )(T −1 S −1 ) = (ST )(ST )−1 = I
(2.17)
となる.これから,つぎの関係が成り立つ.
(ST )−1 = T −1 S −1
つぎに,任意のベクトル u,v に対して,
(2.18)
2.2 ベクトル積とテンソル積,テンソルの成分
Su · v = u · S T v
となるような新しい線形変換 S
15
(2.19)
T
T
が定義できるとき,S を S の転置 (transpose) という.
そして式 (2.10) と式 (2.12),(2.14),(2.19) を用いれば,つぎの関係が導かれる.
(S + T )T = S T + T T
T
T
(ST ) = T S
(2.20)
T
(2.21)
T T
(S ) = S
I
T
(S
(2.22)
=I
−1 T
(2.23)
T −1
) = (S )
=S
−T
(2.24)
式 (2.24) によれば,逆変換の操作と転置の操作は可換なことがわかる.
特に,
ST = S
(2.25)
S T = −S
(2.26)
あるいは,
の関係を満足するテンソルを,それぞれ対称テンソル (symmetric tensor) ならびに反対
称テンソル (antisymmetric tensor) という.任意のテンソル S は,対称テンソル S S と
反対称テンソル S A の和として,
S = SS + SA
1
S S = (S + S T ),
2
(2.27a)
1
S = (S − S T )
2
A
(2.27b)
と表すことができる.この分解は一意的であって,テンソル S の Descartes 分解 (Cartesian
decomposition) とよばれている.
対称テンソル S は,u = 0 であるすべてのベクトル u に対して,
Su · u > 0
(2.28)
が成り立つとき,正値テンソル (positive tensor) あるいは正定値テンソル (positive definite
tensor) という.
2.2 ベクトル積とテンソル積,テンソルの成分
2.2.1 ベクトル積とテンソル積
3 次元 Euclid ベクトル空間 E 3 では,二つのベクトル u と v のベクトル積 (vector product) あるいは外積 (outer product) を
u × v = |u| |v| sin θ n
(2.29)
16
2 章 テンソル解析の基礎
図 2.4 ベクトル u と v の外積
のように定義できる.ここで,θ は図 2.4 のように,u と v のなす最小の角の大きさであ
る.また n は,u と v のつくる平面に垂直な単位ベクトルであり,その向きは (u, v, n)
が右手系をなすように定める.
ベクトル u と v を正規直交基底 {ei } (i = 1, 2, 3) に関する成分で表した場合,ベクト
ル積はつぎのように書ける.
u × v = eijk uj vk ei
e1 e2 e3 = u1 u2 u3 v1 v2 v3 (2.30)
ここで,eijk は交代記号 (permutation symbol),Eddington のイプシロンあるいは Levi–
Civita のイプシロンとよばれており,


i, j, k が 1, 2, 3 の偶置換
 1
eijk = −1
(2.31)
i, j, k が 1, 2, 3 の奇置換


0
i, j, k の二つ以上が等しい
の値をとる.また,交代記号と Kronecker のデルタの間には,つぎの関係がある.
eijk elmk = δil δjm − δim δjl
(2.32a)
eijk eljk = 2δil
(2.32b)
eijk eijk = 3! = 6
(2.32c)
式 (2.30) により,右手系正規直交基底に対しては,
e1 × e2 = e3
(2.33a)
を得る.この式を一般的な形に書けば,
ek × el = eklm em
(2.33b)
となる.
二つのベクトル a,b のテンソル積 (tensor product) a ⊗ b は,任意のベクトル u を a
と同じ方向をもつ新しいベクトルへ線形変換するテンソル
2.2 ベクトル積とテンソル積,テンソルの成分
(a ⊗ b)u = (b · u)a
17
(2.34)
として定義される.テンソル積 a ⊗ b はまたディアド (dyad) ともよばれる.式 (2.34) は,
左辺のベクトルは,ベクトル a を,ベクトル b と u のスカラー積 (b · u) 倍した右辺のベ
クトルに等しいことを意味する.すなわちテンソル積 a ⊗ b は,すべてのベクトルを a と
平行なベクトルに写す線形変換であって,
a ⊗ b = a(b ·
(2.35)
と書くことができる.すなわち,ディアド a ⊗ b は,式 (2.8) のテンソル S と同様な性質
をもつことがわかる.
式 (2.34),(2.5) を用いれば,
(ei ⊗ ei )u = (ei · u)ei = ui ei = u
(2.36)
となる.これからつぎの関係が得られる.
ei ⊗ ei = I
(2.37a)
I = ei ⊗ ei = e1 ⊗ e1 + e2 ⊗ e2 + e3 ⊗ e3
(2.37b)
あるいは,
2.2.2 テンソルの成分と行列表示
テンソルは,基底ベクトル ei によるディアド表示が可能である.すなわちテンソル S
は,ディアド ei ⊗ ej に対する 9 個の係数によって
S = Sij ei ⊗ ej
(2.38)
と表すことができ,係数 Sij を正規直交基底 {ei } に関するテンソル S の Descartes 成分,
あるいは成分とよぶ.式 (2.38) のようなディアドの線形結合は,ディアディク (dyadic)
という.一方,式 (2.5) を用いれば,
a ⊗ b = ai ei ⊗ bj ej = ai bj ei ⊗ ej
(2.39)
と書ける.すなわち,テンソル積 a ⊗ b は成分 ai bj をもつテンソルである.
式 (2.38) によれば,テンソルは 9 個の成分で定められるから,

S11 S12 S13



[S ] =  S21 S22 S23 
S31 S32 S33
(2.40)
と表すこともできる.これをテンソルの行列表示 (matrix representation) という.
式 (2.6) では,ベクトル u の成分 ui を u と基底ベクトル ei によって表している.それ
では,テンソル S の成分 Sij は,どのように表すことができるであろうか.
はじめにテンソル S と ej の積をとり,式 (2.38),(2.34),(2.3) を用いれば,
Sej = Skl (ek ⊗ el )ej = Skl (el · ej )ek
18
2 章 テンソル解析の基礎
= Skj ek
(2.41)
を得る.さらにベクトル ei と,この式のスカラー積をとれば,
ei · (Sej ) = ei · (Skj ek ) = Skj (ei · ek )
= Skj δik = Sij
(2.42)
となる.すなわちテンソル S の成分は,
Sij = ei · Sej
(2.43)
と与えられる.
2.2.3 反対称テンソルの軸性ベクトル
式 (2.26) で定義した反対称テンソルは,0 でない独立な成分を三つだけもつ.したがっ
て,反対称テンソル
W = Wij ei ⊗ ej
(2.44)
は一つのベクトル w により,
1
wk = − eklm Wlm
2
(2.45)
と表すことができる.上式の両辺に ekij を掛け,式 (2.32a) を用いると,
1
ekij wk = − (δil δjm − δim δjl )Wlm = −Wij
2
すなわち,
Wij = −ekij wk
(2.46)
が得られる.このテンソル W に任意のベクトル u を作用させ,式 (2.30) を用いれば,
(W u)i = Wij uj = −ekij wk uj = eikj wk uj = (w × u)i
となる.これから一般的関係
図 2.5 反対称テンソル W に対する軸性ベクトル w
(2.47)
2.2 ベクトル積とテンソル積,テンソルの成分
Wu = w × u
19
(2.48)
が得られる.図 2.5 はこの関係を示す.式 (2.45) で定義されたベクトル w は,反対称テ
ンソル W の軸性ベクトル (axial vector) とよばれている.
2.2.4 テンソルのトレースと縮約
テンソル S の行列表示 (2.40) において,その対角成分の和をとって得られるスカラー
をテンソル S のトレース (trace) あるいは跡といい,これを
tr S = Sii
(2.49)
と表す.したがって,ベクトル a,b のディアド a ⊗ b のトレースは,
tr(a ⊗ b) = tr (ai ei ) ⊗ (bj ej ) = ai bi = a · b
(2.50)
と書ける.この式を適用すれば,基底ベクトルのディアド ei ⊗ ej のトレースは,
tr(ei ⊗ ej ) = ei · ej = δij
(2.51)
と導かれる.
一方,指標表記法で二つの指標を同じにし,その擬標について総和をとる演算を縮約
(contraction) という.縮約は直接表記法では,ドット ( · ),スカラー積あるいはトレース
tr で表される.ベクトル a,b とテンソル A,B の間の縮約は,つぎのように書ける.
a · b = (ai ei ) · (bj ej ) = ai bj (ei · ej ) = ai bj δij = ai bi
(2.52)
tr A = Aii
(2.53)
A : B = (Aij ei ⊗ ej ) : (Bkl ek ⊗ el )
= Aij Bkl (ei ⊗ ej ) : (ek ⊗ el ) = Aij Bkl (ei · ek )(ej · el )
= Aij Bkl δik δjl = Aij Bij = Bij Aij
(2.54a)
あるいは,
A : B = B : A = tr(AB T )
= tr(AT B ) = tr(B T A) = tr(BAT )
(2.54b)
これらの縮約の結果はいずれもスカラーである.
特に式 (2.54) のように,二組みの指標について総和をとる演算を 2 重縮約 (double con-
traction) という.つぎの 2.2.5 項で述べるように,ベクトルは 1 階のテンソルであるか
ら,一つの縮約によってテンソルの階数は 2 階だけ減ることがわかる.
2.2.5 高階のテンソルとそのテンソル演算
2.1.1 項では,任意のベクトル u から他のベクトル v への線形変換 S をテンソルと定
義した.しかし式 (2.38) のように,この S は二つの基底ベクトルのテンソル積で表され
ているから,厳密には 2 階テンソル (second-order tensor) という.一般には,任意の階
20
2 章 テンソル解析の基礎
の線形変換,すなわち,任意の数の基底で表される線形変換もテンソルとよぶ.すなわち
式 (2.38) を,3 個以上の基底ベクトルをもつテンソルへ拡張すれば,
T = Ti1 i2 ...in ei1 ⊗ ei2 ⊗ · · · ⊗ ein
(2.55)
となり,これを n 階テンソル (n th-order tensor, tensor of order n) という.ここで,
Ti1 i2 ...in はテンソル T の成分であって,その数は 3n 個である.したがって,スカラー
とベクトルは,0 階と 1 階のテンソルということができる.しかし今後は,特に断わらな
いかぎり,2 階のテンソルのことをテンソルという.
2.1 節と 2.2.2 項では,ベクトル,すなわち 1 階テンソルのスカラー積とテンソル積を
式 (2.7),(2.39) のように定義した.また 2.2.4 項では,ベクトルと 2 階テンソルの,ト
レースならびに縮約について説明した.それでは,3 階以上のテンソル間の演算はどのよ
うに表現できるであろうか.
( 1 ) 3 階テンソル
式 (2.55) によれば,3 階テンソル A は,
A = Aijk ei ⊗ ej ⊗ ek
(2.56)
と書ける.
3 階テンソルの例として,はじめに,ベクトル a,b,c のテンソル積
a⊗b⊗c
を考える.この積は,特にベクトルのトリアド (triad, triadic product) とよばれ,つぎ
の重要な性質をもつ.
(a ⊗ b ⊗ c)u = (c · u)a ⊗ b
(2.57)
(a ⊗ b ⊗ c) : (u ⊗ v ) = (b · u)(c · v )a
(2.58)
(a ⊗ b ⊗ c) : I = a ⊗ (b ⊗ c) : (ei ⊗ ei )
= (b · ei )(c · ei )a = (b · c)a
(2.59)
ディアドを含め,多数のベクトルのテンソル積を,ポリアド (polyad) と総称することが
ある.
3 階テンソルのもう一つの例として,式 (2.31) で定義した交代記号を成分とするテンソル
E = eijk ei ⊗ ej ⊗ ek
(2.60)
がある.これを交代テンソル (permutation tensor) とよぶ.
式 (2.6),(2.43) では,ベクトル u とテンソル S の成分 ui ,Sij を,u,S と基底ベク
トル ei によって表した.3 階テンソル A の場合も同様な演算により,その成分をつぎの
ように導くことができる.
Aijk = (ei ⊗ ej ) : Aek
(2.61)
84
3 章 損傷の力学的表現と損傷変数
と表される.したがって,式 (3.74) の代わりに式 (3.76) の有効状態変数を用いれば,3.3.6 項
で論じた全エネルギー等価性の仮説は,異方損傷状態に対してもそのまま適用できる.
3.4 損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル
有効応力ならびに等価性の仮説の比較
以上の各節では,損傷材料の構成式を導く一つの系統的方法として,有効応力の概念,な
らびに損傷材料と仮想的非損傷材料の間の力学的等価性の仮説について述べた.この節で
は,これらの仮説の応用例として,損傷材料の弾性構成式を導き,等価性の仮説の違いに
よる弾性係数テンソルの違いを比較し,検討してみよう.
3.4.1 損傷材料の弾性構成式
材料の損傷状態が,式 (3.15) の 2 階対称損傷テンソル D で記述できるとき,損傷材料
の線形弾性構成式は,つぎのいずれかの方法によって表される.
1) ε = S (D ) : σ
2) ε =
∂V (σ, D )
,
∂σ
(3.78a)
V =
1
σ : S (D ) : σ
2
3) σ = C (D ) : ε
(3.78b)
(3.79a)
1
∂W (ε, D )
(3.79b)
,
W = ε : C (D ) : ε
∂ε
2
ここで,S (D ) と C (D ) は,損傷材料に対する 4 階の弾性コンプライアンステンソルと弾
4) σ =
性係数テンソルであり,また,V (σ, D ) と W (ε, D ) は,その補足ひずみエネルギー関数
とひずみエネルギー関数を表す.
式 (3.78),(3.79) からわかるように,損傷材料の弾性挙動を定式化する一般的方法は,
これらの式の S (D ),C (D ) あるいは V (σ, D ),W (ε, D ) を損傷テンソル D の関数とし
て表現することである.
3.4.2 損傷効果テンソルの行列表示
3.3.2 項では,応力テンソル σ から有効応力テンソル σ̃ への変換を規定する損傷効果テ
ンソル M を導入し,これを式 (3.43),すなわち,
σ̃ = M : σ
(3.80)
と表した.そして,このようなテンソル関係式を計算する場合,各テンソルの成分を行列
で表し,テンソル演算を行列演算として実行すると便利なことが多い.
はじめに,式 (3.80) の損傷効果テンソルの行列表示を考える.そして以下の議論では,
2 階対称テンソル D の主方向と一致する直交基底を選び,その基底に関する各テンソルの
成分を用いることにする.
3.4 損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル
85
2.7 節で述べた Voigt 表記法によれば,2 階対称な応力テンソル σ と有効応力テンソル
σ̃ は,6 行 1 列の列ベクトルとして
[σp ] ≡ [σ11 σ22 σ33 σ23 σ31 σ12 ]T
≡ [σ1 σ2 σ3 σ4 σ5 σ6 ]T
(3.81)
T
[σ̃p ] ≡ [σ̃11 σ̃22 σ̃33 σ̃23 σ̃31 σ̃12 ]
≡ [σ̃1 σ̃2 σ̃3 σ̃4 σ̃5 σ̃6 ]T
(3.82)
と表すことができる.
一方,式 (3.80) の 4 階の損傷効果テンソル M については,特に対称な損傷効果テンソ
ルを考える.そして,その成分の最初の二つの指標 ij と,あとの二つの指標 kl をそれぞ
れ,p, q (p, q = 1, 2, . . . , 6) とすれば,M の成分は
 M1111
 M2211

M
 3311
[Mpq ] ≡ 
 M2311

M
3111
M1122 M1133 M1123 M1131 M1112 
M2222 M2233 M2223 M2231 M2212 

M3322 M3333 M3323 M3331 M3312 


M2322 M2333 M2323 M2331 M2312 

M3122 M3133 M3123 M3131 M3112 
M1211 M1222 M1233 M1223 M1231 M1212
 M11 M12 M13 M14 M15 M16 




≡



M21 M22 M23 M24 M25 M26 

M31 M32 M33 M34 M35 M36 


M41 M42 M43 M44 M45 M46 

M51 M52 M53 M54 M55 M56 
(3.83)
M61 M62 M63 M64 M65 M66
のような,6 行 6 列の行列で表現できる.
2 階対称テンソルから別の 2 階対称テンソルへの変換に対する式 (2.262) の行列表示に
よれば,有効応力テンソルの定義 (3.80) の行列表示は,
[σ̃p ] ≡ [Mpr ][Wrq ][σq ]
(3.84)
と書ける.ここで [Wrq ] は,式 (2.256) の重み行列である.
2.7.3 項で述べたように,テンソル関係式 (3.80) の行列表示 (3.84) における変換行列
[Mpr ][Wrq ] は,テンソル M の成分行列 [Mpq ] とは別の行列となっている.ここでもこの
複雑さを除くために,式 (3.84) の変換行列に対して新しくローマン体の記号 [Mpq ] を導入
して,式 (3.84) を
[σ̃p ] ≡ [Mpq ][σq ],
の形に表すことにする.
[Mpq ] ≡ [Mpr ][Wrq ]
(3.85)
86
3 章 損傷の力学的表現と損傷変数
そこで 3.3.2 項で述べた損傷効果テンソル M (1) ∼M (5) に対し,行列演算 (3.85) の変
(i)
換行列 [Mpq ] (i = 1, 2, . . . , 5) を計算すれば,それぞれ以下のように求められる.なお
式 (3.48) の M (5) の行列表示のためには,式中の 4 階恒等テンソル I を,式 (2.264) の 4
階対称恒等テンソル I S で置き換える必要がある.
( 1 ) 損傷効果テンソル 1 [式 (3.45)]
(1) (1) Mpq ≡ Mpr [Wrq ]
 Φ1 0 0




=



0 Φ2
0 0
0 0
0 0
0 0
Φi = (1 − Di )
あるいは,
(1)
M11 =
−1
0
Φ3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(Φ2 + Φ3 )/2
0
0
0
(Φ3 + Φ1 )/2
0
0
0
(Φ1 + Φ2 )/2
(i = 1, 2, 3)









(3.86a)
(3.86b)
1
1 1
1 (1)
, . . . , M66 =
+
1 − D1
2 1 − D1
1 − D2
(3.86c)
( 2 ) 損傷効果テンソル 2 [式 (3.46)]
!−1
(2) −1
(2) Mpq
≡ Mpr
[Wrq ]
 (Φ (2) )2
0
0
0
0
1
(2) 2

0
( Φ2 )
0
0
0

(2) 2

0
0
(
Φ
)
0
0

3
=
(2) (2)

0
0
0
Φ2 Φ3
0

(2) (2)

0
0
0
0
Φ3 Φ1
0
(2)
Φi
0
0
= (1 − Di )1/2 (i = 1, 2, 3)
あるいは,
(2)
0
M11 =
1
1
(2)
, . . . , M66 = %
1 − D1
(1 − D1 )(1 − D2 )
0

0

0


0



0


0
(2) (2)
Φ1 Φ2
(3.87a)
(3.87b)
(3.87c)
( 3 ) 損傷効果テンソル 3
式 (3.40) の損傷効果テンソル M (3) の行列表示は,式 (3.87) 中の Φ (2) を Φ (3) = (I −D )
で置き換えて得られる.
3.4 損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル
87
( 4 ) 損傷効果テンソル 4 [式 (3.47)]
!−2
(4) −2
(4) Mpq
≡ Mpr
[Wrq ]
 (Φ (4) )2
0
0
0
0
1
(4) 2

0
( Φ2 )
0
0
0

(4) 2

0
0
( Φ3 )
0
0

=
(4) (4)

0
0
0
Φ
Φ
0
2
3

(4) (4)

0
0
0
0
Φ3 Φ1
0
(4)
Φi
0
0
0
= 1 − Di (i = 1, 2, 3)
あるいは,
(4)
0

0

0


0



0


0
(4) (4)
Φ1 Φ2
(3.88a)
M11 =
(3.88b)
1
1
(4)
, . . . , M66 = %
1 − D1
(1 − D1 )(1 − D2 )
(3.88c)
式 (3.88c) を式 (3.87c) と比較すればわかるように,式 (3.47) の損傷効果テンソル M (4)
と式 (3.46) の M (2) は,損傷の主軸座標に関するかぎり,同一の結果を与える.
( 5 ) 損傷効果テンソル 5 [式 (3.48)]
(5) (5) Mpq ≡ Mpr [Wrq ]









=








1
1 − D1
0
0
0
0
0
0
1
1 − D2
0
0
0
0
0
0
1
1 − D3
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1−
D2 + D3
2
0
0
0
0
0
0
0
0
1
D3 + D1
1−
2
0

0
1
D1 + D2
1−
2

















(3.89)
この節でのすべてのテンソル成分は,損傷テンソル D の主軸方向の基底に関する成分
であって,いずれの損傷効果テンソルも対角行列として表すことができた.一般の座標系
を用いる場合には,各行列の逆行列,あるいは 1/2 乗行列を求めるには煩雑な計算が必要
である.すでに述べたように,このような計算には記号演算ソフトを用いて行うことがで
きる.
88
3 章 損傷の力学的表現と損傷変数
3.4.3 等方弾性構成式と弾性係数テンソルの行列表示
3.3 節の等価性の仮説によれば,損傷材料の弾性構成式は非損傷材料の弾性構成式中の,
あるいは非損傷材料のひずみエネルギー関数中の応力あるいはひずみを有効応力あるいは
有効ひずみで置き換えて導ける.
このため,損傷材料の弾性特性を検討するには,まず非損傷等方弾性構成式の行列表示
が必要である.
すでに 2.7.4 項で論じたように,非損傷等方弾性体の構成式は,式 (2.224),(2.278) に
より,
σ = C0 : ε
0
σij = Cijkl
εkl
あるいは
C0 = λI ⊗ I + 2µI
(3.90)
S
(3.91a)
あるいは,
0
Cijkl
= λδij δkl + µ(δik δjl + δil δjk )
(3.91b)
と与えられる.
そして,応力テンソル σ ,ひずみテンソル ε ならびに弾性係数テンソル C0 を式 (2.273)
のように行列表示すれば,式 (3.90) は式 (2.276),(2.280) により,つぎのように表される.
[σp ] = [C0pq ][εq ]
(3.92a)
0
[C0pq ] = [Cpr
][Wrq ]
 1−ν
ν
ν
0
0
 ν
1−ν
ν
0
0

 ν
ν
1
−
ν
0
0
E

=

(1 + ν )(1 − 2ν )  0
0
0 1 − 2ν
0

 0
0
0
0
1 − 2ν
0
0
0
0
0
0 
0 

0 


0 

0 
1 − 2ν
(3.92b)
一方,応力 σ を独立変数とする弾性構成式 (3.58) は,非損傷な等方弾性体に対して,
ε = S0 : σ
あるいは
ν
1+ν S
S0 =
I − I ⊗I
E
E
あるいは,
0
Sijkl
=
0
εij = Sijkl
σkl
1+ν
ν
(δik δjl + δil δjk ) − δij δkl
2E
E
(3.93)
(3.94a)
(3.94b)
と書ける.
式 (2.277),(2.281) に従って,式 (3.93) を行列形式に表せば,つぎのように書ける.
[εp ] = [S0pq ][σq ]
(3.95a)
3.4 損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル
 1
E
−ν
E
−ν
E







0
0
[Spq ] = [Spr ][Wrq ] = 

 0


 0

0
−ν
E
1
E
−ν
E
−ν
E
−ν
E
1
E
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2G
0
0
0
0
1
2G
0
0
0
0
0 

0 



0 



0 


0 

89
(3.95b)
1
2G
ここで,E ,G,ν はそれぞれ,非損傷な等方弾性材料の縦弾性係数,横弾性係数ならびに
Poisson 比である.
3.4.4 損傷材料の弾性構成式と弾性コンプライアンステンソル 1
ひずみ等価性の仮説による方法
これまでの各節では,弾性構成式といくつかの損傷効果テンソルの行列表示について述
べた.以下では,これらの結果と,3.3 節で紹介した等価性の仮説の応用として,損傷の
発達にともなう材料の弾性特性の変化を検討してみよう.
はじめに,2 階対称テンソル D を基礎とする式 (3.45) の損傷効果テンソル M (1) の場
合を考える.
弾性構成式の行列表示 (2.277) に,ひずみ等価性の仮説と有効応力の行列表示 (3.85) を
適用すると,
[εp ] = [Spq (D )][σq ] = [S0pq ][σ̃q ]
= [S0pr ] M(1)
rq (D ) [σq ]
(3.96)
となる.これから,損傷効果テンソル M (1) に対する損傷材料の弾性構成式と弾性コンプ
ライアンス行列は,
[εp ] = S(1)
pq (D ) [σq ]
(1)
Spq (D ) = [S0pr ] M(1)
rq (D )
(1)
と導ける.ここで,[S0pr ],[Mrq (D )]
(1)
と損傷効果テンソル M
(3.97)
(3.98)
は,非損傷等方弾性体の弾性コンプライアンス行列
の行列であり,それぞれ式 (3.95),(3.86) で求められている.
また上式は,式 (3.53),(3.54) の行列表示にほかならない.
したがって,損傷効果テンソル M (1) で表される損傷材料の弾性特性は,式 (3.98) に
式 (3.95),(3.86) を代入することにより,つぎのように求められる.
(1)
Spq (D ) = [S0pr ] M(1)
rq (D )
90
3 章 損傷の力学的表現と損傷変数








=







1
E1
−ν12
E1
−ν13
E1
−ν21
E2
1
E2
−ν23
E2
−ν31
E3
−ν32
E3
1
E3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2G23
0
0
0
0
0
1
2G31
0
0
0
0
0
1
2G12
















(3.99)
ここで,Ei ,Gij ,νij はそれぞれ,損傷材料の i 方向の縦弾性係数,i-j 平面上の横弾性係数,
ならびに i 方向の単軸応力を受けるときの j 方向の横ひずみを表す Poisson 比であって,
1
1
= Φi ,
Ei
E
1
νij
1
ν
=
= Φi
Φij ,
2Gij
2G
Ei
E
1
Φi = (1 − Di )−1 , Φij = (Φi + Φj )
2
(i について和をとらない; i, j = 1, 2, 3)
(3.100a)
(3.100b)
と表される.
式 (3.99) は,式 (3.38) の有効応力とひずみ等価性の仮説から導かれた損傷材料の弾性
特性を表す.この式から,初期等方な弾性体は,損傷の発達によって損傷テンソル D の主
方向に関する直交異方性となることがわかる.そしてこの損傷材料の弾性定数に対しては,
直交異方性に対する Saint–Venant の条件
1
1 + νij
1 + νji
=
+
Gij
Ei
Ej
(3.101)
すなわち,横弾性係数の面内等方性の条件が満足されている.
(1)
しかし,式 (3.99),(3.100) によれば,この弾性コンプライアンス行列 [Spq (D )] は非対
称である.このため構成式 (3.97),(3.99) に対しては,ひずみエネルギー関数の存在が保
証されず,境界値問題の解析にエネルギー原理を適用することができない.すでに述べた
ように,これはひずみ等価性の仮説の一つの限界として知られている.
式 (3.97),(3.99) のこの欠点を除く一つの方法としては,式 (3.99) の弾性コンプライア
(1)
ンス行列 [Spq (D )] の成分として,式 (3.100) の代わりにその Descartes 分解の対称成分
をとり,
1
1
= Φi ,
Ei
E
1
1
=
Φij ,
2Gij
2G
ν
νij
=
( Φi + Φj )
Ei
2E
のように対称化する方法がある(村上,富永,栄 1990).
(3.102)
3.4 損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル
91
3.4.5 損傷材料の弾性構成式と弾性コンプライアンステンソル 2
補足ひずみエネルギー等価性の仮説による方法
3.4.4 項でみたように,式 (3.99) の弾性コンプライアンステンソル S (1) (D ) は,一般
には非対称である.このため式 (3.99),あるいは式 (3.53) の S (1) (D ) に対しては,ひず
みエネルギー関数の存在は保証されない.この難点を除く他の方法として,Cordebois と
Sidoroff (1982a, b) は 3.3.4 項で述べた補足ひずみエネルギー等価性の仮説と式 (3.39) の
有効応力を提案している.
このとき,式 (3.39) の有効応力テンソル σ̃ は,式 (3.46b) の損傷効果テンソル M (2) (D ) を
使って式 (3.46a) のように表すことができた.そしてこの M (2) (D ) の行列表示は,式 (3.87)
から,
 Φ1 0 0
0
0
 0 Φ2 0
0
0

(2) 
0
0
 0 0 Φ3
Mpq = 
1
 0 0 0 ( Φ2 Φ3 ) 2
0

1
 0 0 0
0
( Φ3 Φ1 ) 2
Φi =
0
0
(2) −2
Φi
0
0
0
0
0
0
0
1
( Φ1 Φ2 ) 2
0
= (1 − Di )









−1
(3.103a)
(3.103b)
と書ける.
したがって,補足ひずみエネルギー等価性の仮説から導いた損傷材料の弾性構成式と弾
性コンプライアンステンソル S (2) (D ) は,式 (3.61),(3.62) を行列表示して
[εp ] = S(2)
pq (D ) [σq ]
(2)
T 0 (2)
Spq (D ) = M(2)
[Srs ] Msq (D )
rp (D )
(3.104)
(3.105)
となる.この結果,初期等方な損傷材料の弾性コンプライアンス行列は,この式に式 (3.95b),
(3.103) を代入することにより,









[S(2)
(
D
)]
=
pq







1
E1
−ν12
E1
−ν13
E1
−ν21
E2
1
E2
−ν23
E2
−ν31
E3
−ν32
E3
1
E3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2G23
0
0
0
0
0
1
2G31
0
0
0
0
0
1
2G12
















と求められる.だだし,Ei ,Gij ,νij は,それぞれつぎのように与えられる.
(3.106)
92
3 章 損傷の力学的表現と損傷変数
1
1
1
1
= Φi2 ,
=
Φi Φj ,
Ei
E
2Gij
2G
Φi = (1 − Di )−1
ν
νij
= Φi Φj
Ei
E
(3.107a)
(3.107b)
式 (3.106),(3.107) にみられるように,補足ひずみエネルギー等価性の仮説は,弾性コ
ンプライアンステンソルの対称性を満足し,したがって,境界値問題の解析へのエネルギー
原理の適用を可能にする.さらに,式 (3.107) は式 (3.101) の Saint–Venant の条件も満
足する.
しかし,式 (3.107) からわかるように,この構成式では弾性挙動に対する損傷の影響は,
つねに Φi = (1 − Di )−1 の 2 乗で現れるが,これは損傷効果の小さい範囲では弾性係数の
変化は Φi に比例するという結果 (M. Kachanov 1980; Hayakawa and Murakami 1997)
とは異なった傾向であることに注意する必要がある.
3.4.6 損傷材料の弾性構成式と弾性コンプライアンステンソル 3
補足ひずみエネルギー関数と表現定理による方法
損傷材料の弾性構成式,すなわち損傷による弾性特性の変化は,式 (3.99),(3.106) のよ
うな等価性の仮説に基づく誘導のほか,式 (3.57),(3.67) のような損傷材料の熱力学ポテ
ンシャル関数 V (σ, D, α),W (ε, D, α) を適切に表現することによっても定式化できる.
M. Kachanov (1980) は,損傷状態を式 (3.28) の 2 階対称き裂密度テンソル D で表す
とともに,その補足ひずみエネルギー関数 V (σ, D ) を,式 (2.215) のスカラー値等方テン
ソル関数で記述し,微小分布き裂をもつ初期等方な損傷材料の直交異方弾性構成式を定式
化した.
すなわち,Kachanov はまず,V (σ, D ) を二つの対称テンソル σ ,D の 10 個の基本不
変量の関数として,
ν
1+ν
(tr σ )2 +
tr σ 2
2E
2E
+ η1 tr σ tr(σD ) + η2 tr(σ 2 D )
V (σ, D ) = −
(3.108)
と表した.そして,この式を式 (3.78b) に適用して損傷材料の弾性コンプライアンス行列を,








[Spq (D )] = 







1
E1
−ν12
E1
−ν13
E1
−ν21
E2
1
E2
−ν23
E2
−ν31
E3
−ν32
E3
1
E3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2G23
0
0
0
0
0
1
2G31
0
0
0
0
0
1
2G12
















(3.109)
3.4 損傷材料の弾性構成式と弾性係数テンソル
93
と導いた.ここで,Ei ,Gij ,νij は,
1
1
=
+ 2(η1 + η2 )Di
(3.110a)
Ei
E
1
1
=
+ 2η2 (Di + Dj )
(3.110b)
2Gij
2G
νij
ν
=
(3.110c)
− η1 (Di + Dj )
Ei
E
で与えられ,また,η1 と η2 は未定定数である.式 (3.109) は,式 (3.101) の Saint–Venant
の条件を満足するとともに,損傷変数 Di の 2 次の精度で式 (3.102) の弾性コンプライア
ンスと一致する.
この節では,有効応力と等価性の概念の応用例として,2 階対称な損傷テンソル D を用
いて損傷材料の弾性構成式と,損傷にともなう弾性特性の変化を検討した.
あとの 6 章と 10 章では,セラミック,コンクリート,岩石のような脆性材料の弾性挙
動に対して,4 階の損傷テンソルを用いるとともに,負荷条件にともなう微小き裂の開閉
口効果を考慮した弾性 脆性損傷理論を紹介する.
267
第
11 章
複合材料の連続体損傷力学
複合材料の損傷と破壊は,いくつかの尺度レベルで進行し,均質材料の場合に比べてい
ちじるしく複雑である (Sadowski, 2005).
連続体損傷力学は,複合材料の損傷・破壊過程の解析に対しても有力な取り扱い手段を
与える.この章では,おもにプラスチック,金属,セラミックスなどを母材とする複合材
料の損傷・破壊解析に対する連続体損傷力学理論の応用について考える.
はじめに,11.1 節では,繊維強化プラスチックス積層材料の弾塑性損傷を,三つのスカ
ラー損傷変数を用いて検討する.つづく 11.2 節では,4 階損傷テンソルを用いるとともに,
き裂の unilateral 効果を考慮し,セラミック基複合材料の弾性 脆性損傷理論を考える.最
後に 11.3 節では,複合材料の局所的理論について述べる.
11.1 積層複合材料の損傷
複合材料,特に繊維強化プラスチック (FRP; fiber-reinforced plastics) では,繊維で強
化された単層材料 (lamina) を種々の方向に重ね合わせて接着した積層材料 (laminate) が
広く用いられている.この節では,Ladevèze と Allix らに従って,積層複合材料への損傷
力学の適用について述べる.
11.1.1 損傷変数と熱力学ポテンシャル
はじめに,積層複合材料を構成する単層材料の損傷を考える.繊維強化単層材料の巨視
的力学特性は,繊維と母材の局所的特性を均一化することによって定められる.
単層材料は,繊維方向には弾性 脆性破壊する.しかし,母材中,ならびに母材と繊維と
の界面には微小き裂によって損傷が発達し,繊維に垂直な方向の剛性の低下を引き起こす.
そして,その損傷状態は,単層材料の厚さ方向に一様であると仮定する.
のように,繊維方向とそれに直交する方向に直角座標系 O-x1 x2 をとる.単
図 11.1(a)
層材料は,この座標系に関する直交異方材料となる.このため,非損傷状態での繊維方向
と,それに垂直な方向の縦弾性係数を E10 ,E20 ,繊維に平行な方向のせん断に対する横弾
性係数を G012 とする.また,繊維方向とそれに垂直な方向の応力に対する Poisson 比を,
0
0
,ν21
で表す.このとき,非損傷状態における直交異方材料の弾性構成式は,
それぞれ ν12
式 (2.277),(2.286) により,
268
11 章 複合材料の連続体損傷力学
図 11.1 一方向強化複合材料の座標系
σ11
0 σ22
− ν21
,
E10
E20
σ12
=
2G012
ε11 =
ε12
ε22 =
σ22
0 σ11
− ν12
E20
E10
(11.1a)
と書ける.ただし,材料定数の間には,式 (2.287) からつぎの関係がある.
0
ν12
ν0
= 210
0
E1
E2
(11.1b)
つぎに,この単層材料に対する Gibbs の熱力学ポテンシャル Γ (σ ) について考える.二
つの 2 階対称テンソルの 2 重縮約の行列表示 (2.271) と,弾性構成式の行列表示 (2.270b),
(2.286) を用いれば,この熱力学ポテンシャルは,つぎのように導ける.
1
ρΓ (σ ) = − σ : (S : σ )
2
1
= − [σp ][Wpq ] [Srs ][Wsp ][σq ]
2
1
= − [σp ][Wpr ][Srp ][σp ]
2
0
0 1 1
ν21
ν12
1
2
2
=−
(
σ
)
+
(
σ
)
−
+
σ11 σ22
11
22
2 E10
E20
E10
E20
1 2
2
+
(
σ
)
+
(
σ
)
12
21
2G012
(11.2)∗
繊維強化複合材料の場合,繊維方向に圧縮応力が作用すると,弾性係数は応力の増加と
ともに低下する.そこで,圧縮応力に対する繊維方向の縦弾性係数 E1C は,
α
E1C = E10 1 − 0 −σ11 E1
∗ Gibbs の熱力学ポテンシャルの符号は,式 (4.26) の定義に従うものとする.
(11.3)
11.1 積層複合材料の損傷
269
と表せるものと仮定する.ここで,α と は,材料定数と Macauley 括弧である.
垂直応力を引張り応力の場合と圧縮応力の場合に分けて表現すれば,非損傷状態での弾性
変形に対する Gibbs の熱力学ポテンシャル (11.2) は,つぎのように書ける (Allix, Bahlouli
et al. 1994).
0
0 1 σ11 2
ϕ −σ11 ν21
ν12
+
−
+
σ11 σ22
2
E10
E10
E10
E20
1 σ22 2
−σ22 2
2
2
+
+
+
(
σ
)
+
(
σ
)
12
21
E20
E20
2G012
ρΓ (σ ) = −
(11.4a)
ここで,ϕ −σ11 は,つぎの関係を満たすような関数である.
1
∂2
ϕ −σ11 = C
∂σ11 ∂σ11
E10
E1
=
E10
1
α
1 − 0 −σ11 (11.4b)
E1
単層材料の損傷は,繊維に垂直方向の縦弾性係数 E2 と,繊維に平行方向の横弾性係数
G12 の減少によって特徴づけることができる.したがって,この材料の損傷状態を E2 ,G12
の減少率 DT ,DS によって表現すれば,損傷材料に対する Gibbs の熱力学ポテンシャル
は,式 (11.4) に代わってつぎのように与えられえる.
0
0 1 σ11 2
ϕ −σ11 ν21
ν12
σ11 σ22
+
−
+
2
E10
E10
E10
E20
σ22 2
−σ22 2
1
2
2
+
+
+
(
σ
)
+
(
σ
)
12
21
(1 − DT )E20
E20
2(1 − DS )G012
(11.5)
ρΓ (σ, DS , DT ) = −
unilateral 材料に対する 5.3.4 項と同様な手順によれば,損傷材料の弾性構成式と,損
傷変数 DT ,DS の同伴変数 YT ,YS は,それぞれつぎのように求められる.
∂Γ
∂σ11
0
0 −σ11 σ11 1 ν12
ν21
−
=
−
+ 0 σ22
α
2 E10
E10
E2
E10 1 − 0 −σ11 ε11 = −ρ
(11.6a)
E1
ε12
ε22
∂Γ
σ12
= −ρ
=
∂σ12
2(1 − DS )G012
∂Γ
= −ρ
∂σ22
0
0 1 ν12
ν21
σ22 −σ22 =−
+ 0 σ11 +
−
0
0
2 E1
E2
(1 − DT )E2
E20
YS = −ρ
(σ12 )2
∂Γ
=
∂DS
2(1 − DS )2 G012
(11.6b)
(11.6c)
(11.7a)
270
11 章 複合材料の連続体損傷力学
YT = −ρ
∂Γ
σ22 2
=
∂DT
2(1 − DT )2 E20
(11.7b)
11.1.2 損傷変数の発展式
単層材料の損傷は,母材中での繊維方向の微小き裂と,母材 繊維界面のはく離によって
もたらされる.ここでは,その損傷状態を損傷変数 DS ,DT によって表している.
Allix と Ladevèze ら (1990) は,相当損傷同伴変数 Y (YS , YT ) と損傷規準をそれぞれ
Y = YS + bYT
(11.8a)
1/2
F D = Y 1/2 − Y0
≥0
(11.8b)
と表現した.そして,損傷は相当損傷同伴変数 Y によって支配されると仮定するとともに,
のちほど図 11.2 で示す実験結果に基づき,その発展を
DS =
DT =
.
1
(YCS )1/2
Y 1/2 − (Y0 )1/2
/
(11.9a)
.
/
1
1/2
1/2
Y
−
(
Y
)
0
(YCT )1/2
(11.9b)
と 書 き 表 し た .こ こ で ,Y0 は 損 傷 発 展 の し き い 値 を 表 し ,ま た YCS ,YCT ,b
=
(YCS )1/2 /(YCT )1/2 は材料定数である.
一般に,損傷の発展速度は応力の変化速度ではなく,応力の大きさによって支配される.
このため,式 (11.9) のほかに,つぎのような損傷発展式を用いることもできる (Ladevèze
1992).
'
Y 1/2 − [(Y0 )1/2 + (YCS )1/2 DS ]
ḊS = k
(YCS )1/2
'
(n
(YT )1/2 − (YCT )1/2
ḊT = bḊS + k
(YCT )1/2
(n
(11.10a)
(11.10b)
ここで,k ,k ,n,n は材料定数である.
11.1.3 損傷材料の塑性構成式
図 11.1(a)のような単層材料の場合,繊維はつねに弾性的である.したがって,塑性変
形すなわち非弾性変形は,母材中での微小き裂の発生と,繊維 母材界面のはく離によって
進行する.そこで損傷変数 DS ,DT とともに,3.3.5 項で述べたひずみエネルギー等価性
の仮説を用いれば,単層材料の有効応力と有効ひずみは,
σ̃11 = σ11 ,
p
ε̃˙ 11 = 0,
σ̃12 =
σ12
,
1 − DS
p
ε̃˙ 12 = ε̇p12 (1 − DS ),
σ̃22 =
σ22
1 − DT
p
ε̃˙ 22 = ε̇p22 (1 − DT )
と定義できる.材料の等方硬化を仮定すれば,降伏関数は
(11.11)
(11.12)
11.1 積層複合材料の損傷
271
F P = σ̃EQ − R(p) − σY ≤ 0
1/2
σ̃EQ = (σ̃12 )2 + a2 (σ̃22 )2
(11.13b)
R(p) = βpγ
(11.13c)
(11.13a)
と書ける.ここで,σ̃EQ ,R(p),p,σY は,それぞれ有効応力の相当応力,ひずみ硬化関
数,累積塑性ひずみ,ならびに初期降伏応力を表し,さらに,a,β ,γ は材料定数である.
累積塑性ひずみ速度を
p 1 2 p 1/2
2
2
ε̃˙ 12 +
ε̃˙ 22
(11.14)
a
と定義する.そして式 (11.13) の F P を塑性ポテンシャルとして用いれば,塑性構成式は,
ṗ =
つぎのように導ける.
∂F P
σ̃12
σ̃12
p
ε̃˙ 12 = Λ̇P
= Λ̇P
= ṗ
∂ σ̃12
σ̃EQ
R + σY
∂F P
σ̃22
σ̃22
p
ε̃˙ 22 = Λ̇P
= a2 Λ̇P
= a2 ṗ
∂ σ̃22
σ̃EQ
R + σY
(11.15a)
(11.15b)
11.1.4 積層材料への応用
積層材料の各層間が完全に接着されており,層間はく離が無視できる場合には,上で述
べた単層材料の理論はそのまま成り立つ.ここで,以上の結果を二つの簡単な積層配列の
場合に適用するとともに,材料定数の同定の方法についても考える.層界面の損傷と層間
はく離の模型化については, 11.1.6 項で述べる.
( 1 ) [+45◦ , −45◦ ]2S 積層材料の引張り
のように,
はじめに,この理論を [+45◦ , −45◦ ]2S 積層材料へ適用してみよう.図 11.1(b)
繊維方向座標系 O-x1 x2 のほかに,空間座標系 O-x1 x2 を用いる.そして [+45◦ , −45◦ ]2S
積層材料が,x1 方向に大きさ σ ∗ の引張り応力を受ける場合を考える.
この積層材料は, θ = 45◦ の場合に対する図 11.1(b)の単層材料と, x1 座標軸に関し
て,これと対称な繊維配列をもつ単層材料が積層されたものと考えることができる.この
とき,おのおのの単層材料の応力の,繊維方向座標系 O-x1 x2 に関する成分は,
σ11 = σ22 = σ12 =
1 ∗
σ
2
(11.16)
となる.
単層材料中の繊維方向の垂直ひずみは,せん断ひずみに比べて十分に小さい.したがっ
て,繊維方向座標系に関するひずみ成分は,
ε11 = ε22 = 0,
ε12 =
1
∗
εnn − ε∗tt
2
(11.17)
と書ける.ここで,ε∗nn ,ε∗tt は,積層材料の引張り方向すなわち x1 方向,ならびにそれ
に垂直な方向の垂直ひずみ成分である.
ここで,このような負荷状態に対し,式 (11.6)∼(11.15) の理論を適用する.
272
11 章 複合材料の連続体損傷力学
まず,式 (11.13),(11.14) から次式を得る.
σ̃EQ = R + σY = σ̃12 =
1 σ∗
2 1 − DS
(11.18a)
あるいは,
σ ∗ = 2(1 − DS )(βpγ + σY )
1 − DS p∗
ṗ =
ε̇nn − ε̇p∗
tt
2
(11.18b)
(11.19)
この材料では,繊維方向には損傷は生じないと考えている.したがって,損傷同伴変数
と損傷変数は,式 (11.7)∼(11.9) から
1
1 (σ ∗ )2
(σ ∗ )2
,
YT =
0
2
8 (1 − DS ) G12
8 E20
1
1
b
Y =
+ 0 (σ ∗ )2
8 (1 − DS )2 G012
E2
1/2 1/2
Y0
σ∗
1
b
DS =
+ 0
−
E2
2(2YCS )1/2 (1 − DS )2 G012
YCS
DT = 0
YS =
(11.20)
(11.21)
(11.22a)
(11.22b)
と導ける.
式 (11.22a) を DS について解けば,DS は σ ∗ の関数として求められる.この結果を実
験結果と比較すれば,材料定数 Y0 ,YCS ,b,β ,γ が決定できる.
( 2 ) 45◦ の一方向強化単層材料の引張り
図 11.1(b)において,θ = 45◦ の一方向強化単層材料の引張り σ 11 = σ ∗ を考える.は
じめに,単層材料中の応力の,繊維方向座標系 O-x1 x2 に関する成分は式 (11.16) と同じく
σ11 = σ22 = σ12 =
1 ∗
σ
2
(11.23)
と書ける.この場合には,材料のせん断変形と繊維横方向の引張り-圧縮変形は同程度の大
きさであるから,O-x1 x2 座標系に関するひずみ成分は,つぎのように与えられる.
ε11 0,
ε12 =
1
∗
εnn − ε∗tt ,
2
ε22 1
∗
εnn + ε∗tt
2
(11.24)
このとき,ひずみ硬化変数,累積塑性ひずみ速度,損傷同伴変数,ならびに損傷変数は,
式 (11.13),(11.14),(11.7)∼(11.9) から,それぞれつぎのように導ける.
σ =2
−1/2
1
a2
+
(βpγ + σY )
(1 − DS )2
(1 − DT )2
2
1 p∗
ṗ =
ε̇nn − ε̇p∗
(1 − DS )2
tt
2
1/2
1
p∗ 2
2
+ 2 ε̇p∗
+
ε̇
(1
−
D
)
T
nn
tt
a
∗
(11.25)
(11.26)
319
索
引
太字の数字は,複数ページが参照されている場合の主要ページを示す.
英
字
Bailey–Norton 則 225
bilateral(両方向的)効果
130, 250
Cauchy の公式 68, 97
Cayley–Hamilton の定理
29
CDZ (completely damaged
zone) 288
Clausius–Duhem の不等式
98, 103, 106, 112, 137,
143, 262
Coffin–Manson 則 216
Cosserat 連続体 297
Descartes 成分 12, 17
Descartes 分解 15
Eddington のイプシロン 16
Euclid 点空間 31
Euclid ベクトル空間 12
FRP (fiber-reinforced
plastics) 267
Gauss の定理 35
Gibbs
の関係式 99
の自由エネルギー 100
の自由エンタルピー
100
の熱力学ポテンシャル
100, 106, 129, 143, 144,
251, 262, 268
GTN (Gurson–Tvergaard–
Needleman) モデル
199
Gurson の構成式 197, 199
Gurson の降伏関数 197
HAZ (heat affected zone)
227
Helmholtz の自由エネルギー
98, 100, 102, 112, 114,
133, 138, 157, 254, 277
Hooke の法則 45, 53
HRR (Hutchinson–Rice–
Rosengren) 応力場 245
Kachanov–Rabotnov の理論
60, 222
Kachanov の理論 60
Kronecker のデルタ 12
Kuhn–Tucker の関係式
142, 150, 158, 260
Lamé の定数 54, 114
Lankford 係数 195
Levi–Civita のイプシロン
16
Macauley 括弧 129
Miner–Palmgren 則 213
Monkman–Grant の関係式
223
Norton 則 111, 222
n 階テンソル 20
Onsager の相反定理 105
Poisson 比 54, 114
Ramberg–Osgood の硬化則
173, 180
Reynolds の輸送定理 38
Rousselier の構成式 200
RVE (representative
volume element) 9, 60
r 型空隙 222
Saint–Venant の条件 90,
92, 93
Type IV 領域 227
unilateral(片方向)効果
130, 150, 250, 263
unilateral な現象 150
Voigt 表記法 47, 53
von Mises の降伏条件 116
w 型き裂 222
あ 行
位置ベクトル
1 階テンソル
32
20
一般化 Hooke の法則 45, 53
の行列表示 53
一般化流束(ベクトル) 104,
113, 137, 262
一般化力(ベクトル) 104,
113, 137, 262
移動硬化
109
内部変数 112
変数 109
異方性係数 140, 195
異方脆性損傷理論 254, 259
異方損傷材料 136, 190
異方損傷状態 65, 66
異方損傷理論 136, 143,
190, 254, 259, 261
薄板成形
184, 190
限界 190, 195
打抜き
186
運動エネルギー 95
運動方程式 97
運動量保存則 97
エネルギー散逸 126
延性損傷
5, 162–183, 196,
205
モデル 173, 176
延性破壊
172, 203
エンタルピー 100
エントロピー 97
生成速度 99
応 力
規準 128, 224
振幅 210
範囲 210
応力 3 軸度
127, 132, 178,
182, 206
関数 128, 163
応力特異性 245, 290, 300
指数 245
重み行列
49, 53
320
索
引
か 行
外積(ベクトルの) 15
回 転
34
外部変数
94
可逆(テンソルが) 14
可逆(熱力学過程が) 94
拡散くびれ
186
荷重負担有効面積 60
仮想的非損傷
材料
62, 72
状態
62, 66
配置
62, 66, 77, 79,
82, 281
加速クリープ
片方向的効果
220
130, 150,
250, 263
活性化(き裂の) 249
活性化弾性係数テンソル
154, 158, 260
活性的(き裂状態) 150,
155, 249
カップコーン破壊 182
過程(熱力学的) 94
完全損傷領域 (CDZ)
288
基 底
テンソル 47, 48
の変換 24
ベクトル 12
擬 標
12
逆テンソル
14
14
2 階テンソルの
51
4 階テンソルの
逆変換
14
球テンソル
127
行列表示
2 階対称テンソルの
48
17,
2 階テンソルの
47
4 階対称テンソルの
48
47
4 階テンソルの
局所依存性
105
局所化(変形の) 196, 299
リミッター 295
局所状態の原理 10, 95
局所的損傷理論 281
局所的破壊解析法 183, 288
局所変数
295
局部くびれ
186
巨視的スケール 3
き裂進展寿命
214
き裂先端
応力場
243
損傷場
243
き裂帯モデル
295
き裂の開閉口
150, 154,
249, 263, 275
効果
150
き裂の活性化
249
き裂密度テンソル 71
空隙(ボイド)体積率 64,
197, 200, 206
鎖法則
33, 39
くびれ
5
グリッド法
296
クリープ
111, 220
曲線
220
構成式
222, 224,
構成式 101, 103, 104
後続降伏応力 109
交 代
記号
16
テンソル
20
恒等線形変換 14
恒等テンソル 14
2階
14, 47
23, 47
4階
51
4 階対称
こう配 (gradient) 33
降 伏
関数
109, 116, 139,
146, 197
曲面
109, 116, 139
条件
116, 118
固有値 27
固有ベクトル 28
固有方程式 27
コンクリート 247, 248,
250, 257
の損傷
248
混合モードき裂 248
226, 228
クリープ損傷
6, 220, 224,
228, 229
発展式
222, 224,
226, 228
クリープ破断
6, 224
時間
222, 231
ひずみ
223
クリープ 疲労
相互作用 8, 232
損傷
8, 220, 232,
103, 104, 114, 116, 134,
143, 146, 149, 263
ポテンシャル曲面
235
系
94
現在損傷配置
さ 行
最大散逸の原理 139
材 料
軟化
290
不安定性
291
散 逸
103
不等式
103, 251
ポテンシャル(関数)
66, 77, 79,
82, 281
原子的スケール 3
現象方程式
105
現象論的関係式 105
高 階
の縮約
21
のテンソル 19
高サイクル疲労 7, 209
高次こう配理論 297
105, 139, 142
3 階テンソル 20
3 次元
Euclid 点空間 32
Euclid ベクトル空間
12
損傷状態
65
時間硬化理論 225
しきい値(損傷発生に対する応
力あるいは累積塑性ひず
みの)
索
(薄板成形) 185
(延性損傷,弾塑性損傷)
脆性損傷
材料
理論
正
198, 257, 278
静水応力 127
応力 116, 163
クリープ速度 224
塑性ひずみ速度 117,
163
応力テンソル 153
直交写像テンソル 153
テンソル 15
ひずみテンソル 151,
152, 255
正定値テンソル 15
成分(ベクトル,テンソルの)
12, 17
精密化 2 スケール損傷モデル
169, 211
跡(トレース) 19, 26
積層材料 267, 271
の引張り 271
絶対温度 98
絶対表記法 13
セラミックス基複合材料 275
セルモデル 296
0 階テンソル 20
繊維強化
単層材料 267
複合材料 268, 276
プラスチック 267
遷移クリープ 220
全エネルギー等価性の仮説
83, 132, 187
漸近応力場 244
線
321
当
150, 154, 247
157, 254, 259
値
239
(疲労損傷) 122, 210
軸性ベクトル 19
仕事率 95
実質応力 61
質量保存則 97
指 標 12
指標表記法 13
写像テンソル
153
正値直交
負値直交
153
従属変数 94
自由標 12
縮 約 19, 21
19
2重
主 値 27
主不変量 27
主方向 28
準脆性材料 291
準脆性損傷 165
状態変数 94
状態方程式 101, 103
人工粘性 298
スカラー 11, 20
積 11
場 31
不変量 27
スペクトル(テンソルの) 29
分解 29
すべり面分離 5
スポール損傷 8
正格直交テンソル 24
正規直交基底 12, 24
成形加工 183
成形限界 186
線図 186, 190, 195
整合性条件 118, 142, 168,
相
247
108, 121, 171, 174, 178
(クリープ損傷,粘塑性
損傷) 121, 230, 231
(クリープ 疲労損傷)
5, 149, 150, 164,
引
形
クリープ 疲労損傷則
234
損傷モデル 176
弾性体 45, 53
累積損傷則 213
線形弾性構成式 45
の行列表示 53
線形変換(テンソル) 13
せん断分離 4
全微分(テンソル関数の) 39
層間損傷 274
層間はく離 274
相似テンソル 24
総和規約
12
塑性圧縮性 206
塑性構成式 117, 141, 198,
270
塑性散逸ポテンシャル(関数)
116, 139, 146
曲面 139
塑性変形
111
損 傷
2
応力規準
128, 132,
182, 223
強化内部変数 136
相当応力 128
同伴変数 115
の機構 4
の局所化 290, 301
のモデル化 59
発生繰返し数 210
損傷(負荷)曲面 139, 148,
253, 257, 264
損傷効果テンソル 75, 84
損傷材料
84, 94
の弾性構成式 78, 81,
84, 88
損傷散逸ポテンシャル(関数)
116, 139, 149
曲面 139, 142, 148
損傷テンソル
2階
4階
8階
損傷発展式
66
73, 149, 276
72
121, 141, 162,
222, 253, 256, 259, 262,
278
損傷変数
10, 60, 112
損傷力学
9
た 行
第 1 期クリープ段階
第 2 期クリープ段階
第 3 期クリープ段階
220
220
220
322
索
引
対称化有効応力テンソル 68
対称テンソル 15, 48
の行列表示 48
対数クリープ則 111
体積弾性係数 54
代表体積要素 3, 8, 60
ダイラタンシー 248
縦弾性係数
54, 114
単位線形変換 14
単位テンソル 14
4階
23
弾性係数
行列
53
テンソル 45, 52,
149, 155, 157, 259, 277
変化
62, 155
弾性構成式
45, 53, 84, 88,
137, 144, 190, 251, 262
弾性コンプライアンス
行列
53
テンソル 52, 78, 80,
262, 263
弾性 脆性材料
弾性 脆性損傷
149, 247
149, 247,
265
弾性損傷
8
弾性体
45, 53
線形
直交異方
57
等方
54
横等方
55
弾性 粘塑性構成式 240
鍛 造
186
単層材料
267
弾塑性
構成式 110, 117,
144, 162, 190
損傷
8, 121, 124,
162
超高サイクル疲労 7, 209
超低サイクル疲労 7, 209,
217
直接表記法
13
直
交
スカラー不変量
43
30,
テンソル 23
変換
23
直交異方性
57
直交異方弾性体 57
ディアディク
17
ディアド
17
低サイクル疲労 6, 209, 214
定常クリープ
220
速度
222
ディンプル
5
テトラド
21
デル演算子
33
点状破壊
5
テンソル
13
積
16
の行列式 26
の行列表示 17, 45,
47, 48
の転置
15, 22, 49
場
31, 32, 34
テンソル関数
38
の導関数 40
の等方性 29
の微分
38
テンソル成分
17, 20
の変換
24
転 置
15
15
2 階テンソルの
22,
4 階テンソルの
49
導関数(テンソル関数の)
39, 40, 41
等クリープ破断時間曲線 224
同時直交不変量 30, 43
等方硬化
109
内部変数 112
変数
109
等方スカラー値
テンソル関数 30
ベクトル関数 31
等方性(材料特性の) 54
等方性(テンソル関数の) 29
等方損傷
材料
108
理論
65, 250
等方弾性
構成式
88
体
54
等方テンソル 26, 54
等方テンソル関数 29, 44
等方テンソル値テンソル関数
31, 44
等方ベクトル値関数 45
特性長さ 296
特性方程式 27
独立変数 94
閉じた系 94
トリアド 20
トレース(跡) 19, 26
な 行
内積(ベクトルの) 11
内部エネルギー 95
内部変数 94
の発展式
104, 107
斜め破壊 203
ナブラ 33
2階
損傷テンソル 66
対称基底テンソル 48
テンソル
19
2 重縮約 19
2 スケール損傷モデル 165,
167, 209
2 損傷変数理論
ニー点 276
226
熱状態方程式 106
熱生成 96
熱力学 94
過程
94
第 1 法則
95
第 2 法則
98
特性関数
101
ポテンシャル 101,
114
熱力学構成式理論
94, 98,
101, 112, 143
熱力学的平衡 94
熱流束ベクトル 96
粘 性
応力
111
索
損傷
変形
8
110
粘塑性
構成式 120, 229
変形 111
粘塑性損傷 8, 121, 229,
239
発展式 121, 230
理論 229, 239
のみ刃先状破壊 5
ノルム 11
は 行
背応力
破 壊
109
184
破壊開始の臨界値 108, 125
破壊塑性ひずみ 108
ハズ (HAZ)
227
8 階損傷テンソル 72
発 散 34
発散定理 36
発展式(損傷発展式を参照)
104, 107
反対称テンソル 15
非活性的(き裂状態)
150,
249, 277
非局所
不変量
局所化 290, 295
等価性の仮説 77, 89
軟化 291
範囲 214, 216
ひずみエネルギー
解放率 124
等価性の仮説 81
密度解放率 115, 125
ひずみ硬化 109
係数 174
理論 225
非線形延性損傷モデル 176
非線形クリープ 疲労損傷則
の導関数 42
不連続性(ひずみ速度場の)
非弾性構成式
77, 108, 112,
136
引張り分離 4
非定常
クリープ 225
クリープ損傷理論 225
微分(テンソル関数の) 38
表現定理(テンソル関数の)
43
表面力
疲 労
95
限度 7
寿命 211, 214
寿命評価(工具の)
188
重み関数 295
損傷変数 296
的損傷理論 295
変数 295
連続体 295
微視的
空隙(ボイド) 3, 4
スケール(マイクロス
ケール) 3, 165
損傷 3
微視的き裂 3, 6, 209
発生繰返し数 210
微小空隙(ボイド) 64, 196
の方位分布 69
分布 69
323
ひずみ
234
繰返し数 211
限界(薄板形成の)
引
損傷 6, 209
破壊 6
ファブリックテンソル 71
負荷関数 109
不可逆
94
不可逆熱力学 94
負荷・除荷条件 119, 134,
27
293
不連続性(応力 ひずみ関係の)
158
分岐(変形の) 291, 299
分布関数(微小空隙の) 69
平均応力
127
平均ひずみ 127
へき開
4
ベクトル
11, 20
演算子 33
積
15
損傷変数 65
場
31
変格直交テンソル 24
変 形
の局所化 196, 299
の分岐 291, 299
の唯一性 293
偏 差
応力テンソル 116
テンソル 116, 127
ボイド
4, 64, 196
損傷材料 198, 205
体積率 64, 197, 200,
206
法線則
139
補足ひずみエネルギー等価性の
79, 91
仮説
ポリアド
20
ま 行
マイクロスケール(微視的ス
ケール) 3, 165
メゾスケール 3, 165
142, 150, 158
複合材料 267
負 値
応力テンソル 153
直交写像テンソル 153
ひずみテンソル 153
物質時間導関数 37
物質導関数 37
物体力
95
や 行
有限要素依存性 290, 291
有効応力
61
テンソル 68, 73, 75
有効弾性係数テンソル 154,
158, 277
有効ひずみテンソル
有効面積
60
80
324
索
引
54
横弾性係数
横等方性
55, 156
横等方弾性体 55
4階
恒等テンソル
損傷テンソル
等方テンソル
23, 47
73,
対称恒等テンソル 51
対称テンソル 48
単位(恒等)テンソル
テンソル
21
(き裂発生) 108,
121, 169
(クリープ 疲労)
54
235, 237
149, 276
23
22,
テンソルの転置
49
ら 行
172, 196
リガメント
力学的等価性の仮説 73
粒界拡散
5
粒界空隙
6, 221
両方向的効果
130, 250
臨界値
(延性破壊) 108,
125, 172, 174, 176
(疲労破壊) 211, 216
累積塑性ひずみ 117
のしきい値 122
零線形変換 14
零テンソル 14
連続体損傷力学(CDM) 2,
9
連続の方程式
97
著 者 略 歴
村上 澄男(むらかみ・すみお)
1959 年 名古屋大学工学部機械学科卒業
1964 年 名古屋大学大学院工学研究科博士課程応用物理学専攻修了
工学博士
1965 年 名古屋大学工学部助教授
1980 年 豊橋技術科学大学工学部教授
1984 年 名古屋大学工学部教授
2000 年 名古屋大学名誉教授
愛知工科大学工学部教授
2007 年 愛知工科大学名誉教授
この他 ポーランド科学アカデミー基礎工学研究所客員研究員(1969–
70 年),
パリ第 6 大学招聘教授(1986 年)
,重慶大学招聘教授(1989 年)
,
エコール・ポリテクニク(パリ)客員教授(1998 年)
主要著書・訳書
固体力学の基礎(共著,日刊工業新聞社)
,
環境・高温強度学(共著,オーム社)
,
Continuum Damage Mechanics, Theory and Applications
(共著,Springer-Verlag)
,
クリープ強さの理論(訳,培風館)
,
固体の力学/理論(共訳,培風館)
,
連続体の力学入門(共訳,培風館)
,
非線形連続体力学(訳,共立出版)
連続体損傷力学
2008 年 9 月 5 日 第 1 版第 1 刷発行
著
者
発 行 者
発 行 所
c 村上澄男 2008
【本書の無断転載を禁ず】
村上澄男
森北博巳
森北出版株式会社
東京都千代田区富士見 1-4-11(〒102-0071)
電話 03-3265-8341 / FAX 03-3264-8709
http://www.morikita.co.jp/
日本書籍出版協会・自然科学書協会・工学書協会 会員
<
(株)
日本著作出版権管理システム委託出版物>
落丁・乱丁本はお取り替えいたします
印刷/エーヴィス・製本/協栄製本
TEX 組版処理/(株)プレイン http://www.plain.jp/
Printed in Japan / ISBN978-4-627-66655-1
Fly UP