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存在感を増していく 欧州ユーティリティ企業の上流活動
2014/10/24 存在感を増していく 欧州ユーティリティ企業の上流活動 2014年10月23日 調査部 永井 一聡 1 ユーティリティ企業の上流事業参画の意義 原料の安定調達 ・・・エネルギーの安定供給の基盤 原料調達コスト ・・・下流事業の収益性に直結 自ら原料の生産活動を行うことにより・・・ ・原料調達源の確保・多様化(安定調達) ・原料調達コストの低減(実開発コストで調達可能) ・市場価格変動による原料調達コスト変動リスク回避 (ナチュラルヘッジ) 2 1 2014/10/24 主な欧州ユーティリティ企業の石油・ガス生産量 出所:各企業Annual Reportを元にJOGMEC作成 *1 …EDF(仏)の上流開発部門は子会社であるEdison(伊)に集約して担務 3 (参考)IOCとの比較 出所:各企業Annual Reportを元にJOGMEC作成 *1 …EDF(仏)の上流開発部門は子会社であるEdison(伊)に集約して担務 *2 …Chesapeake は原油・天然ガスの合計 4 2 2014/10/24 主なユーティリティ企業の上流事業活動状況 ・E.ON(ドイツ) ・RWE(ドイツ) ・Centrica(イギリス) ・GDF Suez(フランス) 5 E.ONの上流事業~沿革と概要~ ・2000年、VEBAとVIAGの合併によりE.ON誕生 現在、欧州最大のユーティリティ(電力・ガス)企業 ・前身のVEBAのグループ企業VEBA Oel(石油化学企業)が 上流権益を保有 ⇒E.ON設立時の「コアビジネス(電力・ガス供給事業)に 集中する」という方針の下、 非コアビジネスと位置付けられ、 2002年7月にBPに事業を譲渡 ・2003年、Ruhrgasとの合併を機に上流事業再進出 総売上高 電力販売量 ガス販売量 石油 生産量 天然ガス 合計 122,450 百万€ 7,044 億kWh 10,917 億kWh (≒約960億m3 ※JOGMEC換算値) 750万 bbl(約2.1万b/d)(北海分) 1,465 百万m3(北海分) 6,262 百万m3(ロシア分) 約55 百万boe(約15.1万b/d)(ロシア含む全合計) 出所:E.ON Annual Report 2013 6 3 2014/10/24 E.ONの上流事業~生産量推移~ ・上流事業再進出後の10年で生産量を拡大 ・販売したガスのうち自社生産量が占める割合は約8%(2013年) 出所:E.ON Annual Reportを基にJOGMEC作成 7 E.ONの上流事業~活動状況・実績~ ・北海(イギリス、ノルウェー)を中心、ロシア、アルジェリア含め、 約50の探鉱・生産ライセンスを保有 ・オペレータシップを重視(⇒競争力、発言力、人材確保) ・探鉱ライセンス獲得にも積極的(⇒将来的な発見への土台作り) 目標:2年に1回、オペレータを務める鉱区での新規発見 出所:E.ONホームページ資料 8 4 2014/10/24 E.ONの上流事業~戦略と位置付け~ ・戦略的な成長部門との位置付け ・天然ガスの調達先多様化 ・長期における供給セキュリティ確保 ・直接的な収益性も期待 ・新規発見の期待度が高いライセンス保有数の増大 ・目標として、2020年までに保有埋蔵量を1.5億boe上乗せ 出所:E.ONホームページ資料 E&P部門人員数の推移 出所:E.ONホームページ資料 E&P部門人員の専門領域割合 9 RWEの上流事業~沿革と概要~ ・ドイツで第2位のユーティリティ企業 ・1988年、Deutsche Texaco AGの事業を引き継ぎRWE Deaと改名 ・1990年の組織改正以降、RWE DEAが上流開発を担務 しかし、 ・2014年3月、RWEは、RWE DEAを売却することについて、 ロシアLetterOneグループと合意 ⇒RWEは上流事業から撤退へ 総売上高 電力販売量 ガス販売量 石油 天然ガス 生産量 合計 54,070 百万€ 2,709 億kWh 3,350 億kWh (約295 億m3※JOGMEC換算値) 231.6万 m3(約3.8万b/d) 2,625 百万m3 30.6 百万boe(約8.4万boe/d) 出所:RWE Annual Report 2013 10 5 2014/10/24 RWEの上流事業~生産量推移~ ・近年は生産量は減少傾向 ・販売したガスのうち自社生産量が占める割合は約9%(2013年) 出所:RWE Annual Reportを基にJOGMEC作成 11 RWEの上流事業~活動状況・実績~ ・世界17ヶ国で約160の探鉱・生産ライセンスを保有 そのうち約半数のライセンスにおいてオペレータ活動 出所:RWE Annual Report 2013 12 6 2014/10/24 RWEの上流事業~撤退の理由~ RWEの声明による撤退理由 「石油・ガス市場は世界的に拡大を続けるものの、 それは欧州域外での事象であり、 流動性あるガス卸売市場が発展している欧州においては、 調達源の冗長化(多様化)がなされているため、 もはや自身でガス供給源を確保する必要はなく、 また、上流事業とコア事業との相乗効果は ほとんどなくなっている」 ? 天然ガス火力の競争力低下 生産量伸び悩み ? ? 再生可能エネルギー政策 ? ? 石炭(褐炭)火力増加 13 Centricaの上流事業~沿革と概要~ ・イギリスのユーティリティ企業。イギリス、北米で事業展開。 ・1986年、国営British Gas Corporationの民営化により、 British Gas plcと改称。 1997年、CentricaとBG plc(現BGグループ)に分割され設立。 ・旧British Gasとしては1985年アイリッシュ海でガス生産開始 ・2006年、上流事業ユニットとしてCentrica Energy設立。 ノルウェー、イギリスを中心に石油・ガスの探鉱・開発・生産。 総売上高 電力販売量 ガス販売量 石油 生産量 天然ガス 合計 26,571 百万£(約31206 百万€) 1,063億 kWh (北米Direct Energy分639億kWh含む) 6,965 mmth(約180億m3) (北米Direct Energy分1839mmth含む) 18.7 百万 boe(約5.1万boe/d) 3,557 mmth (約92億m3) 77.3 百万boe(約21.2万boe/d) 出所:Centrica Annual Report 2013 14 7 2014/10/24 Centricaの上流事業~生産量推移~ ・生産量は徐々に増加。 ・販売したガスのうち自社生産量が占める割合は約51%(2013年) 出所:Centrica Annual Reportを基にJOGMEC作成 15 Centricaの上流事業~活動状況・実績~ ・アイリッシュ海、北海(イギリス、ノルウェー、オランダ)、 トリニダードトバゴ、カナダ西部で探鉱・開発・生産活動。 ・カナダでは、Qatar Petroleum International (QPI)との パートナーシップ(CQ Energy Canada Partnership)を形成。 ・2013年6月、イギリスBowland Basineのシェール鉱区の 探鉱ライセンス(25%)を取得 出所:Centrica ホームページ 16 8 2014/10/24 Centricaの上流事業~戦略と位置付け~ ・上流事業は英国国内供給向けが前提。 Sam Laidlaw CEO:「Centricaは独自で石油天然ガスの 上流事業に参加しているが、同じく上流に参画する BGグループとは全く異なった動機によるものである。 当社とBGでは対象とするマーケットが異なる。 当社は英国の顧客のために石油ガスの探鉱開発事業 に参加している。」 ・北海を中心に参画。 ノルウェーの大型プロジェクト参画等により、 英国内生産への依存度低減も図る。 ・2013~2014年、資産ポートフォリオ最適化のため、 北海資産の整理売却を進める。 ・また、今後3年間で上流事業への投資額を20%削減(目標) ※近年のイギリス北海における掘削コスト上昇を勘案 17 GDF Suezの上流事業~沿革と概要~ ・1946年、Gaz de France(フランスガス公社)が設立 ・2008年、Gaz de FranceとSuezが合併し、GDF Suezが誕生 ⇒世界規模のユーティリティー企業として事業活動 ・現在も株式の約1/3をフランス政府が保有 ・自身の持つLNG調達ポートフォリオを活かして、 トレーディングも含めたLNG供給事業も展開 ・上流事業はGDF Suez E&P(GDF Suez 70%、China Investment Corporation 30%)が担務 総売上高 電力販売量 ガス販売量 石油 生産量 天然ガス 合計 81,278 百万€ 3,386 億kWh 13,340 億kWh 16 百万 boe(約4.4万boe/d) 6,100 百万m3 51.9 百万boe(約14.2万boe/d) 出所:GDF Suez Annual Report 2013 18 9 2014/10/24 GDF Suezの上流事業~生産量推移~ ・生産量は徐々に増加させていたが、近年は横ばい・安定。 ・販売したガスのうち自社生産量が占める割合は約5%(2013年) 出所:GDF Suez Annual Reportを基にJOGMEC作成 19 GDF Suezの上流事業~活動状況・実績~ ・18ヶ国で382ライセンスの探鉱・生産ライセンスを保有。 これらのライセンスの半分以上、8ヶ国でオペレータを務める。 ・2008年にオーストラリア、インドネシア、マレーシアといったアジア・ 太平洋地域へも参画。←LNG販売を視野。 ・2013年10月、13のイギリスのシェール探鉱 ライセンスの25%を取得 出所:GDF Suez ホームページ資料 20 10 2014/10/24 GDF Suezの上流事業~戦略・位置付け~ ・ユーティリティ企業としての事業をワールドワイドに展開、 探鉱~生産~輸送~供給までの バリューチェーン全体の構築・発展を目指しており、 上流事業は供給ポートフォリオの一部としている。 ・欧州市場への供給ポートフォリオの多様化を重視し、 北海と北アフリカを上流事業のコアエリアに位置付け。 ・上流事業活動のポリシーとして以下を掲げている。 ①既存油ガス田における資源の完全回収 ②既発見の資源を開発 ③埋蔵ポテンシャルの高い未開発エリアだけでなく、 既に開発されたエリアにおいても更なる探鉱努力を行う (北アフリカ、中東、アジア太平洋、カスピ海等) 21 まとめ ○各企業の共通点 ユーティリティ企業として、下流顧客への安定供給に寄与、 および事業のシナジー効果を生み出すものとの認識 一方で、 ・RWE …上流事業撤退 ←コア事業にとって不要と判断 ・E.ON、Centrica、GDF Suez …上流事業を維持・拡大 さらに、 ・上流事業における戦略・取り組み方は様々 ・探鉱段階からの参加も多数(長期的な供給源確保) ・オペレータとしての参画も重視 22 11