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南極における強風時の吹雪

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南極における強風時の吹雪
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南極における強風時の吹雪
小林, 俊一; 石川, 信敬; 大畑, 哲夫
低温科學. 物理篇 = Low temperature science. Series A,
Physical sciences, 42: 65-79
1984-03-05
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/18483
Right
Type
bulletin
Additional
Information
File
Information
42_p65-79.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
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南極における強風時の吹雪*
小林俊一・石川信敬
(低温科学研究所)
大畑哲夫
(名古屋大学水圏科学研究所)
(昭和 5
8年 1
0月受理)
I.まえがき
降雪を伴って,かつ強い風が吹き,地表に積った雪も同時に舞いあがり,水平視程も垂直
視程も悪化する現象を一般に吹雪 (snowstorm) と呼んでいる。特に北米では,低気圧と共に
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) と呼んでいるが,これなどは最
激しい降雪と強風を伴う気象条件の時をブリザード (
も激しい吹雪に相当し,特に雪嵐とか暴風雪とか呼ぶ場合もある。主に雪面近くを雪が移動す
る地吹雪の研究は,多くの研究者によって詳しくなされているが,ブリザードに相当する激し
い吹雪の観測は少ない。このブリザードは,南極では日常的な現象として知られているが,観
測は危険を伴うので少ないというのが現状である。南極のブリザードも降雪を伴った暴風雪状
態をいい,南極大陸周辺に位置する昭和基地では低気圧の通過時に強風と悪視程のため外出は
大変危険となるため光学的な方法で、吹雪量変動
が測定されたにすぎなし、九
他方,みずほ基地
(
第 1図参照)は海岸から約 250km内陸部の海
+
抜高度約 2,
200m の大陸氷床上にあるので,低
気圧の影響は多少は弱まり昭和基地に比較して
ブリザード時の風速は弱い。しかし,寒冷なカ
タパ風が年中吹き(年平均気温 -33OC,年平均
札
風速 11m/s)
3
)
吹雪を発生させている。みずほ
基地は.低気圧の影響や冬の放射冷却が強まっ
た時には,風速が 15~20 m/s位まで強まり,高
い吹雪となって視程が 100m以下と悪化する。
このようなブリザードに相当する吹雪の発生日
数は, 1980年では年間 141 日あり,低い吹雪を
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も含めると年間 303 日にもなる(第 2図参照)。
今回は,
みずほ基地の 30mの気象観測用
*北海道大学低温科学研究所業績
第 1図
第2
5
9
8号
低温科学物理篇第4
2輯 昭 和 5
8年
南極みずほ基地付近図
小林俊一・他
6
6
タワー 4) を利用して強風時の吹雪移動
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3m, 0.7m,
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た 。 入 口 が 直 径 2cmの吹雪計は 8 m
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た雪を,皿を引き出して重量測定し
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箱の中には受け皿があり,そこに溜っ
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いた開閉可能な蓋が取り付けてある。
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メッシュ(関口 0.
42mm) の 金 網 が 付
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よこ 15cm,長さ 40cmで,出口は 3
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を用いた。箱の大きさは,たて 1
5cm,
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が直径 2cmと 5cmの 箱 型 の 吹 雪 計
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吹雪移動量を測定するために入口
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第 2図
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0年みずほ基地付近における各月の
吹雪発生日数と月平均風速の変化
6
.
5m, 1
4m, 28m の 3点の高度に取
り付けた。この箱型の吹雪計の全体の
.
2
9
7であった。
捕捉率 5) は 0
2
. 風速と気温の分布
風速と気祖の分布の測定は
30mタワーで行われ
た。風速は 3杯風速計を,気瓶はプラチニューム抵抗温
.
5m, 1m, 1
.
5m, 3
.
5m, 7
.
5m,
度計をそれぞれ, 0
1
5
.
5m,2
9
.
5m の 7点の高度に取り付けて測定した。そ
れらの詳しい測定結果については, Ohata他 6) によって
報告されている。
3
. 視
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J
J
程
水平視程は,風向に直角な方向に,燃料ドラムを
第 3図 箱型吹雪計の設置状態
2kmまでの聞に 1
0個 配 列 し て 目 視 観 測 に よ っ て 行 っ
た。垂直視程に関係のある吹雪の高さは, 30mタワーから約 50m離れた地点から, タワーの
見える境界の高さを目視観測した。
4
.一飛
雪 粒子
飛雪粒子は,
スライドグラスに 3%濃度のレプリカ液を塗って,
約 1秒から 1
0秒の露出
9
8
0年 10月かゐ 1
9
8
1年 1月 1
0日まで一日一回の観測を行った。
時間で捕捉した。 1
期
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高度1.7m で の 期 間 中 の 平 均 気 温
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0年 み ず ほ 基 地 で 測 定 し た 吹 雪 ブ ラ ッ ク ス
第 1表
それらの値から 10m高度まで外挿による積分値の
定は,雪面から 1mの高度まで測定して,
これまで,みずほ基地での吹雪フラックスの測
と高度1.7m の平均気温の値をも示してある。
吹雪計の捕捉率を
ほとんどがブリザード期間中の測定結果である。
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) を第 1表に示した。
プリザード期間中には,外に出て測定が出来ないた
小さくして,露出時間を長くした理由は,
67
強風時の吹雪
1
I1.観測結果
1
. 吹雪フラックス
各高度を単位時間,単位面積を通過する吹雪の質量,すなわち吹雪アラックス (snowd
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め
, ブリザード期間中に吹雪計ーの中に雪がし、っぱいに捕捉されて測定不能となることを避ける
ためである。吹雪フラックスの代表的な高度分布の例を第 4図に示した。図中の分布例の番号
は第 1表の測定番号に対応している。また第 1表には,高度… 7.2mの観測期間中の平均風速値
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小林俊一・他
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第 4図
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.)
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0
ブリザード時の吹雪フラックスの高度分布
結果が示されてきた九今回,約 30mまでの測定は,第 4図のごとく比較的直線近似ができる
ので,過去に報告した 10m高度までの外挿値は,良い近似値を与えていたといえる。
2
. ブリザード時の高度 30mまでの接地気層
第 1表と対応する期間の平均風速と平均気温の分布を第 2表に示した。第 2表には,雪面
から高度 30mの気層の平均リチャードソン数 (
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1Zは温位勾配, L
1U/
L
1Zは風速
勾配で‘いずれも 29.5mと 0.5mの高度の値から計算した。一般に,地吹雪時の接地気層は中
立条件 (Ri=O,S=O) の場合が多いが,カタバ風帯のみずほ基地では,強風の吹雪時でもほと
んど安定条件 (Ri>0,S>O) の場合が多い。ブリザード時の代表的な風速分布の例を第 5図に
示した。中立条件の場合には,高度を片対数表示で表わせば,風速の高度分布は直線になるが,
安定条件の場合には,
高度が増すにしたがって加速される方向に直線から外れてゆく。
いま,
30m高度の実際の風速を U30,3
0m 高度での直線から外れた部分の風速を U1とすれば, この
二つの風速比 UdU
3
0の値は,一般に安定指数が増すと直線的に増加するへしかしみずほ基
地でのブリザード時の場合は,第 6図に示したごとく,海氷上で測定した真木 8) の結果に比べ
て,同じ安定指数で UdU
3
0の値は大きく,かつ直線関係はみられず一定値を示した。
3
. 水平視程と吹雪の高さ
0個置いて,目視
みずほ基地での水平視程の測定は,雪面上 2kmの聞に燃料ドラム缶を 1
観測によった。
したがって,ドラム缶の置いていない 2km から 10k~ の聞の視程は,観測者の
第 2表
1
9
8
0年 み ず ほ 基 地 で 測 定 し た 吹 雪 時 の 風 速 と 気 温 の 鉛 直 分 布 と 平 均 安 定 指 数 (
S
) とリチヤードソン数 (
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風
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Mar.27-Apr
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11
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9
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7
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何不刷岬
1
4
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6
2
混声明哨 δ
Feb. 6-7
Ri
0
.
2
9
4
σ3
<c
7
0
小林俊←・他
主観による測定といえる。第 7図は, 1
980年の
Mizuho Station
28 Feb.1980
1次南極観測隊がみずほ基地で測定した水
第2
平視程の値と風速の関係を示しであり,値のば
Run.1
.
30
らつきは大きいが,それらの傾向を示す実線を
ヲ│いてある。
また図中の点線は真木 8) が第 11
10
5
結果である。風速計の高度はみずほ基地では
7.2m,昭和基地では 10mであった。強い吹雪
になると同じ風速値でも,みずほ基地の方が視
Ri・
0
.
029
l
h
0
.
2
7
m
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次南極観視J
I隊に参加した際に,昭和基地で、得た
E
N
.
c
01
程が悪いという傾向がみられる。
@
Z
第 8図は,みずほ基地の 30mタワ
0
.
5
,
,
,
,,
次に,
ーの下層部分が吹雪で見えなくなる高さと,そ
の時の水平視程の関係を示している。水平視程
V
i
S
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b
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t
y , 10m
I
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0
.
5
m
)
.
21
.
.
5C
Tem.!
Cloudiness,
1
0
・
が 100m以下になると急に 30mタワー全体が
かすんで見えなくなる。この水平視程が 100m
の時の吹雪量の値を推定しよう。すなわち,吹
第 5図
た
。
実線は,
みずほ基地でのブリサート時の
風速分布の例
雪フラックスを風速で割れば,吹雪の空間密度
(snow drift density)
15
20
Wind speed ,
UZ (
m
/
s
)
10
が得られる。第 9図は水平視程と 2 m高度の吹雪空間密度の関係を示し
9
)他の関係を示した。
Budd
みずほ基地で得られた値は,ぱらつきが大きいが,
100mの視程の時の, 2 m高度の吹雪空間密度の値は約 1/m3に相当する。
さらに,
目視観測からの吹雪の高さの推定はこの場合 30mが限界である。
実際にはどの
高度まで吹雪が存在するのかということは興味のある問題である。そこで一つの目安として,
.
0
1g/m3 と考えて,その値をとる高度と 1
0m 高度の風速
測器の吹雪空間密度の測定限界値を 0
。 。。
。
・
・ー-ーーー・・・・司'ーーー-・ー
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3
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5tQ bi
みずほ基地でのブリザード時の安定指数と
実線は昭和基地で得られた結果的
0004
QOOS
UJ
/U
却の関係
7
1
強風時の吹雪
o.目。
打1
1
04~
0
,-",
Mizuho Station,1980
)
3
1
0
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2
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10
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rSyowa Station
(Maki,
1974)
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〉
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帥@曲、。。¥
1
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1
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Wind speed
第 7図
20
U同 f
.
¥
¥
30 m/s
みずほ基地での水平視程と風速の関係
点線は昭和基地で得られた結果的
の関係を調べてみた。その結果を第 1
0図に示す。この図から有効な吹雪高度は約 70m以下で
あったといえる。図中に BuddlO)がオーストラリヤの Wilkes基地で行った地吹雪時の結果を
実線で示した。みずほ基地の場合には, .風速の増加に対して吹雪の高さも増加するという傾向
は得られなかった。吹雪の場合は, .降雪の強さが影響すると考えられるが,みずほ基地では,
地吹雪の中で降雪の強さを測定することは大変難かしい。現在のところ,飛雪粒子の結晶形を
観察して降雪があるか無し、かを判断する方法が行われているのみである。
4
. 飛雪粒子の特長
みずほ基地で、の飛雪粒子の観察は,成田町によって報告された。それによると幾分丸味を
帯びた粒子が観測される場合
ι 砲弾型の降雪結晶形を保っている粒子が観測される場合があ
り,後者の場合は明らかに降雪時の吹雪と断定して良い。著者等の飛雪粒子のレプリカ写真か
らの観察結果も,ブリザード時は,砲弾型かその集合からなる結品形が卓越していた(第 1
1図
72
小林俊一・他
で
1
0
0
Mizuho Station,
(
19&0)
50
' 、
•ミ
•.
•・
・
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n horizonta¥
第 8図
30mタ ワ ー を 利 用 し て 演J
Iった吹雪の高さと水平視程の関係
Mi
zuho Station
,
1980
(Blizzard)
1
0
0
0
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5
Snow d
r
i
f
t density at 2ml
e
v
e
l
第 9図
水平視程と 2 m高度の吹雪空間密度の関係
実線はバード基地で得られた結果的
1
0
7
3
強風時の吹雪
円1
】0
0
• ;Blizzard(MizuhaStation.19sOl
円
E ﹃申
.
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.
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o
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50
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(WilknRrgiol
•
m
••
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工
0
5
第
1
0図
.•
1
0
1
5
Wind speed a
t 1
0m teve1
,UIO
25
3の値をとる高度と風速の関係
吹雪空間密度が 0
.
0
1g/m
実線はウィーノレタス基地での結果 10)
(
A
)
)。そして日数を経てそれらの粒子は丸味を持つ飛雪粒子に変化していった(第 11図 (
B
)
)。
1図 (
C
)に示すような,飛雪粒子が互いに付着し合った団粒構造を持つ場合も観
その他,第 1
測された。この場合は,ほとんどが真夏の期間で,強い日射を受けて表面が一時的に融解し付
着し合ったものと思われる。
IV. 吹 雪 輸 送 量
今回得られたブリザード時だけの吹雪輸送量 (Snowd
r
i
f
tt
r
a
n
s
p
o
r
t
) と,これまでに得ら
れた主に地吹雪時の吹雪輸送量 7) と比較検討する。いま任意の高度 Zでの吹雪フラックスを
F
.とすると,風向に直角な単位幅を単位時間に通過する吹雪輸送量 Q は次の式によって得ら
れる。
仁川Z
Q=
(3)
実際には,無限大の高さまで積分できないので近似値を得るために雪面から吹雪計の最高
高度の 28mまで積分した。すなわち,実測値の範囲で積分した。実際にはもう少し上空まで
2図に示した。
吹雪があるので多少過少評価したことになるが実測値の結果を第 1
図中の 2本
の点線は,これまでに得られた主にみずほ基地での地吹雪時の結果で,雪面から 1 m高度まで
の実測値から 10m高度まで外挿による積分から得られたものの上限と下限値を示してある 7)。
ブリザード時の吹雪輸送量は, 30m高度まで積分されているにもかかわらず,これまでに得
られた地吹雪時の測定範囲と一致する。第 4図の吹雪フラッグスの 30m高度までの測定結果
をながめると
1 m高度までの測定結果をそのまま 10m高度まで外挿することが誤りである
とは考えられない。むしろブリザード時の大気の乱流拡散に問題があると思われるので次章で
考察する。
7
4
小林俊一・他
Jlmm
OC
.t
.
1
5,1980,
Z:::5cm, 車斗ー
8
lmm
0,
寸
→
C
JOI
).9,
四8
1 ,Z
:
:
:5cm ,来斗今
1図
第1
飛雪粒子のレプリカ写真
(
A
) 1
9
8
0年 1
0月 1
5臼 ブ リ ザ ー ド i
時
(
B
) 1
9
8
0年 1
0月 1
7臼 (
A
)から 2臼後の地吹雪時
(
C
) 1
9
8
1年 1月 9日
ブリザード時
7
5
強風時の吹雪
,
,
∞o ・
g/m5
考 察
1
/
''J'
//
ノ/
先ず,降雪を伴ったブリザード時の吹雪
のごとく表わされる。
''a,.
ノ'
=
/
•
•
•
I
/
/
/
〆
/
/
5
}
!
1
ー
コ
不*Z
(5)
'
t
'm
/
ノ
/
Zは高さである。しかるに大気が中立条件で
K~
I
/
/
/
数(二 0.4),仰は摩擦速度 (
F
r
i
c
t
i
o
nv
:e
l
o
c
i
t
y
),
ない時の拡散係数は,
//〆.
〆
のごとく表わされる。ここで hはカルマン定
O
3 0 Z的
(4)
•
/
/
l
ι
c
r 10
K = ku*Z
-/ .
/
炉-
〆
ノ
ノ
/
J''
,
,〆
場合には,運動量についての拡散係数は,
﹂
とを意味する。たとえば,大気が中立条件の
FEO止凶Z4EaF
以上のことは乱流による拡散係数が小さいこ
/aFb
100
ブリザード時の接地気層は安定条件
の風速分布の挙動を示している。すなわち,
J
.
ように,
/.4
,
,
,
,
Q
大きくはなく,同程度であるということは理
解し難いことである。しかし第 6図に示した
,,,,
/.
・
'
輸送量が,降雪を伴わない地吹雪時の値より
a
'
V
.
U,
WIND SPEED AT 1m
第 12図
ここでゆm は風速鉛直
ブリザードl
侍の吹雪輸送量と風速
の関係
2本 の 点 線 は 主 に 地 吹 当 時 の 結 果 7
)
勾配を無次元化したもので,風速のシア一関
数 と よ ば れ , 次 式 の ご と く 定 義 さ れ て い る ( こ れ ま で の 記 述 に つ い て は , た と え ば 近 藤 12) を
参照)。
が - k
互 dU
u* dZ
(6)
したがって,中立条件の場合にはゆ m=lである。安定条件の場合には,一般にゆ m>lが知
られている。第 1
3図には, (
6
)式から計算されたブリザード時のゆ m の高度分布を示した。。田
の{直は
1m高度付近では中立条件に近いが, 高度を増すとりm の値は 1より大きくなる。た
だし, (
6
)式からのゆm の計算に際しては,似の値は, 0.5mから1.5mの聞の風速分布の値の
4図には,地上と 30m高度の聞の風速シア一関数の平均値と
直線近似から計算した。また第 1
リチャードソン数の関係を示した。図中の点線は,弱風時の安定な大気中の近藤町の結果を示
しである o Omは一般に安定度の関数であるが,ブリザード時のゆm は安定度の依存性がみられ
ず ,O
mの値の絶対値は,同じ安定度でも近藤の値より大きな値を示した。
から拡散係数も中立条件の場合に比べて小さな値となる。ただし
このことは, (
5
)式
U*が高さに関して一定と
仮定した場合に限られる。実際には第 5図の風速分布からわかるように,高くなるほど風速シ
アーが大となり h が大きくなる。したがって, 7.5mと 2
9.5mの 風 速 値 か ら も 直 線 近 似 が で
き h を計算して下層の値と比較した結果が第 3表である。下層の値を
U*b
上層の{直を
U*2 と
76
小林俊一・他
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ブリザード時の風速シア一関数
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第 3表
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7
強風時の吹雪
して,摩擦速度の比 U
*
2
/U*
1の値は, 7.5mと 29.5mの聞の平均風速シア一関数。皿の値にほぼ
等しい結果が得られた。いま,各高度の拡散係数が (
5
)式で近似できるとすれば,
高い所ほど
h が大きくなるが, O
mも大きくなるので,拡散係数は相殺されてある一定な関係が保持され
7
)式のようにお
る。第 3表の結果から,降雪を伴ったブリザード時の拡散係数 K'を近似的に (
いた。
K'キ k
U
*
lZ
(7)
次に,降雪を伴ったブリザード時の雪面近くの風速分布から計算した摩擦速度の値 U
*
lと
,
降雪を伴わない地吹雪時の摩擦速度の値 h を 1mの高さの風速との関係を調べた結果を第 1
5
図に示した。図中の点線と一点鎖線は,通常の地吹雪時の値である。 O~IJ は,ブリザード時の
値である。ここでは Uキ >u*l(K>K')の関係が得られた。
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第
1
5図
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20
摩擦速度と風速の関係
点線と一点鎖線は地吹雪時の結果,。印はブリザード時の結果
ここで,拡散係数が (
4
)式で表わされ,雪粒子の落下速度
'Wが一定という仮定で,吹雪密
度に関する定常状態での拡散方程式を解くと,任意の高さの吹雪密度の高度分布は次式のごと
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川
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叩 )ku
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(8)
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吹雪フラックスと吹雪密度の換算は風速 U を介して , n=F/Uの式でできる。
ここで Z
l
は基準の高さを表わす。 (
8
)式からわかるように,吹雪密度の高度分布は,雪粒子の落下速度と
摩擦速度に鋭感である。したがって, ω =一定と仮定すれば,ブリザード時の吹雪密度は高く
なると減少の割合が大きい。しかし降雪を伴うため高い所まで有意な吹雪密度が保たれると考
えられるので全吹雪輸送量は,
2図
)
,
近似的には基準の風速に依存して(第 1
降雪の影響は見
かけ上現われなかった。
また
1mの風速と摩擦速度が一次の直線関係にあるとするとその時の平均粗度
ness length)みが計算できる。その値を第
(rough-
1
5図に示したが,摩擦速度が小さな値になること
はみが小さな値になることに対応する。このブリザード時の小さな Z
。の値は,雪面が空気力
小林俊ー・他
78
学的に滑面となったことを意味し,その原因としては,雪面近くの吹雪粒子の流れが,見かけ
上雪面で空気がスリップすることに対応しみが小さくなったと考えられる。
V
I
.
あとがき
南極みずほ基地において,従来あまり測定できなかったブリザード時の吹雪観測を,第 2
1
次 南 極 観 測 隊 に 参 加 し たl
療 に行った。その結果,
ブリザード時の全吹雪輸送量は,通常の地l
火
雪時の場合と同程度であった。その理由として雪国近くの摩僚速度が地吹雪時の摩擦速度の値
より小さいことが示され,吹雪高度が高いにもかかわらず,全吹雪輸送量には変化がなかった
ことが示された。吹雪粒子の落下速度の考察ができなかったので,あいまいな点が残り,今後
は雪粒子の落下速度の観測が是非必要である。
1次 南 極 観 測 隊 越 冬 隊 長 で あ る )
1
1口 貞 男 国 立 極 地 研 究 所 教 授 と 隊 員 の 全 て の
終りに,第 2
方々から観測を支援していただいた。また低温科学研究所の石田完教授からは本論文を校閲し
て い た だ い た 。 あ わ せ て 深 く 感 謝 L、たします。
なお,解析は一部,国立極地研究所の共同利用研究費によった。
文 献
1
) 小林俊一・牧野勤倹 1
9
7
5 昭和基地における強風時の光を利用した飛雪観測(予報). 南極資料, 53,
4
5 ラ2
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2 第 211
欠南極地域観測隊気水園部門観測概報 1
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) 小林俊一 1974 サイクロン型地ふぶき計と引き出し箱型地ふぶき計の比絞. 低温科学,物理篇, 32,
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7 雪国の硬さ,飛雪1[*,温度が地ふぶき現象に及ほす影響.低温科学,物理篇, 35,
7
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) 成田英器 1
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) 近藤純正 1
9
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2 大気境界隠の科学. 東京堂L!J
版
, 219p
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