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スタイロフォームFG

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スタイロフォームFG
1.はじめに
高性能断熱材
「スタイロフォームTMFG」
について
2
011年3月の東日本大震災とそれに伴う原子力
発電所の稼働停止を受け、
日本の電力需給状
況はそれまでと大きく変化し、
日本のエネルギー政策も大
規模な調整を求められることになりました。
2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」
においては、
徹底した省エネルギー社会の実現のため、
高
業務・家庭部門における省エネルギー強化策として、
い省エネルギー効果が期待される建築物・住宅の省エネ
ルギー化の取組みを推進する必要性が示されています。
1998年の改正省エネ法においては、
民生部門の省エ
白川 好弘
ネの強化策としてトップランナー制度が導入されました
ダウ化工株式会社
技術・開発本部 鹿沼研究所
材を含む建築材料がトップランナー制度の対象に加わり
が、
さらに、2013年12月の改正省エネ法において、断熱
(建材トップランナー制度)、
グラスウール、
ロックウール、
押出法ポリスチレンフォームの3種類の断熱材が対象とな
りました。
このほか様々な、
国を挙げた省エネ施策や環境対応の強
化を受け、
住宅・建築の断熱性能が注目を集めています。
ダウ化工は2010年に高性能断熱材として「スタイロ
フォームEX」
を開発・販売開始しましたが、市場の更な
る断熱性能向上のニーズに応えるべく、
より地球に優し
い断熱材の開発を進め、断熱性能の最高レベルである
Fランクの性能を持つ「スタイロフォームFG」
(写真1)
を
開発し、2014年1月から商業生産および販売を開始し
ました。今回の技術レポートでは、
この新製品「スタイロ
フォームFG」についてご紹介します。
写真1 「スタイロフォームFG」
表1 「スタイロフォームFG」の特長
優れた断熱性能
・熱伝導率0.022W/m・Kを実現
(断熱性能区分最高レベルのFランク)
・押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b
に対し、
20%の断熱性能向上
スタイロフォームEXに対し、
10%の断熱
性能向上
・低吸湿性、
低吸水性
高耐圧性
・押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b
の圧縮強さ20N/cm 2を満足
安全性
・酸素指数(LO I)26%以上を満足
消防法の指定可燃物には該当せず
保管に関する規制なし
環境・地球保護
・ノンフロン
・ノンホルムアルデヒド
(F☆☆☆☆対応製品)
・4VOC基準適合
・PRTR
(化学物質排出把握管理促進法)
指定物質不使用
・マテリアルリサイクル可能
・グリーン購入法の特定調達品目適合
12 Heat & Environment
2.開発コンセプトおよび製造技術
「ス 射の2つの要素があります。各要素の熱伝導に
タイロフォーム」における熱の移動には、伝導・放
対する寄与率は、
樹脂による伝導が約10%、
気泡内に閉
じ込められた発泡剤による伝導が約60%、
さらに気泡膜
間での放射が約30%と考えられています。「スタイロ
写真2 「スタイロフォームFG」の気泡
フォームFG」の開発においては、熱伝導に寄与率の高
い発泡剤の伝導低減及び放射の低減に着目して開発
を進めました。
2.1 発泡剤
既存の「スタイロフォームEX」では、
発泡剤として可燃
性の炭化水素を主に使用しているのに対し、
「スタイロ
フォームFG」では火災危険性が少なく熱伝導率が小さ
い新規発泡剤を主に使用しています。
また、
この新規発
泡剤は最新の評価ではGWP
(地球温暖化係数)
が1未
満とされており、
地球に優しい発泡剤です。
2.2 気泡構造
写真3 「スタイロフォーム」3種品の気泡
新規発泡剤は気泡を小さくする性質を持っています。
断熱材の熱伝導率を小さくするために、
この発泡剤を多
く添加すると気泡が非常に小さくなり製品の成形が困難
となります。新規発泡剤をより多く添加し、尚且つ小さな
気泡構造で製品成形を可能にするためダウ化工独自の
技術を適用しています。
「スタイロフォームFG」は、既存製品に比べ微細な気
泡構造をコントロールすることで放射による熱伝導をより
低減しています(
。写真2、
3)
その他、
「スタイロフォームEX」
と同様に製品の寸法
安定性を損なわずに、放射による熱伝導を低減するた
めの放射低減剤技術も継承しています。
写真4 「スタイロフォームFG」の施工事例
3 . 「スタイロフォームFG」の特長について
表 熱伝導率は0.022W/m・K以下、断熱材性能区
1に「スタイロフォームFG」の特長を示しました。
分の最高レベルであるFランク
(A種フェノールフォーム
保温板1種1号および2号に相当)
を実現しました。既存
の押出法ポリスチレンフォーム保温板3種bに対して断熱
性能は20%向上しています。
この優れた断熱性能によっ
て、
ある厚さの既存製品と同等の断熱性能(熱抵抗)
と
する場合、
20%の厚さの低減が可能となります。
また、
「スタイロフォームFG」は、
既存の「スタイロフォー
ム」が持つ圧縮特性、酸素指数26%以上の難燃性、低
吸湿性、低吸水性などの優れた特長をそのまま継承し
ています。その他、
ダウ化工の製品開発コンセプトの一
つである
「地球に優しい製品作り」に一貫して取り組み、
4.まとめ
今 ご紹介しました。
回は、
新開発製品である
「スタイロフォームFG」
を
本製品は、従来の押出法ポリスチレンフォーム保温板
3種bに比べて断熱性能を20%向上させたことで断熱厚
ノンフロン・ノンホルムアルデヒド製品であり、
PRTR指定
さを低減でき、地球温暖化防止に対してより大きく貢献
さらに、材料のリサイクル利用が可能で、
グリーン購入
能が求められる冷凍倉庫など幅広い分野での採用が
対象物質も使用していません。
する製品です。一般住宅をはじめとして、
より高い断熱性
法の特定調達品目でもあります。
期待されます。
Heat & Environment 13
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