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ワインの分析 - Thermo Fisher Scientific
Application Note ワインの分析 (4) FT-NIR を用いたワインのぶどう品種によるクラス分け サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 SID 応用技術部 編集発行 : マーケティング部 TE06004 はじめに クラス分けのメソッドを作成するため、ぶどう品種や地域の異 なる赤・白各3種、計6種のワインについてスペクトルを測定 ワインの評価・鑑定には、嗅覚や味覚、視覚など感覚的な手 法が利用されていますが、近年、種々の分析機器を用いた 科学的な手法も導入されてきています。近赤外分光法(FTNIR)では、スペクトルからアルコール度数や糖分、揮発性 しました。光路長固定の石英セルを用い、試料を入れ替え ながら、各々10 回ずつ測定しました。 Key Words y FT-NIR y 近赤外 y ぶどう品種 y クラス分け 成分などが同時に定量できることが知られています1)。赤外 吸収スペクトルには、ワインに含まれる各成分の割合や分子 構造など、多様な情報 が含まれていますが、こ れらの情報の組み合わ せを利用して、定性分 析にも利用できます。こ こでは、ケモメトリックス ソフトウェアを用いてワイ ンのクラス分けを試みた 結果を報告します。 図2 に、ワインの近赤外スペクトルを示します。成分のほとん どが、赤外吸収の強い「水」であることから、各スペクトルとも 類似した形状に見えます。しかしながら、アルコール度数、 糖度、酸度など、さまざまな有機物成分の違いが、倍音振 動ピークとして異なる波数領域に現れます。各試料間での 成分の僅かな違いは、吸光度レベルで10-3 abs.程度となりま すが、FT-NIRでは10-4 abs.程度の変化でさえも精度よく検出 できるので、このように水のバックグラウンドが強いスペクトル でも、精度よくクラス分けできることが期待できます。 利き酒騎士団の館 装置と実験 ワインのスペクトル測定には、フーリエ変換赤外分光装置 NicoletTM 6700 FT-IR を用いました(図1)。光源、ビームスプ Absorbance y ワイン Sample 1 Sample 2 Sample 3 Sample 4 Sample 5 Sample 6 0.05 リッタを交換して、近赤外領域で測定を行いました。測定条 件を下記に示します。 <サンプル詳細> サンプル : 赤・白ワイン 6種 (Sample 1~6) <測定手法> 近赤外領域の透過測定, 光路長 1mm 石英セル使用 <測定条件> 分解能:8cm-1, 積算回数:32回(約20秒) CaF2 ビームスプリッタ, DTGS検出器, 白色光源 9000 8000 7000 Wavenumbers (cm-1) 6000 図2 ワインの近赤外スペクトル メソッドの作成と分類 メソッドの作成には、ケモメトリックスソフトウェア TQ AnalystTM を用いました。メソッドの作成は、次の順序で行われます。 1) クラス分けの手法を選択 (図3) 2) サンプルごとにクラスを設定(図4) 3) キャリブレーションの実行と分類(図5) 今回、スペクトルを分類するための手法として Distance Match を選択しました。Distance Match は、未知物質が複 数の標準物質に対してどの程度似ているかを、類似度で分 類する手法です。類似度は、分類された各クラス(既知物 質)のスペクトルの差分を利用して数値化できます。TQ Analystでは数値の範囲が 0~100 で、0 が最もよい一致を 図1 フーリエ変換赤外分光装置 Nicolet 6700 FT-IR 示します。 クラス分けされ ている様子が わかります 定性分析用の各種メソッドが 選択できます - Similarity match - Distance match - Discriminant analysis など TE06004 サーモフィッシャー サイエンティフィック株式会社 図3 TQ Analyst ソフトウェアのメソッド種類選択画面 サイエンティフィック インスツルメンツ事業本部 図5 分類メソッドにより クラス分けされた標準サンプル 横浜本社 045-453-9100(代表) 大阪支店 06-6863-1550(代表) クラス分けが表示されます 図4 TQ Analystソフトウェアの分類クラス設定画面 図6 クラス分けのためのスペクトル領域は、9,843~5,355cm-1 と しました。キャリブレーションの結果、図5 に見られるように、 まとめ 各ワインが良好にクラス分けされている様子がわかります。 TQ Analystで作成したメソッドを OMNICソフトウェアにリン クさせ、Sample1~6 を再び測定し、クラス分けを実施しまし た。図6 に、その実行画面を示します。 FT-NIR を用いてワインのクラス分けメソッドを作成し、分類 E-mail [email protected] クラス分けする場合の実際のソフトウェア画面 表1 に、Distance Match によるワインのクラス分け結果を示 します。各ワインは、実際のクラスと非常によく一致し、2番 を行いました。その結果、実際のクラスと非常によく一致す る結果が得られました。今回の実験では、ワインの「ぶどう 品種」でクラス分けするメソッドを作成しましたが、この限りで はなく、さまざまな指標、例えばワインの旨みや熟成などに よるクラス分けも可能になるのではないかと考えられます。 目のクラスとは明らかに区別できる、という結果が得られま した。 参考文献 1) J.Hirsch and L.Tenkl, FT-NIR Analysis of Wine, Application Note #50813, Thermo Fisher Scientific Corporation (2004). www.thermofisher.co.jp (日本) www.thermo.com (グローバル) 表1 分類メソッドを用いたクラス分類結果の一覧 サンプル 分類クラス 1 シャルドネ 2 ソーヴィニヨン・ブラン 3 リースリング 4 ピノ・ノワール 5 サンジョベーゼ 6 メルロ シャルドネ ソーヴィニヨン・ブラン リースリング ピノ・ノワール サンジョベーゼ メルロ 分類クラス からの距離 0.26 0.17 0.43 0.26 0.43 0.94 2番目に近いクラス メルロ リースリング ソーヴィニヨン・ブラン ソーヴィニヨン・ブラン シャルドネ シャルドネ ©2007 Thermo Fisher 2番目のクラス からの距離 5.24 9.44 9.70 4.81 7.30 3.52 Scientific Inc. All rights reserved. All trademarks are the property of Thermo Fisher Scientific Inc. and its subsidiaries. Specification, terms and pricing are subject to change. Not all products are available in all countries. Please consult your local sales representative for details.