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療養者・家族の願望を叶えるために
◆ シンポジウム ◆ 療養者 0家 族 の願望 を叶え るために 在宅看護研究 セ ンター 村 松 静 課外で の訪間看護 ボランテ ィアを 3年 続 けた私 は, 在宅看護 を研究的に実践 してみたいと思 うようにな っ ていま した。 そ して設立 したのが在宅看護研究 センター です。 セ ンターを設立 して 7年 が経過 しま した。今 日 子 だけの生活 または一人暮 らしの増加④胃管 。尿留置 カ テーテル ・カニ ュー レ ・IVH・ PTCDoCAPD・ レス ピレー ターの装着等,高 度医療 の絡み⑤在宅での 治療継続希望者 の増加⑥在宅死希望者 の増加。 は, これ までの私 の体験 を通 して,社 会 が求 め る看護 私が実施 した研究 の結果 をみます と,在 宅で終末期 の専門性 は,果 た してどのような ところに潜んでいる の患者を抱えた家族 は,患 者 の容態 の急変や悪化を目 と思われるかについて,私 個人 の考えを述 べ させてい のあた りに したとき,全 員が危機 に陥 っています。 さ らに介護を続 ける体力がない,病 状 に即 したケアがで ただ きます。 私 は20数年間,臨 床 そ して教育 と一度 も休 まずに勤 きな い等が家族介護者 の直面す ることの多 い危機であ 務 してきました。 その過程 においてとて も印象 に残 っ ている場面,患 者 ・家族 の声があ ります。私 がボラン 切だ った と答えている家族介護者 の一致意見 は次 の 3 ることがわか りま した。そ して最後 の看取 りの場 が適 テ ィアを していた頃の ことです。 ある42歳の男 の患者 点で した。看護婦 は,『救 いを求めたい と思 って い る さんがお っしゃいま した。「 私 は 1年 前,胃 癌 を宣 告 とき,例 え夜間で もす ぐ助 けて くれ た』 『救 いを求 め され手術 しま した。 その時 は病名を告知 されて良か っ たいと思 っていることをその場 で とりあげて くれた』 たと思 っていま した。手術 した時 は看護婦 も医師 も私 『 最終的には自分で解決で きるように援助 して くれた』 。 のそばに うるさいほど来 て くれま した。で も,私 の下 看護婦 は,患 者 の肉体や人格か ら切 り離 せない貴重 半身 が ま った く動 かな くな った今、医師は私 の前を素 通 りし,看 護婦 も声 はかけて くれますが, も う他の方 な部分へかかわ ってお ります。 この点 は医師や法律家, あるいは聖職者等,専 門職 と呼 ばれ る方 たちと一致 し を向いている。 こんなんだった ら告知なんかされなきゃ ていると思われます。 しか し実際 には,看 護問題 の解 良か った。 それに,医 師 も看護婦 も今だ った ら家へ帰 決方法やその過程 において,素 人ではで きない判断内 れ るか ら帰 りなさいとい う。私 だ って帰 りたいですよ。 容 までが何 らか の形 で明確 に打 ち出され,そ れが看護 で もまった く動 けない私 が帰 った ら,い ったい誰 が面 の結果 に現れて いると言えるで しょうか。私 は,そ れ 倒をみて くれるんですか。結局,妻 や母や子供たちが はまだ言 い難 いことのよ うに思 うのです。 「看護 と介 看 なければな らな い じゃないですか。 その大変 さを考 護 はどこが違 うの ?」 よ く耳 にする言葉 です。 えた ら,私 は帰 りた いって言 えないですよ。早 く私 の また,看 護教育 は学生やスタッフを 自分 たちで養成 し,そ の質 を維持 ・向上 させ,質 を保証す るとい う責 ような者 で も家で療養で きるように して下 さい」。 悩 み悩 んだ末,私 は在宅看護研究 セ ンターを設立 し 任を負 ってい るかどうか という点 について も,ま だ言 ま した。世 の中か ら看護を評価 してもらうために,買 っ い切 ることがで きな いよ うに思 うのです。残念 なが ら, ていただ ける看護をめざ して…。昭和61年 4月 1日 ∼ まだまだ医師におぶ さっている部分 が多 いので はない 平成 3年 3月 31日までの延訪 問回数 6,744回, 緊急訪 で しょうか。 間300回, 6年 の間 に在宅療養者 が求 め る もの は明 ら さらに,看 護 という役割に見合 った報酬 が得 られて かに変化 して来 ま した。①高齢者が高齢者を看 る②介 いないとい う実情があると思 うのです。老人保健法で 護や家事 の経験 がない男性 が女性 を看 る③高齢者二人 は, 1回 の訪間料 が どうにか7,000円を越えま したが , 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 NQ 4 1993 療養者 ・家族 の願望を叶えるために 診療報酬点数では24時間 の基本看護料 がや っと3,000 じ目線で話 して欲 しい」「 単 なる技術者 で あ って は困 円を越えたところです。素人ではで きない部分を含め 主治医 との コンタク トを直接 家族 に代 わ っ ります」「 てすべ きことを きちん と行 い,質 が保証 で きて初めて て密 にとって欲 しい」「 家族 に対 し, で きるだ け詳 し 社会か らその専門性 を認 め られ,妥 当な報酬が得 られ い説明を して下 さい」「 最後 の最後 まで病 む者 の命 を るのです。 その結果 において初 めて,看 護 の専門家 が 守 る努力を して欲 しいのです」「 苦痛 を とって も らえ 誕生 したといえることになるのではないで しょうか。 たのだという認識を家族 が もてるよ うに努力 してほ し そ して,看 護 の専門性 はこの辺 りに潜 んでいるよ うに いのです」「 普通 の看護婦ではな く,本 当 の看護婦 さ んにや って もらいた いのです」 …。 私 には思えるのです。 セ ンターを設立 して 7年 目,私 の耳 には多 くの言葉 在宅療養を決意 される方々は,私 たち看護婦 に正 に が残 ってお ります。「 私 が 8年 間や って きた介護 を看 看護 の専門性 を求めてい るのです。看護婦 として 自 ら 護 の専門家 の 日で評価 して ください」 「介護 で はな い の資質を高 める上で欠かす ことのできないもの,そ れ 看護 ってすば らしいですね」「 必要 な時 に,必 要 な こ は自らの考 え と実践を多 くの前 に提示 し評価を受 ける とを,必 要最小限行 って欲 しいのです。必要以上 に言 われた り, された りす ると私 たちはパニ ックになって こと,そ して他者の意見を耳 に し,考 えを深めるとと しまいます」「 私 たちの話を黙 って聞 いて欲 しい」「同 身を持 って体験 しているのです。 もに,視 野 を広めることが大 切であることを私 は今, 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 NQ 4 1993 ◆ シンポジウム◆ 老 人 の 入 院 ・在 宅 ケ ア を通 して 島 田 妙 子 私 は,教 育や研究に直接たず さわ ってお りませんの 責任 であ り,そ の時間か ら解放 され ると,気 にな って で, 日常 の看護業務 の中か ら,体 験 した ことを述 べて も自由です。 自分 の受け持 ちではないが気 になる患者 み ます。看護婦 と して22年経過 しま したが, こ の 4∼ があると,意 見 を述 べ た り (口を挟 んだ り)行 動を起 5年 は,本 当の看護婦 を した という実感 を持 ってお り こした り (手を出 した り)す ることにな ります。結果 ます。私 の所属 している東京 白十字病院 は,社 会福祉 としては, 自分 の受 け持 ち患者 の責任 が中途半端 にな リチーム ヮー クを乱す ことにな ります。 法人 の病院で昔 は結核療養所 で した。現在 は,ベ ッド 数 が200床足 らずの小 さな一般内科病院 です。 一 般 内 は60歳を越えています。平均年齢 は60歳を超 してい ま 看護 の研究 が進み,学 問 として体系づ けが出来 つつ ある一方 で現実 の職場 の中では,個 としての看護婦 が 患者を トー タル に責任を持 って看 ることが少 な く,問 すが,中 学生か ら100歳の誕生 日を迎 え る人 まで年齢 題が発生す ると主治医の指示が優先す る事 もす くな く 科病院 ですか ら, ご他聞 に もれず入院患者 の平均年齢 の幅 は大 きくな ってい ます。小 さい病院 ですか ら小回 ありません。看護婦 が判断 して,行 動す ることに責任 りが きくので,生 き生 き働 ける場所ではないかと思 っ が持 てる専門職 と しての実力 と医療の中の コンセ ンサ ています。 スが欲 しい と思 います。 最近問題 になっていることは,看 護婦 の応募 は多 い のですが,夜 は働 きた くない昼間だけの勤務 を希望す る人が多 いことです。 そこで,私 まで も月数回 の夜勤 次 に,『 患者 の個別性 に関わ る』 とい うことで す。 私事 にな りますが,父 (79歳)が ,癌 末期 で入院 しま した。79歳は年齢的 には高齢者 ・老人の部類 に入 りま をする事 にな ります。管理者 の立場 にあ って,一 看護 すが,現 職 の人 で,老 人扱 い されるのを嫌 い,家 では 婦 の業務 に徹 してみる機会 は 『 看護』を再発見す る場 家長 として一人前 の生活 を していま した。 入 院 して にな り,楽 しみで もあります。 さて,在 宅 の話 は,村 373-5度 の微熱 がつづ き下半身 が浮腫 んでだ るいだ 松先生 が情熱 を注 いで詳 しく話 されま したので重複 を るいと訴 え,浮 腫みが取れ ると,腹 水が溜 まりつ らい 避 けたいと思 います。 思 いを していま した。 ある時,看 護婦に 「おまえ,看 入院患者 の世話 を して在宅 の患者 の世話 に も関わ っ て,両 方 の分野 に片足 づついれて いろい ろお もしろい ことに気付 きま した。 一番気 にな ったのは,『 看護婦 の専門職 としての責 任』 と言 う事です。在宅の場合,訪 問看護婦 は一人で 護婦だろ看護婦だ った ら看護婦 しろ,医 者 の真似 を し な くて も言 い」 と怒鳴 っていま した。受 け持 ちナース は検温の後で 「 頭 いた くないですか,お 腹 はどうです か」 と質問 して います。患者 は 「みて判 らんか,み て 判 らんやつ に言 って もわか らん」 とい らい らして い ま 複数 の患者を自分の患者 として受 け持ち,受 け持 ち患 者 の看護 プロセスに付 いて責任 を持 ちます。何 か問題 す。看護婦 は,腹 水 に関する看護上 の情報 をえ るため に当然 の行為 として,聴 診器 を腹部 にあてると,老 人 が発生 した場合 その看護婦 の判断が求 め られ,計 画 が 患者か ら前述の ことばが 出たので した。癌末期 の症状 実施 されます。病棟 の看護婦 の場合,看 護婦 の責任 の の解明 (?)に 熱心 なあまり患者 のその人に焦点が合 っ 大半 を占めているのは, 8時 間 の勤務時間内に課せ ら れた責任が中心 になっています。一人 の患者を トー タ ていなか ったので しょう。 『 看護婦 だ った ら看護婦 し ルに私 が責任 を持 つ ことは少 ないように思 い ます。受 て もショックな言葉 で した。 け持 ちの患者 はあるのですが,今 日この勤務時間内 の ろ』 『医者 の真似を しな くて もいい』 これは私 にとっ 患者 の個別性 に関わ る場合,高 齢者 とか老人 はどこ 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 1993 老人 の入院 ・在宅ケアを通 して で線 を引 くので しょうか。 「キ ンさん 。ギ ンさん」が 患者 の経過 にふれたり,身 体 を支えて もらうなど,家 100歳で元気 でテ レビに出演 します と老人 に も個別性 族 と共 同作業す ることによって,家 族 が参加 で きる場 があるよ うに思 います。70歳か ら高 齢者 と して も100 づ くりがで きます。家族 も知 らず知 らずの うちに看護 歳 までには30年あ ります。30年は,人 が生 まれて30歳 計画 に参加 し,役 割 が持 てるようにな ります。退院 に 結婚 して人の親 になるほどの歳月です。 むけて,家 族 を呼び出 し改めて指導 をす るや り方 は, それを70歳以上 はひっくるめて老人 として 「 老人だ か ら」 という前提 で関われ るで しょうか。 家族を緊張 させ拒否 につながることにもな ります。 一方 で,看 護婦側 にも色 々なタイプが あるよ うに思 個別性 とは,そ の生 きて きた時代か ら生 じるその人 い ます。治療 ・処置 の介助が得意 な人 と治療 。処置 は の生 きざまに,看 護をどう反映 させ るということでは 不得手だが,生 活援助に熱心 な人 と大 きく分 け られま す。前者 は能 率 よ くテキパキとこな します し,後 者 は ないで しょうか。 病院では,夜 9時 にな ると消灯 され,就 寝する こと 患者か ら評価 されて も同僚か らは, グズ グズ している が 日課です。眠れずにベ ッ トで ゴソゴソしている状況 ノロマな人 にな ります。 が続 くと,規 律を守 らない問題患者 にな ります。入院 以前 の問題 と して,患 者 にとってス トレスにな ります。 老人 に状況 を正 しく認知 して健康回復 に行動 を起 こ させ るための働 きか けは,生 活援助 を通 して治療 ・処 置が実践で きるチー ムヮー クが必要 で しょう。同僚 の 個別性 は,そ の人 の生活時間を承知 して,夜 中 ゴソゴ 得手 ・不得手 を戦略 に前向 きに考えれば,お 互 いの得 ソしていて も,彼 が順応す るまでは彼のつ らさや努力 手 が患者 のケアに貢献で きると思 います。 前 の生活 と時間がかけはなれている病院生活 は,治 療 を受 け入れて,待 って あげることはで きないので しょ 次 に,在 宅では,私 の患者 として看護婦 の責任 の所 後方病院 と して私の病 院の最近 の問題 は,40∼ 60歳 在 がはっきりしています。病棟での看護 で,主 治医 の ヽ になると,一 看護婦 の責 と 指示によって動 くことが中′ の単身男性 の脳卒中後遺症 の患者が多 くな ったことで 任 の所在 は薄 くな ります。 日勤か ら夜勤 に申 し送 った す。一 次病院で救急期を終 り,紹 介 されて転入院 され か ら責任 は移動 して い く。 うか。 る方が多 い当院で は,必 然的 に治療 とは別 に,患 者 そ 在宅 であれ臨床であれ 「 看護 の専門性」を追求す る の人 の個別性 に直接関わ っていかな ければ,退 院後 の な ら,患 者に主治医があるように,看 護婦 の私 は,患 生活 はないのです。 者 に 「わた しが,あ なたの看護婦 です」 と広言 し,入 看護婦 は医学知識や技術だけでな く,社 会学 。心理 院 か ら退院まで,退 院後 の生活 の 自立 にむけて責任 が 学 などを加え た,総 合的 に看 るゼネラリス トとしての 持 て ることではないで しょうか。そ うな りたいと思 い 立場 も,必 要 にな っています。 ます。 次 に,家 族 の存在 も大 きな役割 を持 ってい ます。基 最近病棟で患者 さんか ら,「 私 の先生 は毎 日顔をの 準看護 では,家 族 に付添 いを求 めているわけではあ り ぞかせて くれ るけれ ど,私 の担当の看護婦 さんは誰 で ませんが,家 族 がかかわることが結果 と して患者 の表 すか。」 と質問 されます。患者 の多 くは,入 院時 に病 歴を聴取 され,オ リエンテー シ ョンを受けたナースを, 情 をやわ らげ,可 能性を前進 させ ることにな り,患 者 の個別性 に合 せやす く,患 者 は大 きく変化 します。 こ “ "看 れは,家 族 に や らせる 護 をす るので はな く我 々 ー 看護 チ ムに家族 を積極的 に巻 き込んで,一 緒 にかか 受 け持 ちナー スと思 っているようです。 わ ることによって,退 院後 の在宅生活へつな げられま 棟全体 の患者 をみながらもそれぞれが自分 の患者を持 っ す。たまたま面会時に,処 置をす ることにな った場合 ていることが,結 果 として幅 の広 い看護婦 に成長 して とか,時 には面会時 に合わせて処 置 をす るとい う時, い くことではないか と思 います。 そ うあ っては しいと 家族を外 に出すので はな く,家 族 に同席 して もらって 願 っています。 私 の看護婦 さんはすば らしいと患者同志で 自慢 しあ う看護婦が,臨 床 の中に育 ってほ しいと思 い ます。病 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 1993 ◆ シンポジウム ◆ 高齢化社会 が求 め る看護 の専門性 ― 専門性発揮 のための課題 一 継続看護 の研究実践 の立場 か ら 埼玉県立衛生短期大学 大河原 千 鶴子 は じめに∼病院 か らみた継続看護 の必要性 へのと り 代別 と性別 でみ ると,40代 か ら60代までは在宅に女性 が多 く,高 齢者 は男性 が在宅を 占めている。他施設 は, 組み 最近 は,入 院患者 も高齢化 がめだち,特 に脳神経系 40代,50代 の男性 が多 く,60代 か らは女性が増加 して 疾患患者 のよ うに,障 害を伴 った まま退院を余儀な く いる。 つ まり50代までの女性 は,状 況がよい こともあ され,ひ き続 き介護を要する場合が少な くない。従 っ て患者 。家族 に対 し継続的な看護 の必要性が増大 して るが,独 居 の 1例 を除 き在宅であるのに対 し,男 性 は 状況がよ くて も他施設 へ移 っているとい うことになる。 いる。 その理 由 として リハ ビ リなど積極的治療を求める場合 とし,生 活経済的 に一家 の柱 となっている世代 の男性 そ こで ここ数年来,「病院か らみた継続看護 の必要 性」 を課題 に して,看 護連絡票 など記録 の分析 や実践 した事例の検討 により,(1)患者 ・家族 の退院時状況 な が倒れた場合,妻 が代わ りに働 くなどにより在宅ケア らびに在宅後 の変化,(21ケアの場選択に関する要因, この ことに関 して在宅 と他施設を,退 院時 のADL 6)継続看護 の必要性判断,に )継続看護 に必要 な看護指 (日常生活動作)の 状況 でみた ものが, 表 1で あ る。 導 と介護者の現状認知およびケア方法 の取得,G)在 宅 移動能力別 に 5段 階 に分類 し,年 齢別,性 別 について ケア継続後 の訪間 による指導 と支援 などについて,検 比較 した。在宅 は,起 立可以上が658%で あ り,他 施 討を累積 し共同研究 として学会報告を重ねてきたので, 設 ではよ り介護を要す る 「 寝 たきり」お よび 「 寝たり その主要 な部分 を資料 によ り提示 しなが ら,認 識をあ 起 きた り」 が633%を 占め,明 らかに有意な差 (P< らたに シンポジウムのね らいについて考えてみたい。 001)が 認 め られた。 ここで も注 目で きるのは,退 院 1.退 院後 ケアの場選択 に関連す る要因について 時 の移動能力 のみで は,退 院後 の方向制 が説明で きな を困難 に している。 患者 の退院後に看護婦が継続看護を要す ると判断 し い群があることである。 それは,在 宅における 「 寝た て も,実 際の退院先 は,患 者本人 の状態や受 け入れ側 きり」お よび 「 寝た り起 きた り」 の12例と,施 設 にみ の家族状況により,退 院即家庭 に戻 るとい うことが, スムー ズに行 かないケー スが多 くな っている。 在 である。 られる 「 室内歩行可」および 「 室外歩行可」13例の存 最初 に紹介するのは,本 学看護学科 の実習病院であ これ らの結果 は,患 者 を受 け入れ介護 を行 な う家族 る浦和市内総合病院に,入 院 した脳神経系疾患患者を 状況等 に関連 があ り,家 族形態,主 な介護者,介 護者 対象 として,退 院時 に継続看護 が必要 と判断 された84 例 の うち,退 院後 に在宅 ケアが継続 された35例 (417 の健康状態 の 3点 について介護力 を しらべ たところ, 何 れ も施設 ケースの方が悪い傾向を示 していた。 なお %)と ,直 接他施設 に移 った49例 (583%)に 関 し, 在宅 ケアを支 える介護力 に影響を及ぼす諸条件の うち, 本人お よび家族 の状況を比較検討す ることにより,ケ 家族受入れ態勢,介 護代替者 の有無,近 隣 との交流 に アの場 の選択 に関連す る要因 を探 ることを,研 究 目的 ついて比較 した結果,何 れ も在宅 の方 が際立 って良好 とした ものである。 であった。 結果 について,在 宅,他 施設 の特徴的 なところを説 次 に在宅 ケアが継続 された35例の うち,追 跡 で きた 明す ると,年 代別 では40代な らびに70代か ら80代と高 34例を対象 として検討 した結果 の中か ら,在 宅 ケア継 続後 に死亡 したケース13例について,退 院時ADLと 齢化す るに従 い,他 施設が多 くな っている。 さらに年 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 Nα 4 1993 高齢化社会 が求 める看護の専門性 ― 専門性発揮 のための課題 ― 表 l ADLの 宅 在 寝たきり 年齢 満 歳 0未 4 寝た り 起 立 可 起 きたり 状況 (移動能力) n=35 室内 歩行可 ●男○女 設 施 室外 歩行可 寝た り 起 立 可 起 きた り 寝たきり n=49 室内 歩行可 室外 歩行可 ●● ● ○ ● 40歳代 50歳代 ○○ ● ○○○ ●● ○ ●● ○ ●●●● ●●●● 0 ● 000 ● ● 80歳代 計 7 5 12 ●● ●● ● ●●● ○ ○ ○ ●●● ● ●● ● ○ ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ●〇 〇 ∩ ○ ● ○ ●●● 70歳代 ● ○ ● ○ ● ○ 60歳代 ○ ○ ● ● ●●● ● ● 8 ● 11 5 2 その他 n:48 脳 神経系 n:35 系 ﹁脳神 経 [その 他 脚 ★P < 0 1 0 % 40 % 40 % 40 % 40 30 30 30 30 30 20 20 20 20 20 10 10 10 10 10 0 0 0 0 % 40 医 療 的 管 理 リ ビ ハ リ 生 活 十旨 導 家 族 支 援 社 そ 月歯 の 神 他 経 系 会資源の活用その他 排泄管理 運動訓練 食事、栄養 心理的支援 イ ンス リン自己管理 家事動作訓練 職業 リハ ビリ 肺炎、床ずれ予防 家族関係調節 の活用 運 動 介護方法確認 家屋構造 の改善 呼吸管理 ADL継 清 潔 家族 の健康管理 経済的問題 経管栄養 寝たきり、呆け予防 血圧管理 医療 。服薬継続 発語訓練 創部処置 続拡大 排 泄 医療、福祉制度 医療機関 との連係 地域社会 との交流 症状観察,異 状発見 図 1 退 院時必要 な援助 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 高齢化社会 が求 める看護 の専門性 ― 専門性発揮 のための課題 ― 表 2 介 護者 の認識 の変化 ∼ 在宅ケアの見込みがたつ まで∼ 入 院 時 患者 の状態,看 護婦 の働 きかけ 妻 の反応,認 知状況 意識 レベルが低下 し,刺 激 しな 妻 と娘 が面会時,ベ ッ ド いと眠 って しまう。 ICUに サ イ ドで 呼 びか けて は お いて救命ケア。 「この ままで は死 んで し まうので は」 と涙 ぐむ。 10日 目 病状安定 し4人 部屋へ。昼間妻 の付添を認 め看護指導 を行 う。 患者 のそばに居 たいと妻 が希望。看護婦 と共 に食 事介助,清 拭,良 肢位 の 保持。 20日 目 前 日発熱, 夕 方解熱。 この状態で家庭 で面倒を 患者 は 「 家 に帰 りたい」 という。 みる自信 は全 く無 いと。 食事を自分で摂取できるのは 2, 妻 に疲 れみ られ休むよう 3口 ,表 情 は明る くなる。 いったが,病 院に居 たい。 尿器操作 は 自分で可能 だが妻 に 元気 になって きた ことを 依存, 自力 でするよう指導。 喜ぶ。 昼食は車椅子 に腰掛けて摂取す 看護婦が幾回か共 に行 い るように仕向け妻 に教 える。 妻 は移動介助 が上達。 つか ま り立 ち 2 , 3 分 可能。 ポー タブル便器へ の移動介助 を 食事,清 拭,排 泄 の介助 40日 目 2月 目 2月 10日 2月 20日 が妻 1人 で可能 となる。 教える。 4月 目 下肢 の振 り出 し,健 側 での支 え 歩 くことは無理 と認識 し 起坐保持が困難。 家庭 で面倒 をみたい。介 護 の見込みがついたと。 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 M 4 1993 高齢化社会が求 める看護 の専門性 在宅期間 につ いて説明す る。 ADLレ ベルが起立可以 ―専門性発揮 のための課題 ― 下 と低 い場合, 7例 中 6例 が 1年 以内の死亡 とな って 家族 は妻 と次女 の 3人 暮 し,主 たる介護者 は,65歳 で 健康,世 話ず きでテキパ キ働 く妻 であ り,嫁 いだ娘 も お り,室 内および室外歩行可 の場合 は, 6例 中 5例 が 含 めて交代で代替可能であ った。 1年 以上 の在宅後 に死亡 して い る。例外 はあるものの 医師 による予後 の見込みは 「CT上 か ら歩行の 自立 ベルが低 い場合 に,在 宅短期間で死亡 は望めず,起 座,起 立 の状態で退院」 となっていた。 概 してADLレ してお り,両 者 は関連を有 している。 そ こで看護婦 は 「 家庭で受 け入れるためには,介 護 に 以上,主 なことを提示 したが,退 院後在宅 ケアが次 の施設へ の入所 かを,左 右す る要因 としては,患 者本 熟練を要する」 と判断 した。 そこに目的をおいて危機 人 の移動能力や年代,性 別等をあげる ことがで きる。 した時点 で,食 事介助 および全身清拭を妻 と共 に実施 しか しそれ以上 に影響 が大 きいの は,家 族 の受入れ態 しなが ら,指 導 を開始 している。 勢 および介護支援体制 であることがわか る。 病状 に即 したケア指導視点の重点順序 は,食 事か ら 始 まり清潔,排 泄,移 動であ った。排泄 は,尿 道 バ ル 2.継 続 ケア必要性 の判断理 由について脳神経系疾 患 ケースとその他 のケースの比較 対象 は老人 ・成人 ケース83例で,そ の内訳をみると, 脳神経系以外 (その他)48例 ,脳 神経系35例である。 的状況を脱 し,病 状が安定 した10日目に 4人 部屋 に移 ンカテーテル抜去後,約 1週 間で失禁 がな くな って妻 が介助で きるようにな り,間 もな く患者 自身 も尿器操 脳神経系患者 において問題 となった退 院時移動能力 作 が可能 とな った。 このケースの指導過程で,専 門職 としての看護婦 が は,83例 全体で,室 内,外 あわせ ると約 7割 が歩行可 意図 しなければな らないのは,病 状 の改善 と共 に患者 能である。 それを年齢別 にみると,高 齢化す るに従 い の 自立を促 し, 自信 を回復 させ ることであ った。 とこ 減少傾向であ り,疾 患別ではその他約 8割 ,脳 神経系 約 6割 で,そ の他 は脳神経系 に比べ移動能力 の問題 が ろが妻がまめで世話ずきなこともあ り,患 者 が ぎこち 少 ない。 図 1は 退院時継続 ケア必要性 の判断理由を,そ の内 な くやるのを,見 ていられないと自分がやって しまい, 患者が依存的にな りやすい傾向がみられた。患者のペー 容 か ら5群 に分け検討 を行 な った結果 である。 その他 スをよ く観 て,手 助 けにとどめるよう再三指導 してい る。一方長年連れ添 って きた妻 への依存 によ り,精 神 が多 いのは,医 療管理お よび生活指導 といった本人 に 的安定を得て 自分 ががんば りを示す ことがみ られるこ 対す る援助内容 であ り,介 護を要す る度合 の高 い脳神 とか ら,看 護婦 としては,そ れを認 めた上で患者 のや 経系 は,家 族支援お よび社会資源 の活用がその他を上 る気 を引 き出 し,支 持す るよう働 きかける必要がある。 まわ っている。 介護 にあたった妻 の認識 の変化をみると,表 2の 如 さらに観察期間 5年 間 の生存例,死 亡例 について両 者を比較 してみたところ,脳 神経系 のケースは,そ の いたが,妻 は 「家庭 で面倒 をみ る自信 は全 くな い」 と く入院20日目に,忠 者は 「 家 に帰 りたい」 と希望 して 他 のケースよ り在宅ケア期間が長期であることがわかっ 言 って言 っていた。 しか し移動 の介助 までで きるよ う た。 にな った 4か 月 目には,「歩 くことは無理 か も知 れ な 3.看 護 の専門性 を求 め られ ること い」 と現状を認知 した上で,「介護 の見込みがついた, 以上 により在宅を選んだ特 に高齢な脳神経系疾患ケー 家庭 でみたい」 と積極的 な介護意欲を示 し,在 宅 ケア ヘ と態度変容を して いることがわかる。 スの場合,可 能 なか ぎり退院までに室内歩行 までAD Lの 拡大 が望 まれる。 また患者 の入院中介護者 に対す 5.看 護 の専門性 を求 め られ ること る徹底 した看護指導が必要であ り,在 宅ケア移行後は, 継続訪間による重点的な指導 ・支援が重要である。 以上みて きたように, この事例 の場合,入 院当初 に 4.退 院 に向けての患者 。家族へ の看護指導 妻 か ら希望があ った こと もあり,長 期 にわたって指導 を行 なったが,医 師 の診断だけでな く,患 者 ・家族側 ここで は具体的な 1事 例 として,脳 神経系 の病棟 に に立 った看護 の視点 に基づ く,看 護婦 としての判断 を 入院 した77歳の男性 をとりあげる。入院時 の概要 は, 意識 レベルの低下や麻痺 など脳神経症状を伴 い, 日常 磨 くことが重要 である。 またケア方法の指導 にあた っ 生活動作 のほとんどに介護 が必要 という状態であった。 と的確で優れた看護技術を示 しつつ,順 序立 てて介護 ては,高 齢者 の特性 を8、まえた対応,適 切 な状況判断 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 高齢化社会 が求める看護 の専門性 ― 専門性発揮 のための課題 ― 表 3 患 者お よび介護 の概要 case 年 ・性 疾 患 名 心筋梗塞 右脳梗塞 1 退 院 時 の 状 況 家 自力体位変換不可能 仙骨部褥創 夜 間せん妄 バ ルー ンカデーテル挿入 女性 介 護 状 況 日常生活全面介護 主 な介護者 :長男夫婦 介護代替者 あ り 日常生活全面介護 糖尿病 成 (入院期間 81日) 女性 84,打 構 寝 たきり 左 半身麻痺 84,′ 小脳出血 族 4世 代 7人 家族 (入院期間 21日) 日常生活全面介護 │ 寝 たきり 主な介護者 :嫁 自力体位変換可能 バ ルー ンカテーテル挿入 / □ □ ′ ヽ 介護代替者 な し \ :主 な介護者 日常生活全面介護 3世 代 5人 家族 表 4 患 者 および介護状況 の変化 Case l 家族 の介護状況 心理の変化 退院時 本人 の意志不明 だが家族 は入院の 継続を希望。 介護 の負担が重 く, 家 族 の健康問 題か らしかるべ き病院に入院 させる かと迷 う。 2週 間 介護者は 1 人 , 直 接困る事 はない が何 かあったらと不安。 lM後 夜騒がれ るので他施設 へ と思 った が, ようや く介護 の 目安がついて き た。 lM後 介護代替え予定 の義妹が全 く来 な い。介護疲れ 2M後 在宅で看 ることが生活 のペ ースに とけこんで,介 護 にも距離がおける ようになった。 2 2週 間 t 3M t 4M後 介護 の不安 がな くな り,ど う看 て い くかとい う点が分か り始 めた。余 裕がみ られる。 ・介護代替者 (ケースのい とこ,孫 ) の協力 ・主たる介護者が旅行に出かける。 4M後 45M後 5 5Nrl後 6M後 この 1年 は私が看 ようと思 うと強 調。 ぜひまた来 て下 さいと訪間 に対 する受入れが積極的になる。 病状現状維持 のため長期戦 の覚悟 で取 り組みたい。夫, 息 子が直接介 護 に手を出さな くて も, 心 理的支え 近隣交流は良 い。 訪問時具体的指導 は助か り, 励 ま しとな った。 今時点で出来 ることは してあげた い。 これ以上 の悪化を避けるために, 最大限の努力 を している。 日本看護研究学会雑誌 V01 16 No 4 1998 ↑ 一 本人 の 「畳 の上で死 にたい」 とい う希望をかなえるため自宅で面倒を 見る ことに した。 退院時 訪問看護者 の かかわり 在宅経過 本人 の身体 状況 の変化 家族 の介護状況 心理の変化 訪問看護者 の かかわり 本人 の身体 状況 の変化 在宅経過 5 患 者 および介護状況 の変化 Case 2 表 高齢化社会が求 める看護 の専門性 ―専門性発揮 のための課題 一 者 に教え,手 助 けす ることによって,現 状認知 と方法 が身 につ き介護意欲 へ と繋が り,在 宅ケアヘ の準備 が 利用 をすすめ,保 健婦 との連携 により,往 診医をさが で きると考え られ る。 その結果介護 の 目安 がつ き, 2か 月頃か ら徐 々に 4か 6.在 宅ケア継続後訪間による看護指導 と支援 につ いて ここで紹介す る 2つ の事例 (ケース)は ,両 者共84 し,随 時家族 か らの電話相談を受 け助言を行 な った。 月頃 までには,患 者を とり込んだ生 活 に'1れ,介 護 の ペースをつかみ余裕が出てきて, 6か 月経過後 は,積 極的 な介護 が行 なえるようにな った。 歳 の女性で いわゆる寝た きり老人である。 このよ うな ケースは,最 初 に紹介 した在宅 と他施設 の比較では, 入院 の看護指導が十分 でな く,在 宅 ケアに消極的で あ ったケース 2の 場合,訪 間を継続 し指導 。支援をす すべ て他施設移行 であったが,そ の後 のケースであ り るうちに, 4∼ 5か 月頃 には介護 に対す る自覚が向上 在宅 ケァに継続 して いる。 し,訪 間に対す る受入れが積極的 にな り,長 期戦 の覚 退院後 2週 目か ら定期的な訪間により,患 者 の状態 悟 で取 り組 みたいというようにな った。 その影 には夫 および家族 による介護 の実態を,継 続的に明 らかにす ると共 に, どの次期 にどのような指導 ・支援 が重要で や息子たちの励 ま し,近 隣か らの支えがあ った ことは あるかを,把 握する ことを 目的 として検討 したもので ある。 患者および介護 の概要 は表 3,そ の変化 と訪 間看護 婦 のかかわ りは,表 4, 5に 示 した通 りである。 在宅ケ アの重要 な要素 である家族 の介護状況 と心理 見逃 せない。 図 2は ,初 回お よび 6か 月後 の訪間時評価 である。 紹介 した 2つ のケースは,84歳 とい う高齢で,性 別, 退院時 の移動能力 (寝たきり)は 共通 している。家族 の受 け入れ態勢,介 護状況,看 護代替者 の有無,在 宅 ケアに対する考 え方,患 者 と介護者 との関係,入 院中 の変化をまとめると,入 院中 の看護指導 によ り,当 初 の看護指導など要因,条 件 に相違 があった。 しか し通 か ら在宅 ケアに積極的であったケー ス 1の 場合で も, 院後早期 の継続的 な訪問看護 により,患 者 。家族 の支 援を行 な った結果,在 宅 ケアに一応 の見通 しがついた。 在宅 1か 月頃までは,患 者 の昼夜逆転,夜 間せん妄 な どに家中が振 りまわされ,介 護 の負担が重 く再入院 さ 7.看 護 の専門性発揮 の課題 せ るか と迷 っていた。訪間により対応方法 について共 に考え,支 援す ると共 に入 浴 サー ビス,貸 しベ ッ ドの 以上 の検討 か ら次 の ことが考 え られる。 (CaSe. 1)入 院中 の看護指導 が徹底 された場合は,介 護者 (CaSe. 2) 1) 身体的状況 身体的状況 精神的 生 活 状況 状 況 社会的状況 介護意欲 社会的状況 介護意欲 図 2 在 宅ケア継続後 の評価 日本看護研究学会雑誌 V o l . 1 6 N Q 4 高齢化社会 が求 める看護 の専門性 ― 専門性発揮 のための課題 ― によ りか な り有効 に活用 されるが,予 期 せぬ変化 には 対応 しきれず,医 療および看護 の専門的 な支援 が必要 となる。 2)介 護者 が実際 に行 な っていることを看護 が果 た す役割 は大 きいと思われ る。 3)高 齢者 が療養環境 に適応す るまで,お よび介護 者 がケー スをとり込んだ生活 ペー スになれ,介 護 の覚 悟がで きるまでには 2∼ 6か 月近 くかか り,そ の間 の 重点的な指導 ・支援 が大切 で,そ の後 の在宅ケアの方 向 に影響 を及ぼす。 4)直 接的 な介護援助 のみな らず,心 理的な支 え, 励 ま しは在宅 ケアを継続す る上で重要 である。 5)在 宅ケアに医療が継続 されなければならない叱 適切 な家庭医 の確保が困難 な場合 があ り,訪 問看護 に よる支援 はより肝要 となる。 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 NQ 2 1993 ◆ シンポジウム◆ 特別養護老人 ホームにおける看護機能 を探 ることか ら 千葉大学看護学部看護実践研究 セ ンター 伸 吉 田 近年,新 設 ・増設 のラ ッシュが続 いている特別養護 老人 ホー ムには高齢社会 を目前 に した老人施設 ケアの 柱 として,又 地域在宅ケア支援 の資源 として,熱 い期 待 が寄 せ られて いる。 また開設 より永 くて20年そ こそ この若 い施設 に於 ける多職種協働 の試みは高齢社会 に おける保健 。医療 ・福祉 ケアの在 り方,看 護職 の果 た すべ き役割や他職種 との連携 のひな型で もある。今回 な死 へ の看護 を も含む ことになる。 他 のケア領域 は因子構成項 目の吟味によって身 の “ ", “ 日常生 囲 りの世話 には 日常生活障害 の補完 "を “ " ルフ の の の ケアには 活 質 向上 ,セ 認識 形成 “ "を な らびに 行動 の形成 目標次元 として設定 した。 す ると図 1お よび表 1に 示 したよ うな 3× 2× 2= 12のケアが構成 される。 1.ま ず看護者 にとって高齢者 のケアとはなにか とい うことであるが,大 学病院看護婦 はベ ットサイ ドに おいてケア提供者 として,医 師を除 くとほとんど唯 一 の存在である。 そこでの看護婦 の看護行為 の家族 ︱ 口開日日円︲口日日□ > ¨ ¨ ¨ ¨ ¨ 私 は取 り組 んで来 た研究成果を整理 し,老 人看護ケア 構造 なるものを提言 しつつ, また特別養護老人 ホー ム で行われている看護機能探求 の角度 か ら,本 シンポジ ウムのテーマに追 ってみた。 委託 とい う設定場面 に投影 された意識 を因子分析す “ ることによ リケア意識 の構造を探 ると 身 の囲 りの "“ セルフ "と いった "“ ケア 世話 命名 が 身体 ケア 子 日常生活 の質の向上 日常生活障害の補完 ( ケ7 - 領 0 セ ル フ ケ アー 身の囲 りの世話 図 1 看 護婦 にとっての老人看護 ケア構造 可能 な, まとまりあるケア意識 によって成 り立つ ケ ア構造 の存在 が確認 された。 これ らは重な り合 うこ 表 1 老 人看護 ケアの構成 とのないケアの領域 として 3次 元空間 に描 くことが 身 体 可能 である。 一方,寮 母,生 活指導員 という協働者 のある特養 ホーム看護婦 のケア意識 の構造をほぼ同様 にみると ケ ア 1 身 の回 りの世話 │ セ ル フ ケ 7 対象 の健康段階 に沿 って垂直的にイメー ジ している よ うに推察 された。 そ こで身体 ケアの目標次元 と し “ "“ ", て 健康 の破綻 の査定 と対 応 健康 の回 復 “ "と い う3次 元を設定 した。 これ ら身 健康 の増進 体 ケアにはいずれ も保助看法で規定 されて いる診療 の補助行為を含む。身体 ケアの うちの “健康 の破綻 の査定 と対応 "に はプライマ リーケアの要素が含 ま 老人 はケア提供者 の援助を受けつつ Iか らⅣ,V れ,身 体 の生理機構を直接整え生体 の持 つ 自然治癒 か らⅧ,Ⅸ か らⅢ を達成 して行 くことによ って,よ 力を最大 に発揮 しうるよう働 きかける。 また安 らか り質 の高 い しあわせを手 にす ることが可 能 にな る。 日本看護研究学会雑誌 V01 16 M4 特別養護老人 ホームにおける看護機能 を探 ることか ら しか し老人 の場合 これが遅 々 として進 まな い,あ る いは徐 々に低下 して しまうことが特徴であるとも言 よ く表す仕事意識構造 とな っていた。 3.特 養 ケアの成否を決 めるもの 特養 の老人 ケアの実際業務量 における各職種 の仕 える。具体的な看護内容 と方法 は疾患,性 ,年 齢, 心身 の障害部位 ・程度 ・回復可能性,ケ アの場や マ 事 の力点を知 る為,生 活指導員 の業務施行状況 の結 ンパ ワーなど多 くの条件 によ りさまざまなバ リエー 果 も因子分析 し, 3因 子を取 り出 して仕事意識 の構 ションが適切 に選択 されなければな らないが,今 回 造をみてみた。 3職 種 の仕事意識 の因子構造をその 因子 の命名一覧 で示す と表 2の ようになる。看護職 は仮説 として老人看護 ケアのおよその構造的枠組 み を示 してみた。 2.特 養 ホー ムにお ける看護機能 について 以外 は生活の質 の向上 をめざすケアを第一義 に置 い ていることが分 か る。 さらに この仕事意識 に対す る 特養 が対象 に している寝 たき り老人は (図2参 Ю 一見 して明 らかなように日常生活動作能力 の中で も 影響要因 をみる為,各 職種 の各因子 の因子得点を基 移動動作 に著 しい能力低下 があ り,歩 行, ト イ レ, 設や本人 の属性,職 務 に対す る意識 などを説明変数 風呂などに支障 を来 しているのが特徴 である。 こ う として,量 的変数 に関 しては重回帰分析,質 的変数 に関 しては数量化一類 を用 いて要 因分析 を行 った。 した老人 に対 して特養 では寮母,指 導員,看 護婦 が 直接処遇職員 として世話 に当た っている。 準変数 とし, この仕事意識 に影響す ると思われ る施 しか し,重 回帰分析 によ り明 らかにされた影響要因 の説明率 は以外 と小 さ く関連要因 の探索的意義 に止 (自力でできる人の比率) まるもので あ った。 しか し,仕 事満足意識,職 業継 続意識関連 の要因 は積極的 な影響 をもた らすようで あ った。 また質的要因の影響 に関 しては寮母 はどち らか というと,婚 姻関係,老 人 との同居経験 など生 活経験 が,指 導員,看 護婦 は設立主体,学 歴や資格 取得意欲 など,施 設 の理念や職業意識が仕事 の積極 性 に影響す ることなどを推沢1できた。 表 2 三 職種 の仕事意識構造各三 因子 の命名 荒川区老人生活実懇調査より 1985 看 図 2 寝 たきり老人像 千葉県 の54の特養 ホームの直接処遇職員,寮 母, 生活指導員,看 護婦 の本務意識 か ら見 た看護 機能 に対す る協働状況 の調査 でみ る と,特 養 ホ ー ム ケ アは大学病院看護婦 の家族 へ の看護 委託 の際,意 "“ セル “ 識 に存在 が推定 され た 身 の囲 りの世話 "“ "を フケア 3職 種 が ほぼ分掌 し, か 身体 ケア つ補 い会 う協働 の形 でなされている事 が示 され た。 また ホームの実務 の柱 で あ る寮母 は本務意識 で は 護 婦 寮 母 生活指 導員 健康 破綻 の レベル 自立 と生 活 の質 の向上 をめざす 事 1因 子 を査 定 し回復 を ケ アー め ざす ケ ア ー 健康 と 自立 の レベ ル に対 応 し生活 の 質 の 向上 をめ ざす ケ 7- 身辺 自立 を査 定 し 健康 の破 紀 に 生活 の質 の 向上 を 対応 す るケ ア ー め さす ケ ア ー 健康と自立の破綻 に対応する身の囲 りの世話 因 寸 第Jl因7 生活の拡大をめざ 健康 と自立のレベ 変化 に適 応 し社会 ルに対応する身の 生 活 の拡が りの中 すケアー で め さす ケ ア ー 囲 りの世話 以上 の ことよ り 3職 種 の看護機能か らみた仕事意 “ の "を 身 囲 りの世話 本務 と してい るが,実 際 の 識 の構造 には違 いがあ り,そ れが本人の属性 や施設 業務施行状況を問 う意識調査 よ り仕事 の意識構造 “ をみ ると,第 一 に 自立 と生 活 の質 の向上 をめざ 条件 などの要因 によって影響 され る ことを踏 まえ, ",第 二 “ に 健康 の破綻 に対応 す るケア ", “ 第二 に 健康 と自立 の レベ ル に対応 す る身 の囲 り "と の世話 なってお り,特 養 ホ ー ム ケアの実 質 を れる。実際にはそれに増 して仕事 を助長 し,補 い会 すケア よき協働を実現 してい くためには対応 に念慮が望 ま うものは各職員 の 自覚的取 り組みであろう。 それを 喚起 しつづ け,互 いの情報や アイデアを共有す る場 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 特別養護老人 ホームにおける看護機能 を探 ることか ら 人ケアである。 有料老人ホーム 軽費 A ・ B ケアーハウス 院 ・ 五用I 券 健康度 プロジェクト 特養 図 4 日 本 におけ る老人施設看護 の │ 全体処遇会議 処遇 会議 クライアント/家 族 ¨ ︱ 給 食 △〓 議 IL i i唱 寮 ヘルスケア ・サー ビス 母 モデル2 管理の視点 会 議 モデル3 専門職者の視点 ヘルスケア ・サ ー ビス ク ラ イ ア ン ト/家 族 /一 般 大 衆 情報/教 育 部 門 連 絡 会 議 査定 セ ンターの チーム クライアント/家 族/ 例 :千葉市W養 護 ・特別養護老人ホームの場合 図3会 “ " 場 モデル 1 クライアントの視点 │ 給 月 給 食 食 担 例 当 会 者 会 議 会 議 病 養護老人ホーム 外 職員会議 響ク {脇 i ラ月厚 老人保健施設 朝礼, 申 し送 りなどによって種 々の情報 が共有され, ケア実践 の維持 。発展 がなされているのが特養 の老 特別養護 老人ホーム が もたれて いる。 (図 3参 照)こ の他 にも, 日々の 経済カ ーーーーー← 面 として特養では,処 遇会議を中心 とした各種会議 ― ヘルスケア ・サー 情報 の経 路 │・サ ー ビスの要里 議 系 統 図 Ma「garet A& Mary」 Cの Modol of Long Time 図5 4 高 齢社会 に向けての保健 。医療 ・福祉 のケア体系 就 業 者散 と看護職者 のめざす もの 400,931 (千人 ) 図 4は 日本 における老人施設看護 の行われている “ "の 概略図である。現在 日本 の老人 は経済力, 場 選択時 の健康度 などによってこうしたケアを利用 し ている。 しか し,現 在養護老人 ホーム と老人保健施 設 の特養化 が問題視 され,当 然 ケアの不適合 も起 き ていると思われ る。今後特 に,政 策 のめざすように おいて,最 適 ケアが受 け られるよう, ケ アの吟味, 統合,調 整 ので きる職種が有効 に機能 していること が必要 とな ろう。あるいはまた特養ケアか ら学べば, 複数 の専門職員,家 族 (老人)も 含 めた合議 による 柔軟 な対応が望 まれ る。 ところが こうした状況 に対応す る看護職種 のマ ン パ ヮーの問題 は山積み して いると言 ってよい。図 6 は日本 が65歳人 口の全人 口に占める割合が 7%を 越 えた,い わ ゆ る高齢化社会 に突入 した1970年よ り 0 0床対看護職員 ︵ 全病院︶ 病院病床︲ 図 は昭和 40年 を 1000と した値 を いるような,老 人がど こにいて も一定 の許容範囲 に 00 003 02 01 00 0 07 06 05 0 98 ︲4 ︲︲︲ ︲︲ 1 ︲︲︲ ∽2 地域 における在宅 ケアを重点 に据える場合 は図 5の マーガ レットとメ リーのモデュール 2や 3が 示 して 1965 1970 1975 1980 1985 1989 「 平成 3年看護関係統計資料集」「 厚生省人口動態統計」による 「 医療施設調査」 図 6 看 護職種 の職種別就業者数 の推移 日本看護研究学会雑誌 Vol.16 No 4 1993 Care 特別養護老人 ホームにおける看護機能を探 ることか ら ステー ションなど老人看護実践分野を開拓 して,他 表 3 医 療関係者数 と率 (人口10万対) 昭和 45年 (1970)末現 在 平 成 2年 (1990)末現 在 40 実 数 2 8 6 3 9 7 5 2 9 6 8 6 5 5 職種 とのよき協働 か ら学び,老 人看護 に関す る知見 を構造的,系 統的 に蓄積 して,優 れた実践 を導 くこ とがで きるな らば,老 人 の真 の しあわせに貢献す る 8 6 0 2 ばか りでな く,看 護学 の発展 にも資す ると考え る。 8 1 2 0 3 3 6 2 4 7 7 9 8 ︲ 2 3 8 ︲ 2 3 9 0 4 0 0 ︲ 0 3 3 6 6 。 3 3 9 3 9 4 9 9 9 ︲ 9 2 4 5 2 。 2 8 2 2 ● 4 3 9 1 2 師 師 師 婦 婦 婦 士 士 師 師 師 保 助 看 サ き 剤 健 産 腹 技 術 ツ 整 ・ マ 科 . 科 科 道 摩 鰤 ん 歯 歯 あ は 柔 医 歯 薬 圧 指 ジ [復 ェ生 医 ・ 実 数 医師 歯 科医師 藁 斉1 師調査」「 0 , 生行政業務報告」 資料 厚 生省「 注 ! ) * │ , は 医療施設 〈 藁局) の 従事者 昭 和 6 3 年 末現在 には /12)看 E婦 看雄士 准 看讀婦及び淮看霞士を含む 参考文献 1.吉 田伸子他 :看護婦 ―患者関係 に第二者 が介在 し た場合 の看護行為 の委譲 に関す る看護婦 の意識 の研 究, 日本看護研究会雑誌 9(2),p80,1986. 2.東 条光雅 :処遇 ・介護 に関す る特養職員 の意識 と 態度,川 島書店,1987. 表 4 就 業先お よび免許区分別看護婦 (士)数 実 数 2086 357 213880 52919 974 構成割合(%) 81 3 3 4 440 叩00 ¨9 一〇0¨ ¨20︲ > 臥所 所 院 所 設 校 婦 他 婦 婦 士士 成 分 姜 施 護 婦 人 出 護 免 出看 保 病 診 老 学 派 そ く 看 准 看 准 の 護 護 健 看 療 い 中 一 一 中 昭和45年 (1970)末現在 平 成 2年 0990)末 現在 実 数 障成割 合 (% 3.吉 田伸子他 :特別養護老人 ホームの寮母,生 活指 導員,看 護婦 の本務意識 な らびに職務意識 よりみた 協働構造 に関す る研究, 日本老年社会科学会第32回 大会報告要 旨集,p82,1990. 4.吉 田伸子他 :特別養護老人 ホームの看護機能 に関 す る研究 ―第 2報 ―寮母,生 活指導員,看 護婦 の業 581,249 138.549 2.559 747 281 14023 務施行状況調査 よりみた仕事 の構造 な らびに要因分 437 ‐ 行政エネ, a 昔 , 1 1 , 生省 口i 生 析, 日本看護研究学会雑誌 14(臨 ),p145,1991. 5.荒 川区民生委員協議会 ・荒川区社協 :昭和58年荒 川区老人生活実態調査,1987. 6.平 成 3年 度千葉市和陽園運営方針,p7,1991. 1989年までの看護婦 の飛躍的 に増加 した様子を示 し ている。 これ とて病院病床数 の増加 に少 しばか りの 上乗せがあったのみで患者 の高齢化,高 度先進医療 へ の対応 に追 いついていないのが現状 である。表 3 に示 したように医療関係数 の1970年と1990年の比較 で,問 題 に したいのは保健婦 の増加が看護婦 に比 べ 格段少 ないことである。 また表 4に 示 したように看 7. lvlary 」Cruse, A/1argaret Alderman: The Coming of Age in Nursing Care of the /o1 36, No 2, p 47-49, 1980. Elderly, ヽ 8.0日 本看護協会 老 人保健医療検討委員会 :高齢 者 の在宅 ケアと看護 の役割,1991. 9.m日 本看護協会 :平成 4年 度 「 看護 の 日 ・看護週 ー 間」看護 フォ ラム資料,1992. 護婦 の就職先 の割合 はほとんど変わ ってお らず,老 "に “ 人保健施設 の項 にわずか, と その他 特養看護 10.0厚 生統計協会 :国民衛生の動向 昭 和46年特集 婦等が含 まれ, 1%の 増加 をみ るのみである。看護 11.0厚 生統計協会 :国民衛生の動向 平 成 3年 特集 職 は今,現 職 のなかで対象 とな る老人 に出来 ること 号,厚 生 の指標,1971. 号,厚 生 の指標,1991. を見直 し, また多 々ある問題を乗 り越 え,訪 間看護 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 NQ 4 ◆ シンポジウム ◆ 高齢化社会 が求 め る看護 の専 門性 一 専門性発揮 のための課題 ― 看護 と介護業務 の機能 と連携 弘前学院短期大学 大和 田 猛 I 調 査 の一 般 概 況 は じめ に 高齢化社会 の到来 に伴 って老人 ケア システムの総合 化が,地 域社会や老人福祉施設 の臨床現場 で議論 され ている。 そのためには,保 健や医療 ・福祉 とのサ ー ビ 1992年1月 に青森県内 の養護老人 ホーム,特 別養護 老人 ホーム,老 人保健施設 (1992年1月 現在)全 個所 スの連携 ・協働が何 よりも重要であるとの認識 も合意 の看護職,介 護職 に対 して,業 務実態意識調査 を 目的 に したア ンケ ー ト調査 を実施 した。 回答 のあ った施設 されているようである。 とくに,慢 性疾患や健康問題 の様相 に特徴 をもつ老人へ のサ ー ビス接近 は身体的, 別内訳 は,養 護老人 ホー ム (看護職10名,介 護職10名) 20名。特別養護老人 ホーム (看護職47名,介 護職47名) 精神的,家 族的な生活全体 へ の援助 とい う視野を もた 94名。老人保健施設 (看護職 11名,介 護職11名)22名 なければな らない。 と くに 「 生活 の場」 としての性格 である。 つ まり,看 護職68名,介 護職68名, 合 計 136 を もつ老人福祉施設 においては,看 護面でのニーズが 名 か ら回答があ ったことになる。調査対象者 の平均年 齢 は,養 護老人 ホ ー ム (看護職44.1才,介 護職471 よ り高 い人 も,精 神面 の悩みをかかえている人 も,あ るいは福祉 のサ ー ビスが必要 とされている人 も包括的 才),特 別養護老人 ホ ー ム (看護職40.5才,介 護職 な看護,介 護,福 祉 サ ー ビスを提供 しなければな らな 387才 ),老 人保健施設 (看護職415才 ,介 護職331 い。医療 の中心 も,cure(治 療)か ら care(世 話) 才)と な り,看 護職,介 護職 とも平均年齢 が最 も高 い のは養護老人 ホームである。看護職で最 も平均年齢 が の時代 に移行 して きているとか,QOLの 保障 とか呼 ばれてる昨今,老 人福祉施設や老人保健施設 に勤務す る看護職,介 護職 は相互 にどのような連携 。協力を し, 低 いのは,特 別養護老人 ホームであ り,介 護職 のそれ 専門性 を認識 し,固 有 の機能や役割 を意識 しているの 護職 (男性 3名 ,女 性65名),介 護職 (8名 ,女 性59 であろうか。相互 の役割期待 や役割認知,役 割遂行上 名,無 回答 1名 )と も圧倒的に女性が多 く (124名), の意識 の相違 を実践業務 の中か ら模索 し,検 討す るこ 男性 はわずかに11名である。 この ことか ら看護職,介 とが要請 されている。「 生活 の場」 と しての施設 で, 護職 とも女性 の専門職 と しての性格が強 いことが再認 老人が 日常生活に適応 し,安 心 して老 いてい くために され る。対象者 の保有免許資格 をみると,看 護職 は, は,看 護職,介 護職 の専門職種相互 の業務実態を検討 准看護婦56%,正 看護婦37%,社 会福祉主事 7%,介 する ことが,相 互 の業務 の上での連携や協働 を考えて 護福祉± 2%と い う状況である。介護職 のそれは, と い く上 に も必要不可欠であろう。 くにな し38%,介 護福祉±35%,社 会福祉主事29%, 本報告 では以上のような問題意識 の もとに,青 森県 内 の老人保健施設,特 男1養護老人ホーム,養 護老人 ホー 准看護婦 7%と い う様相である。看護職 については, は老人保健施設 である。対象者 の性別人数内訳 は,看 正看護婦 よ りも准看護婦 の免許資格者が業務 に従事 し ムの三種類 の施設で働 く看護職,寮 母職 (介護職)に 対 して実施 したア ンケー ト調査結果 の一部を報告 し, 祉士 の資格保有者 よ りも,何 の資格,免 許 もとくにな 看護職,介 護職 の業務実態や業務意識を明 らかに し, い者 が上 回 っていることが問題点 として指摘できよう。 ている者 の数 が多 いこと,介 護職 については,介 護福 相互 の専門性や協働性を模索 したい。 Ⅱ 看 護 職 ,介 護 職 か らみ た重 要 業 務 看護職 自身 が認 知 して いる重 要 業 務 は, 上 位 順 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 1998 看護 と介護業務 の機能 と連 携 数字 は%>に ,① バ イタルサインのチェ ッ <( )内 ク ・健康観察 (以下,健 康観察 と略す)(99),② 医 内容 は,① 身 の回 りの世話 (99),② 話相手 (96), ③記録等 (93),④ レク リエー ションの介助 (76), 記 療処置 の補助 (以下,処 置補助 と略す)(99),③ 録 。申 し送 り ・カ ンフ ァレンス (以下,記 録等 と略す) ⑤行事等 の運営 (76),⑥ 研修 (75),⑦ 健康観察 (63),③ 家族 へ の対応 (56),⑨ 環境整備 (54), (94),④ 与薬 の準備 ・服薬介護 (以下,与 薬 と略す) (94),⑤ 回診 の補助 (87),⑥ 急性期 ・末期の看病 ・ ⑩看病 (53),⑪ カウンセ リング (50),⑫ リハ ビ リ 世話 (以下,看 病 と略す)(87),⑦ 入 院 。通院 の付 き添 い (以下,通 院付添 いと略す)(81),③ 話相手 介助 (42)で あ った。介護職 か らみて看護職 の重要業 務 として役割認知 しているものは,① 健康観察 (99, ②処置補助 (93),③ 与薬 (90),④ 看病 (88),⑤ になる (以下,話 相手 と略す)(68),⑨ 身 の回 りの 世話 (49),⑩ 家族 へ の対応 (46),⑪ 職員への指導 ・ 記録等 (81),⑥ 通院付添 い (76),⑦ 回診 の補助 (75),③ リハ ビ リ介助 (51),⑨ 話相手 (49),⑩ 助言 ・教育 (以下,職 員教育 と略す)(42),⑫ カウンセ リング (46),⑪ 職員教育 (44),⑫ 身 の回 カウ ンセ リング (35)と な っている。 一方,看 護職 が介護職 の重要業務 と認識 しているの りの世話 (38)で あった。 は,① 身 の回 りの世話 (96),② 話相手 (96),③ 記 と看護職業務 として役割期待 して い るものがオーバ ー 録等 (79),④ 通院付添 い (79),⑤ 自分 自身 の研修 (以下,研 修 と略す)(78),⑥ クラブ活動 ・行事 の企 ラップ しているものは,健 康観察,身 の回 りの世話, 話相手,記 録等,カ ウンセ リング, リハ ビ リ介助,看 レク 画運営 (以下,行 事等 の運営 と略す)(75),⑦ リエー ションの介助 (72),③ 家族 へ の対応 (69), 病 である。相対的 に介護職 に固有性が高 いと考 え られ ているものは, レ ク リエー ションの介助,行 事等 の運 ⑨環境 の整備 (63),⑩ 健康観察 (59),① 看病 (57), ⑫ リハ ビ リテー ションの介助 (以下, リハ ビ リ介助 と 営,研 修,家 族 へ の対応,環 境整備 ということになる。 略す)(53)と い うことになる。 す る業務を検討す ると,処 置補助,与 薬,職 員教育 と い う業務 は看護職 に, リク リエー ションの介助,行 事 看護職 が 自分 の固有業務 で重要 な こととしているも の と,介 護職 にも業務役割期待を して いるものがオー バ ー ラップ しているものを拾 ってみると,身 の回 りの 世話,話 相手,記 録等,通 院付添 い,家 族 へ の対応, 介護職 が 自身 の固有業務 として重要視 しているもの これか らの ことか ら, 自身 の重要業務 と相手 に期待 等 の運営,環 境整備 については介護職 に固有性 が高 い 業務 と理解 され る一方,身 の回 りの世話,話 相手,記 録等,通 院付添 い,家 族 へ の対応,カ ウンセ リング, 健康観察,看 病 となる。 これ らの業務 は,そ れぞれの 看病,健 康観察 などはそれぞれが固有 の業務 と考 えて 職種 でそのウエイ トの置 き方,高 低や ス タ ンスによる 場面 で相互 に連携や協力を しなければな らな い業務 と いて も,役 割認知,役 割期待 の上 に職種間で微妙 な相 違 があるとい うことであ り,介 護職 と看護職 の連携 ・ 協働 によるチーム ヮー ク的処置による老人 へ の全体的 して認知 されている。看護職 の重要業務 と認識 されて な生活援助が求 め られて い る事 になろう。 相違 はあるものの,施 設利用者 の 日常生活を援助する いて も,介 護職 の重要業務 とは必ず しも考え られて い ないものは,処 置補助,与 薬,回 診 の補助,職 員教育 であ り,医 療行為 に直接的にかかわ り,医 療看護的技 術や知識を要す る業務 は看護職 の固有業務 と認識 され ている。 一方,看 護職 か らみて介護職 の重要業務 と期待 し認 識 されているものは,行 事等 の運営, レク リエー ショ Ⅲ 健 康 状 態 0病 状 把 握 の た め の 職 種 間 連 携 ― 看 護 職 ・介 護 職 ― 看護 ,介護職員相互 に利用者 の健康状態 や病状把握 のための情報交換 ・報告 がどのような形 で連携を保 っ て行われているかをみた。 看護職 は,① 介護職員 か ら毎 日報告 (81),② 看護 ンの介助,研 修 ということになる。特 に研修 が重要業 務 として期待 されてい るの は介護職 の専門性や技術 ・ 職員相互 に (78),③ カ ンフ ァレンスで (68),④ 介 知識 の向上 を検討 しなければな らないことを示唆 して ⑥生活指導員 か ら適宣 (46),⑦ 生活指導員か ら毎 日 (13)と なっている。一方,介 護職 は,① 介護職員相 い る。 さて,介 護職 が 自身 の重要業務 と判断 している業務 護職員か ら適宣 (57),⑤ 介護職員 の日誌か ら (56), 互 に (88),② 看護職員 か ら毎 日報告 (81),③ カ ン 日本看護研究学会雑誌 Vo1 16 No 4 看護 と介護業務 の機能 と連携 ファレンスで (51),④ 生活指導員から適宣 (47), ⑤看護職員か ら適宣 (46),⑥ 看護職員 の 日誌か ら (38),⑦ 生活指導員か ら毎 日 (19)と な ってお り, お互いの職種間で情報交換が行われていることがわか る。相互職種間の情報伝達 システム,記 録様式,カ ン ファレンスのもち方 などは健康状態 ・病状把握のため 介護職 は,① 話相手 (90),② 研修 (56),③ 身 の 回 りの世話 (53),④ カウンセ リング (37),⑤ 記録 等 (35),⑥ リハ ビ リ介助 (32),⑦ レク リエー ショ ン介助 (32),③ 行事等 の運営 (22),⑨ 職員教育 (15),⑩ 家族 へ の対応 (13)が 時間 を増 や したい業 務 と考えている。介護職 について も狭 いADL介 助だ のチームヮークに不可欠の課題であると考え られる。 けでな く,又 実際 に費や している時間の多 い業務以上 に,家 族 への対応や カウンセ リングなど心理,精 神的 Ⅳ 日 常業 務 の 中で費 やす 時間 の多 い業務 一 介護職 ・看護職 ― 援助を志向 していることがわかる。 これ らの ことが介 介護職 の業務 の中で費やす時間の多いものをみると, 護職,看 護職 に共通 している点 は,老 人 の生活援助 を よリー層濃密 な もの していこうとする認識 の表われ と ①身の回 りの世話 (97),② 話相手 (79),③ 記録等 (79),④ レク リエーション介助 (63),⑤ 行事等 の み られる。又,介 護職が研修 によ リー層時間をかけた 運営 (59),⑥ 環境整備 (53),⑦ リハ ビリ介助 (35), ③健康観察 (22),⑨ カウンセ リング (16),⑩ 看病 自覚 した意識 の表われであろうか。 (16)と いうことになる。 Ⅵ 日 常 業 務 の上 で 時 間 を減 ら した い業 務 一 看 護 職 ・介 護 職 ― 看護職 の業務の中で費やす時間の多いものは,① 処 置補助 (88),② 与薬 (87),③ 健康観察 (87),④ 通院付添 い (74),⑤ 記録等 (69),⑥ 看病 (54), いとしてい るのは,専 門職 としての位置づ けの低 さを 日常業務 の中で費やす時間を減 らしたいと考 えてい る業務内容 につ いて,看 護職 は,① 与薬 (72%),② ⑦回診補助 (51),③ 身の回 りの世話 (51),⑨ 話相 手 (28),⑩ レクリエーション介助 (16)で あった。 介護 ・看護職に共通する比較的費やす時間の多い業 通院付添 い (63),③ 処置補助 (32),④ 記録等 (29), 務は,身 の回 りの世話,話 相手,記 録等看病, レクリ エーション介助,健 康観察となり,こ れらは多分にオー (9),⑩ バーラップする部分がある。 しか し介護職は身の回 り ⑤回診 の補助 (18),⑥ 身 の回 りの世話 (16),⑦ 行 事等 の運営 (15),③ 健康観察 (9),⑨ 環境整備 外部 との連絡調査 (9)と な ってお り, 医 療看護 の固有業務 と して考え られている業務 もかな り の世話をはじめとする身体的,精 神的援助 に比較的時 あげ られて い る。 一方,介 護職 は,① 環境整備 (41),② 記録等 (34), 間をかけ,看 護職 は健康観察,与 薬,処 置補助といっ ③行事等 の運営 (29),④ 通院付添 い (25),⑤ 与薬 た医療看護的援助 に時間を費や していることがわかる。 (18),⑥ 外部 との連絡調整 (16),⑦ 身 の回 りの世 話 (12),③ 家族 へ の対応 (12),⑨ 看病 (10),⑩ レク リエー シ ョン介助 (6)と なっている。 V 日 常業務 の上 で時間 を増 や した い業務 一 看護職 。介護職 ― それぞれの日常業務の中でより時間をかけたい業務 内容 として看護職は,① 話相手 (82),② 健康観察 (38),③ カウンセ リング (38),④ 看病 (32), ⑤ 記録等 (31),⑥ 身の回 りの世話 (28),⑦ 職員教育 (24),③ リハ ビリ介助 (21),⑨ 処置補助 (13), ⑩環境整備 (12), とな り,必 ず しも実際に費や して 両職種 に共通 して時間 を減 らしたい業務内容 とされ たのは,与 薬,通 院付添 い,記 録等,身 の回りの世話 行事等 の運営であ り, これ らはより効率 の良 い対応 が 期待 されると同時 に,相 互の役割分担をよ り明確 に し た上での協働 ・連携 が必要 とされていると考え られる。 介護職 は,医 療看護的業務をよ り減 らしたいと考えて いる職員の多 いことがわかる。 いる時間の多さとは重ならないことがわかる。特 に, 話相手 になる,カ ウンセ リング,身 の回 りの世話,職 員教育 など,狭 い範囲の医療看護的援助にとどまらす お わ り に 看護業務 は一般 に法的 には,「診療 の補助」 と 「療 教育的機能や心理,精 神的援助 も志向 していることが 養上 の世話」 とされて い る。 診療 の補助 は医療 援助 推察される。 (ケア),療 養上 の世話 は生活援助 (ケ ア)と 考 え る 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 No 4 看護 と介護業務 の機能 と連携 こともで きるが, この生活ケアは多分 に介護業務 とオー バ ー ラップ し,医 療ケアでさえ もが施設 によっては介 護業務 の一部 と理解 されている。 生活 ケアについて は病棟 において も看護助手,介 護 者,付 添人 (家族)等 無資格者 が中心である所が多 い。 看護職 は施設 において健康管理 に責任を もつが,24 介護職 が看護職 に期待 して い る意識 とも関連 している。 したが って,看 護職や介護職 の業務 は,主 要 な とこ ろでは各 々が責任 を もっていて も,か な り多 くの部分 で業務 が重 な り合 っているのが実情である。 老人 の 日常生活が,健 康状態 や障害 の状況 と密接 に かかわ つている以上,看 護職や介護職 の連携な くして 時間 にわた って老人の生活 に密接 にかかわ っている介 は,老 人が真に生 き生 きとした生活を施設で送 ること 護職 が,老 人 の病状や状況 の変化を いち早 く知 り得 る は不可能 に近 い。 立場にある ことか ら,介 護職 の観察 か ら得 られた情報 な くしては健康状況 の把握 は難 しい。 したが って介護 施設 の中で,老 人 の生理的生存維持の生命だけでな く,人 格的生命維持 。社会的生命維持 のための働 きか 職 の協力 は看護 の業務遂行に不可欠 がある。 けは,医 療ケ アと生活 ケアの一体化 した統合的援助が 又,介 護職 は生活援助 に責任を もつが,生 活援助 の 必要不可欠 といえる。 計画,選 択 については健康状態 についての情報がな く したが って看護職 と介護職 の連携が円滑 にい くため ては安全性や適切性 に欠 ける ことになる。 したが って に何 よ りも必要な ことは,両 者 が相互 の専門性や役割 看護職 の助言 は不可欠である。 さ らに生活援助行為等 を認め合 った上での協働 である。 について も医学的判断や技術が必要 な老人 には,看 護 そのためには,相 互 の業務 の実態,業 務意識,業 務 遂行上 の役割認識 ・役割期待 ・役割認知等 の実証的検 職 が直接 かかわる必要 がある。 施設 においては,看 護職が24時間体制 でないため, 討を積み重ね,よ リー層,臨 床現場実践 の中で,固 有 看護婦 が不在 の夜間や休 日には看護的処置 (浣腸,投 な専Fl的業務を明確 に して い くことであろう。 今後 は,他 職種 との連携 ・協働 の在 り方 に検討 を加 薬,吸 引,検 温など)介 護職 がせざるをえない。 そ し て 日常生活援助 の面で食事介助や オムッ交換,入 浴介 助 などに看護職 が実際 にかかわ っている施設 も少な く ない。看護職 は 「 診療 の補助」 とい う医療ケア業務 の みには不満を もち,「療養上の世話」 とい う生活 ケ ア 業務 をかな り志向 している。 つ ま り医療 ・生活統合的 看護を意識 しているといえる。 換言すれば,従 来 の保健 ・健康管理業務,治 療 ・看 護業務を中心 に しなが らも,個 別的心理的援助,文 化 的精神的援助,社 会性 。社会関係 の維持 ・拡大 への援 助,家 族関係 へ の援助等 について も生活 ケア業務 とし え,看 護 の在 り方,.介護 の在 り方,業 務 マニ ュアル, 基準を明確に してい くことが重要である。 (なお,本 報告 でのア ンケー ト調査 は,弘 前大学教 育学部 大 串靖子助教授,弘 前大学医療技術短期大学 部 一 戸 とも子講師,報 告者 の共同研究 によ り実施 し た もので ある。調査結果 につ いて は一部 を単純集計 と して報告 したが, もとよ り施設相互間の職種や質問項 目間の クロス集計等 も分析 して考慮 しなければな らな い。 この ことについては今後,継 続 して検討 され るこ とになろう) て高 い志 向意識 がみ られ るということである。 それは 日本看護研究学会雑誌 Vol 16 M 4 1993