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「歯欠けで火欠け?」 平成 20 年式のスバル・サンバー (車両型式GBD–TV1、エンジン型式 EN07(NA)、走行距離100,000km) で走行中エンストし、その後再始動 しないというトラブル相談を受けた。 症状を詳しく確認すると高速道路 を走行中突然エンストし、その後ク ランキングをしても初爆はあるが始 動しないとのことで入庫。スキャン ツール(外部診断機)を使用してダ イアグノーシスコードの確認を行っても正常コードを表示する。また、インジェクタは全 気筒作動しプラグも湿っているが、 2 - 3 番シリンダの火花が飛ばないとのことだった。 この車両の点火方式は同時点火方式を採用しており、4 シリンダに対して 2 個のイグニッ ション・コイルを設けて、各々のイグニッション・コイルの 2 次側から 2 本のハイテンショ ンコードがスパーク・プラグに接続され、 2 気筒同時に点火している。 1 - 4 番用と 2 - 3 番用のイグニッション・コイルは同じものが使用されていたので、イ グニッション・コイルの 1 - 4 番用と 2 - 3 番用を入れ替えて点検したが症状に変化がな かった。また、クランク角センサも交換してもらったが症状に変化はなかった。 2 - 3 番シリンダの火花が飛ばないことから、エンジン・コンピュータから点火信号が 出力されているか点検してもらうことにした。本来であれば点火信号を確認するにはオシ ロスコープを使用するが、工場側にないということだったので、簡易的にアナログ・サー キット・テスタで火花の飛んでいる 1 - 4 番と、火花の飛んでいない 2 - 3 番の点火信号 を測定して比較してもらった。 点検方法としては、エンジン・コンピュータの点火信号を出力しているR133カプラの 7 番端子( 1 - 4 番側)とR133カプラの16番端子( 2 - 3 番側)にそれぞれサーキット・テ スタのプラス側を接続し、マイナス側はボデー・アースしてクランキングをすると正常に 点火信号が出力していればサーキット・テスタの指針が 0 V~ 1 V程度で振れるはずであ る。 点検の結果、 1 - 4 番側はテスタの指針が振れたが、 2 - 3 番側は振れなかったためエ ンジン・コンピュータから点火信号が出力されていないと判断し、エンジン・コンピュー タの電源とアースを点検してもらった。電源とアース共に正常だったためエンジン・コン NEWS 2014 8月号 21 ピュータ不良と判断して交換してもらったが症状に変化はなかった。 行き詰ってしまったので、一度ディーラーに見てもらうことになった。入庫してから数 日後に連絡があり、クランク角センサと対向して回転し、信号を発生させるためのタイミ ング・ベルト・スプロケット外周に設けてあるロータ突起部が 1 箇所欠けていたので、タ イミング・ベルト・スプロケットを交換し正常となったとのことだった。 今回のトラブルは 2 - 3 番のシリンダの火花が飛ばなくなったが、突起の欠ける箇所に よっては 1 - 4 番シリンダも火花が飛ばなくなることもある。一般的にはクランク角セン サの入力信号が乱れると点火時期、噴射時期などがずれて、エンジン不調を起こすことが 考えられる。しかし、今回のトラブルの様に片側のコイルのみ火花が飛ばない不具合が発 生することもあるので、エンジン・コンピュータ不良と判断する前に一度タイミング・ベ ルト・スプロケットのロータ突起部を点検してみてはどうだろうか。 〈参考資料〉 不具合箇所 正常波形 22 NEWS 2014 8月号 点火信号 NEWS 2014 8月号 23