Comments
Description
Transcript
急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL)
急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL) Sulfur Dioxide (7446-09-5) 二酸化イオウ Table Sulfur Dioxide AEGL 設定値 7446-09-5 (Final) ppm 10 min 30 min 60 min 4 hr 8 hr AEGL 1 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 AEGL 2 0.75 0.75 0.75 0.75 0.75 AEGL 3 30 30 30 19 9.6 設定根拠(要約): 二酸化イオウは、常温、大気圧下において無色の気体である。味覚で検出可能な濃度は 0.35~ 1.05 ppm であり、鼻をつく刺激臭があり、臭気閾値は 0.67~4.75 ppm である。二酸化イオウは、 亜硫酸ナトリウムや硫酸、塩化スルフリル、塩化チオニル、有機スルホン酸の塩やエステル、殺 菌剤、燻蒸剤、ガラス、ワイン、工業用および食用蛋白質、蒸気圧温度計などの製造に使用され る。また、テンサイ糖、小麦粉、果物、ゼラチン、にかわ、穀粒、油、わら、織物、木材パルプ、 木材などの漂白にも使用される。この他、革なめしや醸造、貯蔵、さらには、冷温産業でも使用 される。二酸化イオウは、鉱石製錬での石炭・重油の燃焼、製紙、製油の副生成物である(WHO 1984)。 二酸化イオウは、上気道や眼への刺激性がある。高濃度の二酸化イオウに直接接触すると、結膜 炎や角膜熱傷、角膜混濁が起こることがある。急性過剰曝露により、呼吸が停止して死亡するこ とがあり、生残者でも、気管支炎、気管支肺炎、閉塞性線維性細気管支炎が起こることがある。 また、肺抵抗の増大を伴う気管支収縮が、不顕性に、あるいは甲高いラッセル音を呈して起こっ たりすることもある。中等度の曝露により、呼気相が延長することがある。呼吸域粉塵の存在、 冷気、空気の乾燥、運動、口呼吸により、二酸化硫黄の有害作用が増高することもある(WHO 1984)。 AEGL-1 値は、喘息患者のデータから得られた証拠の重み付けに基づいた。このデータによって、 運動中の喘息患者の気管支収縮に関する NOEL が 0.20 ppm と考えられることが示されている。 0.2 ppm で 5 分間(Linn et al. 1983b)、0.25 ppm で 10~40 分間(Schacter et al. 1984)、0.25 ppm で 75 分間(Roger et al. 1985)、0.5 ppm で 10~40 分間(Schacter et al. 1984)、0.5 ppm で 30 分間(Jorres and Magnussen 1990)曝露した喘息患者で、曝露に関連した影響は報告されていない。ただし、運動中 の喘息患者に 0.25 ppm で 5 分間曝露した試験(Bethel et al. 1985)では、気道抵抗(SRaw)が 134~ 139%上昇した。この試験では SRaw が上昇したが、他の試験では上昇しておらず、理由として、 1 他の試験では相対湿度が 70~85%であったのに比較して、Bethelet al.(1985)の試験では 36%と低 かったことが考えられる。この証拠の重み付け評価では、感受性の高いヒトの集団(運動中の喘息 患者)を対象とした試験のデータを用いているため、不確実係数は適用しなかった。喘息患者では、 二酸化イオウへの曝露時間が長くなると、気管支収縮の程度は減弱するようである。例えば、喘 息患者を二酸化イオウに 0.75 ppm で 3 時間曝露した試験では、Sraw の上昇率は、曝露開始から 10 分間で 322%、20 分間で 233%、1 時間で 26%、2 時間で 5%、そして 3 時間の曝露終了時では-12% であった。このデータから、二酸化イオウによる気管支収縮作用の大部分は、曝露開始から 10 分 以内に発現し、10 分を過ぎるとその作用は軽減するか消散することが示唆される。 このことから、 二酸化イオウの AEGL-1 値は、すべての曝露時間について同じ値とした。導出された AEGL-1 値 の濃度で健康な人が曝露されても影響はないと考えられるが、それらの導出濃度で喘息患者に及 ぼされる影響は、AEGL-1 の定義に適合するものである。 AEGL-2 値は、喘息患者のデータ(Hackney et al. 1984; Schacter et al. 1984)から得られた証拠の重み 付けに基づいた。このデータでは、運動中の喘息患者を 0.75 ppm で 10 分間~3 時間曝露すると、 中等度の呼吸器反応が誘発されることが示されている。この証拠の重み付け評価では、感受性の 高いヒトの集団(運動中の喘息患者)を対象とした試験のデータを用いているため、不確実係数は 適用しなかった。喘息患者では、二酸化イオウへの曝露時間が長くなると、気管支収縮の程度は 減弱するようである。例えば、喘息患者を二酸化イオウに 0.75 ppm で 3 時間曝露した試験では、 Sraw の上昇率は、曝露開始から 10 分間で 322%、20 分間で 233%、1 時間で 26%、2 時間で 5%、 そして 3 時間の曝露終了時では-12%であった。このデータから、二酸化イオウによる気管支収縮 作用の大部分は、曝露開始から 10 分以内に発現し、10 分を過ぎるとその作用は軽減するか消散 することが示唆される。このことから、二酸化イオウの AEGL-2 値は、すべての曝露時間につい て同じ値とした。導出された AEGL-2 値の濃度で健康な人が曝露されても影響はないと考えられ るが、それらの導出濃度で喘息患者に及ぼされる影響は、AEGL-2 の定義に適合するものである。 AEGL-3 値は、二酸化イオウにラットを 4 時間曝露した試験(Cohen et al. 1973)で算出された BMLC05(5%影響ベンチマーク濃度安全側信頼限界値;573 ppm)に基づいた。健康な人と喘息の 人では、二酸化イオウに対する反応に大きな差があるため、種内変動に関する不確実係数として 10 を適用した。種間変動(外挿)に関する不確実係数として 3 を適用した。この不確実係数 3 は、 二酸化イオウにモルモットを 750 ppm で 1 時間曝露した試験(Amdur 1959)、イヌを 400 ppm で 2 時間曝露した試験(Jackson and Eady 1988)、およびラットを 593 ppm で 4 時間曝露した試験(Cohen et al. 1973)において、いずれも死亡例がなかったことから、十分な値であると考えられた。さら に、900 ppm の二酸化イオウに曝露したマウスの半致死曝露時間(Lt50)が 200 分間であることが 報告されており(Bitron and Aharonson 1978)、また、965 ppm の濃度で 240 分間曝露したラットは 8 匹中 3 匹が死亡したことが報告されており(Cohen et al. 1973)、種間変動は小さいことが示唆され ている。二酸化イオウに対する致死反応については、それが 10 分以内に最大に達するかどうかを 確認できる十分なデータがない。したがって、AEGL-3 値の導出には、時間スケーリングを用い た。全身に作用する刺激性の蒸気やガスの多くは、曝露の濃度-時間関係を Cn × t = k の式で表す ことができ、指数 n は 0.8~3.5 の範囲の値をとることが示されている(ten Berge et al. 1986)。二酸 2 化イオウについては、指数 n の値を経験的に導出するためのデータが得られなかった。そのため、 1 時間に外挿する場合は n の値を 3 とし、8 時間に外挿する場合は n の値を 1 として、ヒトの健康 を保護できる AEGL 値を導出した(NRC 2001)。喘息患者は、二酸化イオウへの短時間曝露に対す る感受性が高いため、10 分間および 30 分間の AEGL-3 値は、1 時間 AEGL-3 値と同じとした。 Table に、AEGL 値をまとめて示す。 ----------------------注:本物質の特性理解のため、参考として国際化学物質安全性カード(ICSC)を添付する。 3 国際化学物質安全性カード 二酸化イオウ ICSC番号:0074 二酸化イオウ SULPHUR DIOXIDE Sulfurous oxide Sulfurous anhydride Sulfur oxide (圧力容器) SO2 分子量:64.1 CAS登録番号:7446-09-5 RTECS番号:WS4550000 ICSC番号:0074 国連番号:1079 EC番号:016-011-00-9 災害/ 暴露のタイプ 一次災害/ 急性症状 火災 不燃性。加熱すると、破裂の危険を 伴う圧力上昇が起こる。 応急処置/ 消火薬剤 予防 周辺の火災時:適切な消火薬剤を 用いる。 火災時:水を噴霧して圧力容器を 冷却するが、この物質に水が直接か からないようにする。 安全な場所から消火作業を行う。 爆発 作業環境管理を厳密に! いずれの場合も医師に相談! 咳、息切れ、咽頭痛、息苦しさ。 換気、局所排気、または呼吸用保 護具。 新鮮な空気、安静。人工呼吸が必 要なことがある。医療機関に連絡す る。 液体に触れた場合:凍傷。 保温用手袋。 凍傷の場合:多量の水で洗い流し、 衣服は脱がせない。 医療機関に連絡する。 発赤、痛み。 安全ゴーグル、顔面シールド、または 多量の水で洗い流す(できればコンタ 呼吸用保護具と眼用保護具の併 クトレンズをはずして)。医療機関に 用。 連絡する。 身体への暴露 吸入 皮膚 眼 経口摂取 漏洩物処理 貯蔵 ・危険区域から立ち退く! ・床面に沿って換気。 ・個人用保護具:自給式呼吸器付完全保 ・乾燥。 護衣。 ・専門家に相談する! ・換気。 ・液体に向けて水を噴射してはならない。 包装・表示 ・EU分類 記号 : T R : 23-34 S : 1/2-9-26-36/37/39-45 Note : 5 ・国連危険物分類(UN Hazard Class):2.3 ・国連の副次的危険性による分類(UN Subsidiary Risks):8 ・GHS 分類 注意喚起語:危険 シンボル:ガスボンベ-どくろ-健康有害性 深冷液化ガス:凍傷または障害のおそれ 吸入すると有害 眼刺激 吸入すると気道の障害 吸入での長期または反復暴露による気 道の障害 水生生物に有害 重要データは次ページ参照 ICSC番号:0074 Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993 国際化学物質安全性カード 二酸化イオウ ICSC番号:0074 物理的状態; 外観: 刺激臭のある、無色の気体あるいは圧縮液化ガス。 暴露の経路: 体内への吸収経路:吸入。 物理的危険性: この気体は空気より重い。 吸入の危険性: 容器を開放すると、この気体は空気中できわめて急速 に有害濃度に達する。 重 要 デ | タ 物理的性質 環境に関する データ 化学的危険性: 水溶液は中程度の強さの酸である。水素化ナトリウム 短期暴露の影響: 液体が急速に気化すると、凍傷を引き起こすことがあ と激しく反応する。プラスチックを侵す。 る。眼および気道を刺激する。吸入すると、喘息様反 応を引き起こすことがある。 許容濃度: TLV:2 ppm (TWA); 5 ppm (STEL); A4 (人における発 長期または反復暴露の影響: がん性が分類できていない物質) (ACGIH 2006)。 反復または長期の吸入により、喘息を引き起こすことが ある。 MAK:0.5 ppm, 1.3 mg/m3; ピーク暴露限度カテゴリ ー:I(1); 妊娠中のリスクグループ:C (DFG 2006)。 (訳注:詳細はDFGのList of MAK and BAT valuesを 参照) ・沸点:-10℃ ・融点:-75.5℃ ・比重(水=1):1.4(-10℃)(液体) ・水への溶解度:8.5 ml/100 ml(25℃) ・蒸気圧:330 kPa(20℃) ・相対蒸気密度(空気=1):2.25 ・水生生物に対して毒性がある。 注 ・暴露の程度によっては、定期検診を勧める。 ・喘息の症状は 2~3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠 である。 ・この物質により喘息の症状を示した者は、以後この物質に接触しないこと。 ・(圧力容器の腐食を防ぐため)漏出している圧力容器に水を噴霧してはならない。 ・圧力容器が漏出しているときは、気体が液状で漏れるのを防ぐため、洩れ口を上にする。 Transport Emergency Card(輸送時応急処理カード):TEC(R)-20S1079, 20G2TC NFPA(米国防火協会)コード:H(健康危険性)3;F(燃焼危険性)0;R(反応危険性)0; 付加情報 ICSC番号:0074 更新日:2006.10 二酸化イオウ © IPCS, CEC, 1993 国立医薬品食品衛生研究所