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3次元地図を用いた市街地における建物名重畳表示
DEWS2006 2A-i6 3 次元地図を用いた市街地における 建物名重畳表示システムのプロトタイピング 隅田 知代† 増永 良文‡ †お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程数理・情報科学専攻 ‡お茶の水女子大学理学部情報科学科 〒112-8610 東京都文京区大塚 2-1-1 E-mail: †[email protected], ‡[email protected] あらまし 我々は,特別に整備された環境をもつ地域だけでなく,一般的な市街地において,建物に名称を重畳 表示する拡張現実感システムを提案してきた.そのシステムは,ユーザの位置と向きを GPS とモーションセンサで 計測し,そのデータと 3 次元地図からユーザが見ている建物を抽出することで実現する.しかし,ユーザの位置や 向きのデータには誤差が含まれるので,正確な表示ができないことがある.そこで,我々はまずは簡単な確率モデ ルを用いて,センサの誤差が抽出された建物名の信頼性に与える影響を解析し,正確な重畳表示ができる状況,で きない状況を明らかにしてきた.本稿では,このシミュレーション結果をもとにして行った,建物名重畳システム の実装と,名称の表示に成功した実験例について報告する.更に,センサ精度以外の要因で重畳表示に失敗する状 況を探る. キーワード 3 次元地図,拡張現実感,ウェアラブルコンピュータ,GPS Prototyping a Building Name Superimposing System for Urban Area Use using a 3-Dimensional City Map Tomoyo SUMIDA† and Yoshifumi MASUNAGA‡ †Graduate Division of Mathematics and Computer Science (Master’s Program), Ochanomizu University ‡Department of Information Science, Ochanomizu University 2-1-1 Otuka, Bunkyo-ku, Tokyo, 112-8610 Japan E-mail: †[email protected], ‡[email protected] Abstract We have proposed a building name superimposing augmented reality system used in urban areas as well as in well equipped environments. The system can be realized by extracting the buildings which the user is looking at using 3-dimensional city map as well as the user’s position and orientation data measured by a GPS and a motion sensor. However, the errors in user’s position and the orientation data may cause incorrect display of the building name. So we have analyzed in advance how such errors affect the reliability of displaying a building name by establishing a probabilistic model, and revealed circumstances where the system can work correctly. In this paper, we report its implementation and show an experiment result which was successfully done. In addition, we explore the other factors of failure to superimpose the building name. Keyword 3-D map,Augmented Reality,Wearable computer,GPS 1. は じ め に なじみの薄い場所を訪れたときにはしばしば,周辺 図上における現在地や,方角がわからないために,現 実の建物や道路との対応付けに煩わされることになる. の建物や道路の情報を得ることが難しい状況に出会う. 時には地図を読み違い,間違った道を歩いていってし 例えば,ある建物の名前を知りたいと思っても,建物 まうこともある.このような時に,自分が現在どこに の正面までまわらなければ名称の表示が見えなかった いるか,あの建物は何であるかといった疑問に答える り,その地域の案内板や地図がなかったりするような 歩 行 者 ナ ビ ゲ ー シ ョ ン シ ス テ ム( Pedestrian Navigation 場面である.また地図情報を持っているときでも,地 System: PNS) は 便 利 で あ る . 実 用 化 さ れ て い る シ ス テ ム に は ,携 帯 電 話 や PDA 上 市街地を歩き回っているユーザに,見ている建物の名 に地図や目的地までのルートを表示するシステムがあ 称を,実際の建物に重ね合わせて表示するシステムで る [1]が ,一 方 で よ り 直 感 的 な 情 報 提 供 を 行 う た め に 現 あ る . 本 研 究 に お い て ,見 て い る 建 物 と は ,ユ ー ザ が 実世界に仮想オブジェクト,この場合建物名や通りの 身に付けているシースルーディスプレイの中心線越し 名前といったユーザが通るべきルートや場所に関する にある建物とする. 情 報 , を 重 ね 合 わ せ て 表 示 す る 拡 張 現 実 感 (Augmented 図 1が 建 物 名 重 畳 シ ス テ ム の 構 成 で あ る . ユ ー ザ は Reality: AR)と 呼 ば れ る 手 法 を 用 い た 研 究 も 行 わ れ て GPS, モ ー シ ョ ン セ ン サ , ウ ェ ア ラ ブ ル コ ン ピ ュ ー タ い る [2]. を身に付けて歩き回っている.このとき,ウェアラブ 建 物 に そ の 名 称 の 重 畳 表 示 を 行 う 屋 外 AR シ ス テ ム ルコンピュータには,システムを利用する地域を含む で , 先 駆 的 な も の に Feiner ら の Touring Machine が あ エリアの 2 次元,3 次元地図データを保持しているも る [3].こ れ は GPS で ユ ー ザ 位 置 を 測 定 し ,磁 気 探 知 機 の と す る . シ ス テ ム は , GPS・ モ ー シ ョ ン セ ン サ か ら と傾斜計を含むセンサでユーザの見ている方向を特定 得 ら れ た ユ ー ザ の 位 置・姿 勢 デ ー タ を も と に ,3.2節 で して,大学構内の案内をシースルーディスプレイ 説明するアルゴリズムで,ユーザが見ている建物の抽 (see-through Head Mounted Display)に 表 示 す る シ ス テ 出 を 行 う . GPS, モ ー シ ョ ン セ ン サ , 地 図 を 使 う こ と ム で あ っ た . そ の 後 も 多 く の 屋 外 AR シ ス テ ム の 研 究 によって,特定の史跡のように限られた場所だけでな 例 が 示 さ れ て き た が [4],大 部 分 は 学 内 や 史 跡 と い っ た く,一般的な市街地―銀座でも大阪でも構わない―に 限定された地域を対象にしており,限られた数のデー 容易に適応可能なシステムとなっている. タを,実在するオブジェクトに厳密に重ね合わせて表 以下,本章では建物名重畳システムを構成するハー 示する方法や,掲示内容自体の作り込みに主眼が置か ドウェア諸元および地図データについて詳細を述べる. れ て い た [5][6].市 街 地 で 利 用 で き る よ う に 拡 張 性 を 考 え た シ ス テ ム と し て は ,Reitmayr と Schmalstieg に よ る 研 究 [2]を 挙 げ ら れ る . こ の シ ス テ ム は 地 図 , GPS, 慣 性センサを用いてシステムを構成しているが,誤差の 影響を分析していない. 我々は,一般的な市街地において,建物に名称を重 畳表示する拡張現実感システムを提案してきた. 市街地のような広範囲で利用できるシステムを実 現するためには,①表示するデータの収集が簡単であ る,②事前に現実環境中にユーザの位置や表示データ を特定するための機器を配置しておく必要が無い,と いった条件がある.そこで提案手法では,ユーザの位 置 と 向 き の 計 測 に GPS・ モ ー シ ョ ン セ ン サ を 利 用 し , これらのデータと 3 次元地図からユーザが見ている建 図 1. 3 次 元 地 図 を 用 い た 建 物 名 重 畳 シ ス テ ム の 物を抽出するという方法をとった.しかし,センサを 構成 利用した場合には,ユーザの位置や向きのデータには 誤差が含まれるので,正確な表示ができないことがあ 2.2. ハードウェア諸 元 るという問題がある.そこで,我々はまずは簡単なモ 2.2.1. GPS(Global Positioning System) デルを用いて,センサの誤差が抽出された建物名の信 GPS と は 衛 星 を 使 っ た 地 球 規 模 の 測 位 シ ス テ ム で あ 頼性に与える影響を解析し,正確な重畳表示ができる る .本 研 究 で は ,DGPS(Differential GPS)測 位 が 可 能 な 状 況 , で き な い 状 況 を 明 ら か に し て き た [7]. AgGPS 124/132 受 信 機 (ト リ ン ブ ル 社 )を 使 用 し て い る . 本稿では,シミュレーション結果をもとにして行っ DGPS 方 式 と は , 測 位 衛 星 か ら の デ ー タ の 他 に , 地 上 た,建物名重畳システムの実装と,名称の表示に成功 の基準局から発信されるデータを用いて,測位データ した実験例について報告する.更に,センサ精度以外 を補正し高精度測位を行う方式である.なお,補正デ の要因で重畳表示に失敗する状況を探る. ータが受信できなかったときは,補正を行わない通常 の GPS 測 位 で 位 置 を 求 め る . 2. 建 物 名 重 畳 シ ス テ ム の 構 成 AgGPS124/132 受 信 機 は 1 秒 ご と に デ ー タ を 出 力 す 2.1. 建 物 名 重 畳 システムの概 要 る . デ ー タ 精 度 は , DGPS 測 位 を し た と き , 以 下 の 条 建物名重畳システムは,東京都中央区銀座のような 件 を 前 提 と し て "1 メ ー ト ル RMS+10ppm×〔 基 準 局 と 移 動 受 信 機 間 の 距 離 〕 "で あ る . ディスプレイ越しにある全ての建物に対して名称表示 1 ・使用される衛星数>5 ・ PDOP < 4 を行うように拡張可能であるが,計算時間の関係で全 ・信号対雑音比>6 ・ 衛 星 仰 角 マ ス ク > 7.5 体 へ の 名 称 表 示 は 難 し い .計 算 時 間 に つ い て は 5.1節 で ふれる. ・低マルチパス環境 ・ Trimble 400RSi ま た は こ れ に 相 当 す る 機 器 か ら RTCM 対 応 補 正 が 放 送 さ れ て い る こ と 2.2.4. ウ ェ ア ラ ブ ル コ ン ピ ュ ー タ ウェアラブルコンピュータの代わりに,富士通製ノ この前提条件が達成可能であるか,また精度が十分 ー ト パ ソ コ ン ( FMV-BIBLO LOOX T70MN) を 使 用 す で あ る か と い っ た こ と は 4章 , 5章 で 検 討 す る . る . こ れ は Pentium M 1.20GHz, メ イ ン メ モ リ 1GB の 2.2.2. モ ー シ ョ ン セ ン サ Windows XP Professional で あ り , 10.6 型 ワ イ ド サ イ ズ モーションセンサでユーザが見ている方向,これを で 約 1.2kg の 軽 量 パ ソ コ ン で あ る . 視線方向と呼ぶ,を取得する.視線方向は,ユーザの 視点からディスプレイの中心に向けて伸ばした直線の 2.3. 地 図 データ 方向である. 2.3.1. 3 次 元 地 図 モ ー シ ョ ン セ ン サ に は , NEC ト ー キ ン 社 製 の 3D モ ユーザの視線の先にある建物の抽出に,2 次元地図 ー シ ョ ン セ ン サ MDP-A3U7 を 使 用 す る .こ の セ ン サ は ではなく高さを含めた建物の形状データを持つ 3 次元 物 体 の 回 転 速 度 を 測 る セ ラ ミ ッ ク ・ジ ャ イ ロ と ,重 力 を 地図を使う.その理由は,ある建物の後ろに別の建物 検出することで傾きを測定する加速度センサと,東西 がある場合に,2 次元地図だけでは後ろの建物が見え 南北の絶対方向を示すことができる地磁気センサを組 ているのかいないのか分からないが,3 次元地図の高 み 合 わ せ る こ と で 3D モ ー シ ョ ン を 正 確 に と ら え ら れ さ情報を使えばこのような問題に的確に対処できるか るようにしたセンサである. らである. こ の セ ン サ か ら は ヨ ー 角 α( 初 期 方 向 か ら の 角 度 ), 3 次 元 地 図 デ ー タ に は ,DiaMap レ ベ ル 2( 三 菱 商 事 ピ ッ チ 角 β(見 上 げ た と き の 角 度 ), ロ ー ル 角 γ(首 を 傾 株 式 会 社 )を 用 い た .DiaMapは 3 大 都 市 圏 全 域( 東 京・ け た と き の 角 度 ), α_n(北 か ら の 角 度 ), 及 び そ の 他 加 大 阪・名 古 屋 )を カ バ ー し て い る デ ジ タ ル 地 図 で あ る . 速度,速度といったデータが得られる.本研究では北 2 次元や 3 次元のベクトルデータを格納するファイル からの角度と,ピッチ角を利用する.ロール角は,首 形 式 の 事 実 上 の 業 界 標 準 で あ る DXF フ ァ イ ル 形 式 で をひねりながら建物を眺めることはあまりないと思わ 提供される.データ量は本研究で使用している東京都 れるので,今回は使用していない.ロール角を計算に 中 央 区 銀 座 を 含 む 一 帯 , 約 1.2km×1.0k m の 領 域 で , 含めることで,名称を表示するディスプレイ座標の決 お よ そ 7 MBで あ る .含 ま れ る デ ー タ は 建 物 の 形 状 情 報 定がより厳密にできるようになる. のみで,高速高架,駅等の構造物は含まない.1つの センサの精度は,軸ごとに検出分解能が 1 度,最大 建物は,屋根面と側面をそれぞれ3Dポリライン,3 誤 差 が ±15 度 で あ る .ま た ,デ ー タ 更 新 速 度 は 125Hz Dポリゴンメッシュで近似したときの頂点座標群で表 で あ る が ,GPS の デ ー タ が 1 秒 ご と で し か 取 得 で き な されている. いので,それに合わせて,モーションセンサのデータ も 1 秒ごとに取得する. 2.2.3. シ ー ス ル ー HMD(see-through 3 次 元 地 図 の 解 析 に は CAD ソ フ ト で あ る Autodesk Map 3D 2005(Autodesk 社 )の API を 用 い て い る .地 図 デ head mounted display) ー タ を Autodesk Map 3D の 図 面 フ ァ イ ル に 変 換 し (こ の 図 面 形 式 に す る こ と で デ ー タ 量 が 1.5M 程 度 に な っ DataGlass2/A(島 津 製 作 所 )を 使 う .こ の デ ィ ス プ レ イ て い る ),さ ら に 元 々 日 本 測 地 系 平 面 直 角 座 標 系 で 表 さ は SVGA(800×600 ド ッ ト )モ ー ド の と き ,ユ ー ザ の 60cm れ て い た も の を ,Autodesk Map の 座 標 定 義 機 能 を 用 い 前 方 に 約 13 イ ン チ (約 18cm×26cm)の SVGA フ ル カ ラ て日本測地系緯度経度座標へ変換してから利用してい ーの画面を表示する.つまり,ユーザ視線に対して, る. 水 平 角 で 約 ±12 度 , 垂 直 角 約 ±10 度 の 領 域 が デ ィ ス プ 2.3.2. 2 次 元 地 図 レイ越しにみえることになる.しかし,名称付加の対 3 次 元 地 図 DiaMap レ ベ ル 2 に は 建 物 の 住 所 や 名 称 象はディスプレイの中心線越しにみえる建物に限定す といった属性情報がない.そこで,建物の名称を取得 る.3 章で説明する名称表示アルゴリズムは,ディス す る た め に 2 次 元 地 図 で あ る ZMap-TOWNⅡ (ZENRIN プレイの中心越しにみえる建物に対してだけでなく, 社 )を 使 う . 1 DOP(Dilution of Precision)は 衛 星 の 配 置 と 精 度 の 劣 化 関 係 を 表 す 単 位 な し の 数 値 . PDOPは 水 平 と 高 度 の 測 定 に 関 係 す る DOP. 住 宅 地 図 デ ー タ で あ る .建 物 の 住 所 ・名 称 と 一 軒 一 軒 の ZMap-TOWNⅡ は 個 別 の 建 物 情 報 ま で 収 め た 詳 細 な 居 住 者 名・事 業 所 名 称 な ど の 個 別 情 報 を 収 録 し て い る . ZMap-TOWNⅡ の 操 作 は ZMap-CORE Standard SDK で 通 り XY平 面 に 垂 直 な 面 と , ( 1)で 選 び 出 さ れ た 建 物 オ 行っている. ブ ジ ェ ク ト の 屋 根 面 と の 交 点 (I 0 ~ I 5 )の 座 標 を ,指 定 し た オ ブ ジ ェ ク ト 同 士 の 交 点 座 標 を 計 算 す る 3. 建 物 名 重 畳 表 示 法 の 詳 細 intersectWithメ ソ ッ ド を 用 い て 求 め た . 本章では,ユーザの見ている建物を自動抽出し,名 称を表示するまでのアルゴリズムを,処理の流れに沿 っ て , 図 1に 示 し た 建 物 名 重 畳 シ ス テ ム の モ ジ ュ ー ル ごとに説明する. 3.1. 座 標 系 変 換 モジュール 異なる座標系で表されている位置データを利用す るために,座標系変換を行う. 具 体 的 に は ,GPS の デ ー タ は 世 界 測 地 系 座 標 で 表 さ れており,地図データは日本則地系で表されているの で,これを国土地理院の座標系変換ソフトウェア TKY2JGD[8]を 用 い て , 日 本 測 地 系 に 変 換 し て い る . 3.2. 視 認 建 物 オブジェクト抽 出 モジュール ユーザの視線の先に見えている建物オブジェクト 図 2. 視 認 建 物 オ ブ ジ ェ ク ト 抽 出 を3次元地図から抽出する本システムの核となる部分 である.抽出アルゴリズムの基本的な考え方は,佐藤 ら の ア ル ゴ リ ズ ム を 参 照 し て い る [9]. 図 2は 建 物 オ ブ ジ ェ ク ト 抽 出 の 概 念 図 で あ る . 建 物 は中に浮いているわけではないので,まず,3 次元地 図を真上から 2 次元上に射影した 2 次元地図から,視 線と交差する建物オブジェクトを選択する.このとき 視 線 の 長 さ ( 図 2中 の L) は , 建 物 が 密 集 し て い る 地 域では小さく,野原などの見晴らしのいい場所では大 き く と る 必 要 が あ る .本 研 究 で は 暫 定 的 に L=80m と し て実験を行っている.次に,候補建物オブジェクトの 中からさらに 3 次元高さ情報を用いて,間にさえぎる 建物が無く,視認建物オブジェクトを計算する. 2次元での抽出,高さデータを使った抽出について, アルゴリズムと実装法を順に説明する. ( 1) 平 面 上 で の 候 補 オ ブ ジ ェ ク ト の 抽 出 3 次 元 地 図 を Autodesk Map 3D を 用 い て 平 面 上 に 射 影した地図を用意しておいた. 視線と交差する建物オブジェクトの抽出には Autodesk Map 3D 2005 の API に 含 ま れ る SelectByPolygonメ ソ ッ ド を 利 用 し た . こ の メ ソ ッ ド は 平面上でポリゴン領域を指定し,その領域と交差(も しくは内包)するオブジェクトを選びだすことができ る メ ソ ッ ド で あ る . 図 2の 例 で は 領 域 と し て ユ ー ザ の 位 置 (T)か ら 視 線 方 向 へ 長 さ L(80m)の 線 分 TT c を 指 定 し , 交 差 す る 建 物 オ ブ ジ ェ ク ト 群 (Building A,B,C) を 選 び だした. ( 2) 高 さ 情 報 を 用 い た 建 物 の 抽 出 ( 1) で 選 び 出 さ れ た 建 物 オ ブ ジ ェ ク ト の 中 か ら 高 さ情報を用いて,ユーザとの間にさえぎる建物が無く 見 え て い る 建 物 を 抽 出 す る . 準 備 と し て , 線 分 TT c を 図 3. 高 さ 情 報 を 用 い た 建 物 オ ブ ジ ェ ク ト の 抽 出 オ ブ ジ ェ ク ト ご と に Z座 標 が 同 じ 交 点 (例 え ば 点 I 0 と I 1 )が あ れ ば , 以 降 ユ ー ザ か ら 近 い 位 置 に あ る 点 (I 0 )の み を 考 え , こ れ ら を 候 補 点 と 呼 ぶ . 図 3は 図 2の 直 線 TT c に 沿 っ た 断 面 図 で あ る . 視 点 Eの Z座 標 は ユ ー ザ の 目 ま で の 高 さ で あ る . ユ ー ザ か ら 線 分 TT c 上 で の 距 離 ( = 平 面 距 離 と 呼 ぶ )で 近 い 順( 点 I 0 ,I 2 ,I 4 の 順 )に 候補点が見えるかどうかを判定し,その候補点を含む 建物が見えるかどうか決定する. ま ず ,一 番 近 い 建 物 (Building A)が 見 え る か 判 定 す る . 視 点 と デ ィ ス プ レ イ の 上 辺 を 結 ん だ 半 直 線( l upper )が , 最初の候補点(I0)よりユーザに近い点で地面と交差 している場合,ユーザは地面を見ていることになる. よってここで判定を終了する.一方,地面との交点よ り平面距離で遠くに候補点があるときは,ディスプレ イ の 下 辺 と 視 点 を 結 ぶ 直 線 ( l l ow er ) と 比 較 し , 上 に あ ればその点を含む建物は見えており,そうでなければ みえないと判断する.見える場合には,さらに候補点 が ,l upper よ り 上 か 否 か を 計 算 す る . 上 に あ れ ば , そ の 付近を,モーションセンサが指している場合には,1 点を含む建物がディスプレイ一杯に見えていることに に近い確率で正しい抽出ができる. なるので,判定を終了する. 判定が終了しなかった場合は,次の候補点(I2)を 考 え る .視 点 と 前 の 候 補 点 を 結 ぶ 直 線( l)よ り ,上 に あればその点を含む建物は見え,そうでなければ見え な い .こ れ を 候 補 点 が な く な る か ,候 補 点 が l upper を 超 えるまで繰り返す. 3.3. 建 物 名 取 得 モジュール (a)状 況 設 定 イ メ ー ジ 視認建物オブジェクト抽出モジュールで選び出さ れた建物の名称を,2 次元地図から取得する. 2 次 元 地 図 と 3 次 元 地 図 の 間 に は ,共 通 の 建 物 ID の ようなものはないので,緯度経度の情報を用いて 3 次 元地図中の抽出された建物に対応する 2 次元地図中の 形状を求める.すなわち,3 次元地図から,視認建物 オブジェクト内部の 1 点の座標を求め,次にこの座標 を含む建物形状を 2 次元地図から選び出す. 3.4. 名 称 表 示 位 置 決 定 モジュール 名称が建物に重なって表示されるように,名称を表 (b)シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 図 4. モ ー シ ョ ン セ ン サ の 誤 差 に よ る 一 致 確 率 の 変 化 示するディスプレイ座標を決定するモジュールである. しかし,現在,この表示位置決定モジュール部分はま 図 5 は , 視 線 方 向 は 建 物 に 垂 直 で あ る と し て , GPS だ実装されておらず,ただディスプレイ中央に表示し の 誤 差 も 含 め て 計 算 し た 結 果 で あ る . つ ま り , GPS が ているだけである.実装は今後の課題とする. (x , y) を 指 し て い る 時 の 一 致 確 率 を 示 し て い る . 図 このモジュールは,画面一杯に 1 つの建物が見えて 5 (a)は GPS 標 準 偏 差 を 5m と し た と き の 結 果 で あ る . いるときは,ディスプレイの中心に表示するだけで重 こ ち ら の 結 果 も ,建 物 の 真 ん 前 に い る 場 合 が 最 も 良 い . 畳できるので,特に価値が無い.しかし,建物オブジ し か し ,真 ん 前 (x=0)か ら 少 し ず れ る と ,す ぐ に 確 率 は ェクトが複数抽出された場合には,後ろにある別の建 低 下 し 始 め GPS の 誤 差 の 影 響 は 大 き い こ と が わ か る . 物の名称が,前の建物に重ねて表示されてしまわない ところで,建物に近づくにつれて,一致確率が低く よ う に 名 称 の 表 示 位 置 を 決 め る 役 割 を 持 つ .こ の と き , なっているが,これは,建物内部にいるときは,その 名 称 の 表 示 位 置 だ け で な く ,表 示 す る 名 称 の サ イ ズ や , 建 物 を ”見 る ”こ と は で き な い は ず な の で , 抽 出 さ れ た 縦 書 き ,横 書 き に 変 更 す る と い っ た 工 夫 も 考 え ら れ る . 建物を見ている確率は 0 であるとしているためである. GPS の 誤 差 を 考 え る と , 標 準 偏 差 を 5m と し て い る の 4. セ ン サ 誤 差 の 影 響 提 案 手 法 で は , GPS・ モ ー シ ョ ン セ ン サ の 誤 差 が 誤 抽 出 及 び 誤 表 示 を 招 く と 予 想 さ れ た .そ こ で ,実 装 を 行 う前に,抽出した建物と実際にユーザの視線の先にあ る建物が一致する確率を,簡単なモデルを用いて計算 し ,誤 差 の 影 響 を 検 証 し て き た [7].本 章 で は ,誤 差 は 正 規 分 布 す る と 仮 定 し ,建 物 幅 20m ,モ ー シ ョ ン セ ン サの誤差分布の標準偏差を 5 度として行ったシミュレ ーションの結果を示す. 図 4は GPS に は 誤 差 が な い も の と し て ,モ ー シ ョ ン センサの誤差の影響を見た.抽出された建物の真中か ら 10m 離 れ た 位 置 に ユ ー ザ が 立 っ て お り ,建 物 の 端 か ら 端 ま で 眺 め て い る 状 況 を 想 定 し て い る ( 図 4(a)). 図 4(b)が シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 で あ る .建 物 の 中 心 で ,GPS が 建 物 か ら 10m 以 内 の 場 所 を 示 し て い る と き に ,真 の ユ ー ザ 位 置 が 建 物 内 部 (Y<0)で あ る 可 能 性 が で て く る ( 正 規 分 布 を 仮 定 し て い る の で , 10m 以 上 離 れ て い る と 建 物 内 部 に な る 確 率 は ほ と ん ど 無 い ).こ れ に より,建物に近づくほど一致確率が下がるという結果 になる.これはユーザが建物の中にはおらず,必ず道 路上にいるといった情報を加えることで位置の推定に 制限を加えれば改善されると期待する. 同 じ 設 定 で GPS 誤 差 の 標 準 偏 差 の み 1m に し た 場 合 が 図 5 (b)で あ る . 5m の と き と 比 べ て , 一 致 確 率 が 上 がっている. まとめると,重畳表示に最も有利な状況は,幅の広 い建物に対して真ん前に立ち,真正面を向いたときで あ る . ま た , 幅 20m の 建 物 に 対 し て 重 畳 を 行 う に は GPS 誤 差 の 標 準 偏 差 が 1 m な ら ば ,利 用 で き そ う で あ (a) 建 物 名 重 畳 シ ス テ ム の 表 示 画 面 (a)シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 GPS 誤 差 の 標 準 偏 差 5m (b)シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 GPS 誤 差 の 標 準 偏 差 1m 図 5.GPS・モ ー シ ョ ン セ ン サ の 誤 差 に よ る 一 致 確 率 の 変 化 (b) 3 次 元 地 図 か ら の 抽 出 イ メ ー ジ 図 6. 松 屋 銀 座 へ の 重 畳 実 験 結 果 モーションセンサが建物に垂直な向きを指している場合 おく.ユーザの位置及び向きのデータは 1 秒ごとに取 る . 使 用 す る GPS は 2.2.1項 で 紹 介 し た よ う に ,“ あ る 得 さ れ る の で ,遅 く と も 1 秒 以 内 の 計 算 が 要 求 さ れ る . 条 件 の 下 で ”で は あ る が “ 1m RMS”の 精 度 が あ る の で , 視 線 上 に は 2,3 個 の 建 物 が あ る が ,他 の 建 物 に 遮 ら れ 重畳表示は可能であると思われる. ず に 見 え て い る 建 物 は 1 個 で あ っ た と き( 図 6 (b)の よ う な 状 況 ),ユ ー ザ が 見 て い る 建 物 の 名 称 を 得 る の ま で 5. 建 物 名 重 畳 実 験 重 畳 表 示 実 験 の 結 果 , 及 び , 実 験 中 に 得 ら れ た GPS の捕捉衛星数に関する知見を示す. に か か っ た 時 間 は , 約 270 ミ リ 秒 で あ っ た . こ の 時 間 は抽出に要する時間は視線の長さや,建物の密集具合 で変化する. 5.1. 銀 座 中 央 通 りでの重 畳 実 験 東京都中央区銀座の中央通りにある松屋銀座への 5.2. 捕 捉 衛 星 数 重 畳 表 示 実 験 を 行 っ た . 松 屋 銀 座 は , 建 物 幅 が 約 110 GPS は 衛 星 が 3 個 以 上 捕 捉 で き て い な い と 測 位 が 行 mの中央通り沿いにある建物の中でも特別に巨大な建 えないが,銀座のようなビル街では建物に遮られて空 物である.前章の誤差影響シミュレーションの結果に が狭くなり,十分な数の確保が難しいのではないかと よると,これほどの大きさの建物の真ん中付近をみて いう懸念があった.これに関して,約1時間の実験中 いたならば,正しい名称の抽出が可能であろう. で得た知見を述べておく. 実際に松屋銀座前の路上に立ち,ほとんど移動せず 図 7~ 図 9は 実 験 中 に 取 得 し た GPS デ ー タ か ら 作 に松屋を眺めたところ,名称の重畳表示に成功した. 成したグラフである.重畳実験等の活動をしながら取 結 果 を 図 6に 示 す .図 6の (a)は シ ス テ ム の 表 示 画 面 得したデータであり,厳密にデータを取得した状況を で あ り ,(b)は 3 次 元 地 図 か ら の 建 物 抽 出 イ メ ー ジ で あ 説明できるものではないので参考データとしてみてい る.実際にはシースルーディスプレイに画面が表示さ ただきたい.測位は,銀座中央通りの建物に近い歩道 れており,名称越しに松屋の建物が見えている.図 6 上で始め,途中で道路の真中に移動した. (b)で 点 A は GPS の 示 し た ユ ー ザ 位 置 で あ り ,モ ー シ ョ 図 7に GPS 測 位 状 態 を 示 す .横 軸 が 測 位 開 始 か ら の ン セ ン サ が 示 し た 方 向 が 点 B の 方 向 で あ る .視 線 (線 分 経 過 時 間 で ,縦 軸 は 0 の と き 測 位 無 効 ,1 の と き は GPS AB)上 に は 松 屋 銀 座 と 松 屋 東 館 が あ り , こ の 内 , 視 認 単 独 測 位 , 2 の と き は DGPS 測 位 を 行 っ て い る こ と を 建物オブジェクトとしては松屋銀座のみが抽出された. 示 す .グ ラ フ の 前 半 1700 秒 付 近 ま で は ,断 続 的 に 測 位 こ こ で , 図 1の 座 標 変 換 モ ジ ュ ー ル か ら 建 物 名 取 得 無効となっている部分があるが,以降は連続して2を モジュールまでの計算に要した時間について,述べて 示 し て お り , DGPS 測 位 が 行 え て い る こ と が わ か る . 後 半 部 分 で は ,GPS ア ン テ ナ を 一 定 の 場 所 に 固 定 し た ことで安定したものと思われる. 様々な場面で正しい名称表示を行える必要がある. 建物名重畳システムでのエラーがユーザに検出さ れるのは 2 つの状況が考えられる.1つ目は間違った 建物を抽出し,それにより間違った名称が得られた場 合.2つ目は,表示位置の問題であり,名称は正しい が,その建物に重なって見えなかった場合である. エラーが起こる要因は,次の項目が考えられる. (1) センサシステムの誤差 図 7. GPS 測 位 状 態 の 変 化 (2) モデルと実際の違い 0= 測 位 無 効 , 1= 単 独 測 位 中 , 2= DGPS 測 位 中 (3) 地図データの不正確さ (4) データ取得から表示までの経過時間 それぞれについて説明していく. (1) セ ン サ シ ス テ ム の 誤 差 4節 で シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た GPS と モ ー シ ョ ン セ ン サ の 誤 差 に よ る エ ラ ー で あ る .GPS の 測 位 が で き なかった場合も考える必要がある. 図 8. GPS 衛 星 の 使 用 数 (2)モ デ ル と 実 際 の 違 い 個々の機器内部での違いと,機器の配置の違いがあ る . 前 者 の 例 は , HMD は 60cm 先 に 約 13 イ ン チ の デ ィ ス プ レ イ を 表 示 す る と さ れ て い る が ,実 際 に は 60cm ぴったりではなく,ディスプレイサイズも正確ではな いこと.後者の例は,ユーザの視点の位置を測りたい 図 9. DOP 値 が ,GPS 受 信 機 を 目 元 に 配 置 し て い る わ け で は な い こ 図 8に は 測 位 に 使 用 し た 衛 星 の 数 の 変 化 を 示 し , 図 とがある.このような,計算に使用しているモデルと 9は DOP 値 の 変 化 を 示 し た . 図 7に 示 し た 測 位 状 態 が 実際の違いがエラーをうむ. 0 の と き は , 使 用 衛 星 数 , DOP を 含 む 測 位 状 態 以 外 の (3) 地 図 デ ー タ の 不 正 確 さ データは更新されないことに注意する必要がある.図 8で 衛 星 数 が 細 か く 変 化 し て い る 原 因 の ひ と つ に は , 地図データが現実を正確に反映していないことに よるエラーである. GPS ア ン テ ナ の 位 置 を 足 元 か ら 身 長 よ り 少 し 高 い 程 度 3 次元地図は正確に実世界を写したものではない. の高さまで上げたり下げたりして,捕捉衛星数の変化 例えば現在使用している 3 次元地図の建物形状には, を 調 べ て い た こ と が 影 響 し て い る .GPS ア ン テ ナ を 身 屋 根 の 形 は 含 ま れ て い な い .ま た 建 物 以 外 の 構 造 物( 線 長より少し高くあげると,捕捉衛星数が多くなり,低 路等)も含まれていない.より詳細なデータを含む地 いところでは少なくなるという変化が顕著にみられた. 図を用いることで,建物の抽出や,建物が建造物の陰 図 9の DOP 値 と は 衛 星 の 配 置 と 測 位 精 度 の 劣 化 関 係 になっていないかといった判別が正確に行えるように を表す単位なしの数値である.測位に利用している衛 なる.しかし,それに伴い計算時間は増大する. 星の配置が散らばっていれば,測位精度は良くなり, DOP 値 は 小 さ く な る . 全体として,銀座中央通りでは静止状態での測位は 好条件で可能であるが,移動中には断続的に測位不能 となる場合があると考えられる. また,3 次元地図と名称を取得する 2 次元地図が全 く別の地図なので,それぞれのモデル化の違いによる エラーもあると考えられる. 他には,新しいビルが建ったり,古いビルがなくな ったりするような,地図データが採取された時点での 現実環境と,システム使用時の環境が変化している場 6. シ ス テ ム の 問 題 点 と 対 処 法 の 検 討 合もある. 6.1. エラー要 因 の考 察 (4) デ ー タ 取 得 か ら 表 示 ま で の 経 過 時 間 表示されている名称と実際の建物が一致しており, かつ名称が建物に重なってみえる“正しい表示”に松 データ取得から表示までの時間で,ユーザが動くこ とによっておきるエラーである. 屋銀座では成功した.しかし,ユーザの立ち位置や見 現システムでは,データ取得間隔が 1 秒である.つ ている向き,建物の大きさ等が変わった場合にも成功 まり1秒の間,同じデータが表示され続ける.時速 4 するとは限らない.有用なシステムとするためには, k m の 速 さ で ユ ー ザ が 歩 い て い る ユ ー ザ が 10 m 先 を 見ているとすると,1秒の間にユーザの位置は約1m も続ける. 変わり,データ取得時に見ていた点はディスプレイ上 ま た エ ラ ー 要 因 の 分 析 も 行 っ た .今 後 GPS の デ ー タ で は 約 6c m ず れ て い る . 道 に 沿 っ て ま っ す ぐ に 進 ん が取れなかった場合や,正確な建物の抽出が難しくな でいる場合,1m程度の移動があっても同じ建物をみ る建物の端の方を見ている場合に,間違った表示をし ており,表示している名称が全く違うという事態には ないようにする方法を考案していく. ならないかもしれないが,向きに関しては道の左を向 さらに,3 次元地図を 2 次元に射影した地図から視 いているのと右を向いているのでは全く違う建物にな 認オブジェクトの候補を選択する際,検索する視線の ってしまうので,もう少し深刻である. 長さを固定しているが,その長さの決定法も今後の課 題である.これに関連して,遠くに見える建物への名 6.2. 表 示 エラー要 因 に対 する対 処 法 の一 提 案 称の表示方法も考えたい. 一 般 的 に AR を 実 現 す る た め に は 現 実 環 境 と 仮 想 物 謝 体 の 位 置 合 せ が 重 要 な 課 題 と な る [10]. し か し , 松 屋 辞 銀座への重畳に成功したように,我々のシステムにお 3 次 元 地 図 DiaMap は 三 菱 商 事 株 式 会 社 の ご 好 意 に いて現実環境と仮想物体の位置あわせはそれほど深刻 よる.ここに謝意を表する.また建物名重畳システム な問題ではない.また建物の抽出を行うための視線の のプロトタイプは,国土地理院長の承認を得て,同院 測定も,厳密な値でなければならないというわけでも の 技 術 資 料 H・ 1-No.2「測 地 成 果 2000 の た め の 座 標 変 ない.なぜなら,建物の名称は建物の幅一杯に表示し 換 ソ フ ト ウ ェ ア TKY2JGD」を 利 用 し 作 成 し た も の で あ なければならないというものではなく,現実の建物に る .( 承 認 番 号 重なっていればユーザは十分に認識することができる. 名称の抽出も視線が少しずれていたところで結局同じ 建物を指していれば問題ない. 誤差をひとつひとつ減らしていけば,正確な表示が で き る よ う に な っ て い く .セ ン サ 誤 差 を 減 ら す た め に , 例 え ば , GPS が 建 物 内 の 位 置 を 示 し て い る 場 合 に は , マップマッチングを適用し推定位置を道路上に修正し たり,画像認識による補正を行ったりすることが考え られる.しかし,一般に正確さと計算時間の間にはト レードオフの関係があることを覚えておかなければい けない. 我々の目標とするシステムは,市街地のような広範 囲 で , 容 易 に 利 用 可 能 な AR シ ス テ ム で あ る . そ の た めセンサ精度の改善法の中でも,参照画像等の事前準 備が必要な方法は推奨されない.むしろ,間違った表 示をしないようにするという方針を採るほうが良いか もしれない.例えば,建物の端の方を見ていて抽出さ れた建物の信頼性が落ちてきたような場合には,名称 を表示せず,代わりに,ユーザに対して「もうすこし 左をみろ」といった誘導をかけることが考えられる. 今後,このような対処法を検討していきたい. 7. ま と め と 今 後 の 課 題 3 次元地図を用いた市街地における利用を想定した 建物名重畳システムの実装し,簡単な実験を行い,松 屋銀座への重畳表示に成功した.今回は道路幅,建物 幅ともに銀座の中でも広く,有利な状況での実験であ ったが,さらに他の建物や場所で実験を行い,本手法 の有効性の分析・検証を重ねたい.その際,シミュレ ーションによるセンサ誤差の影響の分析と実際の比較 国 地 企 調 第 302 号 ) 文 献 [1] NAVITIME: http://www.navitime.co.jp/ja/index.html [2] G. Reitmayr and D. Schmalstieg, “Collaborative Augmented Reality for Outdoor Navigation and Information Browsing,” Proc.Symposium Location Based Services and TeleCartography 2004, Vienna, Austria, January 2004. [3] S. Feiner, B. MacIntyre, T. Höller, and A. Wbster, “A Touring Machine: Prototyping 3D mobile Augmented Reality Systems for Exploring the Urban Environment,” Proc. ISWC ’97 (Int. Symp. on Wearable Computing), pp.74-81, Cambridge, MA, USA, October 1997. [4] R. Azuma, et. al. “Recent Advances in Augmented Reality”, IEEE Computer Graphics and Applications, Vol.21, No.6, pp.34-47, Nov/Dec 2001. [5] 天 目 隆 平 ,神 原 誠 之 ,横 矢 直 和 ,“ 拡 張 現 実 感 を 用 い た ウ ェ ア ラ ブ ル 観 光 案 内 シ ス テ ム「 平 城 宮 跡 ナ ビ 」,” 電 子 情 報 通 信 学 会 技術研究報告, PRMU2003-186, January 2004. [6] Ke Xu, et. al. “Visual registration for unprepared augmented reality environments,” Personal and Ubiquitous Computing archive, Vol.7 ,Issue 5, pp.287-298, October 2003. 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