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胎盤免疫とリンパ球:妊娠維持と感染防御の新しい生殖免疫

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胎盤免疫とリンパ球:妊娠維持と感染防御の新しい生殖免疫
様式Ⅳ
平成27年度 中期計画達成プロジェクト経費(戦略的研究推進経費)実施報告書
部 局 等 :農 学 部
研究事業名
胎盤免疫とリンパ球:妊娠維持と感染
防御の新しい生殖免疫領域の開拓
配分額
880千円
免疫応答の制御の中心となるリンパ球、特に自然免疫に関与するリンパ球
研究事業の
実施概要
の研究における最新の技術と知見を妊娠の成立・維持の機序解明に応用す
ることで、妊娠の生物学に新たな視野を開くことを目的とし、医学と農学
への発展のための基盤的データの蓄積に取り組むとともに、より大型の競
争的研究資金の獲得を目指す。
妊娠初期マウス子宮からのリンパ球分離法を確立し、妊娠初期子宮中のリ
ンパ球をFACS解析により分類・同定した。妊娠初期の脱落膜においてはNK
細胞が大きなポピュレーションを成していたため、妊娠各ステージの子宮
におけるNK細胞の分布動態を免疫組織学的解析により検証した。また、子
研 究 事 業 の成 果
宮において着床気特異的に発現が増加するケモカインを同定した。これら
の成果は今後の詳細な子宮内リンパ球の経時的形態的なプロファイリング
と機能解析に重要な知見をもたらすものである。3月4日には琉球大学医学
部にて学外シンポジスト2名を招いて生殖免疫シンポジウムを開催し、広範
な連携による生殖免疫研究の推進という本研究プロジェクトの趣旨が高く
評価された。
成 果 の公 表
子宮NK細胞の分布動態については、浸潤性栄養膜細胞の分布動態検証を追
加し、J Reprod Devへの平成28年度中の投稿を予定している。妊娠期間を
通じた子宮内リンパ球のプロファイリングは平成29年度のJ Reprod Immuno
lへの投稿を目指し、さらなる解析に取り組む。
氏
研究事業担当者
経 費 の執 行 状 況
名
所属職名(役職名)
担 当 分 担
金野俊洋
農学部・准教授
研究統括
松﨑吾朗
熱生研・教授
リンパ球の分離同定
梅村正幸
熱生研・准教授
リンパ球の機能解析
中期計画区分
積算内訳
研究経費
配分額
執行額
備
考
千円
千円
・旅費
240
0
・消耗品費
440
606
・会議費
200
274 学外シンポジ
スト謝金・旅
費 x 2名
※費目間流用については、各年度の配分決定額の総額の50%の範囲内であれば、特段の手続きを経る必要
はない。しかし、この範囲を超える流用を行おうとする場合には、研究推進会議議長の承認を必要とする。
様式Ⅴ
平成27年度 中期計画達成プロジェクト経費(戦略的研究推進経費)成果報告書
部局等名
農学部
研究事業名
胎盤免疫とリンパ球:妊娠維持と感染防御の新しい生殖免疫学領域の開拓
実施期間
平成 27 年 7 月 15 日~平成 28 年 3 月 31 日
予算額
880 千円
1.研究計画の達成状況
研究の成果をまとめた実績報告書をもとに、当初計画がどのように達成されたかを記載し
てください。
(研究結果、実績の羅列的記載ではなく、当初計画がどのように達成されたかに
ついて、内容を含ませ記載のこと。
)
本研究は、免疫応答の制御の中心となるリンパ球、特に自然免疫に関与するリンパ球の
研究における最新の技術と知見を妊娠の成立・維持の機序解明に応用することで、妊娠の
生物学に新たな視野を開くことを目的とし、より広範な部局間連携による医学と農学への
発展とより大型の競争的資金獲得を目指して実施した。決定配分額を踏まえて申請時の計
画を見直し、本事業の実施計画を 1)マウス妊娠子宮からのリンパ球分離法の確立、2)分離
したリンパ球の分類、3)妊娠子宮おけるリンパ球分布の経時的形態的解析を行いさらなる
競争的資金獲得のための基礎データを得ることとした。
実施計画 1)については、妊娠初期のマウス子宮からリンパ球を分離する手法を確立し、
今後の研究の基盤となる実験系を確立することができた。実施計画 2)については、妊娠初
期マウス子宮から分離したリンパ球の FACS 解析による分類・同定を行い、子宮における
自然免疫リンパ球の詳細なプロファイルを得た。実施計画 3)については、妊娠初期マウス
子宮における自然免疫リンパ球の主要なポピュレーションを占めた NK 細胞について、経
時的形態的解析を行い、NK 細胞が妊娠中期にかけて分布を増加させ、妊娠後期にはその
分布を減少させることを明らかにした。これら 1)から 3)の実施計画の遂行により得られた
知見は、今後の研究の推進とさらなる競争的研究資金獲得のための基盤となるものであり、
本事業の研究計画は達成されたと言える。
学外研究者との情報交換とより広範な部局間連携体制の基盤形成は、本事業の大きな目
的の一つである。平成 28 年 3 月 4 日に琉球大学医学部において、学外研究者 2 名をシンポ
ジストに招いて「生殖免疫シンポジウム」を開催し、生殖免疫に関する最新の知見につい
て情報交換を行うとともに、さらなる研究の推進のための基盤作りを行った。また、2名
の学外シンポジストからは、生殖生理学と自然免疫学の連携による生殖免疫研究の推進と
いう本事業のコンセプトに対し、高い評価を得た。
2.中期計画達成への貢献
当初計画に記載した中期計画と当該研究事業との関連をふまえ、研究の成果がどのように
中期計画の達成、推進に貢献したかを、申請時カテゴリーとの関連もふまえて記載してくだ
さい。
また、当初計画に記載した内容以外でも、特に中期計画の促進に寄与したと考えられる事
項があれば記載してください。
沖縄県においては、代謝性疾患の増加が問題となっている。出生後の長期にわたる食
生活や生活習慣が成人後の健康のリスク因子であることは周知の通りであるが、胎児期
における子宮内環境もまた生涯にわたる健康に影響を及ぼす。例えば、胎盤の機能不全
は胎児の子宮内発育制限の原因となるが、子宮内発育制限は成人後の代謝性疾患のリス
ク因子として知られる。また、近年ではジカ熱と小頭症との関連が指摘され大きな問題
となっているが、母体に感染したジカウィルスが胎盤を超えて胎児の脳に影響を及ぼす
機序は未だ不明である。妊娠の確立と維持における自然免疫リンパ球の役割の解明を目
的に遂行した本研究事業によって得られた成果は、不妊治療や妊娠関連疾病の機序解明
などの基礎として重要であるのみならず、胎児にとって生涯にわたる健康に影響する子
宮内環境の解明につながるものであり、次世代を見越した長期的視点からの健康長寿に
向けた取り組みの基盤となるものである。
したがって、本事業により得られた成果は、本学を特徴づける研究領域 3 の「健康長
寿」の分野における「基礎科学研究を重視しつつ、地域特性を踏まえた世界水準の研究
を戦略的に推進し特化させ」ることに貢献するものである。また、本事業における研究
の遂行と「生殖免疫シンポジウム」の開催を通じて、部局間での連携のみならず学外研
究者との連携体制も整いつつあり、沖縄を中核とした妊娠免疫の研究体制、すなわち「中
核的な学術研究拠点を形成」に貢献したと言える。
3.部局等における戦略的研究への貢献、波及効果
当該研究事業が、各部局等で戦略的に推進しようとする研究にどのように貢献したか、
あるいは今後の特色ある研究の推進や研究の高度化にどのように貢献すると考えられるか
について、その波及効果を含めて記載してください。
農学部は、食や環境など多岐に及ぶ教育・研究上の役割を有している部局であるが、
ライフサイエンスへの貢献もその役割の重要な一つである。本事業を通じて熱帯生物
圏研究センター分子生命科学研究施設との協力体制を強固なものにしたことは、農学
部におけるライフサイエンスのさらなる進展に大きく貢献するものである。また、農
学部や分子生命科学研究施設において第一線の学外研究者を招いて開かれるセミナー
に相互に参加することにより、それぞれの部局の研究者および学生の科学への理解を
深め、農学部における基礎科学研究の意識向上にもつながっている。
4.当該研究事業の今後の発展、展開
当該研究事業をさらに継続的に発展させるための研究計画、競争的資金獲得への展望など
があれば記載してください。
本研究事業は妊娠における自然免疫リンパ球の役割を解明するための萌芽的な基礎
研究であり、医学分野および農学分野への発展のためにはさらなる競争的資金を獲得し
研究を推進させることが必須である。本事業の研究体制に加えて医学部産婦人科との連
携し、本事業による成果を「次世代の健康長寿に向けた基盤研究としての胎盤の生物学」
に発展させるため、平成 28 年度琉球大学戦略プロジェクト研究に申請する予定である。
また、妊娠期間を通じた子宮における自然免疫細胞のプロファイリングと機能解析、お
よび、自然免疫細胞による子宮の局所着床応答の機序解明について、さらなる予備実験
を積み重ねたのちに、それぞれ挑戦的萌芽研究への申請、さらにはより大型の科研費申
請へと発展させる予定である。
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