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Page 1 Page 2 アメリカの国立 アメリカの国は実に広く感じられる。ワシ

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Page 1 Page 2 アメリカの国立 アメリカの国は実に広く感じられる。ワシ
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
アメリカの国立公園と博物館
Author(s)
田村, 実
Citation
熊本地学会誌, 37: 2-8
Issue date
1971-06
Type
Departmental Bulletin Paper
URL
http://hdl.handle.net/2298/27805
Right
アメリカの国立公園と博物館
熊 大 田 村
実
アメリカの国は実に広く感じられる。ワシ
る道路には週末(土、日は休日)になると家
ントンでは薄暗くなって夕食をという7時頃
族連れの普通卓キャンピングカー、ポート
にまだ西海岸のロスァンゼルスではフットボ
をひっぱった普通車が疾駆している。殆どが
ールをやっていて実況放送がみられる。その
レクリエーションに出かけれるのである。鉄
ように広い国でありながら公害問題は声を大
道やバス路線が殆どすたれてしまっているア
にして叫ばれている。自然を維持し、理解し
メリカでは自家用車なしでは生活範囲も著し
ていくためには国立公園や博物館といったも
く限定される。いきおい自動車による旅行の
のは欠くことができない。むしろどこへ行っ
ためにモーテルが建ち、駐車場のある施設が
ても人間が生活している日本のような狭い国
必要になる。全米自動車協会(A、A、A、)の
にこそこんな施設をよく整えるべきである。
ガイドブックにはモーテルや観光地案内が詳
数だけ多くて名前のみ国立公園、その中にま
しくでており、道路地図はガソリンスタンド
わりを構わず建てられるケバケパし<ゴミゴ
で立派なのがもらえる。モーテルも普通のホ
ミした観光施設それを取締まることもでき
ない行政当局という日本の現状は人口密度が
テル以上のよい設備のものもあり、チップば
普通おかなくてもよいので利用者が多い。
高いといえばそれもそうだとうなづかざるを
国立公園の入口には料金徴収所があり、パ
えないが、もっとみんなの力で何とかできな
ンフレットをくれる。しかし外国旅行者はパ
いものだろう力も
スポートを見せればただで通してくれる。少
アメリカにDept・ofInteriorという省
し走るとたいていインフォーメーション・セ
がある。そのまま訳すと私の日本の内務省の
ンターかピズィターズセンターがあり、その
ようになるカミインデイアンの保護や、国立
国立公園の説明があり、職員が質問にも答え
公園、天然資源等の国土の開発保全を司って
てくれる。絵はがき、出版物、スライドの販
いる。アパラチヤ山脈は低い中部の大平原
売もあり、又別に売店もある。こういうとこ
で何の変哲もないのでも国立公園はいきおい
ろの1つ1つが博物館である。グランドキヤ
ロッキー山脈のある西部に集中している。私
ニオンのように広いところには数ケ所センタ
はカリフォルニヤ滞在中カリフォルニヤ州の
ーがある。ここの職員は公園の維持のため所
ヨセミテ渓谷(写真⑤)、キングスキヤニオ
謂レンジヤーとして巡回もしている。アメリ
ン、セコイヤ等の国立公園アリゾナのグラ
カではどこへいっても簡単に便所がないので
ンドキヤニオン(写真③)化石木(写真⑦)、
ここの施設を利用しなければならな叱又各
コター州のプライス(写真⑥)、ザイオン
所に説明板(写真④)があり、父母や引率者
(写真③)等の国立公園をまわったのでそこ
から子供達がよく説明を聞いているのをみか
で感じたことを述べてみたい。
ける。旅行者には年輩の夫婦づれもある。し
アメリカの道路は素晴しい・どんな田舎へ
いっても殆ど舗装されている。観光地へ通づ
かし黒人が殆どいないのはどうしてであろう
力も中産階級入りして白人よりも所得が多い
−2−
人も多く、又低所得者とはいえみな自動車を
中。都市のように財政上余裕のないところは
もっているのにこれは解せないことである。
両者が同居している。
黒人には自然をめでる気持がないのであろう
前者は人類の生活圏の拡大に伴う滅びゆく自
か?ヨセミテやキングズキヤニオン国立公
然の保護という立場が強く(簡単には言いき
園では熊が出てきた時の注意が書いてあった。
れないが)、後者はこれからの日常生活の発
ヨセミテでは鹿がでてきてパンを人の手から
展の為に過去をふりかえり、現代技術を理弊
食べる程に慣れていた。
するというものである。スミソニアンでは
、国立公園は自然に関するものばかりではな
く、歴史的な国立公園もある。例えば武器製
造の中心であり、後に奴隷解放のジョンブラ
NaturalHistoryMuseumとHistory
andTechnologyMuseumその他2,3
のものにわかれている。
ウンの挙兵で名高い西バージニヤとメリーラ
私はサンフランシスコでカリフォルニヤ、
ンドの境界のハーパーフエリ一等は歴史的な
アカデミー・オブ・サイエンスズの博物館を
国立公園でも町の建物全体が博物館のような
訪れる機会をもち、米国国立博物館であるス
ものである。又国立公園でなくても国や州が
ミソニアンで研究し、ニューヨークAmerican
保存に努力しているものがほかにもある(例
ofNaturalHistoryをみる機会を得た。
えばNationalMonuments)。
このあとヨーロッパでBritishMuseum
アメリカではnativeという言葉は注意し
ofNaturalHistoryやミュンヘンの
て使わないといけない。アメリカのnative
DeutschesMuseumもみる機会があるが、
はインディアンなのである(あるアメリカ人
とりあえず次にアメリカの博物館の代表とし
は日本のnativeもアイヌで事情は日本人も
アメリカ人も同じだと言ったが)oグランド
てスミソニァンを、ー又地質という立場から紹介
してみたい。なお欧米の大学や研究機関には
キヤニオン近辺の岩石砂漠の中にインディア
昔から普及のための博物館と別にCoHection
ン保護区というのがある。ここには低い円柱
保管を中心にしたMuseumが沢山あり、私が
訪れたBerkereyのカリフォルニヤ大学でも立
状のレンガづくりの家や木造の小屋があり、
派なCollectionをもっていた。最近の東大
インディアンはお土産のジユツ玉あみや、ト
ルコ石細工等で生活している。近くを100hi
資料館というのは之に類するものである。
以上の速さでレクレェーシェンの車が走って
ワシントンの町はキヤピトルとワシントン
いくのをみて彼等は何を考えているのであろ
モニュメントを結ぶモールの緑地帯を中心に
して東西南北に発達している。このモールに
う力も
SmithsonianInsititution(略してス
博 物 館
ミソニァンという)傘下の大部分の施設があ
博物館は広い意味で人文科学に関するもの
る。スミソニアンはイギリスの科学者James
と自然科学に関するものがある。自然科学に
Smithsonがワシントンにスミソニアン・イ
関するものは名前のとおり本来、博物学を中
ンスティチューションの名で人類の知識の進
心に発達してきたもので、工業技術の進歩と
歩と普及の為に施設をつくってほしいと約50
日常生活における諸技術の重要性から、博物
万ドルを寄付したのに基いており、国から費
学中心の自然史博物館に対し、工業技術を主
用の出る国立の施設である。ワシントン以外
とする科学館、生活技術館というべきものが
にも物理天文の施設をマサチューセッツ州にもつ
最近増えてきている。両者は性格がかなり違
うので別個の建物を建てるところが多い力え
下にある。①は1855年の古い建設で全体の
が、ここでは第1図の他に国立の動物園も傘
−3−
〔 弓
真
説
①歴史技術博物館と自然史及び人類博物館
明 〕
④恐竜の墓場モリソン屑
ワシントンで記念塔より東方をみおろした
コロラド州のデンハンの南方にはロッキー
写真でも手前から歴史・技術博物館がその
山脈が走りロッキー国立公園の一部であるく
向うに自然史及び人類博物館が並んでいる<
ここにはプレカンブリヤンの上にチョコレ
これらの建物の北側にはconstitution
ート色の石炭紀の地層が不整合で重なり、
Ave.をへだてて政府の建物が並んでいる。
順次二畳紀・三畳紀・ジュラ紀モリソン層
自然史博物館には地質・化石関係の展示物
・白亜紀届と重っている。手前の説明板は
があって、ドーム状の中央部が展示場でそ
石炭紀層のところにたてられ左から右の方
の両側(手前と前方)に研究棟がある。
に斜に走る道路にはモリソン層が分布して
前方が東翼でここには地質調査所の層位古
いる。モリソンの部落はこの右方にある力え道
生物部門の研究陣も同居し、化石も含めて
路沿いの砂岩の各所には恐竜の骨が沢山入
動物関係の人達が中心であ為
っている。この道路の右端は下部白亜紀層
であるカミこの地層には恐竜の足跡がついて
②後期恐竜展示室(アメリカ自然史博物館)
いるし、もう少し前方(上方)からはTri
ニューヨーク市にあるAmericanMuseum
ofNaturalHistoryの後期(大体白
亜紀)恐竜展示室である。右がタイライザ
ceratopsもほり出されたそうである。
⑤ヨセミテの氷河地形
ウルスの立派な骨組で、真中に頭を左側に
カリフォルニヤのヨセミテ渓谷は第四紀の
しているのがトリセラトープス(三騎竜)
氷河侵食による典型的なV字谷をつくって
で、この部屋にはここの探険隊が蒙古で発
いる。左方の一枚岩がエルカピタン、ずっ
見Protoceratopsの卵の化石や、恐竜
と前方の右岸(上流に向って)のつきだし、
の皮の化石等も展示してある。同じ4階の
ているのが有名なハーフドームである。こ
EeulyDinosersの展示室には
Brontosaurus^Stegosurasの完全
の上流にはカール地形もあるし、氷河のす
り傷が花間岩におしつけられているところ、
堆石のたまっているところ等がある。昨年
な骨格がある。
秋このエルカピタンに二人の若者が挑み、
③Zion国立公園の大きなクロスラミナ
ヘリコプターの救助も断ってとうとう落差
グランドキャニオンの少し北のユター州に
1000mの一枚岩を上った。ここでは野生
の鹿が出てきて、パン等食べたりした。
あり、Virginriverが侵食したせまい
谷の両側にジュラ紀の幽戊層の赤みがかつ
たのや白い色の層が分布していてきれいで
ある。特に風成層を物語る巨大なクロスラ
⑥ブライスキャニオン(BryceCanyon)
ミナは日本では一寸みることのできない素
ユター州にあり始新世の赤・黄・白色と
色とりどりの地層を侵食してできた地形で
晴しぃ露頭を示している。
ある。日本の四国にある土柱と同じ理屈で
−4−
がいてあって自然の妙味に驚いた。
できたと考えればよいだろう。 ま こ と に 大
規模なものである。Natural Bridge-^
いろんな形の岩石の柱がある。
③グランドキャニオン
アリゾナ州にあり、侵食谷とそれによって
⑦化石木国立公園
つくられた壮大な地層の露頭で有名である。
(PetrifiedwoodNatinalPark)
ここには先カンブリヤの地層から古生代末
アリゾナ州の三畳紀の陸成層が風化して様
迄の地層が分布し、前面にみえるすばらし
々な色を呈している岩石砂漠の中にこの公
い不整合はプレカンブリヤ紀とカンブリヤ
園がある。殆ど水平層で直径1.5mもあっ
紀の傾斜不整合でその上に二畳紀迄の古生
て長き6∼7"zの珪化木がごろごろしてい
層がのっている。石灰岩が多いけれど地層
る。特にこれらが皆きれいな色をした蛋白
の硬軟によりどこにどの地層がつづくのか
石でおきかわっていて、みがけばとてもき
すぐわかり、どこ迄も地層の追跡ができる。
れいである。後方の建物は国立公園にはど
谷の深さは200m位で、徒歩でおりられる
こへ行ってもあるVisitor'scentor
でパンフレットをくれ又説明を聞いたり、
が馬もある。台地上の崖のふちのあちこち
に展示館や説明板があり理解を助ける。写
その国立公園についての展示もあをここ
真をとっているのはSouthRimからです
では珪化石はいろんな色にそまったのをみ
がNorthRimにも展望所があるc
喜一一﹃●一一一一
②ワシントン記念塔
③ホワイトハウス
④モール
⑤スミソニァン・インスティチューション
⑥NaturalHistoryMuseum
⑨⑩⑪⑫⑬⑭瞳
①キヤピトル
⑦HistoryandTechnologyMuseum
⑧ArtsandIndustriesMuseum
−6−
AirandSpaceMuseum
FreerGalleryofArt
NaturalGalleryofArt
ConstitutionAve
PennsylvaniaAve
FederalTriangle(政府建物)
緑地帯
運営を司り、上記施設の外に研究・教育・普
小・中。高の教科書によく出る海底・陸上等
及活動を行っており、最近ではどちらかといえ
の化石累観が実に見事に組み立てられている。
ば研究活動が中心になってきた感じである。
ともかく保存のよい化石ばかりなのでまこと
博物館についていえば中心はNat・Hist.
に見ごたえがある。
説明を補うものとして、入口で50セント
Build.とHist.&Technologyが中心
であるが宇宙開発に伴ってロケットやアポロ
払うとレシーパーを捜してくれ−,(耳)の
宇宙船の展示等がArtsandIndustrins
形のマークのある展示では(重要なのには大
Build・やAirandSpaceBuilding
である)説明がキャッチできるようになって
で行なわれており、これらをあわした新館を
いてまことに便利である。
②の近くに建てる計画といわれる。NHBは
やはり私も日本人の1人として恐竜に弱い
正面のホールに世界最大の1955年にアン
せいか恐竜の展示室が最も興味をひいた。巨
ゴラでつかまった象の剥製があり、このホー
大なプラキオザウルス、剥竜(ステコザウルス)
ルを含めた建物の中央部に展示がある。地階
三騎竜(トリセラトープス)等の陸上のもの
は裏側の玄関に通じその時々に応じ特別な展
の他に、海棲のモサザウルスやイクチオザウ
示をするところでも1階は正面から入って右
ルス(これは英国産)それに空中をとぶプテ
手前から奥にかけて化石の展示がある。左手
ライドン等豊富である。しかし頭骨はあるが
前から奥にかけては動物の展示があり、左手
タイライザウルスは骨格がなく、恐竜のみは
奥にはインディアン・エスキモーなどアメリカ
ニューヨークのAmericanMuseumof
のNativepeopleの展示右手の奥には
NaturalHistoryの方がすばらしいと思
太平洋諸島・アジア・アフリカの人々の文化
った。スミソニアンにはウーリーマンモスや
が展示されている。
アメリカマストドン等肩まで10フィートあ
2階には右手前に鉱物宝石、奥に考古学、
るような見事な骨格があるが、パナマの新生
左手には冷血動物の展示や解剖学の展示があ
代層からのMegatherというなまけものの
る。この中央部の建物の両翼に研究棟や図書
仲間の化石は巨大で、あと足は36cmの長さ
館等がある。
で陸上では最大の靴をはいたであろう。
地質関係では2階に地質現象の展示を目下
2階にはすばらしい鉱物標本の展示と共に
準備中であるが一部に岩石部分が展示されて
宝石類の展示がある。44.5カラットあり
いる1階(地質関係の)はすべて化石の展示
bluecolorとしては世界一のホープダイ
に使われてい為植物と無脊椎動物化石恐竜
ヤモンドや200カラット以上のスターサファ
及び肥虫類、魚類及び両棲類北アメリカの
イヤ等各種の宝石の展示が多く、このような
第三紀哨乳動物化石、第四紀の哨乳動物の化
高価なものを展示できるのはカードに充分の
石に大体わかれている。
費用をつぎこめる国立博物館であるからであ
化石を地層からどうしてとり出してどのよ
ろう。宝石鉱物の展示はすべて厚いガラス張
うに複元するかということをアメリカの古生
りのケースの中にある。話は別だが、日本人
代の古生物学者がよくやる石灰岩を弱酸でと
の訪問者も多いがカバンやケースは必ず中を
かして中の化石をとり出す方法で説明されて
あらためられる。これは政府系の建物に反戦
運動の過激グループが爆破するとオドシの電
いる。
国立であるために展示に充分費用をかけ、
話をかけるので(事実キャピトルの一部は爆
恐竜などでは発掘時の状態を展示して複元し
破された)それに対応してだそうで、一般の
た骨組と対置して理解をしやすくしており、
見学者ばかりでなく(すべての研究者も玄関
−7−
でカバンを吟味されている。このことは一寸
であろう。私も帰る前には意志表示をしてい
我々には奇異に感じられワシントンのいやア
きたいと考えている。
メリカの複雑な事情をものがたっている。
ワシントンはアメリカの首府であり、しか
又最近の目ざましい我国の発展と考えて納
もその中心のモールにキャピトル・ワシント
得のいかないものに世界各地域の人類と文化
ンモーニュメント・博物館・美術館が集って
の展示の日本コーナーがある。インディアン
いるために国の内外の観光客が博物館を訪
エスキモー、大平洋やアフリカの裸の人達と
れる人が多い。特に小・中・高校生や日曜日
共に、アジア人種のコーナーがある。まこと
の家族連れの参観者が実に多い。季節のよい
に古くさい仏像とか田植の様子、スキや鍬が
昨今は広いモールの駐車場もスクールバスや
あり、脱穀機を1つおいて最近の日本の農業
貸切バスですぐうまってしまう程である。そ
技術の進歩を醤いてあるが当を得ない展示で
れ程教育と結びつきが強い。アメリカインディ
ある。しかし中国よりはる力斗と輿、展示場所
である。今もって教養のないアメリカ人(日
アンのことを知る為のにNaturalHistory
BuiIdingに子供を連れてくるクラスもある
本へ来た人は別)がゲイシャガールにフヂヤ
というふうで、博物館の利用が進んでいるよ
マ、低賃金の日本を連想するとはこんなとこ
うに思う。日本でももっと博物館を利用し、
ろにも原因があるかもしれな↓も日本の航空
足りないところはみんなの要望で予算をとれ
会社や観光業者が客寄せ中心に古い日本ばか
るようにし、博物館を充実していきたいもの
り宣伝することと併せて、問題とすべきこと
である。
−8−
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