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コンテンツ産業の21世紀型ビジネス・ モデルに関する調査研究
C C C I R E P O R T コンテンツ産業の 21 世紀型ビジネス・ モデルに関する調査研究 アマゾン・ドット・コムなど残る プロジェクト経過報告 も見られる。AOL では、広告収 五社である。 また、収入源を多様化する動き 入、電子商取引による収入を増や そうとしており、それらはすでに インターネットをはじめとする 事例分析の対象企業 全収入の17%を占める。ストレイ 情報通信ネットワークの発達によ 事例分析の対象は表1に示した ヤーの場合は、学生に対するロー り、データベース、映像、ゲーム 5 社である。いずれもインターネ ンの貸し付けも行い、教育サービ ソフトの配信のような情報サービ ットを用いてコンテンツを配信し スとの相乗効果を上げている。 スを行うさまざまな「コンテンツ ており、各分野において株価が最 産業」の成長が見込まれている。 も高い企業である。 ィングを支援するため、ホームペ ビジネスモデルの特徴 ージにアクセスする顧客の購買動 CCCI では、情報通信環境や、 社会への浸透度、活用面で先行す (1)収入源 広告収入にも、広義のマーケテ 向を分析するサービスを提供する る米国でのコンテンツ産業のビジ 収入を得る仕組みには大きく2 といった新しい動きが見られる。 ネスモデルとそのマネジメント原 種類がある。第1はホームページ こうした企業の収益面をみる 理に関して、1998 年9月から NRI への広告掲載料、第2はコンテン と、インターネット銘柄といわれ アメリカの上級研究員、吉川尚宏 ツの消費者である個人や企業から るヤフー、CNET、アマゾンは創 をリーダーに、調査研究を進めて の加入料、利用料などである。 業以来赤字を続けていたが、前2 ヤフー、CNET の場合、大半を 者は 1998 年 12 月決算で、設立以 広告料で得ている。他方、加入料、 来初めて単年度黒字を計上した。 利用料を主な収入源とするのは、 AOL は 1997 年度に赤字だったが、 いる。 今回は、ビジネスモデルを中心 に、成果の一部を紹介する。 98年度は黒字、99年度も黒字とな る見通しである。残る3社は、イ 表 1 事例分析の対象企業 企業名 主な事業内容 ンターネットによる事業を行う前 ヤフー インターネット検索情報サービス から情報サービスを行っており、 CNET テレビおよびインターネットを統合したコンテンツ提供 会社 事業基盤が安定している。 アマゾン・ドット・コム インターネットによる書籍、CD などの販売 広告収入、マーケティング収入 ストレイヤー・エデュケーション 社会人向けの教育サービスおよび金融サービスの提供 ガートナー・グループ 情報技術に特化した調査・コンサルティング フォレスター・リサーチ 情報技術に特化した調査・コンサルティング(規模はガ ートナー・グループの 10 分の1程度) そうである。また、ポータルサイ 全世界 1960 万人の加入者を有するインターネットサービ ト(インターネットの入り口)と AOL(アメリカ・オンライン) をあてにするビジネスは、現在の ところ立ち上がりに時間がかかり ス・プロバイダー(独自のコンテンツも提供) しての地位を築けなかった場合 76 知的資産創造/ 1999 年 10 月号 サイバー社会基盤研究推進センター(CCCI)は、サイバー社会とその基盤に関する研究などを推進・支援するために、慶應義塾と野村総合研究所が共同で 1995 年 7 月に設立した非営利組織です は、それらを収入源とするのは容 表 2 ビジネスモデルのパターン 易でないであろう。 (2)資産 コンテンツ産業の本来の資産 は、コンテンツそのもの、または 資産 2) 流動資産 固定資産 中心 中心 企業 A ヤフー ○ ○ B CNET ○ ○ それを作り出す人材だが、有価証 券報告書の貸借対照表上は流動資 収入源 1) 広告収入 加入料、 中心 取引手数 料等中心 パ タ ー ン C 産、特に現金と株式であることが 投資 3) 株式・ 設備中心 M&A中心 ○ ○ アマゾン ○ ○ ○ ストレイヤー ○ ○ ○ ガートナー ○ ○ ○ フォレスター ○ ○ ○ AOL ○ ○ ○ 多い。ヤフー、アマゾン、フォレ D スターの場合、全資産に占める流 注 1)総収入に対する広告料収入の割合が 50 %を超えているかどうかを目安とする 2)総資産に対する流動資産の比率が 50 %を超えているかどうかを目安とする 3)総投資に対する株式・ M&A 投資の比率が 50 %を超えているかどうかを目安とする 動資産の割合が 90 %を超えてい る。こうした企業では、コンテン ツ商品の開発費も費用として計上 ば、余資を株式市場で運用す 中心、投資は株式や M&A が中心 されており、コンテンツ、ブラン るのが合理的 というモデルに分類された。 ドなどの無形資産は一般にほとん ● コンテンツ産業は、将来の覇 今後の研究の展望 権をだれが握るかを決める重 昨今、知識、知恵、ブランドと また、インターネットを利用す 要な時期にきており、M&A いった目に見えない経営資源の重 る企業は、固定資産の割合が少な によって「時間を買う」こと 要性が指摘されている。ここで取 いのも特徴的である。インターネ が合理的 り上げた企業は、まさにそうした ど貸借対照表上には表れない。 ットによるコンテンツ配信に加 なかには、フォレスターのよう 時代を先取りする企業群である。 え、CATV(ケーブルテレビ)向 に、株式の公開公募で得た資金を、 こうした企業群の企業価値をいか けの番組制作を行う CNET、プロ 株式に再び投資するというよう に見極めるか、また、どうすれば バイダーでもある AOL の場合は、 に、あたかも企業そのものが投資 そうした企業の価値が高まるか 比較的固定資産比率が高い方だ 信託のように機能している場合も を、今後の研究のなかで明らかに が、それでもその割合はそれぞれ ある。 していく予定である。 34%と16%にすぎない。 (3)投資 (4)ビジネスモデル 今回の7社を、上述した収入源、 CCCI に関するお問い合わせ、インター ネットによる情報閲覧などは下記へお願 キャッシュフロー計算書を見る 資産、投資という3つの基準に当 と、こうした企業は大半の投資を てはめると、表2に示す4つのパ 株式や M&A(買収・合併)に向 ターンに分類されることがわか けている。これには次の2つの背 る。4社がパターン C の、加入料 電子メール [email protected] 景があると考えられる。 や取引手数料などの非広告料収入 ホームページ いいたします。 野村総合研究所 CCCI 事務局 電話(045)336 −7810(直通) ● 現在の米国の株高を考慮すれ を収入源とし、資産は流動資産が http://www.ccci.or.jp/ccci_home.html C C C I R E P O R T 77