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機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性

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機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
Received:Oct. 1, 2011
Accepted:Feb. 1, 2012
Published online:Mar. 30, 2012
Original Article
Clinical Application of “Curcumin”, a Multi-Functional Substance
Akira Shimatsu 1), Hideaki Kakeya 2), Atsushi Imaizumi 3), Tatsuya Morimoto 4), Masashi Kanai 5), Seiji Maeda 6)
1) Clinical Research Institute, National Hospital Organization Kyoto Medical Center, Kyoto, Japan
2) Department of System Chemotherapy and Molecular Sciences, Division of Bioinformatics and Chemical Genomics, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University, Kyoto, Japan
3) THERAVALUES CORPORATION
4) Division of Molecular Medicine, School of Pharmaceutical Sciences, University of Shizuoka, Shizuoka, Japan
5) Outpatient Oncology Unit, Kyoto University Hospital, Kyoto, Japan
6) Faculty of Health and Sport Sciences, University of Tsukuba, Ibaraki, Japan
Anti-Aging Medicine 9 (2) : 75-83, 2012
(日本語翻訳版)
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
島津章 1)、 掛谷秀昭 2)、 今泉 厚 3)、 森本達也 4)、 金井雅史 5)、 前田清司 6)
1)
2)
3)
4)
5)
6)
国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 京都大学大学院薬学研究科 医薬創成情報科学専攻 システムケモセラピー ・ 制御分子学分野 株式会社セラバリューズ
静岡県立大学薬学部分子病態学
京都大学医学部附属病院 外来化学療法部
筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻
抄録
我々人類は、 洋の東西を問わず、 古来より、 「薬食同源 ・ 医食同源」 の考えと経験則に基づき、 さまざまな疾患の予
防や治療に食を利用してきた。 さらに近年、 機能性食品の分野における科学的研究の進展は著しく、 多くの機能性食品を
疾患の予防や治療に臨床応用する試みがなされている。 本総説では、 機能性食品成分であるクルクミンに焦点をあてて最
近のトピックスを紹介する。 天然資源ウコン (ショウガ科) の主成分であるクルクミンは、 抗酸化作用、 抗炎症作用、 抗が
ん作用をはじめとした種々の薬理作用が報告されているが、 経口吸収率が非常に低いことが臨床応用上、 大きな問題となっ
ている。 そこで、 我々は、 ナノ粒子化 ・ 表面加工技術を利用した高吸収クルクミン製剤 (セラクルミンⓇ) を開発し、 ヒト経
口吸収試験においてセラクルミンⓇの高い吸収性、 ならびに肝機能改善効果などを明らかにした。 次に、 クルクミンの持つ
p300/CBP のヒストンアセチル化阻害作用を利用した心筋細胞核を標的とした心不全治療の可能性を示した。 またクルクミ
ンの持つ NF-κB 活性抑制作用を利用した膵がん治療に向けた薬物動態試験に関する知見を明らかにした。 さらには動脈
硬化度を改善させる有酸素運動とクルクミンの効果について明らかにした。 これらの研究は、 クルクミンの薬理活性の科学
的知見を基盤にしたセラクルミンⓇ経口吸収率の向上と薬理活性効果を明らかにした知見であり、 セラクルミンⓇおよびクルク
ミン関連化合物の今後の幅広い臨床応用研究が期待される。
KEY WORDS: Curcumin, DDS, Heart failure, Cancer, Arterial Stiffness
Anti-Aging Medicine 9 (2) : 75-83, 2012
本論文を引用する際はこちらを引用してください。
(c) Japanese Society of Anti-Aging Medicine
( 1 )
〒 422-8526 静岡県静岡市駿河区谷田 52-1
静岡県公立大学法人 静岡県立大学 薬学部分子病態学
教授 森本達也
電話:054-264-5763 メール:[email protected]
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
1.クルクミン
ては、 フリーラジカル消去などを介した抗酸化作用や、 NF- κ
B の活性化抑制などを介した抗炎症作用などが知られており、
日本人の平均寿命は 2010 年度のデータで、 男性 79.64 歳
細胞保護作用を示す報告もある。 臨床試験も多数実施されて
と世界 4 位、女性は 86.39 歳で世界1位と高齢化が進み、益々
おり、 心不全予防や、 がん、 アルツハイマー病、 その他の疾
医療の需要が高まってきている。 しかし、 ただ単に寿命を延
患に対する効果が期待されている 2,3) (Fig. 1)。 そこで、 本稿
長するのではなく、 健康で長生きをすることが求められている。
では、 クルクミンの臨床応用についての最近のトピックスを概説
すなわち、 エイジング (加齢、 老化) がもたらす病的な変化
する。
を食い止め、 改善することで元気に長寿を享受することを目指
す究極の予防医学として、 アンチエイジング医学という新しい
学問分野が注目を集めている。 これに伴い、 我が国では、 健
康の保持増進に役立つとされる健康食品が注目されている。
また、 民間療法の中には、 既存の医薬品と比較しても遜色の
2.高吸収クルクミン製剤セラクルミンⓇ の
開発と臨床応用
無い優れた薬理効果のある薬草を用いているものもある。 これ
クルクミン (Fig. 1A) は脂溶性が高く、 経口摂取してもごく
らより、 身体に良いと言われる食材や生薬の中には、 未知の
わずかしか体内に吸収されないため、 吸収率の改善が、 臨床
有効成分が含まれている可能性がある。
本総説では、 健康食品として注目されている天然生薬ウコ
応用の際の最重要課題とされている 1)。こうした背景の下、我々
ンに含まれるポリフェノールの一種であるクルクミンに着目した。
は、 ナノ粒子化および表面加工技術を用いて、 水溶液中で
ウコンに 3 ~ 5%含まれているクルクミンは、 古くからインドで
安定な分散性をもつ、 高吸収クルクミン製剤セラクルミンⓇを開
はカレーに用いる香辛料 ・ 着色料として、 中国では漢方とし
発した4)。 さらに、 このセラクルミンⓇの、 アルコール代謝に対
て用いられ、 米国では安全な食材として認可されている。 我
する作用4)、 肝機能改善効果、 および、 皮膚に対する作用
が国でも、 健康食品やカレーだけでなく、 古くからマスタード、
などについて、 ヒトにおける臨床試験を実施している。 これら
たくあん漬や和菓子に用いられている。
の知見を含め、 高吸収クルクミン製剤セラクルミンⓇ の臨床応
近年、クルクミンの生体に対する様々な作用が注目されており、
世界各国で、 研究が進められている
1,2)。
用に向けた状況を概説する。
クルクミンの作用とし
A
B
Fig. 1. Structure and therapeutic application of curcumin
A: Chemical structure of curcumin
B: Various diseases against which curcumin may have therapeutic effects [check]
( 2 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
Ⅰ)セラクルミンⓇの開発 4)
クルクミンは、 従来、 肝臓によいといわれてきたが、 その作
クルクミンのバイオアベイラビリティの低さは、 臨床応用に際
して克服しなければならない大きな課題である。 これまでも国
内外で様々な製剤化の工夫がなされてきたが、 劇的な吸収率
の増加は見られていなかった。 そうした中、 (株) セラバリュー
ズ (東京都、 千代田区) は、 表面加工を施しナノ粒子化した
用の実態は必ずしも詳らかにはなっていない。 従来のクルクミ
ンより優れた吸収性を有するセラクルミンⓇにより、 飲酒時の血
中アセトアルデヒド濃度上昇の抑制や、 肝機能マーカーの正
常化効果が見られたことは、 クルクミンの肝臓に対する作用を
解明する一助となると考えられる。
クルクミン製剤として、 セラクルミンⓇを開発した。
セラクルミンⓇ 経口摂取時の吸収性をラットおよびヒトにて検
Ⅲ)セラクルミンⓇの皮膚ダメージ抑制効果
証したところ、 いずれも血中のクルクミン濃度は、 セラクルミンⓇ
皮膚に紫外線があたると、 NF-κB が活性化されて炎症が
の摂取量に依存して増加し、血中濃度曲線下面積 (AUC) は、
亢進し、 皮膚の角化異常やメラノサイト増殖による色素沈着、
クルクミン原末に比してラットで 30 倍以上、 ヒトで 27 倍以上と
コラーゲン分解などが生じることが知られている (Fig. 2)
5)。
なった。 このようにセラクルミン の高い吸収性が認められたこ
クルクミンには NF-κB の抑制を介した抗炎症作用や、 抗酸
とから、 これを用いて、 いくつかの疾患領域においてセラクル
化作用があるほか、 コラーゲン分解酵素の発現を抑制するとも
ミンⓇの臨床試験を開始した。
いわれており、 皮膚のダメージの進行に対してクルクミンが抑
Ⓡ
制的に働くことが期待される。
Ⅱ)セラクルミン
の肝臓機能改善効果 4)
そこで我々は、 褐色モルモットの紫外線照射による色素沈
Ⓡ
まず我々は、 セラクルミンⓇ を用いた臨床試験として、 飲酒
30 分前にセラクルミンⓇをクルクミン換算で 30mg 摂取した場合
の作用を調べるクロスオーバー試験を行った (n=7 x 2)。 その
結果、 セラクルミンⓇを摂取した場合には、 摂取しなかった場
合に比して、 飲酒による血中アセトアルデヒド濃度の上昇が有
意に抑制された。
また、 別の臨床試験として、 γ-GTP などの肝機能マーカー
がやや高値である人を含む成人 (n=19) に、 生活習慣を大き
く変えずに 1 ヶ月間セラクルミンⓇを朝夕 90mg ずつ 摂取しても
らい、 肝機能マーカー値の変化を調べたところ、 全体の平均
で AST (GOT) が 12% (p =0.016)、 ALT (GPT) が 16% (p =
0.041)、 γ-GTP が 15% (p =0.010) と有意な減少がみられた。
さらに被験者を層別すると、 これらのマーカー値がもともと基準
値を超えていた群においてセラクルミンⓇによる肝機能改善作
用が、 より明確に示された。
着モデルを用いて、セラクルミンⓇの効果を検証した。その結果、
クルクミン換算で 1mg/kg/day および 10mg/kg/day に相当す
る量のセラクルミンⓇを 4 週間連続で強制的に経口投与したモ
ルモットにおいて、 コントロール群に比して、 紫外線照射部位
の明度変化率として 6 ~ 18%の色素沈着の抑制がみられた。
また、 健康女性において、 クルクミン換算で 30 および 90mg
に相当するセラクルミンⓇを毎日朝夕 2 回、4 週間摂取してもらっ
たところ、 摂取前に比較して、 肌の水分量が有意に上昇して
いた (増加率 15%)。 顔の皮膚のシミ、 シワ、 毛穴などの画像
診断においても、 用量依存的に改善効果がみられた。
このように、 セラクルミンⓇは、 皮膚の色素沈着を抑制し、 肌
の水分を保持し、 さらに、 顔の皮膚の様々なダメージも抑制
する作用を示した。 これらのことは、 in vivo 実験におけるクル
クミンの作用から予測されたことであるが、 高吸収クルクミン製
剤セラクルミンⓇを用いたからこそ、 動物モデルやヒトにおける
経口摂取時にも顕著な作用を確認できたと考えられる。
Fig. 2. Ultraviolet rays may affect the skin through NF-κB-induced inflammation.
( 3 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
Ⅳ)セラクルミンⓇの可能性
ウスでは、 このリモデリングの亢進が野生型マウスと同程度まで
抗炎症、 抗酸化、 細胞保護作用などが知られているクルクミ
ンは、 今回我々が示した肝臓や皮膚に対する作用のほか、 心
不全、 がん、 認知症、 運動による筋肉疲労、 関節炎など、 様々
な疾患領域における効果が期待されている天然由来物質であ
る。 しかし、 その吸収性の悪さから、 効果発現には大量の経口
摂取が必要となることが大きな課題とされてきた。 こうした中、 従
抑制された 15)。 以上のデータより、 心臓における p300 の HAT
活性は心不全治療のターゲットとなる可能性が示唆された。
最近、 健康食品として注目を浴びているウコンの主成分で
あるクルクミンが p300 の特異的阻害薬であることが報告された
16)。
我々はこの安価で安全性が確認された天然物を用いた心
不全治療が行えないかということを検討した。
来のクルクミンよりもはるかに優れたバイオアベイラビリティを示す
新規素材として開発されたセラクルミンⓇは、 クルクミンのもつ生
Ⅱ)新しい心不全分子標的治療薬:クルクミン 17) (Fig. 3)
体に対する多彩な作用を最大限引き出すことができる製剤として
動物実験の前に、 まずラット初代新生仔培養心筋細胞を
期待できる。 セラクルミンⓇの臨床応用に向けて、 その有用性を
用いてクルクミンの効果を検討した。 α1-adrenergic receptor
さらに検証するため、 現在、 複数の臨床試験が進行している。
agonist であるフェニレフリンを培養心筋細胞に投与すると、 肥
大反応遺伝子である ANF やβ -MHC のプロモーターの転写
活性を亢進し、 心筋細胞面性は増大するが、 クルクミンはこれ
らを抑制した。 さらにクルクミンはフェニレフリンによる心筋特異
3.新しい心不全分子標的治療
的転写因子 GATA4 のアセチル化および GATA4 と p300 の結
我が国においても、近年ライフスタイルの変化により、高血圧、
動脈硬化の患者が増え続けており、 高血圧性心疾患、 心筋
梗塞、 及びこれらの最終終末像である心不全の発症頻度も急
増し、 大きな社会問題になっている。 21 世紀の高齢化社会の
到来とともに、 これからますます増加する心不全の発症予防法
及び治療法を確立することは、 医療経済的、 社会的急務であ
る。 本章では、 このクルクミンを用いた新しい心不全治療の可
能性について概説する 6)。
合や DNA 結合能、 並びに核やヒストンのアセチル化の亢進
も抑制した。 また、 p300 を心筋細胞に過剰発現させると、 肥
大反応遺伝性の転写活性の亢進や心筋細胞肥大を生じるが、
クルクミンはこれらも抑制した。 以上より、 クルクミンが p300 の
HAT 活性を抑制し、 心筋細胞肥大を抑制することが示された。
次に、 心不全ラットモデルを用いて、 クルクミンが心不全の
進行を抑制するかどうか検討を行った。 高血圧性心不全モデ
ルである、 食塩感受性ダールラットにクルクミン 50mg/Kg/ 日
を 11 週齢の代償性肥大期から 18 週齢の心不全期まで7週間
連日経口投与した。 心エコー検査にて、 心収縮力の指標で
Ⅰ)新規心不全治療の分子標的の探索
ある左室短縮率 (Fractional shortening : FS) が、 クルクミン
心不全の発症においては種々の遺伝子発現が変化すること
投与により有意に改善された。 また、 クルクミンにより左心室壁
が報告されている。 心不全の治療のためにもっとも必要とされ
の肥厚や個々の心筋細胞肥大も抑制された。 さらに、 心臓に
ていることは、 治療薬のターゲットとなる共通の核内経路を解
おける p300 の蛋白レベル、 GATA4 のアセチル化や GATA4
明することである。 我々は、 心筋細胞肥大の核内情報経路に
と p300 の結合も亢進したが、 これらはクルクミン投与によって
おいて、 心筋特異的 GATA 転写因子がキー蛋白の 1 つであ
抑制された。 このクルクミンの効果が他の心不全モデルも認め
7-11)。
次に、 心筋梗塞後の左室心筋細胞
られるかどうかを、 ラット心筋梗塞モデルを用いて、 同様に検
において核の過剰なアセチル化が認められることから、我々は、
討した。 心筋梗塞作成1週間後よりクルクミンおよびコントロー
ヒストンアセチル化酵素 (Histone Acetyltransferases : HAT)
ルを 6 週間毎日経口投与した。 心筋梗塞モデルにおいても、
活性が心不全発症に重要な役割を果たしているのではないか
FS の低下が、 クルクミン投与によって改善された。 さらに、 心
と考えた。 そして、 心不全発症における遺伝子発現調節に
筋梗塞による心筋細胞肥大も、 クルクミンの投与により抑制さ
HAT 活性を持つ転写コアクチベーター p300 と GATA 転写因
れた。
ることをみいだした
以上より、 天然物ウコンの成分であるクルクミンが、 培養心
子群の協力 (p300/GATA 経路) が中心的な役割を果たして
12-14)。
すなわち、 p300 を心筋細胞に過
筋細胞で心筋細胞肥大を抑制し、 心不全の原因として頻度の
剰発現させると、 HAT 活性依存的に心筋細胞肥大を誘導す
高い高血圧性心疾患および心筋梗塞のモデルであるラットの
るが、 HAT 活性を消失させた変異体 p300 は、 肥大刺激によ
心不全発症を抑制することが示された。
いることを見いだした
る心筋細胞肥大を抑制した。 さらに、 我々は p300 を心臓に
しかしクルクミンが高血圧のより初期において、 収縮能は保
過剰発現するマウスを作成したところ、 心臓は肥大し、 心不全
たれているが拡張能の低下した心肥大の発症を抑制するかど
を呈した 8)。 この過程において、 ヒストンのアセチル化が亢進
うかについてはわかっていない。 6 週齢の食塩感受性ダール
しているだけでなく、 心筋特異的転写因子 GATA4 のアセチ
ラットに高食塩食を負荷すると著明な高血圧となり、 11 週齢で
ル化が亢進し、 肥大反応遺伝子のプロモーターとの結合能が
収縮能は保たれているが拡張能の低下した心肥大を呈する。
亢進していることがわかった。 また、 このトランスジェニックマウ
この心肥大形成過程におけるクルクミンの効果を検討するた
スでは心筋梗塞後の心臓のリモデリングが著明に亢進するが、
め、 6 週齢のダールラットに高食塩食投与と同時に、 クルクミ
HAT 活性を消失させた変異体 p300 を心臓に過剰発現するマ
ンを 5 週間連日経口投与をおこなった。 高食塩食による高血
( 4 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
Fig. 3. Curcumin inhibits p300 HAT activity and thereby the progression of cardiomyocyte hypertrophy and heart failure.
圧により、 左室後壁厚は肥大したが、 クルクミンの投与により
Ⅴ)心不全治療の今後
有意に抑制された。 さらに、 組織学的検査により個々の心筋
細胞肥大も抑制されることが確認された。 すなわち、 クルクミン
が高血圧性心不全 (収縮機能低下) の進展 ・ 増悪を抑制す
るのみならず、 高血圧性心肥大 (拡張能低下) の形成を抑
制することを見出した。 高血圧モデルにおいて、 クルクミンは
降圧することなく、 直接 心筋細胞に働きかけ肥大を抑制する
ことより、降圧薬 (β- 遮断薬、ARB、ACE 阻害剤) とは異なっ
た機序で効果を発揮したと考えられる。 降圧剤との併用により、
よりよい心肥大、 心不全治療薬となる可能性が示された。
さらに、 クルクミン療法を臨床応用するにあたり、 既存の心
不全治療薬との比較、 及び相加作用の検討が必要である。
心不全の標準的治療薬である ACE 阻害薬 (エナラプリル) と
我々は、 心不全の根本的薬物療法確立のため、 心筋細胞
核内の共通の情報伝達経路を模索してきた。 そして、 HAT の
一つである p300 が心不全治療薬の分子標的であることを見出
し、 さらに p300 特異的 HAT 阻害剤で健康食品の一つとして
使用されているクルクミンが培養心筋細胞で肥大を抑制、 また
複数の動物モデルで心不全を改善することを確認し、 現在、
ヒト臨床試験を行っている。 本研究成果により、 心筋細胞核内
遺伝子の発現と機能のコントロールを目的とした 「転写制御を
標的とした治療戦略」 という究極の新しい治療法が開発される
と考えられ、 心不全患者の QOL および予後の改善が達成さ
れることを最終目標に、 今後もさらなる発展が期待される。
クルクミンの効果を、 ラット心筋梗塞モデルを用いて検討した。
クルクミン単独で ACE 阻害剤と同程度の心不全改善効果を認
めると同時に、 両者の併用により相加的な心機能改善効果を
認めた 18)。 ACE 阻害薬との相加効果を認めたことより、 クル
クミンは ACE 阻害薬とは違った作用メカニズムを持つこと考え
られ、 クルクミンと降圧剤との併用により、 よりよい心肥大 ・ 心
不全治療薬となる可能性が示された。
Ⅰ)クルクミンの抗がん作用について
クルクミンには多様な活性を持つことが基礎研究の結果から
明らかとなっているが、 我々はその中でもクルクミンが持つ抗
Ⅲ)セラクルミンⓇの心不全改善効果
がん作用に着目した。 Pubmed で ‘curcumin’ と ‘cancer’ を
クルクミンは腸管からの吸収効率が極めて悪いため、 大量に
接取しなければならない。 そこで我々は、 腸管からの吸収効
率を高めた高吸収クルクミン製剤 4) (セラクルミン) に着目した。
この高吸収クルクミン製剤低用量 (0.5mg/kg) および天然ク
ルクミン低用量 (0.5mg/kg) を心筋梗塞ラットに投与したところ、
高吸収クルクミン製剤投与群のみ、 心筋梗塞後の収縮能の低
下を抑制することができた 19)。
4.セラクルミンⓇを用いた新規がん治療法
の開発
key word に検索すると 1983 年以降 1500 以上もの文献が報
告されており、 特にその半分以上の報告は過去 5 年になされ
たものであり、 現在いかに多くの研究者がクルクミンの抗がん
作用に注目しているかということがお分かり頂けるかと思う。 ク
ルクミンの抗がん作用に関してはさまざまながん腫 (乳がん、
頭頸部がん、 胃がん、 大腸がん、 肝がん、 膵がん、 卵巣がん、
( 5 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
前立腺がん、 白血病、 多発性骨髄腫など) の実験系で確認・
験を行った 25)。 本試験を計画した当時、 日本人のがん患者
報告されている 20-22)。クルクミンはがんの進行に関係する様々
に対してクルクミン服用の安全性を示した報告がなかったこと、
なタンパクの発現や活性に影響を及ぼすことが報告されている
さらにクルクミンと抗がん薬を併用することの安全性に関しては
が、 その中でも特に nuclear transcription factor-κB (NF-κ
国内外を含めて報告がなかったことから、 ゲムシタビンを用い
B) がクルクミンの重要なターゲットの一つと考えられている。 が
た化学療法に 1 日 8g のクルクミンを追加することの安全性と忍
ん組織においては様々な上流シグナル (増殖因子、 サイトカ
容性を検討した。 海外で行われたクルクミンの第 I 相臨床試験
イン、 低 O2 血症など) が NF-κB の活性化を引き起こし、 こ
では 1 日 12g まで服用しても用量規制毒性は認めなかったが、
れが NF-κB の下流に位置する抗アポトーシス作用 (Bcl-2,
① 1 日 8g 以上服用しても血中濃度の増加が認められないこ
Bcl-xL)、 細胞増殖 (cyclin D1, c-myc)、 血管新生 (vascular
と② 1 日 8g を超えると服用量が多くなり継続服用が困難にな
endothelial growth factor (VEGF), interleukin-6)、 転移 (matrix
ること、 という理由により 1 日 8g が推奨用量と考えられており、
metalloproteinases (MMP)) 等に関与する蛋白の発現を亢進さ
我々の試験でも 1 日 8g の用量で開始した。 最初に登録され
せることががんの進行につながると考えられている 23)。 従って
た 3 症例でゲムシタビンと併用してクルクミンを投与しても事前
この NF-κB 活性の抑制作用を有するクルクミンは新しい抗が
に規定した用量規制毒性は認めなかったため、 1 日 8g の用
ん薬として期待できる (Fig. 4)。 クルクミンを抗がん薬として用
量で引き続き第 II 相臨床試験を行い、 計 21 症例に対し試験
いるもう一つの大きな利点としては安全性が挙げられる。 長年
治療を行った。 クルクミンを追加したことによる特記すべき有害
にわたり香辛料や民間療法薬としての広く用いられてきたという
事象は認めず、 クルクミンに対するコンプライアンスも中央値が
事実がクルクミンの安全性を裏付けている。
100% ( 範囲 79-100%) と良好な結果であった。 21 症例と少数
例での解析ではあるものの、 生存期間の中央値は 161 日 (95%
信頼区間 ; 109-223 日 )、 1年生存率は 19% (95% 信頼区間 ;
Ⅱ)クルクミンを用いた臨床試験
先にも述べたようにクルクミンの抗がん作用に関してはすで
に数多くの前臨床試験で確認されていることから、 近年はヒトを
対象とした臨床試験も徐々に増えてきている。 海外の臨床試
験の登録サイトである ClinicalTrials. gov (http://clinicaltrials.
gov/) で‘curcumin’ と ‘cancer’をキーワードに検索したところ、
2010 年 10 月時点で登録されていた臨床試験の数は 27 であっ
たが、 2011 年 5 月にはその数が 34 に増えている。 膵がん患
者を対象としたクルクミンの第 II 相臨床試験が MD アンダーソ
ンがんセンターで行われているが、 クルクミン単剤で膵がんの
肝転移が縮小した症例も報告されている 24)。
我々も膵がんの標準治療薬であるゲムシタビンに抵抗性と
なった膵がん患者を対象にクルクミンを用いた第 I/II 相臨床試
Fig. 4.
4.4-41.4%) であり、 ゲムシタビンに抵抗性となった患者の予後
は 60 日弱という報告もあることを考えると期待の持てる結果で
あった。
一方バイオアベイラビリティが低いということが臨床応用に際
してクルクミンが抱える一番の大きな問題点であった。 我々の
試験でも 5 症例でクルクミンの血中濃度を測定したが、 1 日 8g
のクルクミン服用にもかかわらず一症例を除き血中の濃度は数
十 ng/ml のレベルにしか上がらなかった。 これまでに報告さ
れているクルクミンの血中濃度の結果を Table 1 にまとめたが、
ほとんどの試験でクルクミンの血中濃度は低い値に止まってお
り、 クルクミンの効果をヒトで十分に得るためにはバイオアベイ
ラビリティの向上が不可欠と考えられている。
Curcumin inhibits the activity of NF-κB, a factor involved in cancer progression.
( 6 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
Table 1
これまでに報告されているクルクミンの血中濃度
Dose of
curcumin
Subject
Sample
size
Plasma curcumin Reference
level (mean±SE)
5.動脈スティフネスにおける運動効果およ
びクルクミンの可能性
「 人 は 血 管 と と も に 老 い る 」 と い う William Osler の 言
healthy volunteers
2 g/day
8
6 ± 5 ng/ml
26
葉 が あ る よ う に、 大 動 脈 な ど の 中 心 動 脈 の 硬 化 度 ( 動 脈
patients with
precancerous lesions
8 g/day
2
651 ± 688 ng/ml
27
ス テ ィ フ ネ ス ) は 加 齢 に 伴 っ て 増 大 す る。 動 脈 スティフネ
patients with
colorectal cancer
3.6 g/day
3
4 ± 0.2 ng/ml
28
healthy volunteers
12 g/day
3(1)
57 ng/ml*1
29
ら れ て い た た め、 習 慣 的 な 運 動 や 食 習 慣 が 動 脈 ス テ ィ フ
patients with
colorectal cancer
3.6 g/day
3
below 1 ng/ml
30
ネスに影響を及ぼす可能性については注目されていなかった。
healthy volunteers
8 g/day
6
2300 ± 260 ng/ml
31
patients with
pancreatic cancer
8 g/day
5
134 ± 70 ng/ml
25
ス の 増 大 は、 心 血 管 疾 患 の 独 立 し た 危 険 因 子 と な る。 従
来、 動脈スティフネスの増大は老化現象の一つとして考え
しかし、 習慣的な有酸素性運動には動脈スティフネスを低下さ
せる効果があることが明らかになり、 運動の重要性が認識され
るようになった。 さらに、 運動だけでなく、 食習慣も動脈スティ
フネスに影響を及ぼすことが明らかにされている。 本章では、
*1 一例のみで血中のクルクミン濃度が検出可能
運動と動脈スティフネス、 さらに食事と動脈スティフネスについ
て概説するとともに、 近年、 機能性食品として注目されている
クルクミンに着目し、 クルクミンと動脈スティフネスについての
Ⅲ)セラクルミンⓇを用いた新たな臨床試験
最新の知見も紹介する。
現在国内外においてクルクミンのバイオアベイラビリティの
向上を目指してさまざまな drug delivery のシステム (liposome,
nanoparticle, phospholipids など ) を用いた新しい製剤やより高
Ⅰ)運動と動脈スティフネス
い活性をもつ誘導体の開発が進められている。 2009 年、 国
加齢に伴って動脈スティフネスは増大する。 この動脈スティ
内のセラバリューズ社によってバイオアベイラビリティが 30 倍以
フネスの増大は、心血管疾患や脳血管疾患の危険因子となる。
上向上した細粒化クルクミン (セラクルミンⓇ) が開発された 4)。
加齢とともに進行する動脈スティフネスの増大を日常の身体活
そこで我々は 6 人の健常人ボランティアを対象にこのセラクル
動量の増加や習慣的な運動で予防ないし抑制することができ
ミン を用いて薬物動態試験を実施した。 セラクルミン を 1 回
れば、 中高齢者における心血管疾患や脳血管疾患の発症を
150mg 服用時の最高血中濃度 (Cmax) は 189 ± 48 ng/ml ( 平
予防する上で、その意義はきわめて大きいと考えられる。 従来、
均値 ± 標準誤差 ) であり、 これは従来のクルクミン 1 日 8g 服
動脈スティフネスの増大は、 老化現象の一つと考えられていた
用した時に観察される血中濃度と同等以上の数値であった。
ため、 習慣的な運動がその進行を抑制する可能性については
さらに 2 週間の間を空けて同じ 6 人の被験者に 1 回 210mg の
注目されていなかった。 しかし、近年になり、ジョギングやウォー
セラクルミン 服用してもらった時の Cmax は 275 ± 67 ng/ml
キング、 サイクリングなどの有酸素性運動を継続している中高
であった。 このことからセラクルミン は従来のクルクミンの弱点
齢者の動脈スティフネスは、 日常的に運動を行っていない中
であったバイオアベイラビリティを大きく向上させ、 ヒトにおいて
高齢者に比べて低下していることが示された 32)。 また、 日常
も少なくとも 210mg までは用量依存性に血中濃度を上昇させる
の身体活動量が多いと動脈スティフネスの加齢に伴う増大が抑
Ⓡ
Ⓡ
Ⓡ
Ⓡ
この製剤を用いることにより、 これまでよ
制されることも明らかになった 33)。 さらに、 2 〜 3 ヶ月程度の
りも高いクルクミンの血中濃度を得ることが可能になったため、
比較的短期間の有酸素性運動の継続であっても、 動脈スティ
より確実な効果を得ることが期待できる。 現在このセラクルミン
フネスは低下することが明らかにされている 32,34,35)。 このよう
Ⓡ
に、 習慣的な有酸素性運動には、 動脈スティフネスを低下さ
ことが確認された
3)。
を用いて新たな臨床試験を計画進行中である。
せる効果があることが明確になっている。 また、 習慣的な有酸
素性運動による動脈スティフネスの低下は、 若年者、 中年者、
高齢者、 さらに肥満者においてもその効果が広く認められて
いる 32,34-37)。
習慣的な有酸素性運動が動脈スティフネスを低下させるメ
カニズムの一つとして、 我々は、 血管内皮細胞より産生され、
血管収縮作用や血管平滑筋増殖作用を有するエンドセリン -1
の関与を報告した。 中高齢者における 3 ヶ月間の運動療法前
後で、 エンドセリン受容体遮断薬を急性投与すると、 運動療
法の介入前は遮断薬の急性投与により動脈スティフネスは低
下する (すなわち、 動脈スティフネスの調節にエンドセリン -1
が関与する) が、 血漿エンドセリン -1 濃度が低下し、 動脈ス
ティフネスも低下した運動療法介入後には遮断薬を急性投与
しても動脈スティフネスが変化しない (すなわち、 動脈スティフ
( 7 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
ネスの調節にエンドセリン -1 が関与しなくなる) という結果が
得られている
38)。
Ⅲ)クルクミンと動脈スティフネス
これらのことから、 習慣的な有酸素性運動
によるエンドセリン -1 の産生低下あるいは感受性低下などが
動脈スティフネスを低下させている可能性が強く示唆される。
近年、 抗炎症作用や抗酸化作用などを有するクルクミンが
注目されている。 我々は、 最近、 継続的なクルクミンの摂取
が動脈スティフネスに及ぼす影響について検討した。 閉経後
の中高齢女性を対象に 2 ヶ月間のクルクミン (従来のクルクミ
Ⅱ)食事と動脈スティフネス
ンに比べ約 30 倍の生体吸収性を持つ細粒化クルクミン : セ
動脈スティフネスの低下には、 習慣的な運動だけでなく、
ラクルミンⓇ, セラバリューズ社, 東京, 日本) 摂取を行った
食習慣も重要であることがさまざまな研究で示されている。 肥
ところ、 動脈スティフネスと血圧が低下するという知見を得た
満者に 3 ヶ月間のカロリー制限を伴う食事改善を行うと、 平均
(unpublished data)。 興味深いことに、 この効果は、 2 ヶ月間
して約 8kg の体重減少とともに動脈スティフネスが低下すること
の有酸素性運動の効果とほぼ同等であった。 これらのことから、
が示されている 39)。 また、 動脈スティフネスに及ぼす特定の
何らかの理由により運動が継続できない人にとって、 クルクミン
塩分
摂取は動脈スティフネスを低下させる代替療法になるかもしれ
の摂取量は、 血圧と同様に、 動脈スティフネスに大きく影響を
ない。 さらに、 我々は、 習慣的な有酸素性運動とクルクミン摂
及ぼすことが明確になっている。 塩分摂取の減少は血圧の低
取の併用が動脈スティフネスに及ぼす影響について検討した
下とともに動脈スティフネスを低下させるが、 この減塩は、 血
ところ、 習慣的な運動とクルクミン摂取の併用による動脈スティ
圧に依存しない、 すなわち動脈スティフネスそのものへの直接
フネス低下の効果は、 運動単独あるいはクルクミン摂取単独に
食事内容についても数多くの研究が報告されている
効果であることが横断的検討により示されている
40)。
41)。
また、 閉
比べ、 大きいことが示された (unpublished data)。
経後の高血圧症の女性を対象にした縦断的な研究では、 3 ヶ
月間の減塩食が動脈スティフネスの低下を促すが、 興味深い
Ⅳ)動脈スティフネスの改善には
ことに、 その効果は習慣的な運動の効果よりも大きいことが示
されている 42)。 減塩以外にも、 魚の摂取は動脈スティフネス
を低下させることが報告されている 43)。 魚の摂取が多いと動
脈スティフネスが小さいという成績では、 魚油に含まれる多価
不飽和脂肪酸が動脈スティフネスの低下に関与している可能
性が示唆されている。 この脂肪酸は、 サバ、 サンマ、 イワシ
などの青魚に多く含まれている。 その他にも、 大豆に含まれる
イソフラボン、 辛味性スパイスのチリパウダー、 抗酸化作用の
あるビタミン剤 (ビタミン C やビタミン E)、 コレステロールを下
げる効果もあるニンニク粉、 乳由来のラクトトリペプチドなどを
用いたさまざまな研究において、 動脈スティフネスが低下する
ことが認められている。
日常の身体活動量の増加や習慣的な有酸素性運動は、
加齢に伴う動脈スティフネスの増大を抑制し、 心血管疾患や
脳血管疾患の発症を低下させる効果を有する。 また、 動脈ス
ティフネスは、 運動だけでなく、 食習慣の影響も受けることが
明らかにされている。 近年注目されているクルクミンにも動脈ス
ティフネスを低下させる効果があることが我々の研究で初めて
明らかとなった (Fig. 5)。 クルクミンは、 抗炎症作用や抗酸化
作用などを有しており、 これらの作用により動脈スティフネスを
低下させるのかもしれない。 しかし、そのメカニズムについては、
今後の研究が必要であろう。 本章では、 運動と動脈スティフネ
ス、 さらにクルクミンの可能性も含めて、 食事と動脈スティフネ
スについて、 概説してきたが、 動脈スティフネスの改善におい
て強調すべきことは、 習慣的な運動と食習慣改善は大切な両
輪であり、 両者の組み合わせによる生活習慣の改善がきわめ
て重要になるということである。 この運動と食事の両輪が協調
することによってこそ、 より実効性のある非薬物療法の実現が
期待できると考えられる。
Fig. 5. Curcumin improves artificial stiffness.
( 8 )
機能性食品クルクミンの臨床応用の可能性
6.まとめ
謝辞
我が国は超高齢化社会に直面し、 健康長寿への社会的要
本総説の執筆にあたり、 コメントを頂いた、 長谷川浩二先生、
請はますます強くなってきている。 栄養学、 薬学、 医学を有
佐々木裕樹先生、 大塚喜彦先生、 橋本 正先生に、 心よりお
機的に連携させ、 これらの理念と方法論を習得し、 技術を創
礼申し上げます。
造 ・ 活用することが、 新たな高次機能性食品の開発や食品か
らの医薬品シーズの探索に必要である。 しかしながら、 医薬
品と食品の相互作用や安全性に関する研究は個別に行われ、
体系的に実施されている事例はほとんど見られない。 本論文
で概説したように、 クルクミンに関しては基礎研究から臨床研
究まで多くの研究がなされており、 臨床応用の一歩手前まで
来ている疾患もある。 さらに、 クルクミンには多面性作用があ
り、 1剤で多くの疾患の治療や予防ができる薬物となりうる可能
性を秘めていると考える。 さらなる研究が行われ、 クルクミンの
臨床応用が待たれる。
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