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第2部 身近な緑の保全・創出プラン

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第2部 身近な緑の保全・創出プラン
第2部 身近な緑の保全・創出プラン
21
第1章
1
身近な緑に関する施策の基本方針
身近な緑に関する基本的な考え方
緑の将来像『緑とともに暮らす、ゆとり・安らぎ「埼玉」』を実現するため、緑
のネットワーク形成方針に基づいて、埼玉の緑を守り育てていきます。
都市には約99%の県民が居住していますが、都市の樹林地面積は県土の樹林地
の約24%であり、防災や都市環境負荷の緩和などの緑の機能を、今後一層、県民
が充分に享受していくようにする必要があります。
このため、県民にとって「身近な緑」である「都市の樹林地」を中心に守り育て
ていくことが、緑の将来像を実現する上での効果的な施策展開といえます。
そのため、第2部では、この「身近な緑」に焦点をあて、『身近な緑』を『一本
の樹木』に見立てて、次のような考え方で保全・創出していくこととします。
図15 身近な緑に関する基本的な考え方
緑の将来像『緑とともに暮らす、ゆとり・安らぎ「埼玉」』の実現
『緑の機能の発揮』
多くの枝葉が広がっていく
ための幹のように、身近な
緑を守り、つくる。
⇒基本方針1
緑の質を向上させる
緑を守り、つくる
緑の担い手を拡大する
22
恵みをもたらす葉や実のよ
うに、身近な緑を管理・利
用し、緑の質を向上させる。
⇒基本方針2
樹木を支える根のように、
身近な緑を守り、つくるた
めの緑の担い手を拡大す
る。
⇒基本方針3
2
身近な緑に関する施策の基本方針
《基本方針1》
緑 を 守 り、つ く る(みどりの再生)
緑がもつ各種の機能を最大限に発揮し、県民が緑の恩恵を充分に享受するためには、ま
ず緑が成立するための基盤となる空間を確保することが重要です。
このため、身近な緑を守り、つくる施策を積極的に展開していきます。
緑を守り、
つくる
そのために…
①身近な緑を守る
②新たな緑をつくる
これまでの身近な緑を取り戻
すために、現在残されている緑を
守り、その永続性を担保していく
とともに、新たな緑をつくり出し
ていきます。
緑の永続性を担保するために、
ふるさとの緑の景観地や特別緑
地保全地区等の地域制緑地の指
定を推進していきます。
また、新たな緑をつくるために、
身近な緑
これまでの
減少傾向
時間
過去
「彩の国みどりの基金」を活用し
て、公共施設などの身近な場所の
緑化や壁面・屋上などの施設緑化
を進めるとともに、緑化計画届出
制度の拡充を図るなどの施策を
推進していきます。
現在
図16 「緑を守り、つくる」概念図
幹の充実
緑を守り、つくるために…
○身近な緑を守る
◆地域制緑地の指定の推進
○新たな緑をつくる
(みどりの再生)
23
基本方針1に関する施策指標
緑の保全面積
〔現状値〕 451ha(平成 17 年度末)→〔目標値〕 542ha(平成 28年度末)
1.指標のねらい
身近な緑を保全するための指標です。
平成22年度末達成値
488ha
2.指標の定義
特別緑地保全地区及び近郊緑地特別保全地区の指定面積、緑のトラスト保全地の面積、公有地
化をした面積、ふるさとの緑の景観地指定面積の合計面積をいいます。
3.指標を立てた理由
保全のために許可制がとられている地区や緑のトラスト保全地などで公有地化がされた地区、
県条例によるふるさとの緑の景観地などは、県として保全すべき緑地であることから、この指標
としました。
基本方針1に関する施策指標
緑の創出面積
〔現状値〕42ha(平成 17 年度末)→〔目標値〕 1,060ha(平成 28年度末)
1.指標のねらい
都市部など身近な場所へ新たな緑を創出する
ための指標です。
平成22年度末達成値
576ha
2.指標の定義
「彩の国みどりの基金」を活用した公共施設や民間施設の敷地・屋上・壁面などの緑化面積及
び「緑化計画届出制度」による緑化面積の合計面積をいいます。
3.指標を立てた理由
都市部など身近な場所に新たな緑を創出していくためには、
「彩の国みどりの基金」の活用及
び「緑化計画届出制度」により、建物の敷地や屋上・壁面・駐車場などを緑化することが必要で
あることから、この指標としました。
24
《基本方針2》
緑 の 質 を 向 上 さ せ る
生物多様性の確保や防災機能の向上などの
緑の機能を発揮させるため、広範囲に緑が連
続して確保され、緑の質がこれまで以上にな
るよう、きめ細かい緑のネットワークの形成
に向けた取組を推進していきます。
また、緑の機能を発揮し、その価値を最大
限に生かせるよう、緑の適切な管理を進め、
緑の質を向上させる施策を推進していきます。
図17 「緑の質の向上」概念図
葉の充実
緑の質を向上させるために…
○きめ細かい緑のネットワークの
形成
○緑の適切な管理
基本方針2に関する施策指標
市民管理協定制度などによる協定面積
〔現状値〕 3ha(平成 17 年度末)→〔目標値〕 20ha(平成 28年度末)
平成22年度末達成値
8ha
1.指標のねらい
土地所有者や地元市町村、市民団体等が協力して、緑地を管理していくための指標です。
2.指標の定義
「市民管理協定制度」及び「くぬぎ山地区平地林保全促進事業」により、協定が締結された緑
地の面積をいいます。
3.指標を立てた理由
緑の質を向上させるためには、緑の適切な管理が大切です。市民管理協定制度などは、土地所
有者等の協力により、市民団体などが管理をするものであり、適正な管理がなされることから、
この指標としました。
25
《基本方針3》
緑 の 担 い 手 を 拡 大 す る
緑の持つ効用が最大限に発揮されるために
は、その効用を享受する全ての主体が、適切
な役割分担の下で守り育てていくことが必要
です。そのため、県民協働による保全・再生
の体制や仕組みづくりを進め、県民、市民団
体、事業者、地権者、県や市町村等あらゆる
図18 「緑の担い手の拡大」概念図
緑の担い手を拡大するために…
○市民活動の促進
○県民、市民団体、事業者、地権者、
行政の連携強化
○県民運動の促進
主体が一体となって取組み、緑の保全・再生
活動が、県民運動として拡大するための施策
を推進していきます。
また、緑の保全にあたり、その規模等によ
っては、法令上市町村において取り組むこと
とされている緑もあります。
一方、県の骨格をなすような緑は市町村の
行政区域を超えて保全措置を講ずる必要があ
根の充実
事業者
ります。このため、市町村が策定する「緑の
基本計画」の策定を支援するとともに、市町
村相互の協調と連携を促進していきます。
行政
地権者
県民
市民団体
基本方針3に関する施策指標
さいたま緑のトラスト協会会員数
〔目標値〕平成28年度末までに6,000人
平成22年度末達成値
3,209 人
1.指標のねらい
県民が主体となって、埼玉の緑を末永く保全していく運動の指標です。
2.指標の定義
県民が主体となって進める「緑のトラスト運動」の推進組織である、さいたま緑のトラスト協
会の会員数をいいます。平成22年度末の会員数は3,209人です。これを平成28年度末ま
でに増加させ、6,000人を目標にします。
3.指標を立てた理由
緑のトラスト運動は、県民が主体となって、基金を積み立て、それを資金として埼玉の優れた
自然や貴重な歴史的環境を取得し、県民共有の財産として末永く保全していこうとするもので
す。
会員は、この緑のトラスト運動の担い手などとして活動することから、この指標としました。
26
第2章
身近な緑に関する施策の展開方針
《基本方針1》
緑 を 守 り 、 つ く る(みどりの再生)
1
身近な緑を守る
(1)身近な緑の保全
広域的な視点から都市部の大規模な樹林地を中心として、保全施策を計画的
に講じていくため、保全の必要性が高い箇所について、市町村や土地所有者の
理解を得ながら地域制緑地の指定に向けて検討を進めていきます。
また、あわせて、県民からの保全要望や、相続等による保全緊急性も含めて
検討していきます。
◆地域制緑地
○ふるさとの緑の景観地 ○近郊緑地保全区域
○特別緑地保全地区 ○近郊緑地特別保全地区
など
(2)身近な緑の確保
緑を守るための地域制緑地の指定を将来にわたって継続させるためには、土
地所有者に対する相続税を始めとする税制上の軽減措置の拡大は不可欠です。
このため、緑の保全に関する税の軽減措置の拡大を近隣都県市とともに国に働
きかけます。
また、優れた景観を有し、希少な動植物が生息するなど永続的に保全する必
要性が高い緑は、保全に要する経費の充実を図り、公有地化の推進に努めます。
○税制等に関する国への積極的な要望
○緑のトラスト保全地の確保
○身近な緑の公有地化の推進
○都市公園・緑地の整備 など
(3)緑の機能の配慮事項
緑の持つ「自然環境保全」「防災・環境負荷軽減」「景観形成」「ふれあい
提供」などの機能が効果的に発揮されるように配慮していきます。
○ 自然環境保全の機能
・野生生物の生息拠点の保全(山地など)
・里山生態系の保全(丘陵地、台地など)
・野生生物の移動経路や隠れ家となる樹林地の保全(低地、市街地など)
・湿原や池沼、湧水地等の水辺の保全(低地など)
など
27
○
防災・環境負荷軽減の機能
・水源かん養機能の維持、土砂災害の軽減・防止等(山地など)
・大気汚染などの影響、ヒートアイランド現象の緩和(市街地、台地など)
・地震火災の発生時の延焼遮断、避難地・経路の確保(市街地など)など
○ 景観形成の機能
・広域的自然景観の軸となる山並みの保全(山地など)
・地域に即した景観・歴史的風土を持つ里山景観の維持(丘陵地、台地など)
・周辺地からの良好な眺望の確保(丘陵地、台地、低地、市街地など)など
○ ふれあい提供の機能
・里山の管理作業や里山体験レクリエーションの促進(丘陵地、台地など)
・市民団体等と連携・協働した緑の管理(低地、市街地など)
・植林や林間レクリエーションの促進(山地など) など
図19 地形区分ごとの緑の機能への配慮
機 能\地 形
山地
丘陵地
台地
低地
市街地
自 然 環 境 保 全
防 災 ・ 環境負荷軽減
景
観
形
成
ふ れ あ い 提 供
(4)身近な緑に対する保全計画の策定
ふるさとの緑の景観地をはじめとする地域における重要な緑を保全してい
くためには、周辺状況や自然植生など、その地域の特性に応じた保全措置を講
じていく必要があります。
また、特に緑の公有地化や適切な行為制限などを行うため、必要な保全及び
管理方針を定めていく必要があります。
このため、県民総ぐるみでの保全や自然学習機会の活用も視野に入れながら、
身近な緑に対する保全計画を策定します。
○「ふるさとの緑の景観地」の保全計画の策定
28
など
2
新たな緑をつくる
本県は、緑豊かな秩父の山地や丘陵、見沼田んぼや三富地域といった優れた自
然環境に恵まれています。しかし、近年の都市化の進展などにより、昭和 50 年
~平成 17 年の 30 年間で、東松山市の面積とほぼ同じ広さの約6,500ヘク
タールの身近な緑が減少しました。
そこで、平成20年度に「彩の国みどりの基金」を創設し、みどりの再生に集
中的に取り組んでいます。
(1)
「彩の国みどりの基金」の創設
平成20年度からみどりの保全と創出を目的とした財源を確保する仕組み ※と
して、自動車税の一部を財源に充て、「彩の国みどりの基金」を創設しました。
この基金を活用し、森林の整備・保全や身近な緑の保全・創出を県民参加によ
り進めています。
※彩の国みどりの基金のしくみ
っあわ
私たちが利用している自動車は二酸化炭素の排出源です。一方でその二酸
化炭素を吸収してくれるのが緑の存在です。このため自動車に乗る皆さんに
緑を守るための負担をいただいています。
「みどりの基金」は自動車税の 1.5%相当、1 台あたり約 500 円をあて、
県民や企業などからの寄附とともに「みどりの再生」に役立てています。
新たな負担を伴うことなく、財源を確保したこうした取組みは全国で初め
てです。
29
(2)身近な緑の保全・創出
①
屋上緑化等による緑の創出
企業・団体による屋上緑化などを支援して、県民の暮らしに「潤い」と「や
すらぎ」をもたらす「身近な緑」の保全創出を行いました。
ルミネ大宮や川越総合高校など26の施設で屋上緑化、西武鉄道小手指駅な
ど61の学校や施設で壁面緑化を行い、朝霞市立朝霞第四小学校など102の
学校等で芝生化や植樹による緑化を進めました。また、白岡町の彦兵衛下小笠
原遺跡ふるさとの森を取得するなど5つの緑地を保全しました。これらの取組
みにより、平成20年度からの4年間で194か所の身近な緑を保全・創出し
ました。
身近な緑の再生の取組状況
H20
H21
H22
H23
H20~23
3か所
4 か所
26 か所
屋上緑化
13か所
6か所
壁面緑化
9か所
17か所
18か所
17 か所
61 か所
芝生化等
19か所
21か所
26か所
36 か所
102 か所
緑地保全
2か所
1か所
2か所
-
45か所
49か所
57 か所
合
計
43か所
ルミネ大宮の屋上緑化
5か所
194 か所
西武鉄道小手指駅の壁面緑化
30
②
幼稚園・保育所の園庭芝生化
身近な緑の中でも、学校や幼稚園の芝生化は子どもたちが緑に親しむ環境づ
くりとしても重要であるとともに、「みどりの再生」を実感として目に見える形
とする効果もあります。
そこで、幼稚園・保育所の園庭芝生化を平成21年度から推進し、3年間で
363か所の園庭を芝生化しました。これにより、以前から芝生化されていた園
庭とあわせ、533か所が芝生化されました。これは、県内の私立幼稚園・保育
所の園庭のおよそ半数です。
なお、面積では、85,000㎡を芝生化しており、さいたまスタジアムの
ピッチに換算すると12個分のみどりを再生した計算になります。
芝生化した園の方からは、
「子どもたちが、転ぶのを怖がらず思い切り遊べる
ようになった」などの声を寄せていただいています。
おばやし保育園(久喜市)
秩父ふたば幼稚園(秩父市)
植 樹 カ ウ ン タ ー
③
1人1本植樹運動
都市に森を創るため、「木を植える」ことを主眼
に、県民1人が1本の木を植えれば、720万本の
木が植えられるとして、平成21年度から「1人1
本植樹運動」を展開しました。これまでの取組みで
植樹本数は、300万本を超えています。
また、自宅などに苗木を植えた場合、県に報告し
てもらう「植樹エントリー制度」も報告本数が12
万本を超え、県民運動としての取組みが確実に広が
っています。
項
目
総
数
本
数
3,111,115
県の取り組みによる
身近な緑の植樹
354,253
国や市町村の取組による
身近な緑の植樹
674,965
山間部の植樹
280,202
行政が把握する民間植樹
植樹エントリー
1,676,636
125,059
(平成24年3月31日現在)
31
(3)これからの身近な緑の再生(創出)の推進
今後、みどりの再生を一層進めるため、県民の目に触れやすい民間・公の施設
等の緑化を重点的に展開し、木の植栽のほか屋上や壁面、駐車場を活用しながら、
創意と工夫を活かした緑化の取組を促進していきます。
①
壁面緑化や屋上緑化等の特殊緑化
都市部など身近な場所における新たな緑を創出するため、民間企業等と連携し、
壁面や屋上などを活用しながら、創意と工夫を活かした緑化を推進します。
また、自治会や商店街等が行う地域一体となった緑化活動を支援し、都市部の
中で面としての緑化を進めます。
②
校庭等の芝生化
小さい頃から緑に触れ合う環境を整備し、県民の環境意識の醸成を図るため、
幼稚園・保育所、小中学校・高校等の園庭や校庭等の芝生化を推進します。
また、芝生の維持・管理を適切に行っていくため、地域コミュニティとの連携
や子供たちが参加する体制づくりを促進します。
③
緑化計画届出制度の充実
身近な緑を創出する裾野を広げ、都市環境の更なる改善を図るとともに、緑豊
かな街並みを創出するため、対象敷地面積を引き下げ、ふるさと埼玉の緑を守り
育てる条例に基づく緑化計画届出制度の更なる徹底を図ります。
④
県有施設など身近な場所の緑化
身近な場所における緑を創出するためには、緑化が可能なあらゆるスペースを
徹底的に活用することが必要です。このため、地域のランドマークとなる県有施
設などの公共施設の緑化を推進します。
市町村施設については、市町村の自主的・計画的な取組を支援し緑化を進めま
す。
⑤
県営公園の整備
県民生活に潤いと安らぎを与える身近な緑の創出を推進するために、県営公園
の整備を推進します。
32
⑥
道路緑化および河川等の保全整備の推進
都市部に優れた景観を創りだすため、街路樹などの整備を推進します。
また、河川の自然環境を保全するため、河川沿いに植栽を行うなどの整備を推
進します。
⑦
一人一本植樹運動の推進
都市部に森を創りだす「一人一本植樹運動」の取組をさらに推進し、みどりの
再生に向けた県民運動を盛り上げていきます。
平成27年度で県民720万人と同数の植樹を目指します。
33
緑化計画届出制度について
平成17年10月から、建築行為に伴う敷地内の緑化をはじめ、屋上、壁面、駐車場の緑化を推
進する「緑化計画届出制度」を施行しています。
この制度では、3,000m2以上の敷地において建築を行おうとする方々を対象に、敷地内に
一定規模以上の面積の緑を確保する緑化計画届出書を作成し県に届け出なければならないもので
す。
平成24年4月からは、1,000㎡以上3,000㎡未満の敷地において、建築を行おうとす
る方々も対象となりました。
この一部改正した制度を施行することにより、市街地の緑のスポットの増進を図ります。
34
(4)自然環境の再生の推進
過去に損なわれた自然環境を地域との関わりの中で取り戻す取組を進めてい
きます。また、多様な野生生物の生息・生育空間を復元・保全に努めるととも
に、遊休地などを活用した緑の創出を促進します。
○自然再生事業の推進
○ビオトープの復元や湿地の保全
○遊休地等を緑とオープンスペースとしての活用検討
など
35
《基本方針2》
緑 の 質 を 向 上 さ せ る
1
きめ細かい緑のネットワークを形成する
緑の質を高め、緑の持つ機能を効果的に発揮させるためには、水と緑の連続性
を充実させることが必要です。このことにより、生物はその生息域を広げること
ができ、多様な生物の生息・生育環境が確保されていきます。
このため、広域的な骨格としての緑から、地域における小規模な緑までを、ネ
ットワーク化して連続させ、緑の機能を充実させていきます。
○市街地の緑化、施設緑化、湿地の保全
○道路緑化の推進、緑道や遊歩道の整備
○自然豊かな河川等の保全・整備
など
2
緑を適切に管理する
緑が持つ多様な機能を最大限に発揮させるため、緑の適切な管理を進めていき
ます。
○「市民管理協定制度(里の山守制度)」や「くぬぎ山地区平地林保全促進事業」
などによる保全管理の促進
○「緑の管理協定」による「ふるさとの緑の景観地」の保全管理の促進
○市民緑地による緑地管理・市民開放の促進
○県民の利便性を高める施設の整備
など
市民管理協定制度(里の山守制度)について
平成17年10月から、武蔵野の雑木林をはじめとする地域の緑を、地域ぐるみで保全していく
「市民管理協定制度」を施行しました。
(平成22年度末現在 12地区 6ha)
この制度は、土地所有者、市町村、市民団体の3者が緑地管理を目的とした協定を締結し、これ
を県が認定するものです。協定が締結された緑地では、市民に利用される緑地として、土地所有者
から市町村が土地を借り受け、市民団体が保全活動を行います。
36
《基本方針3》
緑 の 担 い 手 を 拡 大 す る
1
市民活動等の充実を図り、県民運動としての緑の保全・再生を推進する
市民団体やボランティア等に対する積極的な支援を行い、これらの団体と土地
所有者、行政(県・市町村)、事業者等が連携・協働する、県民運動としての緑
の保全・再生を進めます。
また、県内の優れた自然や貴重な歴史的環境を県民共有の財産として末永く保
全していくため、さいたま緑のトラスト運動の積極的な推進を図り、緑のトラス
ト保全地の拡大と適正な管理などを進めていきます。
○自治会・商店街など面的緑化の推進
○一人一本植樹運動の推進
○「市民管理協定制度(里の山守制度)」による地域ぐるみの取組の促進
○彩の国みどりのサポーターズクラブの活動の充実
○さいたま緑のトラスト運動の推進
○NPO等市民団体との連携や顕彰制度等の充実
○緑の保全・再生に関する情報の整備
など
2
市町村と連携・協調して緑の保全・再生を推進する
連続した緑を保全し、緑のネットワークの形成を図るため、相続の発生などに
より、失われるおそれの高い緑は、市町村と連携しながら公有地化を検討してい
きます。
また、身近な場所に新たに緑を創出したり、緑の広域的なネットワークを形成
するためには、市町村との連携・協調が欠かせません。このため、市町村の「緑
の基本計画」の策定及び改訂に際し、県は広域的な視点から情報提供や助言を行
い、策定等の支援を行います。
○市町村と連携・協調した公有地化事業の推進
○市町村と連携・協調した「みどりの再生」事業の推進
○市町村と連携・協調した地域制緑地の指定等による緑のネットワークの形成
○緑の基本計画の策定及び改訂のための支援 など
県内市町村の「緑の基本計画」策定状況
南部地域
策定済み市町村
南西部地域
未策定の市町村
東部地域
対象外(都市計画区域外)
県央地域
計画あり
川越比企地域
西部地域
利根地域
北部地域
秩父地域
(平成23年3月31日現在)
上里町
本庄市
神川町
深谷市
美里町
羽生市
熊谷市
行田市
長瀞町
加須市
寄居町
皆野町
小川町
東秩父村
鴻巣市
滑川町
嵐山町
東松山市
小鹿野町
北本市
ときがわ町
鳩山町
横瀬町
毛呂山町
飯能市
川島町
坂戸市
越生町
秩父市
白岡町
桶川市 伊奈町
蓮田市
上尾市
幸手市
杉戸町
宮代町
春日部市
松伏町
鶴ヶ島市
川越市
日高市
狭山市
入間市
さいたま市
ふじみ野市
富士見市
志木市
三芳町
所沢市
37
久喜市
吉見町
越谷市
川口市
吉川市
草加市
三郷市
蕨市 鳩ヶ谷市
八潮市
朝霞市 戸田市
新座市 和光市
第3章
1
身近な緑を守るために
身近な緑の評価(身近な緑のゆとり・安らぎ評価)
身近な緑の保全施策を検討するため、緑の評価を実施しました。
(1)評価の基本的考え方
評価は、第1部第2章で掲げた「緑の将来像」の実現を目指して、「緑の寄
与度」と「緑の変化度」の2つの視点から行っています。
「緑の寄与度」の評価は、『緑とともに暮らす、ゆとり・安らぎ「埼玉」』
とした緑の将来像への寄与度を評価しており、その地域の緑が持つ役割や緑の
価値の重要性などを把握する指標としています。
「緑の変化度」の評価は、周辺地域の開発圧力等を勘案し、緑が変化してし
まう可能性を評価しており、保全策を講じる緊急性などを把握する指標として
います。
この「緑の寄与度」と「緑の変化度」の結果を組み合わせて、保全の優先性
を把握する埼玉版の「緑の尺度:身近な緑のゆとり・安らぎ評価」として評価
しました。
身近な緑の評価
緑の将来像
緑の寄与度
緑とともに暮らす、
ゆとり・安らぎ「埼玉」
緑の将来像の実現に
向けた寄与度
緑が支える「埼玉の安心」
防災・環境負荷軽減機能
緑が創る「埼玉のゆとり」
ふれあい提供機能
緑が育む「埼玉の生き物」
自然環境保全機能
緑が演出する「埼玉の景観」
保全優先度
保全の優先性
を把握するた
めの緑の尺度
景観形成機能
緑の寄与度
緑の変化度
緑が今後、
変化する可能性
38
緑の変化度
(2)評価項目の概要
① 緑の寄与度
緑の機能別に評価項目を設定して評価するとともに、それらを組み合わせて、
緑の将来像への寄与度を評価しています。(以下に主な評価項目を示します。)
〔防災・環境負荷軽減機能〕
○ヒートアイランド→ヒートアイランド現象を緩和する存在意義が大きいか
など
〔ふれあい提供機能〕
○ふれあいの場→地域の住民活動や自然ふれあいのフィールドとなっているか
など
〔自然環境保全機能〕
○動植物の生息・育成環境→貴重な動植物が生息・生育しているか など
〔景観形成機能〕
○景観資源→地域の景観・歴史的風土資源を有するか など
② 緑の変化度
○市街化区域内→市街化区域に立地しているか
○変化要素→国道、駅、インターチェンジ等に接近しているか
など
③ 保全優先度
緑の寄与度と緑の変化度の評価結果を組み合わせて、総合的に評価していま
す。
(3)評価対象地の考え方
身近な緑を守るために、減少量の大きな都市計画区域内の樹林地を対象とし
て一定規模以上の樹林地等を抽出して評価しました。
(4)評価結果の概要
評価の対象として抽出した樹林地等は、面積28,973ha(895か所)
です。
評価の結果、面積1,590ha(144か所)の樹林地等を、保全優先度の高
い緑地として位置付けました。
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(5)評価結果の活用
(4)の評価結果を基に、保全施策を推進していきます。
今回の評価は、客観的な資料を基に行っています。また、評価対象面積は、
1ha 以上の樹林地等を把握した上で、概ね5ha 以上を対象として評価を行っ
ています。
しかし、評価対象面積以下であっても、その地域の状況により、保全を検討
する樹林地となる場合があります。また、樹林地は、地域固有に評価すべき要
素が多くあります。
例えば、
○連続する樹林と点在する樹林、樹林が多い地域と少ない地域の樹林
○周辺住民等の愛着度合い など
このため、活用にあたっては、身近な緑の評価結果を基礎的資料としつつ、
個別の樹林地等について、これらの点を加味し、ふるさとの緑の景観地や特別
緑地保全地区、トラスト保全地の指定を検討します。
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表4 身近な緑の評価結果
緑の寄与度(組み合わせ後)
機能別寄与度が高い
緑
変
変化要素あり
化
度
114ha
市街化区域内
の
変化要素なし
左記以外
(35か所)
1,476ha
(109か所)
13,508ha
13,875ha
(571か所)
(180か所)
図21 身近な緑の評価結果図
41
2
保全施策の検討の方向性
身近な緑の評価結果を参考にしながら、保全施策の検討の方向性を示します。
ここでは、今回評価を実施した 895 か所のまとまりのある樹林地等を、下表
のように地形別で5区分しています。
これは、本県の樹林地の規模や植生、成り立ちや人々との関わり方などの特性
が、その樹林地が立地している地形によって異なっている傾向が見られるためで
す。
表5 地形別にみた樹林地等の面積・か所数(都市計画区域内)
地形区分
都市計画区域内
概ね5ha 以上の樹林地等
(評価対象地)
保全優先度が高い樹林地等
(評価対象地から抽出)
28,973ha
(895 か所)
1,590ha
(144 か所)
平均面積
32ha
山
地
平均面積
11ha
18,165ha
(180 か所)
240ha
(4 か所)
平均面積
101ha
丘陵地
平均面積
60ha
7,908ha
(257 か所)
393ha
(12 か所)
平均面積
31ha
台
地
平均面積
33ha
2,567ha
(368 か所)
783ha
(80 か所)
平均面積
7ha
低
地
平均面積
10ha
219ha
(55 か所)
61ha
(13 か所)
平均面積
4ha
市街地
平均面積
5ha
114ha
(35 か所)
114ha
(35 か所)
平均面積
3ha
平均面積
3ha
*注)「箇所数」は、検討上、行政界等により区分されており、一団の緑が2つ以上に区分されている場合がある。
山
地
丘陵地
台
42
地
低
地
市街地
地】《保全施策の検討の方向性》
個々の面積が広いため、多様性に富んだ野生生物の生
息・生育空間としての機能が発揮され、里山景観が形成
されるよう、土地利用との調整を図りながら保全施策の
検討を行います。特に保全優先度が高い区域は、ふるさ
との緑の景観地や特別緑地保全地区、トラスト保全地の
指定等についても検討を行います。
【丘陵地】《保全施策の検討の方向性》
自然環境等の状況を勘案しながら、県土の保全機能やふ
れあい機能などが総合的に発揮できるよう保全施策の
検討を行います。
【山
地】《保全施策の検討の方向性》
郷土景観を活かし、農地や市街地と調和した緑豊かな地域づくりが進められる
よう、散在する樹林地を可能な限りまとまりのある緑として広くとらえながら、
保全施策の検討を行います。特に保全優先度が高い区域は、ふるさとの緑の景
観地や特別緑地保全地区、トラスト保全地の指定等についても検討を行います。
【台
地】《保全施策の検討の方向性》
市街地内に残された貴重な緑であることから、
ふるさとの緑の景観地や特別緑地保全地区、ト
ラスト保全地の指定等も含めながら保全施策の
検討を行います。
【市街地】《保全施策の検討の方向性》
河川や農地、水路、屋敷林などが一体となって
田園景観が形成され、維持されるよう、周辺景
観などに配慮しながら、保全施策の検討を行い
ます。特に保全優先度が高い区域は、ふるさと
の緑の景観地や特別緑地保全地区、トラスト保
全地の指定等についても検討を行います。
【低
図22 地形ごとの保全施策の検討の方向性
43
3
施策の推進に向けて
(1)保全優先度の高い緑地
保全施策の検討の方向性をふまえ、保全優先度の高い1,590ha(144か
所)の緑地を中心に、ふるさとの緑の景観地や特別緑地保全地区、トラスト保全
地の指定などを推進します。
44
45
46
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(2)今後の取組
身近な緑の保全を積極的に推進するため、引き続き、緑に関する調査・研究を
進め、県民の理解を得ながら市町村と密接な連携を図りつつ、長期的・総合的展
望にたって、計画を推進していきます。
さらに、保全施策を講じる上では、国は国家的な視点から、県は広域的な視点
から、市町村は基礎自治体としての視点から適切な役割分担の下で、相互に密接
な連携を図りつつ総合的に検討していきます。
表7 地域制緑地等における法令上の役割分担
地区等の指定種別
県
市町村
国
○
-
-
-
○
特別緑地保全地区
複数の市町村
にわたるもの
○
ふるさとの緑の景観地
(原則として)
規模5ha 以上
○
近郊緑地保全区域
-
-
保全
都市部にある希少な緑地
を保全
都市部に近接し良好な景
観を有する緑地を保全
都市近郊にあって良好な
(原則として)
自然環境を形成する大規
規模 100ha 以上
模な緑地を保全
近郊緑地保全区域内にお
近郊緑地特別保全地区
○
-
-
いて特に風致景観が優れ
た緑地を保全
都市公園等
○
○
規模 10ha 以上
規模 10ha 未満
-
(○は地区等の指定権限を表す)
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