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宗教が青年期の意識構造に与える影響

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宗教が青年期の意識構造に与える影響
宗教 が青年期 の意識構造 に与 える影響
横 井 桃 子
吉 村
(発達教育学研究科心理学
専攻)
(教育 学科教 授)
英
問 題
も む しろ,そ の 土 台 と な る もの で あ る と し た。
宗 教 心 理 学 は,近 年 よ うや く科 学 的 手 法 に よ
この 両 者 の 関 係 か ら,浄 土 真 宗 の 僧 侶 を は じめ
る 実 証 的 な研 究 が 行 わ れ つ つ あ る 分 野 で あ る。
宗 教 に携 わ る者 が,今
宗 教 の 心 理 学 的 研 究 に つ い て は,Jung. C.や
ム 」 の 時代 に,人 び とや 社 会 に 対 して どの よ う
James. W.も
に対 応 して い くか とい う こ とを 考 え る必 要 が あ
宗 教 を 対 象 と し た著 作 を残 して お
日 の 「ポ ス ト ・モ ダ ニ ズ
り,19世 紀 末 か ら20世 紀 初 め に か け て ア メ リ カ
るの で は な い か と問題 提 起 して い る。
に お い て 本 格 的 に発 展 し,日 本 に 輸 入 さ れ た と
と こ ろ で 「宗 教 」 とい う もの を研 究 対 象 とす
い う歴 史 的 な 流 れ が あ る。 しか しな が ら昭和 初
る場 合,宗
期 まで は,日 本 の 宗 教 の 心 理 学 的研 究 は 実 証 に
出 発 す る。 岡(1969)はJames 基 づ か な い非 現 実 的 な もの で あ っ た 。 統 計 的 手
度 の 宗教(礼
法 が確 立 し,そ れ が 宗 教 研 究 に も適 用 さ れ る よ
体 の 宗 教(聖
うに な っ た の は 戦 後 の こ とで あ る(杉 山,2001)。
宗 教 の2分 類 か ら,後 者 の 方 が 宗 教 と して よ り
教 の 何 を調 べ る の か とい う 問 題 か ら
拝,儀 式,教
Mar血eauの
「制
団組 織 な ど)」 と 「個
な る対 象 と の 直 接 交 渉)」 とい う
宗教 の心理 学的研究 が なされる ようになった
基 本 的 な もの で あ り前 者 は2次 的 に存 在 して い
背 景 と し て は,お
そ ら く社 会 変 動 に よ る 宗 教
る に過 ぎな い と して,心 理 学 で は この 「個 人 の
に 挙 げ られ るだ ろ う。 高 度 経 済 成
宗 教 」 を対 象 と して研 究 す べ きだ と して い る。
ブ ー ム が1つ
長 とい う 「物 質 的 な豊 か さ」 の 追 求 の 時 代,す
しか し,心 理 学 で 扱 う 「宗 教 」 が 世 を騒 が せ て
な わ ち 近 代 主 義 ・資 本 主 義 の 時 代 が 到 来 し,さ
い る よ う な特 定 の 宗 教 で は な く,時 間 的 ・空 間
らに 「
物 質 的 な 豊 か さ」 の 一 応 の 完 了 に次 い で
的 制 約 を超 え て 普 遍 的 に 存 在 す る よ う な宗 教 で
今 度 は 「こ こ ろ の 豊 か さ」 が 追 求 され る よ う に
あ る とす る な ら ば,お そ ら くそ の 宗 教 の 発 展 と
な る。 そ の 裏 に は,近 代 主 義 に対 す る 懐 疑 や 近
と も に教 義 が 体 系 化 され,多
代 以 前 の 自然 主 義 へ の 回 帰 の 風 潮 が あ っ た 。 こ
され て い る 宗 教 の はず で あ る。 も し 「個 体 の 宗
の よ うな 中 か らい わ ゆ る新 宗 教 の興 隆 や 仏 教 書
教 」 を対 象 と して 研 究 す る に して も,そ の 個 人
ブ ー ム,若 者 に 多 くみ られ た 占 い な どの ス ピ リ
は あ る程 度 制 度 化 さ れ た 宗 教 集 団 の 成 員 た りう
チ ュ ア ル ブ ー ム が 起 こ っ た と い うの が,日 本 の
る の で あ り,「 制 度 の 宗 教 」 と 「個 体 の 宗 教 」
くの信 者 が 組 織 化
宗 教 心 理 学 史 の 通 説 で あ る。
と を完 全 に 区 別 して研 究 す る こ とは 不 可 能 に近
宗 教 社 会 学 者 の 大 村(1990)は
い の で は な い だ ろ うか。
この風 潮 を
「ポ ス ト ・モ ダ ニ ズ ム 」 と称 し,人 び と の 中 に
し たが っ て 現 代 の宗 教 心 理 学 に お い て は,宗
根 付 い て い る 「基 層 心 情(オ
カ ゲ や タ タ リの 心
教 教 団 とい う宗 教 的共 同体 の 要 因 を考 慮 して研
情)」 が 近 代 化 の 社 会 変 動 と と も に 噴 出 し た 結
究 が な さ れ る べ きで あ り,本 領 域 で 多 く行 わ れ
果 で は な い か と考 えて い る 。 彼 は こ の 教 団組 織
て い る態 度 研 究 や 性 格 研 究 に 関 して も,宗 教 教
の な い 「民 俗 信 仰 」 に着 目 し,こ れ が 教 団組 織
団 に対 す る個 人 の 態 度 や,宗 教 団体 別 で の性 格
や 儀 礼 の 存 在 す る 「創 唱宗 教 」 と対 立 す る よ り
特 性 の 傾 向 な どが 結 果 と し て示 され て い る 。
一81一
宗教が青年期の意識構造 に与える影響
た と え ば 金 児(1978,1982,1983)は
真宗教
定 し調 和 し た もの で あ り,結 局 宗 教 は 自我 確 立
団 内 で 問題 と な っ て い る僧 侶 と 門信 徒 との 信 仰
の 促 進 要 因 と して 機 能 して い る と結 論 付 け られ
構 造 の 乖 離 を科 学 的 に明 らか に しよ う とい う 目
て いる。
的 で 調 査 を 行 っ て い る。 そ れ に よ る と,浄 土 真
Fromm(1950)に
宗 信 仰 者 に 期 待 さ れ るべ き宗 教 性 を 表 す 「真 宗
理 念 的 に は寛 容,平
信 仰 の 因子 」 は僧 侶 群 ・門信 徒 群 と もに 抽 出 さ
人 道 主 義 的 宗 教 で あ るが,宗 教 が 絶 対 帰 依 の 対
れ た が,人
よ れ ば,い
か なる宗教 も
等,博 愛 な ど に価 値 を置 く
び と の基 層 心 情 で あ る 「民族 宗 教 の
象 とな り,体 系 化 組 織 化 が 進 む につ れ て,他 者
因子')」が 門信 徒 の 因子 構 造 の 中 の み に見 られ,
に対 す る絶 対 的優 越 性 を主 張 す る よ う に な る と
僧 侶 にお い て は見 られ な か っ た 。 民 族 宗 教 性 は
一 見 浄 土 真 宗 の 教 義 に反 して い る よ うで あ る が ,
い う。 西 山(1975)は
そ の 実,門 信 徒 は現 世 利 益 信 仰 や 祖 先 崇 拝,氏
性 格 と して 存 在 」 して い る と考 え,あ るべ き姿
神 信 仰 と両 立 して浄 土 真 宗 を信 仰 して い る とい
と して の 宗 教 とい う観 点 か らみ る とす べ て の 宗
う形 を とっ て い る。 つ ま り門信 徒 に お い て は こ
教 は 人 道 的 で あ り,あ る が ま まの 宗 教 とい う観
の2つ
こ の こ とか ら,宗 教 に お
け る 「理 想 と現 実 の 相 反 す る 緊 張 関 係 が 本 質 的
の 因 子 が 独 立 して 存 在 す る こ とか ら,両
点 で は 常 に理 想 態 へ の 近 接 で あ る と した。 宗 教
因子 と もに 高 い 門信 徒 も存 在 す る と予 測 で き,
信 仰 者 の あ るべ き姿 ・理 想 的 人 間 像 とい うの が
真 宗 信 仰 は 民 族 宗 教 に支 え され て 成 立 して い る
理 想 態 で あ る とす れ ば,現 実 の あ るが ま まの 姿
とい う大 村 の 理 論 と合 致 す る 結 果 と な っ た。 ま
や あ る べ き姿 へ と向 か お う とす る姿 を現 実 態 と
た 民 族 宗 教 は 家 族 や 地 縁 ・血 縁 の 関 係 を再 認 識
い う こ とが で きる で あ ろ う。
す る 「関係 づ け の儀 礼 」 の機 能 を持 ち,日 本 に
本 研 究 で は こ の 理 想 態 と現 実 態 につ い て,浄
お い て は この 共 同体 の 関係 を 無 視 して 世 界 宗 教
土 真 宗 信 仰 者 が どの よ うに 自身 を と らえ て い る
は 成 立 しえ な い 面 が あ る。 この 点 か ら も,宗 教
の か とい う こ とに 注 目 した 。 浄 土 真 宗 に 限 らず,
の個 体 的側 面 の み を扱 う こ とは 困難 で あ る と考
世 界 宗 教 は そ れ ぞ れ の 教 義 や 理 念 か らそ の 目標
え られ る 。
とさ れ るべ き人 間 像 ・人 格 像 を掲 げ て い る が,
金 児 が こ う した宗 教 教 団 内 で 立 場 の 異 な る信
各 宗 教 信 仰 者 た ち が そ の理 念 に忠 実 な 人 間 た り
仰 者 を対 象 に研 究 を行 う一 方 で,西
うる か 否 か は彼 ら 自身 の経 験 や 意 識,行 動 な ど
は5つ
山(1978)
の宗 教 ・宗 派 の 信 仰 者 と一 般 男 子 学 生 の
と関 わ っ て くる 。 ま た理 想 の 姿 へ 近 づ こ う と努
6つ の グ ル ー プ に つ い て宗 教 的 パ ー ソナ リ テ ィ
力 す る過 程 で は,現 実 の 自身 の 姿 と比 べ て 悩 み
の 比 較 の研 究 を行 っ て い る 。 こ れ は,権 威 主 義
葛 藤 す る こ と もあ る だ ろ う。 この 真 宗 信 仰 者 の
尺 度 と カ リ フ ォ ル ニ ア 人 格 検 査(CPI)を
理 想 態 と現 実 態 との 間 の乖 離 とい う観 点 か ら,
用い
た調 査 で,そ れ ぞ れ で 因子 分析 を行 い,自 我 機
西 山(1978)の
制 と社 会 性 とい う2つ の側 面 か ら性 格 を描 写 し
影 響 を考 え て い きた い。 そ の た め に本 研 究 で は,
て い る。 この 研 究 で 明 らか に な っ た 浄 土 真 宗 信
フ ァ シ ズ ム 的性 格 の 強 さ を測 定 す る権 威 主 義 尺
仰 者 の 特 性 と して は,因 子 分 析 の結 果 か ら,非
度,社
権 威 主 義 的 で 自我 統 合 的パ ー ソ ナ リ テ ィ を示 す 。
格 検 査 の2つ
さ ら に,逃 避 性 向 因 子 の得 点 が や や 高 く現 実 回
して の 望 ま しい 人 格 特 性 を どの 程 度 持 ち合 わ せ
避 的 で あ り,ま たCPIに お け る 因 子 得 点 か ら非
て い るか を測 る 「宗 教 的 望 ま しい人 格 尺 度 」 と,
(脱)社
どの 程 度 自己 を受 容 して い るか,あ
会 的 な奔 放 さ を持 つ とい う特 性 が 明 ら
研 究 を基 に 宗 教 の 意 識 構 造 へ の
会 性 の 程 度 を測 定 す る カ リフ ォル ニ ア人
の 尺 度 に加 え,浄 土 真 宗 信 仰 者 と
る い は理 想
か に さ れ て い る。 どの 宗 教 グ ル ー プ も,自 我 機
と現 実 の 問 で どの 程 度 葛 藤 が あ る の か を測 定 す
制 ・社 会 性 の いず れ も非 宗 教 グ ル ー プ よ り も安
る 「自 己受 容 と葛 藤 尺 度 」 を独 自に作 成 し使 用
した 。 な お,権 威 主 義 的 尺 度 とカ リ フ ォル ニ ァ
1)大
村(1990)は
「
民 俗 信 仰 」,金 児(1982)は
「民 族 宗 教 」 と 表 記 し て い る が,意
は ど ち ら も 同 じで あ る。
味 す る 内容
人格 検 査 に つ い て は,西 山 の 研 究 で用 い られ た
下 位 因子 の う ち,非 宗 教 グ ル ー プ と浄 土 真 宗 グ
一82一
発 達教 育 学 部紀 要
ル ー プ の 問 に有 意 な差 が 認 め られ た 因子 を 中心
な お,宗 教 敬 慶 さ尺 度 ・宗 教 的 望 ま し い 人格
に選 出 して 用 い た 。
尺 度,自
こ の こ と を踏 ま え,調 査 法 に よ る研 究 を行 う
照 しな が ら独 自に作 成 した 。 権 威 主 義 尺 度 ・カ
た め に,以 下 に仮 説 を立 て た 。 先 行 研 究 か ら,
リフ ォル ニ ア人 格 検 査 に つ い て は比 較 し た い 下
権 威 主 義 尺 度 に お い て は理 想 態 の 方 が 現 実 態 よ
位 尺 度 を 中心 に項 目 を選 出 し簡 易 版 と し て作 成
りも得 点 は 低 く,非 権 威 主 義 的 特 性 を示 す だ ろ
した 。 ま た(3)につ い て は 自身 の 現 実 態(あ
う(仮 説1)。
ま ま の 姿)と 理 想 態(理 想 と し て い る 姿)の
カ リ フォルニ ア人格検 査 にお い
己 受 容 と葛 藤 尺 度 に つ い て は 文 献 を 参
りの
両
て は理 想 態 の 方 が 現 実 態 よ り も得 点 が 高 く,対
方 に つ い て 問 うた 。
人 関 係 に お け る社 会 性 な どの 特 性 が 高 い だ ろ う
質 問 紙 は講 義 時 間 で の 集 団 配 布 や そ の 他 個 別
(仮説2)。
配 布 な ど,さ
宗 教 的 望 ま しい 人 格 尺 度 の得 点 は,
宗 教 に敬 慶 で あ る ほ ど高 く,よ
を示 す だ ろ う(仮 説3)。
に よ っ て,高
す る こ とで,自
説5)。
ま ざ ま な形 で 配 布 ・回収 を行 っ た 。
回答 に 要 す る 時 間 は20-30分
程度 であ った。
宗 教 を信 仰 す る こ と
い理 想 と の ギ ャ ッ プ に葛 藤 を抱 く
だ ろ う(仮 説4)。
ろ う(仮
り望 ま しい 特 性
しか し一 方 で は宗 教 を信 仰
己 を よ り受 容 す る よ うに な る だ
結 果 と考 察
分 析 に際 して,浄 土 真 宗信 仰 者 を 「宗 教 的敬
凄 さ尺 度 」 得 点 の 中央 値30点 で2つ
の 群 に分 け
こ れ らの 仮 説 か ら,浄 土 真 宗
た 。 す な わ ち,得 点 の高 い 方 を 「敬 凄 さ高 群 」
信 仰 者 が 自身 の あ りの ま まの 姿 と あ る べ き姿 を
どの よ う に捉 え,そ の ギ ャ ッ プ に対 して 葛 藤 を
(N=38),得
点 の 低 い 方 を 「敬 慶 さ低 群 」(N
=44),ま た 特 定 の信 仰 を持 た な い 者 を 「非 宗 教
抱 い て い るの か,そ
群 」(N=79)と
れ と も受 容 して い る か,と
して 分 析 を行 っ た 。
い う こ と を分 析 に よ っ て 明 らか に して い きた い 。
1.権
方 法
1.調
査期間
問 紙 尺 度 で あ る 。 彼 ら の 示 し た9つ
査対象者
学 科)学
の下位尺 度
の う ち 本 研 究 で 比 較 検 討 し た 因 子 は,「 因 襲 尊
土真宗
重 」 「権 威 主 義 的 服 従 性 」 「権 威 主 義 的 攻 撃 性 」
学 真 宗 学 科 ・K女 子 大 学 教 育
「迷 信 と ス テ レ オ タ イ プ 」 「権 力 と タ フ ネ ス 」 の
生 を対 象 に行 っ た 。 信 仰 の有 無 に よ る
5つ で あ っ た(表1)。
各 因子 に含 ま れ る項 目
分類 は以下 の ようになった。
の 評 定 値 を も と に,因
浄 土 真 宗 を信 仰 す る18-30歳
た 。 各 因 子 に つ い て,信
82名(男
開発 し
た フ ァ シズ ム 的 人 格 の 強 さ を測 定 す る た め の 質
浄 土 真 宗 本 願 寺 派 得 度 習礼 参 加 者,浄
宗 門系 大 学(R大
ケ ー ル)
こ の 項 目 はAdorno, W. T.ら(1950)が
2008年3-6月
2.調
威 主 義 尺 度(Fス
の子 弟 ・門信 徒
性68名 女 性14名 平 均 年 齢20.57歳),
子 ご との 平 均 値 を算 出 し
仰 グ ル ー プ の 要 因(非
宗 教 群 ・敬 慶 さ低 群 ・敬 慶 さ 高 群)と
態 の要因
信 仰 を 持 た な い 一 般 大 学 生(18-25歳)79名
(現 実 態 ・理 想 態)の2要
(男性12名 女 性67名 平 均 年 齢20.97歳)
の あ る 分 散 分 析 を 行 っ た 。 た だ し,態
3.調
繰 り返 し要 因 で あ る 。 「権 威 主 義 的 服 従 性 」 「権
(1)フ
査内容
ェ イ ス シ ー ト:性 別,年 齢,信
仰 の 有 無,
所 属 す る宗 教 団 体 名
因 で1要
因 に 繰 り返 し
の 要因は
威 主 義 的 攻 撃 性 」 「迷 信 と ス テ レ オ タ イ プ 」 の3
因 子 に つ い て は 態 の 主 効 果 が 見 ら れ た(F(1,153)
=31 .764,p=.000;F(1,146)=4.557, (2)宗
教 的敬 慶 さ尺 度9項
目5件 法
(3)パ
ー ソ ナ リ テ ィ の 現 実 態 と理 想 態 に つ い
て:権 威 主 義 尺 度20項 目4件 法,カ
リフ ォル
(1,153>=33.947,p=.000)。
「権 力 と タ フ ネ ス 」
因 子 で は 態 の 主 効 果 が 有 意 で あ り(F(1,156)
ニ ア 人 格 検 査30項 目4件 法,宗 教 的 望 ま しい
=42 .343,Pニ.000),ま
人 格 尺 度10項 目4件 法
た(F(2,156)=3.555,pニ.031)。
(4)自
で あ っ た の で,さ
己 受 容 と葛 藤 尺 度20項 目5件 法
一83一
p=.034;F
た 交 互 作 用 も有 意 で あ っ
交互作用 が有意
らに 単 純 主 効 果 の 検 定 を行 っ
宗教が青年期 の意識構造に与 える影響
表1 権 威 主 義尺 度 得 点 の平 均(4点
尺度)・ 標 準偏 差 と分 散分 析 結 果
非 宗 教 群 敬 虚 さ低群 敬 度 さ゜群
態 の 主効 果 群 の主 効 果 交 互 作 用
MSDMSDMSD
現 実 態 2」6 .45 2.12 .60 2.37 理 想 態 2.29 .51 2.11 .57 2.33 .51
権 威 主 義 的 現 実 態 2.53 .34 2.43 .50 2.63 .38
服 従 性 理 想 態 2.72 ・39 2.61 .51 2"68 '46
権 威 主 義 的 現 実 態 2.21 .36 2.27 .54 2.2g .47
攻 撃 性 理 想 態 2,22 ・39 2・18 ・46 2.16 ・58
迷 信 と 現 実 態 2」6 .45 2.06 .45 2.08 .41
ス テ レオ タ イプ 理 想 態 2.06 .50 壌.88 .45 現 実 態 2.41 .52 2.55 .56 2.49 .49
理 想 態 2.27 .51 2.20 .58 2」0 .53
因襲 尊 重
権 力と
タフネス
.. .55
**
*
**
.42
**
*
*p<.05; **p<.01
れ て そ の 理 想 と現 実 との ギ ャ ップ が 大 き くな る
と言 え る。
以 上 の 結 果 か ら,仮 説1は,「
因襲尊 重」 と
「権 威 主 義 的 服 従 性 」 の2因 子 を除 き支 持 され た 。
2.カ
リ フ ォ ル ニ ア 人 格 検 査(CPI)
CPIは,い
わゆ る精神疾患 のない健 全 な人び
と を 対 象 に 開 発 さ れ た も の で あ り,そ
図1 「権 力 と タ フネ ス」 因 子 平 均 得点
結 果 を"人
用 で き る"こ
た と こ ろ,図1に
示 す よ うに 非 宗 教 群 ・敬 慶 さ
CPIの
の特 徴 は
間 の 社 会 的 行 動 や 対 人 関 係 に 広 く適
と で あ る(我
質 問 項 目 は480項
妻 ら1967)。
目 あ り,18の
正 式 な
因子 で 構 成
低 群 ・敬 慶 さ 高 群 の そ れ ぞ れ の グ ル ー プ に お け
さ れ る が,本
る 態 の 単 純 主 効 果 が 有 意 で あ っ た(F(1,156)
=5 .31,p=.022;F(1,156)=18.10,p=.000;F
6因 子 で あ っ た 。 各 因 子 に 含 ま れ る 項 目 の 評 定
値 を も と に,因
(1,156)=19.46,p=.000)。
群 の単純 主効 果 は見
研 究 で 用 い た 因 子 は 表2に
示 した
子 ご との 平 均 値 を算 出 した 。 各
因 子 に つ い て,信
仰 グ ル ー プ の 要 因(3水
られ な か っ た。
と 態 の 要 因(2水
準)の2要
以 上 の 結 果 か ら,「 権 威 主 義 的 服 従 性 」 は 理
返 し の あ る 分 散 分 析 を 行 っ た 。 た だ し,態
想 態 の 方 が 得 点 が 高 く,内 集 団 の権 威 に追 従 的
因 は 繰 り返 し 要 因 で あ る 。 「社 交 性 」 「社 会 的 安
で 無 批 判 な態 度 を よ り強 く と る こ と を理 想 と し
定 性 」 「自 己 満 足 感 」 「責 任 感 」 の4因
て い る 。 一 方 「権 威 主 義 的 攻 撃 性 」 と 「迷 信 と
て は,態
ス テ レオ タ イ プ 」 につ い て は 現 実 態 の 方 が 得 点
=48 .345,p=.000;F(1,149)=35.552, が 高 く,集 団規 範 の 違 反 者 に対 す る 排 他 的 態 度
(1,151)=52.970,p=.000;F(1,149)=139.840,
を緩 和 し,迷 信 ・俗 信 の信 仰 や 固 定 観 念 的 思 考
p=.000)。
を減 らす べ き だ と評 価 して い る。 ま た 「権 力 と
(1,154)=163.832,p=.000)お
タ フ ネ ス 」 で は 各 グ ル ー プ そ れ ぞ れ にお い て 現
(-F(2,154)=7.473,p=.001)が
実 態 よ り理 想 態 の 方 が 得 点 が 低 か っ た。 交 互 作
の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た の で 多 重 比 較 を 行 った
用 が あ る こ とか ら,支 配 一 従 属 関係 に と らわ れ
結 果,非
な い思 考 を理 想 と して お り,信 仰 が 深 ま る につ
慶 さ高 群 との 間 に そ れ ぞ れ 有 意 な差 が み られ た 。
一84一
因 で1要
準)
因に繰 り
の要
子 につい
の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た(F(1,155)
p=.000;F
「自 己 統 制 力 」 因 子 は 態 の 主 効 果(.F
よび群 の主効 果
有意 であった。群
宗 教 群 と敬 度 さ 低 群,敬
慶 さ低 群 と敬
発達 教 育 学 部紀 要
表2 カ リフ ォル ニ ア人格 検査 の平 均(4点
尺 度)・ 標準 偏 差 と分散 分 析 結 果
非 宗教 群 敬 崖 さ低 群 敬 震さ高 群
態 の 主 効 果 群 の主 効 果 交 互作 用
MSDMSDMSD
社交性
現 実 態 2.35 .41 理 想 態 2.72 42 2.35 .41 2.35 .44
260 ,43 2.63 .46
**
社会的
現 実 態 236 .38 2.37 .39 2.35 .44
安定性
理 想 態 2.58 .34 2.57 .31 2.58 .42
現 実 態 2.63 .36 2.53 .39 2.75 .46
理 想 態 2.95 .38 2.85 .47 2.93 .42
現 実 態 2.64 .42 2.50 .42 2.68 38
理 想 態 3」7 47 3.01 .47 3.03 ,44
現 実 態 2.59 64 2.13 .60 2.55 .62
理 想 態 3.23 58 3.00 .66 3.30 .60
現 実 態 2.51 41 2.45 57 2.47 .54
理 想 態 2.35 39 2.39 .47 2.47 .51
自己 満 足 感
責任感
自己 統 制 力
**
**
**
**
**
融通性
**p<.01
以 上 の 分 析 の 結 果 か ら,「 社 交 性 」 「社 会 的安
2項
定 性 」 「自 己 満 足 感 」 「責 任 感 」 の4因 子 につ い
法 で 因 子 分 析 を 行 っ た 。 固 有 値 の 推 移(第1因
て は理 想 態 の 方 が 得 点 が 高 く,人 付 き合 い の 良
子 か ら順 に2.19,1.35,0.94,0.86,0.85,以
さや 対 人 関 係 に お け る 自発 性 や 誠 実 性 を よ り高
下 省 略)な
め,自
最 も 適 切 な 因 子 数 と判 断 さ れ た 。2因
己 に対 して よ り多 くの 満 足 感 や 自信 を得
目 を 削 除 し,残
っ た8項
目で 再 度 同 様 の手
ら び に 解 釈 可 能 性 か ら は,2因
子が
子 に指 定
る こ とを 理 想 と して い る とい え る。 また 「自己
し た と き の 累 積 寄 与 率 は44.24%で
統 制 力 」 因 子 は,敬 度 さ低 群 が 非 宗 教 群 と敬1
の 結 果 を 表3に
さ高 群 よ りも得 点 が 低 く,ま た 全 体 で 比 較 して
へ の 帰 依 」 「心 の よ り ど こ ろ 」 と 命 名 さ れ た 。
あ った。 こ
示 す 。 抽 出 さ れ た 因 子 は 「真 実
み る と理 想 態 の 方 が 現 実 態 よ り も得 点 が 高 か っ
「真 実 へ の 帰 依 」 は,超
た 。 つ ま り信 仰 の 有 無 に 関 係 な く,人 び と は社
迷 信 ・俗 信 な ど を 否 定 す る か な ど の 項 目 か ら構
交 性 を は じめ と した 対 人 関 係 に必 要 な ス キ ル を
成 され て い る因 子 で あ っ た 。 ま た
よ り高 め る こ と を理 想 と して い る が,衝 動 性 や
こ ろ 」 は,ど
自己 中心 性 か らの 脱 皮 の 程 度 は敬 慶 さ低 群 が 他
項 目 か ら構 成 さ れ て い た 。 両 因 子 と も4項
の2群
ら構 成 さ れ た 。
よ りも低 い とい え る 。
以 上 の 結 果 か ら,仮 説2は
「融 通 性 」 因 子 を
自 然 的 な も の を 信 じ る か,
「心 の よ り ど
の 程 度心 的 な支 え が あ る か な どの
目か
各 因 子 に 含 ま れ る 項 目 の 評 定 値 を も と に,因
除 き支 持 さ れ た 。 さ らに,「 自己 統 制 力 」 因子
子 ご と の 平 均 値 を 算 出 し た 。 こ の2因
は グ ル ー プ 間 で も有 意 差 が 見 られ た 。
て,各
グ ル ー プ ・各 態 に お け る 比 較 を 行 う た め
に,信
仰 グ ル ー プ の 要 因(3水
3.宗
教 的 望 ま しい 人 格 尺 度
こ の 尺 度 はFス
(2水
ケ ー ル ・CPIと は 別 に,浄
土
真 宗 信 仰 者 と して の 姿 ・態 度 につ い て 測 定 す る
た め,独
自 に作 成 した もの で あ る 。 本 研 究 で 得
ら れ た デ ー タ は 三 相 デ ー タ で あ る が,こ
(調 査 対 象 者161名
×2つ の 態)×10項
れを
目の 二 相
準)の2要
因 で1要
態の要 因
因 に繰 り返 しの あ る
分 散 分 析 を 行 っ た 。 た だ し,態
し 要 因 で あ る 。 図2,3は
準)と
子 につ い
の 要 因 は繰 り返
各 条 件 の 平 均 値 を示
し た も の で あ る 。 「真 実 へ の 帰 依 」 因 子 に お い
て は 態 の 主 効 果(F(1,153)=80.436,p=.000)と
群 の 主 効 果(F(2,153)=8.424,p=.000)が
有 意
デ ー タ と し て扱 い,最 尤 法 ・プ ロ マ ッ ク ス 回転
で あ っ た 。 交 互 作 用 は 有 意 で は な か っ た。 群 の
に よ る 因 子 分 析 を行 っ た 。 こ の分 析 で 不 適 切 な
主 効 果 が 有 意 で あ っ た の で 多重 比 較 を行 っ た と
一85一
宗教が青年期の意識構造に与える影響
表3 宗教 的 望 ま しい 人格 尺 度 プ ロ マ ッ クス 回転 後 の 因子 負荷 量
第 蓄因 子
第2因
真 実 への 帰依
心 の よ りど ころ
子
共通性
私 の 存 在 は 、私 を 超 え た 何 もの か に よっ て 守 ら れ て い る。
.64
.07
.46
私 は 悩 み や 苦 しみ が あ っ ても 精 一 杯 生 きよ うと思 う。
.62
.09
.45
人 生 は 占 い や 人 相 、家 相 に よっ て決 ま って い る 。*
.42
- .19
.14
私 の 根 本 的 な 問 題 は 、真 実 に よ って 解 決 され る と思 う。
.42
-
.07
.15
ど ん な ことが あ って も 、私 は 見 捨 て られ る ことは な い 。
- .03
.73
.52
み ん な が 、私 と同 じような 心 の よ りどころ を 持 て ば よ い と思 う。
- .14
.43
.14
.05
.41
.19
.04
.36
.12
寄与率
27.33
16.91
累積寄与率
27.33
44.24
私 は 悩 み や 苦 しみ を解 決 せ ず に は い られ な い 。
-
生 命 に は 終 わ りが な く、私 は あ の 世 に も 生 まれ る の だ と思 う。
*は 逆 転 項 目
図2 「真実 へ の 帰依 」 因 子 平均 得 点
図3 「心 の よ り ど ころ 」 因子 平 均 得点
こ ろ,敬 慶 さ高 群 と非 宗 教 群 ・敬 慶 さ低 群 との
高 群 は他 の2群
間 に差 が み ら れ た 。 つ ま り,敬 慶 さ 高 群 が 非 宗
子 の傾向が 強い といえる。
教 群 と敬 慶 さ低 群 よ り も得 点 が 高 く,ま た全 体
以 上 の 結 果 か ら,仮 説3は
で 比 較 して み る と理 想 態 の 方 が 現 実 態 よ り も得
よ う。
点 が 高 か っ た。 した が っ て,ど
に比 べ て 「心 の よ りど こ ろ」 因
支 持 され た と言 え
の群 も超 自然 的
な加 護 を信 じ,迷 信 を否 定 した い とい う こ と を
4.自
己受 容 と葛 藤 尺 度
理 想 に 考 えて お り,特 に敬 慶 さ高 群 は他 の2群
この 尺 度 は,調 査 対 象 者 が 普 段 の 生 活 に お い
よ りもその 傾 向 が 強 い とい え る。 また 「
心 のよ り
て どの 程 度 自己 を受 容 し認 め て い るか,ま
ど ころ」 因子 に つ い て は,態 の 主 効 果(F(1,156)
=112 .918,P=.000)と
群 の 主 効 果(F(2,156)
=13 .736,p=.000)が
有 意であった。交互作 用 は
想 との ギ ャ ップ に よ っ て どの 程 度 葛 藤 を抱 い て
有 意 で は なか っ た 。 群 の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た
本 研 究 で得 られ た デ ー タ につ い て,最
の で 多 重 比 較 を 行 った と ころ,敬 慶 さ高 群 と非
プ ロマ ッ クス 回 転 に よる 因 子 分 析 を行 っ た 。 こ
宗 教 群 ・敬 慶 さ低 群 と の 間 に差 が み られ た 。 つ
の 分 析 で不 適切 と み な され た6項
ま り,敬 慶 さ 高 群 が 非 宗 教 群 と敬 慶 さ低 群 よ り
残 り の14項 目で 再 度 同 様 の 手 法 で 因 子 分 析 を
い るか を調 べ る た め に 独 自 に作 成 され,設
定さ
れ て い る。
も得 点 が 高 く,理 想 態 の 方 が 現 実 態 よ り も得 点
行 っ た。 固 有 値 の推 移(第1因
が 高 か った 。 した が っ て,ど の 群 に つ い て も宗
2.05,1。31,0.99,! 教 的心 的 支 え を 理 想 と して 望 ん で お り,敬 慶 さ
び に解 釈 可 能 性 か ら,3因
一86一
た理
尤法 ・
目 を 除 外 し,
子 か ら順 に4.72,
,0.79以
下 省 略)な
ら
子 が 最 も適 切 な 因 子
発 達 教育 学 部 紀要
表4 自己 受 容 と葛 藤 尺 度 プ ロマ ック ス 回転 後 の 因子 負 荷 量
第1因
子
第2因
子 第3因
子 共通 性
理 想 に対 す
自己受容 自己不信 感
る葛 藤
自 分 に 対 して卑 屈 に な った りす る 。
一
.,
一
.07
.66
自 分 に 失 望 す る ことが あ る 。
.79
.09
.05
.64
自 分 の 現 実 と理 想 の ギ ャップ に しば しば 苦 しむ 。
.76
.07
.05
.60
.74
.03
.04
.57
.12
.00
.40
な ぜ 自 分 の 理 想 通 りに 行 動 で きな い の か と悩
.03
む。
どん な ときで も例 外 な く自 分 も失 敗 者 だ と思 い が
一
.59
ちだ。
自 分 の 行 動 を反 省 し、悔 や む ことが 多 い 。
.59
.03
.12
.42
理 想 に近 づ き た い と思 う。
.57
.04
- .16
.27
.50
.00
1'
.22
自 分 の 理 想 とは 違 うことを や って み た い 衝 動 に か
られ る ことが あ る 。
.43
一 .15
一 .05
.21
- .15
.80
.os
.68
自 分 な りの 個 性 を大 切 に して い る 。
.os
.76
.03
.58
私 に は 私 な りの 人 生 が あ っ てもい い と思 う。
.08
.63
.01
.39
.01
- .05
.98
- .10
.os
.47
もう少 し自 分 を 尊 敬 でき た な ら ば と思 う。
自 分 の 個 性 を素 直 に 受 け 入 れ て い る 。
自 分 の 行 動 に 疑 問 をもつ ことは な い 。*
私 に は 欠 点 は 全 くな い 。*
寄与 率
33.73
14.62
累積 寄与 率
33.73
48.35
-
tOO
.18
9.32
57.67
*は 逆 転 項 目
図4 「理 想 に対 す る葛 藤 」 因子 の 平均 得 点
図6 「自己 受容 」 因 子 の平 均 得点
数 と判 断 され た。3因
寄 与 率 は57.67%で
子 に指 定 した と き の 累積
あ っ た 。 この 結 果 を 表4に
示 す 。 抽 出 さ れ た 因 子 は 「理 想 に 対 す る葛 藤 」
「自 己 受 容 」 「自 己 不 信 感 」 と命 名 され た 。 「理
想 に対 す る葛 藤 」 は,卑 屈 に 感 じた り自 身 に 失
望 す る,ま
た現 実 と理 想 との ギ ャ ッ プ に よる 苦
悩 な どの9項 目か ら構 成 され て い る。 「自己受 容」
図5 「自己 不信 感 」 因子 の平 均 得 点
は,自 身 の 個 性 の 受 容 や,人
生 の 受 容 な どの3
項 目か ら構 成 さ れ て い る 。 「自 己 不 信 感 」 は,
一87一
宗教が青年期の意識構造 に与える影響
自分 の 行 動 や 意 識 に対 す る疑 問 な ど の2項
目か
まず,権
威 主 義 尺 度,カ
リフ ォル ニ ア尺 度,
ら構 成 さ れ て い る。
宗 教 的望 ま しい 人格 尺 度 の3尺 度 は,現 実 態 と
各 因 子 に含 まれ る項 目の 評 定 地 を も とに,因
理 想 態 の 両 態 につ い て 回答 を 求 め た 。 分 析 の 結
子 ご との 平 均 値 を算 出 した 。 この3因 子 そ れ ぞ
果,権
れ に つ い て,信 仰 グ ル ー プ 問 で の 比 較 を行 う た
義 的 攻 撃 性 」 「迷 信 とス テ レ オ タイ プ」 の2因
め に,一 要 因 の 分 散 分 析 を行 っ た 。 図4,5,
子 に お い て は 群 に 関 係 な く現 実 態 の 得 点 が 高
6は 各 因 子 の 平 均 点 を示 し た も の で あ る 。 「自
か っ た。 また 「権 力 と タ フ ネ ス 」 因 子 は交 互 作
威 主 義 尺 度 の 下 位 因 子 の う ち,「 権 威 主
己受 容 」 因子 と 「自己不 信 感 」 因 子 に お い て 信
用 が 見 られ3群
仰 グ ル ー プ 要 因 の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た(F
が 高 か っ た 。 こ れ は,人
(2,157)=3.235,p=.042;F(2,157)=3.720, p=.026)o
的 な性 格 を理 想 と して い る こ と を示 して い る 。
主 効 果 が 有 意 で あ っ た の で,TukeyのB法
によ
た だ し,「 権 威 主 義 的 服 従 性 」 因 子 に お い て は
る 下 位 検 定 を行 っ た と こ ろ,「 自己 受 容 」 因 子
理 想 態 の 方 が 得 点 が 高 く,人 び とが 内 集 団 の権
にお い て は非 宗 教 群 と敬 慶 さ高 群 との 間 に,「 自
威 に服 従 す べ きだ との 理 想 を持 っ て い る こ と を
己不 信 感 」 因 子 は敬 慶 さ低 群 と非 宗 教 群 との 間
示 して い た 。 た だ し,い ず れ に して も グ ル ー プ
に そ れ ぞ れ 差 が 見 られ た 。 な お,「 理 想 に対 す
の 問 に差 は な く,宗 教 信 仰 の有 無 に 関 係 な く,
る 葛 藤 」 因 子 に お い て は 有 意 な差 は 見 ら れ な
青 年 期 の 日本 人 全 体 の 意 識 構 造 の 傾 向 で あ る と
か っ た 。 した が っ て,,, い う こ とが で きる だ ろ う。
さ 高 群 は非 宗 教 群 よ
そ れ ぞ れ に お い て 現 実 態 の得 点
び とが よ り非 権 威 主 義
り も 自身 の個 性 や 人 生 を受 容 で きて お り,ま た
・r'`一
さ低 群 は 非 宗 教 群 と比 べ て 自身 に対 す る不
また カ リ フ ォル ニ ア 人 格 検 査 に つ い て は,「 融
信 感 が 少 な い とい う結 果 と な っ た 。
く,よ
以 上 か ら,仮 説4は
支 持 さ れ ず,仮 説5が
通 性 」 以外 の5因 子 にお い て理 想 態 の 得 点 が 高
り安 定 ・調 和 し た人 間 関 係 の 構 築 を 目指
し て い る こ とが 分 か っ た 。 た だ し 「自 己 統 制
支
持 され た と言 え る。
力 」 因 子 につ い て は,:敬 凄 さ低 群 が 他 の2群
よ
り も得 点 が 低 く,衝 動 性 や 自己 中 心 性 の点 で 未
総合考察
熟 さが 残 って い る性 格 傾 向 で あ る と言 え る。 つ
本 研 究 で は,青 年 期 の 人 々 が 浄 土 真 宗 を信 じ
ま り,未 熟 さ の解 消 に は,宗 教 の 信 仰 とい う要
る こ と に よ っ て どの よ う な意 識構 造 を形 成 す る
因 だ け で は不 十 分 で あ り,他 の何 らか の影 響 が
か,特
考 え られ る だ ろ う。
に,あ
るが ま まの 姿(現
実 態)を
どの よ
うに 評 価 し,ど の よ う な姿 が 目指 さ れ るべ き と
権 威 主 義 尺 度 と カ リ フ ォル ニ ア 人 格 検 査 の2
考 え て い る か(理 想 態)と
い う こ と を 明 らか に
尺 度 に 関 して は,理 想 態 で も現 実 態 にお い て も
す る た め に検 討 を行 っ た 。 ま た,理 想 の 姿 へ と
浄 土 真 宗 信 仰 者 に 固 有 の 意 識 構 造 は 得 られ な
向 か う 中 で,現 実 の姿 との 対 比 に よ っ て葛 藤 は
か っ た 。 したが っ て 本 研 究 に お い て は,宗 教 信
起 こ ら な い の だ ろ うか,逆
仰 者 が,宗
に 宗 教 を信 仰 す る こ
教 を信 仰 す る こ とで 非信 仰 者 よ り も
とに よ っ て 自分 自 身 を受 け入 れ る こ とが で き る
高 い理 想 を持 っ て い るか とい う こ とや,現
の だ ろ う か,と い う問 題 につ い て も検 討 した 。
も よ り優 れ た性 格 特 性 を有 して い るか とい う こ
こ の よ う な 問 題 意 識 を も と に,権 威 主義 尺 度,
とは 明確 にで きな か っ た。
カ リ フ ォ ル ニ ア 検 査,宗
宗 教 的 望 ま しい 人 格 尺 度 に つ い て は,因 子 分
教 的 望 ま しい尺 度,そ
して 自 己受 容 と葛 藤 尺 度 を用 い て,非 宗 教 信 仰
実で
析 を 行 い,「 真 実 へ の 帰 依 」 と 「心 の よ り ど こ
者 と浄 土 真 宗 信 仰 者 に 対 して 回 答 を 求 め た 。 浄
ろ」 の2つ
土 真 宗 信 仰 者 につ い て は,宗 教 的 敬 慶 さ尺 度 に
つ い て 分析 を行 っ た と こ ろ,両 因 子 と も理 想 態
よっ て 信 心 深 い 敬 慶 さ高 群 と,あ ま り信 仰 が 篤
の方 が,ま
い と は い え な い 敬 凄 さ低 群 の2群
が 高 か っ た。 こ れ らの 因子 は 超 自然 的 な加 護 を
に分 け て 分 析
を行 っ た。
の 因子 が 抽 出 され た 。 こ の2因 子 に
た敬 慶 さ高 群 が他 の2群
よ り も得 点
信 じて い る か とい う こ とや,宗 教 的 な心 の 支 え
..
発 達教 育 学 部紀 要
が あ る か とい う項 目か ら構 成 され て い る た め,
示 した 。
信 仰 に篤 い 敬 慶 さ高 群 の得 点 が 高 い こ と は至 極
本研 究 の課 題 と して は,尺 度 の 十 分 な検 討 の
当 然 と言 え るが,信
必 要 性 が 挙 げ られ る 。 今 回 は,権 威 主 義 尺 度 と
仰 の浅 い 敬 慶 さ低 群 は非 宗
教 群 と 同 程 度 の 特 性 を示 し た た め,「 信 仰 者 」
カ リ フ ォル ニ ア人 格 検 査 の2つ
とい え ど も,宗 教 が 彼 らに対 して 心 的 な機 能 を
の既 成 の 尺 度 を
用 い たが,い
果 た して い る とは 言 い 難 い 結 果 と な っ た 。 これ
調 査 対 象 者 の 負 担 に な ら ない 程 度 まで 項 目 を削
は 真 宗 教 団 か らす れ ば宗 門 の 解 決 す べ き課 題 で
る こ と に苦 心 し た。 理 想 態 と現 実 態 の 差 を調 べ
あ り,彼 らの 信 仰 心 を どの よ う に高 め て い くか
る た め に 同 一 項 目 を2度 回 答 して も ら う とい う
ず れ も原 本 の 項 目数 は か な り多 く,
と い う更 な る議 論 が 必 要 で あ る。
形 式 の た め,か
続 い て 自 己受 容 と葛 藤 尺 度 につ い て は,因 子
ま っ た。 した が っ て,こ
分 析 の 結 果3因
因 子 が 宗 教 信 仰 と 関 連 が あ る とい う可 能性 も捨
子 「理 想 に対 す る 葛 藤 」 「自己
な り少 な い 項 目数 と な っ て し
こ に は含 まれ て い ない
受 容 」 「自 己 不 信 感 」 が 抽 出 され た 。 こ の3因
て きれ な い だ ろ う。 また 独 自 に作 成 した敬 慶 さ
子 に つ い て 分 散 分 析 を行 っ た と こ ろ,「 自 己 受
尺 度 や 宗 教 的 望 ま しい 人 格 尺 度 に つ い て も,信
容 」 因子 にお い て は非 宗 教 群 よ り も敬 慶 さ 高群
頼 性 や 妥 当性 の 観 点 か ら検 討 し,よ
の 方 が 得 点 が 高 く,「 自 己不 信 感 」 因 子 にお い
の 完 成 が 望 まれ る。
て は非 宗 教 群 よ りもmさ
最 後 に,宗 教 心 理 学 の 実 証 的研 究 は,そ の 問
低 群 の方 が 得 点 が低
か っ た 。 「理 想 に 対 す る葛 藤 」 因 子 に は 有 意 差
題 の デ リケ ー トな側 面 ゆ え に,あ
り よい 尺 度
る程 度 手 軽 で
が 見 られ なか っ た 。 こ れ らの 結 果 か ら,浄 土 真
リス ク の少 ない 質 問 紙 票 に よ る調 査 研 究 が 多 く
宗 を篤 く信 仰 す る者 は,理 想 と現 実 との 対 比 に
行 わ れ て い る き らい が あ るが,そ
よ っ て葛 藤 を抱 く と い う よ り も,自 身 の 個 性 や
果 を も とに仮 説 を モ デ ル 化 す る た め に は,観 察
人 生 とい う もの を受 容 し認 め て い る とい う こ と
法 な どを は じめ と した フ ィー ル ドワー ク が 必 要
れ らの 調 査 結
が わ か っ た 。 無 論 彼 らの 人 生 は信 仰 に裏 打 ち さ
に な っ て く るで あ ろ う。 今 回得 られ た 結 果 にお
れ て い る こ とか ら,受
容 さ れ る もの の 中 に は
い て も,た と え ば敬 慶 さ低 群 の 「自 己統 制 力 」
「宗 教 信 仰 者 と して の 自分 」 とい う個 性 も含 ま
因 子 や 「自己 不 信 感 」 因 子 との 関 係 は,表 面 上
れ て い る と考 え られ る 。 一 方,「 自己 不 信 感 」
の 尺 度 か ら は読 み 取 る こ とが で き な い 。 他 に も,
因 子 の敬 慶 さ低 群 の 低 得 点 は 何 が 影 響 して い る
敬 慶 さ高 群 が 自 己 の どの よ うな側 面 を 受 容 して
の だ ろ うか 。 先 の3尺 度 の 分 析 結 果 で は 「自己
い るの か な ど と言 っ た こ と は,面 接 法 や イ ン タ
統 制 力 」 因 子 に お い て 敬 慶 さ低 群 の低 得 点 が 目
ビ ュ ー に よ って 明 らか にす る こ とが 可 能 で あ ろ
立 っ た が,こ
る とは 考 え に くい 。 ま た 自己 不 信 感 因 子 は2項
う。 こ の よ う な様 々 な 手 法 に よ って,さ ら な る
モ デ ル の検 討 が 求 め られ て い る 。 そ して,こ の
目 と い う少 な い 項 目数 か ら構 成 さ れ た 因子 で あ
よ う に マ ル チ メ ソ ッ ド ・ア プ ロー チ に よ って 明
る た め,こ の 関係 につ い て は さ らな る検 討 が 必
らか に され た こ とを,研 究 の枠 を超 え て 様 々 な
要 だ と考 え られ る。
領 域 に応 用 し て い く こ とが 宗 教 心 理 学 研 究 の 最
以 上,真
大 の 目的 で あ る よ うに 思 わ れ る 。 そ の た め に も,
態,そ
の 因 子 と 自己 不 信 感 が 関 連 して い
宗 信 仰 の 影 響 に つ い て現 実 態 と理 想
して 受 容 と 葛 藤 とい う観 点 か ら研 究 を
宗 教 心 理 学 内 外 か らの 研 究 の 蓄 積 や,あ
行 っ た が,浄 土 真 宗 を 篤 く信 仰 す る 者 は信 仰 の
に拡 散 した研 究 の体 系 化 が,早
浅 い者 や 非 信 仰 者 よ り も 自己 受 容 の 程 度 が 大 き
て い る と言 え よ う。
ちこち
急 に必 要 と され
い とい う こ とが 示 唆 さ れ た 。 ま た 本 研 究 で は3
つ の尺 度 を用 い て 分 析 した が,信 仰 者 に 固 有 な
特 性 は あ くま で 宗 教 的 な 意 識 や 行 動 につ い て の
引用 文献
Adorno, T. W.1950 The authoyitayian New York:Harper&Brothers.権
み で あ り,権 威 主 義 的性 格 や 人 間 関 係 な どの 社
パ ー ソ ナ リ テ ィ 会 性 に つ い て は,非 信 仰 者 と変 わ ら な い 特 性 を
林 修一 訳
一89一
田 中 義 久,矢
personality.
威 主義 的
沢 修 次 郎,小
宗教 が青年期の意識構造 に与える影響
Fromm, E.1950 Psychoanalysis and religion. New
Haven&London:Yale University Press.精
神分
析 と 宗 教 谷 口 隆 之 助,早 坂 泰 次 郎 訳
金 児 曉 嗣1978宗
教 組 織 と信 仰 の 機 能 皿一 僧 侶 の
サ ピエ ンチ ア,9,1-16
西 山 俊 彦1978宗
教 的パ ー ソナ リテ ィの実証 的研
究 一 補 遺II一 サ ピ エ ンチ ア,12,1-35
宗 教性 に関す る因子分 析 的研 究一 伝 道 院紀
岡 道 固1969宗
教 の心理 学的 意義一 ジェー ムス の
定 義 を 中 心 に し て 一 龍 谷 大 学 論 集,389・
要,20,1-42
金 児 曉 嗣1982宗
390,239-249
大 村 英 昭 ・金 児 曉 嗣 ・佐 々木 正 典1990ポ
教 組 織 と信 仰 の 機 能IVF一 浄 土 真
ス ト・
宗 門信 徒 の 宗 教 性 に 関 す る 因 子 分 析 的研 究 一
モ ダ ンの 親 鶯 一 真 宗 信 仰 と民 俗 信 仰 の あ い だ
人 文 研 究,34,30-58
金 児 曉 嗣1983宗
教 組 織 と信 仰 の 機 能V一
一 同朋舎
杉 山幸 子2001日
浄土 真
宗 門信 徒 の 宗 教性 に 関 す る因 子 分 析 的研 究
(そ の2)一
人 文 研 究,35,1-47
西 山 俊 彦 1975 宗 教 と 権 威 主 義 一 研 究 報 告 一
一90一
本 にお ける宗教 心理 学の歴 史 と
現 状 心 理 学 評 論44(3),307-327
我 妻 洋 ・河 口茂 雄 ・白倉 憲 二1967カ
ア 人 格 検 査CPI:日
リフ ォルニ
本版 実施 手引 誠信 書房
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