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12 音響工学の基礎

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12 音響工学の基礎
http://www.t-net.ne.jp/~kondoy/lecture/index.html
12 音響工学の基礎
12-1 生体計測の方法
測定対象となる生体情報には様々なものがある。対象によって測定方法もまた様々であるが、生体計測の方法を大
別すると、何ら生体に対してはエネルギーを与えずに全く受動的に行う方法と、何らかのエネルギーを生体に与え
その反応を計測する方法に分けられる。以下にその代表的な例を示す。
◎人体にエネルギーを与えないもの
1)生体電気信号
心電図、脳波、筋電図
2)生体振動現象
3)温度情報
4)呼気ガス成分分析
5)磁気現象
MEG(脳磁図)
(超伝導量子干渉素子(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)による検出)
◎人体に何らかのエネルギーを与えるもの
1)光
パルスオキシメータ、内視鏡
2)電気
インピーダンス計測
3)圧
非観血式血圧計、眼圧計
4)超音波
超音波診断機器
5)磁気
MRI
6)放射線
X 線 CT、PET、SPECT
画像診断機器と呼ばれるものは、生体情報の一部が物理的な作用をした結果を映像として描画したものである。従
って画像診断機器はどのような物理的作用によって得られたものかによって、その描出画像自体が異なり、画像が
示す生理的および臨床的意味も異なったものになる。内視鏡は体内にファイバーを挿入し、光をあてて映し出され
た内腔表面をモニター上に映像化するものであり、実際に目視する状況を作り出しているから直感的にわかりやす
い。X 線を人体に照射して得られる X 線写真、CT(コンピュータ断層画像)などは人体による X 線の吸収度合いを
映像化したものであり、画像は組織による X 線吸収の差を表現している。PET や SPECT は体内に入れられた放射
性同位元素から発せられるγ線の吸収度合いを体外から観測するものである。また、MRI は磁場中に人体をさらし、
生体内の水素原子のスピンを観測するものであり、特定の原子の状態を表現していると言える。超音波診断機器は
生体に超音波を与え、その反射度合いを画像化するものである。従って映像上に表現されるものは組織の音響的特
性、おもに超音波に対する反射特性が表される。
このように画像診断機器は何らかのエネルギーを人体に与え、それに対する生体反応が物理的に作用した結果を映
像化したものであるから、映像がどのような原理に基づくものであるのかを理解し、その映像の示す意味に解釈を
与えなければならない。
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12-2 超音波診断の特徴
【特徴】
一般的に理解されている超音波診断の特徴を列記しておく。
1)無侵襲である
2)繰り返し検査が可能である
3)実時間性に富む
4)任意断面が観察可能である
5)移動性に富み、検査場所が制限されない
6)肺、骨などに阻まれた場所は観察できない
などがあげられる。無侵襲とは侵襲が無いこと、つまり生体に危害を与えるような危険が無いことを意味する。こ
れは超音波が生体に対して有害なものではないということを論拠とするものであるが、極めてパワーの大きなもの
は有害である。過去数十年にわたる超音波機器の臨床応用の歴史と、実験的な確認によって一定のパワー以下の超
音波では人体に何ら危害の及ばないことが知られており、販売される超音波機器は特別な要件がない限り、定めら
れたパワー以下の超音波しか出力しないように製造されている。
無侵襲であるということはまた、時間間隔を置かずに検査を繰り返し行えるということも意味する。リアルタイム
に軟部組織の任意断面の断層像が得られること、そして機器が小型にできるため検査場所が制約されないことも特
徴である。ただし超音波という特性上、体内にガスが含まれる領域や骨など極めて硬い物質に阻まれた領域の観察
には適さない。
【検査領域】
超音波診断で行える検査領域は極めて多岐にわたっている。頭部、頸部、心臓、乳房、上腹部、下腹部、上下肢な
ど、肺をのぞくほぼ全組織が対象である。
頭部については、骨の薄いところから骨を通して検査する場合もあり、より確実に映像化するには手術などで頭蓋
骨を外した状態で行うこともある。また乳幼児では頭蓋骨に隙間があり、そこを通しても検査が可能である。
頸部では血管系の性状や血流状況、や甲状腺などの組織性状が観察される。
心臓ではその動きの観測のほか形態異常や血流が観測される。また、手術中などしばしば体腔内探触子を口から食
道へ導入し体の裏側からの観察も行われる。
乳房も好適な検査対象であり、熟練操作者による腫瘍などの検出率が極めて高い。
上腹部については、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓といった全ての臓器が対象となる。異物の検出や腫瘍などの組
織変性の描出に有効に作用する。
上下腹部については
食道、胃、十二指腸、大腸が対象になり、しばしば体腔内検査型の超音波機器が使用される。
【超音波の性質】
超音波とは人の耳には聞こえない周波数の音である。通常 20Hz から 20kHz の音波は人は聞くことができず、一般
的には 20kHz 以上の音波が超音波と呼ばれる。しかし、聞こえるか聞こえないかには個人差があるため、聴くこと
を目的とせずに使われる音波を超音波としている。超音波は通常の音波とは周波数が異なるだけの違いであるから、
その物理的特性は音波の特性そのものである。以下に音波の基本的な物理特性について述べる。
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12-3 波動方程式
x、y、z それぞれの方向に圧力Pの波が存在することを考慮して以下を考える。f*は進行波、g*は後退波でcは伝搬速
度である。
p = f x ( x − ct ) + g x ( x + ct ) + f y ( y − ct ) + g y ( y + ct ) + f z ( z − ct ) + g z ( z + ct )
3-1
これから以下の波動方程式が得られる。(波動方程式の導出については 5 章の補足 2 を参照)
2
∂ 2p
∂ 2P ∂ 2P ⎞
2⎛∂ P
⎜
=
+
c
⎜ ∂ x 2 ∂ y 2 + ∂ z 2 ⎟⎟
∂ t2
⎝
⎠
3-2
12-4 音速(音の伝搬速度)
微小領域の挙動から音の伝搬速度を求めてみる。
体積弾性率(4章参照)を
κ=
−p
Δv
V
とすれば
p = −κ
= −κ
Δv
V
Δξ x ⋅ Δy ⋅ Δz + Δx ⋅ Δξ y ⋅ Δz + Δx ⋅ Δy ⋅ Δξ z
Δx ⋅ Δy ⋅ Δz
Δξ y Δξ z ⎞
⎛ Δξ
⎟
= −κ ⎜⎜ x +
+
Δy
Δz ⎟⎠
⎝ Δx
∂ξ y ∂ξ z ⎞
⎛ ∂ξ
⎟⎟
= −κ ⎜⎜ x +
+
⎝∂x ∂y ∂z ⎠
4-1
図 4-1
これを連続の式と言う。
x 軸方向の微小変位を考えると、x 軸方向に与えられた力の変化量は微小体積の慣性力(質量×加速度)に等しいか
ら、
ρV
∂ 2ξ x
= − Δ p ⋅ Δ y ⋅ Δz
∂ t2
4-2
である。ただし、ρは密度である。これから
∂ 2ξ x
Δ p ⋅ Δ y ⋅ Δz
Δp
∂p
=−
=−
=−
ρ
2
Δx
V
∂x
∂t
4-3
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∂ξ x
= v x とし、y、z 軸についても同様に求めると、以下の運動方程式を得る。
微小変位速度を
∂t
∂ vy
∂v
∂ vz
∂p
∂p
∂p
=−
ρ x =−
、ρ
=−
、ρ
4-4
∂t
∂x
∂t
∂y
∂t
∂z
式(4-4)をそれぞれ x、y、z で微分すると
∂ 2v y
∂ 2vx
∂ 2p
∂ 2vz
∂ 2p
∂ 2p
= − 2 、ρ
ρ
= − 2 、ρ
=− 2
∂ y∂ t
∂ x∂ t
∂ z∂ t
∂ y
∂ x
∂ z
v x ,v y ,v z
4-5
は連続であるから微分学におけるシュワルツの定理から偏微分の順序は入れ替えが可能で
2
∂ 2vx
1 ∂ 2 p ∂ 2vz
1 ∂ 2 p ∂ vy
1 ∂ 2p
=− ⋅ 2 、
=− ⋅ 2 、
=− ⋅ 2
ρ ∂ y ∂ t∂ z
∂ t∂ x
ρ ∂ x ∂ t∂ y
ρ ∂ z
4-6
(4-1)式の両辺を t で微分すると(これも微分順序を入れ替える)
⎛ ∂ 2ξ x ∂ 2ξ y ∂ 2ξ z ⎞
∂p
⎟
= −κ ⎜
+
+
∂t
⎝ ∂ t∂ x ∂ t∂ y ∂ t∂ z ⎠
⎛ ∂ 2ξ x ∂ 2ξ y ∂ 2ξ z ⎞
⎟
= −κ ⎜
+
+
⎝ ∂ x∂ t ∂ y∂ t ∂ z ∂ t ⎠
4-7
⎛ ∂ v ∂v y ∂ v z ⎞
⎟
+
= −κ ⎜ x +
⎝ ∂ x ∂ y ∂z ⎠
(4-7)式をさらに t で微分すると
⎛ ∂ 2vx ∂ 2v y ∂ 2vz ⎞
∂ 2p
⎜
⎟
=
−
κ
+
+
⎜ ∂ t∂ x ∂ t∂ y ∂ t∂ z ⎟
∂ t2
⎝
⎠
4-8
ここで(4-6) 式を(4-8)式に代入する
∂ 2 p κ ⎛∂ 2 p ∂ 2 p ∂ 2 p⎞
⎟
= ⎜⎜
+
+
ρ⎝ ∂x
∂y
∂ z ⎟⎠
∂ t2
4-9
を得る。これは連続の式と運動方程式から、微小変化の挙動を一般化したものである。
すなわち(4-9)式が p に関する波動方程式であり、圧力 p は時間と位置の関数となりこれは音圧と呼ばれる。波動方
程式の一般形である(3-2)式と比較すると、音の伝搬速度すなわち音速は
c=
κ
ρ
4-10
であることがわかる。(3-2)式はマクロ的に見た波の形式から一般的な波動方程式を求めたものであるが、これを微
視的に考察した結果である(4-9)式と対比させることで音の伝搬速度を求めることができる。(4-10)式において平方根
の中の分子は変化を押しとどめようとする弾性力であり、分母は変化し続けようとする慣性力である。音速は弾性
力と慣性力の比に依存すると言える。
液体における音速は(4-10)式で与えられるが、これは温度や圧に依存する。25℃の水でおよそ 1500m/s である。生
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体においても基本的には(4-10)式によって与えられると考えてよく、組織によって異なるが 1400~1600m/s 程度で
ある。ただし骨では 3000m/s を超える。
【気体中の音速】
理想気体の断熱変化においては比熱比をγとすれば、Boyle の定理により以下が成り立つ
P V γ = const.
4-11
これを全微分すると、
V γ dP + γ PV γ −1 dV = 0
dP
P
= −γ
dV
V
γP = −
dP
dV
V
4-12
となり、γP は体積弾性率であることがわかる。n モルの気体について、気体定数 R、ケルビン温度を T とすると理
想気体の状態方程式より
PV = nRT
4-13
従って、気体の密度をρ、分子量を M とすれば体積 V の質量ρV は nM に等しく、
γP γn
γ
=
RT =
RT
M
ρ ρV
4-14
よって、気体における音速は
c=
γP
γ RT
κ
=
=
M
ρ
ρ
4-15
となる。気体においては分子量が与えられれば、音速は温度のみの関数になる。空気について算出すると、その組
成を窒素(分子量 28)80%、酸素(分子量 32)20%とすれば、28×0.8+32×0.2=28.8(kg/kmol)、比熱比γ:1.403、
気体定数 R = 8316.96 (J/kmol/deg = Nm/kmol/deg) より
c = 331.5 + 0.61t
m/s となる。
【粒子速度】
(4-4)式を積分すると
vx = −
1 ∂p
1 ∂p
1 ∂p
dt 、 v y = − ∫
dt 、 v z = − ∫
dt
∫
ρ ∂x
ρ ∂y
ρ ∂z
4-16
を得る。vx、vy、vzは媒質の微小部分が振動する速度で、伝搬速度(c)と区別するために粒子速度と呼ぶ。
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12-5 速度ポテンシャル
音響工学では以下のように速度ポテンシャルΦというものを定義して論じる場合が多い。
vx = −
∂φ
∂φ
∂φ
、 vy = −
、 vz = −
∂x
∂y
∂z
5-1
∂φ 1
=
(5-1)式を(4-16)に代入すると x については
∂x ρ
∂φ
p=ρ
∂t
∫ ∂∂ px dt であるから
∂ 2φ ∂ p
ρ
=
∂ t∂ x ∂ x
従って
5-2
を得る。(5-2)式を時間微分して(4-7)式を代入すると
∂ v y ∂v z ⎞
⎛∂v
∂p
∂φ
⎟⎟
= ρ 2 = −k ⎜⎜ x +
+
∂t
∂t
⎝∂x ∂y ∂z⎠
5-3
更に(5-1)式を代入すれば、φについても以下の波動方程式で論じることができる。φを用いれば(5-1)、(5-2)によっ
て音圧と、粒子速度を同時に評価できることから、しばしばφを用いた検討が行われる。
2
∂ 2φ
∂ 2 φ ∂ 2φ ⎞ 2 2
2⎛∂ φ
⎜
=
c
+
⎜ ∂ x 2 ∂ y 2 + ∂ z 2 ⎟⎟ = c ∇ φ
∂ t2
⎝
⎠
5-4
補足:
∇2はラプラシアン演算子で ∇
2
φ = div grad φ
∂V y ∂V z
⎛ ∂φ ∂φ ∂φ ⎞
∂V
grad φ = ∇φ = ⎜⎜ , , ⎟⎟ 、 divV = ∇ V = x +
+
∂x
∂y
∂z
⎝ ∂x ∂ y ∂z ⎠
∇ 2φ = div grad φ =
∂ 2φ ∂ 2 φ ∂ 2 φ
+
+
∂ x2 ∂ y2 ∂ z2
から
(∇はナブラと読む)
平面波を考えると、波は x 方向のみに進行するから y、z 成分が無いものとし
2
∂ 2φ
2 ∂ φ
=c
∂ t2
∂ x2
5-5
& ε j ω t として(φが正弦波の場合)(5-5)式を解き、φの瞬時値を求めると
φ =Φ
m
φ = A& ε − j (k x −ω t ) + B& ε
j ( k x +ω t )
5-6
& , B& は境界条件によって定まる複素定数である。また
ただし、 A
k=
ω
c
である。
速度ポテンシャルの定義から音圧、粒子速度の瞬時値は以下となる。第 1 項は進行波、第 2 項は後退波である。
p=ρ
v=−
∂φ
= jω ρ A& ε
∂t
{
∂φ
= j k A& ε
∂x
{
j (ω t − k x )
j (ω t − k x )
+ B& ε
− B& ε
j (ω t + k x )
j (ω t + k x )
}
5-7
}
5-8
12-6
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12-6 音響インピーダンス
平面進行波のみを考えると、音圧、粒子速度の瞬時値は(5-7)式、(5-8)式から
p = jω ρ Aε j (ω t − k x )
v = j k Aε j (ω t − k x )
6-1
6-2
両者の比をとると
z=
p ωρ
=
= ρc
v
k
6-3
これを固有音響インピーダンスと呼ぶ。これは媒質固有の定数となる。
平面波以外の音場では音圧と粒子速度の比 Z は一般に複素数になり、音響インピーダンス密度と呼ばれる。粒子速
度 v は微小領域における振動をあらわすものであるから、この場合のインピーダンスも微小領域におけるインピー
ダンスという意味合いになる。
v を面積積分したものが体積速度と呼ばれる。平面進行波における粒子速度は平面内において一定であるからこれを
V とし、面積を S とすれば
p
z
Z& =
=
Sv S
6-4
が音響インピーダンスと定義される。一般的には音響インピーダンスは
音圧/体積速度
として与えられる。
参考:
固有音響インピーダンスを平面進行波の定義から求めてみる。
p = f ( x − ct ) とすると、 x − ct = u
∂ p ∂ f (u ) ∂ u ∂ f (u )
=
⋅
=
∂x
∂u ∂ x
∂u
今、進行波のみを
と置き、両辺を x および t で微分する。
∂ p ∂ f (u ) ∂ u ∂ f (u )
=
⋅
=
⋅ (− c )
∂t
∂u
∂t
∂u
よって
∂p
∂p
= −c
∂t
∂x
となる。 v x = −
1 ∂p
dt
ρ∫∂x
ρ v x = −∫
∴ z=
6-5
であるから(6-5)式を代入すると
∂p
p
1 ∂p
dt = ∫
dt =
∂x
c ∂t
c
6-6
p
= ρc
vx
6-7
上記は平面進行波の定義と運動方程式から得られた式であり、 p = f ( x − ct ) は正弦波である必要はない。
12-7
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12-7 反射角度と屈折
音は境界面で反射や透過をするが、この時の反射角度や透過角度は一定の法則に従う。
反射角度
XX'の境界面で以下のように波が進むものとする。
P→A→A'→P'
Q→B→B'→Q'
波が B→B'に至る間に A→A'に進むものとすれば、波面 AB は A'B に
進んだことになる。
Huygens の原理によって波面は波の進行方向に垂直であるから、
∠AA'B' = ∠B'BA = 90°になる。
AA' = BB' であり、AB'は共通であるから
ΔAA'B' ≡ ΔB'BA
また、∠PAB = ∠YAB' = 90°であり、∠YAB は共通であるから
図 7-1
θi = ∠PAY = ∠BAB'
従って
∠A'AB' = ∠BB'A = 90°- ∠BAB' = 90°-θi
反射角度
∴
θr = 90°-∠A'AB' = θi
θr は入射角度 θi に等しいことが導かれる。
透過角度
入射側媒質の音速をC1、透過側媒質の音速をC2とする。
波が B→B'に至る間に A→A'に進むものとすれば
C
AA′
BB ′ AA′
、従って、 2 =
=
C1 BB ′
C1
C2
AA' = AB'sinθt
BB' = AB'sinθi
よって
AA' sin θ t C 2
=
=
BB' sin θ i C1
sin θ t sin θ i
=
C2
C1
(7-1)式は入射角度
則と呼ばれる。
図 7-2
12-8
7-1
θi と透過角度 θt の間係を示したものでSnellの法
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12-8 平面波の反射と透過
音が境界面でどの程度反射や透過をするのかを考えてみる。
平面波の垂直入射
(5-7) 式、(5-8)式から媒質Ⅰでの音圧、粒子速度p1,v1および媒質Ⅱ
での音圧、粒子速度p2,v2は
{
p1 = jω ρ1 A1 ε j (ω t − k1 x ) + B1 ε j (ω t + k1 x )
p 2 = jω ρ 2 A2 ε j (ω t − k 2 x )
v1 = j k1 A 1ε j (ω t − k1 x ) − B1 ε j (ω t + k1 x )
v 2 = j k 2 A 2 ε j (ω t − k1 x )
{
}
}
8-1
8-2
境界面でのそれぞれの値は、x=0 として
図 8-1
( p1 )x =0
= jω ρ 1 ( A1 + B1 )ε
( p 2 )x =0
= jω ρ 2 A2 ε
jω t
8-3
jω t
(v1 )x =0
= j k1 ( A1 − B1 )ε
(v 2 )x =0
= j k 2 A2 ε
jω t
8-4
jω t
境界面では音圧、粒子速度ともに連続であるからそれぞれの値は等しくなければならない。従って
ρ1 ( A1 + B1 ) = ρ 2 A2
k1 =
ω
c1
、 k2 =
ω
c2
8-5
k1 ( A1 − B1 ) = k 2 A2
8-6
1
( A1 − B1 ) = 1 A2
c1
c2
8-7
ρ1
( A1 + B1 ) = c2 ( A1 − B1 )
c1
ρ2
8-8
であるから、
(8-5)式, (8-7)式から
音圧の反射係数はすなわち媒質Ⅰにおける進行波に対する後退波の振幅比であるから
Rp =
(8-8)より
ρ1
ρ2
jω ρ1 B1 B1
=
jω ρ1 A1 A1
8-9
⎛ B1 ⎞ c 2 ⎛ B1 ⎞ B1 ⎛ ρ1 c 2 ⎞ c 2 ρ1
B c ρ + c 2 ρ 2 c 2 ρ 2 − c1 ρ1
⎜⎜1 + ⎟⎟ = ⎜⎜1 − ⎟⎟ 、 ⎜⎜
+ ⎟⎟ =
−
=
、 1 1 1
A1 ⎠ c1 ⎝
A1 ⎠ A1 ⎝ ρ 2 c1 ⎠ c1 ρ 2
A1
c1 ρ 2
c1 ρ 2
⎝
Rp =
B1 c 2 ρ 2 − c1 ρ1
c1 ρ 2
c ρ −c ρ
=
= 2 2 1 1
A1
c1 ρ 2
c1 ρ1 + c 2 ρ 2 c1 ρ1 + c 2 ρ 2
8-9
Rp =
c 2 ρ 2 − c1 ρ1 Z 2 − Z 1
=
c1 ρ1 + c 2 ρ 2 Z1 + Z 2
8-10
従って
音圧の反射率
12-9
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その他の係数についても同様に求められる。*1
補足
2Z 2
jωρ 2 A2 ρ 2 A2
=
=
jωρ1 A1
ρ1 A1 Z 1 + Z 2
8-11
jk1 B1
B
Z − Z2
=− 1 = 1
jk1 A1
A1 Z1 + Z 2
8-12
2Z1
jk 2 A2 k 2 A2
=
=
jk1 A1
k1 A1 Z1 + Z 2
8-13
音圧の透過率
Tp=
粒子速度の反射率
Rv = −
粒子速度の透過率
Tv =
*1:
(8-5)式から
ρ2
A2 − A1 = B1 、(8-7)式から
ρ1
A1 −
c1
A2 = B1
c2
⎛ρ
c ⎞A
ρ2
ρ A
2 ρ1 c 2
c
c A
A
A2 − A1 = A1 − 1 A2 、 2 2 − 1 = 1 − 1 2 、 ⎜⎜ 2 + 1 ⎟⎟ 2 = 2 、 2 =
c2
ρ1
ρ1 A1
c 2 A1 ⎝ ρ1 c 2 ⎠ A1
A1 ρ1c1 + ρ 2 c 2
Tp=
2 ρ1c 2
2Z 2
jωρ 2 A2 ρ 2 A2 ρ 2
=
=
⋅
=
jωρ1 A1
ρ1 A1 ρ1 ρ1c1 + ρ1c1 Z1 + Z 2
Tv =
2 ρ1 c 2
2Z1
jk 2 A2 k 2 A2 c1
=
= ⋅
=
jk1 A1
k1 A1 c 2 ρ1c1 + ρ 2 c 2 Z1 + Z 2
補足:
音圧の反射率と透過率を足しても1にはならない。粒子速度も同様である。エネルギー保存の観点から、入射エネ
ルギーは反射エネルギーと透過エネルギーの和であると考えられるが、これには音の強さ I の反射率、透過率を考
えなければならない。音の強さとはオームの法則に当てはめても想像できるが、音圧と粒子速度それぞれの実効値
P2
の積 PV で定義される。 P = ρ cV の関係があるから、 I =
= ρ cV 2 となり、音圧あるいは粒子速度の 2 乗に比例
ρc
する。音の強さの反射率として、音圧の反射率と粒子速度の反射率の絶対値の積を考え、音の強さの透過率として、
音圧の透過率と粒子速度の透過率の絶対値の積を考えると、
Z − Z1 Z1 − Z 2 (Z 2 − Z1 )
RI= 2
⋅
=
Z 1 + Z 2 Z 1 + Z 2 (Z 1 + Z 2 ) 2
8-14
2Z 2
2Z1
4Z1 Z 2
⋅
=
Z1 + Z 2 Z1 + Z 2 (Z 1 + Z 2 )2
8-15
2
T I=
(8-14)、(8-15)から音の強さについては反射率と透過率の和は1となりエネルギー保存が確認される。
R I+T I=
(Z 2 − Z 1 ) 2 + 4 Z 1 Z 2
(Z1 + Z 2 )2 (Z1 + Z 2 )2
Z1 + 2Z1 Z 2 + Z 2
2
=
(Z 1 + Z 2 )2
2
=
(Z 1 + Z 2 )2
(Z 1 + Z 2 )2
=1
12-10
http://www.t-net.ne.jp/~kondoy/lecture/index.html
12-9 斜め入射における反射と透過
境界面に対して斜めに入射する音について、音圧は方向性を持た
ないため境界をはさんで保存される。粒子速度については境界の
法線成分について保存されなければならない。従って
P i+ P r= P t
Vi cos θ i + Vr cos θ r = Vt cos θ t
9-1
9-2
反射波では音圧の位相が反転することを考慮すると入射波、反射
波、透過波における音圧と粒子速度の比すなわち、固有音響イン
図 9-1
ピーダンスはそれぞれ
入射波
Z 1=
反射波
Z 1′ =
透過波
Z 2=
Pi
Vi
Pr
Vr
Pt
Vt
= ρ1 c1
= − Z 1 = − ρ1 c1
= ρ 2 c2
9-2 式を書き換えると
Pi
P
P + Pr
P
cosθ i − r cos θ r = t cosθ t = i
cos θ t
Z1
Z1
Z2
Z2
9-3
1
1 P
1 ⎛ Pr ⎞
⎜1 +
⎟ cos θ t
cos θ i − ⋅ r cos θ r =
Z1
Z1 P i
Z 2 ⎜⎝
P i ⎟⎠
Pr
Pi
⎛ cos θ t cos θ r
⎜⎜
+
Z1
⎝ Z2
⎞ cos θ i cos θ t
⎟⎟ =
−
Z1
Z2
⎠
従って音圧の反射率は
Rp =
P r Z 2 cos θ i − Z 1 cos θ t
Z1Z 2
=
⋅
Pi
Z1Z 2
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ r
Z cos θ i − Z 1 cos θ t
= 2
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ i
9-4
また、9-3 式を書き換えると
Pi
P
P − Pi
P
P
cosθ i − r cos θ r = i cos θ i − t
cosθ r = t cos θ t
Z1
Z1
Z1
Z1
Z2
1
1
cos θ i −
Z1
Z1
Pt
Pi
⎛P
⎞
1 Pt
⋅ ⎜⎜ t − 1⎟⎟ cos θ r =
⋅
cos θ t
Z2 P i
⎝ Pi
⎠
⎛ cos θ t cos θ r
⎜⎜
+
Z1
⎝ Z2
⎞ cos θ i cos θ r
⎟⎟ =
+
Z1
Z1
⎠
12-11
9-5
http://www.t-net.ne.jp/~kondoy/lecture/index.html
従って音圧の透過係数は
Tp=
P t Z 1 (cos θ i + cos θ r )
Z (cos θ i + cos θ i )
Z1 Z 2
=
⋅
= 2
2
Pi
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ r Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ i
Z1
2Z 2 cos θ i
=
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ i
9-6
9-1 式から
Vi Z 1 − Vr Z 1 = Vt Z 2
9-7
9-7 式と 9-2 式からVtを消去すると、
Vi Z1 − Vr Z1 =
Z1 −
Vr
Vi
Vi cos θ i + Vr cosθ r
Z2
cosθ t
9-8
cos θ i
Vr
V cos θ r
Z1 =
Z2 + r
Z2
Vi
Vi cosθ t
cosθ t
⎛
⎞
cos θ i
cos θ r
⎜⎜ Z 1 +
Z 2 ⎟⎟ = Z1 −
Z2
cos θ t
cos θ t
⎝
⎠
従って粒子速度の透過係数は
Rv =
cos θ t
Vr Z 1 cos θ t − Z 2 cos θ i
=
Vi
cos θ t
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ r
Z cos θ t − Z 2 cos θ i
= 1
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ i
9-9
9-7 式と 9-2 式からVrを消去すると、
Vi Z1 −
Z1 −
Vt
Vi
Vt cos θ t − Vi cos θ i
Z1 = Vt Z 2
cos θ r
9-10
cos θ i
Vt cos θ t
V
Z1 +
Z1 = t Z 2
Vi cos θ r
Vi
cos θ r
⎛
⎞
cos θ t
cos θ i
⎜⎜ Z 2 +
Z 1 ⎟⎟ = Z1 +
Z1
cos θ r ⎠
cos θ r
⎝
従って粒子速度の透過係数は
Tr =
Vt Z 1 cos θ r + Z 1 cos θ i
cos θ r
=
Vi
cos θ r
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ r
2 Z 1 cos θ i
=
Z 1 cos θ t + Z 2 cos θ i
12-12
9-11
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