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自動車産業から見た 燃料の将来像
資料6 自動車産業から見た 燃料の将来像 株式会社ローランド・ベルガー 2016年10月24日 パワトレの変化 各国の環境規制が厳格化する中、OEM各社は排出量削減の取り組み を加速する必要 各国の排出規制 燃費規制値 規制値の絶対値比較 各OEMの燃費実績は台数平均をベースに算出され、目 標値とのギャップで達成可否が判断される 欧州の燃費規制が他国に先行して厳格化されていく見込み 2015年 欧州 130 g/km 2020年 2025年 95 g/km 75 g/km (2021年~) (討議中) 米国 263 g/mile 213 g/mile 162 g/mile 中国 6.9 L/100km 5 L/100km 未定 日本 154g/km 114g/km 未定 Source:各種新聞記事、ローランド・ベルガー エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 1 パワトレの変化 その中で、自動車のパワトレバリエーションは今後益々多様化が進む パワトレのバリエーション 実用化に向けた技術的難易度 1 ダウンサイズエンジン • 小排気量化による燃費向上 5 2気筒エンジン • 少気筒化による燃費向上 2 クリーンディーゼルエンジン • DEの低燃費/低排出ガス化 6 HV(ハイブリッド) • モータの併用による環境性向上 3 天然ガスエンジン • CNGの利用による低排出ガス化 天然ガス イ ン フ ラ 整 備 の 必 要 度 4 フレックスフューエルエンジン • バイオ燃料の混合による環境性向上 バイオ燃料 12 HCCIエンジン • 自然着火化による燃費向上 13 ガスタービンエンジン • タービン化による燃費向上 7 PHV(プラグインハイブリッド) • HVの充電化による更なる環境性向上 EVのバックアップ追加による航続延長 ガソリン/軽油 電気 8 EV(電気自動車) • 外部充電による電力走行への転換 9 バイオ燃料エンジン • バイオ燃料の専用による環境性向上 10 FCV(燃料電池自動車) • 水素燃料による電力走行への転換 水素 11 水素燃料エンジン • 水素燃料の使用による環境性向上 Source: 出所: Roland Roland Berger Berger エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 2 パワトレの変化 規制が厳格化する中、完成車メーカーは様々なパワトレを市場や車格 によって使い分けながら、企業全体平均燃費を向上していく 既存ガソリンエンジンに対するCO2削減効果概算[%] バイオ燃料エンジン 100 水素燃料エンジン 100 FCV 100 フレックスフューエルエンジン 85 EV 50 クリーンディーゼル 35 天然ガス 35 PHV 30 HV HCCI ダウンサイズエンジン Source: Roland Berger 25 > トラディショナルな内燃機関もまだ燃費 向上はするが、10%程度でその後はサ チュレート > 一方で、HCCIエンジンはマツダやホン ダが本腰を入れて開発しており、内燃 機関としての進化余地が存在 > バイオ燃料は、原料植物が成長する段 階で吸収するCO2を、燃焼時に排出す るため、地球上で考えると排出量-吸 収量=ゼロという考え方 > フレックスは、バイオ燃料が最大85% ミックスされている前提 > EVは走行中にはCO2を排出しないが、 発電段階での排出が存在 15 10 エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 3 パワトレの変化 電動化に舵を切ったVWのホームマーケットである欧州でも、2030年で 内燃機関が7割を占める見込み パワトレミックス予測(欧州の乗用車の販売台数ベース) 100% 1% 0% 2% 0% 0% 100% 4% 2% 2% 1% 2% 100% 4% 3% 4% 1% 7% 100% 5% Other 4% EV 6% 1% PHEV 12% Mild HEV 39% Gasoline 33% Diesel 44% Full HEV 43% 41% 53% 47% 40% 2015 Source: Roland Berger 2020 2025 > そもそも原油需要は保有台数によるため、 実際の原油需要変化へのインパクトはもっ と緩やか > 脱原子力は発電コストの増加や電力供給 能力の限界を招き、結果的に内燃機関需 要を押し上げ > 昨今シェアを伸ばしているSUVは、重量が かさむため、EVには向かない – 必要な電池が多く、重量増になるためエ ネルギー効率が低下し、積載性も悪化 > 内燃機関の中では、ディーゼルは減少 – VW問題に加え、規制対応に必要な追加 装置によるコスト増、欧州に次ぐディー ゼル主要市場のインドで新規登録禁止 など規制強化も、減少に拍車を掛ける – 結果、使途を失った軽油は余剰になる 可能性 2030 エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 4 モビリティの変化 自動運転は、シェアードとコネクティビティと融合して、「無人で迎えに 来て送ってくれる」モビリティとなることで普及が加速 Automotive 4.0の考え方 移動手段の共有 高 つながり、共有された世界 Automotive 4.0 > 車の保有が一般的 > 但し、都市部や一部の近郊都市においては シェアリングが増加 シェアードモビリティ、 コネクティビティ、 自動運転の融合 高 > 自動運転は個人所有を中心に広く普及 > シェアリングは限定的 現行の世界 自動運転 低 自動化された世界 低 短期的 現在- 2020 中期的 2020-2030 長期的 2030以降 現在のタクシーやライドシェアでコストの7割を占める運転手がいなくなり利用者の移動コストは劇的に低下して、普及に至る Source: Roland Berger エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 5 モビリティの変化 その中で車は、短距離を便利に移動する小型Pod、中距離でも快適に 移動するコミュータ、趣味のオーナーズカーという方向感 Automotive 4.0の世界観 - 車両 シェアードモビリティ サイズ 主要用途 移動距離 ユーザー視点での ポイント 特徴 小型Pod コミュータ オーナーズカー > 1~2人 > 狭い収納スペース > 4人以上 > 大きな収納スペース > 1~4人以上 > 様々なサイズの収納スペース > 市街地や郊外で、駅~目的地と いった短距離移動 > 郊外や市街地における中距離移 動 > 個人のニーズに合わせた移動 > レジャーや大人数での移動 > 長くても20km程度 > 20km以上 > あらゆる距離 > 操作の容易性 > 低コスト > 長距離移動のための快適性 > 個人のニーズに合わせた移動と 快適性 > > > > > > > > > > > > > > > > > 低燃費 低排出ガス 低メンテナンスコスト 信頼性 快適性 低燃費 低排出ガス 低メンテナンスコスト 信頼性 インフォテイメント 個性的 快適性 オンラインサービス インフォテイメント 低燃費 低排出ガス 低メンテナンスコスト エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 6 モビリティの変化 都市部では、シェアードモビリティが普及して常に自動運転車が稼動し、 人が待つことなく移動できる世界が出現 Automotive 4.0の活用シーン - 都市部のイメージ 都市部の特徴 > 都市部では狭い範囲に多くの人が集まり、 移動も活発 > シェアードモビリティの威力を発揮すること から、普及も早い 通勤 郊外へ 駅 エグゼクティブ Station ビジネスエリア 通勤 シッピングゾーン 買物客 通勤 メンテナンス工場 住宅街 モビリティの活用イメージ > 常に車両は稼動し、待つことなく人は移動 することが出来る – 住宅地域では小型Podがタクシーのよう な役割 – コミュータが朝・夕の通勤通学の移動を 担う – 日中は、コミュータが商業地域への買い 物客を運ぶ – エグゼクティブはオーナーズ・カーにて、 個人の時間を確保 > 移動の少ない夜間は、拠点に集結すること で効率的にメンテナンス – 車両が集結することで、従来より低コス ト・高効率にメンテナンス – 車両より早いライフサイクルでの交換・ 更新が必要な部品も存在する エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 7 モビリティの変化 車両の中は、オフィスでもあり、リビングでもあり、生活に必要なことの 利便性が向上する場にもなる 車内での過ごし方 オフィス空間 自宅のリビング 3Dバーチャルリアルティー技術を 使い、車内でTV会議 家のリビング空間をそのまま再現 した団欒の場 音声入力システムで話すだけで書 類作成と送信 ベッドに早変わりするイスで、長距 離移動中は仮眠 車両の中の空間 生活の利便性を向上させる場 自動運転と連動して、駐車場予 約・行き先のおすすめ情報の取得 バイタルセンサーで簡易健康診断、 かかりつけの病院へ送信 エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 8 モビリティの変化 シェアードモビリティにより、ユーザ数や販売台数は増加する一方、台 あたり稼働率が向上して保有台数は減少 自動車・ドライバーへの影響(米国市場対象) 都市別移動者数 [百万人] 216.8 52.4 12.3 249.1 17.6 67.0 > 他の移動手段の代 替による増加 年代別移動者数 [百万人] 216.8 35.1 249.1 38.9 110.4 121.3 43.0 34.3 37.0 37.8 43.4 Auto 4.0 Auto 3.0 Auto 4.0 110.9 121.5 41.2 Auto 3.0 大都市 中都市 0-14 25-54 小都市 地方 15-24 55-64 年間販売台数 [百万台] 16.8 2.0 14.8 17.6 2.8 9.8 5.0 Auto 3.0 高級車 > 若年層と65歳以上の 高齢者の増加 65+ 保有台数[百万台] > 高級車セグメントの 増加と量販車の激 減 > シェアードモビリティ のシェアという新しい 形態の展開 254.4 30.1 205.8 42.5 224.3 147.8 > 量販車を中心とした 49百万台規模の保 有台数減 > 8人程度のオーナー による共同保有に置 き換え 3200万人規模のドライバー増加 > 公共交通機関や短長距離鉄 道・飛行機から、自動車へのシ フトが発生 > 若年層など免許を持たない層 の運転が可能となる 76万台以上の販売増加 > シェアードモビリティによる利便 性の高いサービスにより、カー シェアを使いつつも、人々の自 動車での移動量は維持 > 保有台数は減るものの、買い 替えサイクルは短期化 15.4 Auto 4.0 量販車 7.7 示唆 Auto 3.0 Auto 4.0 シェアードモビリティ Source: Press articles, annual reports, US Census, NHTSA, FHWA, IHS, Automotive Fleet, Roland Berger エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 9 エネルギー需要の変化 結果として、エネルギー需要の増減要素は多岐に亘り、しかもその影 響因子は複雑に絡まるため、様々なシナリオが考えられる エネルギー需要の変化 1台あたり需要 つくる時 走る時 車内で過ごす時 入庫する時 保有台数 > 開発プロセス > 各パワトレ効率向上 > 新たな機能追加 > 整備 > パワトレミックス – 特にEV、PHEV – エンタメ装備 – デジタル開発普及 エネルギー 増減要素 – 現物試験の減少 > 生産プロセス – ロボット活用 – IOT/AIでの効率化 > 電池の性能向上/ コスト低減 – LiBの進化/次世 代電池の実用化 > エネルギー補充 – ネットワーク構築 – 補充頻度 > 車両状態管理 – クラウドデータ授受 – 仕事装備 – 睡眠/快適装備 > 完全自動運転車比率 > 車格ミックス > 人間の機能代替 – インフラ/他車協調 – 周辺/運転手監視 – 統合制御 – 省電力型AI/半導体 – アクチュエーション – ソフトアップデート 各要素への 影響因子 – 高稼働による高頻 度入庫 – 診断機器の多様化 増減インパクト(初期的) 大 動力源自体、演算量多 (100m sec未満、外的要因多) 中 エネルギー抑制機能、演算量中 (100m sec以上、外的要因小) 小 上記以外 車両 エネルギー 当局 消費者 > 技術革新 > コスト/スケールメリット > 開発/生産キャパシティ > 供給インフラ > エネルギーミックス > エネルギー源ミックス > 環境規制 > インフラ政策 > 自動運転/共有化政策 > 価値観 > 経済力 > 移動者総数 エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 10 エネルギー需要の変化 特に、電池の進化や省電力型AI/半導体の技術進化は、エネルギー 増減要素の中でもインパクトが大きい エネルギー増減要素に掛かる動向 電池の進化 脳メカニズムを応用したAI/半導体 リチウムイオン電池の進化は今後、進化はサチュ レートする中、次世代電池が登場。但し、量産化で の課題はまだ多い > 【リチウムイオン電池の進化】 – 重量エネルギー密度は現状200Wh/kgから、2025 年には350Wh/kgに増加 – コストも、現状350$/kWhから、2025年には 200$/kWh以下へと低下 > 【次世代電池の開発】 – ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池並 みの性能・安全性で、コストが3割安の試作品が 開発済。2020年以降に量産化の可能性 – 全固体電池は、エネルギー密度2倍、出力密度 3倍の試作品が開発済。2020年以降に量産化の 可能性 計算量を減らすことで、消費電力を抑えるAIや半導 体の開発が進展 > 【三菱電機】 – 一部回路のみで処理する人間の脳の構造を応 用し、学習に影響しない情報のやり取りを排除 – 結果、計算量を1/30に抑制 > 【IBM】 – 演算装置とメモリー間にデータ移動という既存 コンピュータのボトルネックを解消し、人間の脳 模倣型半導体を開発 – 結果、現時点で54億個のトランジスタを含むシ ステムが70mWで動作 > 【NEC・大阪大学】 – 目や耳から入る情報をパターン化して処理する 人間の脳を応用 – 結果、消費電力を現在の1/100にする目標 エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 11 エネルギー需要の変化 しかし、既に電装品の増加で車両の電力供給は逼迫。ここに自動運 転機能、時間価値向上の室内装備などが追加されると更に厳しくなる 現状の主要電装品の負荷 ランプ類 1,000 電動 ファン 動作時間(秒) 100 10 ブロワ モータ デフォッ ガー 電動AC 電磁駆動弁 フルHV 駆動用モータ/ジェネレータ 大型 EPS 小型 EPS ワイパー モータ 1 ABS ESC パワー ウィンドウ EHB マイルドHV 駆動用モータ/ ジェネレータ アクティブサスペンション 12Vバッテリでは 電源が不足する領域 0.1 100 1,000 10,000 100,000 電気負荷出力(W) > "大都市での完全自動運転には、現在の通常のCPUの1000倍の演算量が必要"(OEM自動運転開発者) > 完全自動運転では、車内での過ごし方がサービス/車両選定の拠り所になるため、関連装備を簡素化するのも困難 > その場合、代替が存在するパワトレが電力負荷軽減の対象となり、効率が更に向上した内燃機関やHEVを適用する可能性 Source 富士キメラ エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 12 まとめ > 2030年以降を見据えると、自動車産業が燃料産業にもたらすインパクトは大きい – パワトレの変化では、従来のHVよりも更に燃料消費量が少ないPHVやEVが増加し、車両 駆動用燃料需要は減少し、電力需要が増大。一方、 HCCIエンジンなど内燃機関も継続進 化するため、電動化一辺倒にはならない – モビリティの変化では、低コストで時間価値を高めることができる完全自動運転と相まって シェアリングが普及し、保有台数は減少。利便性の高いドアtoドアの移動手段が担保され ることで新たな移動も創出しうる > 結果として、エネルギー需要の変数は増加し、様々なシナリオが考えられる中、石油需要の 継続/需要減少タイミングの後ろ倒しの可能性も存在 – 完全自動運転のシェアリングはグローバルで一気に浸透するわけでなく、新興国では安 価な内燃機関の手動運転車を保有するケースも当面続く – 完全自動運転のシェアリングでも、車内で過ごすための機能拡充で車両の電力需要が大 幅に増して電動パワトレの電力需要が賄えなくなり、結果として代替が存在するパワトレ がそのバッファとなって、EVではなくHEVや内燃機関が適用される可能性 > いずれにせよ、需要構造変化を的確に捉えて、適切な供給能力をタイムリーに整えるための 多様な構えをゼロベースで検討すべき エネ庁資源・燃料部_自動車産業から見た燃料の将来像_161024.pptx 13