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桐蔭学園「アクティブラーニング公開研究会 2015」
目 次 ご挨拶 ……………………………………………………02 桐蔭学園 理事長 平岩敬一 桐蔭学園中学校・高等学校・中等教育学校 校長 野坂康夫 桐蔭学園教育顧問/京都大学高等教育研究開発センター教授 溝上慎一 写真で見る 桐蔭学園アクティブラーニング推進のあゆみ ………06 本冊子をご覧いただくにあたって ……………………18 公開授業学習デザインシート …………………………22 アクティブラーニング実践報告 ………………………76 ご挨拶 学校法人桐蔭学園 理事長 平岩 敬一 学校法人桐蔭学園は、昭和 39(1964)年、高度成長期を支え、日本を経済大国へと押し上げた実 業人らが、未だしと思えた当時の教育界に対して、我が国の将来のために、国家百年の計に寄 与せんとの理念の下、次世代の人材育成の新しい切り口としての期待を担ってスタートした学 校です。 この 50 年の間に培ってきたものは、まさに公立学校では出来ない形での「人材育成」でした。 35 万平米余のキャンパス、近年まで能力別教育と称していた習熟度別教育、団体訓練として始 まったキャンプを通じて行われたリーダー教育、専門的指導者によるスポーツ教育、本格的ホ ールでの芸術教育などにその理念が具現化されています。 50 年余を経た今、世の中は急速なグローバル化・多様化の時代を迎えています。そこで、創 立以来掲げてきた「自由・求学・道義・愛国」という4項目の建学の精神に加え、昨年(2014 年)の創立 50 周年を機に、 「自然を愛し、平和を愛する国際人たれ」 という一項を加え、新時代を見据えた改革をスタートさせました。そのビジョンは、 「自ら考え判断し行動できる子どもたち」の育成 すなわち一人ひとりが多様な変化の激しい社会にしっかりと適応し、地に足をつけ、自らの人 生を切り開いていけるための自立的学習能力を育てることです。これはそのまま、大学入学後 に必要となる主体的に学ぶ姿勢に直結するものです。さらには、大学・大学院等の高等教育を 終えた段階で社会に出るための力、さらにその 10 年先、20 年先、社会の中心で活躍するため の力を育てることにも繋がります。 実社会で必要とされる力とは何でしょうか。それは、コミュニケーション能力や問題解決能 力等、生きていくのに必要な力です。それを高校までにしっかり身につけて大学に進むべきで す。このような基礎があってはじめて大学教育も生き、人材も育ちます。 この理念を実現するべく、私たちはアクティブラーニング型の授業を導入することとし、今 年の4月から本格的に実践しています。今年度の高校1年(男子部・女子部)および中学1年 (男子部・女子部)、中等教育学校4年および1年を推進学年と位置づけ、アクティブラーニ ング研究の第一人者である溝上慎一・京都大学教授を教育顧問としてお迎えし、具体的なご指 導を受けながら進めてまいりました。 その研究実践の成果を発表し、さらにそのモデル校として活動しようとしていることを広く 知っていただく意味もこめて、本日の公開研究会を開催するに至った次第です。未熟な点も多々 あろうかとは存じますが、日本の未来を切り開く教育改革のために、ご参加の皆さまの忌憚の ないご意見を賜りたく何卒お願い申しあげます。 本日はご来場まことにありがとうございました。 2 ご挨拶 桐蔭学園中学校・高等学校 中等教育学校 校長 野坂 康夫 本日はご多忙のところ、桐蔭学園「アクティブラーニング公開研究会 2015」にお運びくださ り、まことにありがとうございます。 本校の生徒対象行事の一つに「がんばれ!! 桐蔭学園!!」という卒業生パネルディスカッショ ンがあります。これは各界で活躍する本校の卒業生たちが、パネラーとして現役の高校2年生 および中等教育学校5年生たちを激励するという趣旨で行っている、生徒たちが楽しみにして いる行事の一つです。 この企画の提案者である、やくみつる氏は、この6月に行われたパネルディスカッションに おいて、後輩にあたる現役の桐蔭生へのアドバイスとして「今日自分が仕入れた知識を本当に 我が物にするためには、それを身近な人に話してみるとよい。片っ端から他人に説明すること で、知識はどんどん身についていきます」という意味のことを話していました。漫画家として の活躍は言うに及ばず、今やクイズ番組等でマルチな才能を存分に発揮している彼のこの言葉 は、説得力をもって生徒たちの心に響いていました。 私はアクティブラーニングの出発点はここにあると思っています。他者を媒介として知識を 認知・定着させるこの姿勢は、次の段階ではその知識を介して他者あるいは集団で活動するこ とにつながります。これにより、生徒の主体性、協働性が育まれるのです。 事実、彼は本校在学中、友人たちとともに「相撲研究会」を立ち上げ、学園祭ではそれは見 事な研究発表を行いました。もう 40 年も前のことですが、彼の主体性、協働性といったものが 遺憾なく発揮されていたのを鮮明に覚えています。 今年、アクティブラーニング型授業導入の推進学年にあたる高1女子部のグループが「模擬 国連大会に参加したい」と申し出てきました。もともと中等教育学校には模擬国連部というの があり、世界大会で優秀賞を獲得するなど実績はあったのですが、それに刺激を受けたようで す。ひょっとすると、アクティブラーニング型授業を導入したことによる成果の一つなのかも しれません。これに限らず、推進学年では「話し合いが上手になった」「プレゼンテーション 能力が上がった」「積極性が出てきた」等々の効果が徐々に現われ始めています。 本校では「大学につながる、そして社会につながるアクティブラーニング型授業を」という 理念を掲げ、この4月から溝上慎一・京都大学教授のお力添えのもと、本格的に導入を図って おります。アクティブラーニングの今後の発展の一翼を担うことができればこの上ない喜びで ございますが、未だ発展途上の段階でもあります。本日ご参加の皆さまには、どうか忌憚のな いご意見をお寄せいただければ幸甚でございます。 今後とも、あいかわらぬご指導、ご鞭撻のほど心よりお願い申し上げます。 3 桐蔭学園アクティブラーニング公開研究会 2015 にあたって 京都大学教授・桐蔭学園教育顧問 溝上 慎一 ◆桐蔭学園は、2015 年 4 月より、教育改革の中心的な柱として全教科にアクティブラーニング 型授業を導入してきました。 2015 年度は改革初年度として、①高校 1 年(男子部・女子部)および中等教育 4 年、②中学 1 年(男子部・女子部)および中等教育 1 年を対象として設定し、当該学年の 30 名のアクティ ブラーニング推進委員を中心に、研修を重ねてきました。学習形態としてのアクティブラーニ ングの導入は、始まって 2 ヶ月くらいで一定の水準まで達しました。私や関係者は、当初1年 くらいかかると見ていましたので、その予想をはるかに上回るハイペースの取り組みに驚きを 隠せませんでした。対象学年の先生方の熱心な取り組みと相互研鑽のたまものだと言えます。 この時期の様子は、すでに多くの方がご覧になった Youtube の「アクティブラーニング:大 学・社会へとつなげる桐蔭学園のAL」(2015 年 7 月 2 日)で公開されています。まだご覧に なっていない方は、是非ご覧ください。 ◆しかしながら、アクティブラーニング改革はまだ始まったばかりです。理論的にアクティブ ラーニングは、 (1)(主として活動を学習に組み込んだ)学習形態 (2)(活動と認知から定義される)学習概念 (3)(トランジション・学習と成長パラダイムに基づく)学習論 の 3 つの観点から多層的に理解される、最終的には、学校から仕事・社会へのトランジショ ン、学習と成長パラダイムに基づく学習論です。上述の桐蔭学園の取り組みは、この中の(1) を示したものであり、これからは(2)(3)をふまえた学習成果、評価をおこない、(1)を相対的な 授業論として改善を重ねていかなければなりません。 ◆本日の公開研究会では、以下 2 点を組み込んだアクティブラーニング型授業の成果をみなさ まに見ていただこうと考え、準備を進めてまいりました。これらは、(1)学習形態としてのアク ティブラーニングが一定程度導入されたと判断された 7 月以降、ブレストチーム、アクティブ ラーニング推進委員で組織的に検討をおこなってきた作業課題です。 ・習得-活用(I と II)-探究の学習プロセスにアクティブラーニングを位置づけ、とりわ け新しい課題として、そのなかの活用 II の問題作成、それを単元に中に位置づけて授業化 すること ☞公開授業では、原則として、単元のなかに「活用 II 問題」を扱う 1 時限を位置づけ、 その部分を参加者に見せるとしています。 4 ・高大接続の文脈で改訂される学力の三要素に対応したメタ・ルーブリックの作成と各教科・ 単元対応 ☞教科・単元対応は作業中ですが、さしあたって本日は、学習デザインシートに各授業 者がたたき台として評価規準を反映させています。 ◆桐蔭学園に限ったことではありませんが、学習形態としてのアクティブラーニングがうまく 導入されると、そこから先は、学習目標に照らした、アクティブラーニング型授業の評価、ひ いてはその結果を授業計画、実施にフィードバックして授業を改善していく、例のPDCAサ イクルをまわしていくこととなります。この作業は、アクティブラーニングから離れて、かな り一般的な授業論の色彩を帯びてきます。公開研究会では、そうしたアクティブラーニング改 革の先に待っている展開も示したいと考えています。 走りながら考え、たくさん失敗もして、とにかく前へ進んでいこうとどん欲に実践している 桐蔭学園のアクティブラーニング改革です。取り組みが不十分なところは多々あると思います が、参加の皆さまからの忌憚のないご意見やご指導をいただいて、さらに改善・発展させてい きたいと思います。 5 写真で見る桐蔭学園アクティブラーニング推進のあゆみ 2014 年 12 月 25 日 溝上先生講演会「社会につながる学びとしてのアクティブラーニング」 (桐蔭学園 シンフォニーホールにて) 6 2015 年 3 月 27・28日 アクティブラーニング推進委員 研修合宿(新横浜プリンスホテルにて) 7 2015 年 4 月1日 アクティブラーニングキックオフ研修 8 アクティブラーニング委員研修(Aチーム=中等4年・高校1年アクティブラーニング委員) AL委員研修(Bチーム=中等1年・中学1年アクティブラーニング委員) 9 AL 委員研修(A・B チーム合同) 10 ペアワーク・グループワークの原則(中等1年・中学1年)→教室に掲示 ペアワーク・グループワークの原則(中等4年・高校1年)→教室に掲示 11 ペアワークの様子 グループワークの様子 12 姿勢ポスター→教室掲示 まなボード(泉株式会社 http://www.izumi-cosmo.co.jp/manaboard/index.html) 13 14 前に出て発表 15 ロイロノートを使った授業 リフレクションカード 16 合科授業(英語・公民「18 歳選挙権」 ) 教員研修(模擬授業) 17 本冊子をご覧いただくにあたって 学力の三要素をふまえた桐蔭学園の教育改革 本校の評価規準は、 「高大接続改革答申」 (平成 26 年 12 月 22 日)で示された「学力の三要素」に基づく ものとなっている。 「高大接続改革答申」では「学力の三要素」について、次のように述べられている。 「社会で自立して活動していくために必要な力という観点から捉え直し、高等学校教育を通じて(ⅰ)これか らの時代に社会で生きていくために必要な、 「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様 性・協働性) 」を養うこと、(ⅱ)その基盤となる「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて 探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと、(ⅲ)さらにその基礎 となる「知識・技能」を習得させること。 」 学校教育法では「学力の三要素」として、 「基礎的な知識及び技能」、 「これらを活用して課題を解決するた めに必要な思考力、判断力、表現力その他の能力」及び「主体的に学習に取り組む態度」が位置付けられて きた。本校では、この学校教育法の順序を生かしながら、高大接続答申の新たな観点を取り入れた形で、 「学 力の三要素」を次のように位置付けている。 ①基礎的な知識・技能 ②知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を発表するために必要な 思考力・判断力・表現力等の能力 ③これからの時代に社会で生きていくために必要な、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主 体性・多様性・協働性) アクティブラーニングを通して目指す学習 「教育課程企画特別部会『論点整理』 」 (2015 年 8 月 26 日)より ①習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現でき ているかどうか。 ②他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できて いるかどうか。 ③子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学び の過程が実現できているかどうか。 習得・活用・探究という学習プロセス 本校では、習得・活用・探究の学習プロセスにおける「活用」を、安彦氏の考えに依拠する形で「活用Ⅰ」 と「活用Ⅱ」の二つに分けて考えている。それまでの授業で習得している基礎的な知識・技能を定着させる ための活用Ⅰと、基礎的な知識・技能を別の角度からより深く理解するための活用Ⅱとをあえて区別してい る。活用Ⅱはその後の探究につながる活動であるため、扱う問題は実世界(実社会・実生活・自己)に関連 するパフォーマンス課題が多く、記述式・論述式で、正解が1つとは限らない場合も出てくる。現在、問題 ごとにルーブリックを作成し、採点を行えるよう、研究を進めている。探究と異なり、あくまで1教科の枠 を超えないものとして考えており、教科学習の単元末の仕上げとして行う発展課題としての実施を想定して いる。活用Ⅱ問題を授業に取り入れることで、学びを深め、思考力・判断力・表現力の育成につなげていき たい。 18 【出典】安彦忠彦 (印刷中). 習得から活用・探究へ 溝上慎 一 (編) 高等学校におけるア クティブラーニング(理論編) 東信堂 溝上慎一(アクティブラーニング校内研修資料より) 全体の目標を示すメタ・ルーブリック 生徒たちにどのような力をつけさせたいのか、本校の目標を示した「メタ・ルーブリック」の作成を進め ている。下に示すルーブリックは、試作版である。このメタ・ルーブリックをもとに、教科別ルーブリック、 活用Ⅱ問題の問題別ルーブリックを作成していくことになる。現在、教科別ルーブリック、問題別ルーブリ ック作成に向けて研究を進めているところである。 19 桐蔭学園 授業クラス編成 HR(ホームルーム)授業とLR(レッスンルーム)授業がある。LR授業は、習熟度別クラス編成とな っており、α(上位) 、βクラス(中位) 、γ(下位)に分かれている。毎回の考査の結果で、LR移動(ク ラス替え)を行う。 中等1年・男子中学1年・女子中学1年・中等4年・男子高1・女子高1のクラス編成は以下の通りとな っている。 中等1年 HR A組 B組 C組 D組 英系 等R 等α1 等α2 等β1 等β2 数系 等α1 等α2 等β1 等β2 等R ※英系は英語、数系は数学・理科のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※英系等R・数系等Rは、帰国生クラス。 男子中学1年 HR 1組 2組 3組 4組 5組 6組 7組 英系 α β① β② β③ β④ β⑤ β⑥ 数系 α β① β② β③ β④ β⑤ β⑥ ※英系は英語の、数系は数学・理科のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※β①~⑥は同じレベルのクラス。 女子中学1年 HR GA組 GB組 G1組 G2組 英系 SE1 SE2 α1 β① β② 数系 理数α1 理数α2 α β① β② ※英系は英語の、数系は数学・理科のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※GA・GBは理数コース、G1・2は普通コース。 ※β①・②は同じレベルのクラス。 ※英系SE1は帰国生クラス、英系SE2は小学部からの内部進学生及び英語経験者。 中等4年 HR A組 B組 C組 D組 英系 等R 等α1 等α2 等β1 数系 等α1 等α2 等β1 等β2 国系 等α1 等α2 等β1 等β2 等β2 ※英系は英語、数系は数学・理科、国系は国語のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※英系等Rは、帰国生クラス。 男子高校1年理数科 HR R1組 R2組 R3組 R4組 R5組 R6組 英系 α1R α2R α3R β1R β2R β3R 数系 内α1R 内α2R 内βR 外α1R 外α2R 外β1R 外β2R 古系 内α1R 内α2R 内βR 外α1R 外α2R 外β1R 外β2R ※英系は英語、数系は数学・理科、古系は古典のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※「内」は内進生(中学からの内部進学生)、 「外」は外進生(高校からの入学生)。 20 男子高校1年普通科A帯 HR A1組 A2組 A3組 A4組 A5組 英系 αA β1A β2A β3A γA 数系 内α 内β1 内β2 内β3 内γ 外α 外β1 外β2 外β3 外γ α1A α2A β1A β2A β3A 古系 α1帰 α2帰 ※B帯と合同 γA ※英系は英語、数系は数学・理科、古系は古典のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※「内」は内進生(中学からの内部進学生)、 「外」は外進生(高校からの入学生)。 ※「帰」は帰国生クラス。 男子高校1年普通科B帯 HR B1組 B2組 B3組 B4組 B5組 英系 αB β1B β2B β3B γB 数系 内α 内β1 内β2 内β3 内γ 外α 外β1 外β2 外β3 外γ α1B α2B β1B β2B β3B 古系 α1帰 α2帰 ※A帯と合同 γB ※英系は英語、数系は数学・理科、古系は古典のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※「内」は内進生(中学からの内部進学生)、 「外」は外進生(高校からの入学生)。 ※「帰」は帰国生クラス。 女子高校1年理数コース HR GA組 GB組 GC組 GD組 英系 理数α1 理数α2 理数β1 理数β2 数系 理数内α 理数内β 理数外α1 理数外α2 古系 内α 内β1 内β2 外α1 外α2 外β1 理数外β ※普通コース と合同 外β2 ※英系は英語、数系は数学・理科、古系は古典のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※「内」は内進生(中学からの内部進学生)、 「外」は外進生(高校からの入学生)。 ※「理数」は理数コース。 女子高校1年普通コース HR G1組 G2組 G3組 G4組 英系 α1 α2 β1 β2 α1帰 数系 内α 内β1 内β2 外α 外β 古系 内α 内β1 内β2 外α1 外α2 外β1 α2帰 ※理数コースと合同 外β2 ※英系は英語、数系は数学・理科、古系は古典のクラス。これ以外の科目はHRで授業。 ※「内」は内進生(中学からの内部進学生)、 「外」は外進生(高校からの入学生)。 ※「帰」は帰国生クラス。 21 22 2015 年 12 月 12 日 公開授業 一覧 1 時間目 教室 106 107 108 109 110 111 教科 科目 国語 理科 (化学) 英語 国語 (古典) 担当者 松永和也 宮原雄一 村上右一 関谷吉史 数学 橋谷七重 英語 青木美有紀 国語 橋本雄介 世界史 鷺坂オオ 学年 中1 (男子) クラス 2組 タイトル わかりあえないことから ~クラス新聞の読み比べ~ 中1 数系 熱効率についての考察 (中等1) 等β1 ~グループワークを通して~ 高1 英系 教科書を用いたリーディング (男子) α1A ~グループワークで内容理解と定着を図る~ 高1 古系 和歌の学習 (男子) 内α1R 高1 数系 (女子) 理数外α1 高1 英系 世界に発信する中国古典文明 (中等4) 等α1 ~英語科・国語科・地歴科の合科授業試案~ ~修辞技巧の理解と使用を通して~ データの分析 ~4 人グループで集団の特徴を議論し、発表準備、さらに発表を行います~ 2時間目 教室 教科 科目 担当者 105 数学 森 祥平 106 英語 山崎正幸 107 108 109 110 111 社会 (歴史) 国語 (現代文) 数学 理科 (化学) 社会 (地理) 瀧澤 史 富田廣子 賀永麻美 池田信之 長谷川正利 学年 クラス 中1 数系 (中等1) 等α1 中1 英系 The Handicapped and Universal Design (男子) β⑥ ~CAN'T can be CAN~ 中1 (女子) 高1 (女子) GA組 GD組 タイトル 問題作成を通じて、方程式の有用性を考える グループワークで学ぶ「元寇」 論説文「自然と人間の関係をとおして考える」を読む ~グループワークを用いて~ 高1 数系 ベクトル (中等4) 等β2 ~まなボードを用いたグループワーク~ 高1 数系 (中等4) 等α1 ~スモールスケール実験でリアルに学ぶ~ R2組 アメリカ合衆国の社会を共同で探究する 高1 (男子) 机上で「体験」できる化学教室 23 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(1 校時)教室:106 1.授業担当者(教科) :松永和也(国語) 2.対象クラス: 中学1年(男子部)2組(33名) 3.単元名・教材 わかりあえないことから 〜クラス新聞の読み比べ〜 4.単元観・教材観 教育における新聞の活用は全国的に広がっており、NIEなどを通じて多くの実践例を見ることができる。 そのなかで、本単元では記事の比較から立場の多様性を知る材料とすることにした。自分たちが経験した同 じ出来事を記事にする。そして互いに読み比べをすることで、わかっていた、知っていた「つもり」であっ た出来事の新しい一面を知ることになる。換言すれば、自分がいかに狭い視野でしか物事を捉えられていな かったかを目の当たりにし、多角的思考力を身につけることになる。 私たちはコミュニケーションを重要視する際、「わかりあえる」状態をあるべき理想の姿として見据えが ちである。しかし、その弊害としてわかった「つもり」に陥ることを問題にしたい。わかっているべきだと いう強迫観念が、わかっているかどうかの適切な判断の過程を煙に巻き、十分な理解がなされないまま、わ かった「つもり」の状態にとどまらせる。そもそも、私たちは「わかりあえない」故に、言語を発達させて きた。わかりあえるべきだと意気込む前に、「わかりあえない」「わかっていない」ことを前提としたコミ ュニケーションの役割を考えて行きたい。 「クラス新聞づくり」は週4コマある国語の授業を大きく「文章読解学習」「表現学習」に分け、「表現 学習」の枠組みのなかでを行った。また、以下は中学3年間の「表現学習」の流れを表したものである。1 年次は情報処理をテーマとし、今回の単元でも記事を書く際に必ずインタビューを行い、その内容を盛り込 むことを課題とした。 ※活用Ⅱ問題として「実物を作る、実用化する」「必要な情報を抽出し、分析する」というカテゴリーに分 類されている。 24 5.単元の目標 【学習目標】人に情報を的確に伝えるためのスキルを知り、理解し、活用することができる。 【行動目標】相手の話をよく聞き、ときに質問を投げかけながら、必要な情報を聞き出すことができる。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ①新聞に必要な3つの要素を理解 ①人に伝えるために必要な言葉を ①記事に関心を持ち、相違点を意 している。 選び、十分な声を出している。 識して精読しようとしている。 ②その観点を踏まえ記事を書き、 ②相手の意見の本意を聞き出すた ②ペア/グループワークにおい また他者の記事を評価している。 めに工夫をしている。 て自分の役割を成し遂げている。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 1時間目 主な学習内容 ①「新聞ができるまで」視聴 評価 新聞社の様子、新聞のつくられる過程を映像か A① ら知る。 〈新聞に必要な3つの要素を押える〉 2時間目 ①5W1H を押える参1 実際の新聞記事から 5W1H を抜き出す。 ②見出しの工夫参2 新聞記事の見出しを隠したプリントを利用し、 B①② A①② 見出しを予想する。魅力的な見出しの特徴を捉 える。 3時間目 ③独自の視点参3 桃太郎新聞+実際の記事比較。 A①② B① C① 4時間目 新聞活用(NIE)出前授業参4 読売新聞教育ネットワークによる出前授業。 A① 〈クラス新聞をつくる〉 5時間目 6時間目 ① 5W1H をメモする わからない情報を調べる。 A①② ②取材内容を決める 取材相手から重要な話を聞き出すための上手 B①② な質問とはなにか考える。 C② ① 下書きを書く参5 人に伝わりやすい言葉を意識する。 A①② ②見出し案を出す 魅力的な見出しの特徴を思い出し、見出し案を B① 出す。 7時間目 ① 3つの要素の確認参6 自分の記事が必要な要素を押えているか確認 A①② ②清書 する。丁寧な字で記事を完成させる。 B① 〈クラス新聞冊子の読み比べ〉 短縮授業 本時 ①公開授業の準備(発表にむけ 6人グループで互いの作品を読み、一つ選んで B①② て) その魅力を発表できるように言語化する。 C①② ①記事の比較 各発表をよく聞き3つの要素を観点として評 次項 価し、根拠を述べる。 参照 新聞に必要な3つの要素 ①5W1H ②見出し ③独自の視点 25 8.本時の目標 【学習目標】わかった「つもり」を脱却し、 「わかりあえないこと」を前提としたコミュニケーション能力を 培う。(生徒への表示:読み比べから独自の視点を学ぶ) 【行動目標】相手の話をよく聞き、ときに質問を投げかけながら、適切な評価を行うことができるようにな る。 (生徒への表示:自分の役割を意識して議論を進める) 9.本時の展開 過程 導入 (10 分) 学習活動 指導上の留意点 ① 「わかりあえない」状況を体験する ・ ペアで作業をする際、顔だけ (音を出さずに昨日食べた物を伝え でなく体も相手に向けている 相手と正対し、充 合う/三好達治の詩について) か 分な声を出すこ ペアワーク 講義型(教員→生徒) ・ 教員の話を聞く時間は、集中 評価 B①C② とができる。 して前を向いているか 展開 (35 分) ① 記事の評価ポイントを記入する ・ その文章、言葉を「良い」と 個人の取り組み ② 評価についてのグループワーク 思った理由を言語化しようと 記事を読み、適切 しているか な評価ができる。 ・ それぞれの役割を認識し積 4人組グループワーク A①② B②C①② 極的に話し合いに参加してい 互いに配慮をし るか ながら議論を進 めることができ る。 ③ ランダムに当てられた班が評価内 容(結論)の説明を発表する ・ 記事の多様性を整理しなが ら論理的に説明できているか 講義型(生徒→生徒) B①C② 全体に届く声で、 わかりやすく伝 えることができ る。 まとめ (5 分) ① 振り返り(今日の授業で学んだ点/ 疑問点を自分の言葉で説明する) 個人の取り組み ・ 個人の作業として集中して いるか A①②B① 自身の学習体験 を言語化するこ とができる。 10 授業配布資料 26 資料1 朝 日 新 聞 二 〇 十 五 年 九 月 三 日 朝 刊 資料2 27 資料3 資料4 壇上中央が読売新聞教育ネットワークの片岡正人氏 28 資料5 29 資料6 30 公開授業 学 習 デザインシート 1.授業担当者: 氏名 宮原雄一 2015 年 12 月 12 日(1校時) 教室:107 (理科) 2.対象クラス: 中等教育学校 1 年・等β1 化学 3.単元名・教材 熱効率についての考察 ~グループワークを通して~ 4.単元観・教材観 我々は生活の中で、色々な化学変化によって様々な恩恵を受けている。生体内における各種化学変化によ って、生物は生きていくことが出来る。また、化学変化によって生み出された自然界には存在しない物質を 利用して、快適な生活を送っている。この単元では、基本的な化学変化を学びながら、これらの化学変化が 我々の生活において身近に存在していることを理解させたい。 さらに現代社会において、我々は快適な生活を営むために多量のエネルギーを利用している。それらのエ ネルギー利用の多くは、「燃焼」という化学変化によるものである。しかし、その中で捨てているエネルギ ーが大量に存在し、それが環境に悪影響を及ぼしていることもまた事実であり、快適な生活を営むための代 償となっている。普段感じることのないそういった問題に考えを巡らせることは、未来を生きていく生徒た ちになにがしかの知見を与えることにつながるのではないかと考えている。既習分野の燃焼という化学変化 と、「化学反応と熱」の学習内容から発展して熱効率について考えさせる。この活用Ⅱ問題は、「本物・実物 を扱う」というカテゴリーに該当する。 5.単元の目標 ○酸化・還元、化合・分解、燃焼などの基本的な化学反応について化学反応式で理解できる。 ○未知の化学反応について、既存の知識を用いて事実をもとに説明できる。 ○身のまわりの化学反応がどのように利用されているかを理解し、社会とどのようにつながっているのかを 理解することができる。 ○グループでの議論に積極的に参加し、考えをまとめることができる。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 ①各種化学反応、理論を理解する。①化学変化の事実を観察すること ができる。 ②実験操作ができる。 C:主体性・多様性・協働性 ①グループワークにおいて、しっか りと関与することができる。 ②事実をもとに、現象について論理 ②他者の意見を聞くことができる。 立てて説明できる。 ③他者に対してしっかりと発表で ③現象の説明を、必要な事実をもと きる。 に文章化できる。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 主な学習内容 1時間目 ・酸化… スチールウールを例に酸化を反応式で理解する。 評価 A① ・燃焼… マグネシウムを例に燃焼を理解する。 2時間目 ・還元… 銅を例に、加熱による酸化と活性炭を用いた還元を反応式で理解する。 A① 3時間目 ・化合… 鉄と硫黄の反応を例に、化合を反応式で理解する。 A① 31 4時間目 ・分解… 酸化銀を例に、分解を反応式で理解する。 A① 5時間目 ・化学反応を説明する(1)参1 …CO2中でのマグネシウムの燃焼を、事実をもとに A① 反応式で説明する。 B①②③ C①②③ 6時間目 ・化学反応を説明する(2)参2 …テルミット反応を、事実をもとに反応式で説明す A① る。 B①②③ C①②③ 7時間目 ・熱効率の測定(生徒実験)参3 …グループごとに指定された容器を用いて、熱効率 A② を求めるのに必要なデータを測定する。 本時 ・熱効率についての考察…熱効率について理解し、社会の中でそれがどのような影 A① 響を及ぼしているのか理解する。さらに容器による違いなどについて考察する。 B②③ C①②③ 8.本時の目標 【学習目標】熱効率の概念について理解する。また、我々の社会がどの程度エネルギーを活用できているの かを理解する。 【行動目標】グループ学習において、他者と意見を交わし合えるようにする。 9.本時の展開 過程 導入 学習活動 指導上の留意点 評価 ・前回行った実験の振り返りと、実験 ・しっかりと熱効率を予想させ (5分) データを前に示す。さらにガスから発 る。事前の知識がないため、かな 生した熱がどのくらい水に伝わった り高い数値を予想すると思われ のか予想させる。 る。しかしここでは、あえて高い 数値を予想させておく。 展開 ・熱エネルギーの説明を聞く。 A① (40分) ・ガスの燃焼から発生した熱量と、水 ・熱効率の考え方が理 が受け取った熱量の計算方法を聞く。 解でき、データ処理の ・説明を聞いた後各自で計算する。そ ・自分できちんと計算する。 ための計算ができる。 の後グループになり計算結果を検証 する。 ・自分たちの予想と、実際の結果を比 ・自分がした計算を周囲と比較さ C①② べる。 せることで、結果が正しかったか ・グループ内で結果を をしっかりと確認する。またグル 確認しあえる。 ープでしっかりと活動するよう ・他者の意見をきちん に促す。 と聞くことができる。 ・熱効率を知って、どのような感想を A① 持ったか書く。 ・熱効率の実際を知る。 ・逃げた熱はどこに行ったのか考え ・熱が逃げていくことから、自分 B②③ る。また、このことから何が起こるの たちの現実世界にどのような影 ・水以外に熱はどこに か考える。 行ったのか説明でき 響を与えているか想像させる。 32 る。 ・逃げた熱の影響を想 像できる。 ・各グループの結果を比較する。そし ・使用容器の材質、形状の違いか て使用した容器の違いで効率が変わ ら熱効率に違いが出ることに気 る理由を考える。自分たちのグループ 付かせ、グループで議論するよう B②③ がなぜ他のグループの結果と違うか 促し、さらにしっかりと説明もさ ・熱効率の大小を、形 を考え発表する。 せる。 状、材質などから説明 でき、文章化できる。 C①②③ ・グループ内で議論し、 クラス全員に発表でき る。 ・熱効率の違いの理由が本当に正しい ・自分たちの考察を受け、さらに のかを確認する実験を考える。 検証する方法を考える。 B②③ ・さらに必要な実験を 考えることができる。 C①②③ ・グループ内で議論し、 クラス全員に発表でき る。 まとめ ・今日行った活動をふり返る。 (5分) ・熱効率の学習により新しく得た 知見などを確認させる。 10.その他 ・本校の中学理科における AL について 今年度より行われている AL について、何に留意して進めているか述べておきたいと思う。 まずは学齢の観点からであるが、高校生と比較して幼い部分を多く残している中学生に対して、あまり高 度なことは要求しづらい。ある程度型にはめながら思考させていく必要がある。また教科の観点から見ると、 理科という科目は身近な現象を取り扱っている教科である。そしてそのようなことがなぜ起こるのかを理解 する教科でもある。私は色々な現象を、文章で説明させるように留意している。各単元において数回程度実 験により現象を見せ、それがなぜ起こるのか自分の言葉で説明し、発表させている。今期は実験を 3 つ用意 した。具体的には以下の通りである。 (1)集気びんに二酸化炭素を充満させ、その中でマグネシウムを燃焼させる実験。 (2)テルミット反応。 (3)水酸化ナトリウム水溶液への通電による水の電気分解。 思考の手法としては、実験前と後での違いに着目させ、その比較により起きた事実をきちんと捉えさせる こと、反応式を用いて何が起きたかを思考させること、事実と既習事項を用いて自分の言葉で説明させるこ とを行っている。例えば(1)では、反応前後の集気びんをよく比較観察させ、白いものと黒いものができたと いう結果を認識させること、集気びん中でマグネシウムが燃焼したこと、既習事項のマグネシウムが燃焼後 どうなるか、また炭素が黒い物質であることなどを整理させて、反応式で説明させている。さらにその際、 33 まずは個人で考えた後にグループで議論し考察を深めること、議論した内容をまとめて文章で書かせること にも留意している。この学齢の生徒たちは自分の言葉で話をさせると、何となく説明するだけで終わってし まうことが多い。書いて文章化することは AL の言語活動につながると考えて行わせている。こういった活 動を行うことで、事実より客観的に物事を捉えていく力が身につくのではないかと考えている。 11.参考資料 ○参考1 現象を説明しよう 〇 (その1) これから見せる実験について、何が起きているのか化学反応式を用いて説明してみよう。 ・実験の概要を書く。さらに結果も詳しく書く(よく観察しよう)。 ・この実験では何が起きていたのか。観察した結果をうまく使って化学反応式で説明してみよう。 H.R. 氏名 34 35 ○参考2 現象を説明しよう(その2) 〇 これから見せる実験について、何が起きているのか化学反応式を用いて説明してみよう。・実験の概要 を書く。さらに結果も詳しく書く(よく観察しよう)。 ・この実験では何が起きていたのか。化学反応式を考えてみよう。そして、それを検証するには何をすれば 良いか、考えてみよう。 ・この実験では、実は先生は 2 つの工夫をしている。それは何か。工夫とその理由を考えてみよう。 H.R. 氏名 36 37 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(1 校時) 教室:中学棟 108 1.授業担当者(教科) : 村上 右一(英語科) 、James Graziani(英語科) 2.対象クラス: 高1英語ⅠαA(男子部) 3.単元名・教材 Crown English CommunicationⅠ(三省堂) 、Lesson 8 Section 2 4.単元観・教材観 単元観 20 世紀の写真を用いて、自分がこの時代に生きていればどのように生きたのかを考えながら、過去から 学んだ教訓を将来に活かせるようにすることをねらいとする。 教材観 本文から 20 世紀を象徴する写真が何を物語っているのか、写真を自分自身に置き換えた場合に何を感 じるのかを熟考させたい。 仮定法過去、直接目的語に節を持つ第4文型の文、付帯状況の with が含まれた英文が本文中にあり、 これらの文法事項を英文を読みながら習得する。 5.単元の目標 ・写真を見て、写真に写っている人になりきって、その人が感じているであろうことを他人に伝える。 ・英語で写真についての説明ができ、また自分の考えを他人に伝えるようになる。 ・世界にメッセージを発信する。 6.単元の評価規準 A:基礎的な知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 ①仮定法過去の使い方が理解でき ①英文の内容の要旨が理解できて ペアワーク、グループワークで ている。 いる。 ①相手の考えに対し、耳を傾けて ②直接目的語に節を持つ第4文型 ②自分の考えを相手にわかりやす いる。 の文の使い方が理解できている。 く伝えることができている。 ②自分の意見を積極的に相手に伝 ③付帯状況の with の使い方が理 C:主体性・多様性・協働性 えようとしている。 解できている。 ④4技能を使った活動ができる。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 1時間目 2時間目 3時間目 4時間目 本時 主な学習内容 評価 Lesson8 Section1 の内容理解(20 世紀の写真について) 、 B①、A④ 仮定法過去の理解、直接目的語に節を持つ第4文型の文の理解 A①、A② Lesson8 Section2 の内容理解 (米国人フォトジャーナリスト撮影の少年について) B①、A④ 仮定法過去の理解、付帯状況の with の使い方の理解 A①、A③ Lesson8 Section3 の内容理解(ベトナム戦争を経験した女性について)、 B①、A④ 付帯状況の with の使い方の理解 A③ Lesson8 Section4 の内容理解(過去に撮られた写真から学ぶことについて) 、 B①、A④ 直接目的語に節を持つ第4文型の文の理解 A② Lesson8 のまとめ A④B①B② C①C②C③ 38 8.本時の目標 ・本文の要旨がわかる。 ・見ている写真の説明や写真に対する意見を英語で言える。 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 評価 ●ウォーミングアップ。 A② 展開 ●教科書を開いて、ネイティブ教師によ A④ (8 分) る教科書の音読をよく聞く。 導入 (3 分) ●生徒各自が通しで一度読む。 ・ネイティブ教師の発音を参考 A④ に正確に読むことができてい るか確認する。 ●教科書を閉じて本文を要約した英文 ・指名した生徒がきちんと答え の中の空欄に入る語句を埋める。 A①、A③、B②、C① られているか。 (18 分) ●四人一組のグループをつくる。 (まなボードを配布する) ●P. 115 に掲載されている写真をみて、 ・1 人 1 人が少年になったつも 少年になったつもりで少年が感じてい りで、グループ内で発言してい ると思われることについて考える。 るか確認する。 ●10 個前後挙げて、それを要約プリン ・生徒によるメモ書きは、日本 トの裏のメモ欄にメモ書きする。 語で書き、それを英語に直そう B②、C②、C③ C①、C② としているか。 ●上記の内容をグループ内でまとめ、そ ・グループ内で他の生徒の出し れをクラス全体に向けて発表する。 B②、C① た答えに対してもきちんと耳 を傾けているのか確認する。 (20 分) ●教師による意見を聞き取る。 ・教師が何を語っていたのかを B①、C② 生徒に確認する。 ●P. 115 の写真を使って、世界に向け ・グループ内で他の生徒の出し て発信する。 B②、C①、C②、C③ た答えに対してもきちんと耳 を傾けているのか確認する。 ●上記について、グループ内で意見を共 ・指名した生徒がきちんと答え 有する。 られているか、確認する。 ●意見をまとめたものをクラス全体に ・グループ内で他の生徒の出し 向けて発表する。 た答えに対してもきちんと耳 を傾けているのか確認する。 まとめ ●教師による、本日のまとめを聞く。 (1 分) 39 B②、C①、C② B②、C① 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(1校時) 教室:109 1.授業担当者(教科) : 氏名 関谷吉史 (教科名)国語 2.対象クラス: 高校1年(男子部) ・理数科内α1R 古典 3.単元名・教材:和歌をつくる(3 時間配当) 4.単元観・教材観 生徒は、前期に歌徳説話(和歌に備わる力を示す説話で、優れた和歌を詠むことでマイナスの状況がプラ スに転じる) 、今期に歌物語(伊勢物語)の学習をした。また、百人一首の和歌にも触れてきた。今後は土佐 日記(紀貫之作。貫之は古今和歌集仮名序をしたためている)の学習に取り組む予定である。 本単元は、和歌の学習におけるいったんのまとめと位置づけられる。高1段階の生徒たちが、和歌につい て論じることはまだ難しいが、生徒たちは中学校以来の古典学習を通じて、すでに数十首の和歌に出会って いる。 「古典和歌とは何か」という問いが、生徒の内に不定形ながらも湧いてくる頃合いではないか。ただし こうした問いについてどう考えていいのか、生徒にはわからないものである。そこで、和歌を「読む」ばか りでなく、和歌を「詠む」こと、相互評価することで問いと学びを深めようとするのが本単元の目的である。 近代短歌と異なる古典和歌の特徴は、掛詞や序詞、本歌取りなどの修辞技巧の多用である。これらは作品 世界を重層化する(それは多くの場合、和歌の伝統に連なる)修辞技巧といえる。今回は序詞を用いるよう 生徒に指示した。序詞によって導かれる語は、一首のなかで重層化した世界の転換点・結合点の役割を担う。 その結び目に当たる語( 「長し」 「深し」とする予定)を指定した。技法や語の指定が生徒の表現を制限する とは考えられない。むしろ「長し」 「深し」などにかかわる物や事を表現し、序詞を入れようとすることで、 創作意欲が増すとともに、自分の心から情感を呼び起こすことにつながると思われる。こうした語を呼び水 として世界や自己へのまなざしは繊細なものになるだろう。また、生徒が和歌の評価をするのにも、語を指 定するのが現実的である。こうした営みを通して、古典和歌の表現についての深い学びを目指す。 古今和歌集仮名序に「やまと歌は人の心をたねとしてよろづの言の葉とぞなれりける」とある。この一節、 訳してしまえば、理解した気になることはたやすい。しかし本当にこの一節の意味にせまるためには、読者 が自身の存在とつながる形で和歌についての実感を求めていなければなるまい。このとき作歌の経験が生き るだろう。また、心が言葉になるにあたって、なぜ修辞技巧が多用されねばならなかったのかと問うことも 古典和歌の本質につながる問いであろう。この問いとその考察についても、修辞を用いた作歌の経験から、 形を成してくる可能性がある。こうした一連の思考は、表現することの奥深さに触れることでもある。 修辞技巧を使用して和歌を詠むという学習は、 「古典和歌とは何か」について考える切り口のひとつであり、 さらに表現することの追求でもある。 5.単元の目標(本時も同じ) :修辞技巧の学習・使用と和歌の評価を通して、和歌の表現について深く考え、 その考えを説明できる。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ①序詞の定義、分類について説明 ①和歌を創作している。 ①人の話を誠実に聴いたり、発言し できる。 ②対象の和歌について、知識を活 たりしている。 ②詠じたり、想像したりしながら、 用して、内容読解、評価している。 (ペアワーク・グループワークの原則) 和歌を読むことを意識できる。 ③ペア・グループワーク等で相手 ②誠実にふり返りをしている。 に理解される表現をしている。 40 7.単元の指導と評価の計画 本単元(3 時間配当)の授業は、11 月前半に 2 時間実施した。本時は間があいての第 3 時である。第1時 に「まなボード」を用いて指定語のイメージを広げるマップを作成(当日掲示予定)、宿題で作歌した。その 和歌について第 2 時に評価活動(グループ単位で集めた和歌を、生徒名を伏せて他グループに渡す)をした。 本時は 2 度目の作歌(本日提出)と評価の場である。2 時間目と 3 時間目の構成は基本的に同じである。た だし、生徒は評価活動を経験した 2 時間目の後に、その経験から自分たちなりの評価基準を考え、提示した。 本時はその基準の一部を取り入れた評価活動をする。また生徒は作歌・評価についての実感を得ており、前 回よりもよい作歌・評価をしたいという意欲を持ったと期待される。 授業時数 主な学習内容 評価 1時間目 1、序詞の定義と分類/寄物陳思/評価基準の共有(講義) A①② (11 月) 2、キーワードを軸に物の世界、心の世界をマッピング(グループワーク) B③、C① 3、考えたことを壇上発表(全体) B③、C① 4、まとめとふり返り(個) C② 2時間目 1、序詞の知識確認(ペアワーク) A①② (11 月) 2、創作和歌の相互評価(グループワーク) B②③、C① 3、評価内容の壇上発表(全体) B③、C① 4、まとめとふり返り、評価基準の提示(個) C② 3時間目 1、序詞の知識確認(ペアワーク) A①② (本時) 2、創作和歌の相互評価(グループワーク) B②③、C① 3、評価内容の壇上発表(全体) B③、C① 4、まとめとふり返り(個) C② *今年度の和歌に関する学習はすべて本時と関係している。概要は以下のとおりである。 ・百人一首の学習。4~9 月は暗唱。和歌のリズム、言い回し等に慣れることが主たる目的。10~12 月は和 歌の解説。学習してきた古語、文法、修辞等の知識を活用してペアワークや教壇での説明。 ・歌徳説話、歌物語の学習。和歌、和歌が詠まれる場面の考察。ペア・グループ・壇上等で説明。 ・和歌の読み方。ゆっくり詠ずる中で喚起されていくイメージを大切にするよう指導。 8.本時の展開 【概要】(次項の表を参照) ・授業前にふり返り冊子(毎授業で配付・記入・回収している)を配付し、必要な板書をしておく。 ・号令は、学ぶ内容・姿勢を各自が確認する機会。協働で学びの雰囲気を形成する行為でもある。 ・ペアワークを2つ行う予定であるが、1つにする可能性もある。どちらのワークも、序詞の知識の確認を 主な狙いとするが、この知識が本時の活動の土台となるところに意味がある。活用Ⅰ問題と位置づける。 ・本時終了後の宿題としてレポートを課す。作歌の感想(序詞を効果的に用いられたか、指定語に関連する 発見があったか、十分に表現できたかなど) 、評価の感想、なぜ序詞(修辞)が用いられるのかなど。 ・アクティブラーニングにおいては、まず個での学びがあり、その成果を協働の場で活かし、再び個でふり 返ることが大切だと考える。ふり返りを通して学びが深まり、自己が更新されていくことが多い。 【本時の課題について】 ・本時の課題は、活用Ⅱ問題として発想されており、①「序詞を用いて和歌を詠む」、②「和歌を評価する」 に分けられる。以下に関連して、活用Ⅱ問題の特徴カテゴリーを参照していただきたい。 ①は「実物を作る」問題。 「序詞」 「和歌の読み方」等を学んだ生徒たちが、 「規則、定義、条件等を理解 し適用」して作歌する。また、作歌に当たって、自分を取り巻く世界を丁寧に見つめ、そこから自分の心 についての気づきを得ることが企図されている。この点で「異なる観点から実世界(自己)を理解する」 41 「実世界(自己)に問いや課題を見いだす」ことも期待される。さらに生徒たちは表現する喜びや難しさ に向き合うと考えられる。 ②はそれ自体を活用Ⅱ問題とするわけではない。ただし、評価基準を生徒たち自身が作り出せば、 「実物 を作る、実用化する」問題に近づくだろう(現状では一部)。しかし現状でも評価基準に則って「必要な情 報を抽出し、分析する」 「趣旨や主張を把握し、評価する」ことは可能である。また、作品鑑賞を通して、 自他の違いに想いを致したり、実世界(自己)へのまなざしに意味のある変化を起こしたりする可能性が ある。欠点のある歌について検討することも、鑑賞眼を鍛える機会になるだろう。 本課題は、 (古典)和歌とは何か、表現とは何かといったより高次の価値ある問いに繫げて発想されてお り、そうした価値ある問いと関係するさまざまな問いを、生徒が自ら立てていくことが目指されている。 ・学びは個がふり返るときの気づきや考察から深まると考えられ、課題レポートによってそれを促す。授業 外での生徒の学びがまことをつくしたものとなるか否かは、授業での体験の濃密さや、他の生徒から受け た評価の質にかかわるだろう。 過程 学習活動 指導上の留意点 準備 作品提出、ふり返り冊子 作品回収、教材配布、項目・目標板書 導入 ・号令、目標確認で授業態勢づくり。 ・心を落ち着かせる声掛け。目標確認。 (15 分) B① 号令で学ぶ態勢を作り 出す。主体性と協働性。 〇ペアワーク 1 具体的な序詞の説明(6 分) ・ポイント3点映写 A①②、B②③、C① ・ペアになる 1比喩の序詞の説明 ・ポイント意識して「あしひきの~」解説 2「ひとりかも寝む」の説明・訳 み方の理解を、ペアワー 3イメージ化した説明 クでの表現を通して確認 ①教員説明を聴く(1分) 序詞の知識、和歌の読 ②考えを整理する(1分) ・ワークの内容を把握させる する(「習得」を主な目的 ③ペア相手に説明する(1分×2) ・整理の時間は静粛に(誠実に聴く) としたワーク=活用Ⅰ) 。 ④壇上で発表1人(1分+α) ・教室全体からの拍手を促す 〇ペアワーク 2 序詞の一般的説明(6 分) ・序詞の一般的説明+実際に分類 ①教員説明を聴く(1分) 展開 評価 ・ポイント2点映写 をすることを狙いとして 2分類→比喩、同音反復、掛詞 いる。 ・ワークの内容を把握させる ③ペア相手に説明する(1分×2) ・整理の時間は静粛に(誠実に聴く) ④前で発表1人(1分+α) ・教室全体からの拍手を促す (30 分) ・グループになる して、改めて知識の確認 1定義 ②考えを整理する(1分) 〇準備(3 分) 次の評価活動の前提と ・段取り、評価基準を把握させる A気づき、おどろき(序詞中心) 全体を前にしての振る 舞い、伝えるための配慮。 聴く側の配慮。 C① ワークの準備段階で、 ・司会役、その他の活動について確認する Bイメージ喚起力 役割を明確にする。協働 ・評価基準を確認する C共感 を効率化するための準 他 ・まなボードと筆記具を配布する ・司会確認徹底→挙手させる 備。 〇作品選考(15 分) ・パワポで流れを映写 A①②、B②③、C① ・司会が一首ずつ場に示す ・評価基準を意識させる ・解釈→評価→前向きにコメントする ・長所を評価する姿勢を徹底する ・1首選びまなボードに大きく記入 各和歌の評価で知識を 活用する(活用Ⅰ) 解釈のための思考、評 〇解説相談(5 分) ・大きく書くよう指示(教室で共有) ・選考作品の解釈、理由説明のまとめ ・時間を意識させる ・まなボードに色で最小限記入する ・評価基準にそった解説の準備 ・全グループ黒板に貼る ・評価基準を超えた解説の準備 42 価のための判断、伝え合 いのための表現の力など が求められる。 多様な感性の発現であ 〇選考作品発表・解説(7 分) ・誰の作品か示す(生徒にきく) ・選考作品の解釈と評価の理由を発表する ・よいところを説明するよう指示徹底 ・発表を誠実に聴き、時にメモを取り、意 ・教室前方に集合 力、プレゼン能力の向上 見を持つ ・「ここは楽しもう」 を目指す。 ・教室全体からの拍手を促す まとめ ・教員のまとめを聴く ・生徒作品にふれながらまとめる (5分) ・宿題レポート指示を聞く ・今後の学びの流れを確認する (なぜ序詞使うのか/作歌解説感想など) ・ふり返り冊子記入 (作品集、宿題レポート) る各作品を受け入れる。 ファシリテーション能 拍手等の寛容な姿勢。 C② 学びを確認する。自己 認識能力向上を目指す。 ・作品、ふり返り回収 9.その他 ★今期初めに生徒に示した目標・指針等 【古文学習の目標】 〈自分の力で古文を読む〉 〈古文の読解を通 して、今・ここの価値観について考える〉 〈日本語・日本文化について考える〉など。 【学習活動の指針】 1、自分の考えを大切にし、他人の考えを大 切にし、 「伝え合い」をする。 →ペアワーク、グループワーク、発表等 2、毎授業について、目標設定とふりかえり を大切にし、 「学び」を確認する。 →毎時ふり返り冊子記入 *授業で使用するプリントの一部。 (歌は第 2 時生徒提出のもの) 3、 「学び」の意義を「実世界」につなげて考え、行動する。 →単元まとめの課題を中心に 【学習活動によって身につけたい資質・力】 ●「伝え合い」をし、 「学び」を確認し、 「実世界につなげて考え行動する」ことを通して身につけたい性質 ①主体性(自己の確立) ②寛容性(多様性・他者の尊重) ③協働性(他者とともに活動する志向性) ●上記の性質を発揮する支えとなる力(逆に上記の性質が以下の力を起動させる) Ⅰ)論理的思考力(論理とは、いかなる相手・場合にも通じる考え方の筋道) Ⅱ)想像力(荒唐無稽な夢想ではなく他者の考えに迫る想像や、データを下敷にした想像など) Ⅲ)表現力(他者に伝えるための言葉、身体表現、メディアリテラシー等の力) ●その他、コミュニケーション力、語彙力、段取り力、運営力…… ➡自分(たち)で学びを深められる力を養う 【生徒へのその他のメッセージ】 ★姿勢(身体的) 「腰を入れて座る」 「背筋を伸ばす」という意味での「姿勢」のよさ。これは、心身の健康のためでもあり、私を含めた他 者との良好な人間関係をつくりあげるためでもあります。本講座においてのみならず、すべての授業において「よい姿勢」 でのぞんでください。 ★提出物 提出物は時にまとめて印刷し、みなさんに配付する可能性があります。同じ教材について、自分と他人がまったく違う内 容を書くということ、あるいは似た内容を書くということ、級友の考え方を知りコミュニケーションを図ること、などがそ の目的です。提出物が教材になるので、生徒が期限通りに提出をしないと、授業が成立しません。 ★姿勢(精神的) 学ぶことじたいを大切にしましょう。学ぶ目的は、大学合格やレッスンアップではありません。学ぶことは成長すること です。経験を積み、ふりかえりを大切にして、少しずつでも自分の成長を意識しましょう。そして社会で活躍する志を育ん でください。実世界に活用できる学びを目指してください。 43 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(1校時) 教室:110 1.授業担当者(教科) : 橋谷 七重 (数学) 2.対象クラス: 高校1年(理数コース) 外α1 数学 P 3.単元名・教材 数研出版 数学Ⅰ 第 4 章 データの分析 4.単元観・教材観 データ分析は、計算して代表値を求めれば終わりということではなく、分析結果をもとにして次の行動を 決めるために使われる。分析するデータは単独のものを扱うより複数のものを比較する形で扱う方が特徴が より明確になってくるので、授業においては比較しながら、分析することを意識させたい。そうした観点か ら、今回の授業で扱う題材を選んだ。 さらに、分析する道具や、発表して他者に伝える道具として、何を用いるのが最適かを判断することも重 要である。各グループの発表が、異なる視点や方法でまとめられたものであれば、分析方法の適切さや問題 点についても考えることができる。 5.単元の目標 データを整理し分析する道具(代表値、箱ひげ図、分散、散布図など)の意味や特徴を知り、それらを用 いることができる。グループでデータの特徴について意見をまとめて発表できる。他のグループの発表を聞 き評価することができる。また、着眼点の違いによる差異に気づくことができる。 6.単元の評価規準 A:基礎知識・技能 ① データを整理し、代表値を求め ることができる。 ② 相関について理解し、相関係数 を求めることができる。 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ① 代表値やグラフの意味を考え、 ① グループの話し合いに協働的 元データの様子を読み取るこ とができる。 ② グループの意見を適切な方法 で発表することができる。 な態度で臨むことができる。 ② グループの意見をまとめるこ とができる。 ③ 他のグループとの差異を理解 し、適切な質問をすることがで きる。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 主な学習内容 評価 1時間目 代表値(平均値、中央値、最頻値、範囲、四分位数)について A① 2時間目 復習小テストと代表値(分散、標準偏差)について B①A① 3時間目 復習小テストと相関関係、相関係数について B①A② 4時間目 復習小テストとデータを分析し意見を発表する練習 B①②C①② 本時 単元のまとめとして、身近な題材でデータの分析を行い、発表する。 B①②C①②③ 44 8.本時の目標 身近な題材を用いて、平均、分散、標準偏差を求め、箱ひげ図を利用してデータの分析を行い、グループ で「理想のフライドポテト」について数学的な根拠をもとに検証し、その根拠も含めて、クラス全体に発表 する。 9.本時の展開 過程 導入 学習活動 指導上の留意点 評価 目標提示「今日は、最も満足度の高いポテトの条件を、データをもとにして考えて (5 分) グループごとに発表してもらいます。」 食堂のポテトとバーガー店のポテト ○個人の感想でいいので、数名指名して答 についてのイメージを確認する。 えさせる。 ○食堂ポテトの満足している点。 ○バーガー店のポテトと比較して。 など 展開Ⅰ (10 分) A① ワークシートによる作業 1.2 種類のポテトについて、長さに ○ワークシートの内容 関するデータを分析してワークシー 1. 度数分布表と平均値、分散、標準偏差 トに記入。箱ひげ図を描く。 は与えておく。箱ひげ図にすることで 2.どういう内容のポテトになってい 特徴が明確になることを確認。 るか、そのイメージはどうか、などを B① 2. 箱ひげ図が示すポテトの模型を示し 話し合う。 て、イメージの確認をする。 ○長さを分類する目安 しなしなロング(7.5~), 平均的ミディアム(5~7.5), かりかりショート(~5) ○長さ以外の指標があることを伝える。 例:ばらつきかそろえるか、袋か箱か、 売り手目線か買い手目線か、 展開Ⅱ 「全体の重さが一定、一本の太さも一定、であるとき、データを分析して考えたこ (15 分) とをもとにして『桐蔭食堂ポテトをプロデュース』してください。」 ○まなボード使用 B② C① ○何に着目するか。 ○総合的な判断か、一つのことに特化して 判断するか。 ○理由がデータに基づいていることが条 件。 発表 1.各班 1 分毎で発表を行う。 ○特に着眼点がよい班に赤い付箋、総合的 (20 分) 2.発表後 1 分間質疑の時間をとる。 に良い班に青い付箋を、評価のメモも記入 3.各自がもっともよいと思った班 してマナボードに貼る。 を選び投票する。 10.その他 【活用Ⅱ問題】実生活との関連、実物を扱う内容 45 B② C②③ 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(1校時) 教室:111 1.授業担当者(教科) : 青木美有紀(英語)・鷺坂オオ(世界史)・橋本雄介(国語) 2.対象クラス: 中等教育学校4年・英系α1 3.単元名・教材 世界に発信する中国古典文明 4.単元観・教材観 高校の各科目で学習する内容は重複していながら、教科・科目という便宜上の名称で区切られていること から関連性を意識できない生徒が多い。この授業では、漢文で学習する十八史略、世界史で学習する中国古 典文明の関連性を捉え、生徒自身の理解を深めることを第一の目標としている。さらに、中国古典文明の知 識を現代にぶつけることで見える問題点を、映像やパワーポイントを使い、班ごとに発表することによって、 情報・メディア・テクノロジースキルに立脚した「4Cs」 (批判的思考・コミュニケーション・協働・創造 性)を育てることを第二の目標と設定した。 具体的指導として、3 名の担当教員から中国古典文明関連する 12 のテーマを提示し、基本的な理解につな がる資料を与えた。生徒たちはグループごとに 1 つのテーマを選び、そこで与えられた資料を読み解くとと もに、さらに自分たち自身で必要な資料を集め、テーマの理解を深めた。教員はポートフォリオ形式でグル ープの状況を確認し、更なる理解のために必要に応じて指導した。発表原稿などを作成した上で、自分たち の理解した内容を映像などによって発表することで、グループ相互のテーマの共有を試みた。 現在、ISによるフランス・パリでのテロ事件など、今までの考え方の枠組みでは捉えきれない問題が山 積している。このような答えを見出すことが難しい新しい問題に対して、自分なりの視点・問題意識を持っ て相対することのできる、力強い社会人を育てたいと担当者一同考えている。 5.単元の目標 【学習目標】中国の古典文明について理解し、その知識をもとに現代を把握し直し、グローバル社会を生き るための多元的な視点を手に入れる。 【行動目標】自分たちが理解した内容を、メディアスキルを駆使して班ごとに創意工夫し発表する。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ① 古代中国 社会の 変化を 理解す ①古代中国の社会情勢を説明でき ①グループ内の意見を調整し、一 る。 る。 つの発表を完成させる。 ②英語で発表原稿を完成させる。 ②漢文・世界史の知識を用いて身 ②他のグループ発表を傾聴してい 近な問題を対象化できる。 る。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 主な学習内容 評価 1時間目 オリエンテーション、グループ決定、テーマ決定 C① 2・3時間目 与えられた資料の読解、補足資料の調査、発表に必要な情報の蓄積 A①、B①② 4・5時間目 発表原稿作成、必要に応じてシナリオ・模型の作成 A①、C①② 6時限目 コンテスト A②、C② 本時 優秀作品発表 C①② 46 8.本時の目標 前回、このクラスでは予選を行い本日の本選に進むグループを選出している。前回の反省点を活かしてブ ラッシュアップした発表を実施し、今回のプロジェクトを通してどんな力が身についたのか、またまだ足り ない点は何か、客観的に考える契機としたい。 また、さまざまな発表の工夫を相互に見ることで、今後のAL授業での発表のヒントを得ることも大切な ポイントである。 9.本時の展開 過程 導入 学習活動 開始・担当班の紹介 (2 分) 指導上の留意点 評価 予選を勝ち抜いた3班を紹介す る。アイスブレークも兼ねてい るため、ここは日本語で行う。 (担当:橋本) 展開 予選突破班の発表と質疑応答 司会:青木(英語で進行) (40 分) (3 班×12 分+入れ替え時間 4 分) A①② B①② 動画・劇・コスプレ・模型など C①② を使用し、自分たちのテーマに ついて考察し、さらにその知識 をもとに現代を再考する発表。 生徒同士の質疑応答は日本語で 行う。質疑応答の内容は ①発表者の制作意図 ②結論についての意見交換 ③発表者のここがすごい! という3点。受け答えまで含め て、後の投票に反映させる。 まとめ 投票→優勝班の発表 (8 分) 投票司会:鷺坂 C② 生徒用ルーブリックを用いて評 価を行う。 総評:教員3名で行う 10.その他 活用Ⅱ問題のカテゴリーで言えば、今回の発表はカテゴリー「実物を作る・実用化する」及び「実世界に つなげて理解する」に相当する。 47 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(2校時) 教室:105 1.授業担当者(教科) : 森 祥平(数学) 2.対象クラス: 中等教育学校1年・等α1 代数 3.単元名・教材 連立方程式 / 「桐蔭の数学」 4.単元観・教材観 中等教育学校では、数学の教材に「桐蔭の数学」という独自の教科書を使用している。本単元の始めには、 「数学という学問は、1つ新しいことを学ぶたびに、いろいろなことを考え、それにより数学的視野が広が っていく。そして、その視野が広がることにより、過去において難しく感じられた問題がやさしく感じられ るようになる。 」と書かれている。1次方程式を学習し、算数から数学に世界を広げた生徒が、さらに視野を 広げることになる単元である。数学的視野を広げるということに留まらず、題材を工夫することにより、日 常生活や社会とのつながりまで考えさせることができる単元であると考える。 5.単元の目標 ・連立方程式の1文字を消去すれば1次方程式になることに気付き、連立方程式の解法を考えることがで きる。 ・連立方程式の複数の解法を身につけ、問題に合わせて適当な解法を選択することができる。 ・文章題において、問題文の条件間に成り立つ関係式を作ることができる。また、求めた解答が問題に合 っているかどうか確認することができる。 ・自分の考えを筋道立てて説明する力を身につける。また、他者の考えをしっかりと聞き、その考えを理 解しようとする姿勢を身につける。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ①1つの文字を消去して、1次方 ①連立方程式を解くときに、問題 ①他者に自分の考えを説明する 程式に帰着し、連立方程式が解け に合わせて適切な解法を選択で ときに、ポイントを強調するなど る。 きる。 の工夫をしている。 ②基本知識・技能を活用し、応用 ②他者の考えをしっかりと聞き、 問題に対応できる。 解法を身につけることができる。 ③文章題において、問題文を適切 に読み解き、論理的な解答が書け る。 ④自分で考えた解答を他者に説 明することができる。 ⑤様々な角度から問題をとらえ、 積極的に別解を考える。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 1時間目 主な学習内容 評価 算数の解き方ではなく、1次方程式を使うことによって、どのようなメリッ B④、B⑤、 トがあるかを考える。 C①、C② 48 2・3時間目 連立2元1次方程式の解法を考える。 A①、B①、 B②、B⑤ 3・4時間目 分数・小数を係数に持つ、 ( )を含んだ連立2元1次方程式の解法を考える。 A①、B①、 B②、B⑤ 5時間目 A=B=Cの連立方程式の解法を考える。 B②、B④、 B⑤、C①、 C② 6時間目 比を用いた連立方程式の解法を考える。 B②、B④、 B⑤、C①、 C② 7時間目 置き換えて解く連立方程式の解法を考える。 B②、B④、 B⑤、C①、 C② 8・9時間目 連立3元1次方程式の解法を考える。 B②、B④、 B⑤、C①、 C② 10時間目 連立方程式の文章題への応用を考える。 B③、B④、 B⑤ 11~15時間目 難易度の高い文章題に取り組む。 A②、B②、 B④、B⑤、 C①、C② 本時 連立方程式の問題を作成し、方程式の有用性について考える。 B②、B③、 B④、B⑤、 C①、C② 8.本時の目標 ・問題作成を通じて、方程式の有用性を考える。1次方程式でも同様の検討をしているので、連立方程式な らではの有用性を見いだすことができる。 ・題材を実世界(新聞や雑誌等)から取ってくることにより、視野を広げることができる。 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 評価 導入 1次方程式の有用性を考えときに 1次方程式からより深めて、連 B②、C② (15 分) 出てきた意見を確認する。 立方程式の有用性を考えるの (それぞれ個人での で、過去の自分たちの意見をし 学習活動となるの っかりと思い返させる。 で、集中して活動で きているか授業態度 4人1グループを作り、あらかじめ 4人1組のグループワークにな 作成してきた問題を1人3分で回 るが、まずはそれぞれが問題を し読みする。 黙読するので、話をしないよう に注意する。 49 から確認する。) 展開 代表者5名が作成してきた問題を 題材が同じものに偏らないよう 発表者:B④、C① (30 分) 発表する。発表を聞いている生徒 に発表者を選抜する。 (話し方や自分の問 は、それぞれの問題の良いところや 発表者の話を静かに聞かせる。 題のポイントをわか 感想を記入する。 りやすく伝えられて いるか確認する。) 連立方程式の有用性をグループワ 1次方程式でも同様のグループ 発表者以外:C② ークで考え、記入させる。グループ ワークを行っているので、連立 (発表者の問題や感 ごとに、考えたことを発表する。 方程式ならではの有用性を考え 想をしっかりと記入 させる。 しているか確認す る。) B②、B④、C①、 C② (グループで検討し た考えをしっかりと 記入できているか確 認する。グループで 考えた内容を簡潔に 発表することができ るか確認する。) まとめ 本時の授業で気付いたことや分か 自分では気付かなかった連立方 C② (5 分) ったことをまとめる。 程式の有用性をしっかりと記入 (他グループの話を させる。 しっかりと聞き、自 分たちの考えにはな かったものを記入で きているか確認す る。) 10.その他 本授業では、問題作成の題材に新聞を指定した(ただし、新聞を購読していない家庭の生徒のために、雑 誌等でも可としている) 。活用Ⅱ問題のカテゴリーとしては「実物を作る、実用化する」に該当する。題材を 新聞に指定をしたのは、今後「自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現する」ときのた めに、まずは視野を広げてほしいと考えたからである。1次方程式で同様の取り組みを行ったときには、題 材の指定をしなかったので、配布している問題集のような題材が多くなってしまった。今回のような取り組 みにおいて、実社会とのつながりを作っていくことは、今後の探究活動にスムーズに入っていく助けになる と考える。 50 51 公開授業 学 習 デザインシート 1.授業担当者(教科) : 2.対象クラス: 氏名 山崎正幸 2015 年 12 月 12 日(2 校時) 教室:106 (英語) 中学1年(男子部)・英系β⑥ 英語 R 3.単元名・教材 NEW CROWN ENGLISH SERIES Ⅰ Lesson 7 ( Wheelchair Basketball ) 4.単元観・教材観 本単元の、Wheelchair Basketball を久美が体験し、車椅子の操作の難しさに気づかされる場面は、本校の*1 グローバルプログラムの一環として行った車椅子体験(生徒全員が学校の敷地内で車椅子に乗る、後ろから押す、 動き出す時にタイミング良く声をかけるなどの体験)とリンクさせることができ、実生活につながる非常に良い 単元であると考えている。また、自身が体験していることで、この単元の内容が彼らになじみ易いものになって いるのはもちろんのこと、自身の車椅子体験から想像したり発見したりした問題について、自ら解決策を考え、 既習の語彙や文法事項を駆使しながらプレゼンテーションを行うなどのチャレンジングな活用問題の題材として も扱うことができる理想的な単元であると考えられる。さらに、扱う文法が複雑であれば、プレゼンテーション の内容だけでなく、英文法一つひとつも気になってしまうところであるが、本単元の文法重点項目の can は原形 と共に使われるので、三人称単数の影響を受けず、中学1年でも非常に運用し易い文法事項であり、プレゼンテ ーションなど、ハードルの高い活動をさせるのに適した単元である。 *1 グローバルプログラム 今年度から本校で実施している、多様性を受容できる力を身につけさせるための教育活動である。中学3年次か ら本格的に課外授業の一環として開始する予定である。だが、現時点では道徳や LHR などの時間を利用して、プ ログラム本格化の前段階として全員にグローバルの素養を身に着けさせる目的で活動を展開している。 5.単元の目標 (1) 助動詞 can の用法を理解し、can を含む様々な形の英文を作ることができる。 (2) 障がい者の生き方や日常生活について関心を持つようになる。 (3) 障がい者と健常者の共生について考え、その解決策を発表することができる。 (4) can を含む補助犬についての会話文を聞き、概要や要点を理解することができる。 (5) 車椅子バスケットボールのレポートを読み、書かれている内容を読み取ることができる。 (6) 話題となっている人物の会話を聞き、できることやできないことを理解することができる。 6.単元の評価規準 聞 く こ と 話 す こ と 読 む こ と 書 く こ と A: 知識・技能 ①助動詞 can を含んだ英文を聞い て、その内容を正しく聞き取ること ができる。 B: 思考力・判断力・表現力 ①助動詞 can を含む英語の説明を 聞き、問題となっていることを理解 し、実社会の課題とリンクさせるこ とができる。 ②助動詞 can の用法に関する知識 ②自分で解決策を見つけ出し、相手 を身につけ、can を含んだ英文を正 に分かりやすく正確に伝えること 確に発話することができる。 ができる。 ③意味理解に支障が出ないように、 ③抑揚をつけるなどして相手に意 英文をスムーズに音読することが 図を伝えることができる。 できる。 ④助動詞 can の用法に関する知識 ④英語で書かれたあらすじや大切 を身につけ、それを含む英文を正し な部分について正しく読み取るこ く理解することができる。 とができる。 C: 主体性・多様性・協働性 ①様々な主張に積極的に耳を傾 けている。 ⑤助動詞 can の用法に関する知識 を身につけ、can を含んだ英文を正 確に書くことができる。 ④他者と協力してプレゼンテー ションのスクリプトを作成して いる。 ⑤自分あるいは相手が可能なこと を考え、それを読み手に分かりやす い英文を書くことができる。 ⑥問題を解決する英文を書くこと ができる。 52 ②インタビュー活動に積極的に 取り組んでいる。 ③本文の内容理解にあたり、他 者と協力している。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 1時間目 Get part1(p80) 主な学習内容 評価 -本文の主人公 Bob の自己紹介文を読み、内容を理解する。 -本文の英語をスムーズに読めるように音読練習を重ねる。 -本文の和訳を確認する。 -本文中の can の肯定文に焦点を当て、can の使い方を理解 すると同時に、can を使った簡単な英作文ができる。 -前時の文法の復習。 -Listening: 登場人物の話を聞いて、得意なことが何かを聞 き取る。 -Speaking: can を使って自分の得意なことを相手に紹介す る。聞いたことを理解しメモをとる。 -本文の Bob と久美の対話を読み、内容を理解する。 -本文の英語をスムーズに読めるように音読練習を重ねる。 -本文の和訳を確認する。 -本文中の can の疑問文(とその応答の仕方)と、否定文に焦点 を当て、文法ルールを学び、簡単な英作文ができる。 -前時の文法の復習。 -Listening: 動物たちの話を聞いて、得意なことやできない ことを聞き分け理解する。 -Speaking: ペアやグループになり、相手がどんな動物にな りきっているか、can の疑問を使って尋ねる練習をする。 -対話形式ではない比較的長めの英文を読み、必要な情報を 理解する。 -車いすバスケットボールのルールの一部を学ぶ。 A①②④ B② 2時間目 Get part1(p80) の復習 +Listening、 Speaking (p81) 3時間目 Lesson7 Get part2(p82) 4時間目 Get part2(p82) の復習 +Listening、 Speaking(p83) 5時間目 USE Read 6時間目 USE Listen -補助犬について知り、ハンディキャプをもった人たちがよ りよく暮らせるように、自分ができることについて考え、英 語で書く。 B②⑥ 7時間目 USE Speak -友達にできること・できないことをたずねて、無人島に一 緒に行く仲間を探す。 A①⑤ B①② C② *総合言語活動 -車椅子の人々が抱える問題や、自身の車椅子体験から発見 した問題を取り上げ、自ら解決策を考え、グループによるプ レゼンテーションで発表する。 A①② B①~③⑥ C①④ (*2 活用Ⅱ問 題について) 本時 A①②③⑤ C① A①②④ B② A④ A①②③⑤ C① B②④ C③ *2 活用Ⅱ問題について:本時の活動は、活用Ⅱ問題の「実世界に問や課題を見いだす」に分類される。 8.本時の目標 ・助動詞 can の意味や使い方を理解し、状況に応じて適切な英文を作ることができる。 ・車椅子の人々が抱える問題を発見し、グループメンバーと協力して解決策を考えることができる。 ・can を使った英文を用い、人前でも堂々と解決策を発表することができる。 53 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 評価 Warm up 生徒同士でその日の心身の状態、天気、 よりリラックスした雰囲気を作るためにゲーム 知識・技能 (4 分) 日付、曜日などを英語で十分に質問しあ の要素を入れる。30 秒間お互いに質問・回答を 間違いを恐れずに、お互いに英 った後、教員からの同じような問かけに 繰り返し続ける活動を行う。その後の、教員から 語で挨拶ができる。 対し大きな声で英語で答える。同時に の挨拶に対する答えは、クラス全員に同時に言わ 天気、日付、曜日など日常的に Feedback Sheet にも英語で記入してい せるものではなく、各自のタイミングでその質問 頻度の高い英語に慣れ、その問 く。 に答えるものとする。 いかけに素早く答えることが できる。 目標確認 提示された本時の目標を教員と一緒に英 目標は英語で示されるが、そこに登場する語彙・ 知識・技能 (1 分) 語で読み上げる。 文法はこれまでの授業で学んでいる必要がある。 クラス全体で本時の目標を共 また、未習にも関わらず目標の中に新しい表現を 有することで、共通のゴールを 入れなければならない場合はその都度、日本語で 意識しながら授業に参加でき 意味を確認させ、目標がわからない、と言うこと るようになる。 のないようにする。 前時の復習 ※本時は直近の L7 part2 を選択した。 [音読活動] 知識・技能・主体性・協働性 (7 分) [音読活動] 音読の速度が少しずつ上がるよう活動順に配慮 [音読活動] クラス全体でモデルリーディングをリピ した。また、時間制限を設けたり、ゲームの要素 様々なアクティビティを用い ートしたり、モデルリーディングにかぶ を含めたりして、音読活動を飽きさせないよう配 ながら教科書を繰り返し音読 せたりして音読する。また隣の席の生徒 慮 し た 。 そ の 中 で も 、 ジ ャ ン ケ ン ポ イ (rock, することで、各単語の正しい発 とスムーズさを競う。 scissors, paper)のフレーズに、本時に学ばせたい 音、リエゾン(音の連結)、リズ ペアになり、各自の iPad のロイロノート キーセンテンスを置き換えるのは非常に有効で ムなどを意識しながら、英語ら に配信された本文の*3 日本語訳(授業で ある。 しい発音ができる。 確認済み)を開き、それを見ながらお互い 自分の声をロイロノートに録音する活動におい 日本語を見て英語が言える。 に英語に即時翻訳し、その音声をロイロ ては、速く音読をする練習をさせた直後なので、 ペアと協働してロールプレイ ノートに録音して提出する。 時間設定を設けた方がよいと考え、本時は50秒 作品を作ることができる。 設定とした。どうしても和文英訳ができない生徒 各ペアから提出された音読音 のために、スクリーンに本文の英語を映し出して 声を全体で共有することで、音 おき、和文英訳をしない方のパートナーが英語で 読した当人も含め、良い点・留 ヒントを出すルールを作った。 意すべき点が再確認できる。 文法確認 助動詞 can の用法が映し出された画面を can の文法的ルールを言葉で説明するだけでな 知識・技能 (5 分) 見て、再度用法の確認をする。 く、実際に運用する中で、コンテクスト内でどの 助動詞 can の用法を正しく理 スライドの写真をターゲットグラマーで ように使われているかをしっかりと理解させる。 解し、状況によって肯定文・疑 ある can を使って描写する。 can の肯定文・否定文・疑問文がそれぞれ解答と 問文・否定文を使い分けること なるような写真を準備する。また、生徒が答えや ができる。 すいように空所補充の形で文章を示す。 導入 以前話し合った、車いすで生活する人々 登場人物であるボブが車いすバスケットボール (5 分) が遭遇する問題点を思い出し、発表する。 においては久美より上手であるように、誰しも練 自分が考える「日常生活におけ 次にグループにまとまり、そのような 習・訓練次第では優れた can を持つことができる る車いすの人々が抱える様々 人々の問題を解決するためにはどのよう ということを認識し、「ハンディキャップ=かわ な困難(can’t)」を英語で堂々と な改善策が考えられるか、各自が予め考 いそう」ではないことを共有する。しかし一方で、 発表できる。 えてきた具体的なプロダクトデザインを 生徒たちが車いす体験で気づいたように、日常生 車いすの人々とそうでない グループのメンバーと共有し、1つの物 活を送る中ではまだまだ不便を感じるシーンも 人々(健常者)だけに焦点を当 に絞る。 多い。皆にとって使いやすいデザイン(=ユニバー てたプロダクトデザインでは 54 主体性・多様性・協働性 サルデザイン)を自ら提案することで、相手の目 なく、世の中の全員が共有可能 線に立って物事を考えられるようになることを (can)だと言えるデザインを選 意図している。また、グループのメンバーの意見 ぶ、もしくは創造することがで を聞くことで、自分が認識していなかった視点に きる。 も気づくことができる。 展開 導入部で1つに絞ったデザインについ コンセプトがあまりにも複雑なもの、英語が難解 知識・技能・多様性・協働性 (23 分) て、教員が示したテンプレートに沿って なものになっているグループには、「英語で皆に 自分たちの意見・アイデアを英 プレゼンテーションを作成する。 理解してもらう」ということを意識するようアド 語で発表することができる。 各グループメンバーの分担を決める。 (1 バイスする。 他のグループの発表を聞くこ 人最低1文は英語で言う) このとき、授業補佐の教員二人が教室内を巡回 とで、新たな視点に気づくこと 指名されたら前に出て発表をする。 し、生徒ができるだけ英語で表現できるよう、手 ができる。 聞いている生徒は配布された*7 プレゼ 助けする。 声量・目線・姿勢に気を付けな ンテーション評価シートに点数とコメン がら発表することができる。 ト書き込む。 他人の発表を見て自分のパフ ォーマンスとの比較ができる。 まとめ ユニバーサルデザイン以外にもハンディ 「ユニバーサルデザイン」という言葉には、「障 多様性 (5 分) キャップのある人々をサポートする方法 がい者と健常者」だけではなく、 「老若男女」、ま 全ての人が can と言える社会 があることを知るとともに、それらの根 たは「右利きと左利き」等、「全ての人にとって を創造するためには、多様な考 底にあるのは「困っている人を助けたい 使いやすいデザイン」という意味が込められてい えを受け入れることがスター と思う優しさ」であることを理解する。 る。全ての人が暮らしやすい社会、ということを トであるということを認識す 考えた時、大切なのは相手の立場に立って考える ることがきる。 こと、つまり「思いやり」である。エジソンの言 葉を借りながら、生徒たちにそのことを気づかせ たい。 ※授業の「*8 振り返りシート」は最後に回収できなければ、次回の授業の最初に提出させています。 *3 日本語訳は英語の語順になっています。 *4 確認テストは毎授業で行っています。たとえ本文を学習しても書けるようになることとは別のことです。 55 最近では文字を書くことに拒否反応を起こす生徒が多いので、覚えるのに非常に時間がかかります。本文を 扱わない回であっても、これまで学習してきた本文を常に振り返り、少しずつ定着していくよう心がけてい ます。 *5 ロイロノート音声付き小テスト Google drive 上に小テスト(PDF ファイル)を置くと、ロイロから取り込むことができます。取り込んだ小テ 56 ストに音声を録音し生徒に配信します。生徒は再生ボタンを押すと、本文の音声が聞こえます。ピンチアウ トで拡大し、何度も書き込み、消すことができます。コメント欄は授業中に使用するものなので宿題の時点 では使用しません。 *6 予習として、ノートに教科書本文の英語と和訳を書かせています。それをロイロノートで自宅から送信さ せ、それにコメントを付け返却しています。 57 *6 生徒は全員、教科書準拠の workbook を購入し所持していますが、一度書き込んでしまうと考査前の復習 として使えなくなってしまうので、ロイロで配信し問題を解かせ提出させています。解答欄が小さいので、 小テストと同じようにピンチアウトして書き込んでいる生徒が多いようです。各自のノートに問題を解かせ、 提出させても良いのですが、扱うノートの冊数が多くなると荷物も重くなり、管理もしづらくなるので、現 時点ではこの方法を行っています。 58 *7 プレゼンテーション評価シート(写真で二重線がある箇所は、その時のプレゼンテーションでは使用しな い項目だったので削除しました。当日は使用します。) 59 60 *8 振り返りシート *中2だともう少し書けるようになります。サンプルです。 まだ書いていないもの ↓ 61 62 63 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(2 校時)教室:107 1、授業担当者:瀧澤 史(社会科 歴史) 2、対象クラス:中学1年(女子部)理数コース GA組 歴史Ⅰ 3、単元名・教材: 「中学生の歴史」 (帝国書院) 第三部 中世 武家政権の成長と東アジア 第二章 武家政権の内と外 4、単元観・教材観: 社会の変動を通して武家社会の展開を理解させるととともに、その間の日本と東アジア世界との関わり に気づかせるために本単元(第二章)は位置づけられる。 9世紀末に遣唐使が停止されたあとも、日本は東アジアの国々と貿易や仏教交流において密接な関わり を持ち続け、正式な国交が開かれなかった鎌倉時代においてもその交流は武家社会に影響を与えた。 13世紀の初め、史上空前の大帝国を築きユーラシア大陸の各地に大きな影響を与えたモンゴルは、朝 鮮半島の高麗を服属させ、南宋にも侵攻し、日本にも朝貢と服属を求めてきた。この要求を鎌倉幕府が拒 んだため、2度にわたり元・高麗軍が日本に襲来してきた。日本はモンゴルに支配されることはなかった ものの、元寇は鎌倉幕府の政治や、幕府と朝廷との関係、幕府と御家人との関係に大きな変化をもたらし た。また、長期的には日本人の国家意識や対外認識にも少なくない影響を及ぼすこととなった。元寇は前 近代の日本にとっては数少ない対外戦争であり、鎌倉幕府滅亡の大きな要因となったのである。鎌倉幕府 滅亡後、天皇親政が復活するものの短期間で崩壊し、室町幕府の成立となる。 モンゴル帝国滅亡前後から活発となる海を越えた活動は東アジアの国際関係に倭寇というあらたな課題 を提示する。このような状況へ対応すべく形成された東アジアの国際秩序の中で日本も行動することを要 求される。室町時代においては、日本の国家体制や文化のあり方はこうした東アジアとの国際関係と深い 関わりをもった形を示すのである。 5、単元の目標 社会の変動を通して、武家社会の成立や展開を理解させるとともに、 「元寇」 ・ 「日明貿易」 ・ 「日朝貿易」・ 「琉球貿易とその国際的な役割」などを取り扱い、日本と東アジアとの密接な関係やそれが日本国内に及 ぼした影響などに気づかせる。 64 6、単元の評価基準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ①モンゴル帝国がユーラシ ①元寇や日本と元の関係に ①東アジア世界と日本との ア大陸に及ぼした影響に ついて多角的・多面的に 密接な関係や武家政治の ついての知識を身につけ 考察し、自分の考えを持 展開などについて関心を ている。 つことができる。 高め、疑問点について意 ②鎌倉幕府崩壊から建武の ②元寇以来、御家人たちが 欲的に追究し、中世社会 新政、室町幕府成立に至 鎌倉幕府に不満を持つよ の特色をとらえようとし る経緯を理解し、その知 うになった理由を適切に ている。 識を身につけている。 表現できる。 ②グループワークにおいて ③室町幕府が勘合貿易を始 ③鎌倉時代の守護と室町時 めた理由や経緯について 代の守護大名のちがいを その知識を身につけてい 理解し適切に説明でき る。 る。 自分の役割を果たそうと している。 ③他者の意見を聞くことが できる。 ④琉球王国やアイヌの人々 ④室町幕府の権威が次第に が交易していた相手を適 おとろえていき、後の戦 ワークシートやスライド 切に図で表現している。 国の動乱につながってい を作成することができ ⑤年表や地図などの資料か った理由を考察し適切に る。 ら情報を収集・選択でき る。 ④他者と協力して発表用の 表現できる。 ⑤資料を分析・活用して ワークシートやスライド にまとめることができ る。 ⑥自分の意見をわかりやす く述べることができる。 7、単元の指導と評価の計画 授業時数 主な学習内容 1時間目 モンゴル帝国の拡大・日本への襲来 A①・C① 元と日本の関係を考える A⑤・B①⑤⑥・C②~④ 3時間目 各地に現れた悪党・鎌倉幕府の崩壊 A②・B② 4時間目 動乱の半世紀・京都に置かれた室町幕府 B③・B④ 5時間目 東アジアの新体制と倭寇 A③ 6時間目 琉球とアイヌの人々がつなぐ交易 A④ 本時 評価 8、本時の目標: これまでの日元関係史においては、外交・戦争史と貿易・仏教交流史を統合的に理解する面が少なかっ たように思われる。本校で使用している帝国書院「中学生の歴史」においても、日本と元の関係は「元寇」 中心に記述されている。だが、今年度出版された「中学社会歴史分野 ともに学ぶ人間の歴史」(学び舎) には「これらの戦争に関わらず、幕府は交易船を元に派遣し、クビライ=カンも交易を許可しています。 」 という記述がある。本時はこの記述に注目し、日本と元には「元寇」以外の歴史的交流があったことをグ ループワークで学ぶ。 歴史には「政治」 「外交」 「文化」などの多様な関係・交流がみられる。それらを多角的・多面的に見て 65 いく視線は、生徒が生きている現代の国際関係を理解し考えていくことにもつながっていくと思われる。 本時はグループワークの協働作業の中で能動的に歴史の多様な面を学び、実世界との関連性に生徒が気 づき、歴史を学ぶ意義を見直すことを目標とする。 9、本時の展開 過程 導入 (3 分) 学習内容 指導上の留意点 1、前日の授業のふりかえり 1、教員の話を聞くときは集中して ・モンゴル帝国の拡大 いるか。 ・元軍の日本襲来 評価 A① ※モンゴル帝 国の拡大によ ってユーラシ アがひとつに なったことを 理解している か確認する。 展開 1、本時のテーマ「日本と元の関係は 1、同じ年代のころの元の動き・幕 B① 「元寇」だけだったのか」について、 府の動き・日元間のできごとの3 ※年表の3つ 年表資料を各自で読み、気づいたこ つの内容をよく読み比べている の内容を結び とや疑問点をワークシート№1に記 か。 つけて読み比 入する。 べているか。 (1・2 で 15 分) 2、4人グループをつくり、ワークシ ート№1を各自発表。他の人の意 2、発表を聞きながら適宜シートへ の記入がおこなわれているか。 B⑥ C②・③ 見も記入する。 3、指名されたグループが前に出て発 表する。 (5 分) 3、ワークシートの内容を簡潔にま B⑥ とめ発表しているか、他者の発表を C③ 集中して聞いているか。 ※「敵対関係が解消されないままな のに、なぜ、日元間で貿易・交流 が続いたのか」という気づきがあ るか。 4、 「敵対関係が解消されないままなの (4・5 で 4、話し合いに積極的に参加してい B⑥ に、なぜ日本と元は(弘安の役直後を るか。これまでの授業で習った知 のぞいて)貿易や人的交流を継続した 識を活用しているか。他者の意見 のか」各自考え、グループ内で話し合 を尊重して聞いているか。 う。 ※実世界(現代の国際社会)と比 14 分) C②・③・④ 較する視点に気づけるか。 5、各グループで意見をまとめロイロ 5、協力してスライドを作成してい B⑤ ノートでスライド数枚を作成する。 るか。わかりやすいスライドを作 C④ 成しようと工夫しているか。 66 (10 分) 6、グループ毎に前に出て、ロイロノ 6、役割分担をしているか。十分な B⑥ ートのスライドを電子黒板で発表す 声量、適切な速度で発表している C③ る。 か。 (質疑応答) まとめ 1、ふりかえり(今日の授業で (3 分) 1、集中してふりかえりをおこなっ わかったこと、疑問点などをふりか C① ているか。 えりシートに記入。 ) 10、その他: 活用Ⅱ問題については「実世界に繋げて理解する」というカテゴリーになる。展開4の部分でとりあげ る。中世という時代の「国と国」あるいは「人と人」の関係や交流の多様性に目を向けさせ、現代の国際 関係にも結びつく視点に気づかせることができたらと思う。 67 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(2校時) 教室:108 1.授業担当者(教科) : 富田廣子 (国語科) 2.対象クラス: 高校 1 年(女子部)理数コース GD組 現代国語 3.単元名・教材 「自然と人間の関係をとおして考える」内山 節 著 (大修館書店 国語総合) 4.単元観・教材観 近代科学の恩恵にあずかり、 「自然」のサイクルとは別の時間軸を作って生活している現代の私たちに、自 然と乖離した生活を維持するのではなく、新しい道を「再創造」することが必要だと説いている。畑を耕し ながら思索を深めている著者であるからこその視点があり、近代以降の時間論に触れながら、自然と人間の 関係について述べている。1年生で履修する「国語総合」という科目から、2年生では「現代文」と科目名 が変化する導入として、近代以降とそれ以前の比較をした上で現代の諸問題について考える端緒となる教材 と位置付けられている。 昨今の自然災害に関する報道では、これらを人災としてとらえる見方が多いことから、文章を理解するこ とはさほど難しくない。しかし、著者が再創造の道を明確に提示していないことからもわかる通り、私たち がそれを見いだしていくことは容易ではない。科学技術を否定して生活することは、私たちにとって現実的 ではないから、そうである以上、その都度判断をしていかざるを得ない。一人ひとりが自分の問題としてと らえ、これからを生きる自分たちのあり方を考える契機としたい。 5.単元の目標 近代科学の恩恵にあずかりながら生活していることを自覚し、現代の自然・環境・科学に関する諸問題を 自分の問題としてとらえ、これからの生き方について考える。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 ① 筆者の主張を理解する。 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ① 本文に関連した新聞記事を選 ① グループで話し合いながら、周 ぶ。 囲の人の意見を聞いて情報交 ② 現代に生きる我々の生活につ いて振り返る。 ③ これからの生活について考え、 自分の意見を発表する。 換できる。 ② 話し合いを通じてグループの 意見として1つにまとめよう とするのではなく、他人との差 異を意識し、自分の考えを確た るものにできる。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 1時間目 主な学習内容 本文の読み・理解できない部分の抽出・本文前半の理解 評価 A①② C① 2時間目 本文前半の理解 A①② C① 3時間目 本文後半の理解 A①② C① 68 4時間目 本文後半の理解・筆者の主張を読み取る A①② C① 5時間目 本 時 7時間目 本文に関連した新聞記事を読み、自分たちの身のまわりにある「自然と人間の関係」 A① について知る。 B①② 新聞記事から現代における自然・環境・科学について理解し、これからの生活につ B①② いて考える C①② 個々人のまとめ(宿題) A①② B② C② ※本単元の導入として、本文を読んで、本文に関連する新聞記事を選び、選んだ理由を記入したプリントを 提出することを課題とした。 8.本時の目標 私たちの生活は多くの科学技術に支えられていることを確認し、筆者の主張をふまえて、これからの私た ちのあり方を考える。 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 評価 導入 新聞記事を選んだそれぞれの理由を ・科学技術の恩恵を被りながら A①② (5分) 理解する。 (前時の振り返り) 現代の我々の生活が成り立って 内容を理解し、教材と いることを認識する。 の関連性を考える。 新聞記事の ・本文と新聞記事との関連性を 理解・確認する。 展開① ・グループワークによる情報交換。 ・情報交換によって互いの意見 A② (15 分) 新聞記事と選んだ理由を読んで、授業 の違いを理解する。その上で B② を受ける前と受けた後で社会を見つ 個々人が自分の意見を固めてい C①② める視点が、異なっていることに気付 く。 グループで個々人の く。 ・各グループの発表内容の相違 意見を交換するが、無 に留意して発表を聞く。 理にまとめようとす ・グループごとに話し合った内容を発 ・発表する時の声の大きさ・言 るのではなく、あくま 表する。 葉遣い・聞くときの姿勢を意識 でも個人の考えをつ させる。 くるためにグループ グループでの発表後、全体で考える。 ・ 各 グ ル ー プ の 発 表 を 受 け て 展開② 個々人の考えにつなげていく。 ワークをする。 グループ毎に発表し、 それを受けて全体の (20 分) 場で議論を深める。 まとめ 振り返りシートで本時の学習を振り (10 分) 返る。 議論してきたことを個人でまと め、文章にする。 個人の意見をまとめる。 (宿題) 69 B② 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(2校時) 教室:109 1.授業担当者(教科) : 賀永麻美 (数学) 2.対象クラス: 中等教育学校4年・数系β2(33名) 数学P 3.単元名・教材 図形問題の考察(幾何・三角比・ベクトル) ・教科書「数学B」(数研出版)および独自プリント 4.単元観・教材観 平面ベクトルは、ベクトルとは一体何なのか、何故ベクトルを学ばなくてはならないのかがわからないま ま、苦手意識を持ちやすい分野の1つである。習熟度別で最下位のクラスということもあり、ただ知識を詰 め込むだけの学習法ではベクトルに対して嫌なイメージしか残らず、定着しない。教員からの情報を減らし、 生徒たち自身から新しい気づきや疑問を引き出すために、教科書をベースにした書き込み式のプリントを配 布して授業内のすべての作業をグループで行っていく。自由に発言出来る雰囲気を作ることで、例えばある 問題を与えたときに、内積を使えばよいことに気付き、そこから内積は便利だということを実感することが 出来る。 この単元で出てくる問題は、幾何や三角比の知識があればベクトルを用いることなく解くことが出来る問 題も沢山ある。ベクトルを使わない方が簡単に解ける問題、逆にベクトルを使わないで解こうとすると発想 力が必要な問題などに触れさせ、ベクトルを学習するメリットを実感させると共に、様々な視点で問題に取 り組む姿勢を促していく。 5.単元の目標 ・ベクトルの基本的な知識を身につけ、基礎から標準レベルの問題を解くことができる。 ・図形の問題を様々な視点から考えることができる。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ①平面ベクトルの計算ができる ①持っている知識のうちどれを使 ①他者の解答に真剣に向き合える ②平面幾何の定理を覚えていて使 うべきか考えられる ②他者の解説を真剣に聞ける える ②ベクトルを使うことの利点を考 ③協力して問題に取り組める ③余弦・正弦定理を覚えていて使 えられる える 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 主な学習内容 評価 (前期課程) 1年および2年次に幾何、3年次に三角比の学習 A②A③ 1~6時間目 【教科書 p.6~19】平面ベクトルの演算 A①C③ 7~10 時間目 【教科書 p.20~28】平面ベクトルの内積 A①B②C③ 11~12 時間目 【教科書 p.29~32】位置ベクトル A①C③ 13~16 時間目 【教科書 p.33~35】ベクトルと図形 A①A②B①B②C②C③ 17~18 時間目 【教科書 p.36~43】ベクトル方程式 A①C③ 本時 【教科書 p.33~35】ベクトルと図形 A①A②A③B①B②C②C③ 70 8.本時の目標 ・平面図形の問題について、様々な解法とそのメリット・デメリットを考える。 OA=1 , OB=2 , ∠AOB=120°である△ABC において、次の問題を扱う。 問題1.垂線 OH の長さを求める問題 問題2.中線 OM の長さを求める問題 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 評価 導入 問題1の内容を確認。前に出て解説す プリントを事前に配布・回収し、 A①②③(事前) (2 分) る生徒を指名する。 誰の答案を映すか決めておく。 展開1 スクリーンに映した答案について、問 ほとんどの生徒は三平方の定理 (18 分) 題を解いた生徒本人に前に出て解説 させる。 C①C② を用いて解くだろうと思われ る。出なかった解法は問いかけ ながら講義をする。最低3通り の解法が確認できるとよい。 黒板中央にスクリーンを配置 解説中に出てきた定理の名前や知識 し、左に表を書き、解説者の名 を答えさせながら、黒板の表を埋め 前・使った知識・便利な点・悪 る。 い点を記入する。(教員)「幾何 が一番楽だ」 「ベクトルは計算が 大変」などという意見が予想さ B①B② れる。 「ベクトルは角度に強い」 という発言を引き出したい。 展開2 問題2のプリントを配布、各グループ (15 分) で相談して解答を導かせる。 まなボードには予め△OAB の図 A①②③B①C①③ を挟んでおく。まずはまなボー ドを用いてグループで考え、結 論が出たら自分のプリントに写 させる。 代表の生徒を決め、まなボードを黒板 問1と同様に最低3通りの解法 に貼り、前に出て解説させる。 が確認できるとよい。 C①C② 解法に①~番号をつけ「どの解法が一 「幾何は定理を覚えていると B①B② (15 分) 番いいと思うか、またその理由」をま 楽」 「ベクトルは習ったばかりだ まとめ とめシートに記入させる。その後、① から」などの理由が予想される。 から順に選んだ生徒に挙手をさせ、そ 理由を言語化させることで解法 の中から指名し理由を答えさせる。 を整理する。 もし中点でなければどうかも問い、ベ 「数値設定が変わっても、ベク クトルや幾何それぞれの良さ・不便さ トルは同じような計算をするだ を考え、まとめる。 けだ」と気付かせたい。 10.その他 【活用Ⅱ問題について】与えられた条件から、どの知識・技能を用いるべきか考え、判断する思考力・判断 力を問う問題を設定した。実世界との関連で、自分の引き出しから何を取り出せば目の前の問題を解決する ことができるかを考えられる力を養いたい。 71 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(2校時) 教室:110 1.授業担当者(教科) : 池田信之 (化学) 2.対象クラス: 中等教育学校4年・数系α1(48名) 化学基礎 3.単元名・教材 酸化還元反応・教科書化学基礎(啓林館),スクエア最新図説化学(第一学習社) 4.単元観・教材観 代表的な化学反応の一つである酸化還元反応の仕組みや利用例を学びます。定義を確認し,反応式が書け るようになったら実際に自分の手で実験を行い,身につけた知識をもとに考察することが大切です。 「覚える 化学」から「実験を通して学ぶ化学」そして「考える化学」となるように,教科書に載っている実験をアレ ンジしてみました。講義で習ったことを手軽に確認する“机上で「体験」できる化学教室”をテーマに,酸化還元反 応における電子の移動方向を観察できる実験を通して主体的に学ぶ AL 型授業を試みます。 5.単元の目標 酸化還元反応はもともと酸素原子の授受で定義されていました。それが現在では電子 e-の授受で定義さ れるようになりました。ここでは酸化還元反応を電子移動反応と位置づけ,酸化数の変化による酸化還元反 応をよく観察し,反応式を用いて説明できることが目標です。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ① 酸化還元 の定義 を理解 してい ①課題を解決するための実験方法 ①仮説を立て,正確に実験操作を行 る。色や物性物質についての知識 を,今ある材料を用いて提案できる。 い,結果を考察しようとしている。 がある。 ②自分の言葉で反応を相手に説明す ②グループ実験において適切な分担 ②電子の授受を反応式で書ける。 ることができる。 ができ,自分の役割を果たしている。 ③適切な実験操作ができる。 ③実験の結果からどのようなことが 明らかになったのかを説明できる。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 主な学習内容 評価 1時間目 〔教科書 P156〕酸化還元の定義と酸化数 A① 2時間目 〔教科書 P163〕半反応式の作り方,主な酸化剤と還元剤の反応式 A② 3時間目 〔教科書 P165〕イオン反応式と酸化還元反応式の書き方 A①,② 本時 〔教科書 P167〕実験 5.酸化還元反応 B,C①② 4時間目 〔教科書 P168〕酸化剤と還元剤の量的関係(酸化還元滴定) B② 5時間目 〔教科書 P1169〕金属のイオン化傾向+実験 B,C 8.本時の目標 通常の化学実験では実験操作が指示されますが,本時では身につけた知識を活用して実験方法を提案する ことにチャレンジします。これは,仮説をたてて実験する要素を含むと思いますし,指示された通りに操作 するよりも主体的に実験を行う意味があるでしょう。実験で観察した色の変化から酸化還元反応における電 72 子の移動を反応式で説明できる力を培います。化学ではこうした色の変化を見て,どんな反応が起こっているのか を反応式を書いて説明できる力が求められます。色の変化を見てその反応を考察できる力(化学の視力)を仮説の立 案と実践の中で身につけることが目標です。 AL の基本である話し合いの時間を最大限に確保するため,スモールスケール実験を導入します。これは,最小限 の準備と片付けで手軽に実験ができること,講義の中でも実際の物質に触れることができること,そして失敗しても何 度もチャレンジできることなど大きな学習効果の可能性を持っている方法だと考えています。 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 導入 【講義】(板書+スクリーン) 既習事項なので手短に進める。 (5 分) 酸化還元半反応式の書き方の手順を 本時の目的,実験方法,注意点, 確認(生徒は宿題としてやってくる) 実験課題の説明。 ◇実験 A では種々の酸化還元反応を そのままでは難しいので,ヒントを 展開 (10 分) 行って,原子の酸化数の変化を考察 評価 知識 A①② 協働性 C 与える。(時間のかけ過ぎに注意) し,反応における電子の授受の関係を 調べる。 *酸化剤として働く場合と還元剤と ◇実験 B では応用として,どんな反応が して働く場合の半反応式をすべて 判断力 起こるかを予測して実験の道筋を立て, 書き出し,どのような色の変化とな 知識・技能 観察した結果から自分たちの仮説を実 るかを予想する。 証する。 また,理論的に実験不可能な反 応があることに気づかせる。 思考力,知識 【グループで実験操作を考案】 どんな実験を行ったら良いか? ○12個書けた班から実験器具・試 方法がわかった生徒には発表してもらう 薬を配布(少し競争させる) →12個の反応式を書く。 →配布に時間がかからない工夫 をしておく。 実験 色の変化など観察したことを詳しく (20 分) 記録する。 ○実験の進み具合を見ながら遅い 主体性 C 班にはペースを上げさせる。 技能 A②③ 色の変化が目で見て判断できない場合 判断力 には,変化を目立たせる試薬の知識を ○各班の結果を集約 活用する。実験結果から考察し,グルー すべての班の結果を見る。 プとしての結論を出す。 まとめ 【結果と考察】いくつかの班に,実験結 (10 分) 果からどのようにして酸化剤の強弱 ○発表に必要な反応式はスクリ 考察力 ーンに表示しておく。 表現力 B② を判断したかを発表してもらう。 酸化剤としての強弱 ?>?>?>? ○手際よく実験器具を回収。 ◇どの結果からそうなるのかを考察 →回収に時間がかからない工夫 ◇この実験が関係する身近にある製品 をしておく。 73 公開授業 学 習 デザインシート 2015 年 12 月 12 日(2校時) 教室:111 1.授業担当者 : 長谷川正利(地歴科・地理) 2.対象クラス: 高校1年(男子部)理数科 R2組 地理 3.単元名・教材 「アメリカ合衆国の生活・文化」 教科書:帝国書院『高等学校新地理A』 (p.124~p.131)、地図帳:帝国書院『新詳高等地図』 4.単元観・教材観 本校の高校1年生が履修する地理は地理Aであるが、地理Bの内容まで踏み込んで、主に地誌分野を扱っ ている。しかし、生徒の学習の便宜を考えて、基本的には教科書の記述に沿った内容となっている。 教科書の「アメリカ合衆国の生活・文化」は、「アメリカ合衆国とその周辺の自然環境」「移民の歴史と多 文化社会」 「大規模な農業とアグリビジネス」 「先端技術産業の発展と工業の変化」の4テーマで構成されて いる。この4番目のテーマでは、単元のまとめの「活用Ⅱ問題」は作りにくいと考え、 「WASPの『P』は 今…揺れる宗教大国アメリカ」と題する単元のまとめの授業を行うことにした。 「1つのアメリカ」を訴えて誕生したオバマ大統領のもとで、皮肉なことにアメリカ社会の分断は広がっ ている。その諸相は、保守とリベラルの対立や共和党と民主党の対立にとどまらず、セグリーゲーション、 貧富の差の拡大、宗教右派の台頭などにみられる。これらの中で、アメリカ合衆国の本質理解に欠かせない のが「宗教大国」というイメージに関わる宗教の問題だ。これについては、 「大統領選挙を左右する力がある。 その理解が大切」などと説く出版物が増えている中、教科書ではあまり触れられていない。 「WASP」の「W」 と「AS」の変化については「民族のサラダボウル」で理解できるが、 「P」については言及がないのである。 一方、最近の世論調査で、プロテスタントが成人人口の過半数を割ったという大きな変化が明らかになっ た。そうした宗派別人口の変化の理由は既習事項を使って考えることができる。今後、アメリカ社会は分断 を修復できずに突き進むのか、それとも新しい社会統合の道を拓くのか。この命題は、世界的でもあり、こ の単元のまとめの「活用Ⅱ問題」 (異なる観点から実世界を理解する)にふさわしいと考えた。 5.単元の目標 (1) 広大な自然環境、建国と移民の歴史、多民族社会、適地適作の農業地域、アグリビジネスの役割、工 業地域の変容、先端技術産業の特徴、宗教国家の特徴を理解する基礎・基本の知識を習得し、アメリカ 合衆国のイメージをつくる。 (2) 公民権法の制定、移民の多様化、農業・工業など産業の発達で、経済・社会が発展する一方で、格差 や分断が生じている現状を知り、アメリカ社会の行方について考える。 6.単元の評価規準 A:知識・技能 B:思考力・判断力・表現力 C:主体性・多様性・協働性 ① 東西対称の自然環境、建国と移 ① 歴史的変化、棲み分け現象が進 ① 毎時間の「ジャンプの課題」に 民の歴史、多民族社会の現状 ② 農牧業地域の分布と特徴、アグ リビジネスの役割、貧富の差 ③ 世界最大の工業力、工業地域の 変容、先端技術産業の特徴、 ④ 宗教大国、主な宗派の特徴 む理由について考える。 ② 気候と農牧業地域との関連、肥 満問題の原因を考える。 ③ 工業地域の変容の理由、技術革 新の特有の理由を考える。 ④ 宗教国家アメリカの今後を考 える。 74 ついて積極的に考え、グループ の中で発言して、他人の意見を きちんと聴き、自分の考えを構 築する。 7.単元の指導と評価の計画 授業時数 1時間目 主な学習内容 評価 アメリカ合衆国の自然環境/移民の歴史と多文化社会 A① 【ジャンプの課題】ロサンゼルスの民族分布図を解読し棲み分けの理由を考える。 B①C① 2時間目 3時間目 本時 大規模な農業とアグリビジネス A② 【ジャンプの課題】アメリカ人 1 人あたりカロリー摂取量が増えたのはなぜか。 B②C① 先端技術産業の発展と工業の変化 A③ 【ジャンプの課題】技術革新がおきるアメリカ特有の理由を考えよ。 B③C① WASPの「P」は今…揺れる宗教大国アメリカ A④B④ C① 8.本時の目標 (1) アメリカ合衆国における宗教の重要性を理解して、宗教国家アメリカのイメージを作る。 (2) アメリカ合衆国地誌の既習事項をもとに宗派別人口の移り変わりの理由について考え、理解する。 (3) プロテスタントが支配的であった宗教国家アメリカの社会の今後について自分の意見を持つ。 9.本時の展開 過程 学習活動 指導上の留意点 評価 導入 大統領の宣誓式などの写真をみて、ア ・アメリカが宗教に根ざした国 A④。既知のイメージ (5分) メリカ社会が宗教に根ざしているイ であること、アメリカと日本 に対して、知識を得て メージをもつ。 とで政教分離の考え方が違う 新しいイメージを作 ことを理解させる。 り替えられたか。 展開 (30 分) ① 宗教別人口構成の変化を示すグ ・グラフの解読が行いやすいよ ラフを見て、変化の理由をこれま うに、プリントには宗派別の りができるか。 での学習と結びつけてグループ 傾向を予め記載しておく。 B④。既習事項に基づ で考察する。 (5 分) ・既習事項に気がつくように机 ② グラフの変化の理由を発表する。 間巡視で適宜示唆する。 A④。グラフの読み取 いて考察できたか。 C①。グループで意見 ③ 発表された内容を振り返りなが ・プロテスタントの福音派の増 交換できたか。大きな ら教師の説明を聞いて、各宗派の 加については最後に触れ、ジ 声で自分の意見を発 現状について理解する。 (10 分) ャンプの課題につなげる。 表できたか。 ④ 【ジャンプの課題】 (活用Ⅱ問題) ・問われている課題の意味をき 「最近の世論調査で無宗教が増 まとめ (15 分) ちんと理解させる。 A④、B④、C①。他 加し、プロテスタントが過半数を ・グループや、時に全体に対し 国の例も含め、既習事 割り、そのプロテスタントも分化 て既習事項を思い出させる示 項を引き合いに出し が進んでいることがわかる。プロ 唆をして思考を促す。 て考えられるか。例え テスタントが支配的であった宗 ・「まなボード」には出た意見を ば民族のサラダボウ 教国家アメリカの社会は、今後ど そのまま書かせ、思考を可視 ルのように移民の増 うなっていくと思うか。グループ 化させ、グループ内での意見 加が続くならば分化 で考えなさい。 」 交換を促す。 は進むなど。 ① 書かれた『まなボード』を黒板に はり、考えた意見をクラス全体で ・机をコの字型に変える。 B①。自分の考えをま ・グループの意見ではなく自分 とめることができた 交流する。 の意見を述べさせる。 ② 振り返りシートを記入する(次回 ・識者の考えを示し、自分の意 の授業で還元する) 。 見との対比でまとめとする。 75 か。C①。発表できた か。他人の意見を聞い て思考を深めたか。 76 報告者一覧(カッコ内は所属部署) 英語 ・佐々木快帆(中等教育学校1年) ・野口茉莉(中学1年・女子部) ・向山真美(高校1年・女子部) 数学 ・鈴木謙作(中学1年・男子部) ・小川陽子(中学1年・女子部) ・袴田英康(高校1年・男子部) 国語 ・西口安紀(中等教育学校1年) ・梅原南美子(中学1年・女子部) ・川妻篤史(教務部) 理科 ・宮本香菜子(中学1年・女子部) ・山城友幸(高校 1 年・男子部) ・北真理子(高校1年・女子部) 社会 ・福田周作(中等教育学校1年) ・青木寛子(中学1年・男子部) ・岩元洋恵(高校1年・女子部) 77 アクティブラーニング 実践報告 他者に教えることを通して、知的探求欲と理解を促進する授業を! 佐々木快帆(英語科) 授業担当クラス:中等教育学校1年 英語 R 1:目標(学力の3要素との対応から) 教材:New Treasure Stage1 (2nd edition)(Z 会) (1)基礎的・基本的な知識・技能 ①文法の定着(各レッスンの英文法の学習事項を正しく説明できる) ②本文の完全定着(本文を全員の前で発表できる) ③新出単語の定着(新しく学習した単語をスペルミスなく書くことができる) (2)思考力・判断力・表現力 ①まとめる力(学習した文法事項の要点を整理し、それらを他人に伝わりやすくまとめることができる) ②創造する力(学習した表現を自分の立場に置き換えて英語にすることができる) ③説得する力(異なる意見に対して自分の意見を述べ、その根拠を提示することができる) (3)主体性・多様性・協働性 ①主体性(積極的に意見を出し、議論を進めている) ②多様性(相手の意見を受け入れ、自分のものと比較できる) ③協働性(目標を共有しグループでの協働作業を通して学び合いができる) 2:授業の流れ 単元:L.6-2 所有代名詞の使い方(2 時間目) (1)学習事項定着確認テスト《14 分》…今まで学習したテキスト本文&指定した英作文から。 ①一人ずつ指名し(1 分野につき 2,3 人)今学期に学習してきた L.6-1~L.6-2 の本文を全体の前で暗唱確 認。 →毎回発表するものが積み重なっていくので、生徒は学習事項を忘れてはいけないという意識が高まる。 →暗唱できなかった生徒には次の日の朝、職員室へもう一度発表しに来させる。 ②小テストの実施(L.5-2 の Key Points 英作文) ③テストを交換後、今回の英作文で意識して準備した箇所(スペリング、文法事項など)を発表させる。 ④何も見ずに採点をさせる。 →しっかりとテストの準備をしており満点を取ることが前提である、というメッセージを込めている。 ⑤戻ってきた答案を、テキストを見ながら採点ミスが無いかチェックさせる。 (2)学習事項の実戦練習&発表《6 分》 ①ペアで身の周りのものを使って本レッスンで学習した whose と所有代名詞を使って英作文の練習。 ②作った英文をペアで発表。 (3)課題《20 分》 「今までの学習事項を使って考査予想問題(自由英作文表現問題)を作ろう!」 【目的 1】これまでの考査で単なる和文英訳だけでなく、自由表現する英作文問題も出題してきた。次の考 査で出ると予想される問題を自分たちで作成することで、自由英作文への意識を高めるため。 【目的 2】学習事項に対しての深い理解と、積極的かつ主体的な振り返りをさせるため。 ①事前に個人で作ってきた問題をランダムに各グループに配付し、その中から面白い問題を 3 つ選ぶ。 ②それらの問題の模範解答をグループで作成し、その後発表させる。 (きちんと作業しているか確認) ③最も良い問題を 1 つ選んでまなボードに書かせ、それを他のグループと交換。 ④受け取った問題の答えをグループで作成し、発表させる。 78 (4)振り返り《10 分》 ①本日学習した文法事項を振り返りシートで確認。 →本文は暗唱しているはずなので、テキストを見る ことなく書かせる。 ②ペアで書いたことを確認し合う。 ③回収し、良いものを選んでコピーして次回の授業 で全員に配付する。 3:工夫しているところ(本時以外の授業での工夫も含む) (1)学習単元後に学習事項を「振り返りシート」に記入させている。 →「後で自分の言葉で説明する」という目標があるので、生徒は説明を積極的に理解しようとする。 →文法に対する意識を高められる。 →回収後、良い作品を必要に応じて手直しして全員に両面印刷をして配付するので、文法参考書になる。 (2)ある程度学習単元が終わったところで既習表現を使った自由英作文問題を作成させている。 →実際に問題を作ることで、そのために必要な文法事項や、出題意図などを積極的に考えるようになる。 (3)「プレゼンテーション評価シート」を利用している。 →評価項目は、 「立ち振る舞い」 「声の大きさ」 「内容」が 各 6 点ずつ、「文法」はその単元のもののみに絞り、 得点は 2 点で、合計 20 点満点。 →評価シートは回収し、発表者には全員分のものを渡す ので、自分のパフォーマンスのフィードバックができる。 4:うまくいっているところ (1)積極的に意見を交換する楽しさに気付いてくれている。 (2)主体的に学習事項を理解、定着させる習慣が根付き つつある。 (3)自分とは違う意見を聞き、新しい発見がある。 5:課題点 (1)時間がどのくらいかかるのかまだ正確に読めないので、授業の計画通りにいかないことが多々ある。 (2)学びにつながらない無関係な「おしゃべり」が見られる。 (3)ペア、およびグループワークの課題によっては盛り上がらないものがある。 (4)他の生徒の発表をどこまで生徒が吸収しているのか確認できない。 79 アクティブラーニング実践報告 運 用 に力 点 を置 いた英 語 学 習 の実 践 野口 茉莉(英語科) 授業担当クラス:中1英語R(女子部) 1 目標 (学力の3要素との対応から) “New Crown 1” Lesson6(三人称・単数),Lesson7(can) (1)基礎的な知識・技能 *英語の歌を繰り返し歌うことで、歌詞の中に出てくる重要表現をそらんじることができる。 *英単語を正しく発音し、発音と綴りの関わり(フォニックス)を意識しながら書くことができる。 *各文法項目のルールを正しく理解し、肯定文・否定文・疑問文の形で言ったり書いたりすることができる。 (2)思考力・判断力・表現力 *文法のルールを運用し、自分で英文を創作して言ったり書いたりすることができる。 *文章を読んで、内容を理解することができる。 (3)主体性・多様性・協働性 *グループ内で色々な英文を言い合い、お互いの間違いを修正することができる。 *教室内を移動して大勢の生徒と自由にコミュニケーションをとることができる。 *振り返りができる。 2 授業の流れ 《NEW CROWN 1 Lesson7 助動詞 can》 単元における学習の流れ ①⇐本時 ①英語で挨拶。日付、曜日、天気の確認をし、振り返りシートに記録させる。 ②前時の内容を踏まえて音読、 《1分》 ワークブック、カードゲーム ③Lesson7-2 の新出単語・文法 ②単語小テスト《10分》…単語リストの指定した範囲(10 題) 確認 *日本語のみ黒板に書き、生徒に英訳を言わせながら発音と単語を覚えてき ④前時の内容を踏まえて音読、 ているかの確認。 ワークブック、ビンゴゲーム ⑤Lesson7 Read の新出単語確 ➜身の回りにある単語も多いので、様々な例を挙げてそれに気付かせること 認、本文前半部のディクテーシ を意識している。 ョン、内容把握、ワークブック ⑥Lesson7 Read 後半部の デ (例)climb→「ロッククライミング」write→「ライター、ゴーストライター」 ィクテーション、内容把握、ワー *何度も「日本語➜英語」の発音練習をした後、綴りの確認。 クブック ➜LL 教室での授業で学習しているフォニックスのルールと結びつけながら、 ⑦パラリンピック選手のイン タビュー資料から情報を読 発音と綴りを一致させることを意識している。また、覚えづらい綴りは み取り、班ごとにプレゼンテー お互いにゴロ合わせを言い合うなどして頑張って覚えている。 ション ③英語の歌《4分》 *1か月に1曲を毎回の授業で歌う。何度も歌ううちに歌詞を覚えてしまうので、学習している文法事項が登場 する歌を意識的に選んでいる。今回は Elton John の“Can You Feel the Love Tonight”。立ち上がって友だちと 一緒に大きな声で気持ちよく歌う。 ④新出単語の確認《8分》 *予習では(1)新出単語の意味調べ、(2)本文をノートに写すこと、(3)本文を音読すること、を課している。新出単 語の確認では生徒一人ひとりを指名し、品詞と意味を言わせる。 ⑤文法事項の確認《15分》 *新しい文法事項について、パワーポイントで説明する。その際、ルールを自分たちで言語化させたり、既習の ルールとの違いを発見させたり、歌詞の中で覚えた表現を思い出させたりすることを意識している。 (例)He doesn’t like tennis.←do に(e)s を付けたので、動詞には s を付けない(言語化) He can play tennis.←主語が三人称・単数でも動詞に s を付けない(発見) You can dance~♪ Can you feel the love tonight~♪←今までに歌った歌を思いだす ⑥音読シート「Read aloud!」《10分》 *文法のルール、パターンをとにかく体で覚えるためのシート。リピート読み、早読み、ペア読みをして定着を 図る。 ⑦振り返り《2分》 *振り返りシート(冊子)に本時の気付きなどを記入。回収し、確認。コメントを付けて次回授業冒頭で返却。 80 Lesson7 で行ったその他の取り組み ⑧グループでのカードゲーム《10分》 *主語と動詞のカードを山にして机の真ん中に置き、引いた主語と動詞で 即興で英文を作る。記録係が班員の言った英文を記録し、最後に提出す る。お互いに文法のミスなどには声を掛け合いながら楽しく取り組んで いる。「主語➜動詞」の語順で自然に英文を始められるようにすることが 目的の1つでもある。主語によっては動詞に三単現のsを付けたり、主 語と動詞の間に can を挟んで言ったり、色々なパターンで活動ができる。 回収した英文の記録はこちらで添削し、班員分コピーしてフィードバック。 ⑨教科書本文《10~20分》 *単語や文法事項の確認を十分に行った後は教科書の内容もほぼ日本語 を介さずに理解することができるようになっている。逐語訳よりもむ しろ内容理解・背景理解に重きを置いている。iPad・電子黒板の導入 により映像を扱うことも容易になったため、Lesson6 ではバグパイプ、 Lesson7 では車いすバスケットボールについて映像で紹介した。 *教科書本文を繰り返し音読した後、 「穴あきプリント」で英訳練習。日 本文と英文の文構造を比較しながら英文を作り上げる経験を積む。 ⑩プレゼンテーション *車いすバスケットボールについて学習した際にパラリンピックについ ても紹介した。選手にはそれぞれ can’t(できないこと)と can(できるこ と)があることを確認し、各グループでパラリンピック選手を取り上げて紹介するプレゼンテーションを行う。 3 その他の取り組み *前期中間のまとめとして、自己紹介のプレゼンテーションを実施した。 *前期期末のまとめとして、絵本作りを課した。 自分で主人公を決め、その人[物]に関するストーリーを創作。当然文法の誤りは多いが、未知の語句は辞書を 引きながらも書いた様子がうかがえる。こういった表現活動では、文法ありきの英文ばかりで誤りを恐れるよ りも、内容ありきのものを創出できるようにと声を掛けている。 「表現したい」という意欲こそ大切と考える。 81 アクティブラーニング 実践報告 「アクティブ・リーダー(能動的な読み手)」となるための実践 向山 真美(英語科) 授業担当クラス:高1英語 I (女子部理数コース、普通コース) 教材:Crown English Communication I (三省堂) 1:目標 (1)基礎的・基本的な知識・技能 *本文中の単語・熟語の意味がわかり、運用ができる。 *本文中の新出文法事項を理解し、正しく文章が理解できる。 →英問英答・正誤問題・和訳等によって確認する。 (2)思考力・判断力・表現力 *本文の内容を別の言葉で言い換えたり、まとめたりできる。 *登場人物の主張・心情を理解することができる。 →空所補充形式で要約文を完成させる、要約文を自分で書く。 →登場人物の活動内容・心情また筆者の主張を理解したうえで、他者・社会にそれを伝えたり自分の意見 を述べたりできる active reader になる。[HP 作りやスピーチなど] (3)主体性・多様性・協働性 *自分の理解・意見を、ペア・グループで表現することができる。 *自分がこれから実行できることを具体的に考え、それを表現することができる。 2:授業 [1]Lesson 6 : “Roots & Shoots” --- The least I can do is speak out for those who cannot speak for themselves. (Jane Goodall) ○本文概要と指導目標 本文はチンパンジーの行動研究家であり環境保護活動家でもある Jane Goodall 博士へのインタビュー記 事である。生き物が相互に関連しあっている自然界の頂点にいる人間として、環境問題を懸念しつつも世 界的に保護活動を行い、その解決を若者に期待していると博士は述べている。まさにその若者である生徒 たちに、その主体的な担い手となることを促すことを目的としてこの課を読んだ。 ○学習内容 「自分が、Goodall 博士が立ち上げた Roots & Shoots という団体のメンバーであると仮定して、この団体 にほかの若者を勧誘するスピーチをする」というタスクを行った。本文中に We now have groups all over the world and each group chooses three projects: one to help people, one to help animals, one to help the environment.という発言があるので、具体的にこの3点についてどのような活動をしているかという ことをスピーチ内容に含めることとした。さらにそのスピーチを受けて、聞き手から出される質問を2つ 予想し、それぞれに対してどのように答えるか想定問答を考えさせた。 ○授業の流れ(Lesson 6 4時間目) (1)ターゲット英熟語小テスト(10分) 学年共通教材の英熟語集から。 「英語を書く・意味を選ぶ・英語を選ぶ」の3形式による。どの形式によ るかは各熟語の難易度によって問ごとに決める。問題配付と解答・自己採点・回収を10分間で行う。 (2)自習教材回収(3分) 多読および解答作成練習のため、週に2枚の自習教材を課している。添削し、後日解答・解説とともに 返却する。 (3)前時学習の Section 3 の音読・復習(10分) 82 ア) 自然なリズムと音で読むことを意識させるため、音の連結・脱落やイントネーションが記入されて いる音読シートを作成。individual reading ののち、ペアで聞きあって互いの読みかたをチェック。 イ) 環境問題について Goodall 博士が指摘していることを列挙させる。 (4)本時の課題 Section 4 ア) 音読、文構造の確認、roots, shoots の比喩表現理解を図示にて確認。(10分) イ) 勧誘スピーチの下書き。途中で交換して読み比べることで、考えの発展を促す。 (13分) (5)宿題指示(2分) スピーチを完成させてくる。(次の時間では、最初にペアでスピーチの練習、次に4~5人グループで輪になり グループ内発表を行い、内容と話し方について相互評価シートに記入。ペアとグループでは相手との距離が違うの で声量が変わることを意識させた。各グループで優れていた生徒1人を選び、全員の前でスピーチさせた。これは Lesson 8 で全員がクラスに向けてスピーチする手本とするためでもあった。) [2]Lesson 8 : “Not So Long Ago” --- Those who cannot remember the past are condemned to repeat it. (George Santayana) ○本文概要と指導目標 本文は「20世紀回顧写真展」で展示された、被爆死した弟を弔いに来た少年の写真と、ベトナム戦争で 戦火から逃れて走る裸の少女の写真を紹介した文章である。戦争を直接は知らない世代にとって、戦争と は実際にどういうものであるか、庶民の生活・人生をどのようにするものなのかということを、写真の人 物の心情にできるだけ寄り添い、そこから考え感じたことを心に刻みこむことをねらいとしてこの課を読 んだ。 ○学習内容 「自分が、この写真の少年であると仮定し、i) 弟に向けて ii) 国の指導者に向けて iii) これからの自分に 向けて、という3点のいずれかを選び、自分が今考えたり感じたりしていることをモノローグ形式で書き、 全員の前で語る。 」できるだけ原稿を見ないで 90 秒間の制限時間いっぱい話すように指示した。 ○授業の流れ(Lesson 8 2時間目) (1)Free Talk(5分) “What country or city would you like to visit? Why?”という題でペアのフリートーク。とにかく2分間、 話をつないでいく。話すことがなくなっても、うまく話題を発展させる。熟語小テストのない日のウオー ムアップ。 (2)自習教材回収と(3)前時の音読・復習は Lesson 6 と同様に行った。Lesson 8 Sec.1 は2つの段落の topic sentence をそれぞれ探させ、それを音読・暗唱した。(7分) (4)本時の課題 Section 2 ア) 音読、文構造の確認(5分) イ) 写真の日の前日を少年がどのように、またどのような気持ちで過ごしたか、親はどこで何をしている かなど、文章から読み取れるところは読み取り、書かれていないことは想像して答える具体的な問い を列挙したシートにグループで話しあって記入。幼児の重さほどのリュックを生徒に背負わせ、重さ [ないし軽さ] を実感させる。この場面の少年の心にできる限り近づくようにした。(8分) ウ) 理解・想像が進んだところで、速さ・強弱によってその理解・想像を反映させた音読を行う。(5分) エ) モノローグの下書き。途中で交換して読み比べることで、考えの発展を促す。(13分) (5)宿題指示(2分) モノローグを完成させてくる。(続く2時間を使って、全員が発表を行った。評価は Lesson 6 と同様にシートに 記入。i)と iii) を組み合わせた者が多かった。生徒にとっては人前で、英語で、しかも時間いっぱいという条件で 語るのは大変なことである。伝えたいという気持ちはわかる発表であったが、英語らしく勢いをつけた発声ができて いない者が目立っていたのが今後の指導課題である。さらに、批判的な視点で読むことも次の学期・学年では試みた い。) 83 アクティブラーニング実践報告 「AL×ICT~三角形の合同と証明の場合~」 鈴木謙作 (数学科) 授業担当クラス:中1幾何・中1代数・中2幾何・中3数学 P(男子部) 1:目標 (1)基礎的な知識・技能 ① 三角形の合同条件を正しく理解する。 ② 図から読み取れる既知の事実と、推測できるが裏付けがない事実とを区別する力を養成する。 ③ 論証過程において、事実とその裏付けについて検証する態度を身につける。 (2)思考力・判断力・表現力 ① 証明問題の演習を通して、論証力・記述力を養成していく。 ② 証明作成において、証明の意図が伝わりやすい記述を心がける。 (3)主体性・多様性・協働性 ① 他者の答案に触れることで、多角的に論証を検証する力を養う。 ② 他者からの評価を受けることで、証明作成段階において、他者が論証を読むことを意識できるようにな る。 2:授業の流れ (1)課題点検(5分) 毎回2題程度の証明問題を課題としている。この取り組み状況を机間巡回によって確認。自分の答案(自 分が考えたもの)がない状態では、授業の意義が薄れてしまう。このため、答案を自作する労を惜しまない よう常々指導している。 (2)課題解説(10分×2題=20分) (1)を踏まえて、紹介するのに適当と思われる答案を紹介する。 ここで利用するのが、電子黒板と iPad である(本教室には電子黒 板が設置されていて、教員には iPad が貸与されている) 。iPad で 答案を撮影し、それを電子黒板に映写する。この授業で使用した のは「Explain Everything」という有料アプリである。プレゼン テーションツールとして非常に有用であり、撮影した素材の加 工・配置が容易に行える。 電子黒板に映した生徒の答案を検証・解説していく。生徒に解 説をさせる取り組みも行っている。 (3)新しい主題を有した問題の解説(15分) メインとなる問題の解説を行う。ここでも ICT を利用して、時間短縮を心がける。 (4)演習・課題指示(10分) (3)を踏まえて、問題演習を促す。終業までに終わらない場合は、次回までの課題となる。 3:工夫している点 (1)ICT の活用 ① 時間を短縮:ICT の活用で最も成果を上げているのは、板書量が大幅に軽減される点だ。 「デジタル教材」 84 の準備は、従来の教材を刷新しなければならず、作成にも手間がかかると考えられている。しかし、既 存の教材をデジタル化して、それを電子黒板に映し出すだけでも、板書時間の節約となる。また、教員 主導による証明問題の解説は、非常に時間がかかる。しかし、ICT(電子黒板と iPad)を利用すること で、生徒の答案を瞬時に共有できる。フィードバックにおいても、従来の方法は、⑴生徒による板書 ⑵ 提出させたレポートのコピー配布などの形式が考えられるが、⑴は授業時間を割き、⑵も事前の手間が かかる。また、⑵においては、私が解説するときにやりづらさを感じることがあった。プリント配付と いう形式では、同じ情報を個別に共有はしているが、一斉に同じ対象を見ているわけではないので、実 質は口頭での説明のみになりやすい。この点にやりづらさを感じていた。ICT はこの点を見事に解消し てくれる。 ② 共有が容易:生徒が取り組んだ「成果物」を、クラス全体で共有することは教育活動として大きな意義 がある。しかし、時間がかかるため、授業をデザインする上で取り入れることが難しかった。ICT の利 用によって、これが容易になった。 生徒の答案を iPad で 撮影。瞬時に電子黒板に 映し出すことができる。 直接、電子黒板に書き込 むことが可能であるため、 そのまま解説することが できる。生徒の答案を共 有するにしても、生徒に 板書させる必要がない。 (2)ペアワーク・グループワークの実施 答案の評価:授業で問題演習を行う場合、答案を自作させた上で模範解答を示して、その解説を以って学習 の帰結とするのが、スタンダードな形式である。しかし、自らの答案の正誤の検証にとどまらず、他生徒の 答案に対して見解を持って議論することを促している。様々な答案を協働で検証し合うことが、論証力の伸 長に結びつく。このことで、より客観的な見地から論証を構築していく力が培われていく。 4:成果と考えられる点 (1) フィードバックによるモチベーション向上:自分の答案が広く共有されることは、生徒にとっては喜 びの一つであり、学習のモチベーションを上げる大きな材料に成っている。 (2) 論証力の向上:他者が作成した様々な答案に触れることで、論証の要点を掴む力がつく。これは、正 しい答案・良い答案に触れる場合はもとより、誤った例・良くない例に触れた場合にも効果がある。 「なぜこの場合は正しくないのか」「なぜこのように考えてはいけないのか」という失敗を通して学 ぶことは少なくない。 「失敗の共有」による教育的成果と言える。 5:克服すべき点 これまで、数学は「紙と鉛筆だけでできる学問」と言われ、手を動かすことで思考力が磨かれるとされて きた。こうした考えに基づいて、思考力の研鑽に主眼が置かれると、個別に問題と向き合う時間を多く取る べきということになり、共に学ぶ他者を意識する機会が少なくなってしまう。個別に問題と向き合うことも 大切であるが、思考の成果をわかりやすく他者に伝えることも大切だ。 「思考→記述→発表」の流れは、AL 型授業の王道を行くものである。しかし、数学(特に中学段階)で は「発表」まで至る取り組みを考えるのは、難しい。現在の数学教育においては、概念の理解・その応用を 以って、目的完遂と考えている傾向がある。 85 アクティブラーニング実践報告 「方程式」 教材:「体系数学」(数研出版) 小川 陽子(数学) 授業担当クラス:中1数学(女子部理数コース・普通コース) 1:目標 ⑴基礎的・基本的な知識・技能 *教科書レベルの1次方程式を速く正確に解くことができる。 *教科書レベルの連立方程式(2元・3元)を速く正確に解くこ 単元における学習の流れ ①導入 ②方程式とその解 ③1次方程式の解き方 ※多項式と方程式の違い ④1次方程式の利用 ⑤連立方程式とその解 ⑥連立方程式の解き方 ⑦連立方程式の利用 ⑧問題作りコンテスト とができる。 ⑵思考力・判断力・表現力 *様々な計算方法の中からよりよい解法を判断し、工夫できる。 *日常生活の事象を数式に直して捉え、問題解決にあたることができる。 *鶴亀算、1次方程式、連立方程式等の解き方の関連性と、それぞれのメリット等を考察することがで きる。 ⑶主体性・多様性・協働性 *ペアワークで意見交換できる。 *グループワークで意見交換したり協働作業したりすることができる。 2:授業の流れ Ⅰ単元における学習の流れ ③1次方程式の解き方 ⑴小テスト(10分) :前回の学習内容の定着確認 *小テストの実施。 (7分程度) *ペアで交換採点を行い、間違えた部分を教え合う。教員は解法を教えず答えのみ伝える。(3分程度) *時間内に終わらなかった生徒が自宅で復習できるよう、生徒の答案をロイロノートで配信。 答案は自己・他者による推薦。もしくは、教員による指名。 <実際の配信画面> ⑵かっこ・分数・小数を含む方程式の解き方(30分) *1グループ3or4人によるグループワーク。 *まずは1人で計算問題を解く。計算力に自信があるのか、係数を分数・小数にしたままがむしゃらに 計算する生徒が多数(期待通り) 。教員は常に机間巡視を行い、各グループに1人は工夫して計算して いる生徒がいることを確認。場合によっては少しだけ誘導する。 *グループ全員終わったら答え合わせ。グループでノートを見せあい、より速く正確に計算できる方法 がないかを考える。よりよい方法を見つけた場合は解きなおす。他者に自分の答案やノートを見せる ことで、採点者に伝わりやすい書き方を常に意識させる。 *常に机間巡視をするが、基本的に教員は教えない。どうしても困った場合のみ挙手させる。 *個人→グループ→個人の流れを作り、最後の「個人」では自分の中に落としこむ作業に重点をおく。 *「なるほど!」 「分かった!」という声が多数聞こえた。 86 ⑶確認テスト(10分) :本時の学習内容の定着確認 *実施後グループで交換採点を行い、小テスト同様間違えた部分を教え合う。最後に本時のまとめ、意見 交換を行う。 Ⅱ単元における学習の流れ ④1次方程式の利用 *小テスト、確認テストの実施はⅠ同様。 *教科書にある基本的な文章問題(代金・過不足・距離・食塩水)を確認後、より日常生活に即した文章 問題をグループ演習。 (例)あるお店で、ハンバーガー単品が○○円、ポテト単品が○○円、ハンバーガー1個とポテト1個の セットが○○円で売られている。1日に作るハンバーガーとポテトの量は決まっており、すべて売り 切れるとする。1.一日の売り上げ金額から、ハンバーガー・ポテト・セットがそれぞれいくつずつ 売れたのかを考える。2.お店が特別キャンペーンでハンバーガーとポテトの単品を値引きした。売 り上げ金額の増加等の問題文の条件より、値引き価格を考える。 *問題の難易度が鍵である。簡単すぎるのも、また、議論しても答えが出ない程難しすぎるのもダメ。少 し頭をひねれば解けるレベルが一番効果的である。 *文章をよく読み取り、何を文字で表すべきか、式を立てるのに必要な情報は何か、各グループで活発に 議論し答えを導きだしていた。 *この活動を通じ、 「 単元における学習の流れ ⑧問題作りコンテスト」に繋げたい。ここでは次 の2つの力をみたい。一つはロイロノートを用いて発表することで、日常生活の事象から方程式の文章 題を作る過程を他者に分かりやすく伝える表現力。もう一つは問題作成における条件の不足等に気付き、 再考察する思考力。 3:その他、実践例 *授業開始時の小テストの代わりに、前回学習した内容等のフラッシュ暗算ドリルをロイロノートで全員 に配信。ペアになり問題を出し合う。授業開始時に皆で声を出すので、教室に活気が出る。 <フラッシュ暗算ドリル(15~20枚程度配信)> *発展的内容をまずは個人で考え、その後グループで話し合い、答えを導きだす。さらに、各グループ1 題ずつロイロノートで解説を作り、電子黒板を利用して発表する。 <発表時に生徒が作成したロイロノートの一部> 87 <グループ演習時の生徒の様子> アクティブラーニング 実践報告 1の3乗 根 ωの特 徴 を考 えよう 袴田英康(数学科) 授業担当クラス:高1数学(男子部理数科) 1:目標(学力の3要素との対応から) 教材 数学Ⅱ「複素数と方程式(高次方程式)」 数研出版 ⑴基礎的・基本的な知識・技能 *数の範囲を複素数まで拡張する意義を理解する。 *複素数の四則演算ができるようになる。 *2次方程式の解の種類、判別式、解と係数の関係を、複素数まで拡張する。 *高次方程式を、因数分解、解の公式、因数定理を利用して解くことができる。 ⑵思考力・判断力・表現力 *基本的な複素数計算を、既習の展開・因数分解を利用して解く。 *2次方程式を複素数の範囲に拡張して解くことができる。 *解と係数の関係を、複素数の範囲や、3次方程式まで拡張する。 *因数定理・組立除法を利用し、高次の式を因数分解できるようになる。 ⑶主体性・多様性・協働性 *ペアワークで意見交換できる。 *グループワーク( 6 ~ 7 人グループ)で協働作業・話し合いができる。 *自分やグループの考え方を、全体にわかりやすく発表することができる。 →発表は黒板、まなボード、紙などを適宜使用。授業時間を跨ぐときは、印刷し配付することもある。 *振り返りができる。 2:授業の流れ 単元:数学Ⅱ 複素数と方程式(12 時間目) ⑴前時の確認《 7 分》…確認問題( 2 問)。 *前時の高次方程式解法の確認。 (ペアで答え合わせ。間違いは教え合い。) →自分の考えを相手に伝える。 →相手がわからないところを、わかりやすく教える。 →相手の考えを素直に聞く。 単元における学習の流れ ① 複素数 ② 2次方程式の解と判別式 ③ 解と係数の関係 ④ 剰余の定理と因数定理 組立除法 ⑤ 高次方程式(本時) 3次方程式の解と係数の関係 どのように伝えれば、相手が理解しやすくなるかを考える。 →記述答案の書き方に発展させることができる。 ⑵発表《 3 分》 ※発表者を乱数ソフトで決める。そのため、各自が緊張感をもって話し合うことができる。 *確認問題の解説を、黒板を利用して行う。 声の大きさ、話す姿勢、簡潔に伝える力などに注意させる。聞き手の態度も大切であると指導。 ⑶課題《 15 分》 【本時の課題】 高次方程式の虚数解の中で、1 の 3 乗根については、重要であるにもかかわらず、教科書では 1 行の 記述、1 問の出題のため印象に残りにくい。記憶に残りやすくするために、発見学習のスタイルをとった。 確認問題 𝑥 3 − 1 = 0 を変形した 𝑥 3 = 1 から、本時の課題を指示。 𝑥 3 = 1 の虚数解の 1 つを ω とする。 ω について、わかること、関係式など、 できるだけ多くみつけよう。 *まずは、個人で考える( 3 分) 。 88 *グループになり、さらにリストを増やす。 *グループ毎に色分けした厚紙(カード)を配付し、記入させる。 *誰が指名されても発表できるように、グループ内で共有する指示を出しておく。 *はじめに数個出ると、出尽くした感じをもつグループが出てくる。多く出ているグループの個数を伝える ことで、もっと探そうとする意識をもたせる。 →教科書、参考書、電子辞書で調べる生徒もいた。 ⑷まとめ《 23 分》 【発表】各グループで出た内容を発表する。黒板にカードを貼っていく。 →自分たちの言葉で説明できるように促す。 →既に出ている他のグループのカードと類似しているところがあれば、近くに貼っていくように指示した。 *教員による解説。 (生徒から出るのが一番だが、初めてのωなので、厳しかった) 単なる発見にとどまらないよう、今後の演習問題につながる考えを強調した。 → 𝜔2 +𝜔+1=0 と 𝜔2 = − 𝜔 − 1 は同じ式と生徒は分類したが、前者は式の値など、後者は次数 下げの手法などに使える。 → 𝜔3𝑛+2 + 𝜔3𝑛+1 +𝜔3𝑛 = 0 も 𝜔3 = 1 を用いれば上記の式になる。このような問題も多い。 → 虚数解のどちらを ω とおいても成立し、𝜔2 = 𝜔 という関係もある(1グループ発見) 。 → 「𝜔2𝑛 + 𝜔𝑛 + 1 は 0 or 3 である」を発表したグループあり。 次の授業での演習課題とする。 ⑸振り返り《 2 分》 *自分の発見に新たな発見を追加し、まとめる。 *気づいた点・学んだこと・感想を書く。 3:工夫しているところ ★必要に応じて、ペア・グループ・ミニティーチャーなど、手法を変えて行っている。 ★結果が明らかな教科なので、初めに答えが出ると他の意見が出なくなってしまうため、時間のあるときは、 まなボードを利用し、グループで自由討論させる。今回は、類似の式がたくさんでることが予想できるため、 分類しやすいようにカード形式とした。 ★演習問題は、毎時、プリント課題で行っている。解説でプロジェクタを使うこともある。理解が深まって いるかは、演習問題で確認。 4:課題 △説明をしすぎてしまうことがある。 △手元には教科書と問題集だけなので、調べ学習ができない。 △問題演習は、家庭学習に頼ることになる。 89 アクティブラーニング 実践報告 学齢に応じた古文授業実践 ~「現代語訳」を中心に~ 西口安紀(国語科) 授業担当クラス:中等教育学校2年 国語 《古文読解》教材: 『宇治拾遺物語』第 52 話「狐、家に火をつくること」 ( 『日本古典文学全集』よりプリント教材) 今回の授業の意図 古文授業を行う際に、 「現代語訳」は避けて通れないものである。しかし、授業内で一文ずつ解釈を行ってい く従来の方法では、意欲がある生徒とそうでない生徒に差が生じ、ともすれば退屈で、機械的な授業内容に なってしまう。全文訳を「課題(宿題) 」にできない「古典初心者」に、どうやって現代語訳を指導していく か。そしてそれを主体的な文章読解にどうやってつなげていくか。AL型授業で行った試みについて報告す る。 生徒の学習状況 ・古語辞典は5月に購入したばかりで、9月の定期考査までは『徒然草』の短い文章を一題扱っただけであ る。現代語訳に挑戦したのは短文のみで、本教材のような長さの全文訳をしたことは一度もない。 ・習熟度別クラスになる前のHRクラスで行う古文授業であるため、生徒の国語力にばらつきがある。 ・グループワークは何度か経験があるが、前に出て発表するというのは他の授業も含めて今回が初めてであ る。 1:目標(学力の3要素との対応から) ⑴基礎的・基本的な知識・技能 *一文を単語に分けることができる。 *活用のある語は終止形に直し、分からない語を古典辞書で調べることができる。 ⑵思考力・判断力・表現力 *読解する力:①主語を確定しながら文章全体を俯瞰し、大意を把握することができる。 ②調べた古語の意味を、文脈にあわせて選択することができる。 *表現する力:既習の助動詞の意味を確定することができ、現代語訳において前後の文脈を考慮しながら、 自然な日本語で表現することができる。 ⑶主体性・多様性・協働性 *グループワーク(4、5人グループ)で協働作業ができる。 *グループワークでわかりにくい箇所について、それぞれの解釈を提示することができる。 *グループワークで解釈の分かれた箇所を、一つの解釈に集約することができる。 *作業を行ったグループで、自分たちの解釈を協力して発表することができる。 2:授業の流れ 全9時間 ⑴現代語訳作業《5 時間で実施》 *まず、一文を単語に分け、分からない語は辞書で調べる。 *長い一文の際は接続助詞に注目させ(未習内容)、訳し方を提示。 *机間巡視をしながら、作業が止まっているグループや作業に取り 組めない生徒がいるグループに具体的な課題や対処方法を指示。 授業における学習の流れ 《現代語訳作業》 ①漢字テスト(13 分) ②既習事項の助動詞小テスト(ず・き・ けり・つ・ぬ・たり・り・なり) (13 分) ③現代語訳作業(20 分) ④まとめ、予告(3 分) ●上記の内容をくり返していくと、最初の2時間でグループごとに「流れ」ができあがった。作業の方法と しては、分担で語訳を進めていくグループと、全員が語訳したあとにすりあわせを行うグループの2種類 に分かれた。また、一部の生徒たちだけで作業を進めるグループには、全員が仕事をする状態になるよう 指示した。 ●人間関係があまり良くないグループは、どうしても個人プレーに走りがちで、チームワークが生まれにく い。そのようなグループには「分担」制を薦め、最終的には全員が全文を確認する流れになるよう指示し た。 90 ●現代語訳を進めていくうちに、単語の解釈やわかりにくい表現の解釈で作業が 止まったり、意見が分かれたりするようになる。初学の段階ではこの課題のク リアが「活用Ⅰ」に相当すると思われる。難度が高い箇所は、前後の文脈の中 で判断できるようなヒントを出した。 ●現代語訳作業が5時間というのはやや長いが、実力テスト前で小テストに 本文プリント 生徒は全文訳をするが、発表はこのよ うに区切ったところを担当した。 長く時間を割いた関係上、このようになってしまった。30分の作業時間 があれば、3時間で可能であろう(生徒の作業集中力としては30分が限界)。早く終わったグルー プには難しい箇所にチャレンジさせたり、発表の段取りを話し合わせたりした。 ⑵発表《4 時間で実施》 *全部で9グループあるため、全文を九カ所にわけ、一文あるいは 接続助詞で区切った文節を1グループの担当分とした。一文の途 中で交代する場合は、前後のつながりも考えた現代語訳ができる よう工夫する。 *指名されたグループは全員前に出て、 「本文を黒板に書く生徒」 「現 授業における学習の流れ 《発表》 ①既習事項の助動詞小テスト(ず・き・ けり・つ・ぬ・たり・り・なり) (13 分) ②前回の現代語訳の修正点、振り返り (5 分) ③生徒による発表(1 グループ 5 分×3) ④教員による解説(10 分) ⑤評価シート回収、予告(3 分) 代語訳を黒板に書く生徒」 「単語の区切りを書き込む生徒」などに 分かれ、黒板の準備ができたら「解説をする生徒」が発表を開始する。 *本文の記述を根拠に、自分たちの現代語訳が説明できる。 *次のグループは前のグループの続きに書くようにして、文章の流れが見える ように意識する。 解説をする生徒のほか、本文を示す生 徒、現代語訳を示す生徒と、分担して 発表を行う工夫が見られた。 *発表の終わりに質問を受け付けたが、生徒たちの間だけではなかなか手は挙がらなかった。誤答や説明が 不十分な箇所について、授業担当者が解説をした際には、指名した生徒が「自分のグループでの解釈」を 述べることはできたので、今後は生徒たちだけでやりとりができるところまでを目標にしたい。 *「評価シート」を配布し、発表準備の待ち時間や発表中に、 「誰が何をしたか」まで書くよう指示した。待 ち時間に騒がしくなったり、発表をきちんと聞けなかったりする生徒のために途中から始めたが、発表が 終わっていないグループは、発表態度を意識することも出来て一定の効果が見られた。 ●緊張感を持たせるため、直前に担当グループを指名した。ただし、早く終わり解釈も正確だったグループや、 全員が主体的に現代語訳作業に向かっていたグループに、最も難しい箇所を担当させた。 ●前時の現代語訳は授業担当者が電子黒板で表示し、修正した現代語訳には赤線を引いて示した。この現代語 訳を電子黒板に映した状態で、続きを黒板に書かせるようにした。 ●初めは「これから発表を始めます」 「以上で発表は終わりです」も言えず、聞く側の姿勢も全く良いものでは なかったが、発表が終わるごとに「何が良かった」のか、 「何が良くなかったのか」を指摘し、評価シートを 記述させることで、少しずつ「発表」らしい形ができあがっていった。 ●回を重ねることで、こちらで提示した「仕事」以外の動き(解説者の内容に合わせて本文を示す、二人に分 かれて発表を行うなど)を行うグループも出た。今後も発表の場を設けることで、プレゼンテーション能力 の育成につなげていきたい。 3:所感・課題点 ★グループワークでの現代語訳作業は、これまでにないほど集中し、意欲的に取り組んでいた。はじめに「発 表をする」というゴールを示したのも良かったのかもしれない。発表が始まってもいわゆる「丸写し」系の 現代語訳は出なかった。個人差はあるものの、ある程度当初の「主体的な読解」を行うという目標は達成で きたと感じている。 ★一方、いざ発表となると作業時との落差に驚かされた。やはり、従前から言われているように「発表」は 「はじめ」が肝心で、発表者の「公」への意識や、聞く側の主体的で厳正な姿勢などは、学年や期の始めに 教え込んでおかなければならないということを痛感した。授業秩序については言うまでもない。 ★個→全体→個という流れ(特に最後の「個」 )に落とし込めなかった。最後の「個」の部分は、これまでど おり小テストや考査で「定着」として確認を行う。 91 アクティブラーニング実践報告 主題へのアプローチ~小説の「構造」を生かす試み~ 梅原 南美子(国語科) 単元:『少年の日の思い出』ヘルマン・ヘッセ 授業担当クラス:中1国語(女子部理数コース・普通コース) 1:目標 (1)基礎的な知識・技能 *漢字の書き取り・読み「汚す(けがす) 」「下劣(げれつ)」 「繕う(つくろう)」 「呈する(ていする)」 *言葉の意味の習得「呈する・よしもない・色あせる・すんでのところ・さしずめ・~をたてにする」 (2)思考力・判断力・表現力 *情景描写が登場人物の心情と密接に関係することを確認でき、人物を表す表現や描写の方法によって、 伝えられる作品観に違いが出ることに気付く。 *小説作品の構成(構造)を理解することができる。 *初読後のあらすじ要約ができる。 (400字程度にまとめる。) *内容から段落分けができる。 *作品中の様々な対比( 「ぼく」と「エーミール」、 「ぼく」と現在の「客」 の比較)を通して主題にせまり、言葉で表現することができる。 (3)主体性・多様性・協働性 *ペアワークで意見交換できる。 *グループワークで協働作業・話し合いができる。 *振り返りができる。 第3時の課題 まなボードを使っての学習 2:授業 Ⅰ.単元における授業計画(全8時間予定) 1時 ①全文を読み、あらすじを要約する。 5時 ②初発の感想を持つ。 2時 情を読み取る。 ①疑問点から学習課題をたてる。 6時 ②場面構成・登場人物の確認。 3時 ヤママユガを持ち出す「ぼく」の行動と心 ①謝る「ぼく」の心情を読み取る。 ②チョウを潰す「ぼく」の心情を考える。 「客」にとって思い出がどのようなものか 7時 を考え、第一場面だけが現在であることの チョウをつぶす「ぼく」について考えを深 め、主題を考える。 意味を予想する。 4時 ①チョウ集めに熱中する「ぼく」の様子と エーミールの人物像に迫る。 8時 考えた主題をもとに、作品紹介のポップを 作成する。 ②二人のチョウに対する姿勢の違いを確 認。 Ⅱ.授業の流れ(7/8時) (1)1分間スピーチ~iPad(ロイロノート)を使ってプレゼンテーション~ ≪8分≫ 4月当初から週2回程度実施。これまで4つのテーマで実施している。今回は「自分の名前の由来」を 92 テーマに各自がロイロノートで10枚前後のカードを使って発表。聞き手の他の生徒たちは配付済みの『ス ピーチ記録ノート』にメモをしながら評価し、最後に数名の生徒が感想を述べたり批評したりという形式。 教員のコメントも必ず入れる。 (2)前時の確認 ≪2分≫ 前回の授業においてチョウをつぶす「ぼく」の行動と心情について出された様々な意見をまとめたもの を電子黒板に映しだし、生徒それぞれに自分の考えを改めて確認させる。 (3)本時の中心課題に取り組む ≪25分≫ 【学習課題1】 (2)を踏まえて、それを深めつつ主題につなげるべく課題に取り組む。第2時で扱った、作 品の構成を意識させるための発問として次の課題を提示。 作者はなぜ、「客」が少年時代の思い出を語るのにあえて「わたし」と回想する形にしたのか? ⇒「オツベルと象」 「トロッコ」など既習の作品の構成(構造)の学習を踏まえた活用Ⅰを意識した問題。 *予想する形で個人で考えさせ、わかった生徒からロイロノートで送らせる。全員が出来なくても5分後に 順次紹介しながら、クラス全体で共有する。 【学習課題2】解答の中に、 「ぼく」の少年時代と大人になった現在を比較するものが出てくると予想される ので、そこに注目させ、次の課題を提示。 少年時代にチョウを押しつぶした「ぼく」と現在の「客」としての姿との共通点と相違点を考えてみよう。 *グループワーク(4人)で取り組む。各生徒に司会、記録などの役割を与え、必ず全員が自分の考えを発 言することを義務付ける。 *各グループが1分以内で発表できるようまとめることを指示。 (4)グループ発表 ≪10 分≫ (5)作品の主題を自分の言葉でまとめる≪5分≫ *生徒それぞれが、自分の受け取った作品のテーマを簡潔な言葉にして表現する。長くても30字程度に収 めることを指示。⇒次時の活動につなげるため。 *常に授業の最後は個人活動で終わらせるよう心掛けている。時間内に書き上げられなかった生徒に対して は、次の授業までの宿題とする。 ◆次時(第8時)でこの作品を小学生に紹介するポップをロイロノートで作成する。ポップの作成はすでに 自由作品で経験しており、今回は最後にまとめた主題を伝える相手を想定しての作成となる。 ⇒(活用Ⅰ:主題を考える)から(活用Ⅱ:主題を相手に伝える)へ Ⅲ:現状と今後の課題 ○4月当初に比べ生徒が活発に発言する機会が増えた。 ○電子黒板を使うことで、クラス全体が授業内容を共 有しやすくなったり、時間の短縮などのメリットが生 まれた。 ○グループワークやプレゼンテーションの機会が多い ので、生徒に授業に参加しているという充実感がある ようだ。 ○アクティブラーニングを取り入れることでカリキ ュラム達成のための時間が不足しがちになる。よっ てそれを補うための課題が増える。 生徒がロイロノートで作成したお薦め本のポップ 93 アクティブラーニング 実践報告 作 品 世 界 の共 有 、そして他 者 との出 会 い 川妻篤史(国語科) 授業担当クラス:高1現代文(男子部理数科・男子部普通科) 1:目標(学力の3要素との対応から) 《評論文読解》教材:竹田青嗣「いたずら」 (大修館「国語総合」教科書所収) 「まなボード」を使ったグループワークの様子 ⑴基礎的・基本的な知識・技能 *漢字(言葉の意味を理解した上で、書き取ることができる) *対比関係を示す言葉( 「しかし」 「むしろ」「~ではなく」)に注目できる。 授業ワークシート ノートとして個人思考メモ・グループ 思考メモ・振り返りを記入する。 *文末表現「~のである」に注目できる。 *同一内容の繰り返しに注目できる。 ⑵思考力・判断力・表現力 *まとめる力:形式段落を30字程度の一文で要約できる。 *くらべる力:対比関係を捉えることができる。 (一般論と筆者の主張) *批判する力:問題点を見出すことができる。 ⑶主体性・多様性・協働性 *ペアワークで意見交換できる。 *グループワーク(4人グループ)で協働作業・話し合いができる。 指名カード *振り返りができる。 2:授業の流れ 単元:評論文読解 竹田青嗣「いたずら」(6時間目) ⑴漢字小テスト《13分》…漢字テキストの指定した範囲(24問)から。 *グループで5分間漢字練習を実施する。 (取り組み状況をお互いに見せ合う) *小テストを実施する(漢字書き取り問題12問) *グループごとに交換採点を行い、平均点を黒板の集計表に書く。 *2回連続最下位になったグループには、授業外の特別課題。 単元における学習の流れ ①第1・2段落の要約 ②第3・4段落の要約 ③対比関係/人間によってルールの 束としての人間が作られる? ④自我はルールの束? ⑤第5~10段落の要約 ⑥⇒本時 ⑦第11~14段落の要約 ⑧いたずらでルールが形成される? →グループで協力し合う姿勢を育てる。1回目の最下位で対応策を検討することが大切と指導する。 ⑵前時の確認《5分》 ※プロジェクタを使って時間を掛けないようにする。 *前回の授業で生徒が書いた自由記述(疑問点・気づいた点)の振り返りを紹介する。 *本質をついた疑問・気づきを評価していく。 「人間が人間になるという文の人間に「 」がないのはなぜ か」という質問が出たことを紹介し、この問題を本時の授業で扱うことを告げ、課題①に移る。 ⑶課題①《15分》 【課題内容】 「人間」 (カギカッコあり)と人間(カギカッコなし)について、あなたはどちらの存在でありたいか。 ⇒活用Ⅱを意識した問題。自分自身の問題として考察させる。最後に振り返りで再度同じ問題を考える。 *ペアワークで音読する(句点で読み手が交代する) 。→相手の読みを聞くことを大切にするよう指導する。 *個人で答えを考える。 「授業ワークシート」にできるかぎり根拠をメモするよう指示する。 *ペアで意見交換する。自分の意見をお互いに言い合い、根拠も説明するよう促す。 *指名された生徒が発表する(指名時は「指名カード」を用いる) 。結果は、ほぼ半数に割れた。 ⑷課題②《15分》 【課題内容】 「人間」 (カギカッコあり)と人間(カギカッコなし)の違いについて、説明せよ。 ⇒活用Ⅰを意識した問題。教科書中にない自分たちの言葉で説明できるように促す。 *個人で答えを考える。 「授業ワークシート」にできるかぎり根拠をメモするよう指示する。 *グループで話し合い、 「まなボード」に答えを書いていく。 →誰が指名されても発表できるよう答えとその根拠をグループ内のメンバーで共有するよう指示する。 94 *各グループの「まなボード」 を黒板に貼る(写真参照) 。 *指名された生徒が前に出て 発表する(根拠も説明する)。 *教員が解説する。プロジェク タをつかってできるだけ短 く済ませる。 ⑸振り返り《2分》 *課題①についてもう一度考え、その答えを書くよう指示した。⇒多くの生徒がカギカッコありを選んだ。 ただし、カギカッコなしを選ぶ生徒もおり、その生徒たちの意見を次の授業で紹介した。 *「『学び』があった」 (内容面) ・ 「時間が短く感じられた」 (活動面)の2点について、◎・○・△・×で 自己評価する。これは生徒自身の反省材料であると同時に、教員の反省材料でもある。 *自由記述欄に疑問点・気づいた点・学んだこと・感想を書く。 生徒たちの意見をまとめた「現国通信」 3:工夫しているところ ★毎回ほぼ同じ流れで授業を行い、協働の場面を必ず作っている。 ★個人の思考→集団の思考→個人の思考という流れを大事にしている。 ★ノートの代わりに「授業ワークシート」を配付している。 →「ノートは思考の作戦基地」と位置付け、思考のプロセスをメモ するように指導している。 →ノートの内容が一人として同じものにならない点を評価している。 ★回収した「ワークシート」を「思考」 (内容面)と「記録」 (活動面) で評価する(◎・○・△・×の四段階) 。 ★「現国通信」を使って、授業時間内に扱えなかった生徒たちの意見 を取り上げる。 →これが生徒たちの「ワークシート」作成(とくに「振り返り」を 書く)のモチベーションになっている。 ★提示する課題の内容を吟味している。 →本文を読まざるをえないものにする。授業では生徒たちと作品を共有できるかどうかがカギになる。 →答えや意見が割れるものにする。 →社会に繋がる問題、自分自身に関わる問題として考えるきっかけになるような問いにする。 「習得→活用Ⅰ→活用Ⅱ→探究」の活用Ⅱを意識している。 ★「教員による解説」では、あえて「私の意見」 「私の考え」を表明することにしている。 ★必要に応じて遠慮せずに机の隊形を変える。 4:うまくいっているところ(生徒たちの感想から)⇒教室が「学び合い」の場となっている。 ◎「自分の考え方と周りの考え方の違いがあり、とても参考になった」 ◎「クラスのみんなの意見を本人の口から聞けたのが面白かった」 ◎「自分にはない考え方や意見を取り入れて、日常生活にも生かしたい」 ◎「意見が分かれてしまい大変でした。 」 5:課題点 △ついつい私がしゃべりすぎてしまう。教員による誘導になってしまう。 △授業の課題内容が生徒たちに合わず、不発に終わることも。活用Ⅱを意識した課題作りが難しい。 △「現国通信」の作成に時間がかかる。本当は生徒に作成させたいところなのだが。 △家庭学習に繋がるものになっていない。 95 アクティブラーニング実践報告 「動物のからだのつくりとはたらき」 宮本香菜子(理科 生物) 授業担当クラス:高1生物基礎(女子部) ・中1 生物(女子部) 1 目標 (1)基礎的な知識・技能 *教科書レベルの内容を知識として身につける。 *用語を漢字で書けるようにする。 (2)思考力・判断力・表現力 *アミラーゼの実験のそれぞれの操作の目的について考える。 *消化管の中でさまざまな栄養素がそれぞれ異なるしくみで分解されていく過程について考える。 *わたしたちが食物を摂ったあと、どのように消化・吸収され、全身 に運ばれていくのか、全身の細胞でエネルギーのもととして使われ るまでの一連の流れの中で考える。 *文章でまとめる力をつける。 *クラス全体に向けて内容をしっかりと説明できる。 (3)主体性・多様性・協働性 *まず自分でしっかりと資料から読み取る力をつける。 *他の人の意見をしっかり聞き、グループ全体で理解を共有する。 2 授業 Ⅰ 動物のからだとはたらき(アミラーゼによるデンプンの分解実験) ①4人グループで班をつくり、教科書、資料集を見ながらワークシートを埋めていく。わからない部分や資 料から探し出せなかった部分については班で共有して互いに教え合う。(20 分) 96 ②デンプンが消化管の内部で徐々に分解されていく様子について板書して説明する。だ液アミラーゼ、すい 液アミラーゼ、マルターゼという3つの消化酵素が消化管の異なる場所で分泌され、働いていることを理 解させる。だ液アミラーゼだけでどこまで分解されるのかを意識させ、次の実験に繋げる。(5 分) ③ワークシートの内容(デンプンの分解を確かめるアミラーゼの実験)について、当てられた班が答えを黒 板に板書し、実験の概要とどのような結果が予想されるのか、それぞれの試薬の特徴について班のメンバ ーが説明する。 (10 分) ④説明不足の部分や実験の本質的な理解について発問し、全体で共有する。 (10 分) 「だ液が入っている試験管には何が含まれている?」 「デンプンとアミラーゼが反応するとどうなる?」 「A と B の試験管の内部に存在する物質はそれぞれ何?」「40℃のお湯につけるのはなぜ?」 「お湯に 5~10 分つけなければどんな結果になる?」「80℃にすると?」 「0℃にすると?」 「ベネジクト液を入れて加熱すると何がわかる?」 「ベネジクト液の結果から言えることとヨウ素液の結果から言えることはどう違う?」 「どうしてデンプンと水を入れただけの試験管でも実験をやるの?」 「実際に実験をしてみて色が予想と違っていたらどんなことが言える?」 ⑤この実験結果から言えることについて、自分のワークシートにまとめる。 (2 分) ⑥数名を指名してクラスで共有し、この実験から推察できることについて全体で共有する。(3 分) Ⅱ ホタルの生態についてプレゼンテーション ①宿泊行事でホタルを観察する事前学習として、iPad 学習アプリ 「ロイロノート」を用いてホタルの生態についてプレゼンテーシ ョンを作成する。 「たくさんのふしぎ 2015 年 6 月号 川のホタ ル 森のホタル」の内容を空欄補充プリントで読み合わせ、自由 にホタルの生態についてまとめた。 (授業1回および家庭学習) ②4~5人で班を作り、班の中でそれぞれが同じ班の人たちに対し てプレゼンをし、良かった点、改善すべき点を出し合い、班で最 もよかった発表を決める。 (20 分) ③2~3班をまとめてグループ分けをし、グループのメンバーに向 けて②で決めた発表者がプレゼンをする。場所が広がるので、声の大きさや画面の見せ方など班で実践し たときと異なることを意識させる。ここでも良かった点や改善点について意見を出し合い、グループで一 番の発表を決める。 (10 分) ④電子黒板を用いて③で決めたグループの発表者がプレゼンをする。大きな画面を使えるので、強調したい 部分を拡大・縮小し、映像を最大限活用して説明をすることが可能となる。声に強弱をつけるなど、クラ ス全員を引き込むためのプレゼンを意識させる。 (10 分) ⑤勉強になったことやこれから自分がスライドを作る際に気を付けたいこと、発表者の姿勢として理想的な 形を振り返りシートに記入させる。最後に、ホタルは源流の澄んだ水よりも田んぼや畑の近くの日当たり のよい川に住んでいることを通して、人里近くに群生していた頃と今ではどのような環境の変化が生じて いるのかを考え、環境問題や都市化についても考えさせる。 (10 分) 3 全体を通して 授業では「生徒個人で考える時間」⇒「グループで共有する時間」⇒「クラス全体で共有する時間」⇒「個 人に戻って理解を深める時間」という個と全体を行き来することを意識している。まずは、学習内容を理解 するにあたって自分で学び取る姿勢をつくりたいので、ワークシートを自分たちで進める時間を多く割いて 授業を行っている。一番面白い部分は自分たちで見つけて汲み取ってほしいのだが、ワークシートの作り方 や発問の方向性によって意図した以上に深い議論になる場合と、全く取り組まれない場合があり、失敗を重 ねながら続けている。 全科目で AL を行っていることもあり、教室の前で説明することやプレゼンテーションを行うことに生徒 たちも徐々に慣れてきた。身近な友人の発表に触発されて内容もどんどんよくなっている。ホタルのプレゼ ンテーションでは「○○さんが~~という工夫をしていてわかりやすかった」 「こういう面まで調べていて面 白かった」 「~~という方向でスライドを作ると理解が深まった」というような意見が多く共有された。 97 アクティブラーニング 実践報告 課 題 作 成 、解 答 作 成 のチーム化 による他 者 の意 識 山城友幸(生物科) 授業担当クラス:高1生物基礎(男子部理数科・男子部普通科) 授業ワークシート ノートの補助、まとめに活用、授業の 板書内容が穴埋め形式になっている。 1:目標(学力の3要素との対応から) 《生物の恒常性のしくみ》 ⑴基礎的・基本的な知識・技能 *用語(ハイレベル:意味を理解した上で、他者に説明できる。 基礎レベル:意味を理解する。 ) *用語の関連付け(例:血糖値の調節における、フィードバック~ホルモン の分泌等、各項目ごとに用語どうしの関連付けができている。) ⑵思考力・判断力・表現力 *まとめる力:項目ごとの流れを、必要な用語を用いて説明文にできる。 *考える力:グラフや表のデータをもとに、起きている現象を考えること ができる。 *表現する力:用語や現象の説明文を他者に伝わるよう、話すことができる。 ⑶主体性・多様性・協働性 *ペアワークで意見交換できる。 *グループワーク(4人グループ)で協働作業・話し合いができる。 *ワークシートへの記入、復習が実践できる。 2:授業の流れ 単元:免疫(1 時間目) ⑴前時の復習《10分》 「血糖濃度の調節について、食後の高血糖状態における対応」 *グループで1分間前回のノートを復習する。 (協力して知識を確認する) *グループ内で 2~3 人組となり 1 分交代で、互いに説明し合う。 単元における学習の流れ ①~③肝臓と腎臓 ④~⑤自律神経 ⑥~⑦ホルモンによる調節 ⑧~⑨神経とホルモンによる調節 ⑩~⑬免疫 ⑭~予備(時間があれば演習) ※授業数が少ない場合は各項目を圧 縮して実施。(今期最低 11 時間) (表現力、用語の関連付けの相互確認) *グループごとに代表者を指名し、発表する。 (全体へ向けての発表の練習、他者の発表を聞く訓練) *説明に必要な要素が出尽くすまで、他グループの代表者を指名する。 (聞き取った発表へのフォローができるか) →グループ内の協力により、意見がまとまっていくことを認識する。 ⑵前時の確認《5分》 ※プロジェクターを使って時間を掛けないようにする。 *前回の課題(血糖濃度の調整全体図)をもとに、各自の理解を視覚的に 確認させる。 (時間的余裕があったクラスでは、撮影した作品例を示した。 ) ⑶「免疫」導入《10分》 【発問1】 「免疫」に関連して、自分たちが知っている単語を挙げよ。 (クラスの習熟度に応じて指定する数を変えた(1~∞)) ⇒まずは新しい分野へ興味関心を向けるための発問。もちろん正解 は無いので、互いに刺激し合うことで、一人では思いつかない用語 をできる限り引き出したい。 *各グループの間を回りながら、1つずつ単語を拾っていく。 →多少解答が的外れでも切り捨てず、とにかく拾う。互いの発言 をよく聞かせる。 *拾った用語を板書し、マインドマップ状につなげていく。 (良さそうなまとまりができれば、この時点で ワークシートの片隅にメモを取るように指示。) 98 【発問2】 「写真」に関連して、自分たちが知っている知識を挙げよ。 *プロジェクターに「ある野戦病院の風景」 「16世紀の絵画」 ある野戦病院の風景 「最近のニュース写真」を順に示す。スペイン風邪(インフルエンザ)、 ペスト、大村智先生について触れつつ、各自の知識を引き出していく。 感染症が人類にとって常に脅威であったという事実に目を向かせる。 *挙手、もしくは指名により発表する。 ⑷講義《20分》 【内容】 「免疫とは何か」 「物理的・化学的防御」 「自然免疫」 16世紀の絵画 ※プロジェクターを使ってテンポよく進める。 最近のニュース写真 *生物が病原体に対して生まれながらに持つ抵抗力を認識する。 *ただの穴埋めにならないよう、適度に発問や雑学をはさむようにする。 (穴埋め以外にも、自由にノートづくりをするように指示してある) ⑸まとめと次回予告《5分》 *我々は、自然免疫により自覚しないうちに病原体を退けている。自分たちのからだに備わっている能力 に気付かせる。 3:工夫しているところ ★ワークシートとパワーポイントで要点をテンポよくまとめられるようにしている。 ★基本的にペアないしはグループを組ませ、課題作成や発問に対する解答づくりを協働作業で進める。 他者の存在を常に意識させる。 ★提示する発問 →カギになる単語や現象について協働で考えさせ、印象を深めさせる。 →できる限り身近な話題(社会、実生活)に絡むようなものにする。 →予想外の生徒の回答を次の発問や話題につなげる。 4:うまくいっているところ(前期の生徒たちの感想から) ◎「他人の意見を聴けるのが良い」 ◎「グループでの課題作成が印象に残った」 5:課題点 △良くも悪くも、授業展開が、生徒の調子に左右される。午後や体育の後で疲れていたり、見学者の有無で 緊張感があったりなかったり等。 △他の授業も含め、パワーポイントの見過ぎで、目が疲れている生徒が見られる。 △家庭学習の課題を出しても、なかなか手が回っていない様子である。 99 アクティブラーニング実践報告 北真理子(理科:化学) (授業担当クラス)中学1年(女子部)普通コース、 高校1年理数コース(女子部)内進、高校1年理数コース(女子部)外進、 高校1年普通コース(女子部)内進、高校1年普通コース(女子部)外進 1.高 1 化学:「酸と塩基」 「中和と塩」(12 時間) 授業を行う際の留意点 (1)知識・技能 酸と塩基の価数・強弱・化学式を正確に覚える。pH にいついての計算。中和の化 学反応式が書けるようにする。(6 時間)中和の量的関係が計算できるようにする。(3 時間)中和滴定を実 際に行い食酢の濃度を計算し、実験操作を身につける(2 時間)。塩の水溶液の液性を化学式から判断す るようにする。(1 時間) 「酸と塩基」は教科書「化学基礎」で最初に履修する理論分野であるが、その 1 年以上後に履修する「化学平衡」を学んで初めて全てを理解することができる、という奥の深い分野 である。そのため、現時点ではなかなか理解するのが難しい。そこで、「酸と塩基、電離平衡」の内容 で作成したパワーポイントのスライドを生徒に配布し、生徒が疑問を持ちやすい内容について細かく説 明している。生徒の疑問点に授業で細かく答えるのは厳しいので、自宅学習で繰り返し見るように指示 している。当初、このスライドで授業する計画だったが、授業中に見せてみるとテレビを見るように受 身になっていたので、自主学習用に切り替えた。 (2)思考力・判断力・表現力・座学の知識と実験をつなげる 理科の問題文はそれほど長くはないが、 難易度の高い問題では、正確に理解するのに苦労する。これを理解するにはある程度問題演習の数をこ なすことが必要である。問題演習時には、状況を線分図や化学反応式を使って簡潔に整理して図示する 表現力が求められる。基本的な方法を教員が教え、それをペアワークで協力しながら段々と行えるよう にし、試験では一人で行えるようにする。問題演習はペアワークで行い、ペアで答えさせる。時間の許 すときは、なるべくペアに黒板前に出てこさせ、解答を発表させる。また、pH ジャンプや滴定曲線、 滴定に適した指示薬などは、意外にイメージが湧きづらいようである。教室での簡単な演示実験で、中 和の瞬間に pH が大きく変化する様子などを見せる。高校では、授業で扱う教科書の内容や問題集の問 題は、全て化学実験の中で起こっていることを数式などでまとめたものだが、その内容がある程度高度 であるため、生徒は実験と数式をリンクしたものと捉えることがなかなかできない。その点を実感しや すい実験を設定して、生徒実験として行わせることが重要となる。「中和と塩」は、重要なトピックで あるが、紙の上で化学式を書いているだけではイメージが湧かない。そこで、万能指示薬(pH1~14 を 14 種類の色の変化で示す)を用い、①塩の液性をその化学式から予想→②実際に万能指示薬で調べる、 の流れで実際的に学ぶ。(1 時間) (3)主体性・多様性・協働性 基本的には教員主導で、問題演習をペアワークさせ、その後ペアで回 答させる。 「こういうときは、どのように考えますか?」とか、 「その次はどうするの?」など、常に発 問を行い、進めていく。時間がないときは、生徒全体に対して発問し、生徒たちの発言を拾って授業を 進める。基本的には誰かが正解を言うまで待つ。皆の思考をつなぎ合わせて正解に近づいていくように する。また、実験で協働学習を行う。実験プリントをよく読んだり、教員の話す実験のコツなどを確実 に聞いたりして、班員と協力して実験を成功させることは、達成感につながる。 〔良かった点〕 パワーポイント教材は、自宅学習用の教材としてある程度機能していると思われる。 単元が終わると、徐々に内容を忘れていってしまうものだが、自宅で何度も見直すことができるので、 定着しやすくなっている。授業中に生徒実験や多様な学習活動を行う時間を捻出するためにも、さらに 充実させていきたい。 100 〔課題点〕 授業内容の充実は時間とのせめぎあいであり、限られた授業時間の中で充実した内容にで きるよう教材の更なる研究が必要である。 2.高 1 化学「イオンとは何か?」について学ぶ ①高1外進クラスでの取り組み 〔事前〕 ゴールデンウィーク中に教科書を 8 ページ分読んでくる宿題を指示。ゴールデンウィーク後 の授業で、「イオンとは?イオン結晶とは?」を班になってまとめ、発表してもらうと予告。 〔授業中〕 最初の 15 分間まなボードを使って 4 人1班で準備、残りの時間 1 班 3 分以内で発表、一 人必ず一回はしゃべる、という決まりで進めた。全く同じ内容で、理数コース外進 α1、普通コース外 進 α で実施。発表の内容については、理数コースの方が内容が濃く、普通コースの方では 1 分に満た ないところで発表時間が終わり、足りないところをこちらが補足する、という形になった。「ディープ アクティブラーニング」の本で取り上げられている「ピア・インストラクション」をヒントにして実施 した。教科書で、色々細かいことを学習し、「つまり、どういうこと?」というところをまとめてもら った。(「ピア・インストラクション」は理系教科の高校課程でもある程度運用が可能だと感じる。) 〔良かった点〕・教科書を読んでくる、という指示だったが、実際には半数くらいの生徒しか読んでい なかったようだ。しかし、班によっては、台本なしですらすらとしゃべる生徒が結構おり、かなり教科 書を読んできた様子であった。・班によって焦点の当て方が違ったので、全ての班の話を聞くと、全体 として様々な視点から細かく学べていた。・やはり、前に立って発表となると、ある程度理解しないと できないということで、グループワークは必死に取り組んでいた。・単元毎に、このようなプレゼンテ ーションの機会を作れば、授業外学習の時 間は必然的に増えるだろうし、授業時間は 1 時間しか消費しないので、進度にそれほ ど支障が出ない。また、教科にじっくりと 向き合うことができる。・その科目が好き な生徒にとっては、自分を表現する格好の 機会となる。 〔課題点〕・全ての生徒が全てのプレゼン を、きちんと聞いていた訳ではない点(自 分の発表前などは、それどころではないと いう様子の者もいた)。・プレゼンの内容 が、分かりにくい、または少し間違ってい た場合、他の生徒たちも間違って理解する 写真:ある班の作成した「まなボード」 可能性がある。・プレゼンのレベルは、や はりレッスンによりけりであり、厳密にみていくと「深い理解」にはまだまだ遠い状態である。・下位 レッスンでは実施が厳しい。・これのために、捻出したい生徒実験の時間を減らさなければならない。 ②高 1 内進クラスでの取り組み 「イオンって何?」とよく生徒が口にする。化学基礎の教科書の前半できっちりと学習しているはず なのに、イメージが定着していない。これを改善するため、高 1 内進では、酸化還元分野の最後に、「銀 樹の考察」の生徒実験(@普通教室)を行った。4 人1グループで、銅が硝酸銀水溶液に溶解し、イオン となって溶液が段々と青くなる様子を観察させ、そのイオン反応式と、理由を考察させた。これにより イオンについてのイメージがついたようであった。また、銀がどんどん析出していくのを見て、イオン 化傾向というものにはこんなにも威力があるのか、とかなり驚いていた。 やはり、生徒が理科に興味を持ち、「なぜだろう?」と疑問を抱くきっかけは、実際に生徒一人ひとり が手を動かして実験を行うことである。 101 アクティブラーニング実践報告 地形図読み取り学習とフィールドワーク~電子黒板・iPad を利用して~ 福田周作(社会科(地理科) ) 授業担当クラス:中等教育学校1年地理 1.目標 授業でどのような学力をつけたいと考えているか (1)基礎的・基本的な知識・技能 ・地形図から、尾根と谷を読み取ることができる。 ・等高線の間隔から傾斜の緩急を読み取ることができる。 ・地形図の判例から、植生を読み取ることができる。 (2)思考力・判断力・表現力 ・実際の歩行ルートの特徴を地形図から予想し、説明できる。 ・フィールドワークを通して、地図情報と経験から得た情報を照合し、地図から現地状況を判断する 能力、予想する能力を培う。 ・予想と結果について、図や写真、体験を根拠として説明できる。 (3)主体性・多様性・協働性 ・現地での観察ポイントを自ら発見し、解説に適した写真をとり、分析を試みることができる。 ・グループワークで意見交換できる。 ・グループ内で役割分担し、成果を発表することができる。 単元における学習の流れ ①地形図の読み方(縮尺・方位・凡例等) ②地形図の活用Ⅰ(等高線、土地利用分析等) ③地形図の活用Ⅱ 本時 ④フィールドワーク(校外宿泊研修の行事) 2.授業の流れ 単元:身近な地域の調査(3時間目) ⑤成果発表(iPad、電子黒板を利用して) フィールドワークのための準備活動 (1)概要説明(15 分)後、4~5 人のグループをつくり、下記(3)の 課題①~⑤について発表担当者決め(3 分) 。 (2)講義「尾根と谷の違い」 (10 分)→尾根線、谷線をなぞる。 (3)AL「地形図読み取り」グループワーク(各課題 3 分×5) ①峠の特徴 ②登山ルートの難所 ④谷のルートの特徴 ③ルートの東西斜面の傾斜の違いと植生の違い ⑤尾根のルートの特徴 (4)振り返りと補足(7 分) 話し合いが不十分であったところ、読み取りが難しかったところについて、グループごとに話し合 い。ワークシートの完成。 3.工夫しているところ ・毎回の授業で、必ずペアワークやグループワークの時間を設け、協働の場面をつくっている。グラフの読 み取りのような基礎課題はペア、原因分析のような活用課題はグループで。話す順番や司会者は教員が指 示することで、緊張感と責任感を与えている。 ・ペア、グループでの話し合いの結果を、必ず全体の前で発表する機会を設けている。全体の前での発言の 後には必ず全員で「拍手」をする。こうすることで、発表生徒の声が次第に大きくなってきている。 102 ・夏期研修課題「地域調査」レポート(本時の経験を活かし、iPad「ロイロノート」で作成し、データを提出)について、毎 回の授業の冒頭 5~10 分を利用して、1~2 名ずつ発表。全員に個人発表の時間を設けている。 4.上手くいっているところ ・電子黒板を活用することによって板書時間が節約され、生徒同士が意見交換したり発表したりする時間が 確保できている。全体で共有したい資料提示が容易である。 ・生徒は iPad でプレゼンシートを作成することそのものにも楽しみを見出している。紙媒体では見られなか った積極性が感じられる。 ・ 「友だちの意見をたくさん聞けて面白い」と、仮説や推論を知的に楽しむ雰囲気がでてきた。 5.課題となっているところ ・与えられたテーマについて、短時間(20 秒~2 分程度)で話し合いをするのだが、ペアワーク、グループ ワークにうまく参加できない生徒が散見される。例1)つい別の話をしてしまう。例2)質問の意味が分 からないまま、AL 活動に突入してしまう。例3)授業の雰囲気が醸成されていないクラスの場合、テレビ のお笑い芸人的な反応・発言に向かってしまう。 6.その他 中等1年生 4 クラスの地理の授業は、報告者が 2 クラスを担当し、他 2 名の教員(地理専任教員)が 1 ク ラスずつ担当している。本時の課題は、その 2 名の教員の協力を得られ、学年全体で実施することができた。 また、学年の協力を得ることで、校外宿泊研修のハイキングをフィールドワークに結び付けることができた。 3 時間目(本時) ・地形図の読み取り 4 時間目・フィールドワーク(山中湖畔、明神山ハイキング) 5 時間目・フィールドワークの成果(写真)の共有、プレゼンシート作成→発表 103 アクティブラーニング実践報告 「近畿地方」授業時間・・・6時間 青木 寛子(社会 地理) 授業担当クラス:中1地理(男子部、女子部、中等教育学校) 1 目標 (1)基礎的な知識・技能 *地名は漢字で書けるようにする。教科書レベルのことは知識として身につける。 (2)思考力・判断力・表現力 *都市による気候の違い、なぜその地域では降水量が多いのか、少ないのか? その理由づけができるように する。尾鷲市が日本一降水量の多い理由を考える。 *原子力発電所の長所、短所を他発電と比較して考える。 (3)主体性・多様性・協働性 *阪神大震災から学んだことは何か、グループでできる限りたくさんの意見を出す。 *菜の花プロジェクトにならって環境問題を考えてみる。また、自分たちの学校の身近な問題についてプロ ジェクトを立ち上げ、グループ毎に発表する。 *原子力発電所は必要か否かを話し合い、グループ毎に結論を出す。 *「近畿地方の観光大使として PR」プレゼンテーションをする。 2 授業・・・上記の(3)主体性・多様性・協働性に関わる Ⅰ 菜の花プロジェクトについて の授業に関して ①パワーポイントによる講義、穴うめプリント配布して、講義を聞きながら埋めていく。琵琶湖の水質問題 から菜の花プロジェクトが生まれる過程を学習する。(20分) ②ワークシート1に従い、個人で周りの環境問題について考える。(5分) ③6人グループになり、ワークシート2を進める。個人で考えたプロジェクトからグループで1つ選び、そ れに対しての解決法、プロジェクト名を話し合う。 (10 分) ④グループ毎に発表。ワークシートを電子黒板に写しながらそれぞれのプロジェクトを発表する。 (15 分) ⑤さらに時間があるクラスでは、自分たちの学校の身近な問題についてプロジェクトを考えさせた。これは なかなか盛り上がり、特に同テーマが男子部・女子部それぞれのクラスであがり、意見が真っ二つに分か れたのは面白かった。 104 Ⅱ 「近畿地方の観光大使としての PR」のプレゼンテーション ①文化祭で実施した「横浜探訪」のテーマごとのプレゼン(事前学習、現地探索、事後学習)とは違い、観 光大使として地域の特産や建築をどのようにPRできるか考えなければならない。ただの調べ学習ではな く、PR できる表現力が重要であることを説明する。 (5 分) ②ペアで近畿地方の売りとなる共通題材を決める。 (15 分) ③共通題材を決めたら、あとは個人で iPad ロイロノートにてスライド 8 枚~12 枚を作成する。 (30 分) 発表は次授業。 ④発表は共通題材にしたペアで続けて行う。発表後は、質疑応答の時間をとり、良かった点、改善点の意見 を聞く。発表を聞いた生徒たちは以下について評価を行う。教員も同じ評価を行う。 1立ち振る舞い 3点 2点 1点 2声の大きさ 3点 2点 1点 3スライド内容 3点 2点 1点 ⑤評価を受け、発表した生徒は振り返りの意見を言う。一人の発表(質疑応答)につき、10 分~12 分程度。 生徒 A 生徒 B 生徒 A 君は金閣寺にかかったお金についてわかりやすく説明、これだけお金をかけているのでぜひ見に きてほしいとプレゼン。生徒 B 君は金閣寺の春夏秋冬、夜のライトアップを説明、春夏秋冬、夜、いつ来 ても違う風景が見られるとのプレゼン。両者ともわかりやすい数字や比較があり、プレゼンに必要な要素 が組み込まれていた。 全般的に見て、iPad を利用してのプレゼンテーションを前期からやっているのでロイロノートや key note を活用したプレゼン資料作成が非常にうまくなってきた。さらに、5月当初は人前での発表の声が小 さかったが半年経過してしっかりと声が出るようになってきたのが大きな変化である。近ごろは質疑応答 が活発になってきたので、討論形式になる機会も増えた。 iPad でプレゼンをする生徒の様子 電子黒板と同様の画像が生徒たちの iPad にも同時に配信される。 スライド作成中 105 アクティブラーニング 実践報告 「地中海世界の展開(古代ローマ)」(7時間) 岩元洋恵(地理歴史科) 授業担当クラス:高1世界史A(女子部理数コース・女子部普通コース) 教材:世界史A(実教出版株式会社)・グローバルワイド最新世界史図表(第一学習社) 題目:2節ヨーロッパ世界 2. 地中海世界の展開(古代ローマ) 項目名 「貴族と平民の抗争」 「ポエニ戦争」「共和政の変質」 「内乱の1世紀」 「帝政ローマ(前期帝政)」 「キリスト教の成立」「後期帝政とローマの文化」 1:目標 (1)基礎的な知識・技能 *語句・用語(歴史的事象)を基礎知識として正しくとらえる。 -いつ、どこで、どのようなことが起こったのかという歴史の事実をよみとる。 ・講義中心の学習活動。生徒には、教科書と図説も参照させつつ、質疑応答を促す。 ・大きな流れは板書で行うが、のちほどグループワークの時間を取るため、穴うめプリントを併用 して効率をあげる。 ・語句・用語の定着の確認には、従来通り小テストやワークシートを活用する。 (2)思考力・判断力・表現力 *歴史的事象に解釈をくわえる。 -歴史において大切な、歴史的事象の因果関係やその影響を考える。 ・比較をする(学習作業例:前期帝政と後期帝政の違いを比較する) ・特徴をつかむ(学習作業例:ローマの平和の「平和」の意味について説明する) ・歴史の経過を理解する(学習作業例:教科書・資料を使い、ポエニ戦争を年表化する) ・原因、理由を考える(学習作業例:帝政後期にコロナトゥス制が発達した理由・背景を考える) ・結果、影響を考える(学習作業例:ローマの領土拡大が与えたローマ社会への影響を考える) (3)主体性・多様性・協働性 *協働作業での多様な考察、また現代との関連性を学ぶ。 -歴史的事象に見いだされる課題や役割について、他者と共有できるような広いとらえ方をする。 ・ペアワークでの作業(学習作業例: 「内乱の1世紀」について考察する-現代にも通じる政治闘争) ・グループワークでの協働作業(学習作業:グラックス兄弟の改革、マリウスの兵制改革を比較し、 改革には従来の社会制度を維持するためのものと、社会の変化に応じたものがあることを学ぶ) ・振り返り(学習作業例: 「ローマ帝国がなぜ滅びたのか」様々な要因を考え、現代国家・社会の問 題点と通じるものを見いだす) 2:授業 項目「共和政の変質」1時間 「まなボード」を利用したグループワーク ①前回の授業を簡単に振り返る。 (3分) -ローマ社会の変化に気づかせるため、前回までの授業「貴族と平民の抗争」 「ポエニ戦争」で、ローマ市民 権、また中小農民による重装歩兵軍、ポエニ戦争以前のローマの生産構造について講義し、変化する以前 のローマの社会構造について理解させておいた。 ②ローマの領土拡大の影響で、ローマ社会がどう変質したのか、生徒にその特徴をつかませる。ここで、資 料プリント(図1)を配布して、各自読ませる。まずは個人で考え、次にグループで話し合うことを予告して おく。 (7分) 106 -生徒たちは、下線を引く、特定箇所を強調する書き込みをするなど、プリントに手を加えていく。グルー プワークを意識してのことだろう。この作業も、クラスによりかかる時間に差があった。 (図1) プリントには、考えるための材料となる資料を多くあ げておいた。 生徒はそれほど抵抗なく読んでいく。 ③ここで4人のグループワークとなり「まなボード」 が登場。(図2)(30分) -司会者と書記を決め、ローマ社会の変質について考 察させる。教科書や図説にもローマ社会の変質につい ての記述があるので、そのまま書き写して終わらない よう、ここは「グラックス兄弟の改革」と「マリウス の兵制改革」の対比を通じ、ローマ社会の変質をとら えさせることとする。資料から情報を読み取って各班それぞれ活発に話し合っていた。 (図2) ④グループごとに発表(10分) -全グループを発表させると時間的に厳 しいので3グループほど。それぞれ中小 農民市民軍に支えられた共和政の維持を 是とするグラックス兄弟の改革が失敗し、 大土地所有の拡大と、傭兵制へ移行(マリ ウスの兵制改革)していくローマ社会をつ かんだようだ。ただ、まなボードに書か れた記述は、文章ではなく箇条書きにし たものがほとんどであった。また、説明 の声が小さいグループもあり、課題はま だまだ残る。 3:課題学習 夏期研修の課題「ローマはなぜ滅びたかを考える」 研修明けの授業でグループで比較・検証しあう。 (図3) -ローマの滅亡には様々な要因があげられる。生徒は、それぞれ ネットや本などを利用してまとめてきた。官僚・軍事費維持の負 担、ゲルマン人やイラン人の移動や侵入、生産減退だけではなく、 キリスト教が広まり国家観が変化したことや、ローマの整備され た道路網が移民の流入や反乱を容易にしたなど、多彩な考察が出 て、生徒たちも意見交換で見識を広めていた。 4:課題点 △生徒の協働作業中に、教員が話しすぎてしまう。周囲の教員から、誘導的になりすぎているとの指摘を受 けながらも、なかなか調整できないでいる。 △クラスにより協働作業の取り組みにかなりの差があるのだが、課題を変えるなどの対応ができないでいる。 またAL用の課題の蓄積がなく、生徒の実情に合わない課題で不発に終わってしまうこともしばしば。 △活用Ⅱを意識した課題作りはかなり難航している。やはり活用Ⅰが中心になっている。 △まだまだ家庭学習に繋がるものにはなっていない。自主的家庭学習につながれば学力向上につながると思 うが、そこには至っていないのが現状。 107 2015 年 12 月 12 日開催 桐蔭学園アクティブラーニング公開研究会 2015 アクティブラーニング実践報告 発行日 発行 2015 年 12 月 桐蔭学園 中等教育学校・中学校・高等学校 〒225-8502 神奈川県横浜市青葉区鉄町 1614 ℡ 045-971-1411 http://toin.ac.jp/