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資料7 貯留層の周辺環境等評価
資料7 貯留層の周辺環境等評価 平成23年10月26日 1 苫小牧周辺のテクトニクス概要 ※ 「活断層」定義:第四紀 後期更新世 (約13万年前)以降活動的 石狩低地東縁断層帯 衝突 東北日本弧 X 伏在衝上断層 馬追断層 大夕張断層 千島弧 夕張岳断層 広尾断層 X’ 調査範囲(投影) 日高帯 ( 伊藤谷生・他 (1999) に加筆 ) [ 西側ほど若い ] :更新世 ~ 現世(活断層) 伏在衝上断層 :鮮新世 ~ 現世(活断層) 馬追断層 :中新世 後期 大夕張断層 :中新世 前期? ~ 後期 夕張岳断層 WHT / WBT / HMT :中新世 前期 ~ ? 141° 43° 142° X' 石狩 低地帯 [ 東側ほど古い ] 143º 43° ( 伊藤谷生・他 (1999) に加筆 ) * WHT : 西日高衝上断層, HMT :主日高衝上断層 X 調査範囲 ① 西方に向かって前進する複数の褶曲・衝上断層帯が発達する。これら は、東北日本弧と千島弧の衝突によって形成されたもので、中新世に 始まったものである。 ② 褶曲・衝上断層帯にはいくつかの断層が認められ、地表に現れている 最も西側の断層は馬追断層で代表される活断層群である。 ③ 既往の弾性波探査データから、馬追断層の西側にはいくつかの伏在 衝上活断層が推定される。 42.0° 42° 燃料資源地質図 「三陸沖」 AIST(2005) から抜粋・加筆 0 141° 50km 142° 143º 2 2 北海道周辺の地震活動 <地震活動の特徴> 深部(100km以深)の海溝型(プレート境界型) と 浅部(20-40km以浅) の内陸地震 の2タイプ 千島海溝-日本海溝に沿って、津波を伴う M 8 クラスの海溝型巨大地震が繰り返し発生 北海道では、古文書に記録された古い地震は少ないが、津波堆積物の調査から、400-500年周期 で巨大津波を経験してきたことが分かっている 。 (地震調査研究推進本部による) http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/hokkaido/hokkaido-higaijishin.gif 3 苫小牧周辺の最近の地震活動 (1998年~2008年、M>1) 苫小牧周辺の地震活動 (1998–2008, M ≥1) Mt.Tarumae EMIFZ Tomakomai <地震活動の特徴> 千島海溝や日本海溝から陸側へ沈み込むプレート 境界付近で発生する地震、および 陸域浅部(深さ約 20-40km以浅)で発生する地震とがある。 活断層である石狩低地東縁断層帯が、石狩平野の 東縁に沿って南北方向に走っている。 浅層地震 苫小牧付近における地震活 動度は、他の地域と比較し て大きな差はない。 北海道地方の活断層のほとんどは逆断層であり、北 海道の中央部がほぼ東西方向に圧縮されていること を示している。 地殻変動観測からも、おおむね西北西-東南東方 向に地面が縮んでいることがわかる。 これらのことから、北海道の中央部は、太平洋プレー トの沈み込みなどにより、ほぼ東西方向に圧縮の力 がかかっていると考えられる。 苫小牧周辺における現在の地震活動は、他の地域 と較べ、とりわけ活動的であるとはいえない。 (気象庁一元化震源リストをもとに作成) 苫小牧市南西側には、樽前山などの火山があり、群 発地震が発生する。ほとんどの場合M5以下であるが、 まれにM5より大きくなり、局所的に被害が生じること がある。群発地震の活動期間は、多くは1~3ヵ月の 比較的短い時間で収まるが、1年を越えた例も知られ ている。 4 石狩低地東縁断層帯 凡例 地震調査研究推進本部 「石狩低地東縁断層帯の評価の 一部改定 (2010.08.26)」 <南側の海域まで伸長> 断層 背斜軸 (褶曲の頂部 を結んだ線) 項 目 地震調査研究推進本部 「石狩低地東縁断層帯の長期評価の 一部改訂について(2010.08.26)」 図-2 に加筆 (JCCS) 評 価 断層の長さ 54km以上 断層の傾斜 (深さ約3km以深では低角 ○ 東傾斜 ◎ 度、約2.5kmでほぼ水平) 勇払油ガス田 1回のずれの量 4m程度以上 △ 平均活動間隔 1万7千年程度以上 △ 想定される地震の規模 M7.7程度以上 △ 予測震度分布計算 で用いた想定断層 (地震調査研究推進本部 事務局による) CO2貯留予想範囲 (直径約1km) 2009 地震発生確率 (30年:ポアソン) 0.2%以下 d 2010 3D弾性波探査エリア (2009&2010) 信頼度 ⇒ ◎:高い、○:中程度、△:低い) 発生確率 ⇒ a:高い、 b:中程度、 c :やや低い、d :低い 5 三次元弾性波探査断面図上でみられる断層例 東西断面 南北断面位置 W E 0 0 第四系 0.5 鵡川層 1.0 荷菜層 1.5 東西断面位置 1.5 平取+軽舞層 振老層 2.0 2.0 滝ノ上層T1部層 滝ノ上層 坑井A 2.5 断層 萌別層泥岩層 萌別層砂岩層 萌別層 3.0 構造の高まり (C.I.=50m) 1km 滝ノ上層上限深度構造図 3.5 北 2.5 3.0 断層 1 Km 3.5 6 Two-way Time (sec) Two-way Time (sec) 1.0 0.5 背斜構造西翼部の深部に見られる断層は萌別層 以浅を切っておらず活断層でないと解釈 テクトニクス・地震活動・断層分布 まとめ ① 北海道での地殻応力場は、太平洋プレートの西進にともない東西の圧縮場となって いる。このため北海道の活断層はほぼ逆断層である。 ② 北海道周辺では、プレート境界型地震(深度100km以深)が繰り返し発生している。 また陸域浅部の地震活動(深度20-40km)がある。 ③ 貯留想定点周辺での地震活動は、日本の他の地域と比して特別に活動的であるわ けではない。 ④ 活断層である『石狩低地東縁断層帯(南部)』が、貯留想定域の東側に走っている。 貯留想定点は背斜構造をなす変形域からは約10km、断層本体からは約20~ 30km離れている。 ⑤ 貯留想定域の西側約2kmには、滝ノ上層~荷菜層付近までを切る、南北方向に延 びる高角の断層(長さ約7km)があるが、活断層ではないと判断する。 7 CO2漏出の可能性検討―CO2漏出要因の洗出し(1)― <IPCC特別報告書において示されている潜在的な漏洩経路> (A) (B) (C) (D) (E) (F) (G) CO2のガス圧が遮蔽層の毛管圧を超えて移動 断層を通じてCO2が移動 キャップロックの局所的な不連続部分を通じた移動 CO2貯留層圧の増加および断層の浸透率の増加によって生じる移動 プラグの状態が完全でない廃坑井を通じた移動 地下水に溶解したCO2が貯留層の外に移動 地下水に溶解したCO2が傾斜した地層を通じて地表に移動 Potential leakage routes and remediation techniques for CO2 injected into saline formations (IPCC SRCCS Figure TS.8.) 8 CO2漏出の可能性検討―CO2漏出要因の洗出し(2)― <苫小牧地点における貯留層総合評価の検討結果による想定漏出経路> (1) 遮蔽層の毛管圧を超えて移動 (2) 断層を通じた移動 (3) 廃坑井を通じた移動 (4) 圧入井等の設置予定の構造物に 沿った移動 圧入井 N40W(北西) 苫小牧CCS-1 N140E(南東) 苫小牧CCS-2 (m) 第四系 (礫岩、砂岩、泥岩) 鵡川層 (礫岩、砂岩、泥岩) 遮蔽層 貯留層 廃坑井 坑井A 萌別層(泥岩) 萌別層(砂岩) 荷菜層(砂岩、泥岩) 平取+軽舞層 (泥岩) 遮蔽層 断層 断層 構造の高まり 北 貯留層 1km 等深度線間隔=100m (C.I.=50m) 振老層 (泥岩) 滝ノ上層T1部層 (溶岩~凝灰角礫岩、凝灰岩) 滝ノ上層(泥岩) (滝ノ上層上限深度構造図による例示) 9 CO2漏出の可能性検討―CO2漏出要因に関する検討結果― 苫小牧地点における想定漏出経路に対する検討結果は以下の通り。 (1) 遮蔽層の毛管圧を超えて移動 滝ノ上層T1部層および萌別層砂岩層の圧入圧力は、それらの遮蔽層の毛管圧(スレショ ルド圧力)を超えることはなく、CO2は遮蔽層には浸透しない(滝ノ上層T1部層では、スレショ ルド圧力が十分に高い。萌別層砂岩層では、滝ノ上層T1部層に比べればスレショルド圧力が 低いものの、シミュレーションの結果、CO2は遮蔽層に浸透せず、良好な遮蔽性能が期待さ れる)。 (2) 断層を通じた移動 シミュレーションによるCO2長期挙動予測の結果、圧入後200年程度でCO2の拡がりに変化 は見られなくなり、1,000年を経てもCO2は断層に到達しないことから、断層はCO2の漏出要 因にならないと考える。 (3)廃坑井を通じた移動 シミュレーションによるCO2長期挙動予測の結果、圧入後200年程度でCO2の拡がりに変化 は見られなくなり、 1,000年を経てもCO2は廃坑井に到達しないことから、廃坑井はCO2の漏 出要因にならないと考える。 (4)圧入井等の設置予定の構造物に沿った移動 圧入井等の構造物の設計・建設では、CO2が接触する鋼材やセメント等を耐CO2仕様にす る等の対策を施すことで、これら構造物に起因したCO2の移動を防止する。 以上から、圧入井等の構造物を耐CO2仕様にすることにより、基本的には、CO2の漏出は生じないも のと考える。 10