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神経毒ペプチドの遺伝子を導入した組換えウイルスの農薬への応用

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神経毒ペプチドの遺伝子を導入した組換えウイルスの農薬への応用
I
シヨートレヒュー
神 経毒ペプチドの遺伝子を導入 した
組換えウイルスの農薬への応用
前田
進
遺 伝 子 発 現 ベ ク ター と して 注 目 され て い るバ キ ュ ロ ウ イル ス は 古 くか ら害 虫 防除 に利 用
さ れ て き た が, 即 効 性 に 欠 け るた め 発 現 ベ ク ター を 用 い て 改 良 を試 み られ て き た。 そ の結
果, Na^+チ ャ ンネ ル を ブ ロ ック す る サ ソ リ毒 な ど の 遺 伝 子 を 導 入 した 組 換 え ウ イル スが,
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そ の 発 現 に よ り即 効 性 を示 す こ とが 示 され た 。 これ らの 毒 素 は 昆 虫 に特 異 的 に働 くが, 主
要 な 化 学 農 薬 と同 じ部 位 に 作 用 して類 似 の症 状 をひ き起 こ す こ とが で き る。 ま た, こ の 系
は イオ ンチ ャ ンネ ル の 構 造 や 作 用 機 構 の研 究 に も寄 与 す る で あ ろ う。
は じめ に
イ オ ン チ ャ ンネ ル の研 究 の 歴 史 の な か で,
れた。
阻 害剤 (毒 素) の利 用 が そ の 性 状 の 解 明 に 重 要 な 役 割 を
.
果 た して きた 。 一 般 に, 高 分 子 の 蛋 白質 性 毒 素 は 特 異 性
が 高 く, Na^+チ
昆 虫 ウ イ ル ス に よ る 害 虫 防 除^<7)>
ャ ンネル の 同定 にサ ソ リ毒 が 利 用 され
た こ とは よ く知 られ て い るが, 昆 虫 に のみ 特 異 的 に 作 用
昆 虫 に も病 気 が あ る こ とは, 人 間 と深 くか か わ っ て き
す るサ ソ リ毒 の存 在 す る こ とは あ ま り知 られ て い な い。
た ミツバ チや カ イ コな どで は古 くか ら知 られ て お り, 現
昆 虫 のNa^+チ
在 に いた る ま で数 百 種 の昆 虫 ウ イ ル ス が分 離 ・同定 され
ャ ンネ ル に の み 働 くサ ソ リ毒 は 異 な った
性 質 の も の が報 告 され て お り, 毒 素 蛋 白質 が昆 虫 のNa^+
て い る。 昆 虫 ウイル ス は7科 に分 類 さ れ, バ キ ュ ロウ イ
チ ャ ンネ ル に, よ り親 和 性 を示 す よ うに進 化 して き た も
ル ス (科) は 節 足 動 物 (主 と して 昆 虫) の みか ら分 離 され
の と考 え られ る 。 また,
これ は昆 虫 のNa^+チ
ャ ンネル
る代表 的 な昆 虫 ウイル ス で あ る。 そ の 中 の核 多 角 体 病 ウ
が 脊 椎 動 物 の も の とは 異 な って い る こ とを 示 す 興 味 深 い
イ ル ス (nuclear
現 象 で あ り, Na^+チ
は, そ の名 が示 す よ うに感 染 細 胞 の核 内 に多 角 体 とよば
ャ ンネ ル の 構造 と 機 能 を 解 明 す る
うえ で役 立 つ で あ ろ う。
virus ; NPV)
グル ー プ
れ る ウイ ル ス 封 入体 を形 成 す る とい う特 徴 が あ り, 包 埋
こ の よ うな毒 素 は, 昆 虫 に対 す る 特 異性 と 殺 虫 効果
(10^<-9>∼10^<-12>Mで
効 く) の点 か ら害 虫防 除 へ の利 用 が考
え られ て き た 。 一 方,
polyhedrosis
昆 虫 のバ キ ュ ロ ウイ ル スは 遺 伝
子 発 現 の ベ ク タ ー と して, 頻 繁 に 用 い られ る よ うに な
した ウイ ル ス粒 子 を 野外 で長 期 間, 安 定 に保 護 す る役 割
を も って い る。
昆 虫 ウイ ル ス は ヨ ー ロ ッパ で は1920年
代 に害 虫 防 除
と して 使 わ れ 始 め, カナ ダや ア メ リカ北 部 で は1950年
り^<1∼3)>,
こ の系 を利 用 して 毒 素 遺 伝 子 を ウ イル ス に 導 入
代 か ら, マ ツ, モ ミな どの森 林 の バ バ チ の害 に ヨー ロ ッ
し, 害 虫 を 防 除 しよ うとす る 試 み が 検 討 され た 。 初 期
パ か ら 導 入 した バ キ ュ ロ ウイ ル ス (核 多角 体 病 ウイル
の実 験 で は,
ス) が か な りの 成 果を お さめ た 。 森 林 害 虫 に 対 して は,
活 性 のあ るサ ソ リ 毒 は 発 現 され な か った
が^<4)>,
最 近 では 活 性 の あ る も のが 幼 虫 で も発 現 で き る こ
そ の後 も比 較 的 よ く使 用 され, 日本 で も細 胞 質 多 角体 病
とが わ か り^<5,6)>,
効 果 的 に害 虫 を防 除 で き る こ とが 示 唆 さ
ウイ ル ス が マ ツカ レハ の防 除 のた め に商 品 化 され た 。 一
Susumu
Maeda,
Construction
Key word
842
Department
of Recombinant
of Entomology,
Baculoviruses
University
Carrying
of California,
Davis,
Insect Selective Neurotoxin
CA 95616, USA
Genes for Pest
49
神経毒 ペプチ ドの遺 伝子を導 入 した組換え ウイルスの農薬へ の応用
方, 一 般 作 物 の 主 要 な害 虫 に対 して も, ブ ラ ジル で は ダ
放 出 さ れた ウイル ス は 腸管 よ り侵 入 し, 出 芽 と吸 着 に よ
イ ズ の害 虫 防 除 に バ キ ュ ロ ウイ ル ス が 広範 囲 に用 い られ
り昆 虫体 内 の ほ とん どす べ て の 組 織 で増 殖 し, 末期 に は
て い る。1970年 代 後 半 に は, ワタ の害 虫 防除 を 目的 と し
粒 子 を包 埋 した 多角 体 を形 成 す る。 ウイ ル ス ゲ ノ ムは 環
てバ キ ュ ロウイ ル ス が, 農 薬 と して商 品化 さ れ た が, 実
状 の2本 鎖 のDNAか
際 に はあ ま り普 及 しな か った 。 第 一 の理 由 は 同 時期 に有
大 型 のDNAウ
効 な化 学 農 薬 が 発 売 さ れ は じめ た こ と, 第 二 に は ウイル
れ 約1kb)
ス の効 果 が 期 待 した ほ ど 高 くな か った 点 で あ る。 しか
られ る以外 は, ほ とん どが ユ ニ ー クな 塩 基 配 列 にお お わ
し, 組 換 えDNA技
れ1ウ イル ス全 体 で 約100前
術 に よ り即 効 性 を 付 与 し, ウイル ス
農 薬 の欠 点 を 克 服 す る こ とが で き る と考 え られ て きた 。
らな り, 全 体 で約130kbも
ある
イ ル ス で あ る 。ゲ ノ ム の5カ 所 (そ れ ぞ
に わ た り, 約100bpの
く り返 し配 列 が 認 め
後 の 遺 伝 子 を含 ん で い る も
の と推 察 され て い る^<8)>。
す で に 述 べ た ウ イル ス 封 入 体 を
構 成 す る 多角 体 遺 伝 子 を は じめ, 構 造 蛋 白質, 合 成 酵
II.
バ キュ ロ ウ イ ル ス の 遺 伝 子 構 造 と
発 現 ベ ク ター
素, 遺 伝 子 発 現 を コ ン トロ ール して い る遺 伝 子 が い くつ
か 同 定 され て い る^<8)>。
また, エ クジ ス テ ロ ン (脱皮 ホル モ
ン) を不 活 化 す るUDP-グ
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1.
バ キ ュ ロウ イ ル ス の 遺 伝 子 構 造
ル コ シル トラ ンス フ ェ ラ ー ゼ
遺 伝 子^<9)>や
細 胞 の崩 壊 を 阻 止 す る遺 伝 子^<10)>を
も っ て お り,
核 多 角体 病 ウイル ス の粒 子 は膜 構 造 を も った 棒 状 の形
バ キ ュ ロ ウイ ル スは 宿 主 昆 虫 と密 接 にか らんだ 遺 伝 子 を
態 を して お り, 消 化 液 の プ ロ テ ア ー ゼ に よ り多 角 体 か ら
も った, 高 度 に進 化 した ウイ ル ス で あ る こ とが 示 され つ
図1.
バ キ ュ ロ ウイ ル ス (カ イ コ核 多 角 体 病 ウ イル ス) 発 現 ベ クタ ー の 構 築 の 手 順 と外 来 遺 伝 子 の 発 現
843
50
蛋 白 質
核 酸
酵 素
つ あ る。
Vol. 37
No. 5
(1992)
素 な どが考 え られ てい る。実 際, 利 尿 ホ ル モ ン^<11)>,
幼若
ホル モ ンエ ステ ラ ーゼ^<12)>の
遺 伝 子 を バ キ ュ ロ ウイル ス
2.
遺 伝 子 発 現 ベ ク ター^<1∼3)>
に 導 入 して 幼 虫 に 感 染 さ せ た と ころ, 体 液 量 の現 象, 体
バ キ ュ ロ ウイ ル スは 遺 伝 子 が2本 鎖DNAで
あ り, 制
色 の変 化, 摂 食 阻害 な どが認 め られ た。 しか し, 害 虫 防
限 酵 素 な どに よ り容 易 に遺 伝 子 操 作 が で き, ま た, 感 受
除 の効果 は期 待 した ほ どで は な く, 野 生 株 の ウ イル ス に
性 の 培 養 細 胞 に よ る プ ラ ー ク法 な ど の ウイ ル ス 学 的 手 法
比 べ る と, 致 死 に 至 るま で の期 間 が約20%ほ
が 利 用 で き る。 ウ イル ス ゲ ノ ム 上 に あ る 多 角体 遺 伝 子
れ た だ け で あ った。
は, ウイ ル ス粒 子 の形 成 とは 直 接 関 係 な い が, 感 染後 期
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に 発 現 す る 強 力 な プ ロモ ー タ を も ち, そ の 産 物
(多 角
ど短 縮 さ
昆 虫 に 特 異 的 に働 く毒 素 は べ ノム (毒液) を も った多 く
の 生 物 種 に 認 め られ, サ ソ リを は じめ, 昆 虫 補 食 性 の ク
体) は 遺 伝 子 挿 入 の マ ー カ ー と して光 学 顕 微 鏡 で確 認 で
モ, ダ ニ, 寄 生バ チ な どか ら分 離 され て い る。 蛋 白質,
き る。 こ のた め, 多 角 体 遺 伝 子 の プ ロモ ー タ ーの後 に 外
ペ プ チ ド性 の もの も多 く, Na^+チ
来 遺 伝 子 を 挿 入 して, 多 量 に発 現 す る こ とが で き る。 図
Ca^<2+>,
K^+チ
ャ ンネ ル 以外 に も,
ャン ネル や グル タ ミン 酸, GABAレ
セプ
1に 外 来 遺 伝 子 発 現 の手 順 を示 した が, ウ イル ス ゲ ノ ム
タ ーな ど, 現 在 まで に使 用 され て き た化 学 農 薬 の作 用 部
の サ イ ズが 大 き い の で培 養 細 胞 で の相 同組 換 え を 用 い な
位 と同 じ部 位 に 働 く と考 え られ る こ とか ら, ウイル ス に
け れ ば な らず, 多 少, 手 間 が かか る。 しか し, 発 現 効 率,
よ り発 現 した これ ら の毒 素 は 化 学 農 薬 と同 じよ うな 作 用
生 成 産 物 の生 物 活 性 や 抗 原 性, 精 製 の容 易 さな ど の利 点
と効 果 を もた らす もの と期 待 され て い る。
か ら, 現 在 で は最 も頻 繁 に利 用 され て い る多 細 胞 生 物 由
IV.
来 の発 現 ベ クタ ー とな って い る。
III.
昆 虫防除に利用できる蛋白質
1.
サ ソ リ毒 の構 造 と作 用機 作
サ ソ リ毒 の構 造 と作 用
蛋 白質 性 のサ ソ リ毒 に は 脊 椎 動 物 のNa^+チ
合 成 化 学 農薬 の 多 くは低 分 子化 合 物 で あ り, 比 較 的 簡
ャ ンネル
に 働 く毒 素 が よ く知 られ て い るが, 昆 虫 のNa^+チ
単 に合 成 が で き, 経 皮 的 に 昆 虫体 内 に取 り込 まれ て殺 虫
ネ ル に 特 異 的 に働 く蛋 白質 性 の毒 素 は1971年
効 果 を 示す 。 これ ら の化 学 農 薬 の ヒ トや 家 畜 な どに対 す
分 離 され て 以 来^<13)>,
現 在 ま で に3∼4種
る影 響 は重 要 な 社 会 問 題 に な って い る。一 方, 蛋 白質 性
の が報 告 され て お り (図2),
ャン
に最 初 に
類 の異 な った も
Zlotkin らに よ り研 究 が多
の 生理 活性 物 質 な どに は 昆 虫 に 特 異 的 に作 用 す る も の が
くな され て い る。 毒 素 の命 名 法 は分 離 され た 種 の学 名 の
い くつ か あ り, これ らを農 薬 と して用 いれ ば ヒ トを 含 め
頭 文字 の 後 にIT
他 の生 物 種 に対 す る影 響 は 非 常 に 少 な い はず で あ る。 昆
に 通 し番 号 を つ け て い る。 以 下 の2グ ル ー プ以 外 に, 脊
虫 体 内 で働 くペ プチ ド, 蛋 白質 は直 接, 散 布 した り組 換
椎 動物 のNa^+チ
え植 物 に導 入 して も殺 虫 効果 に期 待 で き な い が, そ の遺
似 て い るLqhαITや^<14)>,
伝 子 を遺 伝 子 発 現 ベ ク タ ーを用 い て昆 虫 ウイル ス に導 入
SmIT^<15>)も昆 虫 に特 異 的 なサ ソ リ毒 と して報 告 され て い
す れ ば, 効 率 よ く体 内 に遺 伝 子 が 運 ば れ, 発 現 され る こ
る。
とが示 唆 され た 。 これ に 適 した蛋 白質 に は ペ プ チ ドホル
A.
モ ン, 代 謝 に 関与 した重 要 な酵 素, そ れ らの阻 害 剤, 毒
北 ア フ リカ 産 の Androctonus australus
図2.
Na^+チ
(insect toxin)
excitatory
ャ ンネ ル に もあ る 程 度 働 き, α毒 素 と
相 補 的 に2種 の 毒 素 が働 く
insect toxins
ャ ンネ ル に 働 く種 々 の サ ソ リ毒 の ア ミノ酸 配 列 とSS結
左 はN末 端 側 で, 〓
はSS結
合 の 位 置 を 示 す 。 昆 虫 に 特 異 的 に 働 く毒 素 (AaIT1,
脊 椎 動 物 に もあ る 程 度 働 く毒 素 (LqhαIT),
脊 椎 動 物 に 特 異 的 に 働 く毒 素 (AaH2)。
844
をつ け, さ らに分 離 順
(AaIT,
LggIT1)
や Leiurus
合
LqhIT2),
昆 虫 に 強 く働 き,
51
神経毒ペプチ ドの遺伝子を導入 した組換え ウイルスの農薬へ の応用
quiniquestriatus quinquestriatus
か ら のAaIT
とAaIT2)
AaITは
とLqqIT1が
サ ソ リ毒 と比 較 した 結 果,
(AaIT1
こ の グル ー プに 属 す る。
最初 に サ ソ リ よ り分 離 され た昆 虫 に特 異 的 な蛋
白質 性 の毒 素 で あ る。 ア ミノ酸70個
SS結
か らな り, 4つ の
合 の み が両 毒
素 に共 通 で あ り, 残 りの一 対 は お互 い に 別 に 位 置 に あ る
こ と, また,
昆 虫 に特 異 的 な も の はC末 端 が数 ア ミノ
酸, 余 分 に付 加 して い る こ とが示 さ れ た^<18)>。
この よ うな
合 を も っ てい るが, 他 の修 飾 は受 け てい な い^<16)>。 構 造 の違 いが 特 異 性 に反 映 して い る もの と考 が え られ た
AaIT1とLqqIT1と
は 約90%の
ア ミノ酸 の ホ モ ロジ
ーが あ り, 脊 椎 動 物 に働 くサ ソ リ毒 (α毒 素)
大30%程
度 の ホ モ ロ ジー が あ る。AaITを
とは, 最
昆 虫 に経 皮
が, LqhIT2
(上記 のBグ ル ー プ)
では,
4カ 所 のSS
結 合 は, す べ て 同 じよ うな 位 置 に あ る こ とが判 明 し^<19)>,
最 初 にAaITか
ら推 察 さ れ た構 造 上 の差 は, 昆 虫 に対 す
的 に投 与 す る と, ニ クバ エ の幼 虫 は 微量 で もた だ ち に筋
る毒 素 の特 異 性 の差 に必 須 で は な い もの と も考 え られ て
肉 の収 縮 を ひ き起 こす が, 鱗 翅 目 (チ ョ ウ, ガ) の幼 虫
い る。 い ず れ に して も, この よ うな 微 妙 な構 造 の差 に よ
では そ れ ほ ど感 受 性 は 高 くな く (約1/500),
り特 異 性 が決 定 され る の は お どろ くべ き こ と で, Na^+チ
同 じよ うに
神 経 の興 奮 を もた ら し, 体 を 細 か くふ るわ せ る^<17)>。AaIT
は 中 枢 神 経 系 のNa^+チ
て い るが,
1∼2日
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3カ 所 のSS結
鱗 翅 目昆 虫 に 低 濃 度 を注 射 した 場 合 には,
後 に回 復 す る。 ハ ス モ ン ヨ トウ のNa^+チ
ネル に対 す る親 和 性 は 高 い が (K_D=1∼2nM),
サ ソ リ毒 を導 入 した 組 換 え
バ キ ュ ロ ウ イル ス
単位面積
まず, サ ソ リ毒 遺 伝 子 (AaIT)
め に 昆 虫 ホ ル モ ン遺 伝 子
膜 蛋 白質)^<18)>。
depressant
V.
ャン
あた りの 全 結 合 量 は 比 較 的 少 な い (13∼2.0pmol/mg
B.
ャ ンネル の構 造 の解 明 に 役立 つ で あ ろ う。
ャ ンネル に結 合 す る と考 え られ
insect toxins
(LqhIT2,
LqqIT2,
を体 液 に 分 泌 させ るた
(bombyxin)
の分 泌 シ グナル
と と も に合成 し, 遺 伝 子 挿 入用 の ベ ク タ ー (pBK283)
BjIT2)
に ク ロー ニ ン グ した (図3)。 図1の 手 順 で, 組 換 え ウ イ
ル スを
離 し, カjudaicus
イ コに経 皮 感 染 した と こ ろ, 40時 間 後
L. quiniquestriatus quinquestriatus, L. quiniquestriatushebraeus
と分Burhorua
か ら分 離 され, 毒
に は 体 を 異 常 に動 か した り, しび れ の症 状 を呈 して, 最
は異 な って い る こ
後 に は 麻 痺 を 起 こす と い うサ ソ リ毒 を注 射 した 場 合 と同
とか ら, 違 うグル ー プの 毒 素 と して 分 類 され た^<19)>。
ア ミ
様 の 症 状 を 示 し, ま た, 野 生 株 に 比 べ 致 死 に至 る ま で の
ノ酸61∼64個
期 間 は 約50%も
素 に よる症 状 がAaITやLqqIT1と
か らな り, お 互 い に 約80%以
ロジ ー が あ り, SS結
上のホモ
合 が4カ 所 認 め られ て い る。 この
毒 素 は経 皮 的 に投 与 した 場 合, 最 初 はAaITと
同 じよう
短 縮 され た^<5)>。
体 液 をSDS-PAGEと
ウ ェス タ ン ブ ロ ッ ト法 で調 べ た と こ ろ, 本 来 の毒 素 と同
じ分 子 量 の蛋 白質 が1ml中
に5μg認
め られ, 異 質 の
に 多少, 興 奮 性 の反 応 を示 す が, そ の後, い わ ゆ る麻 痺
分 泌 シ グナ ル が 昆 虫 体 内 で も正 し く認 識 ・切 断 され, 活
の 症状 を呈 し (flaccid paralysis), ま った く反 応 しな く
性 の あ る 毒 素 が 合 成 され た こ とが 示 され た。 これ は,
な り, 筋 肉 が 弛 緩 した 状 態 に な る。 本 毒 素 のNa^+チ
HPLCで
ンネル に お け る結 合 部 位 はAaITと
は正 反 対 で あ り^<18,20)>,
また,
ャ
精 製 され たAaITのN末
端 の ア ミ ノ酸 配 列 か
同 じで あ る が, 作 用
ら も明 らか とな った 。 また, 化 学 農 薬 で ひ き起 こされ る
2段 階 の メカ ニ ズ ムに よ り
よ うな 症 状 が 認 め られ た の は, 組 換 え ウイ ル ス に よ り発
働 く こ とが パ ッチ クラン プ法 で示 され て い る^<21)>。
現 した 毒 素 が ピ レス ロイ ドな ど と同 じNa^+チ
ャ ンネ ル
を阻 害 した た め で あ ろ う。 一 方, 分 泌 シ グナ ル を 欠 い た
2.
AaIT遺
サ ソ リ毒 の構 造 と昆 虫 特 異 性
サ ソ リ毒 (AaITやLqhIT2)
伝 子 を用 い た場 合 は, 致 死 ま で の 期 間 は 野 生株
の 昆 虫 に対 す る特 異 性
の も の とあ ま り変 化 は なか っ た が, 死 の直 前 に な り, 麻
は バ イ オ ア ッセ イ を は じめ, 電 気 生 理 学 的 手 法, バ イ ン
痺 な ど の症 状 を呈 した こ とか ら, 分 泌 シ グナ ル の 重 要 性
デ ィ ン グア ッセ イ, パ ッチ ク ラ ン プ法 な ど で詳 しく調 べ
が 示 され た 。 この 場 合, 脂 肪 体 な ど で合 成 され た毒 素蛋
られ て お り, い ず れ の 方 法 で も脊 椎 動 物 のNa^+チ
ャン
ネル に は反 応 せ ず, 非 常 に特 異性 の 高 い こ とが 示 さ れ て
い る (文献21参
照)。 これ は, 農 薬 と して 利 用 す る と き
に は重 要 な性 質 で あろ う。
上 記 の実 験 では 多 角 体 遺 伝 子 の位 置 に外 来 遺 伝 子 を 挿
入 して い るが,
そ れ ぞれ の毒 素 の ア ミノ酸 配 列 を 脊 椎 動 物 に 働 く もの
を含 め て図2に 示 した 。AaITの
白質 は 細 胞 の崩 壊 とと も に体 液 中 に放 出 さ れ, 中 枢 神経
系 に 働 い た もの と推 察 され た 。
構 造 は 脊 椎 動物 に働 く
実 際 の ウ イル ス 農 薬 と して用 い る 場 合
は, 野 外 で の安 定 性 や 経 口感 染 のた め に 多角 体 遺 伝 子 を
保 持 しな けれ ば な らず, これ に適 した ベ ク タ ー も開 発 さ
845
Database Center for Life Science Online Service
52
蛋 白 質
図3.
れ て い る。 そ こで,
核 酸
酵 素
Vol. 37
No. 5
(1992)
合 成 サ ソ リ毒 の遺 伝 子 構 造 と組 換 え プ ラス ミ ドの 作 製
ワタ の 主 要 害 虫 で あ る Heliothis
virescensを 宿 主 とす る Autographa californica
核多角
も認 め られ て い る。
昆 虫 を摂 食 す る ダ ニ は 日本 で は あ ま り知 られ てい な い
体 病 ウイ ル ス の発 現 ベ ク タ ーで, 多 角体 遺 伝 子 と, p10
が, ア メ リカ の Pyemotes tritici か ら蛋 白質 性 の毒 素 が
(ウ イル ス 感 染 後 期 に 発 現 す る) 遺 伝 子 の プ ロモ ー タ ー
分 離 ・精 製 され て い る。 こ の毒 素 はハ チ ミツ ガの 幼 虫 に
を外 来 遺 伝 子 の発 現 のた め に保 持 した ベ クタ ー にAaIT
注 入 す る と, 4∼12時
遺 伝 子 を挿 入 し組 換 え ウイル ス を作 製 した 。 こ の多 角 体
子 (250K)
を形 成 で き, ま た, 毒 素 遺 伝 子 も発 現 で き る組 換 え ウイ
起 こす 低 分 子 (約21K)
の も の に分 離 され た^<23)>。
後者
ル ス を経 口感 染 した とこ ろ, 上 記 の結 果 と同 様 に, 毒 素
は, 類 似 の性 質 のPxT-1
(27K)
に 特 異 的 へ 症 状 を示 し, 感 染 幼 虫 は野 生 株 に比 べ る と,
分 離 され た 。 シス テ イ ンが約8%も
か な り早 く死 に 至 った^<6,22)>。
した 毒 素 は 筋 肉の 麻 痺 な どが 認 め られ, 幼 虫 は死 に至 っ
間後 に 神 経 麻 痺 を ひ き起 こす 高分
の もの と, た だ ちに 筋 肉 のけ い れ ん を ひ き
た が (LD^<50>=500μg/kg),
VI.
サ ソ リ毒 以 外 の昆 虫 に 特 異 的 な 毒 素
とPxT-II
(30K)
に
含 まれ て お り, 精 製
マ ウス (50mg/kg)
に は何 の
効 果 も示 さず, 昆 虫 に の み 特 異 的 に働 く こ とが 明 らか と
な った^<24)>。
特 異抗 体 と蛋 白質 のN末 端 の ア ミノ酸 配 列 よ
1.
サ ソ リ毒 以 外 の 昆 虫 に 特 異 的 な 毒 素
グル タ ミン酸 は 節 足 動 物 (昆 虫) で は 神経 筋 シナ プス
で 伝 達 物 質 と して働 い て お り, クモ に は グル タ ミン酸 レ
り, この ダ ニ毒 蛋 白質 のcDNAの
ク ロー ニ ン グが 行 な
わ れ, 全 構 造 が決 定 され た^<25)>が,
作 用 機 構 な ど に関 して
詳 し くは解 析 され て い な い。
セ プ タ ーやCa^<2+>チ ャ ンネル を 阻害 す る もの が認 め られ
寄 生 バ チ に は非 常 に多 くの種 類 が あ り, まだ, 未 同定
て い る。 ペ プ チ ド性 の毒 素 も あ り, 昆 虫特 異 的 に働 くも
の種類 がか な りあ る も の と推 察 され て い る。 宿 主 の 昆 虫
の も い くつ か あ るが, 作 用 機 構 は あ ま り解 明 され てお ら
に産 み 付 け られ た 寄 生 バ チ の卵 は, そ れ ぞ れ の種 が それ
ず, ア ミ ノ酸40個
ぞ れ の宿 主 と の関 係 で特 異 的 な 発 生 の過 程 を 示 す た め,
く らいか らか な り高 分 子 の も の ま で
存 在 す る よ うで あ り, 昆 虫 の種 の違 い に よる特 異 性 の差
846
異 な った 寄 生 バ チ と宿 主 の組 合 せ では 正 常 な 寄 生 バ チ の
53
神経毒ペ プチ ドの遺伝子を導入 した組換え ウイルスの農薬へ の応用
発 育 は 起 こ らな い こ とが多 い。 産 み 付 け られ た 寄 生 バ チ
は 宿 主 の成 長 や ホ ル モ ンバ ラ ンスを 認 識 して 自分 の成 長
5)
L.
Maeda,
S.,
per,S.
を コ ン トロ ール した り, 宿 主 の ホル モ ンを不 活 化 した り
780
6)
K.:
A.,
mock,B.
す る こ とも で き る。 ま た, 寄 生 バ チ 由来 の ウ イル スが 宿
主 の免 疫 系 を 阻 止 した り, 寄 生 バ チや この ウイル ス 由来
Miller,
Majima,
K.,
D.,
Fowler,
409-418
L.,
E.:
(1988)
Hanzlik,
Maddox,
T.
D.
N.,
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Virology,
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もあ り, あ る種 の この よ うな ペ プ チ ドは そ の構 造 が決 定
され てい る。
8)
2.
昆 虫 補 食 性 ダ ニ 毒遺 伝 子 の ウ イ ル ス へ の 導 入
ダ ニ毒 (PxT-I)
のcDNAを
9)
導 入 し, か つ, 多 角 体
遺 伝 子 を 保 持 した 組換 え ウイル スは, A. californica
核
多 角 体 病 ウイ ル ス の 多 角体 遺 伝 子 と合 成 プ ロモ ー タ ーを
10)
11)
保 持 した ベ ク ター を用 い て作 製 され た 。 組 換 え ウイル ス
を Trichoplusia ni
に経 口感染 して検 討 した結 果, 本 毒
12)
Database Center for Life Science Online Service
素 に特 異 的 な 筋 肉 の収 縮 が 認 め られ, 上 記 の サ ソ リ毒 の
場 合 と同 様 に, 即 効 性 の 付加 が認 め られた^<25)>。
13)
14)
お わ りに
最 近, 化 学農 薬 の 生産 を行 な って きた 欧米
の 多 くの 企 業 は, 組 換 え ウ イル ス に よ る害 虫防 除 の研 究
15)
に 関 与 して お り, この実 用 化 が 期 待 され て い る。 一 方,
蛋 白質 性 のBt毒
素 に対 して抵 抗 性 が 獲 得 され る こ とが
16)
示 唆 され た。 抵 抗 性 系 統 の出 現 は 農 薬 の使 用 上, 大 きな
問 題 で あ るが,
ウイ ル ス に これ ら の 毒 素 を 導 入 した 場
17)
合, た とえ毒 素 に対 して耐 性 を示 す よ うな 個 体 が 出 現 し
て も, 感染 個 体 は最 終 的 には す べ て ウ イル スに よ り死 に
至 るた め, 抵 抗 性 が獲 得 され る可 能 性 は 非 常 に少 な い も
18)
19)
の と考 え られ る。 また, 本 シス テ ムを 用 い れ ば, 本 来 と
同 じ活 性 を もつ 蛋 白質 性 毒 素 を 比 較 的 多 量 に合成 す る こ
20)
とが で き, イ オ ンチ ャンネ ル の 構 造 や 作 用機 構 の解 明,
また, 構 構 上 に お け る特 定 の ア ミノ酸 の果 た す 役 割 な ど
を 直 接 検討 す る こ とが で き る であ ろ う。
21)
文
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