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TPPって知っちょる?
~命も取り引きされる時代がやってくる!?~
2014
会場:山口大学
テーマ:TPPって知っちょる?
5.31
~命も取り引きされる時代がやってくる!?~
○●全日本民医連 中四地協●○
6.1
d(ゝ∀・)
6回の実行委員会を重ねて
(*^∀^*)
2013年の夏、韓国の医師からTPPの話を聞いた実行委員長の丸井さんは、「TPPが生活に
深く関わることを知った。もっと多くの人に知ってほしい!」という思いをもちました。
そこで、今回の中四国医系学生のつどいは、TPPについて学ぶことになりました。同年12
月に実行委員会を立ち上げ、中四国の学生と職員で一緒に準備を進めてきました。大学の
授業のあと、テレビ会議での実行委員会を行い、議論を重ねてきました。また2014年2月
と4月には、直接顔を合わせての実行委員会を行い議論と学びを深めました。
第3回実行委員会
2014年2月8~9日に愛媛県今治市で開催されました。
大雪に見舞われる中、医系学生14名と職員14名が参加
しました。
「どうなっている?どうする?日本の医
療」
愛媛生協病院MSW永野 弘美さん
医療現場でおきている矛盾や健康保険証を持てない患者さん
たちがいることなどを患者さんの事例を交えながらお話しして
もらいました。
参加者の感想・・・
「国民皆保険とは言い難い社会的に早すぎる死が作
り出されている実態。生活保護法の改悪や保険料未
払い者への制裁など、生活困難者がより生きづらい
日本を作っていた。無料低額診療の普及や悩みのあ
る方への丁寧で親切かつ適切な説明ができる医療従
事者になる必要があると強く感じた。」
「TPPと日本の医療制度について」
愛媛県保険医協会 会長 藤田敏博 医師
TPP交渉参加への経過、ISD条項、ラチェット条約、医療の問
題点として、混合診療の解禁・株式会社による病院参入などに
日本の医療制度が崩れてしまうかもしれないという危機感をも
つお話をしていただきました。
参加者の感想・・・
「知ることが多く、勉強不足を痛感した。知的財産権
に関する薬価の問題点なども知ることもでき、とても
興味深く話を聴くことができた。TPP参加により平等
な医療の成立が困難になることはあってはならないこ
とだと思う。自分にできることは何なのかをしっかり
考えたい。」
永野さんや藤田医師の講演を聴いて自分たちが疑問
点や考えたことをKJ法で各班ごとに整理し発表し
ました。各グループの考えを聞いた上でつどいの
テーマや内容などを議論しました。
第5回実行委員会
2014年4月29日、広島県広島市で開催されました。「TPPについて自分の考えを
もつ」「医療従事者になる将来の自分とどう関係するのか考える」という本番の
目的を達成するために、TPPの説明グループ、SGDの内容検討グループ、交流会
グループに分かれ、意見を交流し、本番の内容や運営を確認しました。
スケジュール
2014年5月31日(土) 1日目
6月1日(日)
2日目
9:00 ラジオ体操
13:30 開会式
SGD
現地挨拶(上野尚山口民医連会長)
9:40 学習講演③「地域における健康問題と医師養成」
実行委員長挨拶
講師:野田浩夫医師
13:50 アイスブレイク
(医療生協健文会理事長、全日本民医連副会長)
14:20 学習講演①
質疑応答
「TPP、FTA時代、日本と韓国の現状と未来」
11:00 SGD
講師:ウ・ソッキュン医師
(健康権実現のための保健医療団体連合政策委員長) 12:45 閉会式
質疑応答
15:35 学習講演②
「韓国のFTAと医療民主化反対運動の歴史」
ビョン・ヒェジン氏(同団体企画局長)
質疑応答
17:00 SGD(スモールグループディスカッション)
19:00 夕食交流会
「医学生のつどい」「医学生ゼミナール」紹介
各県活動報告
韓国の講師からメッセージ
21:00 二次交流会
ご当地クイズ、お絵かきしりとり、紙ヒコーキ対決
22:00 学年別交流
1日目
1.開会式
2014年5/31(土)~6/1(日)、山口大
学にて医系学生のつどい2014in山口大学が
開催されました。開会式では山口大学医学部
2年のY.M.実行委員長より本番までに積み上
げてきた3回の実行委員会、そしてその中で
学習した内容について紹介がありました。
TPPを初心者の学生にも分かり易く、メイン
の講演に興味を持って臨めるような挨拶でし
た。
■ヘルメットをかぶり仕事をしている方に出会いました
なぜ仕事中にヘルメットなどをしているのかとい
うことを聞いたところ驚くべき理由がありました。
頭を怪我し、脳出血した場合に頭を開けて血を抜
くまでは保険が適用されるが、処置後に頭を閉じる
際には保険が適用されないので、身を守るためにヘ
ルメットをしていることが話されました。また虫歯
の場合、歯が虫歯になっても、治療費が高いので歯
をすべて抜かなくてはなりません。
なぜ、こんなことになっているかというと、アメ
リカの医療制度はほかの国のように政府が運営して
いくのではなく医療企業と呼ばれる巨大私的医療保
険会社、巨大営利病院チェーン、巨大製薬会社など
によって運営が行われているので、企業に都合のよ
いように変えられます。
Ⅱ.TPP=FTA=自由貿易協定とはなんでしょうか
1.
※下記参照(出典:社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/images/1890.gif)
アメリカの自由貿易協定の目的
世界で最も企業に対する規制がないというアメリカの制度をほかの国に移植すること
です。
2. アメリカとの貿易障壁とは?
他国の企業に対する規制や国民皆保険制度(健康保険)などの社会保障がTPP、FTAに
とっての貿易障壁となります。さらにTPPは24分野が協議の対象になっています。
Ⅲ.国境なき医師団もTPPに反対しています
医療費などが上がると、貧困国で10人の子どもを救える金額で1人の子どもしか救えなく
なるからです。
■TPPは薬価を上げます、アメリカでは呼吸をするにもお金がかかります
プルミコート(気管支喘息治療薬)
※
アメリカ
イギリス
韓国
保健適用無
175$
7$
12$
保険適用有
―
無料
3$
アメリカはなぜこんなに薬の価格が高いのかというと、アメリカでは政府ではなく
民間の保険会社と製薬会社が薬の価格を定めているからです。
Ⅳ.TPPの毒素条項 (毒素条項とは条約・協定などにおける、自国に不都合を及ぼす条項を指す表現)
1.逆進防止条項(ラチェット条項)
⇏一度規制が緩和をされる、企業に開放されると元に戻すことはできません
2.国営企業の商業的運営規定(SOEs)
⇏国営企業が政府の補助金を受けるなど、税制上の優遇を受けると違反になります
3.包括許可(ネガティブリストの条件)
⇏禁止すると規定しておかないと、規定していないものすべてが可能になります
⇏将来の確立する技術など予想不可能なものも対象です
4.ISD(投資家国家仲裁制度)
⇏一企業の投資家が、国家と対等の権利を持ち、一投資家が国家を訴えることができます。
Ⅴ.韓米FTA協定を結んでから2年後、韓国の状況
韓国の経済自由区域での健康保険を使わずに医療費を自由に
設定できる営利病院の開設が認められ、その経済自由区域の数
が増えている状況です。この営利病院は、外国人患者を対象と
した病院ではありますが、韓国人の利用もできるため事実上韓
国国内での営利病院が許容されることになりました。また、政
府主導による「医療民営化事業」により、企業による薬局の設
立も認められ、薬局も営利企業化していく恐れがあり、医療
費・医療機器費を決める国の役割がなくなってきている。政府
が医療機器費の価格を6.2%引き下げたところ、3,000件以上の
申し立てが企業から行われました。
民間企業に対する規制はアメリカではほとんどなく、その制
度を移植するFTAの影響で国家による規制も難しくなり新しく
規制をすることもできなくなります。FTA締結による許可-特許
連携制度では、企業や投資家が特許侵害を申し立てれば、その
結果を待たずに販売停止になります。
最後に、禹 錫均先生からのメッセージ
アメリカでは、医療というものは商品として扱われています。そのアメリカの考え方、制度を日本
に移植しようとしているのがTPPです。日本の社会保障制度や医療保険制度そのものが、TPPでは貿
易障壁として扱われてしまいます。日本の医療の考え方は、医療とはどういうものでしょうか。医療
とは、社会保障なのでしょうか。それとも商品なのでしょうか。
私たち医療者に求められるものは、利益と命のどちらなのでしょうか。良心に従い命を守る専門家
としての診療なのか、利益を追求する医療資本に依存する医療技術者か。あなたはどちらだと思いま
すか。
「韓国のFTAと医療民営化反対運動の歴史」
ビョン・ヒェジン
【健康権実現のための保険医療団体連合企画室長】
韓国FTA闘争は2006年から始まり、始まった時は交渉の中身は明らかにせず、政府が1
回の説明会で強行しようとした。全国民が反対し、2012年に締結された。1番最初に説明
会が開かれた所で全国民の意思を無視するFTAを停止しろと座り込みをした。保険医療団
体は、対策委員会を組織しすべての人が一緒になって反対した。患者・労働組合・保険医
療の対策委員会が組織されました。全国連合本部が発足、295の社会団体が参加した。
大学街でも集会が行われ、全国民大会が行われた。その中で映画人・医療人も反対してい
る。俳優たちが国民に与える影響は大きかった。韓米FTAは生命放棄文書だと国民に知ら
せて、学生もこの運動に参加していた。TPP交渉は、密室交渉で何も公開されていなかっ
た。なので空港まで行って、学生たちが公開を求める運動をしている。韓米FTAとは何か
ということを知らせるために交際会議も開いた。反対運動をどのようにしたら良いかとい
う意見を出してもらうための場所でもあった。アメリカとFTAを結んだオーストラリアや
アメリカではどのように考えているのか話した。保健医療の学生たちをたくさん組織し、
医学生だけでの集会ができるまで大きくなった。「医療は商品ではない」メディア対策委
員会や女性対策委員会など、社会の各分野で組織された。日本のメディアはTPPについて
あまり放送されませんが、韓国のメディアは幹米FTAは問題だということを広く知らせた。
それだけではなく、座り込みなど行った。
交渉文は、一般人が読んでも簡単に理解できないようにわざわざ難しく作られていまし
た。よって、交渉で何が行われているか公表する専門家(弁護士・医師)を作り、いろいろ
な所で講演会を行った。
最初は分からなかったが、お金より技術より命が大事
と分かり学生たちは自分たちで行動し始めた。その結果、
韓米FTAに賛成派は約70%だったのが、運動を経て、
反対派が70%になりました。韓国も日本も言えること
は、国民皆保険を国民が支持するということ。
また、BSE牛肉輸入反対闘争は韓米FTA反対運動の要。
アメリカはこの韓米FTAの交渉をする時、成立条件とし
てこのアメリカ産牛肉を輸入することを条件にした。こ
のことに対し、巨大な反対集会になり、3か月続いた。
何の罪もない子供たちを守ろうとママベビーカー部隊、
子どもたち自身も「われわれの未来を取引しないで」と
パネルを持って集会に参加した。この運動で韓国大統領
は、国民にすべてのことをやりませんと約束せざる負え
ない状況になったものの、3年後の2012年、韓米FTAが
国会で成立した。韓国の与党が暴力的に議案を通し決議
した。その時の与党の議員が現在の大統領。野党から出
た候補者とは1.5倍の差で当選した。
ずっと運動して来たのに、なぜ阻止できなかったのかと問われるかもしれませんが、国会
前で反対運動をしていたのにも関わらず阻止され、韓米FTA決議は正当な順序、過程で決め
られたものではなかった。韓米FTAやTPPは国会が決めたとしても発行までには時間が必要。
私たちはあきらめずに韓米FTAを中断しろと運動を続けた。韓米FTAが通った時の与党の議
員が大統領に就任したが、不正選挙が明らかになり国民から大統領辞任を求めている。現大
統領が進めているのは規制緩和や民営化。アベノミクス=パク創造経済。鉄道の民営化や医
療の民営化が進められた。
韓国の医療費はOECDの中でも一番高く、
家計支出のうち、医療費の割合が一番高いの
は韓国。日本は真ん中ぐらい。また、韓国は
55%健康保険適用させる。その中で一番費
用がかかっているのは大学病院に行って教授
の診療を受けた時にかかる「選択診療費」と
いうもの。また、差額ベット料や薬代も高い。
外来の薬代が日本と同じくOECDの平均より
も高い。
韓国の病院は巨大で病院間の競争が激しい。
1000億円の単位で病院が収益を得ている。そして
次々と病院を作ろうとしている。日本も世界的に
多いと言われているが、韓国だけが病床数が増えている。人口に対するMRIなどの検査も日本と同
じく多い。過剰診療でお金を儲けている。年間医療費の増加率が世界一。しかし、病院も大きくて
多いが、医療従事者が少ない。だから医療の質が追い付かない。人口1000人あたりの医師数が
OECDの平均以下。国民1人の年間訪問数が日本韓国がツートップ。看護師の数も少ない。こういう
状況で民営化を進めようとしている。セウォル号の事故についても船舶会社の民営化が原因で起
こった。
韓国では今、みんな自分たちなりの活動をしている。医療民営化反対だけではなく、TPP・韓米
FTA反対運動も全部している。
最後にみなさんに話したいのはただひとつ。一つの質問について考えてほしい。「本当にお金よ
り命が優先なのか。言葉では言いながら医学生として医療人として、お金よりいのちであるという
スローガンの活用していくのか、考えていくのか」今日の講演会が自ら考えるそういう時間になっ
てほしいと思う。
○TPPのイメージとして農業というものが強かったので、正
直ここまで自分の生活に関係するとは思わなかった。アメ
リカの医療制度が導入されることで今以上に医療格差がう
まれ十分な医療を提供することができなくなることも わ
かった。
●韓米FTAの詳細や国民・政府の反応を韓国側からたくさん
知ることができた。韓国では学生さえも政治に関心を持っ
ているということが特に驚きだった。デモをたくさん起こ
すことが正解とは言えないが、日本人も自分たちのために
もっと政治に興味をもち、選挙に参加すべきだと思った。
また、「政治に興味をなくすためにわざと難しくしてい
る」という言葉に一理あるなぁと思った。
3.SGD
1日目SGDはウ・ソッキュン氏、ビョン・ヘェジン氏の講演を受けて10人程度のグループに
分かれて行いました。
各グループには学生、医師、職員等、立場が違う中でのディスカッションとなりました。
「政府が全く関係ないって言ってた部分が締結
され た後には 、変わ ることも あって 怖いな と
思った。これからTPP入りますってなった時に、
この部分は踏み入らないって言っていたのに、
本当は入ってきたり。締結の内容は私たちは見
れな いし。日 本人な りのやり 方を見 つけな い
と。」
「講師から診察室以外で知ることが重要という
考え方は重要だと思った。患者の視点から社会
政策を考えることが大切。」
「あまり知らずに聞いた。アメリカのエゴを
感じた。手術、特許に及ぶのも驚いた。薬価
の部分は調べないといけない。」
「関税以外にも少し知っていたが、具体的に
聞いて驚いた。最後にあった「利益か命か」
が印象に残った。」
「韓国でFTAを止めることはできなかったが、
運動なければもっと政府の都合の良いように
されていたかもしれない。」
等の意見がありました。意見・疑問を発信し、交流していく中で、新たな視点や気付きも
ありました。
講師のお二方も各グループのSGDへ参加され、お話をいただき、理解が深まったのではな
いでしょうか。
今回の学びを今後、活動としてつなげていく事が重要になります。
4.夕食&二次交流会
学習が終わった後は夕食交流会!
各県発表の時間では、香川・愛媛・徳島の3県から、それぞれ活動報告
がありました。
それから、「第35回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」(全
国つどい)の紹介がありました。初めて知る学生さんに向けて、全国つど
いの説明や3月に行われた「3月つどい」の報告があり、様々な講師や研
修医の話を聞くことができること、自分自身の考える力やまとめる力がつ
くこと、全国津々浦々の学生と交流ができる事など、魅力も語られました。
そして、これから開催される予定の「7月つどい」「夏のつどい」への参
加の呼びかけもありました。
次に、「全国医学生ゼミナール」(医ゼミ)の紹介もありました。昨年
山梨大学で開催された医ゼミの様子や、全て学生だけで作り上げる企画の
おもしろさ・魅力について紹介してもらいました。今年は信州大学での開
催が予定されています。
終わりに、韓国からお越しいただいた講師の方々から、学生たちに向け
たメッセージと、実行委員長へのプレゼントがありました。
★全国つどい・夏のつどい★
2014年8月7日(木)~9日(土)in愛媛県・奥道後
★医ゼミ★
2014年8月16日(土)~19日(火)in信州大学
二次交流会では、SGDとは違う班に分かれて班対抗ゲームを行いました!!
「ご当地クイズ」「お絵かきしりとり」「紙ヒコーキ飛ばし」を行いました。総合点の高い順に賞品が
もらえるため、点を競って大いに盛り上がりました♪
ゲームのあとは「学年別交流会」があり、みんな夜遅くまでじっくり語り合いました。
ご当地クイズ
お絵かきしりとり
紙ヒコーキ
飛ばし
学年別交流
5.各県報告
香川民医連
様々な企画に学生が積極的に参加
して取り組んでいる様子を、動画で
月ごとに報告しました。
さらに、みき分室を利用している
多くの学生たちから、みき分室の良
いところ(ランチミーティング、雰
囲気、担当者の人柄…等々)の発表
がありました。
愛媛民医連
日頃行っているランチミーティ
ングや学習会、その他企画につい
て活発に取り組んでいる内容を紹
介しました。
また、講演会「愛大生には愛が
ある~路上死をなくすための学生
の取り組み~」への参加案内を併
せて行いました。
徳島民医連
地域医療フィールドワークin
東祖谷の紹介をしました。地域
に出かけ、地域の方々との触れ
合いを通じて、学びを深めてい
る様子が報告されました。
このようなフィールドワーク
を徳島では年に1回行っています。
2日目
6.学習講演
「地域における健康問題と医師養成―民医連の方針―」
野田 浩夫
【全日本民医連副会長 医療生協健文会理事長】
今回は「地域における健康問題を民医連はどのように考えて
いるか」ということを話します。地域の健康問題については、
「1%の富裕層と99%のそれ以外」といった経済格差から捉
えることができます。
ドイツ人医師ウィルヒョウ(1821-1902)は腸チフスの流
行調査の結果を貧困問題や民主主義思想の普及という視点から
捉えました。彼は、「必要なことは150万人の貧困者に薬を供
給することではなく、無制限の民主主義を与えることである。
いいかえれば、教育と自由と繁栄を与えること」として、具体
的に貧困者の税金を減らし富裕者の税金を増やすことなどを提
言しています。「医療はすべて政治であり、政治は大規模な医
療に他ならない」という言葉も、彼が残したものです。
民医連も地域における健康問題に取り組んできました。2013
年に行った民医連の「無保険のための死亡事例調査」では、56
人の方が無保険によって亡くなったことが分かりました。この
調査に参加したのは民医連に加盟している事業所の約半分です。
日本の全医療機関における民医連の割合は約1%だから、単純
計算では1万人くらいの方が無保険によって医療が受けられず
死亡したと考えられます。
事実、以前手術室に担ぎ込まれた無保険の方を手術したときに、「それまで保険料を払ってこな
かった者が悪い」という理由で保険が適用できず、手術費全額を病院が負担することになったこと
もありました。
最近は糖尿病の若年化も日常診療のなかで目に付きます。調べてみると、若くして糖尿病を患う
人の73%はひきこもりや非正規雇用、生活保護であり、肥満であることが分かりました。ここから、
「貧困→肥満→糖尿病」という図式が多くの人に当てはまることが考えられます。
こうした「健康の社会的決定要因(SDH)」を、科学的に証明したのがイギリス医師会会長でも
あるマイケル・マーモット(1945-)です。彼は研究によって、地位(管理職、専門職、事務職、
補助職など)の差で相対死亡率が4倍違うことを明らかにし、「生活格差の勾配が急であるほど、
健康格差の勾配も急になる。また、この相関(生活格差‐健康格差)に無関係な人はいない」とい
うことを結論付けました。
SDHを特定することの意義はふたつあります。ひとつは、「人権としての健康権」を保障するた
めです。もうひとつは、「健康の本質」を理解し、「不正義が大々的に人を殺している」(WHO
健康の社会的決定要因委員会最終報告2008より)社会の状況を変えるアプローチを探るためです。
問題は、20世紀に起きた二度にわたる世界大戦・人類大量殺戮への痛切な教訓として、また「基本
的人権」の一環として何度も国際社会で宣言されてきた「人権としての健康権」が、今なお実現を
阻まれ続けていることです。そして、民医連は地域における健康問題をSDHの視点から捉え、「人
権としての健康健」が皆に平等に保障される社会の実現を目指して、今も様々な医療活動を行って
います。
7.SGD
野田医師の話を聞いた後でSDGをおこないました。
講演で語られた社会環境が健康に与える影響の大きさに驚いたという意見、だからこそ医療人
として患者さんの生活状況にあったアドバイスをしないと意味がないという意見が出されました。
生活状況に目を向ける視点があるだけでも患者さんへの対応が大きく違います。患者さんの生活
環境を捉えるには、現場を見ることが必要ですが、そのためには大学生のうちに広い視野を持つ
ことが大切だという意見が出されました。
講演についてのSGDの後、つどい全体を通して何を
学んだかを考えるためKJ法で意見の整理をおこないま
した。今回は一枚の紙を三等分して、そこに3人が意見
を書くという少し変わった方法です。そして3人がそれ
ぞれ意見を書いた紙を切りわけ、グルーピングしていき
ます。意見の書かれた紙をグループに分けていくなかで、
どんな事を話していたのかが整理されていきます。
作ったグループをそれぞれの関連性を考え、配置
していきます。模造紙に張り付け、グループを明確
に線で囲います。それぞれのグループに表題を付け、
関連を書きこんでいきます。
まとめた後の各班交流では、TPPや民営化、貧困
問題などをいのちと利益の関係性で分けた班や1日
目・2日目で分けた班様々な分け方がなされていま
した。グループ表題の付け方にも各班で何を重視し
たたが表れています。
注目すべきは各班とも今回のつどいを経験して、これから
自分たちがやっていきたい事としてくくられた意見です。問
題を学ぶだけではなく、自分たちが学んだ事をどう広げてい
くかということが各班で話し合われていました。
今回分かった問題へ関心を持つ、当事者意識を持つ事が行
動につながるのではないだろうかという意見や、多くの人に
興味を持ってもらうためにTPPや貧困の問題を広げていこう
というものがありました。そのための具体的な方法として、
SNSやランチミーティング、学校など様々なツールや場所で
身の回りの人達に広げるなどがあげられました。
8.閉会式
閉会式で鈴木健太郎先生(地協医学生委員長)は、
問題意識の泉が少しずつコップに溜まり、溢れ出し
た時が韓国のろうそくの火運動のようなアクション
になるため、社会情勢を学び、常に問題意識を持ち
続けることのできる医療人になってほしいと話され
ました。また、民医連綱領にある「無差別・平等の
医療」を実現するために、さまざまな団体と手を結
ぶことはもちろん、足は地(大学)に、目は社会に
向けることのできる学生が民医連医療の後継者とし
て活躍してほしいと最後を締めくくりました。
○さまざまな問題点を知ることができ、メデイアでは取り上げられていない情報を知ることができた。
○TPP、韓国FTA、健康問題等の講義を通して、医療人として求められる広範な知識に関する見地の重要
性を学んだ。大学の授業では得られない貴重な体験が出来た。
○普段考えない、想像しない内容で、自身について考えるきっかけとなった。非常に貴重な経験だった。
○2日目の講演では、社会的経済的格差が健康格差につながるというのがどれほど重いことなのか、改め
て認識することができた。
○伝えたかったこと、感じてほしいことが、多くの人に伝わったのだと発表を聞いて感じれたのが幸せ
だった。2日間を通して、まとまりが良かったと思う。
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