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No081(2.28)

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No081(2.28)
2008.2.28
北海道大学保健管理センター
第 81号
ある少女の記憶
保健管理センター所長
武藏
学
家族はもとより周囲の人々からも愛された一人の
の足跡のためにあった、と言えるような、そんな一
少女に出会った。と言っても彼女は既にこの世を去
生を、私は送りたいと思う 」(1978年9月20日の日
って久しい。彼女は高校2年生の秋に白血病を発症
記 )。札幌南高校2年生であった同年10月19日、彼
し、保健管理センターに赴任するまで私が属してい
女は急性骨髄性白血病で北大病院へ入院する。その
た大学病院の内科に入院した。この時、私は3年間
わずか1月前の日記に彼女はこう書いたが、彼女はそ
にわたりT女子医大に在籍していたため、彼女の闘病
の言葉通りの人生を生きたと私は確信する。それは
生活には接していない。私が北大病院に戻ったのは、
遺稿集にある母親の言葉で明らかである 。「心身共に
彼女が白血病の再発で逝去された半年後で、私はわ
地獄のような闘病生活を本当によく耐えぬきました。
ずかに先輩の会話に登場する彼女の名前を耳にした
どんな苦しみの中にあっても信じられないほど静か
に過ぎなかった。ところが最近、古書店で彼女の遺
に澄んだ心で----薄れゆく意識のきわにも、残り少
稿集『ひとすじのいのちを 』(安藤修平編、北海道新
ないかすかな力をふり絞るかのように主治医のお医
聞社、1982年)に出会い、背表紙にある山藤久仁子
者様に最後のお礼のことばを述べ、あまりにも残酷
という名前がかすかな記憶と響き合い 、
「 ああ 、あの 」
な現実に悪戦苦闘している親の心を気づかいながら、
と思い当たって購入した。
純白の雪片がひらひらと舞う冬の朝、地上の私共に
彼女はわずか18年余の人生し
は手の届かぬ彼方へと導かれて参りました。------
か生きられなかった。しかし、
『わたし、死ぬのはちっとも恐くないの----
その短い時間に彼女固有の生が
とうに不思議なくらい。-----ただ、お父ちゃまとお
強く刻印されていることを遺稿
母ちゃまが悲しむと思うと----
集から知った。自分の家庭や職
なの-----許してネ!』と言った時の万感の想いをこ
業を持ち、それらを通して社会
めたあの子の声が、いつもいつも私には聴こえてい
に貢献することはなかったが、
る の で ご ざ い ま す 」( 山藤 慶 子 「 心 優 し い 皆 々 さ ま
家族との愛情を育んだ家庭生活
へ 」)。彼女の生は、深く強い愛に貫かれている。そ
や学び舎での交流を通して周囲
して、彼女の愛読書の栞が挟まれたページには以下
の多くの人々へ影響を及ぼした
のヘッセの言葉が記されていたと言う(高橋健二著
に違いない。そして私のように 遺稿集を通して彼女
「 ヘルマン・ヘッセ
ほん
それだけが心残り
-危機の詩人 -」新潮選書より )。
に出会い、強いインパクトを与えられた者も少なく
私たちの行く先は死であり、
はないだろう。感動はある人の人生の長さや残した
私たちの信仰は無常である。----
業績の多さからくることもあるが、短くともその生
だが、悩みも死も
固有の強さや深さからくることもある。札幌農学校
私たちの魂を脅かしはしない、
に多大な影響を残したウイリアム・S・クラークの在
私たちは一そう深く愛することを知ったから!
籍がわずか8か月であったことを思い起こせば十分
だろう。
「死に臨んで、その生涯のすべてが、この死のた
めにあり、またこの死が、それまでの生命のすべて
私たちも一層深く愛することを知らなければなら
ない。
2008.2.28
『KY』は、社会的スキル?
保健管理センターカウンセラー・学生相談室相談員
武田 弘子
昨年辺りからその存在が一般に知られるようにな
を把握する認知的能力と共に場の空気を読むための
り、俄かに脚光を浴びた言葉に『KY』があります。
元になるものであると思います。確かに『KY』に
その出自についてきちんと調べていませんが聞くと
も、これらの概念と重なる部分があるようには思わ
ころによると、女子高生間の隠語みたいなものだっ
れます。しかし 、『KY』が重視しているのは、その
たようです。この『KY』は、最初は「空気を読め
場にふさわしいといえば聞こえは良いですが、単に
ない人のこと」の意味で用いられていたようですが、
自分が他の人から外れているか否かだけと思われま
そこから派生して「空気を読め」と相手に促す合図
す。それに対して「以心伝心」や「雰囲気を察する」
という使われ方もされるようになり、さらに皮肉や
というあり方には、自分と相手という個々の人の存
批判がこめられて「空気を読んでいない人」を揶揄
在における各々の立場と相互作用によって出来上が
し、仕舞いには除外する場合にも使われるようにな
っている状況や流れを前提として、相手の意図を汲
ってきたようです。他と異なった反応をする者は、
み取りつつそれに対して自分としてどのように振舞
その場にいることを許さないというところなのでし
うのかのという選択と自己決定があると思われるの
ょうか。
です。状況を的確に把握していることが前提となり
対人関係において「場の空気を読む」ということ
ますが、当然のこととして、相手の意図を理解し、
は、不可欠の社会的スキルだといえます。これが備
相手の立場・心情を慮ったとしても、相容れないと
わっていないと社会生活(特に対人場面)では、大
か許容しがたい場合は、あえてその場の流れに棹差
変困難に陥りやすくなります。大抵の場合、年齢と
すことでも主張すると言えます。つまり、汲み取っ
ともに重ねられる社会経験の増加や拡大につれて高
て場に合わせるか、汲み取ったとしても合わせるべ
まるスキルであると言えます。そして、場の空気を
きではないとしてあえて合わせないのかという自分
読みとると共に、その場でどのような振舞いが適応
の判断と決定が働いています。そこに主体性がある
的か判断する力も培われていくと言えます。
といえます。
ここで考えるのですが 、『KY』は、果たして社会
他から外れることや排除されることを怖れ、流れ
的スキルの一ついえるのかどうかということです。
に身を任せて合わせるだけの振る舞いが本当に適応
結論から言いますと、一見社会的スキルのようです
的なのでしょうか。やはり受動的に合わせるだけの
けれど似て非なるものであろうと私は考えます。
振舞いが適応的であるとは思われません。主体性を
元々は仏教用語でありますが「以心伝心」という
持ち、相手を理解し、適切な自己主張があってこそ
言葉があります 。「云わずして互いに心が通じ合うと
社会的スキルと言えるのではないでしょうか。この
いうこと」の意で一般に用いられています。又 、「雰
ことからみて 、『KY』は、社会的スキルとしての要
囲気を察する」というあり方もあります。これは、
件を欠いているのではないでしょうか。いかがでし
明確に言語的に表現されない感情や状況を推し量る
ょうか。
とか、思いやるというあり方です。これらは、状況
※次号の「ほけかんだより」(第82号)では、平成20年度
(2008年度)の一般定期健康診断日程表を掲載する予定
です。受診の該当日を確認してください。
イラスト
作山 綾さん
2008.2.28
海外へ旅行あるいは帰省する職員及び学生の皆様へ
関係者の努力にもかかわらず、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)感染が以下の地域に拡大し、鳥から人
への感染も歯止めがかかっていません。
1.
1. インドネシア
インドネシア 2. ベトナム 3. エジプト 4. 中国 5. タイ 6. トルコ 7. アゼルバイジャン
8. カンボジア 9. イラク 10. ラオス人民民主共和国 11. ジブチ 12. ナイジェリア
13. ミャンマー 14. パキスタン
(2003-2008年の確定患者の多い順、2008年1月18日現在。WHOによる。)
やむを得ず、これらの地域に旅行または帰省する職員及び学生の方は次の点にご留意ください。
(出国前にご注意いただく事)
1.旅行あるいは帰省することを上司や指導教員に伝える。
(これらの地域にてご注意いただく事)
1.可能な限り家禽類や野鳥(鶏、七面鳥、あひる、鴨、白鳥など)との接触をさける(羽根、糞、十分
加熱してない肉や卵も含む)。
2.高病原性鳥インフルエンザ感染疑いの患者との接触をさける。
(日本帰国後にご注意いただく事)
1.帰国時あるいは帰国後1週間以内に咳や38度以上の発熱がある場合には、職場あるいは大学に来る
前に、必ずマスクをつけて医療機関を受診する。
2.医療機関を受診するときには、できるだけ夜間帯はさけ日中に受診する。
3.海外からもどった学生で、1.に該当する場合には、北海道大学保健管理センター
(706-2025)に電話連絡して医療機関受診等を打ち合わせる。同時に指導教員にもそのことを電話
で連絡する。
保健管理センター
Intermission
「冬の陽ざし」
坂田
勲 氏 Isao Sakata
元北方生物圏フィールド科学センター事務長
2008.2.28
診療・健康相談と担当医師の御案内
月
火
水
木
金
内
科 武 藏
学
小 林 隆 彦
武 藏
学
藤 澤 文 絵
小 林 隆 彦
精神衛生相談 朝 倉
聡
朝 倉
聡
朝 倉
聡
整形外科相談 鐙
邦 芳
鐙
邦 芳
歯 科 相 談
中 村 公 也
★受付時間: 13:00~15:30 (但し、金曜日の整形外科相談の受付時間は、14:00~15:30 です)
各種相談と担当看護師の御案内
留 学 生 相 談
For international students
女 子 学 生 相 談
栄
養
相
談
火
南 トメ子
Tomeko Minami
木
南
折戸智恵子
トメ子・折戸智恵子
受付時間:13:00~15:30
★栄養相談は予約制となっております。
★看護師へのご質問・お問い合わせ ℡ 011-706-3622
★2008年4月以降、留学生相談はしばらくお休みさせて頂きます。
インフルエンザに注意!
診療のお知らせ
休診予定(2/29-4/1) 2/25現在
全科休診:3/12(水)、3/18(火)、3/19(水)
内科休診:3/24(月)、3/31(月)、4/1(火)
整形外科相談休診:3/31(月)
精神衛生相談休診:
歯科衛生相談休診:
※休診の最新情報は当センターHPを
ご覧ください。
月刊 ほけかんだより
平成20年2月28日発行
編集・発行 国立大学法人北海道大学
保健管理センター
〒060-0808 札幌市北区北8条西5丁目
TEL 011-706-2025 FAX 011-706-4872
TEL 011-706-2027(編集担当)
e-mail: [email protected]
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