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資料4 出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の

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資料4 出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の
「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害
防止の在り方について」の概要
平 成 2 0 年 1 月 1 0 日
出会い系サイト等に係る
児童の犯罪被害防止研究会
はじめに
インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(以
下「法」という。)の施行から約4年が経過した。法施行後の状況を見ると、インターネ
ット異性紹介事業(以下「出会い系サイト」という。)に係る児童の被害は、依然として
深刻な状況にあり、現在の規制では児童の被害防止に不十分な点がある。そこで、最小
限かつ実効性のある規制として如何なる方法が望ましいのか議論し、その結果を本報告
書に取りまとめた。
第1
出会い系サイト等の現状(1∼9頁)
出会い系サイトに関係した事件の被害児童数は、平成15年の法施行後一旦減少し
たものの、平成18年以降再び増加に転じた(平成19年上半期の被害児童数は604人で、
うち女子児童が99%。)。
(人)
その他
1, 273
1, 278
(売春防止法違反、職業安定法違反、
窃盗、名誉毀損、強要等)
1, 153
1,085
法施行後いったん減少
するも、平成18年以降
1,061
粗暴犯
再び増加
(暴行、傷害、脅迫、恐喝)
1,000
重要犯罪
(殺人、強盗、強姦、略取誘拐、
強制わいせつ)
610
604
児童福祉法違反
青少年保護育成条例違反
児童買春・児童ポルノ法違反
0
H14
第2
1
H15
H16
H17
H18
H18
上半期
H19
上半期
出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方に関する提言
児童を出会い系サイト等に起因する児童買春等の犯罪の被害から守るために
<総論>(10∼11頁)
出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害の現状は、深く憂慮すべき状況にあり、
児童の犯罪被害防止を図るためには、法規制の在り方も含めた何らかの対策を早急
に講じることが必要である。新たな対策は、より責任のある者はそれに応じた義務
を担い、社会全体としても児童の犯罪被害防止に取り組むべきとの視点に立って、
立てられるべきである。
まず、出会い系サイトの利用に起因して児童買春等の犯罪を行った大人について
は、今後も警察において着実に検挙を進めていかなければならない。次いで、児童
が被害者となる犯罪のきっかけとなるサイトを自らの意思で運営している出会い系
サイト事業者については、被害の現状にかんがみ、相応の責任を担ってもらうこと
が必要である。保護者及び出会い系サイト事業者に役務を提供している事業者とい
った者の責務も考慮する必要がある。
また、出会い系サイトではないが児童の犯罪被害が相当程度発生しているサイト
について、自主規制を中心とした対策を講じることが必要である。
以下、「2 出会い系サイト事業者としての責任を果たすために」「3 児童によ
る利用を防ぐために」「4 適格ではない者を事業から排除するために」を3つの柱
とし、届出制の採用、児童に関係する書き込みの削除、児童の年齢確認の強化等の
対策(提言①∼⑧)を示した。
2 出会い系サイト事業者としての責任を果たすために<提言①∼③>(11∼17頁)
提言① 都道府県公安委員会に対する届出制の採用が適当である。
法令に違反する出会い系サイト事業者を特定できず、これに対する警告や行政処
分が不可能という問題を解消するため、出会い系サイト事業者には、都道府県公安
委員会に届け出ることを義務付け、罰則で担保することが適当である。
提言② 出会い系サイト事業者には、児童に関係する書き込みを知ったとき、その書
き込みの削除を義務付けることが適当である。
出会い系サイト事業者に、本来18歳未満が利用できない出会い系サイト内におい
て児童に関係する書き込みを知ったときには、その書き込みを削除することを義務
付けることが適当である。
提言③ 出会い系サイトに関係した児童被害の防止活動を行う民間団体に対し、公安
委員会が情報提供等の支援を行うことが適当である。
出会い系サイト上の児童に関係する書き込みに関する情報を収集する民間団体に
対して、公安委員会が届出を受けた出会い系サイト事業者のURL等の情報を提供
するなどによって、これら民間団体の活動を支援することにより、事業者に児童に
関係する書き込みの存在をできるだけ早く知らせ、削除義務の実効性を向上させる
ことが適当である。
3 児童による利用を防ぐために<提言④∼⑥>(17∼20頁)
提言④ 年齢の自主申告方式を一部廃止し、年齢確認方法を一層強化することが適当
である。
現在、出会い系サイト事業者には、利用者が児童でないことの確認方法として自
主申告方式を認めているが、年齢詐称により児童の利用が容易に行われ、これをき
っかけとして児童の被害が発生している現状にあることから、児童による利用をよ
り難しくするために、利用者が児童でないことの確認方法(年齢確認方法)を見直
し、現在より強化することが適当である。
提言⑤ 児童の利用を防止するため、出会い系サイト事業者の責務を法に明記するこ
とが適当である。
既に事業者によって規約に従った退会手続きなど自主的な取組が行われているこ
とから、こうした児童の利用防止に関する出会い系サイト事業者の取組が実効性の
あるものとなるよう、出会い系サイト事業者の責務を法律に明記することが適当で
ある。
提言⑥ フィルタリングの普及を促進するため、法に保護者及び携帯電話事業者の責
務(努力義務)を規定することが適当である。
児童が使用する携帯電話等から出会い系サイトにアクセス出来ないようにするフ
ィルタリングは、児童の犯罪被害防止に有効であることから、法に保護者及び携帯
電話事業者の責務(努力義務)を明記することが適当である。
4 適格ではない者を事業から排除するために<提言⑦>(20∼21頁)
提言⑦ 本法に違反した者は、行政処分(事業の停止命令を含む)の対象にすること
が適当である。また、事業者の欠格事由を設け、該当者は事業廃止命令の対象
とすることが適当である。
事業の停止命令の仕組みを設け、現行の是正命令の仕組みだけでは規制に従わな
い事業者に対しても法令の遵守を促すことが出来るようにすることが適当である。
また、不適格者を排除するため、欠格事由(暴力団員等)を設け、出会い系サイ
ト事業者が欠格事由に該当することが分かった時に事業廃止を命じる制度を設ける
ことが適当である。
5 その他<提言⑧>(21頁)
提言⑧ 出会い系サイトではないが、当該サイトの利用に起因した児童の犯罪被害が
相当程度発生しているサイトの運営者は、自主規制として、ネット上で出会っ
た異性との交際の危険性についてサイト上で注意喚起すること等を行うことが
適当である。
今後、出会い系サイトの児童の利用規制が強化されれば、出会い系サイト以外の
サイトに児童の被害がシフトする可能性は否めず、また、現に児童の犯罪被害が相
当程度発生している以上、このようなサイトについても一定の自主規制を中心とし
た対策を講じることが必要であることから、このようなサイトの運営者は、例えば
ネット上で出会った異性と交際することの危険性についてのサイト上での注意喚起
等を行うことが適当である。
6
今後の課題等(22∼23頁)
・ 児童に向けた広告メールの送付の禁止について
・ 私人(第三者)が児童に利用させる行為の禁止について
出 会 い 系 サ イ ト 等 に 係 る
児童の犯罪被害防止の在り方について
平 成 2 0 年 1 月 1 0 日
出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止研究会
出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止研究会委員名簿
座
委
長
前
田
雅
英
首都大学東京都市教養学部長
加
藤
秀
次
(社)日本PTA全国協議会副会長
上
村
彰
(社)電気通信事業者協会調査部長
桑
子
博
行
(社)テレコムサービス協会サービス倫理委員会委員長
甲
田
博
正
(社)日本インターネットプロバイダー協会行政法律部会長
国
分
明
男
(財)インターネット協会副理事長
苗
村
憲
司
駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授
野
口
京
子
文化女子大学現代文化学部教授
藤
原
靜
雄
筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授
吉
川
誠
司
WEB110代表
員
(五十音順)
オブザーバー
内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省
はじめに
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法
律 」(以下「法」という。)は、平成15年の施行から約4年が経過した。
法の附則第2条では 、第7条(「 児童が利用できないことの明示 」)及び第8条(「児
童でないことの確認」)の規定について、施行後3年を経過した段階で施行状況に検
討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講じるもの
とする規定が置かれており、既にその期間が経過したところである。
法施行後の状況を見ると、インターネット異性紹介事業(以下「出会い系サイト」
という。)の利用に係る被害児童数は一旦減少していたものの昨年から再び増加に転
じていることから、出会い系サイトに係る児童の被害は依然として深刻な状況にある
と言わざるを得ない。
被害内容を罪名別に見ると、児童買春、都道府県青少年保護育成条例違反(淫行)
等児童の性的被害に係るものが多数を占めているが、平成19年には、出会い系サイト
を通じて知り合った14歳の女子児童をホテルに監禁し現金を要求した身代金目的誘拐
事件が発生するなど、児童の生命、身体に危険が及んだ凶悪事件も発生している。
当研究会は、検討を始めるに当たって複数の出会い系サイト事業者等から運営方法
や児童の被害防止のための自主的な取組みについて聴取したほか、出会い系サイトを
巡る諸状況を把握した上で、法第7条及び第8条を含めた法全体の問題点の抽出を行
い、幾つかの論点とその対応策について、5回の協議と様々なやりとりを通じて議論
を進めた。
出会い系サイトの利用に起因した児童の犯罪被害が増加している現状を憂慮し、現
在の規制では被害防止に不十分な点があることについては、全委員の一致を見た。一
方、最小限でかつ実効性のある規制として如何なる方法が望ましいのかについては、
議論の時間に限りがある中、様々な意見が出された。本報告書は、これら議論の結果
を取りまとめたものである。
今後、政府内でなされる予定の議論の検討材料としての役割を果たせれば幸いであ
る。
目
次
はじめに
頁
第1
1
出会い系サイト等の現状
出会い系サイトに関係した事件における児童の被害の実態
(1)
(2)
出会い系サイトに関係した事件の被害児童数・・・・・・・・
被害児童の特徴・・・・・・・・
1
1
(3)
児童の被害のきっかけとなる誘引形態の変化・・・・・・・・
2
2
最近の出会い系サイトの現状
(1)
出会い系サイトの推計数及び形態・・・・・・・・
3
(2)
不正誘引の検挙状況及び義務違反への警告状況・・・・・・・・
3
(3)
出会い系サイト事業者の連絡先調査の流れとその問題点・・・・
4
(4)
(5)
被害児童数が多い上位10サイトにおける被害防止に向けた取組・・
児童の被害が発生していないサイトでの年齢確認の例・・・・・・
5
5
3
児童の利用実態
(1)
児童による書き込みの実態・・・・・・・・
6
(2)
書き込みに対するメールによる返信状況・・・・・・・・
7
(3)
児童の出会い系サイトの利用状況・・・・・・・・
7
(4)
フィルタリングの普及状況・・・・・・・・
8
4
出会い系サイトではないサイトにおける罪名別被害児童数・・・・・・
第2
9
出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方に関する提言
1
児童を出会い系サイト等に起因する児童買春等の犯罪の被害から守るために
10
2
出会い系サイト事業者としての責任を果たすために・・・・・・・・
11
提言①
都道府県公安委員会に対する届出制の採用が適当である。
(1)
出会い系サイト事業者を把握できない現状と問題点・・・・・・・
11
(2)
届出制を採用するメリット・・・・・・・・
12
(3)
出会い系サイト該当性に関するガイドラインの見直し等の必要性・・
13
(4)
実効性ある届出制度に・・・・・・・・
14
提言②
出会い系サイト事業者には、児童に関係する書き込みを知ったとき、その
書き込みの削除を義務付けることが適当である。
(1)
児童に関係する書き込みの現状と問題点・・・・・・・・
14
(2)
(3)
出会い系サイト事業者に削除を義務付けることの効果・・・・・・・・
削除の対象は限定的かつ明確にすべき・・・・・・・・
15
15
(4)
出会い系サイト上の書き込みの削除義務と表現の自由について・・
16
(5)
実効性を担保するために・・・・・・・・
16
提言③
出会い系サイトに関係した児童被害の防止活動を行う民間団体に対し、公
安委員会が情報提供等の支援を行うことが適当である。
(1)
3
民間団体に対する情報提供等の支援制度を・・・・・・・・
17
児童による利用を防ぐために
提言④
年齢の自主申告方式を一部廃止し、年齢確認方法を一層強化することが適
当である。
(1)
児童でないことの年齢確認方法の現状と問題点・・・・・・・・
17
(2)
年齢確認方法の一層の強化・・・・・・・・
18
提言⑤ 児童の利用を防止するため、出会い系サイト事業者の責務を法に明記する
ことが適当である。
(1)
児童を「退場」させる仕組みの必要性・・・・・・・・
18
提言⑥ フィルタリングの普及を促進するため、法に保護者及び携帯電話事業者の
責務(努力義務)を規定することが適当である。
(1)
4
フィルタリングの普及を促進するために・・・・・・・・
19
適格ではない者を事業から排除するために
提言⑦
本法に違反した者は、行政処分(事業の停止命令を含む)の対象にする
ことが適当である。
また、事業者の欠格事由を設け、該当者は事業廃止命令の対象とするこ
とが適当である。
(1)
(2)
不適格な運営を防ぐ仕組みの不足・・・・・・・・
事業の停止命令の仕組みを設ける効果及び欠格事由の新設・・・
20
20
(3)
5
その他・・・・・・・・
20
その他
提言⑧
出会い系サイトではないが、当該サイトの利用に起因した児童の犯罪被害
が相当程度発生しているサイトの運営者は、自主規制として、ネット上で出
会った異性との交際の危険性についてサイト上で注意喚起すること等を行う
ことが適当である。
(1)
出会い系サイトではないが、当該サイトの利用に起因した児童の犯罪
被害が相当程度発生しているサイトの現状・・・・・・・・
(2)
6
対策の必要性・・・・・・・・
21
21
今後の課題等
児童に向けた広告メールの送付の禁止について
(1)
現状と問題点・・・・・・・・
22
(2)
検討の内容・・・・・・・・
22
私人(第三者)が児童に利用させる行為の禁止について
(1)
検討の内容・・・・・・・・
22
今後の運用で配意すべき点について
(1)
出会い系サイト事業に関する相談窓口について・・・・・・・・
23
第1 出会い系サイト等の現状
1 出会い系サイトに関係した事件における児童の被害の実態
(1) 出会い系サイトに関係した事件の被害児童数
○ 出会い系サイトに関係した事件の被害児童数は、平成15年の法施行後一旦減
少したものの、平成18年以降再び増加に転じた。
○ 平成19年上半期に出会い系サイトに関係した事件の被害児童数は604人で、
全被害者数(708人)の85%を占める。うち女子児童が99%。
図表1
(人)
その他
1,2 73
1,27 8
(売春防止法違反、職業安定法違反、
窃盗、名誉毀損、強要等)
法施行後いったん減少
1,1 53
1,08 5
するも、平成18年以降
1,061
粗暴犯
再び増加
(暴行、傷害、脅迫、恐喝)
1,000
重要犯罪
(殺人、強盗、強姦、略取誘拐、
強制わいせつ)
610
604
児童福祉法違反
青少年保護育成条例違反
児童買春・児童ポルノ法違反
0
H14
(2)
H15
H16
H17
H18
H18
上半期
H19
上半期
被害児童の特徴
○ 出会い系サイトに関係した事件の被害児童の95%以上が出会い系サイトへの
アクセス手段として携帯電話を利用。
図表2
(人)
H16
H17
H18
携帯電話 1 , 0 4 6 ( 96.4%) 1 , 0 2 3 ( 96.4%) 1 , 1 1 4 ( 96.6%)
パソコン
計
39 (3.6%)
38 (3.6%)
39 (3.4%)
1,085
1,061
1,153
1
上半期
H19上半期
5 8 3 ( 95.6%)
5 7 7 ( 95.5%)
27 (4.4%)
27 (4.5%)
610
604
○
児童買春の被害児童の約半数が出会い系サイトを利用して被害に遭う。
図表3
(人)
児童買春
うち出会い系(割合)
児童ポルノ
H15
H16
H17
H18
1 ,6 30
1,5 4 6
1 ,59 6
1 ,5 0 4
1 ,3 25
726 ( 44.5%)
60
うち出会い系(割合)
青少年保護育成条例違反
うち出会い系(割合)
14 (23.3%)
1,798
377 (21.0%)
665
児童福祉法違反
うち出会い系(割合)
57 (8.6%)
4,153
合 計
うち出会い系(割合)
(3)
H14
726 (17.5%)
719 ( 46.5%)
71
616 ( 38.6%)
82
3 (4.2%)
2,012
396 (19.7%)
590
58 (9.8%)
4,219
719 (17.0%)
8 (9.8%)
2,102
334 (15.9%)
737
75 (10.2%)
4,517
616 (13.6%)
548 ( 36.4%)
246
14 (5.7%)
2,442
403 (16.5%)
753
46 (6.1%)
4,945
548 (11.1%)
H19上半期
上半期
71 3
573 ( 43.2%)
65 1
310 ( 43.5%)
253
304 ( 46.7%)
65
36 (14.2%)
2,579
122
18 (27.7%)
18 (14.8%)
1,119
421 (16.3%)
1,398
222 (19.8%)
613
210 (15.0%)
298
72 (11.7%)
4,770
293
32 (10.7%)
44 (15.0%)
2,195
573 (12.0%)
2,464
310 (14.1%)
304 (12.3%)
児童の被害のきっかけとなる誘引形態の変化
○ 性交等又は対償を伴う異性交際の相手方となるようにする誘引で児童に係る
ものをA、児童と無関係のもので、性交等又は対償を伴う異性交際の相手方と
なるようにする誘引をB 1 、性交等及び対償を伴わない異性交際の誘引で児童
に係るものをB 2 、性交等及び対償を伴わない異性交際の誘引で児童と無関係
のものをCとすると、平成19年7月から9月の発生事件の調査結果では、Aが
10.0%、B 1が32.0%、B2が10.8%、Cが47.3%。
○ 現行法により、不正誘引(図表4のA)が禁止された結果、立法前に比べ、
これをきっかけとする児童被害は減少。他方、不正誘引以外の書き込みをきっ
かけとして被害に至るケースの割合が増加。
図表4
●立法前(平成14年)
児童と無関係の
誘引
83.4%
B
1
●現在(平成19年7月∼9月) 16.5%
C
※イメージであり、図の面積は検挙件数の割合と一致していない
7.2%
児童と無関係の
誘引
児童に係る誘引
A
B
2
B1
3 2. 0%
C
47.3%
92.8%
児童に係る誘引
児童に関する
か否か
A
10. 0%
10.8%
B2
児童に関する
か否か
性交等又は対償を伴う異性交際の相手方とな 左記以外
るようにする誘引
の誘引
性交等又は対償を伴う異性交際
左記以外の誘引
の相手方となるようにする誘引
性交等に
関するか
否か
性交等に関
するか否か
『被害児童の書き込み内容ごとの児童買春事件検挙件数の割合』
『被害児童の書き込み内容ごとの事件検挙件数の割合』
2
2 最近の出会い系サイトの現状
(1) 出会い系サイトの推計数及び形態
○ フィルタリングサービス提供会社が保有するURLのうち、カテゴリー「出
会い」に分類されるURLからサンプルを抽出の上、出会い系サイトの割合を
算出し、同カテゴリーの総URL数に乗じて出会い系サイト数を算出する方法
で推計したところ、出会い系サイトの数は、約5,000サイトと推計される。
○ 出会い系サイトの形態としては、利用者から利用料金をとらない無料サイト
と、利用者から利用料金をとる有料サイト(会費徴収型、ポイント課金型)の
二つに分類される。ただし、無料サイトの多数は、バナー広告料等企業からの
広告収入により運営されている。
図表5
広告収入型
無料サイト
企 業
【A社の場合】
○1ヶ月広告料
トップページ1枠∼500万円等
※アクセス頻度により広告料が異なる
広告料
企業からのバナー広告収
入等により運営
出会い系サイト事業者
無 料
女性利用者
男性利用者
有料サイト
会費徴収型
女性利用者
男性のみ有料が
主流。
無料
利用者から定額の会費を
徴収し、その収入により運
営
出会い系サイト事業者
有料
男性利用者
ポイント課金型
女性利用者
男性利用者にポイント
を購入させ、利用の都
度ポイントを費消させる
方法で運営
無料
【C社の場合】 1P∼10円
出会い系サイト事業者
有料
クレジットカード、電子
マネー等により決済
男性利用者
(2)
【B社の場合】
○1ヶ月会費
男性会員→2000円
女性会費→無料
・掲示板の投稿内容を見る・・・1P
・掲示板に投稿する・・・10P
・メールを送る・・・5P
不正誘引の検挙状況及び義務違反への警告状況
○ 平成17年から不正誘引の検挙件数は増加傾向にある。
図表6
不正誘引(6条違反)検挙状況
(件)
児童による誘引(内数)
60
40
《違反態様別》
47
31
H16
39
検挙件数
19
18
20
6
5
H16
H17
0
18
H18
4
1号違反
2号違反
3号違反
4号違反
31
12
6
12
1
H17
18
8
4
6
0
H18
47
18
15
8
6
上半期
19
10
2
5
2
H19
上半期
39
14
15
5
5
21
(注) 1号:児童に対する性交等の誘引、児童に対する性交等の周旋
2号:大人に対する児童との性交等の誘引、大人に対する児童との性交等の周旋
3号:児童に対する対償供与異性交際の誘引、児童に対する対償供与異性交際の周旋
4号:児童との対償収受異性交際の誘引、児童との対償供与異性交際の周旋
H18上半期 H19上半期
※ H15.9.13法施行
3
○
警察では、法施行後、法第7条又は第8条に違反した178サイトについて警
告を実施しており、警告の対象となったサイトすべてにおいて改善措置がとら
れ、あるいは警告を機にサイトが閉鎖されている。また、これまで、法第10条
に基づき是正命令が発せられたことはない。
なお、サイトを運営する出会い系サイト事業者を特定することができず、警
告を実施できなかった場合もあるが 、それらの数は図表7には含まれていない。
図表7
7条(18禁表示)違反及び8条(児童でないことの確認)違反による警告状況
H16
警告サイト数
H17
47
44
3
改善
閉鎖
H18
52
49
3
上半期
H19
上半期
28
27
1
26
19
7
53
50
3
※ H15.12.1法施行
(3)
出会い系サイト事業者の連絡先調査の流れとその問題点
○ 出会い系サイト事業者の連絡先を調査する方法は、図表8のとおりであるが、
次のような問題がある。
・ドメイン名による検索では、登録者情報(登録者名、所在地、電話番号等)
の全部又は一部が判明しない場合がある。
・アクセスプロバイダ、サーバ管理者に保有する情報の開示を求めても、個人
情報保護を理由に協力が得られない現状にある。
・例えば、平成19年11月、神奈川県警察が受理した迷惑メールに関する相談の
うち、出会い系サイトの広告宣伝メールであって、法第7条第1項に違反し
て電子メールの表題部に18禁表示がなかったものが44通あったことから、当
該出会い系サイト事業者を特定し警告するため、その連絡先を調査したが、
「連絡先不明」、「任意の協力を得られず」、「事業者情報を把握していない」
「海外サイト」等の理由で1事業者も特定できなかった。
図表8
ドメイン取得代行
ドメイン名検索
メールの
アクセス
プロバイダ
返信がない
電話番号・メール
アドレスの 表示なし
※ドメイン名 ※IPアドレス
Whois検索
IPアドレス検索
把握して
いない
サーバ管理者
連絡がとれない
海 外
アクセスプロバイダ
サーバ管理者
連絡がとれない
海 外
4
任意の協力に
より回答
任意の協力に
より回答
把握して
いない
※ ∼任意の協力を 得られることは少ない
出会い系サイト事業者
電話番号・メール
アドレスの 表示あり
サイト
の閲覧
電話、メールで連絡
(4)
被害児童数が多い上位10サイトにおける被害防止に向けた取組
○ 平成18年に出会い系サイトに関係した事件での被害に遭った児童のうち9割
以上が特定の10サイトを利用していたが、これらサイトでは次のとおり被害防
止に向けた取組を行っていた(平成19年11月、サイト運営者に対する聞き取り
調査)。
・10サイトすべてが18歳未満利用禁止の表示義務を履行。
・10サイトのうち9サイトが利用者の自己申告により利用者が児童でないこと
の確認義務を履行。
・10サイトのうち9サイトが、不正誘引に当たる書き込み、児童に係る書き込
み及び児童とは無関係の性交又は有償交際に関する書き込みを自主的に削
除。
図表9
被害児童数が多い上位10サイトにおける被害防止に向けた取組み
∼H18中の被害児童利用サイトで、サイトが特定できた37サイト(被害児童数662人)を対象∼
18禁表示
サ イ ト 利用料
携帯・
PC別
児童でないことの確認
自主削除
あり
あり
あり(削除対象)※
なし
なし
自主申告 その他
不正誘引に
当たる書き込み
児童に係る
書き込み
児童と無関係の
性交又は有償交際
に関する書き込み
A
無料
携帯
○
○
○
○
○
B
無料
携帯
○
○
○
○
○
C
男性有料 携帯
○
○
○
○
○
D
男性有料 携帯
○
○
○
○
○
E
無料
携帯
○
○
○
○
○
F
男性有料 携帯
○
○
○
○
○
G
男性有料 携帯/PC
○
○
○
○
○
H
男性有料 携帯/PC
○
○
○
○
○
I
無料
携帯/PC
○
○
○
○
○
J
無料
携帯
○
注1
注2
注2
注2
注1
なし
注2
注1:サイトJでは、平成18年に利用者が児童でないことの確認をしていなかったが、平成19年11月現在では確認をしている。
注2:サイトJにおける削除対象の書き込みを把握した際の自主削除は不明であったが、平成19年11月には実施していた。
(5)
児童の被害が発生していないサイトでの年齢確認の例
○ 児童の被害が発生していないサイトでは、利用者の自主申告により年齢確認
を行っていることに加え、運転免許証、パスポート、健康保険証のいずれかの
書類(コピー)の提出を求め本人確認を実施、若しくは本人名義のクレジット
カード又は指定銀行口座からの引き落としにより課金を決済している。
5
図表10
サイト名
18禁表示
イ
有り
ロ
有り
ハ
有り
年齢確認の方法
書類又は課金情報
運転免許証、パスポート、健康保険
書類の提出
証のいずれかの書類(コピー)の提
出
運転免許証、パスポート、健康保険
書類の提出
証のいずれかの書類(コピー)の提
出
年齢確認は、自己申告方式である
自己申告方式及び が、これと併せて利用料金の支払い
を、本人名義のクレジットカード決裁
課金情報
又は指定銀行口座引き落としで行っ
ている。
3 児童の利用実態
(1) 児童による書き込みの実態
○ 平成19年1月から2月に行われた(財)社会安全研究財団調査の結果によれ
ば、大手の出会い系サイト2サイトの書き込み内容1,000件中71件が児童によ
る書き込みであり、さらにその71件のうち、3件が「援助交際」を求める書き
込みであった。
図表11
【調査概要】
大手出会い系サイト2サイトの書き込み内容 1,000件(各サイト500件)を確認し、児童の利用実態等について調査
※
○1,000件中71件が児童 による書き込み(全体の7.1%)
児 童 による
書 き込 み
合計
18歳 以 上 に
よる書 き込 み
年齢不明
1000
71
99
830
1 0 0 .0 %
7 .1 %
9 .9 %
8 3 .0 %
※ 書き込み内容から18歳未満又は高校生と判断したもの
○上記71件のうち3件が援助交際を求める書き込み(全体の0.3%)
合計
①援助交際
②暗に
援助交際
③遊び相手 ④友達・恋人
⑤メル友
⑥自己紹介
⑦その他
71
1
2
31
19
15
0
3
100.0%
1.4%
2.8%
43.7%
26.8%
21.1%
0.0%
4.2%
※ 「①援助交際」及び「②暗に援助交際」は、不正誘引に該当すると判断できるもの。
(注)援助交際を求める書き込みとは 、「えん 」、「援 」、「○できる 」、「サポ 」、
「割り切り 」、「意味わかる人 」、「助けて 」、「困っています」等の記載が
あり、かつ、金額(「2∼ 」、「ホ別1」等)が明記されているもの。
暗に援助交際を求めるものとは、援助交際と判断できるが、金額が明確に
記載されていないもの。
6
(2)
書き込みに対するメールによる返信状況
○ 同調査結果では、18歳女性として大手の出会い系サイト2サイトに遊び相手
を求める内容の書き込みを行い、それに対する返信状況について調査したとこ
ろ、1時間で2サイトあわせて男性と思われる者から138件の返信があり、う
ち64件(46.4%)が「援助交際」を求める内容であった。
図表12
【調査概要】
18歳女性として大手出会い系サイト2サイトに遊び相手を求める内容の書き込みを行い、それに対する返信状況について調査
書き込み内容∼「今、新宿にいます。これから会える人いませんか?」
金曜日の午後6時に投稿後、1時間以内の返信状況を調査
2サイトあわせて男性と思われる者から138件の返信があり、うち64件(46.4%)が援助交際目的
(3)
《A社サイト∼ 1時間で87件の返信》
上記87件のうち、34件(39.0%)
が援助交際目的
A社合計 ①援助交際
《B社サイト∼1時間で51件の返信》
上記51件のうち、30件(58.9%)
が援助交際目的
B社合計 ①援助交際
②暗に
援助交際
③遊び相手 ④友達・恋人
⑤メル友
⑥自己紹介
⑦その他
87
5
29
44
0
2
0
7
100.0%
5.7%
33.3%
50.6%
0.0%
2.3%
0.0%
8.0%
②暗に
援助交際
③遊び相手 ④友達・恋人
⑤メル友
⑥自己紹介
⑦その他
51
6
24
18
1
0
0
2
100.0%
11.8%
47.1%
35.3%
2.0%
0.0%
0.0%
3.9%
児童の出会い系サイトの利用状況
○ 同調査結果では、10都道府県の中学2年生及び高校2年生女子3,080人に対
するアンケートを実施した結果、244人(7.9%)が出会い系サイトにアクセス
経験ありと回答した。
図表13
【調査概要】
10都道府県の中学2年生及び高校2年生の女子3,080人に対するアンケートを実施し出会い系サイトの利用実態等について調査
認知方法
アクセス経験
「ある」と答えた244人を対象(複数回答)
あなたは出会い系サイトにアクセスしたことがありますか
(%)
(%)
全 体
7.9
91.4
0.7
中学生
7.1
92.2
0.7
高校生
8.7
90.5
0.7
42.2
44.6
ホームページなどに
出ている広告を見て
40.2
32.0
33.9
広告メールを見て
30.3
16.8
16.1
17.4
友達から聞いて
ある
ない
雑誌の広告を見て
無回答
(人)
ある
全体(3,080)
7.8
8.0
7.6
ない
その他
無回答
244
2,814
22
中学生(1,569)
112
1,446
11
高校生(1,511)
132
1,368
11
全体
18.9
17.0
20.5
無回答
8.2
5.3
11.6
○出会い系サイト認知方法は、 「ホームページ等
の広告を見て (42.2%)」、 「広告メールを見て
(32.0%)」が多 く、「友達から聞いて」が16.8%。
○全体の7.9%がアクセス経験ありと回答。
【高校生で8.7%・中学生で7.1%】
7
中学生
高校生
(4)
フィルタリングの普及状況
○ 総務省「平成18年度電気通信サービスモニターに対する第2回アンケート調
査結果 」(平成19年1月時点の調査)によると、携帯電話のフィルタリングの
認知状況は 、「よく知っている」が12.6% 、「聞いたことがある」が53.3%で
あった。また、18歳未満の子どもが使用する携帯電話におけるフィルタリング
の利用状況は 、「利用している」が4.2% 、「子どもが携帯電話を使用している
が、フィルタリングサービスは利用していない」が20.8% 、「子どもに携帯電
話を持たせないなど、子どもがインターネットに接続できる状況にない」が73.
8%であった。
図表14
【平成18年度における携帯電話についてのフィルタリングの認知・利用状況】
携帯電話のフィルタリングの認知状況
18歳未満の子どもが使用する携帯電話におけるフィ
ルタリング利用状況(18歳未満の子どもがいる者への調査)
(20歳以上の男女への調査)
よく知っている 12.6%
その他 1.2%
利用している 4.2%
知らない 34.1%
子どもに携帯電
話を持たせてい
ないなど、子ども
が携帯電話から
インターネットに
接続できる環境
にない 73.8%
聞いたこと
はある 53.3%
子どもが携帯
電話を使用し
ているが、フィ
ルタリングサー
ビスは利用し
ていない 20.8%
※ 総務省「平成18年度電気通信サービスモニターに対する第2回アンケート調査結果」(19年1月時点の調査)
普及活動により認知状況は向上しつつあるものの、実際の児童の利用はいまだ低い水準。
○
フィルタリングの普及促進のための取組みについては、携帯電話事業者や通
信業界全体を挙げて取組みを進めており 、(社)電気通信事業者協会調査によ
れば、携帯電話事業者各社のフィルタリングサービス利用者数は、平成18年9
月末から平成19年9月末には約210万人となっており、平成18年9月から1年
間で約3.3倍となっている。
図表15
○ 携帯電話事業者各社のフィルタリングサービス利用者数の実績
フィルタリングサービス利用者数
平成19年9月末
約147万増
平成18年9月末
2,101,000
約3.3倍
631,000
※端末機能でのフィルタリング利用者等を除く
【参考】
青少年(小・中・高校生)のインターネットに接続できる携帯電話利用人口推計
7,502,000人
※ 国勢調査(平成17年10月1日)及び内閣府調査(平成19年3月実施)により
算出
8
4
出会い系サイトではないサイトにおける罪名別被害児童数
○ 平成19年7月から9月にかけて出会い系サイトではないサイトに関係した事件
における児童の被害者数を調査した結果、124人であった。
(注)平成19年7月から9月に出会い系サイト等に関係した事件における被害児
童のうち任意で聴取できたものを対象としているため、調査の対象者数は実
際の被害児童数より少なくなっている。
図表16
《その他のサイト》
《出会い系サイト》
強制わいせつ
0.5%
強姦
1.9%
育成条例
34.5%
その他
1.0%
強姦
2.4%
強制
わいせつ
0.8%
その他
0.8%
児童ポルノ
12.1%
児童買春
19.4%
児童買春
55.8%
育成条例
60.5%
児童福祉法
3.4%
児童ポルノ
2.9%
児童福祉法
4.0%
罪名別被害児童数
(人)
出会い系サイト その他のサイト
児童買春・児童
ポルノ規制法違反
児童買春
児童ポルノ
児童福祉法違反(淫行させる行為)
青少年保護育成条例違反
強姦
強制わいせつ
その他
合 計
9
115
6
7
71
4
1
2
206
24
15
5
75
3
1
1
124
第2
1
出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方に関する提言
児童を出会い系サイト等に起因する児童買春等の犯罪の被害から守るために
今、多くの国民が携帯電話を持ち歩くようになり、その多くはインターネットに
接続できる機能を有している。また、パソコンや家庭用ゲーム機から日常的にイン
ターネットにアクセスできる環境にある家庭も増えている。
児童を取り巻く環境もその例外ではなく、特に近年は小・中学生や高校生の間で
携帯電話の普及が進み、インターネット社会に気軽に参加する児童が増えている。
児童がインターネットに接続できる携帯電話を持っていることが珍しくないという
我が国の状況は、世界的に見て特殊と言われている。
しかし、インターネット上には、児童に有益な情報のみならず児童の健全育成を
阻害するおそれのある情報も存在し、それらが氾濫している。
そのような中、出会い系サイトについては、同サイトの利用をきっかけに児童買
春等の犯罪被害に遭う児童が急増したことから、平成15年に出会い系サイトの利用
に起因する犯罪から児童を保護することを目的とした「インターネット異性紹介事
業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」が制定され、同年9月に
施行された(事業者規制部分は12月施行)。
しかしながら、法施行後4年を経過した今、第1で俯瞰したとおり児童の犯罪被
害は一旦減少したものの再び増加に転じている現状にあり、当研究会は、出会い系
サイト等に係る児童の被害の現状に深く憂慮し、被害防止を図るためには法規制の
在り方も含めた何らかの対策を早急に講じるべきであるとの結論に達した。
新たな対策は、より責任ある者はそれに応じた義務を担うべきという原則に加え、
社会全体としても児童の犯罪被害防止について取り組むべきという視点に立って、
立てられるべきである。もちろん、その方法は最小限の制約で最大限の効果が得ら
れる方法とすべきであることは言うまでもない。このような観点から 、「出会い系
サイト事業者としての責任をいかに果たすか」及び「児童による利用をいかに防ぐ
か」について議論した。
まず、出会い系サイトの利用に起因して児童買春等の犯罪を行った大人について
は、当然最も重い責任を負うべきであり、児童買春罪、青少年保護育成条例違反等
で厳しく処罰対象とされていることから、今後も警察において着実に検挙を進めて
いかなければならない。
次いで、児童が被害者となるこれらの犯罪のきっかけとなるサイトを自らの意思
で運営している出会い系サイト事業者については、被害児童数が依然として高水準
10
で推移している現状にかんがみ、相応の責任を担ってもらうことが必要である *i。
特に、児童が出会い系サイトを利用している現状に対しては、現行の児童の利用防
止を図るための制度を見直すことが必要である。その際は、新たな規制や対策が遵
守されるよう、実効性が確保される仕組みとなるよう十分に考慮するべきである。
例えば、児童の犯罪被害が発生していないサイトを運営している出会い系サイト事
業者の、児童の被害防止に向けた取組を参考にすべきである。
さらに、保護者及び出会い系サイト事業者に役務を提供している事業者といった、
児童の被害防止に関係する立場にある者の責務も考慮する必要がある。
また、出会い系サイトではないが児童買春等児童の犯罪被害が相当程度発生して
いるサイトについては、直ちに出会い系サイトと同様の責任を負担すべきとはいえ
ないものの、これらサイトも一定の自主規制を中心とした対策を講じることが必要
と考えた。
提言は 、「出会い系サイト事業者としての責任を果たすために 」「児童による利
用を防ぐために 」「適格ではない者を事業から排除するために」の3つの柱とし、
届出制の採用、児童に関係する書き込みの削除、児童の年齢確認の強化等の対策を
盛り込んだ。具体的方法については、以下で、各提言ごとに示した。
2
出会い系サイト事業者としての責任を果たすために
提言①
(1)
都道府県公安委員会に対する届出制の採用が適当である。
出会い系サイト事業者を把握できない現状と問題点
○
現行法では、出会い系サイト事業者に対する是正命令を規定する一方で、出
会い系サイト事業者把握のための制度を何ら設けていない。そのため、事業者
を特定するためには、公開情報から判明するアクセスプロバイダやサーバ管理
者に対して出会い系サイト事業者の情報開示を求めることとなるが、平成17年
の個人情報保護法の施行を契機とした個人情報保護の意識の高まりを背景に、
アクセスプロバイダやサーバ管理者において任意に協力することが難しい現状
にある【図表8参照】。
*i
出会い系サイト事業者に対し、自己が管理するウェブサーバを提供している場合(いわ
ゆるホスティングサービス)のサーバ管理者又は他人が管理するウェブサーバにインター
ネット接続サービスを提供しているだけの者(いわゆるアクセスプロバイダ)は、いずれ
も出会い系サイト事業者ではないので、届出義務の対象外である(これらの者が出会い系
サイト事業者を兼ねている場合を除く。)。
11
○
また、出会い系サイト事業者が海外サーバを利用している場合に、海外のサ
ーバ管理者やプロバイダの協力を得ることは通常困難であり、無料レンタル掲
示板(サーバ)を利用している場合は、そもそも無料レンタル掲示板の管理者
は契約の相手方である出会い系サイト事業者に関する情報を持っていない例が
多い。【図表17参照】。
○
出会い系サイト事業者が、仲介業者を介して電気通信事業者と契約している
ことも考えられ、電気通信事業者の契約相手が出会い系サイト事業者と一致し
ない場合もある。
○
このため、法令に違反する事業者(サイト開設者)が判明せず、これらに対
する警告や行政処分が不可能という問題が起きている。
図表17
我が国の行政権が及ばない場合
(海外にサーバがある等)
ISP2
サーバが海外にあるため、
出会い系事業者は特定できない
インターネット
レンタルサーバ管理者
出会い系事業者A
☆ 報告徴収(第1段階)
○対象者:ISP1
○報告徴収事項:レンタルサーバ管理者の
氏名(名称)、住所等
☆ 報告徴収(第2段階)
○対象者:レンタルサーバ管理者
○報告徴収事項:出会い系事業者の
氏名、住所等
利 用 契 約
国 内
レンタルサーバ(無料レンタル掲示板)管理者が、
出会い系事業者の氏名等を把握していない場合は、
出会い系事業者を特定できない。
☆ (第1段階)
○対象者:ISP1
○報告徴収事項:レンタルサーバ管理者の
氏名(名称)、住所等
(2)
<無料レンタル掲示板>
レンタルサーバ
(事業者Aがサーバを利用して
出会い系サイトを開設)
海 外
← 報告徴収できない
ISPやレンタルサーバが海外に
あるので、報告徴収が行えない。
関係者が契約者情報を保有していない場合
(無料レンタル掲示板等)
☆ 報告徴収(第2段階)
○対象者:レンタルサーバ管理者
○報告徴収:出会い系事業者の
氏名、住所等
ISP1
ISP1
ISP2
インターネット
出会い系事業者B
利 用 契 約
レンタルサーバ管理者
<無料レンタル掲示板>
レンタルサーバ
(事業者Bがサーバを利用して
出会い系サイトを開設)
無料掲示板の管理者は契約の相手方である出会い系事業
者に関する情報をほとんど持っていないので特定できない。
← 報告徴収事項が判明しない
届出制を採用するメリット
○
そこで、出会い系サイト事業者を特定できないという上記の問題点を解消す
るため、出会い系サイト事業者には、都道府県公安委員会に届け出ることを義
務付け、罰則で担保することが適当である。
○
届出を通じて出会い系サイト事業者を特定できることにより、行政処分が不
可能という問題が解消されるとともに、速やかな行政処分が可能となり、より
法の実効性が確保できるようになる。また、あらかじめ事業者を把握すること
が可能なので、任意の手段である行政指導等により、きめ細やかな措置が可能
となる。
12
*
届出制の代わりに、必要な時に契約者情報を保有する者に協力を義務付ける方法に
ついても検討した結果、以下のような点で届出制の方がより相当性が高いと考えられ
る。
・
関係者の協力を求める場合、電気通信事業者(プロバイダ )、レンタルサーバ会
社、金融機関、広告主等、出会い系サイトによる児童の犯罪被害との関連性が希薄
な第三者に対してまで負担を課すこととなる。
・
単に出会い系サイト事業者と契約を締結しているというだけで、出会い系サイト
事業者を特定するコストをこれらの者に負わせるべきではなく、当該コストは、本
来、児童の犯罪被害に対する責任のより大きい者、つまり出会い系サイト事業者が
負担すべきである。
・
図表17のとおり、関係者に協力を義務付ける方法ではサイト開設者の特定ができ
ないが、届出制ならば把握が可能である。
(3)
出会い系サイト該当性に関するガイドラインの見直し等の必要性
○
*ii
届出制を採用した場合、SNS といったコミュニティサイト等の取扱いを
はじめ、どのようなサイトが出会い系サイトに該当するのかが不明確であると、
結果としてサイト開設者全般に対して萎縮効果を与えるおそれがあることか
ら、届出制の導入について消極的な意見もあった。
○
出会い系サイトは、法第2条において「インターネット異性紹介事業」とし
て定義されており、法第6条(不正誘引罪)で厳格な定義が要請される犯罪の
構成要件とされていることからも明らかなように、どのようなサービスを提供
しているサイトが出会い系サイトに当たるのかは、法律上十分に明確になって
いる
*iii
。そのことを前提に、現行法でも、出会い系サイト事業者には児童の利
用禁止の明示義務等が課せられており、同義務違反を理由に都道府県公安委員
会が是正命令をなしうるので、届出制を採用することにより新たに上記のよう
な萎縮効果が生じるとは考えられない。
○
しかしながら、インターネット上では法施行後も様々な形態のサービスが生
み出されているので、サービスの類型ごとに、現行の「インターネット異性紹
介事業」の定義に照らしてその該当性を判断しやすいことが望ましい。行政に
おいては、既存のガイドラインについて関係業界の意見も聴取した上で必要な
*ii
ソーシャル・ネットワーキング・サイトの略で、一般に、会員制をとり、参加者が互い
に友人を紹介しあうなどして、共通性を持つ新たな友人関係を広げるサイトをいう。
*iii
警察庁では、法制定時に、サイトにおいて提供されるサービスに応じ、そのサイトが出
会い系サイトに該当するか否かを示すガイドラインを作成し公表している。
13
見直しを行うことなどにより指摘された懸念の払拭に努め、インターネット上
の各種サイト開設者が判断に迷うことのないようにする必要がある。
(4)
実効性ある届出制度に
○
届出制を実効性あるものにするため、届出をしない出会い系サイト事業者に
対する罰則を設ける等、実効性を担保するための措置を検討すべきである。こ
の場合において、サイト開設者全体に萎縮効果が生じることのないようにする
ためにも、(3)のガイドラインの見直し及び周知に配意する必要がある。
提言②
出会い系サイト事業者には、児童に関係する書き込みを知ったとき、その
書き込みの削除を義務付けることが適当である。*iv
(1)
児童に関係する書き込みの現状と問題点
○
出会い系サイトは、法によって、児童の利用が本来認められていない。にも
かかわらず、出会い系サイト事業者による児童でないことの確認に際し利用者
の自主申告方式による確認が認められていることもあって、児童が出会い系サ
イトを利用している実態があり、児童に関係する書き込み(不正誘引に当たる
書き込みを含む 。)をきっかけに、児童の犯罪被害が発生している(平成19年
7月から9月の発生事件についての調査結果では、出会い系サイトに関係する
児童被害全体の20%。)【図表4参照】。
○
警察庁において被害児童の利用が多い出会い系サイト事業者10社に対して聞
き取り調査をした結果、9社が児童に関係する書き込みについて自主的に削除
を行っていた【図表9参照】*v。これらの事業者は自主的にサイト内を監視し、
児童に関係する書き込み等の不適切な書き込みを削除しており、事業者自ら被
害防止のための取組を進めていることが判った。このような事業者による自主
的な取組は、被害防止の観点からも望ましいことである。しかしながら、自主
的な削除の程度は事業者ごとに様々であり、また、研究会で聴取した出会い系
*iv
脚注*ⅰと同様に、いわゆるホスティングサービスを行っているサーバ管理者及びアク
セスプロバイダは、出会い系サイト事業者ではないので、削除義務の対象外である。 ま
た、当然ながら、出会い系サイト事業者による削除義務が履行されなかった場合において
も、これらの者(いわゆるホスティングサービスを行っているサーバ管理者及びアクセス
プロバイダ)に削除義務が生じるものではない。
*v
警察庁が聞き取り調査した出会い系サイト事業者の自主規制の内容は、本提言で義務付
けを求めている削除対象よりも広範な書き込みを削除対象とするものが多かった。
14
サイト事業者からは、法に抵触する投稿に対して警告メッセージを発しても、
その警告には何の権限もないことから、違反者に対し効果がない場合もあると
の指摘があった。このため、自主規制にのみ期待することには自ずと限界があ
ると考えられる *vi。また、被害児童が利用している出会い系サイトの中には、
事業者を特定できないため連絡がつかず、自主的に削除を行っているかどうか
不明な事業者もある。
(2)
出会い系サイト事業者に削除を義務付けることの効果
○
そこで、出会い系サイト事業者は、本来18歳未満が利用できない出会い系サ
イト内において児童に関係する書き込みを知ったときには、削除することを義
務付けることが適当である。
○
削除を法的に義務付けることにより、児童に関係する書き込みが速やかに削
除されることが期待でき、また、書き込んでも削除されるとなれば出会い系サ
イトを利用しようとする児童に対する抑止力になることから、児童に関係する
書き込みをきっかけとして発生する児童被害についての未然防止効果が期待で
きる。
○
前述のとおり既に出会い系サイト事業者が自主的に削除に取り組んでいるこ
とから、削除を義務化したとしても事業者に新たに課せられる負担は実質的に
少ないものと考えられる。むしろ事業者が削除を行う根拠として、法律による
義務が加わることにより、出会い系サイトの利用者から事業者に対する訴訟リ
スクの軽減に資するものと考えられる。
(3)
削除の対象は限定的かつ明確にすべき
○
出会い系サイトは法律上児童の利用が認められていないことにかんがみ、削
除を義務付ける書き込みは、
「児童に関係する書き込み」に限定すべきである。
具体的には、①児童が異性を誘う書き込みと、②大人が異性の児童を誘う書き
込みとすべきである。
○
削除の対象は、可能な限り明確にしておく必要がある。判断のための要素を
大きく「児童」及び「誘う(誘引 )」の2点に絞り込めば 、「児童」の概念は
既に法により年齢が18歳未満とされており、かつ「誘引」の概念は既に法第6
条の不正誘引で犯罪の構成要件とされていることから、十分に明確である。
*vi
自主的に削除を行っている事業者が運営する出会い系サイトでも児童の犯罪被害が発生
しているが、仮に自主的な取組がなければ、書き込みが更に多数放置され、より多くの児
童の犯罪被害が発生したと思われる。
15
なお、出会い系サイト事業者が削除すべき書き込みと削除すべきでない書き
込みとをある程度容易に判断できるようにするため、削除の対象となる書き込
みについての新たなガイドラインを整備し周知を図ること等を検討すべきであ
ろう。
○
また、出会い系サイト事業者に常時監視の義務を課すことまで求めるもので
はなく、あくまでも出会い系サイト事業者が「知ったとき」に削除義務を課す
ことが適当である 。(「 知ったとき」とは、削除すべき書き込みの存在を出会
い系サイト事業者自らが認知したときのみならず、行政庁等からの通報により
認知した場合を含む。)
(4)
出会い系サイト上の書き込みの削除義務と表現の自由について
○
特定の書き込みに限るとはいえ、出会い系サイト上の書き込みについて事業
者に削除を義務付けることに関しては、表現の自由との関係で、慎重に検討を
進めなければならないことは当然である。
なお、研究会においては、この観点から自主的な削除を促進することが適当
であるとして、削除の義務付けに消極的な意見もあった。
○
現行法で、出会い系サイトは児童の利用が認められていない場所、つまりサ
イト上の「18歳未満立入り禁止場所」となっている。そのような場所において、
児童による書き込みや児童を誘う書き込みを削除することは、投稿者たる児童
又は児童を誘う書き込みをした大人の正当な権利利益(表現の自由)を侵害す
るとまでは言い難い。また、法第6条において不正誘引に当たる書き込みにつ
いて刑罰をもって禁止されており、出会い系サイト内での表現の自由は既に制
約されている。よって、今回新たに、出会い系サイト事業者に対し児童に関係
する書き込みについての削除義務を課すことは、投稿者の表現の自由について
の従来の制約の枠を超えるものではないと思われる。
*
年齢確認の強化と削除の義務付けとの関係について
後述する提言④では、児童でないことの年齢確認の強化を求めている。年齢確認
を強化することで児童の利用防止に一定の効果は見込まれるものの、対面確認でな
い以上児童の利用を完全には防止できないという限界がある。そこで、削除義務を
含めた他の措置と年齢確認の強化とを組み合わせ、相互に補完することによって、
効果的な児童被害の防止が図られるものと考えられる。
(5)
実効性を担保するために
○
研究会においては、実効性の観点から義務付けに消極的な意見もあった。そ
こで、削除義務の実効性を担保するため、事業者が違反した場合(認知してい
16
ながら削除しない場合)に行政処分の対象 *viiとするなどの措置について、警察
庁において検討すべきである。その場合において、1件だけ削除義務違反のあ
った出会い系サイト事業者までも直ちに行政処分の対象とするのではなく、違
反を繰り返している場合に限定するなどの配慮が必要である。
提言③
出会い系サイトに関係した児童被害の防止活動を行う民間団体に対し、公
安委員会が情報提供等の支援を行うことが適当である。
(1)
民間団体に対する情報提供等の支援制度を
○
提言②のとおり、出会い系サイト事業者が児童に関係する書き込みを知った
ときは当該書き込みを削除することを義務付けた場合、実際に削除対象となる
書き込みがあったときは、当該事業者に出来るだけ速やかにその存在を知って
もらい、削除に結びつけることが必要である。
○
そこで、民間で、児童に関係する書き込みに関する情報を収集する団体、そ
の情報を事業者に提供する活動を行う団体等に対して、公安委員会が届出を受
けた出会い系サイト事業者のURLや児童の被害に係る犯罪の発生状況等の情
報を提供することなどによって、これらの民間団体の活動を支援することによ
り、事業者に児童に関係する書き込みの存在をできるだけ早く知らせ、削除義
務の実効性を向上させることが重要である。
○
現在このような活動を行っている団体としては、インターネット・ホットラ
インセンターや(社)全国少年警察ボランティア協会がある。
3
児童による利用を防ぐために
提言④
年齢の自主申告方式を一部廃止し、年齢確認方法を一層強化することが適
当である。
(1)
児童でないことの年齢確認方法の現状と問題点
○
*vii
現行法は、出会い系サイト事業者が利用者が児童でないことを確認する方法
法第7条あるいは第8条に違反する行為も直ちに刑罰が科せられる対象でなく是正命令
の対象とされていることとの均衡上、直ちに刑罰を科す対象とすることは避けるべきであ
る。
17
として自主申告方式を認めているが *viii、年齢詐称により児童の利用が容易に
行われ、これをきっかけとして児童の被害が発生している現状にあることから、
現在の年齢確認の方法では不十分と言わざるを得ない。
(2)
年齢確認方法の一層の強化
○
そこで、児童による利用をより難しくするために、児童でないことの年齢確
認方法を現在より強化することが適当である。
○
技術の進歩による簡便かつ確実な方法が開発され実現予定があるのであれ
ば、その方法を採用することも検討すべきであることから、警察庁において、
携帯電話の固体識別番号に年齢識別機能を付加する方法、携帯電話の属性認証
技術のサービス実現の予定等を調べた結果、近々、我が国で技術的に簡便かつ
確実な方法が実現するという情報は得られなかった。
○
現在利用可能な確認方法としては、テレホンクラブ営業(店舗型・無店舗型
電話異性紹介営業)の規制内容 *ixを参考に、例えば次のような方法が考えられ
る。
・
クレジットカードによる支払い等18歳未満が使用できない手段により利用
料金等の支払いを求める方法
・
FAX等で運転免許証等の必要部分(生年月日又は年齢を記載した部分)
を送付させる方法
提言⑤
児童の利用を防止するため、出会い系サイト事業者の責務を法に明記する
ことが適当である。
(1)
児童を「退場」させる仕組みの必要性
○
現行法は、出会い系サイト事業者が利用者が児童であることを事後的に認知
した場合でも、事業者にその利用を停止させることまでは求めていない。一方、
自主的な取組を行っている出会い系サイト事業者の中には、利用者が児童であ
ることが判明した場合には利用規約に従って退会手続きをとるなどの措置をと
っているものもある。
*viii
法制定時は、インターネット上で簡便かつ確実に相手方の年齢を確認する方法が普及
していないという理由から、すべての事業者が実行可能な方法として自主申告方式(サ
イト上で「18歳以上ですか」の質問に「はい・いいえ」をクリックする等)を認めた。
*ix
テレホンクラブ営業の規制については 、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関
する法律施行規則」第66条第1項(及び第72条第1項)参照。
18
○
そこで、児童による利用を可能な限り未然に防ぐため、児童の利用防止に関
する出会い系サイト事業者の取組が実効性のあるものとなるよう、出会い系サ
イト事業者の責務を法律に明記することが必要である。
○
なお、児童を誘引する書き込みを行った大人の利用者に対しても、出会い系
サイト事業者において自主的に適切な措置が採られることが望ましい。
提言⑥
フィルタリング *xの普及を促進するため、法に保護者及び携帯電話事業者
の責務(努力義務)を規定することが適当である。
(1)
フィルタリングの普及を促進するために
○
現行法では、出会い系サイトを利用する際の年齢確認の方法として自主申告
方式を認めていることから、児童が容易に出会い系サイトを利用できる実態に
あり、また、仮に年齢確認が強化されても、対面による確認ではない以上、児
童の利用を完全には排除できないことから、児童が使用する携帯電話等から出
会い系サイトにアクセス出来ないようにするフィルタリングは、児童の犯罪被
害防止に有効である。また、海外の事業者が行うサイトの児童による利用の防
止にも、フィルタリングは効果的である。
○
各方面の取組によってフィルタリングの普及促進に効果が上がっていること
は事実であるものの、フィルタリングを利用するか否かの判断は、最終的には
児童を監督する保護者の意向に委ねられていることから、保護者に対する利用
促進の働き掛けが必要であるとともに、携帯電話事業者による販売契約時や機
種変更時におけるフィルタリングサービスの推奨が特に重要である。
○
そこで、法に保護者及び携帯電話事業者の責務を明記することにより*xi、保
護者については、フィルタリングの必要性についての意識を高めて利用促進を
更に図るとともに、携帯電話事業者については引き続き普及努力を促し、販売
代理店によるフィルタリングサービスの告知・勧奨の徹底をも図ることで、児
童の被害防止を図るためのフィルタリングの利用の底上げを図る必要がある。
*x
インターネットのウェブサービスのうち、特定の条件が合致するページや特定の条件
に合致しないページ(ブラックリスト方式及びホワイトリスト方式と呼ばれている)の
閲覧を遮断するソフト又はサービス。
*xi
法第3条(インターネット異性紹介事業者等の責務 )、第4条(保護者の責務)及び
第5条(国及び地方公共団体の責務)に規定する「児童によるインターネット異性紹介
事業の利用の防止」には、フィルタリングの普及促進が既に含まれているが、法文上特
記することにより、普及を後押しする効果を期待している。
19
○
なお、出会い系サイトに限らず、携帯電話事業者や通信業界によるフィルタ
リングの普及促進のための自主的な取組によりフィルタリングの普及が進んで
いることや、現在総務省において「インターネット上の違法・有害情報への対
応に関する検討会」を立ち上げ、広く違法・有害情報全般についてのフィルタ
リング機能の導入促進策について検討が行われているところ、その議論の行方
を見守るべきであることから、たとえ努力義務であっても法律上明記すること
は適当ではないとの意見もあった。
○
このほか、フィルタリングの効果について保護者や利用者の賛同が得られ、
利用がより促進されるためには、フィルタリングサービスに関する技術的・方
法論的な改善を図ることが必要ではないか、との意見もあった。
4
適格ではない者を事業から排除するために
提言⑦
本法に違反した者は、行政処分(事業の停止命令を含む)の対象にするこ
とが適当である。
また、事業者の欠格事由を設け、該当者は事業廃止命令の対象とすること
が適当である。
(1)
不適切な運営を防ぐ仕組みの不足
○
現在は、出会い系サイト事業者を特定できない場合を除き是正命令の前段階
の警告によって違法状態が改善されているが、今後、出会い系サイト事業者に
対してより厳しい義務を課した場合には、違反行為を繰り返す事業者が出現す
るおそれもあるところ、現行法には、是正命令の仕組みはあるものの、このよ
うな事態に的確に対処できる仕組みがない。
(2)
事業の停止命令の仕組みを設ける効果及び欠格事由の新設
○
事業の停止命令の仕組みを設けることにより、是正命令の仕組みだけでは規
制に従わない事業者に対しても、法令の遵守を促す効果が期待できる。
○
不適格者を排除するため、例えば、探偵業法(探偵業の業務の適正化に関す
る法律)のように、欠格事由(例えば、暴力団員、児童、一定の前科者等)を
設け、出会い系サイト事業者が欠格事由に該当することが分かった時に事業廃
止を命じる制度を設けることが適当である。
(3)
その他
○
罰則を設ける等、停止命令・廃止命令の実効性を担保するための措置を警察
20
庁において検討すべきである。
5
その他
提言⑧
出会い系サイトではないが、当該サイトの利用に起因した *xii児童の犯罪被
害が相当程度発生しているサイトの運営者は、自主規制として、ネット上で
出会った異性との交際の危険性についてサイト上で注意喚起すること等を行
うことが適当である。
(1)
出会い系サイトではないが、当該サイトの利用に起因した児童の犯罪被害が相
当程度発生しているサイトの現状
○
出会い系サイトではなく児童の利用が法的に何ら規制されていないサイトに
おいても、当該サイトの利用に起因した児童買春等児童の犯罪被害が相当程度
発生していることが判明している【図表16参照】。また、被害の傾向を見ると、
出会い系サイトとは異なり、青少年保護育成条例違反(淫行等)が最も多い。
(2)
対策の必要性
○
今後、出会い系サイトの児童の利用規制が強化されれば、このようなサイト
に児童の被害がシフトする可能性は否めず、また、現に児童の犯罪被害が相当
程度発生している以上何らかの対策を講じるべきである。このようなサイトは、
提供されるサービスが出会い系サイトとは異なることから、直ちに出会い系サ
イト事業者と同様の責任を当該サイトの運営者に求めることは適当とはいえな
いものの、このようなサイトの一部の運営者は児童の被害防止対策を現に行っ
ていることから、これを参考に、このようなサイトについても、一定の自主規
制を中心とした対策を講じることが必要である。
○
そこで、サイトの利用に起因して、主として児童買春・児童ポルノ禁止法違
反、青少年保護育成条例違反等の犯罪被害が相当程度発生しているサイトの運
営者に対して、例えばネット上で出会った異性と交際することの危険性につい
てサイト上で注意喚起するなど、自主的な取組を進めてもらう必要がある。こ
のようなサイト上での注意喚起等であれば、低負担で容易に可能な手法である。
○
*xii
また、サイト運営者の運営方針として、当該サイトを異性交際目的で利用す
法第1条の「インターネット異性紹介事業の利用に起因する」の「起因」と同じく、
サイトを利用したことによって犯人と知り合い、児童が児童買春等の犯罪の被害に遭う
ことを表す。
21
ることを禁止していることを利用者が知らない場合もあると考えられるので、
サイト上の見やすいところへのその旨の表示に自主的に取り組むことを求める
ことも適当である。
○
これらにより、児童への警鐘効果及び誘引しようとする者への心理的な抑止
効果が相まって被害の減少が期待できる。
6
今後の課題等
児童に向けた広告メールの送付の禁止について
(1)
現状と問題点
○
出会い系サイトにアクセスしたことのある中高生のうち 、「広告メールを見
て」アクセスした出会い系サイトを知った者は32.0%であり【図表13参照 】、
また、出会い系サイトに関係した被害児童のうち広告メールをきっかけに当該
サイトにアクセスした者は9.2%であった 。(警察庁による被害児童調査(平
成19年7∼9月))
(2)
検討の内容
○
広告メールから出会い系サイトを認知する児童数の減少が期待できることか
ら、児童に向けた広告メールの送付の禁止について検討した。具体的には、年
齢確認が出来ていない場合の広告メール送付を禁止し、広告メールを送れる場
合としては、年齢確認済みの会員に対する広告メール送付あるいは児童でない
ことの確認メールを事前に送付し自主申告で確認を受ける方法である。
○
現在政府内においては、出会い系サイトの広告メールを含む迷惑メールの規
制の在り方について、総務省が特定電子メール法、経済産業省が特定商取引法
の見直しを検討しているところ、政府内のこれらの議論の行方も踏まえつつ、
現行法が改正された場合における規制の効果も見極めた上で更に児童に向けた
広告メールを規制する必要性の有無について今後検討すべきである。
私人(第三者)が児童に利用させる行為の禁止について
(1)
検討の内容
○
今後、提言④のとおり年齢確認義務を強化した場合には、私人(第三者)が
児童に利用させる行為(例えば、大人がログインして児童に使用させるなど。)
が敢行されるおそれがある。そこで、私人(第三者)が児童に利用させる行為
を禁止して未然防止策をあらかじめ講じれば、このような脱法行為を封じる効
果がある。
○
しかしながら、実際に私人(第三者)が児童に利用させた具体的な事例は把
22
握されなかったので、私人(第三者)の特定の行為を犯罪化するこのような措
置を提言に盛り込むことは、見送ることとした。
今後の運用で配意すべき点について
(1)
出会い系サイト事業に関する相談窓口について
出会い系サイト事業者や自己の運営するサイトが出会い系サイト事業に該当す
るのか判断に迷う事業者に資するよう、今後、本法の運用に関する適切な相談窓
口を明らかにしておくことも必要である。
(了)
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