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写真によるヘール・ボップ彗星軌道図作成実習

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写真によるヘール・ボップ彗星軌道図作成実習
高 校 地 学
写真によるヘール・ボップ彗星軌道図作成実習
北海道札幌星園高等学校
杉 山 剛 英*
目 的
教材・教具の製作方法
生徒の天文に対する興味は大きいものがあるが、見
かけの運動と実際の運動との関係がよくつかめない生
徒が多く、難しいというイメージを持っている。しか
し、それは天体観測を疑似体験させ、太陽を中心に天
体の動きを教えることによっておおむね解決する。本
実習は 1997 年春に来訪したヘール・ボップ彗星を題
材に、天体観測疑似体験を筆者が撮影した写真を使っ
て行い、彗星の尾と太陽の位置関係、宇宙での彗星の
移動、彗星の見え方と地球の丸さの関係、そして彗星
そのものの素晴らしさを体験考察することを目的とし
ている。
Ⅰ.彗星撮影
概 要
Ⅰ.ヘール・ボップ彗星について
1995 年に木星軌道付近で発見された新彗星である。
氷とちりの中心核は直径 40km と推定され、ハレー彗
星の 4 倍である。太陽に最接近した 4 月 1 日前後は、
長さ 2 億 km 以上の尾を形成した 300 年に 1 度の大彗星
である。通常の彗星は火星軌道付近で尾を形成し始め
るが、本彗星は木星軌道で形成していたことで世界が
注目した。青く見える軽いガスの尾は太陽風にほぼ真
っ直ぐ吹き流されている。写真では青い尾の先に太陽
が沈んでいる。白い尾は重いちりの尾で、軌道上にや
や置いていかれるように曲がって吹き流される。今回
は地球軌道に接近するほど両者の角度は開いていく。
次回の来訪は 2400 年後と推定される。
Ⅱ.実習概要
天体観測は夜でなければできない。また、指導者が
いない状況では星図を渡しても生徒の独力によって星
を探すことは難しい。天文学習の一番の問題は実体験
を伴わせられないことにある。本実習は 1997 年 3 月 20
日から 5 月 2 日の期間で 11 回の撮影を行い、その写真
セットを生徒 1 人 1 人に与え、そこに写っている膨大
な星と星図を照らし合わせ、トンボーの冥王星探査よ
ろしく移動経路図を作成し、尾の角度の変化を観察し
て太陽との位置関係を考察し、朝夕における尾の見え
方の違いから地球の丸さを実感するものである。
*
撮影場所は札幌市郊外の当別町を中心としている。
撮影カメラはオリンパス OM-1{50mm 標準レンズ固
定撮影、F=1.8}
、フィルムは ISO400 ∼ 800、露出 30 ∼
50 秒である。肉眼で見た彗星は写真以上のものであり、
夜空が燃えるように広がった長大な尾は今も筆者の目
に焼き付いている。
Ⅱ.生徒用教材
11 枚の写真をそれぞれ 41 枚焼き増しし、順にアル
バムに貼り 41 組作る(写真 1)。ステラナビゲーター
でヘール・ボップ彗星と太陽系の軌道図(図 1)と星
図(図 2、4 月 10 日の 15 時頃の西空)、ワープロで 3 月
20 日頃の地球と彗星(図 3)を作成する。実際は太陽
も星座の中を移動しているが、前後 20 日程なので無
視してもさほど影響はない。
学習指導方法
2.5 時間の実習として以下の順に行う。
Ⅰ.彗星軌道図に尾を書き入れる(図 1)
太陽との位置関係からイオンガスの尾とちりの尾を
作図させる。この時、地球軌道付近では尾の間隔が広
がることに気づかせる
Ⅱ.移動経路図作成(図 2)
写真に写っている星(写真 2)と星図を見比べて彗
星の位置と日付、2 本の尾の角度を記録させ移動経路
図を作る。この時、同じ写真を OHP で指示して見つ
けるポイントを説明するとよい。生徒同士で相談をさ
せるのもよい。太陽系の惑星軌道面も書かせ、5 月 1
日に降交点を通過していることを確認する。実習øで
作図したものと見比べ、ほぼ同じであることを認識さ
せる。ただし、観測者がいる地球も動いているので若
干角度が違って見えることを説明するとより感動が増
す。また、夕方の空は太陽系を斜めに見ているという
意識を持たせる。パソコンで合成した画像を OHP で
投影し、太陽と尾の位置関係が理論通りであることを
示す。
すぎやま よしひで 北海道札幌星園高等学校 教諭 〒 064-0808 札幌市中央区南 8 条西 2 丁目 5-74
@(011)511-4561 E-mail [email protected]
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Ⅲ.朝と夕とでの見え方の違い(図 3)
3 月 20 日頃には彗星は朝と夕に見えているが、尾の
方向が約 90 度違って見える(朝は垂直、夕は水平に
近い)。これは地球が丸く、春分の日付近で札幌が北
緯 43 度にあることに原因がある。このことを作図し
て考えさせる。さらに発泡スチロール球で作った地球
の札幌の位置に爪楊枝をさしたモデルを OHP の太陽
光にかざして回し、実感する。
写真 1 実習の様子
写真 2
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97 年 3/20 ∼ 5/2 のヘール・ボップ彗星
実践効果
図 1 パソコンによる彗星軌道図
授業後に行ったアンケートを抜粋して実践効果とす
る。
・尾の角度が日によってどんどん変化して広がってい
くのがすごかった。理論と実際が合っていた。
・写真に写っているすごい数の星から星図の星を見つ
け出すのは本当に大変だった。トンボーの努力は偉
大だと思った。
・当たり前だけど星図の通りに星があって少し感動。
・この目で見たかった。ちゃんと線状に動いていてす
ごかった。こんな大彗星を写真やプリントで知れて
良かった。
・地球の丸さと彗星の尾の見え方が関係しているとは
思わなかった。難しかったけど、よくわかった。
・今度この様な彗星が来たら必ず自分の目でみたい。
その他補遺事項
図 2 彗星移動経路図
・研究の過程
この実習のきっかけは 1997 年 1 月に行われた研究会
の講演である。札幌市青少年科学館の学芸員の方から
前年の百武彗星の写真と撮影法紹介があり、特別な装
備がなくても手軽に撮影できることがわかり、実際に
撮影してみたのである。3 月 20 日早朝に写した彗星の
あまりの雄大さと美しさに感動し、撮影可能な 5 月 6
日まで晴れ間を探しては撮影に出かけたのである。最
初は教材にしようとの考えは無かったが、その 1 年後
に本実習を発案した。まずは教師が感動することが、
生徒も感動する教材を開発実践する第一歩であると改
めて実感した。
・筆者のホームページ
「杉山剛英の科学実践」
URL:http://www4.justnet.ne.jp/∼ barkhorn
参考文献
ステラナビゲーター forWin95 {アストロアーツ社}
図 3 彗星の見え方と地球の地面の関係
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