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Ⅰ 概要 Ⅱ はじめに Ⅲ 活動日程 Ⅳ 五重塔とは?

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Ⅰ 概要 Ⅱ はじめに Ⅲ 活動日程 Ⅳ 五重塔とは?
五重塔
無敵建築
Ⅰ
概要
日本を代表する歴史的建造物である五重塔がこの地震大国日本で今もなおその美しさを
保つことができているのはなぜか。インターネット、情報番組、本などの様々な資料を基に
調べた。
Ⅱ
はじめに
1995 年、大惨事をもたらした阪神淡路大震災では、死者 6300 人負傷者 4 万 3 千人、全
半壊家屋 20 万 9 千。神戸市内では高速道路の高架橋やビルが倒壊した。しかし、そんな中、
如意寺、八幡神社などの五重塔はほとんど無傷でこのマグニチュード 7.3 の地震を耐え抜い
た。考えてみると「地震で歴史的な五重塔が倒壊した」という話は聞いたことがない。高層
で不安定に見える五重塔がなぜ倒れないのか。五重塔には現代の建築物にはない耐震の秘密
が隠されているのではないかと考え、そのなぞに迫ってみた。
Ⅲ
活動日程
3 月
建築に関する研究を行うにあたって協力をいただける機関を調べお願いのメールを送
った。
4月
前橋工科大学建築工学科学部長河西さんを訪ね、研究テーマの決定。
E・Sの時間にインターネット、本、新聞、テレビ番組などを通してデータを
収集
Ⅳ
5月
データ収集
6月
データ収集
7月
集めたデータ、自分の考えをレポートにまとめる。
五重塔とは?
塔はストゥーパともいわれ、釈尊の遺骨を奉安するためのものであり、仏教寺院において
最も重要な建物とされている。五重塔は古いものでは 1300 年以上の歴史を持つものがある。
例えば世界文化遺産にも登録されている奈良の法隆寺は 1300 年以上の長い歴史の中で震度
6以上の地震を 3 回、震度 5 以上のものであれば 6 回も経験している。他にも古くからある
五重塔としては、醍醐寺、厳島神社、興福寺、仁和寺、東寺、日光などがある。日本には歴
史上 500 以上の塔があり、火事によってなくなったり建て替えられたりした塔は数多くあっ
ても、地震によって建て倒壊したものは数少ない。高さは法隆寺の五重塔では 31.5m、日
本で最も高いものでは 56mの高さがあり高層であるといえる。
●五重塔のつくり&特徴●
*特徴*
①各層の独立
五重塔は十二本の側柱、四本の四天柱が各層ごとに切られ、積み木のように重なってい
る構造である。
②心柱
周囲の柱やはりに接しておらず塔の重さを支えていない
③組物
小さな木材が組み合わされたもので五重塔のひさしの部分にそれを支えるような形でつ
いている。以下がその例。
Ⅴ
1
地震に強い理由
すべて木でできていて釘を使っていない
釘を打つとそこから木が傷んでしまうために
強度が弱くなってしまう。釘を使わないことで強
度が増す。また、木にはコンクリートと違って柔
軟性がある。
2
心柱の役割
周囲の柱やはりに接しておらず塔の重さを支
えていない。強くゆれた際、積み重なった各層がはずれないようにする「かんぬき」の役割
をしているという説がある。
3
組物の役割
地震の揺れを受け取ると軋んだり摩擦を起こして揺れのエネルギーを吸収したり熱に変
えてブレーキの役割をする。下部の力が分散され上部に伝わりにくくなる。組物は単なる
飾りではない。右の図が力の伝わり方を示した図である。
4
高層である
地震にはその地震固有の振動の周期が存在する。また、建物にもその建物の固有振動の
周期が存在する。このふたつの周期が同じである時建物は地震の際に共振し大きく揺れる。
大概の地震は周期が約 0.5 秒であるのに対し、高層である五重塔や高いビルは周期が1∼
2秒であるので周期の違いから揺れが打ち消される。
5
やじろべい
五重塔の屋根の部分には重厚なかわらが使われている。
左の写真を見てもわかるように、五重塔の屋根は少し先が
上に反っていて独特な形をしている。屋根は軽い方がいい
ような感じがするが実はこの屋根の重み、形がやじろべいのような役割を果たしバランス
をとっているという説もある。
Ⅵ
科学的に解明
●薬師寺の五重塔●
薬師寺には 710 年に建てられた古い東塔、1981 年に建て替えられた、新しい西塔の二つ
がある。この二つの塔に計測器をつけて調査を行ったところ、心柱が傷つき割れて添え木
の施されている古い東塔は風で塔が揺れる際にも傷より上が大きく揺れたのに対し、新し
い西塔は上部下部とも揺れ方に違いはあまり見られ
なかった。このことからも塔の揺れ方に心柱が大き
な影響を与えている事がわかる。
●防災科学研究所による実験●
2004 年、12 月。つくば市にある防災科学研究所
で五重塔の五分の一サイズ模型を使った実験が行わ
れた。宮大工が 2 年がかりでつくった7mの五重塔
に 100 個近い計測器をつけ、地震の揺れを人工的に
あたえた。その結果五重塔がくの字に揺れているこ
とが判明した。今までにも地
震で揺れる五重塔を目撃し
た宮大工の証言などからく
の字に揺れることは知られ
てはいたがこの実験で科学
的に証明された。他にも塔の
中心を通る心柱が、塔の変形
や揺れを抑制する効果が見
られた。心柱は、塔本体とは
逆向きに動いて変形や揺れ
を抑制している。右の新聞記
事はその実験を取り上げた
ものである。
★ 「く」の字がたにゆれることのメリット
↑2006 年 4 月 15 日(土曜日) 毎日新聞
重心があまり動かず安定していて倒れにくい
重心が動いてしまい簡単に倒れる
この心柱の動き、働きが、五重塔が地震に強い理由だと考えられている。
Ⅶ
現在
近代、現代の建築に生かされる五重塔のメカニズム
霞ヶ関ビル
耐震設計として鋼材を組み上げた「柔構造」(五重の塔のような地震の時に
は柱がゆらゆらと揺れ、地震の力があちこちに分散する構造)を採用して い
る。柳のように揺れる建物をイメージして作られた。
丸ビル
ビルの中心を貫く鋼鉄製の耐震シャフト、これが五重塔の心柱と同じ働きを
している。
日本橋
新開発ダンパーが 100 個近く使われている。これは、五重塔の組み物と同じ
三井タワー
ように地震のエネルギーを吸収する。
このように、五重塔の建築技術は現在様々な高層建築にいかされている。まだまだ解明さ
れていない部分も多い五重塔の耐震構造にはこれから先もっといろいろな発見が期待され
る。
Ⅷ
感想
今回の個人研究を通して私は、千年以上も昔の建築技術から学べる事の多さ、古代日本の
建築技術の高さに感動しました。昔の技術が今の発達した科学に敵うはずがないと思ってい
ましたが、今の科学技術を持ってしても五重塔が地震に強い秘密はまだすべては解明されて
いません。過去から学べる事が沢山あるという事に気付くことができました。これからも研
究は進みもっといろいろなことがわかってくるのではないかと期待しています。高層ビルの
建築に、五重塔の耐震技術が活かされている事にも驚きました。最新の技術ばかりに目を向
けるだけではなく、昔の技術からも学ぶ。広い視野を持つ研究者をめざしたいです。
Ⅸ
参考資料等
参考映像…テレビ朝日「五重塔の制震メカニズム」
NHKスペシャル、世界遺産「災害列島もなぜ厳島神社被害に遭わないか、地
震で倒れない五重塔」
参考サイト…http://www.seizuyoushiya.com/gojyuunotou.htm
http://www.sukima.com/words/kumimono/kumimono.htm
http://www.seizuyoushiya.com/gojyuunoyou.htm
http://www.shikoku-np.co.jp/feature/tuiseki/336/index.htm
http://www.hm.aitai.ne.jp/^nokada/pagoda/4_ctrclmn/Pagod_41.html
参考文献…「五重塔はなぜ倒れないか」上田篤
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