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日本出版学会 - 『アーカイブ事典』出版とその周辺 大西愛 (2004年3月1日)
日本出版学会 - 『アーカイブ事典』出版とその周辺 大西愛 (2004年3月1日) 2010年 5月 13日(木曜日) 14:53 関西部会 発表要旨 (2004年3月1日) 『アーカイブ事典』出版とその周辺 大西愛 2004年3月1日の出版学会関西部会の研究会では,大阪大学出版会の大西愛氏に報告をお願い した.大西愛氏は大阪大学出版会で編集の仕事をする一方で,懐徳堂記念会学術専門委員,全 国歴史資料保存利用期間連絡協議会理事もつとめている. 今回は2003年11月に刊行された『アーカイブ事典』(大阪大学出版会)の共編者として今日 のアーカイブ事情について報告していただいた. まず大西氏は『アーカイブ事典』を刊行した理由を次のように説明された. 1997年の『文書館用語集』(大阪大学出版会)は文書館,博物館,図書館勤務の方に重宝し ていただいたが,用語集では範囲が狭いということで1998年,そのときの84名の執筆者に呼び かけ,『文書館事典』の編集を進めてきた. 当時,「アーカイブ」という用語は,例えば1985年から大西氏もその設立にかかわった大阪 府公文書館の館報が「大阪あーかいぶず」という名称になったくらいで新しい言葉であった. 今では「NHKアーカイブズ」や「デジタル・アーカイブ」など「アーカイブ」という用語が多 く使われている.「アーカイブズ」とは『文書館用語集』では「(1)史料,記録史料 (2)文書館 (3)公文書記録管理局 (4)[コンピュータ用語では,複数のファイルを1つにまとめたり圧縮したファイルのこと.]」 としている.そこで今回の事典を『アーカイブ事典』としてこのたび刊行したのである. 1988年,パリで開かれた国際文書館評議会世界大会で,フランス大統領ミッテラン氏は,次 のような演説を行った. 「すべての国のアーカイブズは過去の行為の軌跡を保存するものであり,同時に現在の問題 をも照らし出してくれるものである.過去はそのままにしておくと消え去ってしまうから,記 録を残すよう努力をはらわなければならない.記録を処分するかどうか,つまり生きてきた存 在証明を残すかどうかは私たちの判断にかかっている.この存在証明は積み重なって世の中の できごとがどのように組み立てられているかを知る手段となり,私たち世界のすべての人びと はそれを知る権利がある.」(『アーカイブ事典』2-3ページ) 大西氏はこの大会に参加して,この演説をじかに聴き感動したという. 次に大西氏はL=図書館,M=博物館・美術館,A=文書館・公文書館・資料館・史料館の役割 について概説し,LMAは文化のバロメーターであると指摘した.しかし,日本ではAはまだまだ 充実していないという. また,図書館には司書,博物館・美術館には学芸員が専門職として存在するが,公文書館に はアーキビストの正式な資格はないのが現状である. さらに大西氏は資料保存の原則に話を展開し,出所原則・原秩序尊重の原則・原形保存の原 則を具体的な事例をふまえながら解説された. 15名の参加者からの質疑応答は活発で,市町村合併と資料保存の問題,紙やマイクロフィル ム,デジタルという保存方法の問題など多岐にわたり,時間の関係上,20時半からは懇親会会 場へと場所を移してさらに盛んな議論が繰り広げられた. 出版の近接領域であるアーキビストの知見を聞くまたとない機会であった. 1 / 2 日本出版学会 - 『アーカイブ事典』出版とその周辺 大西愛 (2004年3月1日) 2010年 5月 13日(木曜日) 14:53 (文責 湯浅俊彦) 2 / 2