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- 153 - 5.2.4 焼却炉廃熱の利用 5.2.4.1 原理 下水汚泥の焼却工程
5.2.4 焼却炉廃熱の利用 5.2.4.1 原理 下水汚泥の焼却工程においては、排ガスが高温(800℃以上)となる事から、熱効率を高める為に 熱回収が行われている。 回収された高温廃熱は、脱水汚泥の燃焼用空気の予熱や乾燥等により、全て有効利用されている。 一方、中温及び低温廃熱は、廃熱温度が低く用途が限定される事等から、大半が未利用のまま系 外に放出されている。 中温廃熱 高温廃熱 低温廃熱 出典:資源のみちの実現に向けて報告書(案) 図 5.2.4.1 流動床式焼却設備の熱収支フローの例(50t-脱水汚泥/日) 5.2.4.2 設備構成概要 東京都東部スラッジプラントでは、焼却炉の高温廃熱を焼却炉の余熱利用に利用する他、庁舎内 の冷暖房に活用している。 また、高温廃熱は空気予熱機を経由し焼却炉へと供給される他、廃熱ボイラ、蒸気タービン等を 経由した後、温水として庁舎内に供給されている。 出典:東京都 HP より 図 5.2.4.2 東部スラッジプラント廃熱回収蒸気発電 フロー図 :高温廃熱の利用事例 - 153 - 5.2.4.3 一般的な特徴 焼却工程により回収される廃熱は「高温」 、 「中温」 、 「低温」に大別される。 図 5.2.4.1 によれば、高温廃熱は、焼却直後の排ガス(800℃以上)から回収されるため、その温 度は約 650℃と高く、焼却炉の燃焼用空気に利用されている。 また、排煙処理後、煙突から排気される排ガスの温度は約 200℃であり、給湯やプールの加温用 の熱源として利用※されている。 洗煙排水から回収される低温廃熱の温度は約 50℃であり、温水プールの加温用ヒートポンプの熱 源としての利用※が実施されている。 ※川崎市 入江崎スラッジセンター(出典:資源のみちの実現に向けて報告書(案) ) 5.2.4.4 事業事例 5.2.4.4.1 兵庫県神戸市 都市名 兵庫県神戸市 供用時期 温水供給システム S63.3 利 用 焼却炉廃熱 場 内 技 術 <状 況> 熱交換器 <実機導入済み> 場 外 事業費 3 億円 特 総エネルギー 又は施設規模 温水供給事業 エネルギー当り 事業費 維持管理費 - - 熱交換器:19.88GJ/h 効 果 化石燃料削減、温室効果ガス削減 徴 費用補助制度 新エネルギー財団の利子補給 兵庫県神戸市建設局下水道河川部工務課 (1)はじめに、 : 「5.1.7.4.1 兵庫県神戸市」を参照してください。 (2)事業概要(六甲アイランド温水供給事業) 六甲アイランドの東部スラッジセンターは、市内の処理場で発生した脱水ケーキを全量焼却処理 する施設で、人工島六甲アイランドの北東に位置し、年間8.2万トンを焼却処理している。 焼却処理の廃熱利用としてケーキの乾燥及び燃焼空気の予熱用として活用しているが、排気ガス 処理の最終工程である排気ガススクラバーから50℃程度の温水が発生しており、この中温水を有 効利用して六甲アイランドの住宅ゾーン3,600戸に対し熱交換器を介して水道水を加温。集合 住宅に温水を供給する「地域温水供給システム」事業を、六甲アイランドエネルギーサービス㈱が、 昭和63年3月から実施している。本システムは、新エネルギー財団の利子補給を受けており、事 業運営のコスト低減に活用されている。 - 154 - 図 5.2.4.3 地域温水供給区域 このシステムの特徴は、省エネ性を出来るだけ高め、かつ供給コストを出来るだけ低く抑えるた めに、温度保障のための設備のない「成り行き温度供給ステム」となっており、使用者側で必要に 応じ、各戸のバックアップ給湯器により追焚使用する方式となっている。 図 5.2.4.4 温水供給システムフロー - 155 - システムの概要は、スラッジセンター敷地内に熱源プラント設備が設置され、19.88GJ/hの一次 熱交換器から公道埋設の地域熱媒水配管(総延長 3,550m密閉系)内の熱媒水により各住棟熱交換器 に熱を搬送する。 (図 5.2.4.3、図 5.2.4.4) 住棟では、分配流量調整弁を経て住棟熱交換器(約 200 戸に1箇所程度設置)により給湯用上水 を加温して中温水としている。そのままの温度でも住宅の給湯として最も多く使用される温度域に あるが、住戸内で昇温使用するためと、運休時のバックアップ用として給湯器部分を改造した特製 給湯暖房熱源器が置かれ、a,中温水ストレートモード供給 b,50℃定温出湯モード c,70℃定温出 湯モードの 3 モードで使用できる。 各戸には水道使用量を計量するため中温水メーターが設置されており、使用者は水道使用料と温 水(温度)の定額料金(1,500 円/月)に加え、追い炊きした場合ガス料金を支払うことになる。 計画給湯温度は、年間平均値 40.5℃(夏季 52℃、冬季 28℃)であるが実際の温度は、平均 46℃ ほどあり、廃熱による給湯負荷カバー率は、84%と良好である。 事業者が、おこなったアンケートで入居者の満足度も、 「沸かす手間」と「経済性」の評価が高く 約8割の人が良いとしている。 冬季の経済性の評価が低いが、追い焚き頻度が増えること及びガス料金にガスセントラルヒーテ ィングのガス代が含まれているため区分することが出来ないことにより低い評価になったものと思 われる。 (3)導入の効果と今後の課題 東部スラッジセンターの「地域温水供給システム」においては、希釈冷却し下水放流されていた 冷却水及び処理場の流入下水量の減少が図られている。 この事業は、未利用エネルギーの活用が、新しい街づくりに生かされた好事例ではないかと思っ ている。 - 156 -