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資料12 - 神奈川県薬剤師会

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資料12 - 神奈川県薬剤師会
平成 27 年度健康情報薬局推進事業
「在宅の高齢者・要介護者に対する服薬管理」事業
調査結果報告書
平成 28 年 3 月
神奈川県
公益社団法人神奈川県薬剤師会
目次
Ⅰ.調査の背景
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
Ⅱ.調査報告1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.調査結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
3
3
7
8
Ⅲ.調査報告2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
1.調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
2.調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
Ⅳ.調査結果から得られる示唆と得られる課題・・・・・・・・・ 23
資料編
Ⅰ.調査の背景
超高齢社会の到来で、高齢者の医療・福祉・介護のあり方が見直されている。厚生
労働省は、2025 年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、
可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができ
るよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を
推進しており、医療の場が病院から在宅へとシフトする流れが更に加速することが推
測される。平成 26 年の調剤報酬改定では、基準調剤加算の要件に在宅医療への関わり
が追加され、在宅患者訪問薬剤管理指導料や無菌製剤処理加算の変更が行われ、薬局
の薬剤師が在宅医療に参画することが求められている。しかし、薬局・薬剤師の関わ
りは未だに少ないのが現状である。
薬剤師の在宅推進の阻害要因として、薬局側、他職種側、患者家族側の要因が考え
られる。薬局側の要因としては、薬剤師のマンパワーの不足、時間的制約、在宅に関
する知識・情報不足が先行研究で明らかとなっている 1)2)3)4)。他職種側の要因として、
医師 5)6)、訪問看護師 4)7)、ホームヘルパー等の介護従事者 4)6)7)8)9)、ケアマネージャー
8)10)11)12)の訪問薬剤管理指導業務の認識不足が先行研究で明らかになっている。患者家
族側の要因としては、ケアマネージャーや薬剤師対象のアンケートにおいて患者・家
族が訪問薬剤管理指導業務のメリットに対する理解不足があげられている 2)12)13) 。
薬剤師の在宅推進の促進要因としては、ケアマネージャーのケアプランへの薬剤師
居宅療養管理指導の組み入るきっかけとなった、医師の意向、ケアマネージャーの必
要意識、利用者または家族の意向が報告されている 12)13) 。
これらのことから、在宅医療への薬剤師の介入には、医療・介護福祉側の要因だけ
ではなく患者・家族の意向も関与していることが明らかになっている。また在宅介護
において、ケアプランを決定するのは患者家族であり、薬剤師の在宅医療への介入に
は患者家族の意向は重要なものである。しかし、訪問薬剤管理指導業務に関する患
者・家族を対象とした研究は少なく、患者家族の薬剤師業務に対する認識に関する詳
細は明らかにされていない。
そこで、今回は 2 つの調査を実施した。一つは、
「家族の介護をする可能性がある者
等の在宅医療における薬剤師業務に対する認識調査」である。これは、高齢者介護の
キーパーソンである患者家族に今後なりうる可能性がある来局者の薬剤師の在宅業務
に関する認知と薬剤師の介入に対する意向の関連性を明らかにし、薬剤師の在宅への
関わりに対する介護者の抵抗感の軽減、介護者発信の依頼の増加につながる要因につ
いて検討することを目的とした。二つ目は、
「飲み残しや飲み忘れ等防止の服薬管理調
査」である。薬局薬剤師による患者宅への訪問、若しくは残薬バックによる薬の持ち
込みにより薬学的管理を行い、参加者への薬剤師による聞き取り調査も含め、薬剤師
の介入による効果を検討する。
Ⅱ.調査報告1
「家族の介護をする可能性がある者等の在宅医療における
薬剤師業務に対する認識調査」
1.
調査の概要
(1) 方法
2015 年 7 月 21 日~8 月 6 日に、神奈川県の保険薬局の 50 歳以上の来局者
のうち同意を確認することが可能であるものを対象に自記式調査票調査を実施
した。調査協力薬局を神奈川県薬剤師会主催の研修会において募集した。各協
力薬局において、薬剤師が調査対象者に該当する来局者 5~10 名に対し無記名
自記式調査票(資料1)を手渡し、調査対象者は薬局内にて回答した。調査対象
者が記入済調査票を封筒に入れ厳封したものを薬剤師が回収し、まとめて郵送
回収とした。
(本研究は慶應義塾大学薬学部倫理委員会(150709-J3)により承認されている)
(2) 質問内容
2.
問1
在宅医療における薬剤師業務に対する認知、重要性の認識(16 項目)
問2
在宅医療における薬剤師業務に対する認知の情報源
問3
在宅への薬剤師訪問の希望(3 項目)
問4
医薬品や薬物治療に対する考え(14 項目)
問5
基本属性(7 項目)
調査結果
(1) 回答者の属性
48 薬局から協力が得られ、279 名から回答を得た。そのうち欠損値のある
55 名を除いた 224 名を分析対象とした(有効回答率 80.3%)。
回答者の属性を表 1 に示す。
表 1 回答者の基本属性(n=224)
質問項目
問5-1 性別
度数
%
87
137
38.8
61.2
89
59
56
20
39.7
26.3
25.0
8.9
99
125
44.2
55.8
146
78
65.2
34.8
141
83
62.9
37.1
34
190
15.2
84.8
問5-7 家族に対する在宅介護経験の有無
はい
23
いいえ
201
10.3
89.7
男性
女性
問5-2 年齢
50代
60代
70代
80歳以上
問5-3 複数受診の有無
はい
いいえ
問5-4 かかりつけ薬局の有無
はい
いいえ
問5-5 入院経験の有無
はい
いいえ
問5-6 家族における医療関係者の有無
はい
いいえ
(2) 在宅医療における薬剤師業務の認知と重要性(問 1)
在宅医療における薬剤師業務の認知と重要性について図 1 に示す。認知が高い項
目として、
「患者さんや家族からの、薬についての相談への対応」(87.1 %)、
「複数の
薬を飲む時点ごとに 1 回分を 1 包にまとめる」(81.0 %)、「薬の重複や飲み合わせ、
食べ物と薬の飲み合わせを確認」(79.0 %)が、認知が低い項目として、
「介護に必要
な紙おむつ等の介護用品や車いす等の福祉機器の相談や供給」(40.0 %)「バイタルサ
インのチェックから、薬がきちんと効いているか、副作用が起きていないかの確認」
(40.0 %)、
「家の中で使用する吸引器や吸入器などの医療機器、それに関わるカテー
テル類などの医療材料、ガーゼなどの衛生材料の供給」(32 %)、
「部屋の中の消毒や
衛生管理のアドバイス」(27 %)があげられた。在宅医療に対する薬剤師業務(16 項目)
の認知数の中央値は 8 個(四分位範囲:5-12 個)であった。またどの項目においても
約 70 %以上の人が重要であると感じていた。
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%
87.1%
96.9%
81.0%
90.2%
79.0%
96.9%
69.5%
94.6%
67.6%
92.0%
64.8%
84.8%
62.9%
89.3%
57.1%
94.6%
49.5%
93.3%
49.5%
89.3%
48.1%
91.5%
43.8%
93.3%
40.0%
74.1%
40.0%
87.1%
知っている
31.9%
84.8%
重要である
26.7%
70.5%
相談応需
一包化
相互作用確認
副作用確認
薬の整理整頓
薬の加工(半錠、潰す等)
薬の宅配
医師との情報共有
他職種との情報共有
残薬の再利用や廃棄
医師への処方提案
医療用麻薬の管理や廃棄
介護用品の相談応需や供給
バイタルチェックによる副作用確認
医療機器等の供給
衛生管理のアドバイス
図 1 在宅医療における薬剤師業務に対する認知と重要性(n=224)
(3) 在宅での薬剤師の業務内容の情報源(問 2)
在宅での薬剤師の業務内容の情報源は、
「薬剤師」126 名(56.3 %)、
「テレビ」70
名(31.3 %)、
「薬剤師以外の職種」57 名(25.4 %)、
「新聞」48 名(21.4 %)、「書籍・雑
誌」19 名(8.5 %)、
「インターネット」15 名(6.7 %)、「その他」34 名(15.2 %)であっ
た。
(4) 在宅への薬剤師訪問の希望(問 3)
家族に対する在宅への薬剤師訪問を有料でも必ず希望すると回答したのは、
Case1:多剤併用時は 19.6 %,Case2:残薬発生時は 20.5 %,Case3:医療用麻薬使
用時は 38.4 %であった(図 2)。
0.0%
5.4
7.1
4.9
20.0%
40.0%
60.0%
45.5
42.0
28.1
80.0%
29.5
30.4
28.6
100.0%
19.6
20.5
38.4
1:希望しない
3:有料なら値段によっては希望する
図 2 在宅への薬剤師訪問の希望(n=224)
Case1:多剤併用時
Case2:残薬発生時
Case3:医療用麻薬使用時
2:無料なら希望する
4:有料でも必ず希望する
(5) 医薬品や薬物治療に対する理解(問 4)
医薬品や薬物治療に対する理解について図 3 に示す。医薬品や薬物治療に関
する問いの正解数(14 個)の中央値は 10 個(四分位範囲:8~12 個)であった。
0.0%
医薬品の相互作用
加齢に伴う医薬品代謝能の低下
医薬品と食べ物等の相互作用
定常状態のある医薬品
剤形変更が可能な医薬品があること
不適切な保管による成分の変化
加齢に伴う副作用発現頻度の変化
用法用量の変更による効果の変化
同じ薬効群での副作用の違い
全ての医薬品に副作用の可能性があること
医薬品の体内分布
服用回数変更が可能な医薬品があること
徐放性剤、腸溶剤の加工
処方薬の使用期限
20.0%
40.0%
92.9%
90.6%
88.4%
84.4%
82.1%
82.1%
81.3%
76.3%
57.6%
55.8%
54.9%
50.4%
41.1%
31.7%
60.0%
80.0%
100.0%
7.1%
9.4%
11.6%
15.6%
17.9%
17.9%
18.8%
23.7%
42.4%
44.2%
45.1%
49.6%
58.9%
68.3%
正しい認識(1強くそう思う、2そう思う、3全くそう思わない)
誤った認識(4あまりそう思わない、5全くそう思わない)
図 3 医薬品や薬物治療に対する理解(n=224)
(6) 在宅への薬剤師訪問希望について関連する要因
在宅への薬剤師訪問の希望の有無を従属変数として、強制投入法を用いて多
重ロジスティック回帰分析をおこなった。独立変数を在宅医療における薬剤師
業務の認知数、医薬品や薬物治療の問いの正解数、性別、年齢、複数科受診の
有無、かかりつけ薬局の有無、入院経験の有無、家族における医療関係者の有
無とした。その結果在宅への薬剤師訪問の希望を高める要因として、12 個以上
在宅における薬剤師業務を認知することのみがあげられた(Case1:OR=
4.33(1.980-9.480),Case2:OR=2.98(1.396-6.364),Case3:OR=2.38(1.0465.409)。在宅への薬剤師訪問の希望と医薬品や薬物治療に対する理解は関連性
がみられなかった。
(5) 在宅医療における薬剤師業務の認知に関連する要因
在宅医療における薬剤師業務の認知の個数と医薬品や薬物治療に関する問い
の正解数には有意な関連性がみられた(Spearman ρ=0.28、P<0.001)。
3.
考察
(1) 来局者の在宅医療における薬剤師の関わりの希望の現状
医療用麻薬を使用していると仮定した場合のみ有料でも必ず希望するとした
割合が多く、医療用麻薬というものの性質から薬剤師の関わりへの要望が大き
くなったと考えられる。一方、多剤併用や残薬発生を仮定した場合では、薬剤
師の関わりへの要望は少なく、在宅医療における薬剤師の必要性理解が得られ
にくい現状が推測される。
(2) 在宅への薬剤師訪問の希望に関連する要因
在宅への薬剤師訪問の希望を高める要因として、薬剤師業務の幅広い認知が
あげられた。在宅医療における薬剤師業務の認知が高い項目として、「相談応
需」(87.1%)、
「一包化」(81.0%)、
「相互作用確認」(79.0%)があげられた。これ
らは普段、薬局の窓口で薬剤師の業務として見聞きすることが多い業務である
ため、認知が高くなったと考えられる。また、在宅における薬剤師業務を認知
していない業務であっても重要であると回答しており、来局者の大半は薬剤師
業務の重要性理解はできていると考えられる。
これらのことから、薬局の窓口では見聞きすることが難しい薬剤師業務を積
極的に周知していくことが、在宅への薬剤師訪問の希望の増加につながること
が示唆された。
(3) 在宅医療における薬剤師業務の認知に関連する要因
医薬品や薬物治療に対する理解は、在宅への薬剤師訪問の希望に直接的には
関連性がみられなかったが、在宅における薬剤師業務に対する認知とは関連性
がみられ、在宅への薬剤師訪問の希望に対し間接的に影響があると考えられ
る。このことから、医薬品や薬物治療に対する理解を深める指導を行うだけで
なく、どのように薬剤師が関われるのかについても伝えていくことが重要であ
ると考えられる。
(4) 今後の課題
本調査では、薬剤師と関わりのある来局者を対象に調査を行っているため、
今回のデータが全国民を正確に代表しているとは言い難い。今後一般化できる
調査対象で調査を行う必要がある。
参考文献
1)
廣谷芳彦, 八十永理, 的場俊哉, 池田賢二, 恩田光子, 川瀬雅也, 名徳倫明, 保険薬局に
おける在宅医療への実施状況と薬剤師の意識・意見に関する調査研究, 医療薬学,
2012, 38, 371-378.
2)
北小路学, 李繭香, 薬局薬剤師の在宅医療に対する意識調査, 医学と生物学, 2013, 157,
713-718.
3)
林雅彦, 大井一弥, 三重県伊勢地区保険薬剤師における在宅医療の推進に対する阻害
要因に関する研究, 日本老年医学会雑誌, 2014, 51, 466-469.
4)
松崎優, 木村嘉明, 橋本昌子, 荒井國三, 薬局薬剤師の在宅緩和ケア参画に関する薬局
薬剤師および訪問看護・介護職の意識調査, 医学と薬学, 2013, 70, 769-777.
5)
恩田光子, 河野公一, 渡辺丈眞, 渡辺美鈴, 明石光也, 在宅ケアにおける開業医の薬
局・薬剤師との連携に関する認識, 日本衛生学雑誌, 2002, 57, 527-534.
6)
恩田光子, 在宅ケアにおける薬局・薬剤師機能のあり方に関する研究, 日本老年医学
会雑誌, 2002, 39, 618-625.
7)
恩田光子, 河野公一, 渡辺丈眞, 渡辺美鈴, 在宅ケア分野におけるホームヘルパー・訪
問看護婦の薬局・薬剤師との業務連携認識, 大阪医科大学雑誌, 2002, 61, 25-32.
8)
榊原幹夫, 城戸充彦, 栗林淳, 関壮史, 亀井浩行, 鍋島俊隆, 地域包括支援センター従
業者の薬剤師業務に関する認識についてのアンケート調査, 薬局薬学, 2014, 6, 133-141.
9)
坂井尚子, 福島紀子, 松本佳代子, 松田晋哉, 在宅ケアにおけるホームヘルパーの活動
実態と薬剤師との連携希望,日本公衆衛生雑誌, 2000, 47, 79-86.
10) 七海陽子, 恩田光子, 櫻井秀彦, 田中理恵, 坪田賢一, 的場俊哉, 向井裕亮, 荒川行生,
早瀬幸俊, 「薬剤師による居宅療養管理指導」のケアプランへの組み入れに関する研
究
ケアマネージャー調査からの考察, 薬学雑誌, 2010, 130, 1573-1579.
11) 平成 26 年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業, 地域包括ケアシ
ステムにおける薬局・薬剤師による薬学的管理及び在宅服薬支援の向上及び効率化の
ための調査研究事業 報告書, 2015.
12) 七海陽子, 恩田光子, 櫻井秀彦, 田中理恵, 坪田賢一, 的場俊哉, 向井裕亮, 荒川行生,
早瀬幸俊, 在宅ケアにおける薬剤師業務に対するケアマネージャーの情報収集手段及
び意識・要望に関する調査研究, 薬学雑誌, 2011, 131, 843-851.
13) 日本薬剤師会, “薬局のかかりつけ機能に関わる実態調査報告書”, 2011, pp12, 13, 52-56,
66.
Ⅲ.調査報告2
「飲み残しや飲み忘れ等防止の服薬管理調査」
1.調査の概要
(1) 調査方法
対象者は、調査 1 を実施時に本調査への参加の同意書を提出している者 92 名
のうち、以下の(i)(ii)に該当する者とした。
(i)継続的に薬を服用、使用している患者で新たに薬剤師の服薬管理(訪問調
査)を行うことに同意をしてもらえる患者または患者の家族
(ii)継続的に薬を服用、使用しており、薬局において薬剤師による薬剤管理を
希望する患者、または患者の家族
(2) 質問内容
①
初回アンケートア
問1 薬剤師に対する相談意思や薬剤師業務の認識(11 項目)
問 2 医療に対する行動について(2 項目)
②
薬剤師聞き取り用アンケートイ
薬剤師に相談したかったこと、薬の服用者の属性等(9 項目)
③
残薬等調査用紙①
薬剤師が訪問、または薬局にて患者が持ってきた残薬の確認
④
残薬等調査用紙②
薬剤師が介入した後の残薬の確認
⑤
残薬の確認 最終介入時アンケートウ
問1
薬剤師に対する相談意思や薬剤師業務の認識(11 項目)
問 2 薬局・薬剤師のサービスを受けた感想(自由記述)
(3) スケジュール
①
同意書のある方に、初回訪問(来局)日の打ち合わせを行う。
②
10 月末までに…初回アンケートの実施(初回訪問又は来局)
③
「介入前アンケート(ア、イ)
」および「残薬等調査表①」を11月9日
(月)頃までにとりまとめて県薬へ送付
④
初回訪問の3~4カ月後、
「介入後アンケート(ウ)」の実施
⑤
「介入後アンケート(ウ)
」および「残薬等調査表②」を2月12日(金)頃
までに県薬へ送付
*対象者が複数いる場合には、対象者全員分をまとめて県薬へ送付
2.調査結果
(1)
介入前アンケート調査 「服薬にかかる調査質問紙(ア)」
調査1の実施時に調査 2 への参加の同意書を提出した 92 名に声掛けをしたが
最終的に 63 名が継続して調査に参加した。
回答者数
63 名(68.5%)
(2) 薬剤師に対する相談意思や薬剤師業務の認識
回答者の薬剤師に関する考え考えやイメージを質問した結果を図 1 に示す。
図1 薬剤師に対する相談意思や薬剤師業務の認識(初回調査)
薬剤師に対する相談意思に関わる問(ア問 1-1~問 1-7)に対し、「そう思う」「非
常にそう思う」と回答したのは 7 割以上であった。特に、「薬のことが分からない
時は、相談してみようという気になる」は、87.3%、「薬剤師は、私の秘密を守っ
てくれると思う」は 85.8%「薬剤師には、いつでも相談ができると感じる」は
85.7%であった。一方で、
「飲み残した薬は、薬剤師にすべて見てもらった方が良
い(ア問 1-8)」に対して「そう思う」「非常にそう思う」と回答したのは 49.2%、
「薬剤師は、医師に薬の変更を提案することがある(ア問 1-10)」では 41.2%と、5
割以下であった。また、
「飲み残した薬があることを、医師に知られたくない(ア
問 1-11)に対して「そう思う」
「非常にそう思う」と回答したのは 14.2%と割合は
少なかった。
図2 医療に対する行動(お薬手帳の活用)
回答者自身の行動を聞くために、お薬手帳の活用について質問した結果を
図 2 に示す。自分自身の処方せんを持って行くとき、お薬手帳を持参し薬剤師
にみせますか?(ア問 2-2)」に対し「あまりない」
「全くない」と回答したのは
25.4%(16/63 件)、
「病院を受診するとき、お薬手帳を持参し医師に見せますか?
ア問 2-2」では 50.8%(31/63 件)と割合に差が見られた。
(3) 薬剤師の聞き取りによる調査
「薬剤師による聞き取り調査用紙(イ)」
問 1 今回、薬剤師に相談したかった内容は何ですか?(複数回答可)
表1 薬剤師に相談したかったこと
(n=63)
人数
飲み忘れ
18
飲み合わせ
12
その他
16
%
28.6
19.0
25.4
薬剤師に相談したかった内容は、飲み忘れが 28.6%であり、これを防ぐ取組
として、一包化が 8 名、お薬カレンダーの使用は 4 名であった。飲み合わせに
ついて相談したかったと回答したのは 19.0%であった。(表1)
問 1-i 表1の飲みわすれの原因として薬剤師の聞き取りから得られたこと
・漢方3種類のうち2種類が朝夕、残りは毎食前なのに、正しく理解できず困難
・忘れたことで、症状がでるが、調子の良い時は、中抜きすることがある。連続
服用では副作用を気使うため。医師は、大丈夫だから服用をすすめることもあ
るので、ここ2ヶ月余りは飲み忘れ以外は服用継続中。
・週一回の起床時服用の薬のため、ついのみ忘れてしまう
・朝にのむ薬をのみ忘れた時は、いつのんだら良いか
・まれにあり。外出して昼食後の服用忘れ、寝る前の薬の服用前に寝てしまう。
・ほぼなし、外出時に忘れる位
・1日3回服用の昼間をよく忘れる。外出して多忙の為
・ほぼなし(一包化してからはのみ忘れなし)
・飲まなければならないという意識が低かったため。
・1日3回のユベラ 50mg がのめない。コンビニエンスストアを経営、24hr 営
業で、孫の世話もあり食事(昼・夕)の時間が不規則、孫を寝かせていると自
分も寝てしまう。
・残薬の整理
・飲み忘れた時にその日は飲まないのか、それとも飲むべきなのか不安になる時
がある
問 1-ii 表1の飲み合わせの具体例として以下の内容が挙げられた。
・朝・利尿剤ハルナール 0.2mg1錠、夕・胃酸過多抑制剤オメプラール 20mg1
錠の服用。夕・マグミット2錠・便秘薬服用。2種時間差つけ服用せるも、最
近は、同時服用も可との薬剤師指示により続行中。
・薬と食事
・ジャヌビア、スーグラ、Alcが落ちないので糖尿病薬を2種のんでいるが低
血糖ナドおきないか心配。
・処方薬全般について、レザルタス、カデュエット3番、コンプラビン、ガスタ
ー、外用(目薬、軟膏)
・ハルシオン、デパス
・タイプロトンと太田胃散やビオフェルミン
・痛み止めと他薬について
・定期薬と抗ガン剤
・不特定のくすりの飲み合わせ
・配置薬との飲み合わせ
・内科に通っていてたまに外科など行くので飲み合わせが心配
問 1-iii その他に薬剤師に相談したかったことはないか?
・薬の作用、使い方について。
・食事などとの、食べ合わせ、飲み合わせ
・副作用について、対処方法についてたずねたことあり
・眠れない時に服用しているとのこと→それでも眠れない。どうすればよいか。
・薬は飲みたくないのでへらす方法
・眠れないときにどんな薬が適切か、など、薬の内容について。1日2回しか食
事をとらないので、どうしたら良いか?
・薬がよくかわるため、残薬について
・血圧の薬(この薬の前)を飲みはじめた頃から口がモゾモゾ動くように思う
・不足している薬が一種類あるのは・・・どうやって薬をいつすてるの?すて時
が分からない。
・他の薬と一緒に飲んでも大丈夫かどうかを知りたいです。
(カゼ薬等)
・妻の飲み合せ、自分の病気
問 2 薬剤師に相談したかった薬は誰が服用しているものですか。
表2 相談したかった薬の服用者
人数
41
21
1
人数
2
11
6
1
4
n=63
本人 家族
無回答
家族(本人以外) n=21
父親
母親
夫
妻
その他
%
65.1
33.3
1.6
%
9.5
52.4
28.6
4.8
19.0
薬の服用者は本人が 65.1%であったが、家族が服用していると回答した者は
33.3%である(表2)
。相談したかった薬を服用している対象者は、母親が一番
多い割合であったが、母親と娘の両方の相談をしたいと回答する人や、友人と
回答している人もおり、家族だけではない場合もありうるため「家族」の項目
を「本人以外」として記載することにした。
問 3 薬の服用者の属性
3-1 年齢
表3 服用者本人及び本人以外の年齢構成と平均年齢
50代
60代
70代
80代
90代以上
無回答
平均年齢
総数(n=63)
7
10
21
17
6
2
75.0
%
11.1
15.9
33.3
27.0
9.5
3.2
本人(n=41)
5
9
17
8
1
1
71.8
%
12.2
22.0
41.5
19.5
2.4
2.4
本人以外(n=21)
2
1
4
8
5
1
80.9
%
9.5
4.8
19.0
38.1
23.8
4.8
3-2 性別
表 4 服用者の性別
(n=63)
女性
男性
無回答
人数
37
26
0
%
58.7
41.3
0
★薬の服用者と回答者が異なる場合
本人以外の回答者の平均年齢は 63.9 歳(47 歳~86 歳)となり服用者の
平均年齢(表3)より若い。回答者の性別は女性が 76.2%となり、服用者の
女性の割合(58.7%)より高い。(表4)
3-3 介護度
表 5 服用者本人及び本人以外の介護度
介護なし
要支援1
要支援2
要介護1
要介護2
要介護3
要介護4
要介護5
無回答
度数
41
5
1
5
6
0
3
1
1
%
65.1
7.9
1.6
7.9
9.5
0.0
4.8
1.6
1.6
本人
35
3
1
0
0
0
0
0
0
%
85.4
7.3
2.4
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
本人以外
5
2
0
4
6
0
0
3
1
%
23.8
9.5
0.0
19.0
28.6
0.0
0.0
14.3
4.8
本人以外の薬の服用者の平均年齢は 80.9 と高く、介護度も高い結果である。
問4
現在ある薬以外にも医師から処方され定期的に服用している薬はあるか?
問 4 の質問に対し、
「いいえ」と回答したのは 95.2%(60/63 人)であり、
「は
い」と答えたのは 3 名であった。ビビアント(閉経後骨粗鬆症治療薬)やヒア
レイン点眼液、レスキュラ点眼液などが挙げられていた。
問5
医師から処方された薬以外に、服用しているものはありますか?
表6 処方薬以外に使用している OTC 薬及び健康食品等
(n=63)
人数
%
一般用医薬品
7
11.1
健康食品・サプリメ
ント
12
19.0
その他
2
3.2
具体的内容
鼻炎薬A「クニヒロ」、点眼薬、ビオフェルミン、湿布薬、正露丸、ホ
ノミのサイロヤング、ビタミンB、新ルルA錠、ノスポールカプセル、
液体ムヒS、牛車腎気丸(漢方)、バイオリンク(クロレラ)、コンクレ
バン(アミノ酸)、パブロンSゴールド、鉄剤
コンドロイチン、ビタミン剤、DHCの健康食品、極らくらく(グルコサ
ミン、+コンドロイチン+CBP)、ルテイン、ブルーベリーアイ、黒
酢、にんにく卵黄、ビタミンC、ラクトフェリン、ブルーベリハティン、
DHA、ローヤルゼリー、ルテイン、カルシウム+ビタミンD、グルコ
サミンコンドロイチン、膀胱炎予防の市販漢方薬、チョコラBBプラ
ス、ビューティアクトBB+
健康食品・サプリメントの併用が 2 割弱みられた。具体的な内容をみると、一般
用医薬品と健康食品等の違いを理解していない人も見受けられた。
問6
現在の医療行動(病院に行ったり、薬局に行ったり)の中で、どうして解決で
きていないのか?
何故今まで相談に至らなかったのですか? (複数回答可)
6-1 医師への相談
医師に相談したことがあるのは 33.3%(21/63 名)であった。
「いいえ」を選んだの
は 38.1%(24/63 名)であり、相談しない理由を聞いた。
医師に相談できない理由
・飲み忘れを医師に言えない
・文句をつけるようで言えない(2 件)
・残っていても先生にはいえない順送りで服薬はしている。
・人が待っているしきけない
・どの医療機関でも医師は一方的。偉そうにしているので一度、強く言ったら家
族に注意された。患者は常に弱い立場だ。
・面倒くさい。
・医師にはほしい薬のみ相談する
・困っていることなし(4 件)、特に心配はない(2 件)、
・必要ないから(3 件)
・相談しても本人(母)が自分は大丈夫。今迄通りでよいと頑と譲らない
・ついその場で忘れてしまう。
・たまの飲み忘れはたいしたことないし、飲もうと思えばいつでも手元に薬はあ
るしDrに言えば何でも処方してくれるから。
・医師は薬を決めるだけでそれ以降は薬剤師に相談するべきだと思うから
6-2 薬剤師への相談
薬剤師に相談したことがあるのは、38.1%(24/63 名)である。
27.0%(17/63 名)が「いいえ」を選んだ。相談しない理由を聞いた。
薬剤師に相談できない理由
・残っていても先生にはいえない順送りで服薬はしている。
・人が待っているしきけない
・今まで相談できる様な薬剤師がいなかった
・面倒くさい。
・一包化してから服用忘れない
・のみ合わせはその都度相談しているし、のみ忘れはたまにしかないので別段困
っていない。
・困っていることなし(5 件)、特に心配ではない (2 件)、必要ないから(2 件)
・別居しているので時々認知症状が出て、お金を全部とられた等電話がある。
その時は薬局に電話して家迄様子を見に行ってもらったりしている。地域包括
支援センター等に相談しているが本人が拒否しつづけている。困っている。
・(飲み忘れについてはNo)→飲まなければ、という気持ちがなかったため。
・他の話をしていてぬけてしまうことがある
・薬の効能〜SEまで気になることは常に聞いているダクルインザ・スンベプラ
治療の際ものみ忘れ予防の工夫等含め助かっている
問7
どうしてこの調査に参加しようと思いましたか?
自由記述の回答は、薬剤師から勧められた、頼まれたといった薬剤師の声掛けから参
加してみたいと思った回答が 60.3%(38/63 件)で最も多かった。その中には、
「薬剤師
の役割を良く知らなかった。単純な思いこみで、薬剤師の仕事は薬の調合と決めつけて
いた。」
「別居していて最近認知が入ってきて、のみ忘れ、まちがいが目立つようになっ
てきたから」といった理由が述べられていた。また、普段から薬の数が多いこと、薬の
変更が多いこと、多数の医療機関にかかっていることなどから薬の整理を希望している
回答もあった。その他にも「医療費削減の為自分の薬の効能やのみ合わせを詳しく知り
たかった」「薬の内容に関しては以前より相談していたので、この機会に飲み忘れにつ
いても改善しようと思った。
」
「薬について気軽に相談してよいとわかった。」
「薬剤師を
身近に感じて、なんでも相談しようと思っているので」といった回答があった。
問8
どのような機会があれば、今後も薬剤師に相談してみようと思うか?
(複数回答可)
表 7 薬剤師に相談する要因
n=63(複数回答)
相談窓口の常設
期間を決めての薬局での取り組み
今回のように薬剤師からの声かけ
その他
人数
12
2
31
24
%
19.0
3.2
49.2
38.1
今後も薬剤師に相談してみようと思う要因は、今回のような薬剤師からの声掛けであ
った(表7)。その他の回答として、「特に機会がなくても、常時、薬剤師に相談してい
る(12 件)」が最も多く、その他にも「役に立つと思ったから」、「複数の診療所に受診
し、多くの薬を服用しているため、飲み合わせや副作用が心配なため」「医療費が年々
増えるのも問題だと思う」「高齢化により服用薬が増加した場合、相談相手が必要と思
っているから」「症状で困っていることは受診時にDrに相談しているし、それでも気
になることは薬局で相談している」「処方時、窓口での説明は大切だが、症状がハッキ
リ改善したのか、高齢者には分らないことがある。又、飲み続けることでの副作用的な
ことや習慣性になることを危惧するのでその対処方を。」などが挙げられている。
問9
何か他に薬について困っていることはありますか? (複数回答可)
表8 薬について困っている問題点
薬の捨て方が分からないが 2 割ほどいた。その他には以下のような内容があった。
・長期服用による弊害、慢性化の危惧、医療費の高騰などが気掛り
・薬の量が多くて飲む時につまりそうな時がある
・今迄処方してもらっていた薬の効果があまり感じられなかったので他に良い薬
を処方してもらいたかったが、どういうのがあるか知らないし、医師に言ってよ
いのか分からず、もんもんとしていた。→お薬手帳に◯◯の薬効が感じられない
と薬局で訴えありと記載しDrに連絡
・サプリメントとの飲み合わせ
・本人が薬に対するこだわりが強いため減量していくのも大変
・医療機関の休みの時に風邪を引いたらどうしたら良いか市販の薬を服用して
良いか。サプリメントはどうか。
・軟膏の使い分けがわからなくなる
・飲み残しの効能を忘れてしまう
(4)
薬剤師の介入調査の前に行う残薬調査
「残薬調査用紙①」
本調査は、調査(2)の事前調査(ア)
(イ)の調査終了後に薬剤師が残薬等の介
入調査を実施した。参加薬局数は 16 件、調査を実施した薬剤師 21 名であった。
1)残薬調査結果
対象者 63 名のうち、13 名の継続した対応がなく、継続的に残薬調査ができたのが
50 名であった。そのうち、7 名には残薬は無く、43 名に残薬が見受けられた。(表9)
表 9 残薬の有無
残薬あり
残薬なし
合計
2)
件数
43
7
50
%
86.0
14.0
100.0
残薬の種類と金額
表 10 残薬の薬剤数と金額
残薬の薬剤
数(種類)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
17
23
合計
人数
4
2
3
4
2
3
2
3
2
3
5
3
2
1
3
1
43
金額
1,801
8,610
5,059
13,666
2,642
29,210
7,324
7,564
19,967
28,606
68,267
64,568
37,544
18,009
49,466
45,711
408,015
一人当たりの
金額
450
4,305
1,686
3,417
1,321
9,737
3,662
2,521
9,984
9,535
13,653
21,523
18,772
18,009
16,489
45,711
9,489
総数
平均値
最大値
最小値
408,015
9,489
45,711
19
初回の調査(薬剤師の介入前)からは、残薬の薬剤種類数は 1~23 種あり、金額
の合計は、408,015 円となり一人当たりの平均では 9,489 円(最大値 45,711 円、
最小値 19 円)であった。残薬がない 7 名の使用している薬剤は4種類以下であ
った。
(5) 薬剤師の介入後の残薬調査用紙②
1)初回調査時及び最終調査時の残薬金額の変化
最終訪問時の残薬確認表②において、残薬調査用紙①と調査票 No で連結できる
症例は 40 例となり、その中でも①にデータの記載がないものが 2 例、②に記載が
ないもの 4 例、後半に入院してしまったもの 1 名がおり、残薬確認表①と②で連結
できる症例は 32 例となった。
32 例で前後の比較をすると初回の残薬の合計は 255,860 円となり、一人平均
7996 円となった。最終調査日の残薬の合計は 225,355 円であり、30,504 円が削減
された。32 例中残薬数を減らすことができたのは、59.4%(19/32 例)あったが、
その内 3 例は薬剤数を減らすことはできても、薬価の高い薬の残薬が 1 つ加わるこ
とで、金額的には増加になっている。
2)
薬剤師が介入を行って得られた結果
実際に薬剤師が初回介入を行って最終的にどのような結果に繋がったかを見る
ために、残薬等調査用紙②の薬剤師に対するアンケートを以下にまとめた。薬剤師
が行った初回介入の内容と今回の調査対象者と紐づけできる部分は一致させ、最終
的に残薬数や薬剤費の増減に繋がっているかを表 11 にまとめた。
「薬を届けてじっくりお話をすることで、患者自身に”飲まなきゃいけない”と
いう自覚がうまれて飲み忘れが減った。」や「処方変更になってのまなくなった薬
は薬局で処方してもらえるということを分かってもらえた。のみ忘れてたまった薬
は、次回少なく処方してもらう必要がある。と分かって頂けた」など、初回介入と
して、薬剤師の業務を知ってもらうことや、実際に訪問することで、これまで会え
なかった患者に話ができたことで、治療に取り組む意識が変化していることもうか
がえる結果である。
また、薬剤師の介入した①飲み忘れについて、②飲み合わせについて、③飲み忘
れ、飲み合わせ以外の問題・相談に対応した場合の内容についてまとめた。
表 11 薬剤師の初回介入で得られた結果
(1)初回介入を行って、どのような結果が得られましたか
薬剤数
薬剤費
残薬がなくなった。
減薬
減少
主ね、処方どおりの服用をしている。
変化なし 変化なし
残薬減少、薬を忘れずに飲む意識が高まった。
減薬
減少
もともとのみ忘れの少ない方でしたが、残薬に対する意識は、高まったように思われた。
増加
増加
服用、しっかり行えている
減薬
増加
服用、継続してしっかりされていました。来局にて、お薬の相談も来ていただきました
増加
増加
服用状況良好でした。
減薬
減少
薬剤師の提案等で処方薬が変更になることもある、ということを知ってもらった。
減薬
増加
高令者2人での生活なので薬に関しては薬局に必ずTelあるが来局は困難で毎回訪問
増加
増加
している。こまめに訪問できる薬局がもっと増加してほしい。薬局内での人員調整もなか
なか困難。
糖尿病に関しては治療(内服)は積極的だが、禁煙(20本/日)に関しては全く興味な
減薬
減少
し、糖尿病の状態を改善する因子と説明しても全く聞く耳もたず
患者が今迄なんとなく薬をのんでいたのが「治療」の為という意識をもち出したこと。予約
増加
はしないで手持ち残薬1週間程になったらを目安に受診してなるべく家に薬を残らせな
増加
い。
病院(医師)受診以外に薬局(薬剤師)で話することで、自身の症状を客観的にみれるよ
減薬
増加
うになってという言葉を頂いた。
一包化やお薬カレンダーできることはすでに取入れている。娘と別居(独居)の為、娘家
増加
増加
族心配で様々な相談あり。
薬はたくさんもらった方が「得」という認識を改めて頂いた。
薬の管理はしっかりできている。途中内服薬が代わった時は、古い物は処方されたこと
確認しました。インスリンは予備を持っているが、単位数、必要本数、予備(残数)の確認
は投薬時に必要。
娘さんが来局し、「母親は薬がないと心配する」と言っていた。マグラックス(330)、6T
分で飲まないとダメと言っていると言い切っていましたが、残薬を調べることとなり、実際
かなり残っているのを見て、驚いた様子。残薬整理することにも協力的となり、また、意
識が変わったように思いました。
患者本人は来局されることはなく、妻が代理来局されていた。薬の管理は本人がしてい
るため、薬剤師が把握しきれていなかった。訪問することにより本人とお会いできた。き
ちんと服用されているが、入院前後の薬が残っていた。お会いして話をすることで信頼
関係ができ、残薬整理に至った。
薬を届けてじっくりお話をすることで、患者自身に”飲まなきゃいけない”という自覚がうま
れて飲み忘れが減った。
きちんと服用していました。
日付入りで一包化しているできちんと服用している
一包化しているのでのみ残しはない。
一包化しており、きちんと服用している
薬局薬剤師が、あらゆる面で相談に乗れることを伝えられた。
本人の薬は殆ど問題ないが、舅の薬(処方変更となる前の一包化薬等) 家庭内の全体
がわかり、相談をもちかけてくれた
生活パターンから分3の夕食後の服用は難しいと考えた。
服用時点をのみ忘れしにくいところに変更して、のみ忘れが減った。
一包化してコンプライアンス向上し残薬なくなった。
ほぼ正しく服用していることを確認した
胃薬でも治療として処方されているのではなく症状ある時にしか服用しないのでコンスタ
ントに減らない。
お薬手帳を他院・他薬局へ行く時見せるようにしてくれた。
手持残薬調整する為、受診時残薬をメモ書きしてDrに見せてくれるようになった
薬剤師は単に薬を渡すだけではないと思ってもらえた。持っていても薬が古くなるだけな
のでなるべくためないようDrに日数調整してもらうよう言うことはできると分かってもらっ
たが大学病院は難しいらしい
処方変更になってのまなくなった薬は薬局で処方してもらえるということを分かってもら
えた。のみ忘れてたまった薬は、次回少なく処方してもらう必要がある。と分かって頂け
た
患者は頭では分かっていてもできる多くの薬(種類・日数)を希望する 残薬があっても
正しく報告して頂けない。
ジェネリックすすめて一度試して頂いたが、若干大きいとのことで先発に戻った。吸入薬
は症状改善よりSEの方が強く出るとのことでDrに相談を促し、休薬となった。
コンプライアンスはほぼ守られている
高令の為、かかりつけ専門病院が少し遠いので、どうしても行けない場合は近隣病院に
て処方してもらうということを患者自身が知っていて実践していることが分かった→月が
異なるので重複投与ではない
増加
増加
減薬
減少
増加
増加
減薬
減少
減薬
減少
増加
増加
増加
増加
減薬
減少
減薬
減少
増加
減薬
増加
減少
減薬
減少
減薬
減少
減薬
減少
減薬
減少
減薬
減少
減薬
減少
3)どのような対応を(最終訪問・来局時)をしたか。
①飲み忘れについて
2~3度の飲み忘あるも、継続して服用を勧めた。
日数調整
睡眠薬など自分で調節して飲んでいる薬の残薬調整。
次回持参してもらって調整する
残薬のDrへの報告メモ書き
外出時の対策
とりたて多くなかった。病院へ行けない日もあるので少し多めに手元に無いと心配とのこ
と。
②飲み合わせについて
高血圧症もあり、NSAIDSの血圧への影響について(多少だが)
、知識として話す機会と
なった。
③飲み忘れ、飲み合わせ以外の問題・相談に対応した場合、内容
医療費をムダにしない
症状が改善されたか否かの判断が不明で、痛みが納まったとか、熱が下がったなど、本人自覚
でハッキリする以外では、服用続けるよう対応した。
健康面について食事、運動等日常生活の指導について様々な相談に応じた。
今回は、とくにありませんでした。
ランソプラゾール OD錠の溶けが悪い。
(患者様マグラッフクスと間違われてました)
妻がフラつきが多いが、服用している薬のせいか、確認してほしい→リリカが原因かもしれ
ないという結果になった。
認知症状が日によって大きくちがうが最近妄想がひどくなり家族も対応にとても苦労してい
る。薬局時の都度、家族の疲労強くみられるようになった。
日中ウトウトすることが増え、元気がなくなってきたと相談がありました。Drからもデパ
スを減らす話がでて、以前に一度デパス(0.5)2T分を1T分にしてみましたが、本人が
イライラするから飲みたいと言うので娘さんもあきらめていました。デパスに0.25の錠
剤があるので朝0.25、夕0.5にすることを提案。減量して、元気になってきたと喜んで
くださいました。その後マグラックスについて高マグネシウム血症の話などができました。
(かなり残薬があり、かえって安心しました)
副作用に関する不安に対応し不安解消→アドヒアランスの改善につながった。
対症療法薬の判断、痛みの原因と基礎治療について話す機会となった。
老健入所の舅の薬の残薬、薬局で廃棄等相談に応ずること、サプリメントと飲合わせ
HbA1c が少しずつ上がり、今回新しく薬が1つ増えた。食事気をつけているのにナゼ改善し
ないのか→本人食事気をつけていると言っているが食事内容を見直す必要もある。次回以降、
継続的に栄養指導していく。
長年服用している薬なので自己調整してQOLを保っている
娘のニキビが治らない→一度専門(皮フ科)で診てもらった方がよい。内科で一般薬を長期継
続で服用して、結果出ない場合は漫然と服用しないことお伝えする
Ⅳ.調査結果から得られる示唆と今後の課題
本調査では、薬剤師が在宅訪問し、あるいは患者自身または家族等が服用薬を持参し、
薬剤師が服用薬の残薬の調整、整理や相互作用等の確認を行った。当該作業は、2016 年
4 月改定の調剤報酬において新設された「かかりつけ薬剤師指導料」の項目の一つ、継
続的な薬学的管理のための患者らによる服用薬の持参や必要に応じた薬剤師の患家へ
の訪問による服用薬の整理等を行うこと(保医発第 0304 第 3 号別添 3 区分 13 の 2 かか
りつけ薬剤師指導料の(6)の(キ))に該当する。
本調査の結果から、「かかりつけ薬剤師指導料」を実施していく上での有用な知見が
得られると考える。
保医発第 0304 第 3 号別添 3 区分 13 の 2 かかりつけ薬剤師指導料の(6)の(キ)
キ
継続的な薬学的管理のため、患者に対して、服用中の薬剤等を保険薬局に持参する
動機付けのために薬剤等を入れる袋等を必要に応じて提供し、その取組(いわゆるブラ
ウンバッグ運動)の意義等を説明すること。また、患者が薬剤等を持参した場合は服用
薬の整理等の薬学的管理を行うこととするが、必要に応じて患家を訪問して服用薬の整
理等を行うこと。なお、訪問に要した交通費(実費)は、患家の負担とする。
1.調査結果から得られる示唆
(1)対象者について
薬を服用している本人の年齢は 50 歳以上であり、平均年齢は 75.0 歳であった。ま
た、本調査への参加者としては、本人以外である場合が 33.3%(21/63 件)みられた。本
人以外が参加者である場合、薬を服用している者の年齢は平均 80.9 歳であり、要支援
2 が 28.6%(6/21 件)、要支援 1 が 19.0%(4/21 件)であった。
このことから、薬を服用している本人だけではなく、家族の服用薬について疑問や不
安を抱えており、薬剤師が働きかけることが有効であることが多々あると考えられる。
(2)参加者の薬剤師等に対する考えや背景
薬剤師に対する相談意思に関わる問に対し、
「そう思う」
「非常にそう思う」と回答し
たのは 7 割以上であり、本調査の参加者は総じて薬剤師に対する相談意思が高い(ア問
1-1~問 1-7)。その一方で、「飲み残した薬は、薬剤師にすべて見てもらった方が良い
(ア問 1-8)」に対して「そう思う」
「非常にそう思う」と回答したのは 49.2%、
「薬剤師
は、医師に薬の変更を提案することがある(ア問 1-10)」では 41.2%と、5 割以下であっ
た。また、
「飲み残した薬があることを、医師に知られたくない(ア問 1-11)」
」に対して
「そう思う」
「非常にそう思う」と回答したのは 14.2%と割合は少なかった。また、
「処
方せんを持って行くとき、お薬手帳を持参し薬剤師にみせますか?(ア問 2-2)」に対し
「あまりない」
「全くない」と回答したのは 25.4%(16/63 件)、
「病院を受診するとき、
お薬手帳を持参し医師に見せますか?ア問 2-2」では 50.8%(31/63 件)と割合に差が見
られた。
これらのことから、薬剤師に対する相談に積極的な意思を有する者であっても、薬剤
師が服用薬について確認したいと考えている事や薬剤師が考える薬を服用している者
がとって欲しいと行動と、患者らの考えに差があると考えられた。患者からの自発的な
訴えかけを待っていても、問題解決に繋がりにくいと言える。
(3)取組への参加について
「どうしてこの調査に参加しようと思いましたか(イ問 7)」に対し、薬剤師に勧めら
れて、薬局からの声掛けが最も多く、「薬剤師の役割を良く知らなかった。単純な思い
こみで、薬剤師の仕事は薬の調合と決めつけていた。」、「別居していて最近認知が入っ
てきて、のみ忘れ、まちがいが目立つようになってきたから」といった理由が述べられ
た。また、
「どのような機会があれば、今後も参加しようと思うか(イ問 8))」に対し 「今
回のように薬剤師からの声かけ」が 49.2%(31/63 件)と最も多い回答であったこと。
薬剤師がどのようなことを行うことができるかを伝え、薬剤師からの積極的な声掛け
が、薬に関わる問題解決に繋がえると言える。
(4)患者が抱える服用薬に関する問題
飲み忘れ、飲み合わせ以外に服用薬で困っていることとしては、「薬の捨て方が分か
らない」が 15.9%(10/63 件)、
「飲み忘れた時の対処法」11.1%(7/63 件)、
「服用薬が多い
こと」9.5%(6/63 件)との回答であった。その他に聞き取った内容として、
「軟膏薬の使
い分け」
「感冒に罹患時の OTC 薬の服用の適否」
「サプリメントとの飲み合わせ」や、
「本
人が薬に対するこだわりが強いため減量していくのが大変である」といった家族が抱え
る問題についてもみられた。
(5)残薬調査
今回行えた初回残薬調査は、50 名の薬を服用している患者の薬についてである。手
元にある薬の種類が 4 種類以下の患者の中には、正しく服用しているものが 7 名おり、
残薬は無かった。残りの 43 名については何らかの残薬があり、現在使用していない薬
も併せて全体で 40.8 万円であった。一人当たりにすれば、約 9500 円の無駄となる。
また、初回残薬調査と最終残薬調査の差から薬剤師の介入による効果を見るため、前
後の紐づけができる患者 32 名のデータで検討した。介入前後で 30,504 円の削減ができ
ていた。今回の一連の取組の中で、薬剤師が積極的に薬学的管理をすることで残薬や医
療費の削減につながることが示唆された。
2.今後の課題
薬剤師が服用薬に対して行う確認や管理の内容について、患者は十分に理解していな
い者も多く存在する。薬を服用している本人だけではなく、服薬を支援している家族も
服用薬に対し、何らかの問題を抱え困っている現状がある。また、飲み忘れたときの対
処や外用薬の使用方法、感冒罹患時の OTC 薬の服用など問題が発生した時にリアルタイ
ムに解決すべき疑問を抱えていた。
「かかりつけ薬剤師指導料」では 24 時間相談に応じ
る体制が含まれており、解決に繋がる有用な手段と考えられる。
継続的に薬を服用している 50 歳以上の者に対し、また、本人の来局が難しく代理で
来局される家族に対し、服用薬に関して患者が抱える問題を例示として具体的に示し、
その解決に薬剤師がどのように関われるのかを示していくことが重要である。また、今
回の調査では患者負担は生じず無料であったが、調剤報酬の枠組みの中で対応していく
際には、患者負担が生じる。本調査結果より、「かかりつけ薬剤師指導料」等の枠組み
の活用は、服用薬に関する問題を解決するのに有用な手段であると考えられ、そのメリ
ットを十分に説明し、積極的な導入が望まれる。また、「かかりつけ薬剤師指導料」は
薬剤師と患者自身の関わりを枠組みとした算定であるが、来局できず代理の者が薬局に
くる場合もあり、介護に関わる者が患者の服用薬について悩み、不安を抱えていること
から、算定の要件に家族等も加えることも検討していくべきである。
資料編
調査報告1
調査票
「家族の介護をする可能性がある者等の在宅医療における
薬剤師業務に対する認識調査
調査報告2 実施手順書
調査票
等
図 1(続き)
図 1(続き)
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