Comments
Description
Transcript
ネバグ~テスト ・サイ トのぞきみ
一27一 ネバダ・アスト圏 サイトのぞきみ 楠瀬勤一郎(環境地質部) 捨楲 び はじめに オレゴン州アイダホ州 アメリカでは西暦2000年までに原子力発電所から生 じる使用ずみ核燃料が5万t軍や研究施設に一時貯蔵 されている高レベル廃棄物が30万立方メートルに達する といわれている・これらの放射性廃棄物はいうまで もなく生物にとって大変危険であるためその処分は欠 きた問題である.現在のところ一番有望な処分方法 として地下深部にあけた空間に埋めることが考えられ ている・玉983年ユ月7目に発効Lた放射性廃棄物処分 政策法(P.L.97-425)は1987年5月末までに大統領が 最初の処分地を決定することにたっていたが決定がや や遅れ結局1987年末にネバダ・テスト・サイトの南西 縁にあるユカ・マウンテン(西半分は空軍と国土省(Bureau ofLandManagement)の管理地)が選ばれた(第1図). 地下に埋められた放射性廃棄物から放射性元素が地表 の生物圏に移動する主たプ回セスは地下水に溶け出L 地表に運ばれることと考えられている・ネバダ・テス ト・サイトは年間雨量が少なく地下水位も低いことか ら処分場を地下水面よりも高く設置することで廃棄 物が水に接する機会を少なくし放射性元素が地下水に 溶け出しにくくすることができる.またユカ・マウ ンテンは数百万年前に堆積した凝灰岩に厚くおおわれ ておりこのたかに含まれるゼオライトだとカミ放射性 元素を吸着し放射性物質が地表の生物圏に到達するの を遅らせることができると期待されている.さらに 周囲に人口密度の高い都会がなく一番近い大都会であ るラスベガスまで約150㎞離れていることDOEや 空軍など連邦政府の管理地であることも候補地とし て考えられた大きな理由の一つである. DOEのネバダ管理事務局が放射性廃棄物処分候補 地の選定のためにマネージメントしていたネバダ放射 性廃棄物処分研究(NNWSI)はユカ・マウンテンを候 補地とした科学・技術的な総合調査であった.この プロジェクトにはロス・アラモスサ:■ディアローレ 1■ス・リバモアアメリカ地質調査所(USGS)の四つの 国立研究所とウエスティソグ・ハウス・エレクトリッ クサイエンス・アプリケーション・インターナツコナ ルの二社が参加していた.このプロジェクトでロス 1988年10月号 カ リ フ オ ノレ ア 州 リノ G=2・・ 燃?郷先 頭鰯#守I 高w 。、素町S 益 ・…:訪・ ネノミタソH トノノ寸トノノ中テスト・レンジ エリス空軍基地 “TS ビーティ ■ll_ フスロツプ圏 ウェルスラス・ ユ タ 州 ベガスアリゾナ州 第1図ユカ・マウンテン地域破線で囲まれた範囲が放射性 廃棄物処分候補地.黒丸は地質調査のための代表的 なボーリング位置.NTSはネバダ・テスト・サイト USAは空軍管理地BLMは国土省管理地 ・アラモス国立研究所はユカ・マウンテンの地球化学 ・岩石・鉱物学的た研究ユカ・マウンテンでのテスト .シャフト(第2図)の建設とそれを用いた実証実験 ユカ・マウンテン周囲の火山活動史の研究を行たってい た.テスト・ツヤフトの建設は1987年7月に始めら れる予定であった.このシャフトは計画では直径 3.6m深さ450mの立坑から三つの水平レベルに研究空間 があげられこの立坑により技術者や研究機材を地下実 験室に運ぶ予定であった・また付属施設としてベ ンチレーションと緊急脱出のための直径1.8mの立坑 一28一 楠瀬 勤一郎 ./ノ ℉ .!ノ1、 \八\\ べ ( 「' ■ '勿 1'''、、、_ ' .戸1二、奉妻“ 1、 二 .一」 … へ べ 第2図同ス・アラモス研究所の計画していたテスト・シャフト 一本が掘られる予定とたっていた.他の研究所の役割 はUSGSがユカ・マウンテン周囲の地質調査と地下 水挙動の調査サンディア研究所が処分施設の設計 ローレンス・リバモア研究所が廃棄物のパッケージ・ デザインウェスティングハウス社がパッケージのテ ストとその取り扱い技術の開発サイエンスアプリケー ション社が技術およびマネージメントの支援を受け持 った. 私はアメリカにおける放射性廃棄物の研究を見学さ せていただくためロス・アラモス研究所でのNNWSI プロジェクトのマネジメント・リーダーであったウエス ・マイヤース博士の招待で1986年4月から半年間ロ ス・アラモス国立研究所に滞在した・この間にマイ ヤース博士・バイヤーズ博士・クラソツ博士らのおかげ でDOEの許可をうけネバダ・テスト・サイト内で の処分実験場を見学することができた.実験場内で はここを長い間フィールドとしてこられたバイヤー ズ博士が案内をしてくださった. ネバダ。テスト・サイトの地質概要 ネバダ州の地質構造といえぽべ一スソ・アンド・レ ンジ.州のほとんど全域がグレート・べ一スソであ る.グレート・べ一ズ:■といえば三千万年前位から 始まった地殻の東西方向への拡大に伴って生じた正断 層による南北の走向をもった無数の山や谷の続く不毛 の地というイメージ.ネバダ・テスト・サイトも確 かにグレート・べ一スソたのだがネバダ州の南西境は 〈 → ノ 木 介 ㌧ 蓬嚢グレート・べ一ズンジ Eコウォーカー・ベル/ ワシントン州ア イ ダ ◇ ホ 州 コロンビア プラトー '4ワイオミング州 オレゴン州レ■ 、/グ)ブン 外スノ、㌻ 〰浩 ← 〰 コロラド プラトー' ニューメキシコ 州 第3図グレート・ベイズソとウォーカーベルト星印はネバ ダ・テスト・サイト ウォーカー・ベルトと呼ほれここだげは山谷の走向が 北西一南東を向いている(第3図).ラス・ベガスから のびるルート95号はウォーカー・ベルトのシェア・ゾ ーンのひとつラス・ベガス・バレーに沿っでつくられ ている. ネバダ・テスト・サイトはネバダ州の南端ラスベ ガスからルート95号に沿って南西約60マイルにあ り1950年に核爆弾の開発のためにつくられた面積約 3,500平方キロメートルの実験場でその三方向は空軍 の管理地と接している.テスト・サイトでは先カン ブリア紀から現世の堆積物まで見ることができる(第4 図,第1表).テスト・サイトの東側では古い地層が露 出しているが西側は新世代の火山活動による凝灰岩が 厚く堆積しており地震も観測されるなど比較的活動 がさかんである.放射性廃棄物の処分候補地とたっ七 いるユカ・マウンテンの周囲はネバダ南西部火山地帯 に属していて千万年頃に活動Lたいくつものカルデラ が埋もれている(第5図)。火山活動のピークは11001400万年前で活動周期はだいたい10万年ぐらいと見積 られている.放射性廃棄物はトポパ・スプリング・ タフという1300万年前に堆積した凝灰岩中に埋められる 予定である.この層の下位にくるクレーター・フラッ ト・タフの供給源とたったカルデラはユカ・マウンテ ンのすぐ西側クレーター・フラットの下に眠っており カルデラ・リムはユカ・マウンテンにかかっている・ トポパ・スプリング・タフを供給したクライム・主キ 地質ニュース410号 ネノミダ ・テスト ・サイ トのぞきみ ㈹ 第1表 ネバダ・テスト・サイト内の地層 佚佉 剏 EXPOSED工N lmod廿ied 慴楯 トエ ANDNEARYu㏄AFLAT, fr㎝0rki1d重1982) ^PProxi胴te 周楣 久 協 卉 D㎝lnantLれho1ogy1而〕 Perm{anl?〕and P8nn;ylvan寸an 舳Slss1pPlanand 癯 慮 D自vo日1an 癯 慮慮 卬 牲慮 摯癬 慮 Preca而brlan 呈 歎 汰慨 浥 潮 慴 潮 Oe州…GateLlmestone 癡 慴汯 Ool㎝1teofSpottedRang壇 祓 楮杳 潭 Eurekaquartzlt畠 ^nte1oPeV日11eyLlmest㎝e 洲[e州eFormat〒on 潯 楮 浥 潮 NOPahFomat1㎝ 敲 牧 效 慫 杆 潮 牡牡 慴楯 Zabri洲equartz㍑e 潯 慮 琬潮 St1川ngqu帥tzit8 湮 汢 潮 潴數灯 T^BL巨1 〰 ㈳ 10斗 ㈹ ㌰ ㌰ 11ヨ000+ ・u 業 arg川1te, 瑚 浥 摯 潮 ね筴 dolo皿ite 摯汯 浥 猱 潮 瑳瑯 業攵瑯 浥 潮攬 do1㎝ite 獨 浥 潮 do1㎝1t8 1ime5ton直 猱 瑳瑯 q胴rtZltε quartZれe, 獬 潮 瑚 瑚 1{mεstone. dolom寸te PRINCIPALCENOZOICVOLCAトlICANOSEDIMEトITARYUNITS (m◎difiedfromOrki1d.1982andCarr,Byers,andO榊1d,柿 FOHH^TIOH,Ho而ber 1nferred}olO日n1oCent筥r G帥帥1C㎝po;川On UpP色rcdrbOnate 〰 upP8rclast寸。 12320〕 潽敲 牢潮慴 14フ001 敲 慳 12900〕 preSs〕 ^PPm川mot艘 ^日直`m.y一 YOuHGERB^S^LτS THlRST∀C^NYOHTuFF RHYOLITEOFSH05HO円EHOu冊丁^一問 直^S^LTO戸S削LLHOuHτ^lH,E冊0 TlH8ERHOu^τ^IHτU「F Intraoヨ1dera日;h`f1o}tu『fヨ ^mon㌔Tヨnk;陥mb帥 Rain,e『H2;aHe冊b直r P^1HT日RUSHTu戸戸 Introo畳1dero〇三h一『1o}tu『f; TlvoCヨnyonH筥mb虐r YuCCaHOuntalnH2冊bE『 PahC舳yon旧師b2r ToPoPヨhSpr,ngHE而bEr H^HHOHIE^HOS^LYER戸ORH^T-ONS CR^TERFL^TTuF「一〇〇e廿a1}1thtuf『; of^r直a201 Pro}Poヨ;H目皿bεr 舳11fro臼Hemb帥 τ『OmH2而b昌r Sτ㏄K^OEH^SHTUFH㏄舳。l〕lthCrot帥 [atTuff〕 日ELTEOR^HGEτuFr Crou…虐ConyonHE而ber τubSpHngHemb帥 Tu「戸OFYUCC^FL^T REOROC民廿^LLEYτu戸F rR^CT-OHτuFF ROC民SOFPハV工丁∫∫P買]"G`undεr11ε5 CroterF1otTuff〕 HO目SESP同】^OFORH^下一〇H 併 画L^CkHOUNT^1NC^LOER^ SHOSHO刊E柵洲丁^m J^Cぱ^SS戸L^τ1?〕 下一HBERHOuHτ^lHC^LOER^ CL^IHC^円YONC^LOE冊^ HハHHON-E_S^L¶EHCENTEH CR^TERrL^下川.Cald2ro; 牢 瑯 當極 S-LE“TC^NYO閂 C^LOE陥 S1しEHTC^NYOHC^LOER^ u^CERτ^IH 幔 剞 剉佃 幌 剞 OISPE呵SEO DI∫PER5EO Ba…ヨ1〕ha蝸いte〕 Trach州。;odor∼o11t篶 舳H-5111Ca他州te quart1一b帥Hngbaso1■Cond的代e 洲。1他toqua他1州t書 肺y州t{tOquortz1otlt直 OaCltlCtuffヨand WOllt虐 肺州1te 1州aヨ P帥ヨ1ko11帖Rh州1te 萬hyollte Tuffヨ。虐。u5 ;畠dlment5 問。昔t1y量ed1而帥t皇 。.3`7 ∋ 13・13.… 13.5・1^ 怱 ユ4.? ㌰ 互 1988年10月号 一30一 楠瀬勤一郎 丁イ〃仁 才一ク 、竿'娘 キr 気 \ 第4図ネバダ州南西部の地形 ㌣③ \ ㌔ス/一ビングビュー/ぺぺ 古カルデラム← 紅 イ ド《 オアシス バレー・ガルデラ ベア・ マウンテン 血 ψ 急 \ 松 ③フんベオス の 」 サイレント・キャニオン カルデラ ドラム・ かレデラ→い △べ金ユ岬1テン 俗》 シ 知 △アローハズ ブルフロック カルデラ △ 第5図ユカ・マウンテン周辺のカルデラ白ぬきの三角形は 400万年前より新しい火口 オーク・スアリング ビュート 在 籍 左 テイピパ ポイント ね 201〈m ニオソ・カルデラはユカ・マ ウンテンの北に接している. 1000万年前に活動したティソバ ー・マウンテン・カルデラがこ の上に重たって活動したために クライム・キャニオン・カルデ ラの彩は南端の一部を除いて分 からたくたっている.新しい 火山活動はクレーター.フラ ットの内でみられ15個以上の シンダーコーソとそこから流れ 出した玄武岩質の溶岩流が観察 できる(写真1)。一番新しい 火口は30万年前に活動してお りクレーター・フラットの南 縁にありルート95号からよく 見える. 八月二十七目霧雨 期眠い目をこすりたがらロ ス・アラモス空港にいくとス ケジュール表には載っていたい ネバダ・テスト・サイト行の便 が出る.ダッシュ7というデ ハビランド・カナダ社製の4発 のターポプ回ツブ機でいつも ロス・アラモスとアルバカーキ 間でお世話にたっているのより もひとまわり大きい.運賃は タダ.しかし研究所の許可 を受けた人しか乗れない.き っとトラブルの原因にたるから というバイヤーズ博士の忠告で カメラは車のトランクに置いて きた.飛行機はリオ・グ会 ソデ河に沿って南下しヘメス 山を右手に見たがら機首を西に 向ける. 右手にシップロックと思わ れる大変特徴のある岩が真 っ平らな平原からそそりたって いるのが見えるのでそろそろ アリゾナに入るのかと思う頃 普通の機内食の倍はありそうな たっぷりの朝飯をスチュワー デスが持って来た.乗客はお 地質ニュース410号 ネバダ・テスト・サイトのぞきみ 一31一 写真1クレーター・フラットの北西縁よりクレーター・フ ラットを望むツソダー・コーソの奥平らな山がユ カーマウンテン(Byers博士撮影) けあって皆が声を掛ける.コア・ラボには核爆発 用の孔だけでなく放射性廃棄物処分の研究だと種夫の 目的のためにネバダ・テスト・サイト内で掘られたの べ800㎞にもおよぶボーリング・コア・サンプ/レが約 5万個のコア箱に入れられ整理されでいつでも見られ るようにたっている。広い格納庫のようだ建物の内部 はよく空調が効いていて外の暑さがうそのようであ る。ここでテスト・サイトの地質の説明をうげさ らに今回見たかったトポバ・スプリング・タフのボー リング・サンプルを見た。ここに集められたコア・サ ンプルの一部はロス・アラモスやサンディアの国立研 究所に送られ放射性廃棄物処分のための研究や地下 核爆発の際に地上に放射能が漏れたいような岩盤である ことを確かめるための各種の室内実験に使われる. 互い顔なじみでアメリカの基準(もしあったとしても) に比べても大変和気あいあいの雰囲気である.私一 人がよそものだ.ただただ不毛に見えるナバホ・イン ディアンのリザベーションをおよそ一時間飛ぶと突然 コロラド河カミ右手より現われる.飛行機はコロラド河 の真上にそってラス・ベガスを通りテスト・サイトに 直行する・普通の定期便に比べると大変低く飛んで いるので約一時間たつぷりとグランド・キャニオン観 光カミ出来た。真新しそうな黒々とした溶岩がキャニ オンの上の平原をだらだらと流れついには崖を河底に 向かって滝のように落ちているのが見られる.Lかし 植生が乏しいL侵食が遅いのでどの位前の火山活 動であるのか分からたい.観光用の単発機が谷のなか をよろよろと飛んでいる.景観がげっLて見劣りがし たいのにグランド・キャニオンとして観光化されてい るのはほんの一部だ・へんたところでアメリカの大き さを感じてしまう・フーバーダムの貯水池ミドー湖を すぎるとネバダ州.べ一スソ・アンド・レンジの世界 と次る. ネバダ・テスト・サイトの表玄関はマーキュリーと いうキャンプで(第6図)平らだ荒れ地の一部を舗装し ただけの滑走路がありゲートがある・迎えに来たマ イクロ・バスに乗ります事務室風の建物につれられ ていき写真を撮られ身分照合をされたっぶり小一 時間待たされて始めてテスト・サイトに入る許可がおり た・バスのような身分証明書とフィノレム・バッジをも らいゲートをくぐる・ゲートを入ってすぐの一群の 建物のなかにUSGSが管理している地質データ・セ ンターとコア・ラボがある。バイヤーズ博士はまず 私をコア・ラボに案内した.ロス・アラモス国立研究 所に来る前に長い間デンバーのUSGS支所にいただ 1988年10月号 \ \ \ \ /\ 「 オーク・スプリング ビュート 十。。。△・ 彌 レイニア・メサ5 み }、.ア茅 、。 !竜 。% レ羊 ユカ湖 「. 、i フレンチマン 湖 第6図ネバダ・テスト・サイトのロード・マップ白抜きの 星印は主要なキャソブ黒の星印は筆者が立ち寄った場 所.ユマーキュリー・キャンプ2CCP3カーペ ット・バグ4セダン・クレーター5パイル・ドライ ブ・トンネル6エリア12キャソブ7Gトンネル8 処分候補地の一つ9BREN1OE-MAD11フラン・ リッジ.黒丸は放射性廃棄物(低レベルも含む)の貯 蔵・処分をおこなっていると思われる場所. 一32一 楠瀬 勤一郎 写真2カーペット・バグにより誘発された断層断層は道 路を切り矢印で示した方向にのびている.後ろの 山はオーク・スプリング・ブユート.左手の山のふ もとにクライマックス・鉱山とパイル・ドライブ・ト ンネルがある(Byers博士撮影). マーキュリーのキャンプを出て舗装道路を北上地下 核実験で有名たフレンチマン・フラットユカ・フラッ トヘと向かう.ユカ・フラットはそこにたくさん自 生するリュウゼツランの一種ユカから名前がとられ た.ユカの枯れた葉は火がつきやすいのでインディ アンはっけ木として使っている・別名マッチの木とも いう.開発の当初にはよほど何もたかったのかここ にはいろいろおかした名前が多く(たとえばアゾ毛ニア. タンク・フォーメーション)名付けの苦虫がしのばれる. ユカ・フラットヘの入り口にCP(コントロール・ポイ ント)と呼ばれる一群の建物がある・これらの建物で は核爆発実験の際に爆発点やその周囲に設置された 各種の機器を遠隔操作Lて爆発させまた爆発時爆 発点の近くの無人の観測用トレーラー・ハウスから電 波でおくられてくる温度・圧力・放射能量などの諸デ ーターを観測する.ユカ・フラットもフレンチマン・ フラットも第三紀後期から現在までの堆積物が1000 万年前のティソバー・マウンテンの噴火活動の時に積も った凝灰岩の上を数100mから1㎞もおおって平らだ 地形を作っているので空からみると白く見える・ア ルバカーキからサゾ・フランシスコヘの直行便だと雲 さえたげれぼ右側の窓から二つのフラットが簡単に識 別できユカ・フラットにあいたいくつもの核爆発のク レーターまで良く見える. 車はユカワラットを北上する・あちこちに地下核爆 発の跡がある.道路脇に「注意レントゲン」という 放射線量を示す標識がまるで速度制隈の交通標識のよ うに立てられている・堆積物が厚いため爆発後も徐 々に地表の陥没が広がっていくので道路は修しても修 昧 睦 婁 了 や レセダン ○外タ 鼻_一 ㌻\ ⑳ ⑮ ㊥ カ㌧㌻/リ、グ ■ 汰⑬ユ/一 策7図カーペット・バグ断層系 してもガタガタにたる、途中核爆発で断層運動が誘 導されたことで有名たカーペット・バグ地下核爆発跡 を通過、道路がよっころさという感じで断層崖を乗 り上げる(写真2).本当に平らたところたのでたにも 知らたくてもおかしいと気がつく.カーペット・バグ 実験は1970年12月に深さ650mの孔のたかで約200kt の爆発を行なった・このとき爆発点から半径1㎞ のところに環状の割れ目帯が生じ割れ目帯からべ一 スソ・アンド・レンジタイプの南北走向東落ちの正断層 が誘発された(第7図).断層の垂直変位は最大6舳 に達している. 車は有名たセダン・クレーターの脇に停った.こ こはテスト・サイトーの観光名所でクレーターの内 をのぞきこむためのテラスや説明のための看板まで立 っている(写真3).確かにもしここが誰でも入れる 土地にあればなかたかの賑わいが期待されそうたスペ クタクルた風景である.セダンは核爆発を運河の掘 削に用いようという計画のために行なわれた実験で深 さ200mの穴の中で100ktの爆発を行ない半径400m 深さ100mのクレーターをつくった・放出された地震 波エネルギーはマグニチュード48相当と言われてい る.クレーターの縁は爆風で盛り上がり小高くたって いる.セダン・クレーターからクライマックス鉱山へ 向かう道をさらに北上すると鉱山の手前にパイル・ド ライブ・トンネルが見えてくる.トレーラー・ハウス 地質ニュース410号 ネバダ・テスト・サイトのぞきみ 一33一 写真3セタ:■・クレーター(Byers博士撮影) 写真4Gトソネノレ入り口後ろの山はレイニア・メサ(Byers 博士撮影) が数台立坑のまわりに散らばっている.パイル・ド ライブ・トンネルは1960年代に核兵器の開発のため に深さ420mの花嵩岩中にほられたもので1979年か ら1983年の間小規模た処分用施設をつくり実際に 処分用の容器につめられた放射性廃棄物を入れて廃棄 物が放射する熱でトンネル周囲の岩盤や地下水がどの ようた影響を受けるのかを調べた・人影も見えたいト ンネルには入ることができたかった。残念たのでせ めて記念にとバイヤーズ博士に立坑の入り口をバック に写真を撮ってもらう. 昼食.エリア12キャンプはユカ・フラットの北端 Gトンネルのあるレイニア・メサのふもとにありマー キュリーのゲートから60㎞離れている・地下核実験 だとの為のボーリング関係の労働者が多いキャンプたの で飯の量が多く安い.1ドルが本当に使いでがあっ た.政府が食費に援助しているようだ.ここだげで 千人近く働いているのだろうか.女性の姿も多く見ら れた.ずっと核爆発の跡を見てきたので放射能は大 丈夫だろうかと心配になる(ネバダ・テスト・サイトの職員 は健康管理上年聞被曝量が500ミリレムをこえる可能性があ る特殊職とそれ以下の一般職にわかれている).駐車場に はたくさんのバスが停車している.皆ラスベガスた どから通っているようだ. レイニア・メサの南端にサンディア国立研究所が放 射性廃棄物の処分実験を行なっているGトンネルがある (写真4).昼食後トンネルの入り口にある事務室を 訪ねトンネルにはいる許可をうけた.入り口から人 車で坑内にはいる.広い水平ト:■ネルがえんえんと続 く.トンネルの中は明るく照明されており壁はむき 出しの岩盤.バイヤーズ博士はトポパ・スプリング ・タフの岩質変化を研究していたのでトンネルの壁の あちこちを指してその説明をしてくれる.岩盤はす 1988年10月号 つかり乾いている・人車をおりてトンネルの奥の掘削 現場に行く、高さ3m位の広いトンネルをゆっくり と掘り進めている・トンネルの先端近くの岩盤に掘 削のために加わる応力の変化を調べるために岩盤に いくつもの細いボーリングをうちそのたかにセンサー を設置している際中だった・ひきかえして斜坑をお りる・下のレベノレでは上のレベルとの間で岩盤の 透水試験を試みていた. Gトンネルを出てそのままパヒュート・メサに行く 道を登りティソバー・マウンテン・カルデラの北側リ ムよりカルデラ平原を見たあと南下し図7で8と記さ れている場所で車から再びおりた・ここは放射性 廃棄物の処分サイト侯補地の一つとして1977-79年の 間調査が行なわれた.上部石炭系(ペンシルパニァン) から二畳系にあたるティピパ石灰岩が西側縁に露出し ておりここにいくつものポーリングをあけてその下 の下部石炭系のシルト質のエリアナ層を調べた・近く に露出しているエリアナ層の石はレキ岩のように見え る・レキは細長くひきのぱされており細かた割れ 目が発達していて容易にこわれる。岩盤に欠きたカが 加わっていたようだ.結局核爆発のサイトに近すぎ一 るという理由から放射性廃棄物を埋めるための候補地 から除かれたがトンネル掘削上岩質にも問題カミあっ たようだ. マーキュリーのゲートを出る際にフィルム・バッチ を渡しルート95号を南下.人口密度の少たい土地柄 ということもあって交通ルールがお隣のカリフォルニ アなぞとはやや違っている・スピード違反の罰金も大 変安いうえトレーラーも三台まで引っ張ることが許 されている・そんたわげで車に乗っていると特に スピード気違いの地質屋の運転する車に乗ったりすると しぱしぼひやりとさせられることになる.前にでんと 一34一 楠瀬 勤一郎 居座っているトレーラーをひょいとぬこうとして(のろ くさく見えても時遼70マイル近くはでているので)それが三 台もトレーラーをひっぱっていると結構た距離対向 車線をとばさたげれぽたらたい・こちらはその問ま っすぐにつづく道の地平線に接するあたりに目をすえて 対向車がこないように祈っているというLまつになる. それに地質屋はどうしてああキョロキョロしだから 運転をするのだろうか・ハイウェイ沿いの露頭の説明 などこちらがもたもたしている間にポイントが車の後ろ になると顔を後ろに向けて片手で指差したがらさらに 説明してくれる.もうこちらは聞くどころではたい・ いいかげんにうんうんと相槌をうってお茶をにごすこと とたる・こんなわけでネバダ州の西境に沿うプレカ ソブリアの山群の説明を聞きだから我が敬愛するトム ・シャンクランド博士の故郷インディアンスプリングを 通過しラス・ベガスに入ることとたる. 八月二十八目曇り 早めの朝飯を食べてまだルート95号を北上しマー キュリー・ゲートからテスト・サイトに入る.朝ラ ス・ベガスにあるDOEのネバダ・テスト・サイト管理 事務局から昨日の被爆量を教えてくれた.全然心配 たいとのこと.それにしてもわざわざ教えてくれる という習慣がかえって気持ちが悪い・マーキュリー・ キャンプから西ユカ・マウンテンを中心に見て歩く. スカル・マウンテンの峠の手前で車ががたんとゆれる. 活断層を横切ったところだとバイヤーズ博士がのたま う.どうもまゆつぽだと思ってロス・アラモスに帰 ってから地質図をみたら本当だったらしい.峠をす ぎるとジャクソン・フラットに入る.ネバダ・リサ ーチ・アンド・ディベロップメント・エリアとして核 爆発以外の種々の原子力利用技術の開発が行なわれたと ころである. まず右手にDOEの持っている建造物では一番背の 高いBRENタワーが現われる.高さ約460m.現 在は気象観測や高いところからの落下テストたどに使 われているが広島・長崎型原爆の被曝実証実験のため に建設されたことは有名である・この実験ではタワ ー周囲に日本風家屋を造りタワーのエレベータに放射 源をつるして原爆が放射した放射線をどの程度日本 家屋が遮断できたか調べたものである. さらにジャクソン・フラットを西に行くと左手に E-MADと呼ばれる原子力ロケットエソジソ開発工場の 跡がみられる.宇宙空間での推進力として1960年代か ら70年代始めにかけて開発が進められて来たもので道 路の右手にはエソジソの出力試験などのための施設が残 っている・E-MADはその後一時核燃料の再処理工 場となりさらにウエスティソグ・アドバンスト・エ ネルギー・システム社が原子力発電所から出された使 用ずみ核燃料の取り扱い技術の開発研究のために使用し た.現在これらの使用ずみ核燃料はコンクリート 製の直径3m高さ7mのタンクに入ったままここに放 置されている・1979年1月E-MADで地下処分用 容器に密封された使用ずみ核燃料11個がパイノレ・ドラ イブト:■ネルに運び込まれた、1983年4月この実験は 終了し実験に使用した放射性廃棄物はトンネルから E-MADにもどされた.したがってこれらの使用ず み核燃料もまだここに眠っているはずである. E-MADを過ぎると道は未舗装とたる.右手にフラ ン・リッジを見ながらフォーティー・マイノレ・キャニオ ンを南下すると目の前がバステイット・ブユート USGSの地震観測点がある.地震観測の電源は太陽 電池である.フラン・リッジとバステイット・ブユー トの問を西に行くとユカ・マウンテンの処分候補地と たる(写真5).フラン・リッジの南側約三分の一とバ ステイット・ブユートはトポパ・スプリング・タフの 全露頭とたっていて一番下部を除きトポパ・スプリ ング・タフのほぼ全体をこの露頭で観察することがで きる.トポパ・スプリング・タフは処分候補地では 厚さ300m以上ありいくつかの正断層により上下方 向に変位しているが全体が地下水面よりも上にある (第8図).処分場の深さの決定や処分場からの放射 性元素の移動遠度を見積るためにトポパ・スプリング ・タフ層内での組成・溶結度・組織の変化を詳しく知る 必要がありユカ・マウンテン地域にいくつものポーリ 写真5バステイット・ブユートからフラン・リッジ7オー ティー・マイノレ・キャニオンを望む右手の山がカリコ・ ヒル中央のフラン・リッジの周りを道が廻りこんでき ている.フラン・リッジとカリコ・ヒルの間の平地が フォーティー・マイル・キャニオン(Byers博士撮影) 地質ニュース410号 ネバダ・テスト・サイトのぞきみ 一35一 01I〈m L」 匡董1地下水に満たされている所 第8図ユカ・マウンテン地域の地質断面図 慶籔/ポ/以プリングタフ DEPTH睾 (FT〕oど 三Eoz 妄彗…a 睾彗星塞 1225一 山1228 ㈳ 計42・8 岩1250 妻1….・ ㌰ 。搬 〰 鶏 〰 〰 〰 〰 ㈷ ㈰ ㌰ ㌱ ㌴ ㌷ 鵡9 偈 ROlOAL〕 偈奓幅 uL^R〕 筌佗 ZEOL■TIC 孵 0← ヨ黛簿 灘 ・剛』・“一 言4訪隻 赤口“ξ 儀撃 ㌔・'回^'沽 。∼oo-o ∼oo∼oo 000口^ ∼0000 〰 佻住 0♂O、 ろ、二0 外二。一 片'〇一〇 o〃∼ }∼ζ) 0〃O 〃O ∼∼o ψ二z cτ∼ 殻 z倣為 嚢 ㌻z£μ1 第g図トポパ・スプリング・タ フ柱状図(Byers1985よ り) 1988年10月号 :■グが打たれた.バ イヤーズ博士がこれ らの露頭やボーリング ・コア・データをもと に詳しい報告書をだ している(Byers,1985). トポパ・スプリ:■グ・ タフは最上都と最下 部をのぞくと全体が 中一高度に溶結してい る.岩石組織の上か らは全体を三つに分 けることができ二回 の大きな噴火活動があ ったと考えられている (第9図).層全体の 厚さのほぽ半分のとこ ろにある空隙のほと んどたい部分に放射 性廃棄物を埋める予定 である.この層の上 下には欠きた空隙を たくさん含む厚い層が ある(写真6)・ フラン・リッジに はUSGSが直径2.5 m深さ3m位の穴を あげている.この穴 には手すりが壁につけ られ手すりの支柱に よって壁が30度づつ12 等分するように区切ら れている(写真7)。 この区切りはこれを ガイドにしてシャフト周囲の岩盤の割れ目を観察するた めのものでこの穴で技術者をトレーニングし養成し た・穴におりてみると思ったよりは細かく割れ目が はしっており白っぽい壁面をじっと見ていると目がチ カチカしてくる。炎天下トレーニングされるほうも するほうも大変だったろう. ユカ・マウ1■テソの頂上は溶結したディバ・キャニ オン・メンバーの固い凝灰岩におおわれておりクレー ター・フラットの平原とその中に点在するいくつものシ ンダー・コーソを遠望することができる・東斜面が比 較的ゆるやかであったのに対し西側斜面は正断層の断 層面でソリタリオ・キャニオンに向かって急峻た屋と たっている.この谷の中央にも正断層がはしってい る.処分候補地そのものは将来のために手つかずに たっていて何ということもたい頂きであるがその周 りには地質を調べたり地下水を調べるためのボーリング が多数打たれている.いくつかの井戸で地下水のモニ ターをしているほかはほとんどのポーリングは地上に たにも施設が残されていたい.もし今ユカ・マウ ンテンにいったらロス・アラモス研究所のテスト・シ ャフトがそびえ地下実験室では研究者や技術者が種々 の計測を行なっているのかも知れたい。 最後に この旅行記は.ネバダ・テスト・サイトでの高レベル 放射性廃棄物処分の研究を見せていただいた報告です・ 写真はバイヤーズ博士に撮影をお願いしまた一部は 博士のストックから分けて頂いたものでDOEの持ち 出し許可を受けています・御世話になったウエス・マ イヤー博士バイヤーズ博士クラソツ博士に感謝いた します. 一36一一 楠瀬勤一郎 写真6帖)(瑚アッパー・リソフィシカル・ゾーン仏)およびローワー・リソフィシカル・ゾーン(B)の露頭アッパー・リソフィシカル・ゾ ーンの空隙は球形に近いのに対Lローワー・リソフィシカル・ゾーンの空隙はつぶれた形をしている(Byers博士撮影). 写真7 実験用シャフト・ピット(Byers博士撮影) おもな参考文献 敲 爬刮 由倮ひ歩 潦 搬慮 桲楳瑩慮 番 業 慮 湃 奡 售 測倮 楣 測 慰 牡 礬 楳捥 慮 畳 湶 瑩条瑩潮 物 ByersJr.F.M、;Petrochemica1VariationofTopopah SpringTu丘MatrixwithDepth(StratigraphicLe∀el), DrmHo1eUSWG-4,YuccaMountain,Nevada,LA一 〵 Carr,W.JリF.M.Byers,Jr.,andP.P.Orki1d;Stratigraphic 慮 漱 慮 潭 湯 捴潮楣剥 牖 售 瑩潮 捕 楣 卵 晃牡 牆 慴呵晦 礬 癡 瑳 癥祐 晥 楯 ㌲㌮ Dockery,H.A.,F.]〉l1.Byers,Jr.,andPaulP.Orki1d; 癡 卩 摔物 畩 〴㈸ Lip皿an,P.W.,andE.J.Mckay;Geo1ogicMapofthe 灯 印物湧南兵 牡湧 敎祥 礬 測丬 潮 癡 楢畴楯 潴 Ne∀adaNuc1earWasteStorageInvestigations,Los A1a血。sTechnica1Bu11etinLALP85-28.1985. 却敷 琬 愬 慮 楣 慵潦 楮 癡 慮 慰潦 楮 楳 楯 癡 祓 慵潦 潦 癡 捩 慮 偵 楣慴楯渴 礬 敲 癡 却敷 慰潦 琬 楯渭 癡 礬 癡 慵潦 敲 潦 楮 敇 楣 慮 癡 Wo1缶,W.P.;ATypica1LASLUndergromdNuc1gar Test,LASLMini-Review77-2.1977。 地質ニュース410号