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15年度報告書概要版 - 一財)エネルギー総合工学研究所

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15年度報告書概要版 - 一財)エネルギー総合工学研究所
セラミックス絶縁耐熱コイルを用いた内蔵CRD等に関する技術開発(平成15年度)
Development of Mortor-Driven Internal CRD with ceramics insulated heat proof coil
奈良林 直、佐藤 道雄、小林 徳康、徳増 正、亀田 常治、萩原 剛、川野昌平、
荒岡 勝政、菅原 良一、石里 新一、米田 えり子
東電 森 治嗣、大森 修一、後藤 正治 東大 寺井 隆幸、広石 大介、班目 春樹、森元 雄一郎
BWR内に制御棒駆動機構(CRD)を内蔵することによって経済性、安全性の向上が期待できる。これまで東京電
力㈱と㈱東芝の共同研究の中で概念構築と成立性検討を進めてきた内蔵電動CRD(1)~(3)について、その主要技術で
あるセラミックス絶縁コイル応用技術を中心に技術開発を行う。
キーワード:内蔵電動CRD、セラミックス絶縁、耐熱コイル、耐熱モータ、電磁カップリング、軸受、二相流FIV
東芝
1.目的
CRDを従来と同等のサイズの原子炉圧力容器内に内蔵することによって、RPV下部ドライ
ウェルの高さ約10mのスペース削減と原子炉格納容器の容積・CRD関連機器の物量削減により、経
済性の大幅向上を図ることを目的とする。この結果、炉心がRPV下部に移動し、LOCA時の炉心冠水
維持が容易になる、RPV下部冷却による過酷事故時のIVR(炉心溶融物RPV内封じ込め)も有利とな
る等の大きなメリットが期待される。
2.技術開発成果
H15年度まで、当初計画通りの技術開発が進捗し、以下の事業成果が得られた。
①内蔵CRD駆動機構:世界初のキャン内蔵型三相耐熱モータや吊り上げコイル
の磁場解析(図1)や磁気カップリングの試作を完了し、良好な結果を得た。
②世界初の非接触パワーコネクタである動力用マグネットカップリングの試作と
図1モータ磁場解析
耐熱モータ(三相誘導型)の作動試験に成功した(図6)。
③セラミック絶縁耐熱コイルの高温耐久性の大幅向上対策(一体焼結化)とCo照
射試験実施し、γ照射直後に絶縁が急速に劣化するものの、AC100V∼200V
の電圧範囲で十分な絶縁特性である1MΩ以上を確認した(図2)。
④軸受の高温水中試験(60年相当の回転移動距離)実施し、特に顕著な摩耗や
図2 一体焼結コイル
振動は発生しなかった(図3)。
⑤二相流FIVに関して可視化試験では、流路絞り部下流の圧力変動と上下方向
の振動(加速度)が二相流の流動様式(フローパターン)に対応するなど、
世界初の知見を得た(図4)。
3.まとめ
平成15年度は所定の技術開発を
実施すると共に開発成果の公表を
行った。本技術開発は平成16年度
で実用化の目処を付けて開発完了
とする計画で、以下の項目を実施し、
内蔵CRDの基幹技術の成立性を
確認する。
①内蔵CRD駆動機構と耐熱モータ
の高温作動試験(スクラム試験)
②電磁カップリングの電力伝達評
価とFEM温度解析
③セラミックス絶縁耐熱コイルの
加熱下での中性子照射(炉内環
境下の評価:照射欠陥の回復)
④軸受ロバスト性向上試験
⑤高温高圧下での二相流FIV評価
開発成果の公表
(1)Narabayashi,et.al, ICONE-11,
(2)Narabayashi, et.al,GENES4/ANP03、
(3)Morimoto, et. al.,APVC2003,
(4)日本原子力学会2004年春の年会で
6件発表予定
図3 高温水中軸受け寿命試験結果
図4 二相流FIVデータ
信号伝送用
動力管
モータ駆動用
制
御
棒
図5 内蔵CRDのCAD図と
試作した耐圧ケーシング
i
図6 開発した電磁カップリングと耐熱モータ
Development of Mortor-Driven Internal CRD with ceramics insulated heat proof coil
TOSHIBA: Tadashi NARABAYASHI, Michio SATO, Noriyasu KOBAYASHI, Tadashi TOKUMASU,
Tsuneji KAMEDA, Tsuyoshi HAGIWARA, Syohei KAWANO, Katsumasa ARAOKA,
Ryoichi SUGAWARA and Shinichi ISHIZATo and Eriko YONEDA
TEPCO: Michitsugu MORI, Syuuichi OHMORI, Shoji GOTO
University of Tokyo:Haruki MADARAME, Yuichiro MORIMOTO, Takayuki TERAI, Daisuke HIROISHI
1. OBJECTIVES
In order to develop a competitive and high performance Next Generation BWR with fossil power plant, an
internal CRD using a heatproof ceramics insulated coil is under development. In case of a 1700MWe next
generation BWR, the internal CRDs are installed in a RPV which size is equivalent to the 1356 MWe ABWR,
and there will be no space required for CRDs and CRD exchange under RPV.
These advantages realize a compact PCV and reduced volume of a reactor building. Moreover, the internal CRDs
eliminate penetration via a bottom flange of RPV, and lower installation level of RPV in a drywell. This brings
further advantages of elimination of RIA (Reactivity Induced Accidents) caused by CR withdrawing under
pressure boundary broken, and easy IVR (In Vessel Retention) by vessel bottom cooling during severe accidents.
2. TECNICAL DEVELOPMENT ITEMS
The internal CRD consists of
(1) a heat-resistant motor for normal adjustment of CR position,
(2) heat-resistant solenoid drive latch mechanism for gravity driven scrum operation
(3) an electromagnetic power coupling for signal and power transmission from outside of RPV.
These new devices need heat-resistant magnet coils
used in high- pressure and high temperature coolant in
RPV. Therefore, the technical development for the
internal CRD is performed focusing on the ceramics
insulated coil about 600 deg C or more.
信号伝送用
Signal
3 Phase
The technical development items are as follows:
Heat-Proof
1) Development of heat-proof motor and driving
Motor
Power
動力管
mechanism and latch magnet for gravity driven
Pipe
scram.
3モータ駆動用
Phase
2) Development of the ceramic insulated heat and
制
御
radiation resistant coil.
Heat-proof
棒
3) Durability test of a ball bearing for the internal
Coil
CRD in the high-pressure and high-temperature
CR
reactor coolant under BWR condition.
4) Evaluation of structural integrity and flow
instability due to two-phase flow of core exit
Heat-proof bearing
condition.
3. RESULTS DURING FISCAL YEAR 2003
Fig.1 Development Items and Components
1) CRD Casing for High-Pressure of 7MPa were made
by using 3D-CAD analysis at TOSHIBA. Heat-proof induction motor to drive the CRD mechanisim were
made and tested by using a three-pahse electro-magnet coupring power-connecter.
2) A hirg-temperature electrical-heated chamber upto 1000 deg. C was installed in a Co-60 radiation room at the
university of Tokyo. Several ceramic insulated coil specimems were tested. Some of the specimens showed
high-durabiliy for both high-temperature and high-radiarion flux of gamma-ray.
The radiation plan of Yayoi Reactor was made.
3) In the view point of robustness by the comment of the stearing committee, the ball bearings and roller-pin
durability test was conducted at TEPCO, under the condition of high-pressure and high-tempareture condition.
4) A visualized two-phase flow test loop was conducted, a lot of FIV data were obtained to evaluate the twophase FIV phenomena for CRD structures.
This program was conducted as one of the selected offers for the advertised technical developments of the Institute of Applied
Energy founded by the METI (Ministry of Economy, Trade and Industry) of Japan.
ii
目
要旨
次
……………………………………………………………………………………………
1. はじめに
………………………………………………………………………………
2. 技術開発計画
……………………………………………………………………………
2.1 技術開発目標および具体的実施計画
2
2
……………………………………………………………
4
……………………………………………………………………
6
2.4 平成 15 年度の技術開発
3. 成果の概要
1
………………………………………………
2.2 技術開発のスケジュール
2.3 技術開発実施体制
i
……………………………………………………………
6
……………………………………………………………………………
7
3.1 耐熱コイル技術を用いた内蔵電動 CRD の技術開発
3.1.1 内蔵電動 CRD 駆動システム開発
3.1.2 耐熱モータ
……………………………
……………………………………………
……………………………………………………………………
3.1.3 信号/電力伝送技術開発(電磁カップリング)
…………………………
3.2 セラミックス絶縁耐熱コイル技術開発 …………………………………………
3.2.1 セラミックス絶縁耐熱コイルの開発と高温劣化試験
3.2.2 セラミックス絶縁耐熱コイルのγ線照射試験
7
10
13
16
………………
16
………………………………
19
3.2.3 セラミックスコイルの次年度中性子照射試験計画
………………………
3.3 内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討に関する技術開発
3.3.1 高温水中軸受材料試験装置の改良
7
…………………
22
24
……………………………………………
24
3.3.2 高温水中軸受試験…………………………………………………………………
25
3.3.3 高温水中軸受試験評価
26
…………………………………………………………
3.4 二相流動に関する安定性・構造健全性評価
3.5 総合評価
……………………………………
………………………………………………………………………………
3.5.1 実施計画と進捗状況との比較
……………………………………………………
3.5.2 得られた成果に対する実施計画見直しの要否
3.5.3 得られた実施成果の一覧
3.5.4 外部発表(論文、口頭等)
4.まとめ
27
30
30
…………………………………
31
…………………………………………………………
30
………………………………………………………
30
………………………………………………………………………………………
33
4.1 全体のまとめ………………………………………………………………………………
33
4.2 今後の計画
33
………………………………………………………………………………
4.3 得られた事業成果に対する自己評価
…………………………………………………
33
1.はじめに
原子力も新鋭火力などとの熾烈な発電コスト競争のさなかにある一方で、欧州では過酷事
故対策を取り込んだ第4世代の原子炉の開発がすすめられている。また、燃料の経済性の観
点から燃料の高燃焼度化も進み、RIA(反応度投入事象)の評価上から制御棒の引き抜け
事故に対するマージンも少なくなって来ている。また、東京電力㈱と㈱東芝の共同研究「先
進型 BWR の要素技術に関する研究」の研究開発[1]-[9]により制御棒駆動機構(CRD)を従
来と同等のサイズの原子炉圧力容器内に内蔵することによって、原子炉格納容器の容積、お
よび CRD 関連機器の物量を削減し、経済性の向上を図ることが可能となることが明らかと
なった。このためにはセラミックス絶縁被覆を施した耐熱コイルを用いた高温水中モータや
非接触電力伝送手段である電磁カップリングの技術開発が必要である。
内蔵電動 CRD の適用によって、CRD に関して圧力バウンダリが無くなる一方、炉心が
RPV 下部に移動し、内蔵電動 CRD および制御棒ガイド兼二相流の流路となるガイドチム
ニが炉心上部に位置することになるため、RIA を撲滅すると共に冷却材喪失事故時に炉心
冠水維持が容易になる、RPV 下部冷却による過酷事故時の IVR(炉心溶融物 RPV 内封じ
込め)も有利となる等の大きなメリットが期待される。さらに内蔵電動 CRD の主要な要素
技術である耐熱コイル技術を発展させることによって、BWR のみならず PWR や超臨界圧
炉への適用も可能である。例えば米国を中心に INERI プロジェクトで開発中の革新的小型
PWR(IRIS)でも内蔵 CRD を採用する方向となり、先行する本技術開発が国際的にも注
目されている。この成果報告書では、「セラミック絶縁耐熱コイルを用いた内蔵CRD等に
関する技術開発」の平成15 年度の技術開発成果について報告する。
リフトコイル
二重円筒ドライヤ
気水分離器
リニアマグネット
カップリング
内蔵電動 CRD
ラッチ機構
(重力スクラム)
電磁カップリング
非接触電力コネクタ
ラジアルマグネット
カップリング
CRD ガイド
チムニー
RIP チューブ炉心
流量計
遊星ギア
シュラウドレス炉心
耐熱モータ
インターナルポンプ
図 1-1
内蔵 CRD を採用した先進型 BWR(1)
1
図 1-2
内蔵 CRD の内部機構
2.技術開発計画
2.1 技術開発目標及び具体的実施計画
内蔵電動 CRD システムの実用化を目指し、以下の技術技術開発項目と具体的目標を設定
した。
(1)耐熱コイル技術を用いた内蔵電動 CRD の技術開発
①電磁駆動システムの構築(スクラム動作系、通常動作系)
スクラム動作系として、キャン内蔵ソレノイド機構、その上下動作をキャン外に伝達す
るリニア型マグネットカップリング、その動作を制御棒駆動軸の把持・開放動作に変え
るラッチ機構がある。この内蔵電動 CRD の主要構成をなす電磁駆動システムについて
解析的に炉内高温環境における性能を予測できる技術を確立する。
・解析設計手法の確立
・電磁駆動システムを応用した重力落下方式スクラム特性の把握
②キャン密閉型耐熱モータのセンサレス制御技術
・電力伝送用電磁カップリングを介した耐熱モータのセンサレス制御技術の確立
・高温性能特性評価技術の開発
③電磁気力を応用した原子炉圧力容器外から炉内への非接触信号・電力伝送技術(電磁カ
ップリング適用システムの開発)
・制御棒位置検出系信号の電磁カップリングを介した伝送技術の確立
・電磁カップリングを介した耐熱モータへの電力伝送技術の確立
(2)耐熱セラミックス絶縁コイルの技術開発
・セラミックス絶縁材の候補材に関する高温劣化および放射線劣化特性の把握
(電気絶縁、機械的強度)
・耐久性向上手法の確立
(3)内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討に関する技術開発
・高温水中環境下における軸受け材料の劣化特性(軸受寿命)の把握と候補材の選定
・水質、中性子束などの BWR 炉内環境の影響の明確化
・内蔵電動 CRD の炉内適用性評価
(4)二相流動に関する安定性・構造健全性評価
①炉心上部の多チャンネル二相流
安定性に関する理論解析手法
②二相流 FIV 構造健全性評価技術
図 2.1-1 内蔵 CRD と二相流ガイドチムニー
2
2.2 技術開発のスケジュール
本技術開発における各技術開発項目に対するスケジュールを表 2.2.-1 に示す。
(1) 耐熱コイル技術を用いた内蔵電動 CRD の技術開発
①内蔵電動 CRD 駆動システム開発
平成 13 年度に全体計画を策定、平成 14∼15 年度にわたって電磁駆動システムの解析設
計手法の確立を行い、平成 16 年度にはスクラム特性評価試験を行い、開発を完了する。
②耐熱モータ開発
平成 15 に耐熱モータの試作、平成 16 年度に高温試験による性能特性評価を行う。
③信号/電力伝送技術開発(電磁カップリング)
平成 13∼14 年度にかけて信号伝送技術開発、平成 15 年度に電力伝送技術開発を行い、
平成 16 年度には耐熱モータの試験結果をもとに電力伝送技術の理論検証試験と技術の確
立を行う。
(2) 耐熱セラミックス絶縁コイル技術開発
平成 13 年度にセラミックス絶縁材の調査、候補材の選定、試験評価方法の検討を行い、
平成 14 年度に高温特性試験評価、平成 15 年度には Co 照射試験評価を実施する。平成 16
年度には東大弥生炉を用いて中性子照射試験を実施し、コイル線材としての耐久性向上方
法の確立を目指す。
(3) 内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討に関する技術開発
平成 13 年度に BWR の炉内環境評価と内蔵電動 CRD の BWR への適用性課題の抽出を
行い、平成 14∼15 年度にわたって高温水中軸受け材料の劣化特性について試験・評価、
および軸受け材料の選定を重点的に行う。平成 16 年度にはロバスト性を評価するため、
高温水中に炉水環境を模擬した鉄サビなどのクラッド類を混入させて高温水中軸受け耐
久性試験を実施する。
(4) 二相流動に関する安定性・構造健全性評価
① 二相流安定性解析
平成 13 年度審査委員会コメントである「二相流解析(安定性理論の構築)は本技術開
発に直接関係無いように思える」を反映して既存の二相流安定性解析手法により、ガイ
ドチムニー上部が CRD 格子で流路断面積が絞られている効果の評価に限定して平成 16
年度に二相流安定性理論解析を一括実施することとした。
②二相流 FIV(流力振動)構造健全性評価
平成 13 年度に課題の抽出と簡易理論評価を実施し、平成 14 に FIV 理論評価、15 年に
可視化試験装置を製作して FIV の基礎データを取得する。平成 16 年度は実機条件の高圧
二相流の FIV 試験と、それを基に構造健全性を評価する。
3
表 2.2.-1 本技術開発のスケジュール
技術開発項目
(1)耐熱コイル技術を
用いた内蔵電動 CRD
の技術開発
①内蔵電動 CRD 駆動
システム開発
②耐熱モータ開発
③信号/電力伝送技
術開発(電磁カップリ
ング)
(2)耐熱セラミックス
絶縁コイル技術開発
平成 13 年度
基本計画策定
(進捗済)
センサレス制御
理論検討
(進捗済)
(進捗済)
性能解析
(進捗済)
信号伝送理論
及び検証試験
(進捗済)
(進捗済)
調査
BWR への適用性
課題の抽出
(進捗済)
平成 15 年度
電磁気応用駆動システム
解析設計評価
吊上系原理確認
回転系試験
信号伝送
理論検討
(進捗済)
(3)内蔵電動 CRD の
BWR への適用性検討
に関する技術開発
平成 14 年度
高温特性試験評価
(進捗済)
高温水中軸受
材料劣化理論
検討及び装置製作
(進捗済)
キャン密閉型
耐熱モータ製作
高温性能特性
理論検証試験
(進捗済)
電力伝送理論
及び検証試験
信号・電力伝送
及び技術の完成
(進捗済)
作動時のコイル
内部温度解析
Co 照射試験評価
中性子照射下
の耐久性向上
手法の確立
(進捗済)
劣化試験
・理論評価
内蔵電動 CRD
の炉内適用性評価・
ロバスト性確認試験
(進捗済)
理論解析モデル構築
②二相流 FIV(流力振
動)構造健全性評価
スクラム特性
理論解析
検証試験
(進捗済)
(4)二相流動に関する
安定性・構造健全性評
価
①二相流安定性解析
平成 16 年度
二相流安定性
理論解析
(注2)
健全性
評価計画
(進捗済)
FIV 理論評価
FIV 理論評価
用可視化試験
(進捗済)
(進捗済)
二相流 FIV 試験
及び構造健全性
評価試験
注1)CRD: Control Rod Drive mechanism (制御棒駆動機構)
FIV: Flow Iduced Vibration (流力振動)
注2)平成 13 年度審査委員会コメントを反映して本技術開発に直接関係する内容に限定して
平成 16 年度に一括実施する。
4
2.3 技術開発実施体制
本技術開発の実施体制を図 2.3-1 に示す。
(1)耐熱コイル適用対象の内蔵電動 CRD 本体の主要構成要素と電磁カップリングの技術開発
は、主として㈱東芝の技術者が遂行する。東芝は数十年に亘る BWR および BWR 機器開発
の実績と研究者が揃っており、内蔵電動 CRD 等の機器開発に十分な能力を有する。設備面
でも BWR 流動条件で多目的に使用可能な高温流動試験装置を保有し、本事業の中でも高温
試験による内蔵電動 CRD の構成要素や全体システムの性能・機能確認に利用できる。
(2)耐熱コイルの絶縁材である耐熱セラミックスの技術開発については東京大学と㈱東芝で
共同実施し、内蔵電動 CRD 等の開発側に技術指導・要素試験支援をおこなう。東京大学の
寺井研究室は原子炉材料、新エネルギー材料等に関する権威であり、寺井教授をはじめとす
る研究者は材料の高温特性、放射線照射特性、それらを応用した工学システムの専門家であ
る。設備面でも、Co 照射試験設備、材料の放射線損傷試験用の放射線照射炉である弥生炉
を保有している。
(3)内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討は、東京電力㈱と㈱東芝が共同で行い、内蔵電動
CRD 等の開発側とで互いに開発技術のフィードバックを行う。東京電力は、BWR の国産化
や ABWR の開発のリーダとして原子力発電分野においてもメーカを牽引して実用化を推進
してきた実績がある。
(4)内蔵電動 CRD は炉内に設置することから、炉内構造の二相流 FIV や二相流動の安定性に
ついての技術開発を東京大学と㈱東芝が共同で実施し、内蔵電動 CRD の BWR 適用性検討
における BWR の基本構成の開発を支援する。
東京大学の班目研究室は原子力プラントの安全性の分野における権威である。班目教授をは
じめとする研究者は、特に流体関連振動、耐震設計、非定常熱流動などの広範な分野を対象
とする原子炉の安全性に関わる専門家であり、内蔵電動 CRD を適用する BWR 特有の炉内
構造に対する健全性評価について、特に 2 相流の安定性や構造物の FIV の観点からの十分
な技術支援を期待できる。
以上の通り、いずれの連携機関の研究者・技術者も各技術分野において本技術開発を遂行す
るに十分な実績と設備あるいは高い技術能力を有しており、連携して技術開発に当たる。
統括代表機関: 東芝
(1)内蔵電動CRDの技術開発
リーダ:東芝
■電磁気応用駆動システム
耐熱モータ開発/制御
炉内への電力・信号伝送
技術指導/要素試験支援
(2)セラミックス絶縁耐熱
コイル技術開発
リーダ:東京大学(寺井教授)
■高温特性・照射試験
→耐久性向上
(3)BWRへの適用性検討
リーダ:東京電力
■BWRへの適用課題抽出
■高温水中軸受・劣化特性
技術指導/解析評価支援
(4)二相流動に関する安定性・
構造健全性評価
リーダ:東京大学(班目教授)
■二相流安定性解析
■構造健全性(FIV)
図 2.3-1 本技術開発の実施体制
5
2.4 平成15 年度の技術開発
平成15年度は以下の項目を実施する。
(1)耐熱コイル技術を用いた内蔵電動 CRD の技術開発
a.内蔵電動 CRD 駆動システム開発
平成13年度の技術開発全体計画の策定と内蔵電動 CRD 駆動システムの仕様検討、平
成14年度の電磁気応用駆動システム解析設計評価に基づき、平成15年度は以下の3
点を重点項目として技術開発を実施する。
・内蔵 CRD システム構成と電磁気応用駆動システムの検討
・スクラム・ラッチ機構の検討および試作
・内蔵 CRD のキャン密閉基本構造の選定およびケーシングの製作
b.耐熱モータ開発
平成13年度の耐熱モータの制御理論検討と耐熱モータ基本設計、平成14年度の性能
解析に続き、平成15年度は以下を重点項目として技術開発を実施する。
・キャン密閉型耐熱モータおよび減速機構の製作
・耐熱モータの起動・制御特性試験および理論評価
c.信号/電力伝送技術開発(電磁カップリング)
平成13年度、平成14年度の CR 位置検出器用電磁カップリングを対象とした信号伝
送の理論検討と信号伝送特性(周波数特性・電圧利得)の評価・試験検討に続き、平成
15年度は以下を重点項目として技術開発を実施する。
・三相動力用電磁カップリングの製作と電力伝送特性試験および理論評価
・制御棒駆動軸位置検出手法の改良および検証試験評価
(2) 耐熱セラミックス絶縁コイル技術開発
平成13年度のセラミックスの高温劣化/照射劣化に関する文献調査、候補材の調査、
平成14年度の耐熱試験に続き、平成15年度は以下の技術開発項目を重点実施する。
・セラミックス高温劣化の補強改良技術開発
・東京大学での Co(γ線)照射による耐熱コイルの照射劣化試験と東京大学原子力工
学施設の弥生炉を用いた中性子照射計画の策定
(3) 内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討に関する技術開発
平成13年度の炉内構造の基本設計と BWR 炉内設置に関わる課題の抽出および内蔵電
動 CRD の設置環境評価(中性子束、水質)、BWR 炉内環境における摺動部材(軸受け
等)の寿命に関わる文献調査・課題の整理、平成14年度の高温水中軸受材料の劣化理
検討および軸受試験装置の製作に基づき、平成15年度は以下の項目を実施する。
・高温水中軸受材料の高温水中劣化試験(スクリーニング試験・寿命試験)
・高温水中軸受材料劣化試験理論評価(摩耗減量・摺動面表面観察)
・鉄クラッド等の炉水に含まれるイオンや異物に対する耐性評価試験手法の検討
(4)二相流動に関する安定性・構造健全性評価
平成13年度の二相流 FIV(流力振動)の簡易評価および審査委員会殿コメントを反映
して、ガイドチムニー本体の FIV 評価に加え、CRD 間を通過する縮流部や、電磁カップ
リングからCRDへ電力を送るコンジット管(円柱状あるいは角柱状構造物)など、二相
流 FIV 評価を一般化できるような可視化試験を実施して評価視野を広げた技術開発を実
施する。平成14年度に一部製作した二相流 FIV 可視化試験装置に改良を加え平成15年
度は以下の技術開発を実施する。先行研究を文献調査した結果、二相流 FIV に関する本技
術開発は世界的にも類をみない斬新な研究であることが分かった。
・流路断面縮小形状に対する二相流FIV試験評価
・二相流FIV計測、理論評価技術の開発
6
3. 成果の概要
3.1 耐熱コイル技術を用いた内蔵電動 CRD の技術開発
内蔵電動 CRD 駆動システムに関する技術開発は、平成15年度の以下の3点に注力し、予定通
り進捗した。
(1)内蔵電動 CRD 駆動システム開発
(2)耐熱モータ開発
(3)信号/電力伝送技術開発(電磁カップリング)
なお、本技術開発成果を 4/20 から新宿で開催の ICONE-11、5月にスペインで開催された ICAPP03
に発表した他、9月に京都で開催された GENES4/ANP03 では招待講演を行い好評を得た。なお、
I-NERI(国際 NERI)プロジェクトで開発中の IRIS(小型 PWR)も内蔵 CRD を採用の方向となり、
Nuclear News の 2003 年9月号の表紙に3D モデル図が掲載された。
3.1.1 内蔵電動 CRD 駆動システム開発
(1)内蔵電動 CRD 駆動システム開発
平成 14 年度のスクラム動作系の吊り上げコイル、リニア型マグネットカップリングなどの電磁
気およびサマリウム・コバルト磁石を応用した機構要素の検討に引き続き、平成 15 年度は①内蔵
CRD システム構成と電磁気応用駆動システムの検討、②スクラム・ラッチ機構の検討および試作、
③内蔵 CRD のキャン密閉基本構造の選定およびケーシングの製作を実施した。
a.内蔵 CRD のシステム構成と電磁区応用駆動システムの検討
図 3.1.1-1 に内蔵 CRD のシステム構成と今年度の技術開発試作品を示す。
動力管ノズル
信号伝送用
耐熱モータ
動力管
モータ駆動用
制
御
棒
電磁カップリング
図 3.1.1-1 内蔵 CRD のシステム構成と今年度の技術開発品
7
内蔵 CRD は内蔵 CRD 本体および CRD 内の吊り上げコイルおよび耐熱モータに炉外から電力を
送る非接触パワーコネクタである電磁カップリングで構成される。電磁カップリングの1次側は動力
管内に収納したセラミックス被覆の耐熱ケーブルを通じて制御室側から電力を伝送する。圧力容器の
貫通部は動力管を数本ずつまとめて約2インチの動力管ノズルとした。
b.スクラム・ラッチ機構の検討および試作
スクラム・ラッチ機構部の吊上げ力や保持力を評価し、その力を発生することがで
きるラッチ機構を開発する必要がある。以下に、その概要を紹介する。
1)ラッチ動作のためのソレノイド吸着力:400N
ソレノイド機構の励磁コイルが ON となり、可動アーマチャー
が可動部の重力、スプリング力、および摩擦力に抗して固定ア
ーマチャーに吸着されるためには、固定アーマチャーと可動
アーマチャー間の初期ギャップ 11.6mm において 266N 以上の
吸着力を要する。
したがってソレノイドの吸着力は、1.5 倍の 400N とした。
図 3.1.1-2 磁束および磁束密度
2)保持動作のためのソレノイド保持力:386N
ソレノイド機構の励磁コイルが ON の状態で、可動アーマチャーが、可動部の重力、スプリング
力に抗して固定アーマチャーに吸着され続けるためには、固定アーマチャーと可動アーマチャー
間のギャップ 1.0mm において 257N 以上の吸着力を要する。
したがってソレノイドの保持力は、1.5 倍の 386N とする。必要吸着力 400N を出力する場合の磁
路における最大磁束密度は、飽和磁束密度 1.8T に対し、内側鉄心部で 1.89T、外側アーマチャ部
で 1.55T となっている。そこで、ソレノイドを上下2段に分けることにより、図 3.1.1-2 に示す
通り、最大磁束密度を 1.5T の飽和磁束密度以下にすることが可能となった。磁路途中にキャン
が介在しない構成のため、当然キャン損失はゼロである。
3)デラッチ動作駆動力
励磁コイルが OFF となり、ラッチ機構の可動部にはたらく重力が、摩擦力と水中可動部の浮力に
抗して落下し、分割ボールナットを開状態とするためには、
[可動部重力(駆動力)]+[駆動力に順方向に働く力]
> [駆動力に抗する力]…(1)
となればよい。
[可動部重力(駆動力)]+[駆動力に順方向に働く力]≒
=
[可動部重力(駆動力)]
247N
[駆動力に抗する力]= [摩擦力]+[水中可動部浮力]
=
31N
したがって(1)式は成立するので、デラッチ動作は可能である。
以上の通り、ホルダスリーブ式ラッチ機構については成立性が確認できたので、図 3.1.1-3 に示
すスクラムラッチ機構の試作を行った。図 3.1.1-4 にスクラム機能作動試験用機構評価モデルを示
す。機能評価用のため、吊上げコイルは市販のプランジャを用いた。
8
図 3.1.1-3 ラッチ機構評価試作品(ホルダースリーブで一体化する)
図 3.1.1-4 ラッチ機構作動原理もモデルと断面図および3D−CAD 図
c.内蔵 CRD のキャン密閉基本構造の選定およびケーシングの製作
図 3.1.1-5 に内蔵 CRD のキャンとなる
ケーシングの密封基本構造を示す3D
−CAD 図およびケーシングの試作品の
写真を示す。ケーシングおよびキャン
の基本構造は上から①スクラム緩和機
構、②吊り上げコイル部、③分割ボー
ルナット・ラッチ機構、④耐熱モータ
および減速ギアなどの回転系を収納す
るモータ部から構成される。内蔵 CRD
本体は CRD 格子板上の固定円筒に上
から収納させる。キャンは7MPa、
286℃の高温高圧下で外圧に対してケ
ーシングが十分な強度を有する厚さを
確保した。
図 3.1.1-5 ケーシングの CAD 図および試作品
9
3.1.2 耐熱モータ
(1)耐熱モータの仕様
CRD を炉内に設置すると、CRD の駆動装置としてモータを使用する場合には炉内で使用できる
耐熱モータの開発が必要となる。また、モータに対する電力の供給及び信号伝送には燃料や制御棒の
交換時の作業性から、電磁カップリングが使用される。
モータ形式としては、平成14年度までの検討結果により誘導モータを採用した。誘導モータに関
する仕様は平成14年度までの検討結果を踏まえて表 3.1.2-1のようになる。
表 3.1.2-1 誘導モータの仕様
仕様項目
寸法制約
形式
誘導モータ
定格周波数
50Hz
定格トルク
7.0Nm
最高使用温度
300℃
回転子内径
φ51mm以上
固定子外径
φ173mm以下
軸長
357mm以下
本年度は、この仕様に基づき常温仕様にて誘導モータを試作し電磁カップリングを介しての動作検
証を行なう。
モータ構造としてはCRD側からの仕様として表 3.1.2-1 を考慮して、固定子外径φ160、中空
部外径φ60とし、またモータ寸法の関係から極数としては4極を採用した。モータ断面構成の概略
を図 3.2.1-1 に示すような断面構造としている。
また、図 3.2.1-2 に製作途中での固定子の状況を、図 3.2.1-3 に回転子の状況を示す。
(2)平成 15 年度製作の耐熱モータの特徴
本年度製作の耐熱モータは常温仕様とし、固定子巻線としては通常の巻線を使用している。なお、
巻線構造としては大コイル・小コイルを圧入する単層重ね巻き方式を採用しているが、耐熱コイルを
用いたこのような巻線製作方法(大コイル・小コイルを用いた巻線の圧入)については、平成 13 年
度において基礎的な検討を報告済みである。
また、固定子および回転子鉄心については、使用環境温度でもその磁気特性が大きく変わらないこ
とが平成14年度までの検討で明らかになっており、特に常温モータと異なる材料や構造を採用する
必要はない。従って、本年度製作の耐熱モータとして最も特徴的であるのは、図 3.2.1-1 に示される
ようにモータの回転子が中空状態となっているという構造的な特徴、およびモータが電磁カップリン
グを介して駆動されるという使用面での特徴であると言える。
10
(3)中空部のモータ特性への影響
前述のように、耐熱モータの大きな特徴として回転子が中空になっている構造が揚げられるため、
この中空部の存在がモータ特性に与える影響を解析により検討した。図 3.2.1-4 に解析結果のモータ
内磁束分布を示す。中空部が存在することにより、回転子鉄心のヨーク部(回転子スロットより内径
側の回転子鉄心部)の磁束密度が高くなり、モータ内部の磁気抵抗が常温モータよりも高くなってい
るが、モータ全体としての磁気抵抗としては固定子=回転子間のギャップおよび回転子のスロット外
径部の高磁束密度部分での鉄心の磁気飽和の影響が大きく、回転子鉄心のヨーク部での磁気飽和がモ
ータ特性に大きな影響を与えていないことがわかった。
極数:
φ1
60
4
固定子スロット数:36
φ60
回転子スロット数:44
図 3.2.1-1 内蔵モータ断面構造概略図
図 3.2.1-2 製作中の耐熱モータ固定子(巻線圧入)図 3.2.1-3 製作中の耐熱モータ回転子
11
図 3.2.1-4 耐熱モータ内磁束分布
図 3.2.1-5 耐熱モータの外観(今年度は常温コイルを使用)と減速ギア
12
3.1.3 信号/電力伝送技術開発(電磁カップリング)
平成 15 年度は CRD 位置検出装置と信号伝送用電磁カップリングによる位置検出試験、および3
相電力伝送用電磁カップリングによる電力伝送試験を実施した。
(1)電磁カップリングの製作
信号伝送用(単相)と電力伝送用(3相)の2種類の電磁カップリングを製作した。図 3.1.3-1 に
各電磁カップリングの外観写真を示す。
(2)位置検出試験
CRD の位置検出は、モータの回転軸に設けた永久磁石と固定部に設けたリードスイッチによって
行う。モータが回転すると永久磁石によってリードスイッチがオンオフするので、その回数と回転軸
のネジのピッチを乗ずることで、CRDの移動距離を算出する。
本試験では、信号伝送用電磁カップリングを介したリードスイッチのオンオフ状態検知の可能性評
価を目的に行った。表 3.1.3-1 に位置検出試験パラメータを示す。
表 3.1.3-1 位置検出試験パラメータ
100 V
電磁カップリング電源電圧
240 Hz
電磁カップリング電源周波数
400,
750,
1030
rpm
(6.7, 12.5, 17.2 Hz)
モータ回転数
モータ回転数をCRDの最大定格である 750rpm(12.5Hz)としたときの測定系を図 3.1.3-2 に、応答
試験結果を図 3.1.3-3 に示す。同図からCRDの回転に応じ、電磁カップリングを経由してリードス
イッチのオンオフ状態を検出できていることがわかる(搬送波の周波数は 240Hz)。この結果から信
号伝送用電磁カップリングとリードスイッチを使用してCRDの位置検出が可能であることが分っ
た。
(3)電力伝送試験
CRD 用モータは3相が想定されている。そこで、3相電磁カップリングの電力伝送効率(出力電
力/入力電力)を評価するための試験を行った。表 3.1.3-2 に電力伝送試験パラメータを示す。
表 3.1.3-2 電力伝送試験パラメータ
電磁カップリング入力(1次)電圧
(入力)電源周波数
負荷抵抗
0−120 V
50 Hz (商用周波数)
50 Ω (×3本)
図 3.1.3-4 に U 相1次電圧と3相電力伝送効率および3相出力電力の測定結果を示す。電磁カップ
リングの電力伝送効率は入力電圧によらず、約 33%であった。本試験は常温にて実施したが、高温条
件では巻き線抵抗値の増加などにより電磁カップリングの電力伝送効率は低下する。この場合、これ
までの研究により、電力伝送効率として 20%を見込めることが分っている。また、CRD 用モータは
CRDの仕様から 150W での動作を予定している。試験結果から、U 相1次電圧 110V のとき常温
での3相出力電力が 260W であったので、高温条件下でも約 160W の電力の供給が可能となる。CR
Dのモータの必要電力は 150W であるので、高温環境下でも、CRDへの電力供給は可能であると
考えられる。
13
電磁カップリング外観(1次容器外側から)
信号伝送用
電力伝送用
電磁カップリング外観(1次コイル外側から)
図 3.1.3-1 電磁カップリング外観写真
図 3.1.3-2 信号用電磁カップリングの応答測定中の写真
14
12.5Hz
リードスイッチ;ON
4
リードスイッチ;OFF
3
2
電圧 (V)
1
0
-1
-2
240Hz
-3
-4
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
時間 (sec)
70
350
60
300
50
250
40
200
30
150
20
100
10
50
0
0
20
40
60
80
100
U相1次(入力)電圧 (V)
図 3.1.3-4 電力伝送試験結果
15
120
0
140
3相出力電力 (W)
3相電力伝送効率 (%)
図 3.1.3-3 位置検出試験結果
3.2 セラミックス絶縁耐熱コイル技術開発
3.2.1 セラミックス絶縁耐熱コイルの開発と高温劣化試験
電磁カップリング用の高温コイルとして用いられている現行の耐熱絶縁電線は、導線がφ0.7 およ
びφ1.4mm のSUSクラッド銅で、その外側に数 10μm厚の無機ポリマー層が被覆され、さらに最外
層に約 200μm厚のセラミック長繊維の編組からなる構造である。この耐熱電線では、無機ポリマー
層の耐熱性が低い問題がある。また、加熱後の最外層のセラミックス長繊維の機械的強度が低下して
いることが判明した。部品組立施工時に特に屈曲部でこすれが生じた際に切れが生じて毛羽立ち、施
工作業上の不具合を生じ、加えて損傷部において絶縁不良の可能性があるため、抜本的な改良が必要
となった。
昨年度までの検討で、絶縁電線の構造および絶縁層に用いるセラミック長繊維材質についての調査
検討結果を基に改良候補絶縁電線を試作し、特性の比較評価を進めた。候補材料の選定の観点は、
(1)最外層のセラミック絶縁層について施工時の毛羽立ちを改良するためセラミック長繊維の屈曲
耐久性に影響のあると考えられる繊維径・材質を最適化すること、および(2)最外層のセラミック
絶縁層が損傷した場合にも絶縁性を確保できる高信頼性の絶縁構造を検討することである。具体的に
は、(1)の観点から、繊維径が現行材よりも細いφ5μmのアルミナ系長繊維を選定した。また(2)
の観点から、セラミックフェルト層とセラミック長繊維の編組からなる二重構造を検討した。図
3.2.1-1 に二重構造絶縁電線の模式図を示す。セラミックフェルト層とは、セラミックファイバー(ア
ルミナ・シリカ系短繊維)にバインダーを加えて導線表面にランダム方向で連結させて被覆したもの
である 1)。屈曲耐久性試験から、選定したセラミック長繊維編組は屈曲・毛羽立ちの抑制に有効であ
ること、および二重絶縁構造が加熱前であれば屈曲作業性に問題がなく、600℃以上の耐熱性を有
することを確認した。但し、加熱後にはセラミックフェルト層の強度も低下しており、課題となった。
そこで本年度は、コイルを製作した後の使用時における振動、熱サイクル負荷等に対する耐久・堅
牢性を考慮して、一体焼結固化の方法を検討した。一体焼結固化は、コイル全体を一体焼結して固定
化し、堅牢な構造とするもので、コイル形成後に一体焼結するので、コイル形成時には昨年度開発品
の優れた屈曲耐久性を活用することができる。さらにコイルを試作して熱サイクル試験により耐熱特
性の良好なバインダーを選定した。
表 3.2.1-1 に供試した固定化用の無機系バインダーを示す。二重構造絶縁電線としては、φ0.7 芯
線/セラミックフェルト/セラミック長繊維編組のものを用い、内径;φ15、 巻数;7ターンの
コイルを作製した。このコイルを無機系バインダーへ浸漬後、上下を平板で固定して、55℃オーブ
ン中で約6時間乾燥し、固定化コイルの供試体とした。評価は、大気マッフル炉中、室温←→600℃
×1時間加熱保持の熱サイクル試験を5サイクルまで行い、固化体へ生じるクラック等の程度を観察
した。
図 3.2.1-2 に固定化前のコイル、および5種類のバインダーを用いた固定化コイルの外観を示す。
固定化前のコイルの外観から認められるように、今回用いた二重構造絶縁電線は、屈曲耐久性に富み、
コイル形状に加工してもセラミック繊維の切れ等による毛羽立ちは無く、作業性が改良されているこ
とを確認した。図 3.2.1-3 に室温←→600℃×1時間加熱保持の熱負荷を5サイクル行った後の固
定化コイルの外観写真を示す。無機系バインダーNo.1、No.5は、コイルとしての堅牢性は保
持し大きな破壊には至っていないものの、微細なクラックの発生が認められた。無機系バインダーN
16
o.2、No.3は、コイルの堅牢性を保持し、かつこの条件でクラックの発生も認められなかった。
この差は、無機系バインダーの強度、熱膨張率特性の差違に起因していると想定される。
図 3.2.1-4 に、上述の室温←→600℃×1時間加熱保持の熱負荷を5サイクル行った後、引き続
き室温←→800℃×1時間加熱保持の熱負荷を10サイクル行った後の外観写真を示す。新たなク
ラックの発生、600℃の熱サイクル試験で発生していたクラックの進展が認められた。今後、無機
系バインダーNo.2、No.3を中心に、より大型コイルでの試作・熱サイクル試験を行い、更に
無機系バインダーの被覆量などの最適化を図り、耐久性の改良・検証を進めるとともに、照射試験、
絶縁性評価に進む予定である。
参考文献
1)石塚敏夫,松本栄,石塚紀元;
「セラミックフェルト超耐熱電線の開発」
,工業材料,38 [12] (1990)
表 3.2.1-1 供試した無機系バインダーの仕様
No. メーカー
1
東亜合成
2
3
4
朝日化学工業
5
備考
主成分;シリカ 線膨張率大
主成分;ジルコニア・シリカ 線膨張率小
主成分;アルミナ 線膨張率中
主成分;シリカ・アルミナ
主成分;シリカ 高接着力
図 3.2.1-1 現行の耐熱絶縁電線の断面構造
導線
セラミックフェルト
セラミック長繊維・編組
図 3.2.1-1 二重構造絶縁電線の模式図
17
固定化
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
図 3.2.1-2 固定化前および無機系バインダーを用いた固定化コイルの外観
固定化前
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
図 3.2.1-3 600℃×1時間加熱・5サイクル後の固定化コイルの外観
固定化前
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
図 3.2.1-4 800℃×1時間加熱・10サイクル後の固定化コイルの外観
18
3.2.2 セラミックス絶縁耐熱コイルのγ線照射試験
高温放射線照射環境下における絶縁性劣化試験についての予備的な検討を進めた。昨年度報告したよう
に、本照射試験に要求される条件としては、(1)照射温度が 600℃以上、できれば 800℃であること、(2)高
速中性子フルエンスが 2 x 1015 n/cm2 以上(もしくは照射線量がそれと同程度以上)であること、(3)試験体
が照射できる十分なスペースを確保できること、(4)照射中に絶縁特性を連続的に測定できることが望ましい
こと、である。これらの条件を満足する可能性がある設備は、東京大学原子力研究総合センターCo-60 ガン
マ線照射設備および東京大学工学系研究科附属原子力工学研究施設の弥生炉である。本年度は、図
3.2.2-1 に示すセラミックス高温劣化試験装置の電気炉のみを図 3.2.2-2 に示す通り、Co-60 照射室内に
設置し、照射室外からの温度制御および絶縁特性測定を行うことを試みた。
実機における高速中性子照射フルエンスとしては、高速中性子フラックス・中速中性子フラックス・熱中性
子フラックスが、いずれも 106 n/cm2/sec と評価されているので、60 年間の照射期間で考えると(稼働率を
100%として)、全寿命期間中にそれぞれ 2 x 1015 n/cm2/sec の中性子フルエンスを受けることになる。ここで、
検討している絶縁材が Al2O3 であると仮定し、カーマ率のデータを用いて評価を行うと、実機炉内中性子照
射により、本絶縁セラミックスコイルの絶縁部分が受ける照射線量率(あるいは吸収線量率)は 1.45x 10-2Gy/h、
60 年の全寿命期間中の全照射線量(あるいは吸収線量)は 7.63 x 103 Gy となった。上記の Co-60γ線源は
ピン形状表面に Co-60 を電着したものであり、線源からの距離に応じて、γ線照射線量は低下する
ので、試料照射位置の決定が重要であるが、試料を電気炉中に設置し、線源からの位置をある程度確
保した位置でもなお、50 Gy/h 程度の照射線量(吸収線量)での照射が可能である。この条件で上記
の全照射(吸収)線量をカバーするだけの照射量を確保するためには、152 時間程度の照射で十分で
あり、これは可能である。
まず、評価対象の絶縁コイルをセットせずに、絶縁抵抗測定用のリード線を炉内で開放した形で、加熱炉
の昇温に伴う絶縁抵抗の変化を測定した。本試験は、温度上昇に伴う加熱炉および測定系の絶縁抵抗劣
化を評価するものである。図 3.2.2-3 に測定結果を示す。当初室温では約109Ωの絶縁抵抗を示し、その後
300℃程度までの昇温に伴い絶縁抵抗は約1010Ωまで向上した。さらに昇温を続けると顕著な絶縁抵抗の
低下が認められ、800℃で 30min 保持後は約107Ωの絶縁抵抗を示した。
図 3.2.2-4 には、上述の測定に引続き加熱炉を 800℃に保持したまま、Co-60 照射源から 25.2cm の距離に
設置した時の、絶縁抵抗絶縁抵抗の時間変化を示す。絶縁抵抗は照射初期に急激に低下する傾向が認め
られ、照射前の約107Ωから106Ω台に低下した。図 3.2。2-5 には、さらに引続き照射源からの距離を 4.5cm
に近づけた場合の、絶縁抵抗の時間変化を示す。10 分間の照射を行ったが、ほとんど変化は認められなか
った。
今後、絶縁コイルの特性評価にあたっては、本測定系の高温、および照射下での絶縁抵抗特性を十分に
考慮して評価を進める必要がある。加熱と照射を重畳した条件での組織的な材料劣化、および絶縁特性評
価について詳細な検討を行なっている。
19
図 3.2.2-1
高温劣化試験装置の電気炉
図 3.2.2-2 Co 照射室への電気炉の搬入
1.E+11
1.E+10
絶
縁
抵
抗
Ω
1.E+09
1.E+08
1.E+07
1.E+06
0
200
400
600
800
温度(℃)
図 3.2.2-3 加熱炉および測定系の絶縁抵抗の温度依存性
20
1000
1.E+07
絶
縁
抵
抗
Ω
1.E+06
0
100
200
300
400
500
600
700
照射時間(s)
図 3.2.2-4 800℃加熱中のγ線照射による絶縁抵抗の時間変化
(Co-60 照射線源からの距離 25.2cm)
1.E+07
絶
縁
抵
抗
Ω
1.E+06
0
2
4
6
8
10
照射時間(min)
図 3.2.2-5
800℃加熱中のγ線照射による絶縁抵抗の時間変化
(Co-60 照射線源からの距離 4.5cm)
21
12
3.2.3 セラミックスコイルの次年度中性子照射試験計画
今年度末までの試験結果を基に選定した絶縁性セラミックス被覆コイルについて、実機条件を模
擬した条件下での高温照射下絶縁性劣化試験を次年度に実施する。実際の照射環境としては、東京大
学原子力研究総合センターCo-60γ線照射装置に加え、図 3.2.3-1 と図 3.2.3-2 に示す東京大学大学院
工学系研究科附属原子力工学研究施設「弥生」を考えており、前者で全照射(吸収)線量の影響、後
者で高速中性子照射の影響を試験する予定である。
実機における高速中性子照射フルエンスとしては、高速中性子フラックス・中速中性子フラック
ス・熱中性子フラックスが、図 3.2.3-3 の計算結果に示す通り、いずれも 106 n/cm2/sec と評価され
ているので、
60 年間の照射期間で考えると(稼働率を 100%として)、全寿命期間中にそれぞれ 2 x 1015
n/cm2/sec の中性子フルエンスを受けることになる。ここで、検討している絶縁材が Al2O3 であると
仮定し、カーマ率のデータを用いて評価を行うと、実機炉内中性子照射により、本絶縁セラミックス
コイルの絶縁部分が受ける照射線量率(あるいは吸収線量率)は 1.45x 10-2 Gy/h、60 年の全寿命期
間中の全照射線量(あるいは吸収線量)は 7.63 x 103 Gy となった。
弥生炉での高速中性子照射においては、図 3.2.3-4 に示す炉心モックアップの通り、いくつかの照
射孔が使用可能であるが、照射孔のサイズと中性子フラックスの観点から代表的な照射孔として Gz
孔を選定した。この照射孔は 52φの中空円筒状であるが、図 3.2.3-5 に示すような真空断熱および冷
却壁構造を備えた照射キャプセルを製作することにより、原子炉フル出力にて約 1011 n/cm2/sec の高
速中性子照射を 600℃にて行うことが可能である。全寿命期間中に本絶縁性セラミックスコイルが受
ける中性子フルエンスを模擬するためには、6∼18 時間程度の照射で十分であり、これも技術的に十
分可能であることを確認した。
平成16年度については原子炉照射のための設備整備を行い、高温γ線照射において健全性が確認
された候補コイル試料について、高速中性子照射を行い、高温照射における健全性を確認する予定で
ある。
図 3.2.3-1 東大
図 3.2.3-2 弥生炉の炉心付近
弥生炉の制御室
22
炉内中性子束分布を2次元Sn
輸送計算コードDOT3.5により計算
内蔵電動CRDの高さ・径方向中心部
●高速中性子束約106 n/s/cm2、
●中速中性子束約106 n/s/cm2、
●熱中性子束約106n/s/cm2
*注:DOT3.5コード:2次元座標系で表される体系の
放射線束分布をボルツマン輸送方程式に基づいて
数値的に解く。
米国オークリッジ国立研究所で開発された公開コード
炉内高速中性子束分布(>1MeV)
図 3.2.3-3 BWR 炉内中性子束計算結果
図 3.2.3-4 弥生炉心の照射孔のモックアップ
23
図 3.2.3-5 照射容器(真空断熱方式)
3.3 内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討に関する技術開発
3.3.1 高温水中軸受材料試験装置
(1)概要
内蔵電動 CRD の軸受が使用される高温高圧二相流環境を模擬した条件下で、小型軸受試験片を
用いた摩耗試験を実施した。軸受のロバストネスが確認できるように、①軸受試験片の 60 年相当
の寿命試験、②炉水環境中の過酷な環境を模擬した鉄クラッドなどの異物混入試験、というチャレ
ンジングな目標を置き、
試験装置の設計製作を実施した。平成 15 年度は上記①の寿命試験を行い、
②の異物混入試験は平成 16 年度に実施する。
(2)軸受試験片
高温水中下における軸受については、先行して行われた布川らの研究(1)及び ABWR の実績を参
考に 3 種類選定した。ボール軸受試験片の寸法を図 3.3.1-1 に示す。
試験片種類
ボール/ローラ材質
保持器/ピン材質
1. ボール軸受
SUS440C
グラファイト
2. ローラ/ピン型軸受 A
ステライト#3
アロイ#25
3. ローラ/ピン型軸受 B
Ni 合金
アロイ#25+CrN コーティング
(3)試験条件
試験条件は、炉内環境を模擬し、以下のように選定した。
①温度,圧力:実機 BWR 炉内相当の 286℃,7MPa
②軸受試験片の荷重:ラッチ機構、ボールネジ及び制御棒の合計重量約 1,600N を軸受の摺動部
1 つ当たりに受ける荷重に換算し 80N/個
③摺動速度:実機軸受と試験片との形状比率を考慮し 560rpm
④回転数: 60 年間プラント運転時の合計回転数が 2.7×106 回転と想定されるため、試験片の
材料特性を評価するスクリーニング試験では 1/10 の 2.7×105 回転(転動距離=31km)、寿命
試験では設計裕度を考慮し 3.0×106 回転(転動距離=339km)
(4)試験装置
以上の軸受試験片形状及び試験条件を考慮し、試験装置を設計・製作した。試験装置本体及び制
御盤の写真を図 3.3.1-2 及び図 3.3.1-3 に示す。
φ52
回転輪
保持器
35
平板固定輪
玉
図 3.3.1-1 ボール軸受試験片寸法
図 3.3.1-2 試験装置全体
24
図 3.3.1-3 試験装置制御盤
3.3.2 高温水中軸受試験
(1)評価項目
高温水中軸受試験の評価項目を以下に示す。
①摩耗減量評価:試験前後の試験片の重量変化及び形状寸法変化を測定する。
②摺動面観察:摺動面の摩耗深さや形態を粗さ計及び走査型電子顕微鏡により観察する。
(2)スクリーニング試験
ボール軸受試験片、ローラ/ピン型軸受試験片 A,B についてスクリーニング試験を行った。試
験ケースを表 3.3.2-1 に示す。ローラ/ピン型軸受試験片については、摩耗量がボール軸受試験片
に比べて多いため回転数依存性のデータも取得した。ローラ/ピン型軸受試験片 B の代表例を図
3.3.2-1 に示す。
(3)寿命試験
スクリーニング試験で摩耗量が少なかったボール軸受試験片の 60 年間運転相当の寿命試験を実
施した。ボール軸受試験片については荷重依存性のデータも取得した。ボール軸受試験片の代表例
を図 3.3.2-2 に示す。
表 3.3.2-1 試験ケース
試験片種類
累積回転数(回)
2.7×105
3.0×106
2.7×105
3.0×106
負荷荷重(N)
480
480
240
240
スクリーニング試験(6 年間運転相当)
寿命試験(60 年間運転相当)
荷重依存性試験
荷重依存性試験
ローラ/ピン
型軸受A
2.7×105
1.76×105
240
240
スクリーニング試験(6 年間運転相当)
回転数依存性試験
ローラ/ピン
型軸受B
2.7×105
6.75×104
1.35×105
240
240
240
スクリーニング試験(6 年間運転相当)
回転数依存性試験
回転数依存性試験
ボール軸受
図 3.3.2-1 ローラ/ピン型軸受試験片 B
(スクリーニング試験後,平板固定輪/ローラ/ピン)
備考
図 3.3.2-2 ボール軸受試験片
(寿命試験後,平板固定輪/回転輪)
25
3.3.3 高温水中軸受試験評価
(1) スクリーニング試験(6 年間運転相当)
3種類の軸受試験片を 286℃水中でスクリーニング試験した結果、いずれの試験片も焼付きが生じておらず、円滑
な回転状態を保持していた。試験前後の重量変化で評価した各軸受試験片の摩耗量を図 3.3.3-1 に示す。
SUS440C 製ボールとグラファイト製保持器で構成されるボール軸受は、3種類の試験片中、荷重あたりの摩耗量が
最も小さい値を示した。試験後の回転輪に形成されたボールの転動痕を走査型電子顕微鏡で観察した結果、滑らか
な表面形態を示した。保持器であるグラファイトが固体潤滑材として作用し、ボールと回転輪、固定輪との転動摩耗を
抑制したものと考えられる。一方、Ni 合金製ローラとアロイ#25 に CrN セラミックコーティングを施したピンとの材質組
合せ(ローラ/ピン型軸受 B)は、Co 合金であるステライト#3 とアロイ#25 との材質組合せ(ローラ/ピン型軸受 A)に比
較して摩耗量が小さい。硬質の CrN コーティングがローラとピンとの間の摺動摩耗を低減したと考えられる。したがっ
て供用中の回転数が大きいスラスト軸受にはボール軸受が、摺動部用のローラ/ピンには Ni 合金とアロイ#25+CrN
の組合せが有望である。
(2) 寿命試験(60 年間運転相当)
ボール軸受試験片を寿命試験した結果、スクリーニング試験と同様に試験片は円滑な回転状態を保持しており、
焼付きが生じていなかった。ボール軸受試験片の摩耗総量の回転数依存性を図 3.3.3-2 に示す。回転数や負荷荷
重の増加とともに摩耗総量が増加した。2.7×105 回転(転動距離 31km)では、3×106 回転(転動距離 339km)に比べ
て回転数に対する摩耗率が大きい。摩耗初期には試験片同士の接触面積が小さく面圧が大きいため摩耗率も大き
いが、試験とともに接触面積が増加する一方面圧が低下し、摩耗率が減少したと考えられる。寿命試験後の回転輪
に形成されたボールの転動痕も滑らかな表面形態であった。グラファイトが試験終了まで固体潤滑材として作用し、
転動摩耗を抑制したものと考えられる。ボール軸受は寿命試験においてもすぐれた耐摩耗特性を示し、内蔵 CRD の
スラスト軸受として有望である。
(3)平成16年度のロバスト性確認試験の試験計画の策定
内蔵 CRD の軸受には、鉄酸化物等を主成分とするクラッドの混入に対するロバスト性が要求される。そこで、先
に述べたスクリーニング試験及び寿命試験で良好な特性を示した材質組合せに対して、高温水中に鉄酸化物等
を混入した環境下での軸受摩耗試験を実施し、ロバスト性評価を行う。そして摩耗特性に及ぼす鉄酸化物混入等
の影響を調べる。
0.6
ボール
ボール
保持器
軸受
回転輪+固定輪
負荷荷重
摩耗総量(g)
0.5
ローラ/ピン ローラ
型軸受 ピン
A
回転リング
ローラ/ピン ローラ
型軸受 ピン
B
回転リング
480N
240N
0.4
0.3
0.2
0.1
10-5
10-4
10-3
10-2
10-1
荷重あたりの摩耗量 (g/N)
図 3.3.3-1 スクリーニング試験後の摩耗量
(材質依存性)
26
0
0
1
2
3
回転数 (×106)
4
図 3.3.3-2 ボール軸受の摩耗総量の
回転数依存性
3.4 二相流動に関する安定性・構造健全性評価
内蔵型CRDを採用に対する二相流動に関する安定性・構造健全性の課題のうち、前年度に引き続
き、二相流による流力振動(Flow-Induced Vibration,以下FIVと略称する)に対する構造健全性
の問題について検討を行った。前年度は、CRD格子板の上下方向振動励振力を評価するためのパラ
メータを検討し、二相衝突流現象を調べる基礎試験装置を設計・製作した。今年度は、製作した試験
装置を用いて実験を行い流動様式と流力振動の大きさを調査した。
CRD格子板の上下方向振動励振力として主なものは、ガイドチムニー下部(ダクト部)からガイド
チムニー上部(CRDハウジング間流路)への絞り流路を二相流が通過する際に発生する脈動現象に
起因するものである。CRD格子板の振動は動的機器である内蔵CRDの動作健全性や絶縁セラミッ
クの耐久性に影響を及ぼす可能性があるので、あらかじめこれを検討しておく必要がある。しかし、
このような絞り流路を通過する二相流の流動様式やその二相流の励振力に関する研究は従来ほとん
ど無いのでこの大きさを評価することは容易ではない。そこで、これを知るために今年度は前年度に設計・
製作した実験(図 3.4-1)を行うことで流動様式、励振力それぞれに関して調査した。
(1) 流動様式
流動様式を調べるために試験部をアクリル製可視流路とし、高速ビデオカメラで撮影を行った。気相、液
相の各見かけ流速を変化させながら流動様式の変化を観察した。ガイドチムニー下部(絞り上流部)に関し
ては、直径が 0.1[m]を超える大口径流路であると考えることができる。本実験においても既往の大口径管内
垂直上昇二相流の研究と同様、気泡流、ジグザグ気泡流、チャーン流が確認された。一方ガイドチムニー上
部(絞り下流部)に関しては、上流部の流動様式に限らず脈動現象が発生することが確認された。その脈動
の様子の一例(上流部はジグザグ気泡流)を図 3.4-2 に示す。絞り部を通過した気相は細かい気泡に分裂し、
絞り下流部ではその細かい気泡が集まったものがおよそ 2∼10[Hz]の周期で通過する。図 3.4-2 で白く映っ
ているものが気泡であるが、0.024[s]から 0.032[s]にかけて気泡群が通過しているのが確認できる。
(2) 励振力
上記の脈動現象によりガイドチムニーが受ける励振力を評価するために、絞り部下流での圧力変動と絞り
部での上下方向加速度を測定した。気相、液相の各見かけ流速を変化させながら測定を行った。液相見か
け流速を変化させた場合、ボイド率と圧力変動の標準偏差の関係がどのように変化するかを示した測
定結果図が図 3.4-3 である。ボイド率が高いほど、また液相見かけ流速が大きいほど圧力変動の標準
偏差が大きくなる様子が示されている。変動の標準偏差は変動の大きさを表すと考えられる。絞り部
を振動させる励振力の一つである圧力変動の大きさと、励振力を受けた絞り部が上下方向に振動する
大きさとの関係を示した図が図 3.4-4 である。圧力変動が大きくなるにつれて絞り部の上下方向加速
度も大きくなることがわかる。平成16年度はこれを実機 7MPa の高圧状態に拡張する。
27
CRD
CRD格子板
制御棒
図 3.4-1 二相流 FIV 試験装置およびガイドチムニー部の拡大
28
図 3.4-2 絞り部下流での脈動の様子
図 3.4-3 絞り部下流でのボイド率と
図 3.4-4 絞り部下流の圧力変動の標準偏
圧力変動の標準偏差
差と絞り部上下方向加速度の標準偏差
29
3.5 総合評価
3.5.1 実施計画と進捗状況との比較
平成15年度の実施計画と進捗状況を以下に比較する。
(1)耐熱コイル技術を用いた内蔵電動 CRD の技術開発
a.内蔵電動 CRD 駆動システム開発
平成15年度は以下の3点を重点項目として技術開発を実施する。
・内蔵 CRD システム構成と電磁気応用駆動システムの検討:
内蔵 CRD システム構成を見直し、減速ギアなどを含む電磁気応用駆動システムのうち回転系を
中心に検討し、100%進捗した。特に、平成 14 年度の審査委員会コメントを反映して内蔵CRD駆動
システムについては、永久磁石の選定、磁場解析による基本仕様評価を予定通り実施し、平成 16 年
度に実施する高温試験の計画・試験実施・結果整理などについても慎重な検討を実施した。
・スクラム・ラッチ機構の検討および試作:
内蔵 CRD システムのうち、吊上げ系であるスクラム・ラッチ機構とラッチマグネットに必要な吊
上げ力・保持力、デラッチに必要な荷重の検討およびラッチ機構の分割ナットとホルダスリーブを
試作し、当初計画通り、100%進捗した。
・内蔵 CRD のキャン密閉基本構造の選定およびケーシングの製作
内蔵 CRD のキャンとケーシングを同一にすることで、厚肉のケーシングを採用でき、外圧に強い
構造が可能となった。3次元 CAD で詳細計画の上、ケーシングを試作した(100%進捗)。
b.耐熱モータ開発
平成15年度は当初の計画通り、以下を重点項目として技術開発を実施した。
・キャン密閉型耐熱モータおよび減速機構の製作:
耐圧キャンを兼ねる CRD ケーシング内に収納できるシャフトが中空タイプの耐熱三相誘導モー
タ(世界初)および減速ギアを製作した(100%進捗)
。なお、コイルの絶縁線材は常温仕様のもの
を使用し、平成16年度に技術開発を行ったセラミック絶縁耐熱コイルに巻き替え、約 300℃に
加熱して高温性能を確認する。
・耐熱モータの起動・制御特性試験および理論評価:
動力用非接触パワーコネクタである電磁カップリングを用いて耐熱モータに 5mm の水ギャッ
プを介して電力を伝送し、耐熱モータが起動と所定の回転数での制御性を確認した(100%進捗)。
c.信号/電力伝送技術開発(電磁カップリング)
平成15年度は以下を重点項目として技術開発を実施した。
・三相動力用電磁カップリングの製作と電力伝送特性試験および理論評価:
三相動力用電磁カップリングを製作し、電力伝送特性を測定し、実機相当の高温での
伝送性能について理論評価を行った(100%進捗)。
・制御棒駆動軸位置検出手法の改良および検証試験評価
モータの回転軸に付けた永久磁石でリードスイッチで ON/OFF することにより、信号用電磁カ
ップリングを介して制御棒位置を測定可能とした(100%進捗)。
(2) 耐熱セラミックス絶縁コイル技術開発
平成15年度は以下の技術開発項目を重点実施した。
・セラミックス高温劣化の補強改良技術開発:
セラミックス絶縁耐熱コイルの一体焼結技術を開発し、昨年度に比べ格段の堅牢性を達成した
(100%以上の進捗、特筆に値する)。
・東京大学での Co(γ線)照射による耐熱コイルの照射劣化試験:
セラミックス絶縁耐熱コイルの技術開発については、絶縁電線の評価と材料選択(セラミックス
フェルト)及び絶縁コイルの高温特性試験に引き続き、堅牢なコイルの一体焼結技術を開発した。
また、高温加熱下の CO60 照射については照射直後に電気絶縁特性が低下するが、モータや吊り
上げコイルに必要な 100V∼200V1MΩ程度の絶縁性を保っていることが分かった(100%進捗)。
・東京大学原子力工学施設の弥生炉を用いた中性子照射計画の策定:
当初の計画通り、Co 照射試験を実施すると共に、次年度(平成16年度)の弥生炉を用いた照
射計画を策定した(100%進捗)。
30
(3) 内蔵電動 CRD の BWR への適用性検討に関する技術開発
平成15年度は以下の項目を実施する。
・高温水中軸受材料の高温水中劣化試験(スクリーニング試験・寿命試験):
内蔵CRDのBWRへの適用性検討では、高温水中での摺動部位とスラスト軸受けの
スクリーニングと寿命試験を実施した。選定された材質の組み合わせでは寿命 60 年相当の回転
移動距離を走行したベアリングの溝やボールに特に顕著な摩耗は見られなかった(100%進捗)。
・高温水中軸受材料劣化試験理論評価(摩耗減量・摺動面表面観察):
軸受け荷重や回転走行距離に対して軸受理論に傾向的に一致する摩耗減量等の試験結果を得
た(100%進捗)。
・鉄クラッド等の炉水に含まれるイオンや異物に対する耐性評価試験手法の検討:
審査委員会のコメントに基づき、軸受けのロバストネス及び60年寿命相当の材料候補選定を行
い、今年度は高温水中摩耗試験よりも条件の過酷な鉄さびやクラッド等を混入させた耐久摩耗試
験の計画を策定した(100%進捗)。
(4)二相流動に関する安定性・構造健全性評価
平成15年度は以下の技術開発を実施した。
・流路断面縮小形状に対する二相流FIV試験評価:大気圧の可視化試験装置にて流路断面縮小形状
に対する FIV の励振力を測定した。先行研究を文献調査した結果、二相流 FIV に関する本技術
開発は世界的にも類をみない斬新な研究であることが分かった(100%進捗)。
・二相流FIV計測、理論評価技術の開発:
上記の可視化試験の実施に伴い、絞り部下流の圧力変動の大きさと上下方向加速度の
標準偏差でする評価技術を開発した(100%進捗)。
3.5.2 得られた成果に対する実施計画見直しの要否
1) 平成 14 年度審査委員会のコメントを考慮して、平成 16 年度の実施計画は H15 年の単なる期間の延長
では無く、当初の計画に加え、堅牢性(ロバストネス)やメンテナンスの容易さを目指して実施すべく詳
細な計画・検討を行ったものである。
従って、平成16年度の実施計画に特に変更を必要としないが、スクラム・ラッチ機構、高温水中軸受、
セラミック絶縁耐熱コイル、ケーシングなどは特に、堅牢性(ロバストネス)の観点を重要視して試験や
解析評価を実施することとした。
2) 耐熱セラミックス絶縁コイル技術開発については、絶縁電線の評価と材料選択絶縁コイルの高温特性
試験、CO60 照射により、一体焼結コイルという極めて堅牢なコイルの技術開発が成されたが、特に新し
い知見としてセラミック絶縁耐熱コイルの絶縁特性評価に当っては、高温での中性子照射下での特性
を明らかにすることが重要との審査委員会コメントを考慮して、平成 16 年度に計画している弥生炉を用
いた中性子照射を入念な準備の上、確実に実施したい。
3) 内蔵CRDのBWRへの適用性検討では、摺動部位とスラスト軸受けの理論検討、また審査委員会のコ
メントに基づき、軸受けのロバストネス及び60年寿命相当の材料候補選定を行っており、今年度の高温
水中試験(清水)に引き続き、平成 16 年度の鉄錆やクラッド等を混入させた本格的な耐久摩耗試験を
計画通り実施したい。
4) 二相流FIVについては、可視化試験装置で世界初の貴重な基礎データと知見が得られたが、平成 16
年度は実用化の観点から 7MPa の高圧領域への理論的拡張や高圧二相流ループを用いた試験を予
定通り実施したい。
5) 二相流の安定性解析自体は既存の動特性計算コードなどを用いて評価可能であると考えられるので、
ガイドチムニー出口部の流路断面積が絞られている点に着目し、実施内容を限定して平成 16 年度に
実施したい。
6) 平成 16 年度は技術開発の最終年度であるため、研究成果を公共財産となるように査
読付の論文や報告書として積極的に発表すると共に特許出願も考慮したい。なかでも I-NERI(国
際 NERI)で開発中の革新的小型 PWR などで内蔵 CRD 採用の動きがあり、我が国の技術開発が内
蔵 CRD を中心に国際的にも先行するようにしたい。
31
3.5.3 得られた事業成果の一覧
H15 年度まで、当初計画通りの技術開発が進捗し、以下の事業成果が得られた。
①内蔵 CRD 駆動機構:世界初のキャン(ケーシング)内蔵型三相耐熱モータや吊り上げコイルの磁場解析
や磁気カップリングの試作を完了し、良好な結果を得た。
②世界初の非接触パワーコネクタである動力用マグネットカップリングの試作と耐熱モータ(三相誘導型)の
作動試験に成功した。
③セラミック絶縁耐熱コイルの高温耐久性の大幅向上対策(一体焼結化)と Co 照射試験実施し、照射直後
に絶縁が急速に劣化するものの、AC100V∼200V の電圧範囲で十分な絶縁特性である1MΩを確認し
た。
④軸受の高温水中試験(60 年相当の回転移動距離)実施し、特に顕著な摩耗や振動は発生しなかった。
⑤二相流 FIV に関して可視化試験では、流路絞り部下流の圧力変動と上下方向の振動(加速度)が二相流
の流動様式(フローパターン)に対応するなど、世界初の知見を得た。
3.5.4 外部発表(論文、口頭等)
(1)T. Narabayashi,et.al, "DEVELOPMENT OF INTERNAL CRD FOR NEXT GENERATION BWR",
ICONE-11, Tokyo, April 2003.
(2)T. Narabayashi, et.al,"Development of Next Generation BWR with Internal CRD",International Congress
on Advances in Nuclear Power Plants: ICAPP03, Spain, May. 2003.
(3)T. Narabayashi, et. al., "DEVELOPMENT OF INTERNAL CRD FOR NEXT GENERATION BWR",
Kyoto, GENES4/ANP2003, Sept. 2003.
(4)Y. Morimoto, "Fluctuation of Void Fraction and Pressure Drop during Vertical Two-Phase Flow with
Contraction", GENES4/ANP2003, Sept. 2003.
(5)Y. Morimoto, "Pulsation of two-phase flow through a vertical pipe with contraction", Asia Pacific
Vibration Conference (APVC2003), Austraiia, Sept.2003.
(6) セラミックス絶縁耐熱コイルを用いた内蔵 CRD 等に関する技術開発
(2)駆動機構の開発と開発課題、原子力学会 2004 春の年会(2003 年 3 月)
東芝 ○奈良林 直、荒岡 勝政、佐藤 道雄、徳増 正、石里新一
東京電力 森 治嗣、東京大学 班目 春樹、寺井 隆幸
(7)同上、(3)高温水中下における軸受材料のスクリーニング試験と寿命評価
東電 ○後藤正治、大森修一、森 治嗣、東芝 河野昌平、佐谷野顕生、奈良林 直
(8)同上、(4)軸受の摩耗特性評価および耐久性向上
東芝 ○川野 昌平、佐谷野 顕生、奈良林 直、東電 大森 修一、後藤 正治、森 治嗣
(9)同上、(5)セラミックス絶縁コイルの耐熱性向上
東芝 ○亀田 常治、奈良林 直、米田えり子、福井 和也、東大 寺井 隆幸、
(10) 同上、(6)電磁カップリングの電力・信号伝送の理論的検討
東芝 ○小林 徳康、佐藤 道雄、菅原 良一、徳増 正、荒岡 勝政、奈良林 直、東電 後藤 正治
(11) 同上、(7)二相流 FIV 試験
東大 ○森元 雄一郎、班目 春樹、岡本 孝司、東芝 萩原 剛、奈良林 直
3.5.5 その他、特筆すべき点
(1) 世界初のキャン(ケーシング)内蔵型三相耐熱モータ
(2) 世界初の非接触パワーコネクタである動力用マグネットカップリング開発成功
(3) セラミック絶縁耐熱コイルの高温耐久性の大幅向上達成(一体焼結化)
(4) 軸受の高温水中試験(60 年相当の回転移動距離)実施
(5) 二相流 FIV に関して可視化試験で世界初の知見
(6) I-NERI(国際 NERI)で開発中の IRIS(革新的小型 PWR)で内蔵 CRD 採用、Nuclear News,
Sept., 2003.
32
4.まとめ
4.1 全体のまとめ
H15 年度まで、当初計画通りの技術開発が進捗している。
①内蔵 CRD 駆動機構:耐熱モータや磁気カップリングの試作完了
②世界初の非接触パワーコネクタ(動力用マグネットカップリングの試作と三相誘導耐熱モータの作動成功
③セラミック絶縁耐熱コイルの高温耐久性の大幅向上と Co 照射試験 実施
→高温照射下でのセラミックコイルの照射劣化と欠陥回復特性を試験により評価
④軸受の高温水中試験(60 年相当の回転移動距離)実施
⑤二相流 FIV に関して可視化試験で世界初の知見
4.2
平成 16 年度の計画(技術開発最終年度)
技術開発の最終年度として、技術開発を進めてきた各要素技術および機構部品を組み合わせ内蔵 CRD と
しての総合試験を実施する。車に例えればエンジン、車体、タイヤ、ステアリング装置を組み合わせた走行テ
ストに相当する。ただし、実証試験の代わりに電気ヒータを用いた実機相当高温試験と、セラミック絶縁耐熱
コイルについては弥生炉を用いた照射下での耐久性向上試験、軸受けについては最終選定材でのロバスト
性向上試験を実施する。また、二相流構造健全性については最終形状での構造健全性 FIV 理論評価と二
相流安定性理論評価を実施し、合理的な手法により実用化の道筋を付ける。平成16年度の実施内容は以
下の通りであり、実用化の目処を付けて開発完了としたい。
①内蔵 CRD 駆動機構と耐熱モータの高温作動試験(スクラム試験)
②電磁カップリングから耐熱モータへの高温下での電力伝達評価と FEM 温度解析
③セラミックス絶縁耐熱コイルの加熱下での中性子照射(炉内環境下の評価:照射欠陥の回復)
④軸受ロバスト性向上試験(クラッド・鉄さび混入下での耐久性)
⑤高温高圧下での二相流 FIV 評価試験(実機7MPaの炉内環境下での評価)
→内蔵 CRD の実用化を推進して国際競争を先導することが重要。更に波及効果として BWR に加え、至
近には PWR(IRIS)や将来的には低減速スペクトル炉や超臨界圧炉へも適用可能である。
4.3
得られた事業成果に対する自己評価
①内蔵 CRD 駆動機構:世界初のキャン(ケーシング)内蔵型三相耐熱モータの磁場解析や磁気カップリン
グの試作を完了→○良好な結果(次年度、スクラム試験で信頼性確認要)
②世界初の非接触パワーコネクタである動力用マグネットカップリングの試作と耐熱モータ(三相誘導型)
の作動試験に成功→○世界初の成果(次年度、300℃高温下で作動確認要)。
③セラミック絶縁耐熱コイルの高温耐久性の大幅向上対策(一体焼結化)と Co 照射試験実施し、照射直後
に絶縁が急速に劣化するものの、AC100V∼200V の電圧範囲で十分な絶縁特性である1MΩを確認
→◎良好な結果(次年度、中性子照射で最終確認要)
④軸受の高温水中試験(60 年相当の回転移動距離)実施し、特に顕著な摩耗や振動は発生しなかった
→◎良好な結果(次年度、鉄さび・クラッドなど混入させロバスト性確認要)
⑤二相流 FIV に関して可視化試験では、流路絞り部下流の圧力変動と上下方向の振動(加速度)が二相
流の流動様式(フローパターン)に対応→○世界初の知見(次年度、高圧領域へ拡張要)
33
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