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余ったHDDで ホームサーバーを作る

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余ったHDDで ホームサーバーを作る
文/竹内 亮介
テーマ
余ったHDDで
ホームサーバーを作る
組み替えで余った古いHDDでも、1TBや1.5TBなど容量が大きめだと
捨てるには惜しい。そこで今回は、そうしたHDDを有効活用できるホー
ムサーバーを作ってみた。OSには、価格が下がり導入しやすくなった
Windows Home Server 2011を組み合わせた。
難易度
★★★★★
CPU(OS とセット) 1 万 7000 円 光学式ドライブ
マザーボード
1 万 8000 円 PC ケース
メモリー
3000 円 電源ユニット
HDD
6000 円
合計
4000 円
2 万 8000 円
1 万 3000 円
8万9000円
やや PC ケースが高い。今回の用途では必須の機能を搭載するの
でここは妥協できないが、マザーボードや CPU、電源ユニット
のグレードは少し下げても問題無いだろう。
注目 PC-Z60B は 6 個のホットスワ
1
ップ対応内部ベイを装備する。
余っている HDD をベイに挿し
込むだけで固定できるのが便
利だ。また、2 個の12cm 角フ
ァンがこの内部ベイを直接冷
やす構造になっており、大量
の HDD を搭載しても安心して
使い続けられる。
注目 O S は W i n d o w s H o m e
3
。
Server 2011(WHS2011)
家庭や小規模オフィス向けの
サーバー用 OS だが、設定が簡
単で導入しやすい。8 月2日に
値 下げ され、DSP 版 を1000
円前後のパーツとセットで買う
と8000円前後とかなりお買い
得だ。
注目 CPU は、発熱の目安となる TDP(熱設計電力、実使用上の
2
52
最大消費電力)が 35W と低く、消費電力も少ない Core i32100T を選択。サーバーとして使うだけならこれ以下の
CPU でも性能は十分だが、Quick Sync Video で動画を
エンコードしたい人には Core i3-2100T がお薦めだ。
NIKKEI WinPC 2012.10
特別付録
自作のポイント
余ったHDDを簡単に増設可能
■PCケース
PC-Z60B
一般的な PC ケースで HDD を増設す
Living Network Alliance)2.0に準拠
るには、側板などを外して HDD を組み
したメディア配信機能を備えている。今
込み、各種ケーブルを接続する必要があ
回はWHS2011の設定方法だけではなく、
る。しかしホットスワップ対応内部ベイ
余った HDD を組み合わせて作った大容
を搭載する PC ケースでは、内部ベイへ
量ストレージに動画や画像を保存し、ス
の結線を済ませておけば HDD を挿し込
マートフォンやタブレットと連携して楽
むだけで増設作業が完了する。ストレー
しむ方法も紹介する。
2万8000円
Lian Li Industrial
ディラック
対応マザーボード:ATX、ベイの数:5
インチ×3、3.5 インチ内部×6、2.5
インチ× 2、外形寸法:幅 210 ×奥行
き 480×高さ 472mm、重量:7.2kg
素材はアルミで大型ながら軽量。
表面の仕上げも美しい。内部ベイ
には 付きのストッパーがあり、
ユーザー以外が HDD を持ち出せ
ないようにしている。
ジ領域を PC 作成時に完成させるのでは
なく、他の PC をアップグレードしたと
内部ベイの右側面には 12cm
角ファンを 2 個装備している。
内 部 ベ イ に 装 着し た 多 数 の
HDD を、効率的に冷却できる。
きに余る HDD をその都度組み込めるよ
うにしたいときは必須の機能だ。
今回使用した PC-Z60は、前面パネ
ルの裏側に内部ベイが隠れており、直接
アクセスできない。とはいえ、前面パネ
ルは4カ所で留められているだけ。下部
を手前に引っ張るだけで簡単に外せる。
メンテナンスのしやすさは、他のホット
スワップ対応内部ベイを装備した PC ケ
ースとあまり変わらない。
OS の WHS2011は DLNA(Digital
前面パネルを取り外すと内
部ベイにアクセスできる。6
個までの 3.5 インチ HDD を
装着可能だ。
WHS2011では「ダッシュボード」という簡易
管理ツールを用意しており、サーバー向け OS
を利用したことがないユーザーでも簡単に各種
の設定ができる。
今回使ったパーツ
■CPU
1万7000円(OSとセット)
Core i3-2100T
Intel
■マザーボード
Z68A-GD55
MSI
1万8000円
エムエスアイコンピュータージャパン
■電源ユニット
AU-500
FSP Group
1万3000円
オウルテック
コア/スレッド数:2/4、動作周波数:2.5GHz、LLC
容量:3MB、TDP:35W
チップセット:Intel Z68、メモリースロット:DDR3-1600
× 4、ストレージ:Serial ATA 6Gbps × 2、3Gbps × 4
定格出力:500W、搭載ファン:12cm 角、外形寸法:
幅 150 ×奥行き 140 ×高さ 86mm
後継品で 2.6GHz 動作の Core i3-2120T も同
価格なので今後は 2120T が主流になるだろう。
実勢価格は WHS2011をセットにした場合。
耐久性の高いアルミ固体コンデンサーや、高品
質コンデンサーを採用。安定動作が求められる
サーバーでは重視したい要素の一つ。
80 PLUS GOLD 認証を受けた電源ユニット。
サーバーは常時稼働するので、変換効率が高い
電源なら消費電力が低くなり、
電気代も安くなる。
■メモリー
■HDD
■光学式ドライブ
3000円
Premier Series AD3U1333C4G9-2
ADATA Technology
マスタードシード
6000円
WD Caviar Green WD20EARX
Western Digital
4000円
DVR-S7260LE
アイ・オー・データ機器
容量:8GB
(4GB × 2)
、規格:DDR3-1333
インターフェース:Serial ATA 6Gbps、容量:2TB、キャ
ッシュ:64MB
インターフェース:Serial ATA、DVD ± R 書き込み:
最大 16 倍速
4GB モジュールを 2 枚組み合わせたパッケー
ジ。2GB モジュール×2 でも十分だが、安いの
で 8GB にした。ちなみに WHS2011は 8GB よ
り多く搭載しても利用できない。
システム用の HDD として容量 2TB の低回転モ
デルを選択。回転数が低いので振動音もあまり
せず、発熱も低い。家庭で使うサーバー PC 用
の HDD に最適だ。
日常的には使わないのでインストール時のみ接
続する。そうすると、マザーボードが装備する
6 個の Serial ATA ポートを全て内部ベイに接続
できる。
NIKKEI WinPC 2012.10
特別付録
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PCの組み立て手順
作業しやすい広い内部空間、ねじ留め作業も少ない
CPUやメモリーをマザーボードに固定
Z68A-GD55 に CPU や CPU クーラー、メモリ
ーを固定する。作業後にマザーボードの裏側を見
て、CPU クーラーのプッシュピンがきちんと挿し
込まれているかどうかを確認する。
マザーボードをPC ケースに固定
左右の側板や前面パネルを外す
組み込み作業では左側面だけでなく、右側面や内部ベイ側で
も作業する。あらかじめ左右の側板や前面パネルも外してお
くと便利だ。
内部ベイには 4 個の周辺機器
用 4ピン電源コネクターを挿
す必要がある。2 個のコネク
ターを備えた 2 本の電源ケー
ブルをここに接続する。
付属のスペーサーをマザーボード
ベースに取り付ける。続いてバッ
クパネルを PC ケースに取り付け
たら、マザーボードを固定する。
内部は広いので楽に作業できる。
固定フックでがっちり固定
電源ユニットを固定
PC-Z60B には、電源ユニットの固定を補助する金属
PC ケース内部から電源ユニットを挿し込み、ファンを下
向きにして電源ユニットを固定する。4 カ所をしっかりね
内部ベイに電源コネクターを挿す
製の固定フックが付属する。フレームの固定穴にフッ
クを引っかけ、レバーを下向きに倒すだけでよい。
じ留めする。
メイン電源などを接続する
最強テク
メイン電 源コネクターと
CPU 用の 8ピ ン 電 源コネ
クターを接続する。8ピン
コネクターのケーブルは背
面から回すと届かないので、
前面から回す。
各種ピンヘッダーはフックでまとめる
PC ケース上部にある前
面ポートを利用するた
めのピンヘッダー用の
ケーブルは、右側面に
あるフックでまとめて整
理しておくとよい。ただ
し、USB 3.0 ポ ート用
のケーブルもまとめると
マザーボード上のポー
トに届かなくなるので
注意。
使わない電源ケーブルをまとめる
余った電源ケーブルは結束バンドなどを
使って底部にまとめてしまおう。OS の
インストール時のみ、光学式ドライブに
接続する Serial ATA 用ケーブルを 1本
引き出せるようになっていればよい。
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NIKKEI WinPC 2012.10
特別付録
各種ピンヘッダーを接続
Serial ATAケーブルを内部ベイに接続
6 本 の Serial ATA ケーブ ルを
マザーボード上のポートに挿し、
内部ベイ側には 5 本分挿してお
く。残りの 1本 は、OS の イン
ストール時に光学式ドライブへ
接続する。
右側面のフックにまとめたケーブルをマザーボードベース下から引き出し、ピン
ヘッダーのそれぞれの位置に接続する。
最強テク
ケーブルには番号を振っておく
どのポートからどの内
部 ベ イに 接 続してい
るか が 分 か るように、
Serial ATA ケーブルの
コネクターに番号を付
けておくよい。トラブ
ル 時 に、 ど の HDD を
交換すればよいかすぐ
に分かる。
Serial ATAケーブルもまとめる
6 本ものケーブルをそ
のままにしておくとケ
ース内部が雑然とする。
電源ケーブルと同じよ
うに結束バンドで簡単
にまとめておくとよい
だろう。
衝撃で HDD が手前側に抜けて
しまわないよう、HDD を挿し込
むスリットをふさぐアルミバー
を上に引き上げてねじ留めする。
HDD を追加するときはアルミバ
ーによる固定を解除する。
HDDを内部ベイに固定する
挿し込み用スリットを閉じる
プラスチック製のレールで HDD を挟み、専用ねじでレ
ールを固定する(上)
。あとはその状態の HDD を前面か
ら内部ベイに挿し込むだけでよい。
完成
OS のインストールが終了したら
最強テク
光学式ドライブを取り外し、両
側板や前面パネルを戻して組み
立て作業は完了だ。内部が広い
ので余裕を持って作業できる。
作業の難易度は低めで、誰でも
問題無く組み立てられるだろう。
光学式ドライブは一時的に接続
サーバー用途だと光学
式ドライブはほぼ使わ
な い。OS の イ ン スト
ール時だけ使い、終わ
っ た ら Serial ATA ケ
ーブルを内部ベイにつ
なぎ直しておこう。
NIKKEI WinPC 2012.10
特別付録
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最強マシンの検証
Windows Home Server 2011をインストールする
インストールの基本的な作業は Windows 7とほぼ同じだ。ベースとなっ
てい る OS は Windows 7と共 通 のカ
ーネルを採用する「Windows Server
2008 R2」であり、デバイスドライバー
は Windows 7用が使える。
サーバー機能のセットアップでは、イ
ンターネットに接続する必要がある。
LAN のドライバーがインストールされて
いないときはその段階で作業がストップ
し、LANドライバーのインストールを要
求される。あらかじめ LANドライバーを
USB メモリーなどにコピーして準備して
LANドライバーがインストールされていない状態だと、サーバ
ー機能のセットアップ中に作業が中断する。
おこう。
あらかじ めダ ウンロードして お
い た Windows 7 64ビット版 の
LANドライバーを、デバイスマネ
ージャーからインストールしよう。
サーバー機能のセットアップが再
開される。
後はサーバーと連携したい PC
からサーバーに接続し、コネク
ターソフトをインストールすれ
ば作業は完了だ。
余ったHDDを追加して大容量ストレージを作る
Windows 7には、データを移し替え
ミックディスクに変換し、
「ディスクの拡
たり再インストールしたりすることなく、
張」で追加していくだけでよい。1TB と
今まで使ってきた HDD に新しい HDD の
容量を追加する機能がある。WHS2011
1.5TBのHDDを2台ずつ追加したところ、
6.5TB に拡張できた。
でも同様だ。今回作ったサーバーでは起
ただし、この機能を使ってストレージ
動ドライブ用の HDD に約1.8TB の空き
領域を拡張する場合、一部の HDD が故
があるが、余った HDD を追加すると、
障しただけで全ての領域のデータが読み
この容量を拡張できる。
出せなくなる。重要なデータは必要に応
作業内容は右のフローチャートの通り。
じてバックアップしておくのを忘れない
元の HDD と追加したい HDD をダイナ
ようにしよう。
1 HDD をダイナミックディスクに変換
最初に接続した HDD の管理方式を「ダイナミックディ
スク」に変換する。
2 HDD をサーバーに増設
前面パネルを外し、内部ベイに HDD を挿し込んで固
定する。
3 増設 HDD の領域を開放する
今まで使ってきた HDD だとパーティションが設定さ
れているはずなので、
それらを開放して空の状態にする。
4 D ドライブを拡張する
ディスクの管理画面から D ドライブを拡張し、追加し
た HDD を指定する。
HDD をさらに追加するには、 2 から 4 の作業を繰り返す
左の一覧には追加した HDD が「利用可能なディスク」として表
示される。ここから HDD を選んで「追加」ボタンを押すと、
「選
択されたディスク」に移動する。
「次へ」でウィザードを進める
とボリュームを拡張できる。
インストール直後のストレージ容
量。2TB の HDD が、システム用
60GB とその他の 2 個のパーティ
ションに分けられる。使えるのは
「1802.7GB」の方だ。
これらの作業は「管理ツール」から呼び出せる「サーバーマ
ネージャー」の「ディスクの管理」機能から行う。ダイナミ
ックディスクへの変換は、ディスク名の上で右クリックし、
「ダイナミックディスクに変換」をクリックする。
HDD を増設して領域を開
放したら、Dドライブ上で
1TB と 1.5TB の HDD
を 2 台 ず つ 追 加するこ
とで、Dド ラ イブ の 容
量は 6.5TB まで増えた。
右クリックし「ボリュームの
拡張」をクリックする。
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NIKKEI WinPC 2012.10
特別付録
最強マシンの検証
メディアサーバー機能を楽しむ
WHS2011は DLNA 2.0に準拠した
問わず再生できることになっている。実
メディアサーバー機能を搭載している。
際には、スマートフォンやタブレットで
「ビデオフォルダー」
や
「ピクチャフォルダ
は再生できない動画もあった。そうした
ー」に保存した映像や画像のファイルを、
ファイルは、
解像度は1280×720ドット、
家庭内ネットワークで接続した DLNA 準
形式は MPEG-4 AVC/H.264、ビット
拠の機器で再生できるのだ。
レートは8Mbps 程度まででトランスコ
最近は、スマートフォンやタブレット
ードすることで、再生できるようになる
でも DLNA 対応メディア再生ソフトが付
ことが多かった。
属していることが多い。これらのデバイ
この形式への変換なら、
Core i3-2100
スは、PC に比べてストレージ容量が少
T が備える「Quick Sync Video」機能
ない。DLNA によりストリーミングで各
に対応したエンコードソフトを導入する
種メディアを楽しめるようになるのは便
のも手だ。このソフトで事前に動画形式
利だ。
を変換して、サーバーに保存しておけば
WHS2011が備える DLNA 2.0 対応
よい。
のサーバー機能は、再生機器に合わせて
画像と音楽ファイルは、こうした準備
形式を自動で変更する「トランスコード」
作業は不要だ。一般的な形式なら、問題
をサポートしており、基本的には機器を
無く再生できた。
ア ッ プ ル の iPhone や iPad シ リ ー ズ に 対
応するアルファシステムズの「Media Link
Player Lite」。無料で利用できる。
サーバーに保存している動画を、どの程度の画質
で配信するかを設定する項目。
「低速」から「最良」
まで 4 段階で設定可能だ。
サーバーに設定して
いる共有フォルダー
のうち、どのフォル
ダーを配信の対象と
するかを設定する項
目だ。
Android OS に対応する Arkuda Digital の「ArkMC Media
Center」。アンドロイドマーケットでは 311円だ。
サイバーリンクの動画エンコードソフト「MediaEspresso 6.5」は、WHS に正式対応ではないが Quick
Sync Video を使ったエンコードが可能。
コンシェルジュの一言 microATX でコンパクトに作るのもお勧め
大手パーツショップ「ドスパラ」のコン
シェルジュを勤める堀江さんに、今回の
ようなプランでどういったパーツを選択
右が一押しの PC ケース「JMAX JX-FM500B」
。
microATX に対応した小型ケースながら、7 個の
ホットスワップ対応内部ベイを装備。取材時の価
格は 1万 1470 円。
するかを聞いてみたところ、microATX
をベースにしたコンパクトなシステムが
お薦めということだった。
PC ケースの一押しはマスタードシー
ド の「JMAX JX-FM500B」
。コン パ
クトだが7 個のホットスワップ対応内部
ベイを装備し、HDD の拡張性は十分。
ただ、microATX 対応マザーボードで
Serial ATA ポートが6個より多い製品は
少ない。7個の内部ベイを生かしたいなら、
Serial ATA ポートの拡張ボードを追加
するとよいのではないか、とのことだ。
PC-Z60B と同じく、2 個の 12cm 角ファンを内部
ベイのすぐ近くに装備しており、多数の HDD を搭
ドスパラパーツ館
■ URL:http://shop.dospara.co.jp/
pc/pkn/
■ TEL:03-6866-7224
■営業時間:11:00 ∼ 20:00(年中無休)
載したサーバーでも安心して使えるという。
NIKKEI WinPC 2012.10
特別付録
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発行人
藤田 憲治
編集長
江口 悦弘
編集
日経WinPC編集
執筆
SPOOL(舟橋 亮人)、竹内 亮介
写真
スタジオ キャスパー
アートディレクション
Concent, Inc.(青松 基)
表紙デザイン
Concent, Inc.(青松 基)
広告部長
金子 明弘
販売部長
吉村 隆之
※本書は主に日経 WinPC で連載した記事を再構成しました。
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