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精子形成 精子変態

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精子形成 精子変態
配 偶 子 形 成 ①
精子形成
精子変態
(7)
配偶子
gamete
配偶子形成
gametogenesis
始原生殖細胞 primordial germ cell (PGC)
生殖原細胞
gonium (pl. gonia)
精原細胞
spermatogonium (pl. spermatogonia)
卵原細胞
oogonium (pl. oogonia)
生殖母細胞
gametocyte
精母細胞
spermatocyte
卵母細胞
oocyte
精細胞 (精子細胞)
spermatid
精子
spermatozoon (pl. spermatozoa) , sperm
卵(子)
ovum (pl. ova)
精子形成
spermatogenesis
精子変態(完成) spermiogenesis
卵(子)形成
oogenesis , ovogenesis
マウス胚の例
アルカリ性ホスファターゼ活性の高
い細胞として出現(7.0dpc)を認
識した後、移動期を経て定着した
生殖巣原基が、形態的に雌雄判別
可能となる時期(12.5dpc)までの
生殖細胞を 始原生殖細胞(PGC)
と呼ぶ。
生殖巣原基が卵巣原基である場
合、そこの生殖細胞を 卵原細胞、
精巣原基であるならば 精原細胞
と呼ぶ。卵原細胞、精原細胞を合
わせて生殖原細胞 ( gonium, pl.
gonia ) と総称する。
生殖原細胞が減数分裂に入ったな
らば、生殖母細胞 (gametocyte )
( 卵母細胞、精母細胞)と呼ぶ。
減数分裂meiosis
(成熟分裂 or 還
元分裂)
PGCは精巣に定着し
精原細胞と呼ばれ、体
細胞分裂(mitosis)を
繰り返して増殖する。
その後、増殖をやめ成
長し、1次精母細胞と
なる。
この細胞はほぼ2倍の
サイズであり、成長の
間にDNAも複製され、
核相は4nである。
その後、2回分裂を行
い、2次精母細胞を経
て、単相 n(haploid)
の4個の精細胞となる。
この過程が、減数分裂
で、配偶子形成時に
のみ見られる分裂であ
る。
第一分裂前期
第一分裂前期は、染色体
の形状から5段階に分けら
れる。
細糸期 leptotene
2nの染色体が細い染色質の
糸として見える
合糸期 zygotene
相同染色体が対になって接着
する
厚糸期 pachytene
対をなした染色体が互いに螺
旋状に巻き付き、太く短くなる。
相同染色体が結合したもの(2
価染色体)。
複糸期 diplotene
染色体が分離し、相同染色体
が離れる。
移動期 diakinesis
染色体が収縮して太くなる。
卵形成、精子形成どちらも
この時期までは同じ。
一次精母細胞中期では
核膜が消失。相同染色
体が赤道面に並ぶ。
後期では、染色体は2
方向へ分離するため、
染色体数は半減し、
2個の娘細胞(2次精母
細胞)となるが、核膜を
生じることなく、第2減数
分裂中期に入る。
各娘細胞は通常の体細
胞分裂と同様に分裂し
て、最終的には4個の
精細胞(単相 n ) とな
る。
精細胞はまだ卵と合体
することは出来ない。
細胞間橋が省略されて
いる
哺乳類の精子形成
精子分化の進行はランダムに行わ
れるのではなく、脊椎動物では、異
なるステージの間で厳密な時間的・
空間的関係が存在する。
精原細胞は、繰り返し体細胞分裂に
より増殖を繰り返す。不完全な細胞
質分裂により形成される細胞間橋
(cytoplasmic bridge)によりお互いが
つながれており、クローンを形成する。
その後の分化の過程においても細
胞間橋は保持される。
参考
ラット精巣
rete
testis
tunica
albuginea 白膜
epididymis
ductuli
精巣網
精巣上体
efferentes
精巣輸出管
tubulus
rectus
直細管
seminiferous tuble
精細管
interstitial
tissue
間質
哺乳類の精細管断面
哺乳類では、精細管はセルト
リ細胞からなる管状の構造物
で、セルトリ細胞同士の間に
密着結合(tight junction)
が存在し、内側(adluminal
compartment内腔側)と外側
(basal compartment基底部
側)を隔てる血液・精巣関門
(blood-testes barrier)を形
成している。この関門によっ
て精細管の内側は血液やリ
ンパ液などの循環系から隔
離されている。精原細胞や前
細糸期、細糸期の精母細胞
は関門の外側にいるが、分
化するにつれて内側に入り
込む。即ち、減数分裂が開
始されるまでは関門の外側
にいる。関門の完成はラット
では生後16 ∼ 19日、ヒト
では4 ∼ 5歳。
参考
哺乳類の精細管断面(セルトリ
細胞を省く)
精原細胞や前細糸期、細糸
期の精母細胞は関門の外側
にいるが、分化するにつれて
内側に入り込む。即ち、減数
分裂が開始されるまでは関門
の外側にいる。
分化の進行を2つの座標軸で考
える。精細管の長軸方向をX 軸、
精細管の断面において基底膜か
ら中心に向かう方向を Y 軸とす
る。
生殖細胞は分化するにつれて、
一つのセルトリ細胞に接着しつつ、
Y軸のプラス方向(精細管断面の
中心)に移動する。この過程が連
続的に起こるため、ある時刻に見
るといくつかのステージが同時に
一つのセルトリ細胞に密着して存
在する。
参
考
Y軸方向のいくつ
かの異なるステー
ジの細胞の組み合
わせを1セットとす
ると、ラットでは形
態学的に14のセッ
トが存在し、14の
異なるセットを経
て元の組み合わ
せに戻るまでを精
細管サイクル
(seminiferus
cycle) と呼び、約
12日半を要する。
A1型精原細胞か
ら成熟精子が分化
するまでに約4サイ
クルを要するので、
合計48日を要す
ることになる。
ラットの精子形成サイクル
哺乳類の精子形成サイクル
分化の進行を2つの座両軸で考
える。精細管の長軸方向をX 軸、
精細管の断面において基底膜か
ら中心に向かう方向を Y 軸とす
る。
生殖細胞は分化するにつれて、
一つのセルトリ細胞に接着しつつ、
Y軸のプラス方向(精細管断面の
中心)に移動する。この過程が連
続的に起こるため、ある時刻に見
るといくつかのステージが同時に
一つのセルトリ細胞に密着して存
在する。
X軸方向には、Y軸方向の異なる
分化ステージごとに連続的な分化
ステージが存在する。
連続したステージが波のように配
列しているので、精細管上皮波
(wave of seminiferous
epithelium)と呼ばれている。この
波はある1点での時間変化と同じ
で、精巣網で始まり、末梢方向へ
進む。
Y軸方向のいくつかの異なるステージの細胞の組み合
わせを1セットとすると、ラットでは形態学的に14の
セットが存在し、14の異なるセットを経て元の組み合
わせに戻るまでを精細管サイクル(seminiferus
cycle)と呼び、約12日半を要する。A1型精原細胞か
ら成熟精子が分化するまでに約4サイクルを要するの
で、合計48日を要することになる。
参考 精細管のX軸
精細管の長軸(X軸)上のローマ数字
表記のsegments。精細管基部は精
巣網の直近にあり、精巣網から降順
の数字となる。一連のシリーズの終わ
り(stage Ⅰ)に達したとき、stage
ⅩⅣから降順で始まる。Segmentは、
異なる数字表記で等しくないと同様
に同じ数字表記でも等しくない。
Waveの一波はmodulationの有無に
関わらず精細管の長軸にそってcycle
の全stageを内包していて、識別でき
る。subsegmentsは、segmentⅩⅣの
長軸上にあり、subsegmentⅩⅣa は
MeiosisⅠの減数分裂像(metaphase,
anaphase, telophase)を、
subsegment ⅩⅣb ではsecondary
spermatocytes を、subsegment
ⅩⅣc ではMeiosisⅡ
の減数分裂像を持つ。Segmentの降
順のなかのmodulationについて。た
とえ、segmentの順序が数が小さくな
る順に並んでいることが明白であっ
たとしても、その順が逆転している部
分が挟まれ、結果としては本来の数
が降りてゆく順に戻る。このsegment
の数が逆転する部分がmodulation。
精巣・卵巣の下降
生殖巣原基は、腹腔内の後腹壁の中腎隆起
の内側に、これと並んでで得きる堤防状の隆
起(生殖隆起、生殖堤)として出現する。まだ
生殖細胞(PGCs)は移住して来ていない。こ
の生殖巣は性未分化のもので、遺伝的な性
に従って卵巣・精巣となる。当初は縦長の大
きなサイズであるが、発達の過程で中央部
のみが残っていくかたちで分化する。
ヒトでは、腹腔内にできた卵巣・精巣は、胎
仔期中にその位置を変え、下降して、生体に
見られるような場所と形状をとって行く。卵巣
では、骨盤腔まで下降し、精巣ではより下降
し、腹腔から鼠径管を経て下降し、陰嚢内に
収納される。
卵巣にも、精巣にも、その下端から卵巣導帯、
精巣導帯が形成され、これが生殖巣の下降
に関与するとされるが、他の因子、特に精巣
下降には男性ホルモンが関与するとされて
いる。
ヒトでは、腹腔内や鼠径部に留まったものを
停留精巣(睾丸)と呼び、生殖細胞が死滅し、
男性不妊の原因となる(ヒトやマウスでは
35 ℃以上の温度では、生殖細胞が死滅す
る)。
配偶子形成②
卵形成(卵子形成)
(7)
始原生殖細胞(PGC)は生殖
巣へ移動中も分裂を繰り返
し、生殖巣に侵入後も分裂
を繰り返し多数の生殖原細
胞(卵の場合は卵原細胞)と
なる。この分裂を繰り返す過
程を増殖期と呼ぶ。
哺乳類では、卵原細胞は若
い胚の時期にのみ分裂にて
数を増やすが、精原細胞と
は異なり、胚の時期に増殖
を止め、減数分裂に入り、
一次卵母細胞となる。
一次精母細胞の場合と異な
り、減数分裂の結果、2nの
核相を持つ一次卵母細胞
は連続して2回の細胞分裂
により4個のnの核相をもつ
卵とはならず、1個の卵の
みを生じ、残りの3個(普通
は2個)は極体となる。
極体(polar body)形成
一次卵母細胞の核は大型で卵核胞
(germinal vesicle)と呼ばれるが、
核分裂によって小型の核に変わる。
この現象を卵核胞の崩壊
(breakdown)と呼ぶ。
これに続く細胞質分裂(cytokinesis)
は、分裂装置が卵母細胞の表層近
くに生ずるため、細胞質の不等分
裂がおこり、1個の大型の二次卵
母細胞(核相はn)と1個の微小な娘
細胞(核相はn, これを第一極体と呼
ぶ)が生ずる。続いて起こる第二
成熟分裂においても同様な不等細
胞質分裂が起こるため、その結果
1個の大型の卵と1個の第二極体
が生ずる。つまり、減数分裂によ
り1個の卵と2個の極体が形成さ
れる。
一部の動物(ヒト、ゴカイ、サカ
マキガイ)をのぞいて、一般には
第一極体は分裂しない。
極体は生殖に関与せず、死滅、吸
収される。
一般的な脊椎動物の
卵巣の構造
卵原細胞・卵母細胞を常に密
接に取り囲む補助細胞の層が
ある。この細胞層は動物によ
り名称が異なる。また、形成
過程の卵と補助細胞は、支持
細胞(supporting cell)と呼
ばれる別の細胞に囲まれてい
る。支持細胞はホルモンの合
成、卵を包む層の形成、成熟
した卵の卵巣からの放出等に
関与している。
卵母細胞が蓄積する物質の多
くは、他の器官で合成され、
循環系により卵巣に輸送され、
卵母細胞にはいる。ここの選
択的取り込みには、卵自体に
も分子の取り込みや貯蔵の機
構があるが、補助細胞や支持
細胞が関与している動物種も
知られている。
家畜における卵母細胞および卵胞の発達過程
家畜などの哺乳類の卵巣
(卵胞形成)
卵母細胞は第一減数分裂を開始し、
一次卵母細胞となり第一減数分裂
前期の細糸(レプトテン)期、接合糸
(ザイゴテン)期、太糸(パキテン)
期、複糸(ディプロテン)期とすすみ
、ここで一旦休止する。ディプロテン
期に達した時点で、一次卵母細胞
は生殖上皮の細胞に包まれてゆく。
生殖上皮はやがて濾胞(上皮)細
胞(顆粒膜(層)細胞)となるが、
これらの細胞は体細胞系列の細胞
である。体細胞系列と生殖細胞系列
の細胞からなるこれらの胞状の複合
体を濾胞(卵巣濾胞、卵胞 (follicle))
と呼ぶ。初期には一層の濾胞上皮細
胞で覆われ、その外側を基底膜が覆っている (原始濾胞 primordial
follicle と呼ぶ)。
卵形成が進行するにつれて濾胞上皮は扁平状から立方状になり、外周を基底膜で包まれた卵胞、
この段階の卵胞を一次卵胞 ( primary
follicle ) と呼ぶ。
一次卵母細胞が合成する糖タンパクを主成分とする膜である透明帯が不連続に形成されはじめ、
やがて全周を取り囲むとなる。表層粒も一次卵母細胞が発育する間に形成される。当初細胞質
中に広く分散しているが、後に卵母細胞表層に位置するようになる。
家畜などの哺乳類の
卵巣 (卵胞形成)
やがて、濾胞上皮細胞は多層
化し顆粒膜(granulosa)と呼ば
れる。多層の濾胞上皮の一部
に、濾胞液を含む小腔(卵胞
腔 folliclular
antrum )
が形成され、より大型の卵胞
(二次卵胞)へと発達してゆ
く。二次卵胞初期に、基底膜
の外側に卵胞膜が形成される。
卵胞膜内には血管が侵入して
いるが。基底膜内側に侵入す
ることはない。発達した卵胞
では、基底膜の更に外側を内
外の莢膜(theca)(キョウマ
ク)が包む。内側の莢膜層は
毛細血管に富み、外側の膜に
は、コラーゲン繊維と
fibroblastsが豊富に分布する。
家畜などの哺乳類
の卵巣
胞状卵胞(三次
卵胞、グラーフ
卵胞)
卵胞が更に発達す
ると、顆粒膜細胞
間の所々に液で
満たされた間隙が
出現し、互いに合
体して卵胞腔が形
成される。卵胞腔
が拡大するにつれ
て、一次卵母細胞
は、卵胞の一方へ
押しやられ、周囲
の顆粒膜細胞と共
に卵胞腔へ突出し、
卵丘と呼ばれ、これを構成する顆粒膜細胞を卵丘細胞と呼ばれるようになる。卵胞腔
を満たす卵胞液には、卵胞壁の細胞により合成された糖タンパク質やステロイドホル
モンを含み、一次卵母細胞の減数分裂の再開を抑制する因子も含まれる。大きな卵胞
のエストラジオールの、排卵直前ではプロジェステロンの濃度が高い。ただし、卵
巣内にて十分に発育した一次卵母細胞に精子を加えても受精は起こらない。卵母細
胞は成熟の過程を経る必要がある。
(参考)
卵胞(卵巣濾胞、濾胞)(follicle)の発達過程
家畜などの哺乳類の卵
巣 卵母細胞の成熟
第一減数分裂前期複糸(ディ
プロテン)期にて減数分裂を
休止し、成長発育過程を終え
た一次卵母細胞は、下垂体
からのホルモン(黄体形成
ホルモン(LH, Luteinizing
Hormone ) 刺激によって第
一減数分裂を再開し、成熟
の過程に入る(第二減数分
裂中期に至って受精可能と
なるまでを成熟の過程と呼ぶ)。性成熟に達した雌は、性周期ごとに血中のLH濃度の急激な上昇と減
少(LHサージ(surge))が起こる。胞状卵胞内で十分に発育した一次卵母細胞の一部が、これに反応し
て成熟を開始する。ディプロテン期の一次卵母細胞は、LHサージを受け、染色体が短く太く凝集し(移
動期)、核小体、卵核胞が消失、各相同染色体は対になって紡錘体の中央部に配列(一次卵母細胞と
卵丘細胞の突起との結合が解離はじめる)(第一減数分裂中期)、続いて染色体が紡錘体の両極へ
引き寄せられる(第一減数分裂後期)、極端に偏った不等分裂がおこり、半数の染色体と少量の細胞
質を含む第一極体が、透明帯と卵母細胞との間隙(囲卵腔)に放出される。第一極体を放出した後の
卵母細胞を第二卵母細胞と呼び、これは直ちに第二減数分裂を開始し、速やかに前期を経て中期と
なり、ここで再び減数分裂の休止期に入る(この段階の卵母細胞内には、紡錘体が形成され、姉妹染
色分体は紡錘体の赤道板上に配列)。この状態で、卵母細胞は排卵され、精子の侵入により再び減
数分裂を再開し、姉妹染色分体が分離して半数体となり、減数分裂は完了となる。
家畜などの哺乳類の卵巣 排卵 ( ovulation )
卵胞から卵母細胞が排出されることを排卵と
いう。ほとんどの哺乳類では、第二減数分裂
中期まで進んだ第二卵母細胞が排卵される
(第一減数分裂中期の一次卵母細胞が排卵さ
れるイヌやキツネでは、排卵後第一極体の放
出となる)。各性周期において排卵される卵数
は種によりほぼ決まっていて、且つ排卵は、LH
サージ後の時間は、種により決まっている。
FSH( follicle stimulating hormone, 濾胞刺
激ホルモン)サージ(LHサージとほぼ同時に起
こる)の刺激により、卵胞内壁の顆粒膜細胞と
卵丘細胞がヒアルロン酸を分泌し、細胞間が
緩む。LHサージの刺激により卵巣の血流量が
増加、毛細血管の透過性が亢進する結果、胞
状卵胞は著しく膨張し、卵母細胞と卵丘細胞
は、卵胞腔内に浮遊する。卵胞は卵巣から外
側へ突出。その頂上部に透明な部分(スチグ
マstigma) が形成され、徐々に面積が広がり、
やがて破裂し(LHの刺激により産生された蛋
白質分解酵素やコラゲナーゼにより細胞間の
結合が緩むため)、二次卵母細胞は、卵丘細
胞に囲まれた状態で卵胞液と共に腹腔内に排
出される。
排卵後卵胞は黄体となる。卵胞腔内はやがて
顆粒膜細胞と卵胞膜細胞が増殖、大型の黄
体細胞となり黄体が形成される。
ヒト胎児の卵巣
ヒトでは、妊娠3週で数百個、1ヶ月の胎
児の発生中の卵巣では1700個となった
PGCは、妊娠6週頃に生殖隆起に定着
し始め、妊娠5ヶ月で700万個にまで増
殖するが、その後、アポトーシス
(apoptosis,) により、雌雄共に急速に
減少することが知られている。
出生時の胎児卵巣には、約200万個
の一次卵母細胞が残存している。そ
の後、更にその数を減少し続け、思
春期には30万個となる。
膨大な数の卵胞の退化(卵胞閉鎖
(follicular atresia)は他の動物種でも
見られる。
一般には、年間10∼15個の受精可
能な卵が排卵され、排卵可能な年齢
が30∼35年続くとして、一生の間で
わずか300∼500個にすぎない数の
卵母細胞が受精の可能性を秘めて
排卵されることになる。
apoptosis と necrosis
apoptosis : アポトーシス、アポプトーシス、細胞自滅
「apo (分離) ptosis (下降)」ヒポクラテス(古代ギシャ)
初期に起こる核DNA断片化を特徴とし、核の凝縮、細
胞質の萎縮、大きな水泡状の細胞突起がみられ、や
がて、核も細胞も断片化して分解する。
(≒ programmed cell death
プログラム死 )
プログラム死はアポトーシスと共通性のある様式で起こるこ
とが多い。プログラム死では、加水分解酵素類を含む細胞
小器官であるリソゾーム(lysosome)による自己貪食(autophagy)観察されるが、アポトーシスでは見られない)
necrosis :
ネクローシス 、 細胞壊死
毒物、酸素不足、酸・アルカリなどにより、細胞表面に多数
の水疱が生じ、水の流入により細胞の膨潤・ミトコンドリアの
膨潤が起こり、結果エネルギー枯渇により細胞死に至る。
卵胞閉鎖 (濾胞閉鎖)(atresia)
卵胞が排卵に至らず、卵母細胞と卵胞細胞の
退行変性を特徴として退化する現象。その
過程に入った濾胞を閉鎖卵胞(閉鎖濾胞)と
いう。例えば、ヒトの初生児の卵巣には3万
∼10万の原始卵胞があるが、その大部分は
閉鎖に陥り、排卵を完了するのは一生の間に
500に満たない。これは特に哺乳類で一般
的な生理現象である。閉鎖は卵胞の種々な
発育段階で起こり、閉鎖後の成り行きも一様
でない。あるものは内莢膜細胞に脂肪顆粒
が蓄積し黄体類似の閉鎖黄体となり、あるも
のは全く消失する。(岩波生物学辞典 5版)
一次卵胞及び二次卵胞では、顆粒膜細胞は正常のまま一次卵母細胞の細胞質が萎縮
退行することが多い。これに対し、胞状卵胞では、まず顆粒膜細胞が退行の兆候を示す。
死んだ顆粒膜細胞は卵胞腔内に遊離し、卵胞膜も退行ないし消失する(上図)。
卵胞閉鎖の原因としては、一次卵母細胞の遺伝的な欠陥や代謝的傷害、卵胞への血液
供給量の低下による栄養不良、顆粒膜細胞の異常などが考えられている。
卵胞閉鎖の過程は、性腺刺激ホルモンおよびステロイドホルモンにより支配されていると
考えられているが、その制御機構は不明の部分が多い。
ヒト卵巣内の卵母細胞の発生
(卵母細胞の成長)
atresia folliculi : 濾胞閉鎖 (卵巣の濾胞が排卵に至らず退化すること)
参考
受 精
(8)
受精
fertilization
授精
insemination
(媒精)
受精
fertilization
生殖系列の細胞は世代を継いで生
き続ける細胞であるが、個々の細
胞を見ると、生殖細胞の卵と精子
は、受精を行わない限りは死滅す
ることになる。
精子が卵内に入ることを便宜上受
精と呼ぶが、受精とはあくまでも、
発生開始の条件となる精子核と卵
核の合体が行わなければ受精が成
立したことにならない。
繁殖期に出会った卵と精子は、互
いに同種の動物の配偶子であって、
且つ性が反対であることを認識す
ると、精子は卵内に入り、それぞ
れ雄性前核、雌性前核に変わり、
両前核は合体して接合子核となる。
この全過程を含めて 『受精』
という。
配偶子細胞の合体は、卵細胞質の
活性化を誘起し、父系遺伝子と母
系遺伝子の両方を新しい個体に伝
える手段である。核融合に続いて
卵割が開始する。
通常の状態で、動物によって、1つの卵に1つ
の精子しか入らない場合 (単精monospermy ) と、1つの卵に多数の精子が入る
場合 (多精 polyspermy )がある。
多精受精の種(例えばニワトリ)の場合でも、
雌性前核と合体する雄性前核は1つである。
単精受精をする種では、多精となった場合に
は、卵割は開始するが途中で停止し、発生は
進まない。
単に精子と卵が共存すれば受精するとは限らない。
精子も卵も互いに出会って相互作用を開始し始めた
時点から、種それぞれに特有の様々な変化を起こし
て受精が成立するため、受精の様子は動物種によっ
て様々であるが、基本的に共通な原則がある。例え
ば、
・卵にはいる精子は成熟した精子である。
・精子を受け入れる卵の成熟度は種よっ
て一定している。
・放出された精子をそのまま卵に注入し
ても受精は成立しない。精子は卵
の外側表面から侵入する必要がある。
・ 侵入した精子の成分のうち、後の胚
の発生に役立つものは精子の核と
中心体(注意 但し、中心体が卵内に入
る種と入らずに排除される種がある)。
受
精
生殖系列の細胞である卵と精子
は、受精により次の世代の新し
い個体として生き続けることに
なる。様々な生物にとっての受
精には、基本的な共通する原則
がある。
しかし、陸生、海産、淡水産、
といった様々な生活様式に適応
した、それぞれの種に特有の受
精の様式を持ち、その方法は極
めて多様であると同時に、極め
て多様な形態や構造を持ってい
る。
しかし、受精に関して、極めて
限られた生物のみが詳細に研究
されているに過ぎない点に注意。
「精子の卵への接近」「精子に
よる卵の被膜への接触・通過」
「精子の卵細胞膜への接触・膜
融合」に伴い精子側の反応と卵
子側の反応、それぞれが起きる。
受精時の精子の変化
自然の状態では、精子は卵の外側表面
(卵の被膜)から近づいて被膜を通過し、
卵の細胞膜に接し、膜融合を起こし、
精子の核や細胞質が卵内に移行すると
いう形でおこなわれ、受精が成立する。
動物では体内受精、体外受精を含めて、
精子は何を頼りに卵に近づいてゆくの
か?
Hydrozoan
Campanularia flexuosa
ヒドロ虫の精子は卵から出る物質に対
して 走化性(chemotaxis)を示すことが
知られている。
精子の卵への走化性を示す報告は少な
く、多くの動物では、体内受精、体外
受精のいずれのばあいでも、卵と精子
の出会いは全くの偶然と考えられてい
る。
ウニの受精
ウニ卵は細胞膜の外側に卵膜が密着し、
その外側にゼリー層がある。排卵され
た卵では、ゼリー層は海水中で少しず
つ溶ける。卵に近づいた精子はゼリー
物質に影響を受け、精子の凝集反応、
活性化、先体反応の三つの現象が起き
る。
①精子の凝集反応: ゼリー物質の濃
度に依存して、無数の精子が集まって
巨大な凝集塊を作る現象と、先体反応
を起こした後の精子同士がその先体で
接着する現象がある。ゼリー層による
余分な精子の排除に役立つと考えられ
る。
②精子の活性化 :ゼリーから単離さ
れたアミノ酸10残基程度のオリゴペ
プチド、アミノ酸配列も決定済み。こ
れらの低分子ペプチドは、H+の流出
を引き起こし、結果として精子内をア
ルカリにすることや、このペプチドに
よるcAMPやcGMPの増加が精子の呼
吸及び運動性を増大させ、精子の卵へ
の接近を助けていると考えられる。
③精子の先体反応(acrosome reaction):
Caの共存のもとで先体が破れて起きる精子
の形態変化。受精における両配偶子膜融合の
ための前提として不可欠な反応。先体反応が
進むにつれて、先体突起は次第に伸び、先体
内にあった先体胞の物質は先体突起を覆う形
で先端に付着し、卵の卵膜と種特異的な結合
を起こしうる条件が整う。
④精子先体と卵膜の結合:
ウニの卵膜は不均一な糖タンパク質で、この
糖部分に精子先体由来の先体突起を覆うタン
パク質 bindin バインディンがレクチン様
結合で結合し、精子と卵の最初の結合が起き
る。精子の先体突起膜と卵細胞膜との結合は
非特異的に瞬時に起きるものと考えられる。
⑤卵の表層変化 :
精子が卵に結合すると卵の表層変化(cortical
change)が起きる。
卵表には細胞膜に接して表層粒(cortical
granule)がある。卵に到達した第一精子が卵
と結合すると、その部位から放射状に表層粒
の崩壊が始まる。
⑤
表層粒の崩壊
一つの表層粒の崩壊は、含まれるCaにより、
隣接する表層粒を崩壊するための刺激とな
る。トリプシン様タンパク質分解酵素、ペ
ルオキシダーゼ、Ca、受精膜硬化物質、
透明層形成物質などを含む表層粒は、崩壊
すると含有物デラミナーゼ(delaminase)が卵
膜と細胞膜を分離する作用から、卵膜は精
子貫入点を起点として次第に卵表から離れ
てくる。その後、ペルオキシダーゼ
(peroxidase)の作用で硬化し、受精膜が形成
される。
⑥
多精拒否
(polyspermy prevention)
環形動物、棘皮動物、硬骨魚類、両生類無尾類、
哺乳類などでは、卵に侵入する精子の数も一つに
限られる受精の様式を単精(monospermy)と呼び、
二つ以上の精子の侵入を防止する仕組みを多精拒
否という。単精受精動物では、二つ以上の精子が
入ると卵割が不規則となり、発生が停止し死滅する。
一部のウニでは、二つの独立したメカニズムによ
り多精拒否されている。一つは、急速に作動する
が、一時的な
fast block to
polyspermy
(早い多精拒
否)であり、
もう一つは、
成立するまで
に時間がか
かるが完全な
slow block to
polyspeermy
(遅い多精拒
否)である。
Ca++ wave
受精波?
受精波
(山本時男、
椙山正雄):
精子、或いは人為的に与
えられて刺激など、これ
らは卵細胞質に一種の興
奮を起こし、この興奮が
波状に(受精波として)
卵表層を伝搬し、この波
の通過によって卵の表層
に散在する表層胞や表層
粒が崩壊を起こす とい
う説。
魚類の受精
硬骨魚類の卵は、比較的固い卵
膜(chorion)に包まれていて、ゼリー
はない。卵膜の動物極側には精
子がやっと通れる程度の小孔(卵
門 micropyle )が開いている。
卵膜の内側に細胞膜があり、その
下に卵表全体に渡って細胞質と
直径10μmnの表層胞がある。卵
内の表層細胞質には小油滴が散
在する。硬骨魚類精子には先体
はなく、細胞膜が外表を覆い、球
形の頭部とミトコンドリアのある
短中片と長い尾部からできている。
雌の産卵後雄はすぐに精子を
放出し受精させる。卵門を通り細胞膜に接した精子は、卵表面
にできる受精丘によって食作用的に取り込まれ(phagocytosis),
その後で卵細胞膜と精子の細胞膜の融合が起きる。一つの精
子が入ると卵膜が膨張し、卵門が小さくなり、表層胞の崩壊に
より、細胞膜と卵膜の間に表層胞物質が放出され、囲卵腔が形成
される。卵内に突出した受精丘は卵門に栓をする形で取り残さ
れる。
卵膜を除去した魚卵の受精
魚卵では、卵膜の卵門が物理
的多精拒否を行うため、卵膜
除去卵を媒精すると、精子数
が多いと容易に多精となり、
卵自体には多精拒否機構はな
い。表層胞の崩壊は動物極と
は限らず、精子の貫入点から
始まる。しかし、精子貫入点
とは無関係に細胞質は常に動
物極に集まって胚盤を形成し、
小油滴は植物極へ移動する。
卵の動植物極軸は初めから決
まっていて、卵膜の除去や精
子の貫入によって影響を受け
ない。遠心により表層胞を移
動させても動植物極軸は変わ
らない。
卵内に入った精子頭部は膨張
して雄性前核となり、卵核胞
は第二成熟分裂を終え雌性前
核となる。両前核の融合は動
物極の胚盤の中心で起こり、
受精の過程を終了する。
無尾両生類(カエル)の受精
カエルの卵は透明なゼリー層に包まれていて、受精
の不可欠要素である。体腔卵はゼリー層を持たず、
第一成熟分裂前期で卵核胞を持つ。産卵卵は、第二
成熟分裂中期にまで成熟が進み、幾層ものゼリー層
に包まれた子宮卵が産卵されたもの。
但し、このゼリー層が含む塩分濃度は極めて高いの
で精子は運動できないが、わずか数分間水に浸さ
れた時には塩濃度が至適濃度となり、逆に水に浸
されて時間が経つと精子はゼリー層に侵入できな
くなる。
無尾両生類(カエル)卵の多精拒否
一つの精子が入ると他の精子を排除する多精拒
否機構が働く。電気的機構と化学的機構がある。
膜電位の変化が精子の貫入を防いでいることは
確かであるが、これとは別に卵膜の外側で起き
る物質的な変化がある。
最初の精子が卵に陥入すると表層粒の崩壊が起
きるが、これは卵内に向かっては細胞質の活性
化を行い、卵外に向かっては囲卵腔と受精膜の
形成に働く。この受精膜の前身は卵膜である。
卵は輸卵管を通過する際、輸卵管直部で、卵膜
の表面に糖タンパクと思われる先体反応誘起物
質が沈着。次いで、輸卵管曲部でゼリー物質が
分泌され、ゼリー層が形成される。
精子の貫入によって崩壊する表層粒の中には糖
と反応するレクチン様物質が含まれていて、こ
れがCaの存在で卵膜とゼリー層の間に沈殿膜を
生じ、外側から卵膜を硬化させる。このような
卵膜の受精膜への変化が精子の貫入を防ぐ。
重要
哺乳類の受精
哺乳類精子頭部には核膜の外側に穿孔体が
あり、その先に先体が囲んでいる。精子は
精巣で成熟し、副精巣を経て射出される。
副精巣内の精子はわずかながら受精能があ
るが、 射出精子は受精能を失っている
(脱受精能 decapacitation)。これは、精子
が薄い被膜に覆われること、つまりアクロ
シン(蛋白質分解酵素の一種)が不活性化
されることによる。
哺乳類卵は細胞膜の外側を透明帯(zona
pellucida)に、その外側をヒアルロン酸から
なる基質の濾胞細胞が埋まった卵丘
(cumulus oophorus)で囲まれている。
精子が卵細胞に達するためには、卵丘を溶
かすヒアルロニダーゼと透明帯を溶かすア
クロシンが必要。(それには、結合型アク
ロシンとして蛋白質との複合体を切り離し
て活性化するとともに、プロアクロシンを
アクロシンに変える必要あり。)このよう
な生理的精子の活性化と精子表面の被膜除
去を受精能獲得(capacitation)という。
洗剤等で処理して、単に形態的に精子の被
膜や先体を壊しても、精子は受精する能力
を持っていない。
重要
受精能獲得・先体反応
受精能獲得は、精子が雌性生殖管を通る間に血清や濾胞液
によって引き起こされる。実験的には、pH3の酸性にすれ
ばアクロシンータンパク質複合体は切断分離し、pH5の酸
性で、プロアクロシンは徐々にアクロシンに変わり活性化
される。子宮から輸卵管を遡る間に受精能獲得を受け、輸
卵管先端に近い輸卵管膨大部で卵と出会い、卵丘に達する
と先体反応を起こす。
先体の細胞膜と先体外膜は所々で融合し孔があく(胞状化
vesiculation)。先体内容物(ヒアルロニダーゼ)は滲出し、
卵丘基質のヒアルロン酸を分解し、濾胞細胞は遊離し、卵
丘に精子の通路ができる。精子が透明帯に達する頃先体は
崩壊し、先体内膜と穿孔体が外面に露出。先体内膜には活
性を持ったアクロシンが結合。透明帯を頭部先端で溶かし
ながら卵細胞膜へ接近。透明帯を通過したところで運動性
を失い受動的になり、卵に横付けになり、卵の微絨毛に捕
獲され取り込まれる。
最初の精子と卵との間の膜融合が始まると、卵表層の表層
粒の崩壊がはじまる。その結果、第2以降の精子を排除す
る多精拒否機構が透明帯と細胞膜で働くようになる。表層
粒崩壊により放出されるプロテアーゼは透明帯の精子受容
体を切断し、パーオキシダーゼは透明帯を硬化させ精子貫
入を阻止する(透明帯反応 zona reaction)。
参考
カエル卵
(
背腹軸の決定)
カエル卵には一つの精子しか入らない。そして、
精子の貫入場所は動物半球に限られている。
アフリカツメガエルでは精子の貫入点の反対側に
灰色新月環( grey crecent ) ができる。これは精
子の貫入による卵表層の収縮と卵細胞質の移動に
よるもので、灰色新月環の生じた場所に将来原口
ができる。
未成熟卵は動物極と植物極を結ぶ卵軸を中心に放
射相称である。精子貫入によりそれが乱された結
果放射相称性を失い、左右相称となる。後に反対
側から陥入が起きて嚢胚(原腸胚)を形成する。
卵の動植物極軸はほぼ胚の頭尾軸に一致する。
陥入部位には将来神経板ができるため、この部位
は背側になり、精子貫入部は腹側となる。
精子貫入により背腹軸及び左右性が決まり、ほぼ
体の軸性が決定されるわけである。 この背腹軸
は細胞質の分布によるらしく、重力によって変更
が可能である。
アフリカツメガエルでは、精子貫入点と動植物極、
灰色新月環の中央を通る面が第一卵割面となる。
体の軸性 (極性) の問題について
卵には動植物極性があり、厳密にではないが、おおよそ体の頭尾軸と一致
する。 卵は動植物軸を中心に放射相称である。
それが体が形成されるにつれて、背腹の方向や内外の方向、左右性等が決
まってくる。
昆虫の卵は、受精前に頭尾の方向も背腹の方向も決まっている。
カエルの卵では、動植物極性は卵形成の時には既に決定しており、受精の
際の精子の侵入点によって背腹の方向性がきまる。この方向は重力によっ
て変更することができ、精子侵入による放射相称性の崩壊、細胞質の再配
置 によるものであろうと考えられている。
遺伝子の発現を研究テーマとする研究者間では、卵の極性や体の軸性も遺
伝子が決めているとする考え方が強い。昆虫の頭尾或いは背腹の形質を決
定する遺伝子の産物を注入すれば、注入部位の形質が変わって双頭の奇形
や腹側を欠き背側だけを持つ奇形等が生じることが分かっている。しかし、
これは遺伝子産物(mRNAやタンパク質)の影響であって、遺伝子そのもの
が発現するか否かは卵あるいは胚の極性(或いは場所)に従うものである。
その極性がまた母性遺伝子によって決定する という考え方がある。
この問題は重要であり、今後はどのような方向に発展するのか?
受精の意義とは?
最終目的は、「発生開始
の原動力となること」
である。
そのためには、父系の遺
伝子(精子核)と中心体
(哺乳類を除く)の卵内導
入 及び卵の物質代謝の
活性化 が最低限必要と
される。
多くの動物では、卵には動物植
物極性が決まっているだけで、
背腹極性、内外極性、左右性な
どは発生途上できまる。しかし、
昆虫の卵のように、受精前から
胚の頭尾軸、背腹軸、内外軸が
決定されているものや、カエル
のように、精子侵入が卵の背腹
極性を決定する場合もある。
単為生殖 (parthenogenesis 処女生殖 )
単為発生 (parthenogenetic development)
雌が雄と関係なしに単独で新個体を生ずる生殖法
をいう。卵が(受精することなく単独に)発生す
るという点で有性生殖に属する。
アリマキ、ミツバチ、ギンブナ、ある種のトカゲ
等では、卵のみで発生が進行し個体となることが
知られている。
これを自然単為生殖という。
また、未受精卵の無核の卵片を化学的或いは物理
的刺激によって人工的に発生を開始できるものも
ある。(例えば、ウニ。これを単為卵片発生
parthenogenetic merogony と呼ぶ)。このような、
人為的処理により卵に何らかの発生的変化が少し
でも進行すれが、これを人為単為生殖と呼ぶ。
単為生殖により発生をする場合でも、いろいろな
刺激により、発生或いは卵割を進行できるような
細胞質の活性化 が最小限の必要条件である。
ただし、精子が単独で発生する例は知られていな
い。
単為発生(鳥類)
ニワトリにおいて、単為発生が報
告された(1948)。系統により差
があり、暗色コーニッシュ(3.9%)、
暗色ベルツビル(6.4%)、淡色ベルツ
ビル(2.3%)は高めであったが、白色
レグホン(0.12%)、ロードアイラン
ドレッド(0.43%)、横斑プリマス
ロック(0.16%)であった。単為発
生したニワトリ胚はきわめて孵化
しにくいが、孵化例は3例報告され
ている。
七面鳥(ベルツビルスモールホワイ
ト種)で報告された(1953)。胚の性
は全て雄、染色体は2倍体、これ
は卵子が第2極体と再結合するこ
とによって起こったものと考えら
れた。当初の単為発生出現率は
17%、肉眼的に発生が認められて
たものの率は0.2%であった。その後
12年間にわたり単為発生の頻度の
高い方に選抜したところ、発現
の頻度は45%に達し、肉眼的に発生が認め
られた率も14%となった。しかし、孵化す
るものの率は低く、入卵数の1%程度、生
存率も低く、孵化した卵の25%が成熟した
が、生殖力のあるものは少なく、生殖力の
あるものは成熟したものの60羽中の25%で
あった。
1羽の単為発生の雄の精液を正常な雌に人
工授精したところ、受精率は39%と低かっ
た。
単為発生の個体は、遺伝子が完全ホモであ
るから、近親交配の極度に達した例である。
生理的多精
(physiological polyspermy)
貝類、昆虫類、軟骨魚類、有尾両生
類、爬虫類、鳥類などでは一つの卵
に多数の精子が入る現象が見られ、
『生理的多精』と呼ばれている。し
かし、多精の場合でも、雌性前核と
合体するのは一つの精子に由来する
雄性前核だけであり、他の精子由来
の核は退化する。
このような多精受精の動物では卵細
胞質は多精拒否機構をもっておらず、
卵に侵入した全ての精子核は膨潤し
て雄性前核を形成し、中心体は発達
して星状体を形成するが、ここまで
で、中心体は複製されることなく、
核質とともに退化する。つまり、多
精の動物の多精拒否は卵細胞膜には
なく、細胞質中にある。
しかし、詳細は不明である ( いく
つかの仮説が立てられている )。
⇔ parthological
polyspermy
卵 割
(8)
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