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アンモニア/Ammonia(7664-41-7)

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アンモニア/Ammonia(7664-41-7)
急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL)
Ammonia (7664-41-7)
アンモニア
Table
Ammonia
AEGL 設定値
7664-41-7
(Final)
ppm
10 min
30 min
60 min
4 hr
8 hr
AEGL 1
30
30
30
30
30
AEGL 2
220
220
160
110
110
AEGL 3
2,700
1,600
1,100
550
390
設定根拠(要約):
アンモニアは、アルカリ性の無色の気体で、腐食性と極めて強い刺激臭がある。臭気検知濃度は、
5~53 ppm である。アンモニアは、圧縮ガスや水溶液として使用される。また、家庭用洗浄剤や
肥料中に配合されたり、冷媒としても使用される。幹線道路輸送や鉄道輸送中の事故、製造施設
における偶発的な放出、農作業中の事故などによって、アンモニアへの曝露が起こる。
アンモニアは、水に極めて溶けやすい。また、発熱性があるため、粘膜など、湿った表面にアン
モニアが接触すると、水酸化アンモニウムと熱が発生する。アンモニアは、その腐食性と発熱性
のため、眼、皮膚、口腔や気道の粘膜に即時性の損傷(重度の刺激症状と熱傷)を引き起こす可能
性がある。また、その高い水溶性のため、気道の鼻咽頭領域で速やかに洗い流される。
アンモニアに関するデータは主に、症例報告、ヒトを対象とした試験、および動物における致死
試験や刺激性試験から得られたものである。症例報告は、量的な評価に使用するには貧弱であっ
たが、一方、ヒトや動物を対象とした試験には、AEGL 値を導出するのに有用な量的データが含
まれていた。
偶発的にアンモニアに曝露されて亡くなった人に関しては、信頼できる量的曝露データは得られ
なかった。アンモニアに高濃度(数値は不明)で曝露されて亡くなった人の症例が、1 件報告され
ている。他の症例報告でも、曝露量の推定値は示されていないが、高濃度のアンモニアが、気道(特
に気管気管支領域と肺領域)に重度の損傷を引き起こしたことが示されている。肺が損傷されて肺
水腫が起こると、死に至る可能性が非常に高い。損傷が気管気管支領域にまで及んだ場合には、
肺機能試験での成績低下、気管支炎、細気管支炎、肺気腫、気管支拡張を症状とする非致死的、
不可逆的、ないしは長期的な影響が生じた。機能障害が残らない可逆的な影響として、眼、咽喉、
気道の鼻咽頭領域に対する刺激が認められた。ヒトは、アンモニアの濃度が 5 ppm を超えるとそ
1
の臭気を感知できるようになり、50 ppm(10 分間)で極めて鋭い臭気を感じるようになる。ボラン
ティアをアンモニアに曝露した際に生じた影響は、30 ppm(10 分間)で軽微な刺激、50 ppm(10 分
間~2 時間)で眼、鼻、咽喉、胸部に対する中等度の刺激、80 ppm(30 分間~2 時間)で中等度~極
めて強い刺激、110 ppm(30 分間~2 時間)で極めて強い刺激、140 ppm(30 分間~2 時間)で耐え難
い刺激、500 ppm で極度の流涙と刺激であった。刺激性蒸気吸入に対する防御反応である反射性
声門閉鎖が起こった濃度は、21~30 歳の被験者では 570 ppm、60 歳の被験者では 1,000 ppm、86
~90 歳の被験者では 1,790 ppm であった。
動物における急性致死試験からは、
ラットの半数致死濃度(LC50)について、10 分間曝露での 40,300
ppm から、60 分間曝露での 7,338 ppm や 16,600 ppm の範囲の値が報告されている。マウスの LC50
については、
30 分間曝露で 21,430 ppm(この濃度ではほとんどの動物が 13 分以内に死亡している)、
10 分間曝露で 10,096 ppm、60 分間曝露で 4,230 ppm および 4,837 ppm という値が報告されている。
同一の曝露時間のデータを比較すると、アンモニアへの急性曝露に対する感受性は、マウスの方
がラットより高いことが示された(10 分間 LC50 値は、マウスが 10,096 ppm、ラットが 40,300 ppm
である)。致死濃度で最も低かったのは、気管内挿管によって曝露されたネコにおける 1,000 ppm
であった。ただし、この気管内挿管によって鼻咽頭領域での洗い流し作用が機能せず、気管気管
支領域への影響(気管支肺炎、気管支炎、細気管支炎、肺気腫)が増悪した可能性が高い。アンモ
ニアに致死濃度で吸入曝露されたラットでは、呼吸困難の徴候、眼や鼻への刺激、肺における出
血が認められたことが報告されている。また、アンモニアに致死濃度で曝露されたマウスでは、
眼や鼻への刺激の徴候に加え、振戦、運動失調、痙攣、発作、肺胞の病変が認められたことが報
告されている。マウスおよびラットにおける非致死濃度での影響として、鼻腔の呼吸上皮への軽
度の影響(マウスとラット)、呼吸数の減少(マウス)、眼刺激所見(ラット)が報告されている。30
分間の曝露に対するマウスの RD50(呼吸数が 50%減少する濃度)は、300 ppm と報告されている。
AEGL-1 値の導出は、MacEwen et al.(1970)の試験において、アンモニアに 10 分間曝露された被験
者 6 名中 2 名に軽微な刺激が認められた濃度(30 ppm)に基づいて行った。AEGL-1 値の導出に用
いるデータがヒトのものであるため、種間不確実係数は適用しなかった。アンモニアは、接触刺
激物質であることと、特に AEGL-1 の様な低濃度では、上気道で速やかに洗い流されるため、種
内不確実係数 1 を適用した。刺激が上気道に限局して起こると思われ、反応に対する個人差はな
いと予想される。アンモニアへの短時間の経鼻曝露に対する反応は、アトピーの被験者(喘息患者
を含む)と非アトピーの被験者で同様であり、また、運動中の被験者をアンモニアに曝露した際に
認められた影響は、肺機能の些細な臨床的変化のみである。アンモニアに対する反応は、喘息や
運動中の被験者と、喘息ではない被験者や休息中の被験者とで差異が無いと予想される。低濃度
のアンモニアによる上気道刺激は、曝露時間が長くなっても重症化することはないと予想される
ことと、アンモニアへの曝露時間が長くなると順応が起こる可能性があることから、時間スケー
リングは行わなかった。したがって、すべての曝露時間について、AEGL-1 値を 30 ppm とした。
AEGL-2 値の導出は、Verberk(1977)の試験において、非熟練者(アンモニアによる影響や研究室で
の試験に馴染みのない人)をアンモニアに 2 時間曝露した際に、眼や気道に「不快な刺激」が引き起
2
こされた濃度(110 ppm)に基づいて行った。被験者である非熟練者の反応には、眼刺激(「感じない」
ものから「不快な」ものまで)、咳、不快症状、咽頭刺激(「感知できるだけ」または「明確に感じられ
る」ものから「不快な」ものまで)があった。ただし、AEGL-2 値の導出は、最も感受性の高い非熟
練被験者の反応に基づいた。曝露終了後に影響が残ったという報告はない。また、肺機能は曝露
による影響を受けていない。根拠とした濃度より 1 段階高い濃度では、30 分間~1 時間後に、一
部の被験者が我慢できないとして退室し、また、2 時間まで我慢できた被験者はいなかった。ア
ンモニアは接触刺激物であり、上気道で速やかに洗い流され、知覚される刺激は、感受性の最も
高い非熟練者で生じた刺激より強くなることはないと予想されることから、種内不確実係数 1 を
適用した。この群でみられた反応の程度は、喘息患者を含む一般集団に起こり得る反応の程度と
同等であると考えられる。鼻症状やアレルギー性鼻炎と喘息との関係が調べられており、鼻炎は、
喘息の発症に先行することが示されている。また、アトピーの被験者(喘息患者を含む)とアトピ
ーではない被験者で、アンモニアへの短時間の経鼻曝露に対する反応に差異がないことが、試験
によって示されている。運動中の被験者を最大 336 ppm の濃度のアンモニアに曝露した際に認め
られた影響は、肺機能の些細な臨床的変化のみである。また、小児の 1 例では、極めて高い濃度
のアンモニアに曝露された成人の 1 例よりも重症度の低い影響しか認められていない。関係式 Cn×
t = k を用い、ここでは n = 2 として、5、10、30 分の曝露時間に外挿した。この関係式は、マウス
やラットの致死データに基づいている。10、30 分、1、4、8 時間の AEGL-2 値は、それぞれ、220、
220、160、110、110 ppm である。Verberk(1977)の試験において、刺激に関する最大重症度が 30
分間と 2 時間でほとんど変わっておらず、8 時間までの曝露では変わらないと予想されるため、4
時間と 8 時間の値を 110 ppm とした。また、時間スケーリングによって求めた 10 分間値(380 ppm)
では危険回避能力を損なう可能性があるため、10 分間値は 30 分間値と同じ値とした。
AEGL-3 値の導出は、Kapeghian et al.(1982)と MacEwen and Vernot(1972)の試験において、マウス
の致死データをプロビット解析して得られた 2 つの LC01 値(それぞれ 3,317 ppm および 3,374 ppm)
に基づいて行った。被験哺乳類中でマウスが最も感受性が高かったことと、マウスは呼吸器刺激
物質に極めて感受性が高いと考えられるため、それらのマウスのデータに対して種間不確実係数
1 を適用した。生命を脅かす濃度のアンモニアによって、気道や肺に重大な損傷が引き起こされ
ること、これらの影響は、喘息ではない人よりも喘息患者、成人よりも小児、運動中ではない人
よりも運動中の人の方で重篤化することはないと予想される(AEGL-2 値導出の根拠を参照)こと、
しかし高齢者では、より低い濃度で気管支や肺への影響が起こる可能性があること、を考慮して、
種内不確実係数として 3 を適用した。高齢者は、防御機構の 1 つである反射性声門閉鎖の感度が、
若齢者の 3 分の 1 であり、アンモニア濃度が 570 ppm 以下では、この防御機構は働かない可能性
があることが、調査によって示されている。また、種間不確実係数や種内不確実係数を上記の値
より大きくすると、30 分間 AEGL-3 値が約 500 ppm となるが、ヒトは、この濃度に、致死的な影
響や長期間の影響を受けることなく、耐えられることが示されている。ten Berge の関係式(Cn×t =
k)を用いて、各曝露時間に外挿した。n の値の算出には、ten Berge et al.(1986)によって報告され
た、マウスの致死率に関する回帰係数(b1/b2)を用いた。5 分間 AEGL 値設定の要望が、アンモニ
ア業界から出されている。Table あるいは Table 2-1 に、AEGL 値や毒性の評価項目を示す。
3
TABLE 2-1 Summary of AEGL Values for Ammonia
Classification
10 min
30 min
1h
4h
8h
End Point
(Reference)
AEGL-1
(nondisabling)
30 ppm
(21
mg/m3)
30 ppm
(21
mg/m3)
30 ppm
(21
mg/m3)
30 ppm
(21
mg/m3)
30 ppm
(21
mg/m3)
Mild irritation
(MacEwen et al.
1970)
AEGL-2
(disabling)
220 ppm
(154
mg/m3)
220 ppm
(154
mg/m3)
160 ppm
(112
mg/m3)
110 ppm
(77
mg/m3
110 ppm
(77
mg/m3)
Irritation: eyes
and throat; urge
to cough
(Verberk 1977)
AEGL-3
(lethal)
2,700 ppm
(1,888
mg/m3)
1,600 ppm
(1,119
mg/m3)
1,100 ppm 550 ppm
(769
(385
mg/m3)
mg/m3)
390 ppm
(273
mg/m3)
Lethality
(Kapeghian et
al. 1982;
MacEwen and
Vernot 1972)
----------------------注:本物質の特性理解のため、参考として国際化学物質安全性カード(ICSC)を添付する。
4
国際化学物質安全性カード
ICSC番号:0414
アンモニア(無水物)
アンモニア(無水物)
AMMONIA (ANHYDROUS)
(圧力容器)
NH3
分子量:17.03
CAS登録番号:7664-41-7
RTECS番号:BO0875000
ICSC番号:0414
国連番号:1005
EC番号:007-001-00-5
災害/
暴露のタイプ
一次災害/
急性症状
応急処置/
消火薬剤
予防
火災
引火性。
裸火禁止、火花禁止、禁煙。
爆発
気体/空気の混合気体は爆発
性である。
密閉系、換気、防爆型電気およ 火災時:水を噴霧して圧力容器
び照明設備。
を冷却する。
身体への暴露
吸入
皮膚
周辺の火災時:適切な消火薬
剤を使用する。
あらゆる接触を避ける!
灼熱感、咳、息苦しさ、息切れ、 換気、局所排気、または呼吸用 新鮮な空気、安静。半座位。人
保護具。
工呼吸が必要なことがある。医療
咽頭痛。
機関に連絡する。
症状は遅れて現われることがある
(「注」参照)。
発赤、皮膚熱傷、痛み、水疱。 保温用手袋、保護衣。
液体に触れた場合:凍傷。
凍傷の場合:多量の水で洗い流
し、衣服は脱がせない。
医療機関に連絡する。
発赤、痛み、重度の熱傷。
数分間多量の水で洗い流し(でき
ればコンタクトレンズをはずして)、
医師に連れて行く。
眼
顔面シールド、または呼吸用保
護具と眼用保護具の併用。
経口摂取
漏洩物処理
貯蔵
・危険区域から立ち退く!
・専門家に相談する!
・換気。
・液体に向けて水を噴射してはならな
い。
・細かな噴霧水を用いて気体を除去す
る。
・個人用保護具:自給式呼吸器付気
密化学保護衣。
・耐火設備(条件)。
・酸化剤、酸、ハロゲン類から離してお
く。
・涼しい場所。
・換気のよい場所に保管。
包装・表示
・EU分類
記号 : T, N
R : 10-23-34-50
S : (1/2-)9-16-26-36/37/39-4561
・国連危険物分類(UN Hazard
Class):2.3
・国連の副次的危険性による分類(UN
Subsidiary Risks):8
重要データは次ページ参照
ICSC番号:0414
Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the
Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993
国際化学物質安全性カード
ICSC番号:0414
アンモニア(無水物)
重
要
デ
|
タ
物理的状態; 外観:
刺激臭のある、無色の圧縮液化ガス
暴露の経路:
体内への吸収経路:吸入。
物理的危険性:
この気体は空気より軽い。
吸入の危険性:
容器を開放すると、この気体は空気中できわめて
急速に有害濃度に達する。
化学的危険性:
水銀、銀、金酸化物により、衝撃に敏感な化合
物を生じる。強塩基であり、酸と激しく反応し、腐
食性を示す。強酸化剤、ハロゲンと激しく反応す
る。銅、アルミニウム、亜鉛およびそれらの合金を
侵す。熱を放出しながら水に溶ける。
許容濃度:
TLV:25 ppm(TWA); 35 ppm(STEL) (ACGIH
2004)。
短期暴露の影響:
眼、皮膚、気道に対して腐食性を示す。高濃度
を吸入すると、肺水腫を引き起こすことがある
(「注」参照)。この液体が急速に気化すると、凍傷
を引き起こすことがある。
長期または反復暴露の影響:
MAK:20 ppm, 14 mg/m3; ピーク暴露限度カテゴ
リー:I(2); 妊娠中のリスクグループ:C; (DFG
2004)。
(訳注:詳細は DFG の List of MAK and BAT
values を参照)
物理的性質
環境に関する
データ
・沸点:-33℃
・融点:-78℃
・比重(水=1):0.7(-33℃)
・水への溶解度:54 g/100 ml(20℃)
・蒸気圧:1013 kPa(26℃)
・相対蒸気密度(空気=1):0.59
・発火温度:651℃
・爆発限界:15~28 vol%(空気中)
・水生生物に対して毒性が非常に強い。
注
・肺水腫の症状は 2~3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過
観察が不可欠である。
・医師または医師が認定した者による適切な吸入療法の迅速な施行を検討する。
・圧力容器が漏出しているときは、気体が液状で漏れるのを防ぐため、洩れ口を上にする。
Transport Emergency Card(輸送時応急処理カード):TEC(R)-20S1005 または 20G2TC
NFPA(米国防火協会)コード:H(健康危険性)3;F(燃焼危険性)1;R(反応危険性)0
付加情報
ICSC番号:0414
更新日:1998.03
アンモニア(無水物)
© IPCS, CEC, 1993
国立医薬品食品衛生研究所
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