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ブック 1.indb - 日本道路建設業協会

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ブック 1.indb - 日本道路建設業協会
 道路工事現場
道 路 工 事 現 場
工務ハンドブック
工務ハンドブック
2015 年 改 訂 版
参考資料
機械/安全用品イラストデータ
提出書類様式
「見える化」
「好事例」集
2015年 改 訂 版
︵一社︶日本道路建設業協会
一般社団法人
日本道路建設 業 協 会
道路工事現場・工務ハンドブック
2015 年改訂版の刊行に当たって
我が国経済は、世界経済の緩やかに回復する中で、政権交代後の「大胆な金融政策」
「機動的
な財政政策」
「民間投資を喚起する成長戦略」の三本の矢による一体的な取組の政策効果から、
消費等の内需を中心とした景気回復の動きが広がっています。また、長年に亘るデフレ経済か
らの脱却に向けて、景気は緩やかながらも順調に回復の道をたどっています。
道路建設業界においても、東日本大震災からの復旧・復興、防災・減災を柱とした国土強靭
化基本法の成立、2020 年東京五輪開催など、業界を取り巻く環境にも明るさが見られるように
なりました。その一方で、労務費や資材費の高騰が業界の懸念材料となっており、各地の公共
工事では入札不調も相次いでいます。
当協会は、
「道路整備の推進」「道路技術の向上」
「道路建設業の健全な発展」の3つを基本理
念として昭和 20 年 11 月 1 日に設立され、今年で創立 70 周年を迎えます。今後とも、高規格
道路をはじめとする道路網の整備推進、少子・高齢化社会、情報化社会を支える道路機能の充
実はもちろん、「安全な舗装」「環境にやさしい舗装」
「長寿命の舗装」などの新技術、新工法、
新材料の開発に取り組み、「トータルコスト」で良いものを安く提供する努力を傾けながら国民
の多種多様なニーズに応えてまいります。
当協会活動の一環として、道路工事の適正な施工のために、現場の技術者を対象として、現場
業務に必要な最新の技術基準と法令を幅広く平易に解説した「道路工事現場・工務ハンドブック」
を 1987 年に初版として刊行し、28 年に亘り改訂を重ねてきました。
本書は、2010 年改訂版以後の法令の改正、手続きの変更などを取り入れ、今回は A5 版から
A4 版へのサイズ変更を行い、新人技術者でもイメージしやすいイラスト主体で構成された
第 1 部と従来どおりのより詳細な本文からなる第 2 部の二部構成とするなどの工夫をこらして
改訂いたしました。
現場技術者のみなさんが、諸法令を遵守し、先輩諸氏が築いてきた技術を伝承して、より確か
な品質を確保した施工をされるために、本書がお役に立てば幸いであります。
2015 年 4 月
一般社団法人 日本道路建設業協会
会 長 三好 武夫
第2部
第1章 工事の契約
■ 1 − 1 工事請負契約
■ 1 − 2 契約後の提出書類等
■ 1 − 3 入札・契約制度
■ 1 − 4 設計図書
■ 1 − 5 契約内容の検討
■ 1 − 6 工事の一時中止
第1章 工事の契約
1−1 工事請負契約
1-1-1 請負契約の原則
(1)請負契約
請負契約とは、
「契約当事者の一方が、ある仕事を完成することを約し、相手がその仕事の結果
に対して報酬を与えることを約する契約」であり、双方の権利義務を取り決めたものである。(双
務契約)
請負契約においては、請負者側に不利な片務性を強いられることがあるため、公正な請負契約を
締結することによって、双方の権利義務の関係を明確にすることは、きわめて重要である。そのた
めに、建設業法においては、特に必要事項を記載した工事請負契約書の作成を義務づけている。
(2)一括下請負の禁止(建設業法第 22 条)
請負人が自己の請け負った建設工事をそのまま一括して他人に請け負わせたり、請け負ったりす
る一括下請負は、発注者の信頼に反するものであり、建設業法(第 22 条)において禁止されている。
一括下請負の禁止は、施工能力のない不適格建設業者を排除し、建設工事の品質の確保と健全な
建設業の発展を図るためのものである。
平成 13 年に施行された公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(適正化法)によ
り公共工事については如何なる場合でも一括下請負は禁止されることとなった。
一括して請け負わ
せてはならない
一括して請け負っ
てはならない
【注意!】
建設業法第 22 条は、下請負人も
監督処分の対象となる。
二次下請負人
一次下請負人
元 請 負 人
発 注 者
二次下請負人に
対する元請負人
一括して請け負わ
せてはならない
一括して請け負っ
てはならない
【注意!】建設業法第 22 条は、下請負人間においても同様に適用される。
3
第 1 章 工事の契約
1 − 2 契約後の提出書類等
施工条件を明確に把握しないと、正しい積算ができないため、設計図書は詳細をよく理解すると
1−2 契約後の提出書類等
ともに、現場を踏査の上、疑問点は明らかにしなければならない。
1-2-1 提出書類関係
※最近はこの現場説明が受注者間の調整の場となっているなどの指摘から、
行われない場合が多い。
発注者によっては入札公告時や入札説明書類などに 現場説明 を添付する場合もある。この場
契約後、着手前に提出、手続きを行う契約関係業務の中で、留意すべきものについて示す。
合は期限を定めて質問を受け付けている場合が多いので、不明な点は質問書の形で回答を求め、
(1)請負代金内訳書(工事請負契約書第3条)
記録に残しておくことが望ましい。
<請負代金内訳書>と<工事費構成書>
請負契約の内容に対する請負者の工事原価管理の的確化、積算の参考及び設計変更等の協議の
(2)条件明示
請け負った工事を施工するに際して、制約をうける施工条件は設計図書に明示されていることが
円滑化を目的 に発注者と請負者の間で相互に請負代金内訳書と工事費構成書を受け渡す。
(国土
必要である。
交通省
参考資料 No.105)
国土交通省は平成 14 年3月、
「条件明示について」
(国官技第 369 号)の通達の中で工事の設計
図書に明示すべき施工条件について、明示項目、明示事項(案)をとりまとめている。
施工条件は契約条件にもなり、契約内容の変更の根拠となる重要な項目であるので、現場説明時
には疑義のある部分について明らかにするようにしなければならない。
請負代金内訳書
費目
工種
種別
細別
規格
単位
員数
単価
金額
また契約後はその条件について十分照査しておかなければならない。上記通達は国土交通省直轄
工事に適用されるものであるが、他の発注者の工事についても同様に、施工条件について十分照査
するようにしなければならない。
① 明示されない施工条件、明示事項が不明確な施工条件についても、契約書の関
請負者
対象工事は義務付け
契約締結後 14 日以内
対象工事について受注者より提示
を求められた場合(14 日以内)
連する条項に基づき甲・乙協議できるものであること。
② 現場説明時の質問回答のうち、施工条件に関するものは、質問回答書により、
発注者
文書化すること。
工事費構成書
③ 施工条件の明示は、工事規模、内容に応じて適切に対応すること。
なお、施工方法、機械施設等の仮設については、施工者の創意工夫を損なわな
工事区分
工種
種別
細別
規格
単位
工事数量
比率(%)
いよう表現上留意すること。
※条件明示については、下記も参考にされたい。
条件明示の手引き(案)
:
(国土交通省
参考資料 No.104)
請負代金内訳書及び工事費構成書は請負者、発注者それぞれの積算根拠であり、以後の実行予算
条件明示に関連して、契約後に受注者が設計内容の照査を行い、発注者に現場との差違などの協
作成や変更契約時の参考となるので目を通すようにする。
議を行うことが必要で、これに関しては本ハンドブックの「1‒5‒1 工事内容と契約条件」を参照
されたい。
※国土交通省においては請負代金額が 1 億円未満又は工期が 6 ヶ月未満の工事で包括合意方式を選
択した工事は請負代金内訳書の提出は不要となっているが、平成 23 年 10 月以降はこの場合でも
請負代金内訳書を提出すれば工事費構成書の提示を求めることができることが明確化された。
20
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第 1 章 工事の契約
1 − 3 入札・契約制度
1−3 入札・契約制度
1)建退共制度は
① 建設事業主が勤労者退職金共済機構と特定業種退職金共済契約を締結。
② 建設労働者の共済手帳に、雇用日数に応じ共済証紙(日額 310 円)を貼付。
1-3-1 品確法について
③ 当該労働者が建設業界で働くことをやめた時に、勤労者退職金共済機構が直接労働者に
近年、公共投資の減少による過当競争などから、不良・不適格業者の工事落札や不良工事の増大
退職金を支給する、ことにより運営されている。
などが問題となっている。このような背景から、公共工事の品質を確保するため、技術力を適正に
2)建退共制度に関する手続きは、各都道府県の建設会館(センター)にある建設業退職金共済
評価し、その結果が公共工事の調達に反映されるように「公共工事の品質確保の促進に関する法律」
略して 品確法 が平成 17 年4月1日に施行された。更に平成 26 年には建設業の将来的な視点
事業支部で行われている。
に鑑み、担い手の中長期的な育成・確保や発注者責務の明確化が盛り込まれた改正が行われた。
証紙購入
建設業を営む事業主
証紙貼付
図 1 − 13 に、品確法に関連する方針・ガイドライン等を示す。
(共済契約者)
金 融 機 関
平成17年
平成26年
公共工事の品質確保の促進に関する法律
改 正
平成17年4月1日施工
現場労働者
(被共済者)
改正品確法:平成26年6月4日 施行
基本方針(閣議決定)
(公共工事の品質確保の促進に関する施策を
総合的に推進するための基本的な方針について)
特定業種退職金共済契約
改 正
改訂基本方針:平成26年9月30日閣議決定
平成17年8月26日閣議決定
(国交省関係)
勤労者退職金共済機構
証紙代金の納入
退職金の支払
発注関係事務の運用に
関する指針
公共工事の品質確保
促進ガイドライン
図1− 12 建退共制度のしくみ
運用指針:平成27年1月30日決定
平成17年9月30日公示
3)現場における留意点
① 掛金収納書を1ヶ月以内に発注者に提出。1ヶ月という期間は下請けを含めた労働者の
概算人数の把握、加入状況の調査に要する猶予期間であり、必要以上に証紙を購入する
総合評価落札方式
運用ガイドライン
(国土交通省直轄工事)
総合評価方式活用
ガイドライン
ことを防止する目的である。
平成17年9月30日公示
平成25年3月
② 建退共以外の退職金制度(中小企業退職金共済制度、自社制度等)に加入している下請
総合評価方式は、頻繁に細部・運用変更されている
けについては、掛金収納不要通知を提出する。
ので、
その時点の国交省ホームページや、
個別工事
の 入札説明書 等を精読すること
③ 数次の下請けがある場合は、1次下請けだけでなく最下部の下請けの加入状況を把握し、
適切に配布する。月毎に貼付状況を確認するのがよい。
図 1 − 13
※詳しい内容については「道路建設業現場事務ハンドブック」
(
(一社)日本道路建設業協会)参照
(1)品確法(国土交通省
参考資料 No.106 及び参考資料 No.107)
品確法では以下の3つがポイントとして上げられている。
1)公共工事の品質確保に関する基本理念及び発注者の責務の明確化
2)『価格競争』から『価格と品質で総合的に優れた調達』への転換
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25
第 1 章 工事の契約
1 − 4 設計図書
1−4 設計図書
※設計変更時の合意単価の取扱
現場条件の変更等による大幅な数量増減、条件変更、新工種等については、請負代金変更時の
合意単価の取扱についての考え方については図 1 − 16 のようになっている。
1-4-1 設計図書とは
※
工種 、 種別 、 細別 は国土交通省:工種体系ツリーの分類
比率 =合意単価/発注者側の積算単価(当然、1.00 以上となる場合もある)
る質問回答書をいう。また、契約図書とは、契約書及び設計図書をいう。
変更官単価 :変更後の条件により算出した発注者側の積算単価
変更の内容
(例)
大幅な数量の増減で合意単価に
掘削 30,000m2 未満
影響がある場合
→ 30,000m2 以上
設計図書とは特記仕様書、図面、工事数量総括表、共通仕様書、現場説明書及び現場説明に対す
合意単価の算出方法
1-4-2 仕様書
変更官単価
細別の比率
仕様書は工事を施工する上での基準を示すもので、施工に当ってはその内容を十分に理解してお
既存の細別の
ダンプ運搬で指定場所
積算条件変更
変更(運搬距離変更)
かなければならない。
共通仕様書と特記仕様書との間に相違がある場合は特記仕様書が優先する。
施工条件
が変更
施工にあたり、管理監督にあたる者のみならず現場の関係者全員は設計図面、各仕様書を熟読し
既存工種に新たな
掘削(土砂)
種別、細別が追加
→ 掘削(硬岩)
変更官単価
工種の比率
理解しておかなければならない。
(1)共通仕様書
当初合意単価が無い新たな工種
当初合意単価が無い
標準積算基準より算出し
共通仕様書は各発注機関が制定しているもので、その内容は各建設作業の使用材料の品質、数量、
が追加
踏掛版工が追加
た発注者側の単価
仕上げの程度、施工方法等工事を施工する上で必要な技術的要求のほかに、施工上必要な工程や手
合意単価によることが不適当と
作業土工(一式)で
なった場合
数量が変更
新規工種には直接工事費ベー
スでは落札率が影響しない
順、採用が義務付けられている施工法などが示されている。
また、監督員と施工者間の指示、承諾、協議、立会、検査等についても記されている。
このように仕様書の内容は多岐にわたっているが、各工種共通する事項も少なくないため、各発
※内容については 特別な理由 が無い場合とされています。
上記以外の場合
(単価に影響しないような一般的な数量増減、軽微な条件変更など)
注機関では各工事に共通する事項を規定したものを仕様書として作成している。これを共通仕様書
合意単価で変更
図 1 − 16 直接工事費及び共通仮設費(積上分)の変更時の合意単価の取扱
という。
施工者は共通仕様書の内容を十分理解し、施工に当っては基本事項として遵守しなければならない。
(2)特記仕様書
特記仕様書は土木工事の多様性及び地域性により、現場によって特殊な条件があり、共通仕様書
※ 共通仮設費(率分)
、現場管理費、一般管理費等の 率計算 により算出する項目については、
の規定のみでは当該工事の施工上必要な事項を表わすことが出来ないことがある。そこで、その工
上記の単価を基礎として算出した積算基準書で定める対象額に、変更前の対象額に対する合意
事特有の事項を、主として共通仕様書に規定されていない事項や、規定されているもののうち当該
金額の比率及び積算基準書の率式を利用した変更後の低減割合を乗じて算出することとする。
工事に適用できない事項等について具体的に規定する必要がある。このように個々の工事に特有な
事項を規定したものを特記仕様書という。
※「施工パッケージ」については 国土技術政策総合研究所(通称:国総研)ホームページ
> 各研究分野のページ 防災・メンテナンス基盤 > 建設システム課
32
33
第 1 章 工事の契約
1 − 5 契約内容の検討
1−5 契約内容の検討
【特記仕様書に定められる主な記載事項】
① 工事の出来形、品質の規格値及び施工管理基準について適用除外又は追加を必要とする事項。
② 特殊工法、新工法について図面の補足はもとより共通仕様書に記載されていない留意点など、
1-5-1 工事内容と契約条件
特に詳細な規定が必要な事項。
③ 特殊な材料及び銘柄を指定するものまたは品質、規格を特に規定する必要がある事項。
④ 仮道路、仮橋等その工事独特なものに関する事項。
建設工事を実施する場合、一般には下図1− 17 に示されるように大きく 4 段階に分けられる。
第一段階
第二段階
第三段階
第四段階
調査・設計段階
設計・積算
発 注 段 階
契約・施工・検査・
引渡段階
供用・維持管理段階
⑤ 施工方法や仮設方法を将来変更する可能性がある場合はその施工方法や仮設工法に関する事項。
従って、実際の工事においては、共通仕様書と特記仕様書が一体となってはじめて仕様書の機能
地 元 説 明
用 地 補 償
地元設計協議
を持つ。
また、両者の記述に差異があるときは、特記仕様書を優先するのが一般的であるが、特に重要な
ものについては発注者に確認を求めることが必要である。
設計図書の優先順位
図1− 17 建設工事実施の諸段階
発注者は、工事の発注に当って、事前に十分かつ周到な調査、測量等を実施した上、正確、明瞭
な設計図書を作成し、現場説明において工事の内容、施工条件等を明示するものである。
① 現場説明書に対する質問回答
しかしながら、建設工事は現地屋外における単品生産であり、現場の自然現象及び立地条件、社
会条件など数々の制約条件が生じることは避けられない事実である。
②
現 場 説 明 書
このようなことから、発注者による事前の調査には限界があり、設計図書の不備や設計条件の相
違が発生することが多い。
③
特記仕様書
設計照査
工事の施工に先立ち、請負者が行う契約関係図書の照査・確認は、工事の目的と内容を十分理解
④
図
面
し、現場を照査の上、どこにどのような規格のものをいつまでに、どのように造るかを明瞭にする
為に実施する。
⑤ 共通仕様書
照査した結果、重要な問題点や疑問点があれば、監督員がその事実を確認できる資料を書面によ
り提出し、確認を求めなければならない。
なお、 工事内容と契約条件について照査・確認すべき事項として次のものがある。
(1)工事内容
1) 契約数量との差異(増減)、数量の違算の有無。
2) 設計図書と現地との照合、相違の有無。
3) 設計図書、施工管理基準等に記された各規格値の適用の可否の検討。
4) 工法選定、予想される新規工種、環境及び地域要望による構造変更の検討。
5) 監督員と事務処理事項(指示、承諾、協議等)の確認。
6) 仮設等における規定(任意、指定等)の確認。
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35
第 1 章 工事の契約
1−6 工事の一時中止
発注者は、工事の発注に際し、地元設計協議、工事用地の確保、占用事業者等協議、関係機関協
議を整え、適正な工期を確保し、発注を行うことが基本であるが、一部の工事では各種協議や工事
用地の確保が未完了な場合においてもやむを得ず発注を行っている場合がある。
そのため、受注者の責に帰することができない事由により工事を継続的に施工できない事態が発
生したと認めた場合、発注者は工事の全部又は一部の中止を命じなければならない。(公共工事標
準請負契約約款第 20 条「工事の中止」参照)
【公共工事標準請負契約約款第 20 条の概要】
(1)
発注者は次の各号に当該する場合においては、受注者に対してあらかじめ書面をもって
通知した上で、必要とする期間、工事の全部または一部の施工について一時中止させなけ
ればならない。
1)
地震・地すべり等の自然的又は工事用地等の確保が出来ない、騒乱・暴動及び人
為的な理由により、工事の実行が不適当又は不可能と認めた場合。
2)
関連する他の工事進捗が遅れたため、工事の続行を不適当と認めた場合。
3)
工事着手後、環境問題又は埋蔵文化財の調査、発掘の遅延あるいは新たなる発見
等などの発生により工事の続行が不適当または不可能と認めた場合。
(2)
発注者は、前(1)項の場合のほか、受注者が契約図書に違反し、又は監督職員の指示に
従わない場合等、監督職員が必要があると認めた場合には、工事の中止を受注者に通知し、
工事の全部または一部の施工について一時中止させることができる。
受注者は前(1)項及び(2)項の場合において工事を中止する場合は、中止期間中の維
持 ・ 管理に関する基本計画書を発注者に提出し、承諾を得るものとする。また受注者は工
事の続行に備え工事現場を保全しなければならない。
実際の運用にあたっては、
国土交通省「工事一時中止に係るガイドライン」を参考にすると良い。
(国土交通省
50
参考資料 No122)
第2部
第2章 工事の準備
■ 2 − 1 仮設備
■ 2 − 2 関係機関への手続き
■ 2 − 3 現場の組織
第2章 工事の準備
2 − 1 仮設備
2−1 仮設備
2-1-1 作業所等の設置
工事の着手に際し、作業所等の設置場所はできる限り条件を満たす所を選定すべきである。近年
市街地及び近郊では適地が少なく、理想的な立地条件を求めるのは困難であるが、多くの情報収集
に心がけ、協力業者、地元の有力者等の力を借りて選定することも一策である。
(1)用地等の選定確保
都市部では必要な用地や建物を確保することが困難な場合が多いので、発注者と打合せの上、対
処することが望ましい。
【選定のポイント】
1. 材料置場、倉庫、作業所、駐車場の敷地は十分な広さを確保する。
2. 騒音、振動、ほこり、汚水等の公害を及ぼさない場所にある。(付近に住宅が少なく、
公害に対する苦情のでない所)
3. 施工現場に近い。(できれば 30 分以内で到着できる所)
4. 電気・水道の仮設が容易で排水が良好な場所である。
5. 台風、降雨等による災害を受けるおそれのない場所である。
6. 事務所及び宿舎としてふさわしい環境にある。(騒音、悪臭等のない所)
7. 借家の場合、破損、防火設備、保険等の確認をする。
8. 利用できる時間など条件をよく確認し、駐車場や夜間の出入りについて、特に留意
すること。また、これらの確認に当り、都市部などでは地域の不動産業者を利用する
と有利な場合が多い。
【契約時の注意事項】
1. 所有者の確認
6. 租税公課の負担
2. 借地範囲の明確化
7. 下請などへの転貸
3. 借用期間の明確化
8. 農地の借用
4. 地主への申し入れ事項
9. 地代の値上げ
(使用目的・構造など)
10. 土地の付属設備の処置
5. 地代、権利金
11. 引渡し期日と条件
53
第 2 章 工事の設備
2 − 2 関係機関への手続き
2−2 関係機関への手続き
17. (階段の構造)
幅 75㎝以上、踏面 21㎝以上、けあげ 22㎝以下 、高さ 75㎝以上 85㎝以下の手す
りを設ける。
18. (廊下の幅) 両側に寝室がある場合は 1.6m 以上、その他の場合は 1.2m 以上とする。
19. (常夜灯の設置) 階段及び廊下に常夜灯を設けなければならない。
20. (寝室) 1 室 6 人以下とする。
21. (食堂及び炊事場)
食堂または炊事場の床は板張り、コンクリート等清掃に便利な構造とする。
22. (飲用水等)
飲用及び洗浄のため清浄な水を十分に備える。
23. (給食従業員の検便)
事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、
その雇入の際または当該業務への配置替えの際、検便による健康診断を行わなけ
ればならない。
2-2-1 発注者との事前打合せ
24. (浴場)
寄宿舎に寄宿する者の数が 10 人以内ごとに 1 人以上の者が同時に入浴すること
ができる施設とする。
道路工事は国土交通省等を始めとする官公庁からの発注が多く、発注者に代わって工事の監督な
25. (便所) 便所は、常に清潔を保持するため必要な措置を講じなければならない。
26. (靴 , 雨具等の収納設備) 寄宿舎に寄宿する者の数に応じ、靴、雨具等を収納する設備を屋内に設ける。
27. (洗面所 , 洗濯場及び物干場)
寄宿舎に寄宿する者の数に応じ、洗面所、洗濯場及び物干場を設ける。
の打合せ結果は、工事打合簿に記載するとともに協議書として提出するなど、施工計画にくい違い
28. (休養室)
常時 50 人以上の者が寄宿する寄宿舎には、休養のための部屋を設ける。
がないようにする。
29. (福利施設)
教養、娯楽、面会のための部屋等寄宿労働者のための適当な福利施設を設ける。
また、都市部の施工においては、道路工事等協議書、道路使用許可申請書を必要とする場合があ
り、監督職員及び所轄警察署と事前に協議し内容を打合せ、早期に必要な書類を提出する。
30. (適用除外) 寄宿舎であって、6 ヵ月に満たない期間内に、解体するもの又は寄宿舎として使
用しなくなるものについては、天井の高さ、浴場の規模については適用しない。
常時 10 人に満たない者が寄宿する寄宿舎については、出入り口 2 ヶ所以上の規
程は適用しない。
工事を受注したならば、すみやかに現場に乗り込み、現場事務所の設置、関係官公庁への手続き
など、各種の準備にとりかからなければならない。とくに現場責任者は、事務担当者とよく連携を
とり、現場の構成員全体が常に効率よく作業できるように努める必要がある。
らびに指示にあたる監督職員が配置される。したがって工事の着手に際しては、工事事務所長をは
じめ各担当係への挨拶にあわせ、当該工事の監督職員と工事施工について基本的事項を打合せ、そ
【監督職員との事前打合せの要点】
(3)電話等通信手段の設置
現地に乗り込み、最初に必要となることは、発注先その他への連絡である。このために現場事務
所の電話や FAX およびインターネット回線の設置は不可欠であり、迅速にその手続きを行う。
1. 設計図書を熟読し、ニーズ、疑問点、問題点を整理する。
2. 事前に現場をよく踏査し、疑問点、問題点を整理する。
3. 工事を進める上での基本的な考え方を整理し、了解を得る。
4. 着手時期、完成時期等発注者の意向を開く。
5. 沿道区域への対応、豪雨等による影響等、工事地域の情報を収集し対策を打合せる。
6. 交通量調査資料などを入手し、工事中の交通対策を打合せる。
2-1-2 工事用仮設備
道路工事では、一般的に他の土木工事のような大がかりな仮設備を必要としないが、高速道路な
どの大型工事ではアスファルトプラント、バッチャープラント、ソイルプラント、仮橋、進入路等
の仮設備が必要となることがある。
2-2-2 関係諸官庁等との連絡ならびに諸届出
また、各種プラント、試験室、事務所、現場等において、動力、照明用として電気が必要となる
ので、早期に電力会社と折衝し、各種届出、申請等を行う。現場用は仮柱を設置し、電気を引込む
工事の施工には、多くの作業員が就業し、現場事務所、宿舎、倉庫、プラント等多種の施設を必
ことが多いが、都市部などで、地中配線のところは、仮設電気の引込みが不可能なことがあるので、
要とする。また、作業中の事故、火災、盗難など不測の災害が発生するおそれがあり、加えて道路
発電機などを使用することが必要となる。いずれも工事の完成時には撤去されるが、工事の施工中
工事の特性として、交通規則やその他の路上作業に対する制約も考慮しなければならない。したがっ
は過酷に使用されるので、地震や台風に遇うことも考慮して構造上十分な強度と安全性を確保した
て、着工前には必ずその所轄の警察署、消防署、自治体等に出向いて必要な届出を済ませ、あらか
ものでなくてはならない。
じめ必要な許認可を得ておく。
さらに、労働基準監督署、公共職業安定所、水道局、保健所、病院、ガス及び電力会社に連絡を
行い、着工後にトラブルが発生しないようにしておく。
56
57
第 2 章 工事の設備
2 − 3 現場の組織
2 − 3 現場の組織
2-3-1 現場の施工体制
現場の施工体制は、工事の内容(規模の大小、工事の種類、工期、環境等)に応じて、合理的か
つ経済的に工事を施工し、監理できる組織とし、そのために、現場統括責任者として 現場代理人
を選任する。
(1)現場代理人
【現場編成時の要点】
1. 各工程の責任者を迅速に決める。
2. 施工高、生産性を考慮した人数とする。
3. 経歴、キャリヤ、年齢を考慮して編成する。
4. 工事条件(夜間作業、新設工事、維持修繕工事等)を考慮して選定する。
5. 前もって、必要な有資格者を確保し、適任者を選定する。
(3)安全衛生管理体制
現場代理人は、工事を実施するための技術上の広汎な知識と判断力を有し、管理者としての統率
最近は、施工機械の大型化、施工環境の複雑化、工事のスピード化等のため、安全管理、安全対
力、折衝力、行動力等を備え、強い精神力と肉体を有していることが望まれる。(1‒1‒2 技術者制
策及び衛生管理が最優先となっている。建設現場における安全衛生管理は、毎日、毎週、毎月等に
度参照)
実施される安全施工サイクル等の活動を適切に実施し、建設現場の安全を確保することである。当
該活動を実施していく中で、労働安全衛生法による様々な制限がついており、その制限を確実に盛
【現場代理人の心得るべき事項】
り込んでいくことが現場の安全担当技術者にとって大きな役割である。
1. 現場事務所の責任者であり会社の代表者であることの自覚をもって行動する。
つまり、実施する作業について、作業における資格者の配置、安全施設にかかる制限、使用機械
2. 設計図書に精通し、仕様、規格に合った工事の完成を常に心がける。
にかかる制限、教育の実施、健康管理等の法令遵守事項を知り施工計画等に盛り込んでいかなけれ
3. 工程管理、原価管理に常に留意する。
ばならないということである。こうした制約を盛り込んでいくための安全管理活動を行う上での一
4. 統括安全衛生責任者として従業員、作業員等労働者の健康、安全衛生に留意する。
般的骨格や留意点については、
『元方事業者による建設現場安全管理指針(平成 7 年 6 月)
』(『元
5. 環境、建設公害防止に万全の注意をはらい、地元住民との友好的関係に留意する。
方事業者による建設現場安全管理指針の具体的勧め方』建設業労働災害防止協会発行)として厚生
労働省が取りまとめている。
(2)現場の組織
現場組織は、効率的で簡素な編成とする。
【管理体制に要求される管理者】
1. 統括安全衛生責任者
2.
元方安全衛生管理者
3.
店社安全衛生管理者
1. 工事の規模、工事の立地条件等を検討し、全体の構想をまとめる。
4.
安全衛生責任者
2. 一人当り工事消化予定高を前提とし、その工事の特殊性を考慮して、職種、人
5.
作業主任者
【現場組織編成時の考慮すべき事項】
数等を決める。
3. 諸法規で定められている有資格者を配置する。
4. 下請業者の構成や能力を考慮して統制がとりやすい体制とする。
5. 工事の進捗状況や工事量の変動に対応した必要な人員の変動を考慮する。
6. 再生資源利用計画及び再生資源利用促進計画の作成の対象になっている一定規
模以上の工事においては、責任者を定める。
【解 説】
1. 特定元方事業者が選任する。労働者が 50 人以上の事業所(地方整備局によっては、10
人以上で配置を求められる場合がある)。ただし、ずい道等、圧気工法、一定の橋梁の建
設工事の場合は、30 人以上の事業所に選任し、事業場の統括管理を行う。
(安衛法第 15 条)
2. 特定元方事業者が選任する。統括安全衛生責任者を選任した場合に、統括安全衛生責任者
を技術的管理面で支援する。
3. 特定元方事業者が選任する。統括安全衛生責任者を選任しない場合で、20 人以上の事業
所に選任し、当該現場の統括安全衛生管理を行う者に指導等を行う。
(安衛法第 15 条の 3)
68
69
第2部
第3章 施工計画
■ 3 − 1 施工計画
■ 3 − 2 施工計画書の作成
■ 3 − 3 労務計画
■ 3 − 4 原価管理
3 − 1 施工計画
第3章 施工計画
3−1 施工計画
(1)施工計画
施工計画とは、受注者が工事の施工にあたって、事前に工事目的物を所定の工期内に、要求され
る品質で、最も経済的に、かつ安全に完成させるために立案するものである。また工事目的物の実
現に向けては、受注者が責任を持って自然条件、社会的条件を考慮し、契約書及び設計図書に基づ
いて、環境に配慮した工事管理(工程、品質、出来形、安全等)を適切に行うことが重要となる。
(2)施工計画書
施工計画書は、受注者が請負契約後、当該工事のために作成する文書で、実際に施工するために
必要な事項を具体的に記入し、その通りに施工することを約束した文書である。土木共通仕様書第
1 編 1-1-4 で「受注者は、工事着手前に工事目的物を完成させるために必要な手順や工法等につい
ての施工計画書を監督職員に提出しなければならない」と規定している。
なお、施工計画書の作成にあたっては、契約書及び設計図書に指定されている事項について記載
するものとし、軽微なものは除くことができる。
また、総合評価落札方式を適用して入札手続きを行った工事では、受注者は、技術提案書の全て
の提案に基づく施工方法等を施工計画書に記載し、総合評価の技術提案部分が分かるように記載し
なければならない。
表 3 − 1 施工計画書記載事項の内容
記 載 事 項
内 容
(1)工事概要
工事件名、施工場所、工期、受注金額、発注者、受注者、工事内容
(2)計画工程表
バーチャート、ネットワーク等で作成
(3)現場組織表(施工体系図)
現場の組織、担当職務と職務分担一覧表、緊急連絡先、施工体系図
(4)指定機械
設計図書で指定されている機械、監督職員が必要と認めた機械
(5)主要船舶・機械
指定機械以外の主要な船舶・機械
(6)主要資材
指定材料、主要資材、品質証明方法等
(7)施工方法(主要機械、仮設備計画、
工事用地等を含む)
(8)施工管理計画
(9)安全管理
主要工種毎の作業フロー、施工方法、使用予定機械、仮設備の構造配置、仮設建物、
材料、機械等の仮置場、プラント等の機械設備、運搬経路、仮排水、安全管理に
関する仮設備、指示・承認・協議事項の予定内容
工程管理計画、品質管理計画、写真管理計画、出来形管理計画、品質証明計画
安全管理体制、安全対策、異常気象時の防災対策、安全訓練の実施方法、安全巡
視の実施方法、安全活動方針
(10)緊急時の体制及び対応
事故発生時の連絡系統図、対応策、災害発生時の体制
(11)交通管理
交通管理、交通処理
(12)環境対策
大気汚染・水質汚濁・振動・騒音等の公害防止対策、過積載防止、不正軽油防止
(13)現場作業環境
現場作業環境に関する仮設、安全、営繕対策
(14)再生資源の利用の促進と建設副
産物の適正処理方法
(15)その他
再生資源利用促進計画書、再生資源利用計画書
契約図書及び監督職員の指示で、施工計画書に記載を必要とするもの
75
第 3 章 施工計画
3 − 2 施工計画書の作成
3 − 2 施工計画書の 作 成
(2)計画工程表
計画工程表は、ネットワーク、バーチャート等で作成し、各種別について作業のはじめと終わり
(1)工事概要
が分かるように記載する。
工事の概要及び内容を記載する。工事内容については、工事数量総括表の工種、種別、数量等を
工程表の作成にあたっては、気象(降雨、気温)や現場環境が施工に大きく影響する工程につい
記入する。工種が一式表示及び主体工種以外については工種のみの記載でもよい。
ては、過去のデータ等を十分調査して計画に反映させる。
舗装工事ではバーチャートによる工程表が多く使用されているが、同一施工場所で関連作業多い
1)工事概要
工事にあっては、工程調整がしやすいネットワークによる工程管理が有効である。(「4 − 2 工程管
工 事 名
○○舗装工事
理」参照)
路 線 名
一般国道○○号
● バーチャートは、各工事毎に、横線で工事の開始・終了の月日を示し、工事の順序と期間を
工事場所
○○県○○市○○町○○
表した工程表である。施工の流れを単純な形で表で表すので、作業の開始日、終了日、所要
日数は分かりやすいが、各作業間の相互関連は分かりづらい。
(測点 No. ○○∼ No. ○○)
自:平成○年○月○日
● ネットワークは、全体工事の中で各作業の相互関係を〇(結合点)と→(作業)の組み合わせ
至:平成○年○月○日
によってあらわした網状の工程表である。作業の前後関係が分かりやすく、余裕のある作業
契約金額
○○○○○○円
とそうでない作業の区別など、各作業の相互関係が明確で、工程の調整に向いている。
発 注 者
○○○工事事務所 TEL
工 期
各工程表の特徴を表 3 − 3 に示す。
○○○出張所 TEL
施 工 者
○○○建設株式会社 TEL
表3− 3 各種工程表の比較
○○○県○○市○○町○○番地
項 目
バーチャート
ネットワーク式
○○○作業所 TEL
工 程 の 作 成
容 易
難しい
○○○県○○市○○町○○番地
各工事の出来高
明 確
不明確
重 点 管 理 作 業
分かりにくい
明 確
各作業の相互関係
不明確
明 確
適 す る 工 事
短期、単純工事
長期、大規模工事
2)工事内容
表3− 2 工事内容の記載例
工事区分
舗 装
工 種
舗装工
種 別
排水性舗装工
細 別
排水性舗装・表層
(車道・路肩部)
単 位
数 量
m2
8,000
摘 要
表3− 4 計画工程表の記載例
項 目
工 種
種 別
舗装工
排水性舗装工
単 位
数 量
㎡
8,000
○月
○月
○月
○月
○月
【留意点】
・記載内容を設計図書と合致させる。
【留意点】
・契約書添付の工程表と整合を取る。
・各工種毎の工程は、施工量や施工期間を適切に設定する。
・施工時期に交通規制抑制期間等の制約がないことを確認する。
・準備日数や後片付けの期間を適切に設ける。
78
79
第 3 章 施工計画
3 − 4 原価管理
3 − 3 労務計画
3−4 原価管理 労務計画は請負工事の重要事項の一つであるので計画工程表とは別立てで以下に詳述する。
原価管理とは
実施工程表をもとに工種毎に所要の作業員数を算出して、労務予定表を作成し、職種別に、いつ
建設業の企業活動の大きな目標の一つは、建設工事の技術的な管理と同時に、工事費(工事原価)
何人必要であるかを計画する。
の管理を行い、適正な利益をあげ健全な会社経営を行うことである。
工程の組合わせによって一日当り必要人数が変化するが、効率の良い労務計画を立てるには、で
また、企業活動を行う上で、法の制約をうけ、建設業法においても、国、地方自治体は公共工事
きる限り一日当り必要人数を平均化し、工事期間中の人数の変動を少なく計画することが合理的で
入札参加希望者に対し、経営面の審査を行うことが規定されている。
ある。そのためには工種の施工順序や施工時期を一部変更して実施工程表を組みかえることも必要
国土交通省令では、建設業の決算報告書の財務諸表に4費目(材料費、労務費、外注費、経費)
となる。
の完成工事原価の表示を義務づけている。そのために、それぞれの工事の月々の 4 費目に分けた
統計的な労務計画として、パート(PERT)による配置(人数)計画があり、山積み、山崩しな
原価を把握しなければならない。
どの計算方法がある。
一方、施工担当者は、ともすると施工面での技術管理に追われて、原価管理の認識もかけ、経理
労務計画を立てるとき、繁忙期、盆や正月の休み等の季節的な労働力の変動を考慮しておかなけ
処理された事後原価の把握のみに終始し、日々発生する現場の原価や出来高の把握に必要な情報が、
ればならない。
タイミングよく得られない状況になっていることを反省すべきであり、こうした面をカバーする現
実際の労務計画に当たっては、下請業者に依頼する部分が多いので、下請業者を選定し、業者別
場のための管理システムが必要である。
に稼動人員数を確認する必要がある。
以上のような前提のもとに、工事の施工に必要な費用を予算化(実行予算書)するとともに、工
以上を考慮し、当該工事の労務予定表を作成する。
事の出来高にともなって発生する費用と対比し、工事原価を管理することが現場の原価管理であり、
表3− 42 に労務予定表の例を示す。
この管理の基準が実行予算原価である。
表3− 42 労務予定表の例
120
工種
平均人数
(人/日)
掘削
3
路床整正
4
下層路盤
7
上層路盤
8
基層工
9
表層工
10
排水工
5
(1)目標利益の設定
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
30 日
実行予算は、工事管理の方針、施工計画の内容を費用の面で裏づけて、担当者が執行する基準を
設定するものであり、実行予算の利益計画は、企業の利益計画(予算)と直結するものである。
(66 人) (24 人)
一般に、受注前の積算段階では次式となる。
30 日
(60 人)
(60 人)
30 日
積算工事原価 + 利益(本・支店経費等の一般管理費を含む)→ 見積金額
(105 人)
(105 人)
30 日
(120 人)
(120 人)
しかし、請負金額が確定し実行予算を作成する時点では、企業としての利益計画を達成するため
15 日
(63 人)
(62 人)
15 日
に目標利益を設定する。したがって、実行予算の作成に当たって、次式が成立するように施工計画
を検討し、工事原価の低減に創意工夫しなければならない。
(150 人)
40 日
(75 人)
(100 人)
(40 人)
目標利益 → 工事請負金額 − 工事原価
15 日
15 日
15 日
(134 人) (106 人)
(82 人)
(83 人)
その他雑工
6
延月数
(月)
1
2
3
4
5
6
月当り人数
(人)
200
265
265
265
265
295
累計
(人)
200
465
730
995
1,260
1,555
121
第2部
第4章 施工管理
■4−1 施工管理の構成
■4−2 工程管理
■4−3 工事打合簿及び工事履行報告
■4−4 設計変更
■4−5 出来形管理
■4−6 品質管理
■4−7 出来形及び品質の管理基準
■4−8 写真管理
4 − 1 施工管理の構成
第4章 施工管理
4−1 施工管理の構成
工事の施工管理の構成を図4−1 に示す。それぞれ設計図書や施工計画書に基づいて管理を行
い、工期内に品質及び出来形の規格等を満たす工事を完成させなければならない。
工 程 管 理
出 来 高 管 理
品 質 管 理
施工管理
原 価 管 理
出 来 形 管 理
安 全 管 理
写 真 管 理
図4−1 施工管理の構成
129
第 4 章 施工管理
4 − 2 工程管理
4 − 2 工程管理
本来この管理サークル(PDCA)は、日々管理として行うべきであり、工種毎、もしくは施工の
区切りとなる時点での確認も重要である。
実施工程表の
作 成
ポイント!
工程管理は、工期、品質、出来映え、採算性等に大きな影響を与える管理項目であり、
適切な対応策を
講じる
計画工程と実施工程を常に対比しながら、工事の進行とともに適切な改善処理を実施し
実施工程表の
進捗状況確認
原因を
追求・把握
なければならない。
差異が
あったら?
4-2-1 実施工程
工程計画は、定められた工期の中で工事の内容、数量及び現場の施工条件をもとに施工順序や工
ポイント!
種別の所要日数を組み立て、工事の完成までの流れを計画するものであり、次の手順により立案さ
れる。
工程管理とは工事の生産過程を管理するものである。工程毎の工程の組み合わせを管
理するのではなく、労働力、機械設備、資材等の生産要素を最も効率良く活用する手段
施工順序
( 施 工 手 順 )決 定
を追求していくことである。
工種の工程の組合せを
行い工期内に治める
工種毎の工程
( 施 工 日 数 )決 定
工程管理の手順と内容は、管理の一般的手順と同様で、計画(P)― 実施(D)― 検討(C)―
工種毎の施工順序の
組合せ(クリティカルパス)
改善(A)の各段階に分ける。それぞれの項目をあげると次の通りである。この管理サークル
(PDCA)
は一般的に認識されていると思うが、すべての作業において頭に入れておかなければならない事項
である。
ポイント!
CHECK を STUDY として PDSA という表記を行う場合もある。
工程計画の立案において、工種毎の施工日数の算定が重要であり、現場の条件、資材
計画:実施工程表の作成。実施計画工程表の作成に
の供給能力、機械の能力、作業員の編成、季節や天候などの自然条件等を十分に検討して、
実施工程表
は、設計図や各仕様書を熟読、理解して現場
調査を行い、施工計画を立案することと並行
計画
改善:検討により問題が生じている場合、施工体制、
施行方法の見直し、工程計画の見直しを適時
常に対比し、工程管理を行うための基準となるものである。
ct
対策
o
施 工
を把握しチェックする。
策
検討:実施工程と計画工程の差異を工事の進捗状況
対
を行う。
実施工程表は、練り上げた工程計画を図式化したものであり、施工中は計画と実績を
lan
進行の作業となる。
実施:実施計画工程表の工程に乗るように工事施工
1日あたりの施工量や施工速度を決める。
実施
検討/確認
heck
検討・確認
行う。
130
131
第 4 章 施工管理
4 − 3 工事打合簿及び工事履行報告
4−3 工事打合簿及び工事履行報告
4-2-2 変更工程
変更工程表作成のポイント
4-3-1 工事打合せはなぜ必要
• 施工体制や施工日数を検討して、工期中に工事が完成できるような対応策を考慮する。
• 変更までの実施工程と計画工程との比較を適正に行う。
工事着手前
・施工計画
・使用材料
工程計画の変更が
必要
工事進捗率に
計画とのズレが
生じた
・立会検査
設計数量などの
変更が生じた
・工事進捗状況
監督職員
請負者
施工中
変更工程表の
作成
・密な連絡
・指 示
・協 議
・承 諾
監督職員
実施工程表は、請負者が円滑な工事実施とその統制を図るためのものであり、提出の必要はない
が完成検査時または施工中に監督職員に提出を求められることがある。
請負者
を適時行う
ポイント!
現場の担当者として
・発注者との関係を良好にする。
・後々に問題の生じないように打合せにおいては常に打合簿を作成する。
・簡単な指示事項を現場等で監督員から受けた場合や、打合せ時には必ずメモをとり、
打合せ簿を作成する。
・担当監督員の確認をもらい打合せ内容の行き違いが生じないようにする。
打合せ
計画:現地での打合せ。数量、内容を十分に打合せ
ることが重要
確認:打合簿の内容が、打合せ時の内容と差違がな
いかを監督員に確認してもらい承認を頂く。
対策:打合せ簿の内容に差異があった場合には、修
正して至急再提出し、承認を貰う。
ct
対策
o
実施
打合せ簿提出
に記入し提出する。
修正・再提出
実施:打合簿の提出。打合せ内容を過不足無いよう
lan
計画
検討/確認
heck
打合せ事項の確認
134
135
第 4 章 施工管理
4 − 4 設計変更
4−4 設計変更
4-3-6 工事打合簿の記入例
工事打合簿の記入例を表4−2 に示す。
(国土交通省
提出書類形式 様式 1)
設計変更の定義等は、1-3-2 項を参照のこと。ここでは、一般的な変更の手続き及び変更(精算
変更を含む)における数量のまとめ方について述べる
表4−2 工事打合簿の例 <用紙サイズA4版>
4-4-1 設計変更の手続き
設計図書の照査
工事受注
現場踏査
問題があれば
監督職員と
協 議 す る
施工条件の照査
ポイント!
① 疑問点や改善すべきであると思われる点については積極的に監督職員と打合せを
行い、早期に明確な指示を受ける。
② 口頭による約束は避け文書を交わすこと。
(1)工事に係わる設計変更の手続き
1) 工事に係わる設計変更は、その必要が生じた都度、その変更内容を確認(現地)し、変
更に必要な資料や計画書を整備し、文書をもって監督職員と協議する。
2) 設計変更の内容が次の各項の一つに該当するときは、あらかじめ発注者(監督職員)の
指示にしたがい契約担当官等の承認(先行承認伺)を受けることになっている。
したがって変更資料の作成にあたっては監督職員の指示を受ける必要がある。
① 変更見込金額が請負代金額の 20%(概算数量発注の場合は 25%)または 4,000 万円を
超える場合。
② 構造、工法、断面等の変更で重要な場合。
(2)設計変更に伴う契約変更
4-3-7 工事履行報告書
設計変更にともなう契約変更の手続きは、その都度、変更に必要な資料をまとめ、工事請負変更
契約書により遅滞なく行う。
工事履行報告書は、工事の履行状況を(国土交通省
提出書類例 様式5)に基づき作成し、
ただし、軽微な設計変更をともなうものは、工期末にまとめて行ってよいこととなっている。
監督職員に提出する。記事欄には段階確認項目の予定時期について記入する。
軽微な設計変更をともなうものとは、次の 1)、2)以外のものをいう。
また、工程変更が生じた場合は、予定工程の( )内に工程変更後の予定工程を記入する。
1) 構造、工法、位置断面等の変更で重要なもの。
140
141
第 4 章 施工管理
4 − 5 出来形管理
2) 新工種にかかわるもの、または単価あるいは一式工事費の変更が予定されるもので、そ
4−5 出来形管理
れぞれの変更見込金額の合計額が請負代金額の 20%を超えるもの。
出来形管理は、
(3)設計変更の区分と精算
① 工事により作られる構造物の形状が設計図書と合致しているか。
設計変更の区分には追加・変更・精算があり、それぞれ工種別にどの時点の単価、歩掛を採用す
るかについて、表4−3 のように定められている。
② 差異が、仕様書に規定された規格値を満たしているかを確認するとともに、その後の施工
に反映するための管理といえる。
表4−3 設計変更に採用する単価歩掛
項 目
工 種
単 価
歩 掛
追 加
同一工種
新規工種
既契約時
変更指示時
既契約時
変更指示時
変 更
同一工種
新規工種
既契約時
変更指示時
既契約時
変更指示時
精 算
同一工種
既契約時
既契約時
出来形不足
手直しが必要
工期・工事費の損失
(注)1 既契約時とは当初設計の契約時点または変更設計の契約時点をいう。
(注)2 変更指示時とは、監督職員が変更指示事項を請負者に指示した時点をいう。
※充分な注意が必要
4-4-2 設計変更数量のまとめ
発注者の
信頼の損失
設計変更数量は、表4−4 のようにとりまとめる。
出来形管理
表4− 4 工事変更数量表の例
レベル1 レベル2
工事区分 工 種
レベル3
種 別
レベル4
細 別
レベル5
規 格
レベル6
積算要素
積算用
単 位
契約数量
変更数量
増 減
道路改良
事前に作業標準を
定める
担当者に周知徹底
備 考
出来形を測定
道路土工
堀削工
㎡
土砂掘削
土砂
BH 掘削
㎡
軟岩掘削
軟岩
BH 掘削
㎡
硬岩掘削
中硬岩
BH 掘削
㎡
施工に結果を
反映させる
路床盛土工
(注)(新)土木工事積算大系の解説(平成 26 年度版)に記載されている名称を用いた。
施工中に出来形を測定した結果をただちに施工に反映させることは、欠陥を未然に防ぎ、施工に
対する信頼性を増すことになるので、測定した記録をすみやかに整理するとともに、施工担当者に
表4− 5 内訳書の例
コンクリートブロック工 1式 76.7 m
種別
コンクリートブロック工
細別
コンクリートブロック積
数 量
元
設
計
単 位
周知させることが必要である。維持工事の場合は出来形測定は、現場踏査・現状測量から始まるが、
交通事情などにより規制を掛ける事が困難な場合もあるので、発注者と協議して行くことが技術者
として重要である。施工に情報化施工(GPS工法等)を導入した際に、従来の管理と共に「TSを
増 減
0
m
0
第1回変更
76.7
m
+ 76.7
第2回変更
−*
−*
用いた出来形管理要領」等におけるデータ管理も行い、対比するよう管理表を提出することにより
発注者への提案を行い、今後の発注形式に「TSを用いた出来形管理要領」等での管理が認められ
ればデータの正確性や発注者と請負者の同時管理の可能性なども見いだすことが出来る。
*第2回変更を行った場合のみ記入
142
143
第 4 章 施工管理
4 − 6 品質管理
4 − 6 品質管理
管理手法、品質管理図表としては、代表的なものとして
・ヒストグラム ・工程能力図
・X−R管理図 ・X−Rs−Rm管理図
品質規格
十分満足する
仕様書の
品質規格
があるが、道路舗装工事では規格値に対するデータの変動が連続的にわかるので、工程能力図が
多く使用されている。一般の工事は、ヒストグラム、工程能力図により管理する。
経済的に
品質管理計画
計画:出来形管理計画を作成する。設計図書及び仕
様書の規格値を満たすことが最低条件である。
lan
計画
対
出来形管理表を作成する。
策
適正な品質管理
施工中に管理する
確認:出来形管理表を用いて、測定値が規格内に収
工事の
信頼性向上
ct
対策
まっているかを確認する
検討/確認
対策:出来形が規格だけでなく、データの偏り等が
heck
生じた場合、対策を検討していくことが重要
不良品の排除
測定値と規格の比較
である。
良い品質の
経済的な確保
o
実施
改善方法の
発見
各種試験実施
実施:実施:施工中及び施工後の出来形検測を行い
出来形管理同様に、万が一、規格を満たすことが出来ていない場合、請負者側から修補方法など
の提案を行うことで信頼関係及施工の方法を有利に選定出来ることなどのことが考えられる。この
日常の施工管理
・工事の各段階において仕様書に規定される品質管理基準に基づいて実施する。
ためにも、日々の管理が重要になる。そして PDCA の最後のAまで行うことが重要であり、ここ
で終わるのではなく工事完成まで管理サークルによって管理して行くことに意味がある。
・目的に応じた管理技法及び試験等を取り入れなければならない。
ポイント!
4-6-1 ヒストグラムによる管理
管理技法は、進歩していくので現時点で最新かつ最適な管理技法(試験機器)の導入
ヒストグラムは品質管理等で多く使われ、効果が期待できる手法である。これは、幾つかの測定
なども積極的に検討して発注者に提案していく必要がある。
されたデータをある幅(クラス)に分け、その中に入るデータ数(度数)を加算した分布表を作成
し、これをグラフに表し、データのばらつきを把握するものである。その例を図4− 10 に示す。
・管理にあたっては管理手段と目的を十分理解する必要がある。
えて、品質や規格が均一化されるようにすることが必要である。
度数
・試験結果を速やかに整理し確認を行い、不良原因の早期発見、排除等を行い、必要な修正を加
16
14
12
10
8
6
4
2
0
10.5
11.4
12.3
13.2
14.1
15
15.9
16.8
17.7
18.6
19.5
次の級
特性値
図4− 10 ヒストグラムの例
150
151
第 4 章 施工管理
4 − 7 出来形及び品 質 の 管 理 基 準
4 − 8 写真管理
4−8 写真管理
出来形及び品質管理は、設計書、仕様書等に示された出来形及び品質の規格を満足する工事目的
工事写真の撮影は、施工管理の手段として設計図、及び仕様書に照らして工事が適正に施工され
物を建設するため、管理を行うものである。
たことを立証するために行うものである。
出来形及び品質は、それぞれの発注機関が発行する土木工事共通仕様書及び特記仕様書に示され
工事はそれぞれの段階を経て完成するが、完成した時点ではそのでき上った姿しか見ることがで
た管理基準にしたがって管理する。
きない。着工前はどのような状況であったか、どのように施工されたか、完成した姿はどうである
かなど、これらが体系的に判明できるものが工事状況写真である。
管理の実行
出来形管理は、設計値と実測値を対比して出来形表に記録する。
工事状況写真のポイント
品質管理は、その管理内容に応じヒストグラム、工程能力図または品質管理基準にまとめる(一
・工事内容を十分に理解する。
般の工事の場合はヒストグラム、工程能力図)
。
・写真撮影の目的をはっきり把握する。
・施工計画における写真撮影計画の確認。
・仕様書等の設計図書の理解。
ただし、国土交通省の品質管理基準は、下記に掲げる 1)、2)の条件に該当する工種には適用さ
れない。
計画:写真撮影計画を作成する。詳細は後述
実施:施工において写真撮影計画に基づき撮影する。
1)路盤
維持工事の小規模なもの(施工面積が 1,000 ㎡以下のもの)
ct
対策
o
写真撮影
そのための準備のポイント
策
期的に改定して、出来形管理基準及び規格値ならびに品質管理基準を発行している。
lan
計画
対
管理基準は、測定項目や試験項目、試験方法による規格値を規程したものであり、各発注者が定
写真管理計画
実施
検討/確認
heck
比 較
確認:撮影した写真を確認して写真撮影計画に基づいているか確認する。
対策:撮影し忘れがあれば、直ちに撮影し直す。
2)アスファルト舗装
維持工事の小規模なもの(同一配合の合材が 100 t 未満のもの)
4-8-1 工事写真の撮影計画立案の要点
計画:工事写真撮影計画
施工計画及び工程計画に応じて工事写真の種類と撮影時期を定めた撮影計画を作成し、撮り忘れ
のないようにする。
撮影計画立案ポイント
・工事の種類。規模の大小。地形。工事の施工順序。
撮影計画作成ポイント
① 工種による撮影項目の確認
… 工種毎における撮影項目の確認
② 撮影箇所と撮影頻度
… 工事延長と撮影頻度、全面実施と分割実施による撮影箇所の決定と撮影頻度の確認
156
157
第2部
第5章 工事の完成
■5−1 検査
■5−2 工事の締めくくり
■5−3 工事成績評定
5 − 1 検査
第5章 工事の完成
5−1 検査
5-1-1 完成検査
道路工事における完成検査は、設計図書に基づき適正に施工され、工事目的物が設計図書に規定
された規格や機能を十分満足していることを確認するために行われる。
工事請負契約に基づく工事は、施工する受注者が完成させた工事目的物を完成検査に合格した後
工事の発注者に引渡すことで完了する。
工事の着工から完成検査、引渡しまでの流れを図 5 − 1 に示す。
発注者
受注者
契 約
監 督
着 工
施 工
社内
検査
中間技
術検査
完 成
検 査 (引渡し)
○○舗装工事
(工期○○日)
(工事施工期間)
(検査期間) (発注者の維持管理)
図 5 − 1 工事着工から完成検査、引渡しまでの流れ
・受注者による検査(社内検査)
受注者は、施工段階ごとに施工管理、品質管理、出来形管理を適正に行い、定められた基準を満
足していることが証明できるよう、施工段階での資料を整理・準備し、品質証明制度により社内検
査を行う。
・発注者による検査(完成検査)
発注者は、工事の節目毎に出来形・品質の確認を経て、最終的に工事目的物が適正に完成されて
いるかどうかを確認する。また、施工プロセスチェックを通じた検査により施工状況(作り方)の
確認も行われつつある。
*施工プロセスを通じた検査の試行について
(平成 22 年 3 月 29 日国地契第 36 号、国官技第 338 号)
により工事の品質確保体制の強化と、出来高に応じた円滑な支払いが図られており、対象工事の
拡大が予想される。
(国土交通省
参考資料 501、502)
163
第 5 章 工事の完成
5 − 2 工事の締めくくり
5 − 2 工事の締めく く り
5-2-1 仮設備の撤去
5-2-2 諸機材の搬出
資材、仮設物、備品
搬出費用のムダなどを生じない範囲で転用または売却等の手続きをとる。
自 社 機 械
社内の関係部署と打ち合わせ、必要な点検・修理を行った上で搬出する。
特に機械の不調な箇所や損傷が認められる場合は、社内の修理部門に正確に伝達し、次の現
場ですぐ使用できるよう手配しておく。
リース機械
長期にリースしていた発電機などの小機械類は、紛失したり、損傷したりするケースが非常
に多い。後にクレームがつくなどの問題が発生しないよう引揚げ時にリース先と確認し、清
算をすませておく。
工事が完成すると施工期間中の緊張から開放され、やれやれこれで終わったのだという安堵感か
ら、とかく関係諸官庁その他に対する諸手続き等を怠りがちになる。しかし、工事は現場だけの完
了ではなく、事務処理のすべてが終わってはじめて完了したといえるのであって、たとえ良い仕事
を仕上げ、発注者に喜んでもらったとしても、現場を引揚げる際に跡片付け等の処置が万全でなく、
近隣に対して迷惑を掛けるようなことがあると、会社は社会的信用を失うことになりかねない。現
場担当者としては、最後の締めくくりである引揚げ時処置に十分留意する。
5-2-3 工事の清算
引揚げ時の処置について注意すべき主な事項は、次のとおりである。
工事が完成したあとは工事費の清算をしなければならない。「3−4 原価管理」を参照して工事
関係官公庁
178
・工事完了届、事業所廃止等の所定の手続きを行う。
・現場作業所解体後しばらく現地に留まる場合は、携帯電話等の連絡手段を備えておく。
・引揚げ後の連絡先を届けておく。
社 内
・なるべく早く現場作業所を引揚げ、人員、機械及び資材等を他工事に使用できるよう手配
する。
・工事関係書類は良く整理し、社内の担当者に引渡す。
・補償問題その他引揚げ時までに解決のついていない事項等については、社内の担当者に引
継ぎ、相手方に迷惑を掛けたり、事務上の手落ちなどが生じないようにしておく。
・労災保険や火災保険その他工事終了後も契約期間が残っているものについては、これを解
約して戻金請求等の手続きをしておく。
事 業 者
・現場作業所解体に当たり、電気・電話・水道を地帯なく切断・復旧する。
・郵便局、NTT に対し、移転の手続きを必ず行う。
地主・近隣
・借用土地・建物等は契約条件に照らし、手落ちのないよう返還手続きを行う。契約解除後
に問題が残りそうな場合には、覚書や念書等を交わして、事後に問題がおきないように対
処しておく。
・複数の地主が関係している場合は、将来、境界線等の問題が起こらないように正確な測量
を行い、立会いのうえで承認を得ておく。
・工事期間中に世話になった近隣・得意先等には必ずお礼の挨拶をする。
・補償その他問題のあった近隣等についても挨拶し、将来、問題がぶり返すことのないよう
に処置しておく。
取引先・協力会社
・現場作業所解体に当たり、残材等は必要に応じて産業廃棄物として処理する。
・資材その他大口の取引先をはじめ、現場事務所または宿舎等で使用した日用品等小口の取
引先まで、掛買いをしていた商店等に確認し清算する。
・協力会社を含むすべての掛買いについても確認し清算する。
の清算を行い、実行予算書との差異が大きい場合はその原因を明確にする。なお、各工事の利益(工
事請負金額−工事原価−一般管理費等)がその会社における工事部門の利益となる。
179
第 5 章 工事の完成
【工事成績優秀企業の認定】
1)対象企業
下記「2.対象工事」に該当する工事の実績を 3 件以上有する企業
2)対象工事
地方整備局が発注し、過去2カ年度内に完成した土木工事のうち、一般土木工事、アスファ
ルト舗装工事、鋼橋上部工事、セメントコンクリート舗装工事、プレストレストコンクリート
工事、法面処理工事、河川しゅんせつ工事、グラウト工事、杭打工事、維持修繕工事とする。
3)請負工事成績評定結果の活用に関する一定以上の点数等
当面、80 点を原則とする。
4)認定方法
地方整備局長名により工事成績優秀企業認定書が、認定優秀企業に授与される。
【認定優秀企業に対する措置】
1)認定優秀企業に対する措置
① シール等の使用
地方整備局長等から授与された「工事成績優秀企業認定シール(ヘルメット用)
」
「ピンバッ
ジ」を使用することができる。
② 認定ロゴマークの使用
工事成績優秀企業認定ロゴマークを「主任(監理)技術者の名札」
、
「企業の名詞」等に使
用(印刷)することができるとともに、
「建設現場への標示」に掲示することができる。
③ 中間技術検査の減免
当該地方整備局及び事務所が発注する土木工事において、原則、中間技術検査の減免が行
われる。
④ 総合評価落札方式での活用
当該地方整備局及び事務所が発注する土木工事(営繕、港湾空港工事は除く)における総
合評価落札方式の資格審査の評価項目として活用する。
2)認定優秀企業に対する措置の適用期間
認定優秀企業の認定有効期間は、当該企業を「工事成績優秀企業」と認定した後、1 年間と
し、原則、当該年度の 8 月 1 日から翌年 7 月 31 日の間とする。
3)認定優秀企業の資格失効
適用期間内に以下の事案が発生した場合には、それ以降、工事成績優秀企業としての資格を
失効するものとする。
① 当該地方整備局等発注工事の請負工事成績評定で 65 点未満となった場合。
② 当該地方整備局等発注工事において、工事事故や現場説明書の指導事項への抵触等により
文書注意もしくは指名停止の措置を受けた場合。
③ その他、法令遵守違反、民事再生法の申請その他不適切な行為により無効とするべきと判
断した場合。
188
技術委員会
委 員 長 前山 俊彦
技術及び施工管理部会( 2015 年改訂版編集担当委員 )
部 会 長 松田 敏昭
副部会長 伊藤 文隆
検討WG
WG長 構口 武志
委 員 浜崎 功 谷口 克也 萩原 秀司 加藤 和之
大場 拓也 佐々木昌実 松本 勝也 伊藤 均
道路工事現場 工務ハンドブック
ー 2015 年 改訂版ー
昭和 62 年 4 月 1 日
初 版 発 行
平成 元 年 4 月 1 日
改
平成 3 年 4 月 1 日
第 2 回改訂版 発 行
平成 6 年 3 月 1 日
第 3 回改訂版 発 行
平成 8 年 3 月 1 日
第 4 回改訂版 発 行
平成 10 年 3 月 25 日
第 5 回改訂版 発 行
平成 12 年 3 月 25 日
第 6 回改訂版 発 行
平成 14 年 3 月 25 日
第 7 回改訂版 発 行
平成 16 年 3 月 10 日
第 8 回改訂版 発 行
平成 18 年 3 月 27 日
第 9 回改訂版 発 行
平成 20 年 3 月 17 日
第 10 回改訂版 発 行
平成 22 年 3 月 20 日
第 11 回改訂版 発 行
平成 27 年 4 月 1 日
第 12 回改訂版 発 行
訂
版 発 行
頒価 2,500 円 ( 消費税別 )
編集・発行 一般社団法人 日本道路建設業協会
〒 104-0032
東京都中央区八丁堀 2 - 5 - 1 東京建設会館 3 F
電話:03 - 3537 - 3056(代)
印 刷 大光社印刷株式会社
工務ハンドブック 2015 年改訂版 付録 DVD 収緑内容
《フォルダ構成》
shiryo…資料
sankou…参考資料
本書と連動した参考資料を収録しました。文中の
deta…道路施設基本データ 作成支援ツールとサンプルデータ
マークが対応しています。
• 距離標・測点属性入力支援ツール Ver.1.1.1
cyohyo…提出書類様式(2015 年 3 月現在)
• 道路施設基本データ作成システム Ver.1.0.2
国土交通省ホームページに公開されている『
「土木工事共通仕様書」を適用する
• 道路工事完成図等チェックプログラム Ver.2.4
請負工事に用いる帳票様式』を収録しました。
• 道路施設基本データサンプルデータ
kikai…機械/安全用品イラストデータ
deta2…平成 26 年度道路工事完成図等作成要領実施説明会配布資料
•(資料 1)道路工事完成図等作成要領の全体概要
(社)全国建設機械器具リース業協会より提供のイラストデータです。
•(資料 2)道路工事完成図等の作成方法
※利用には Microsoft Excel が必要です。
•(資料 3)データの品質チェック、登録方法について
nouhin…電子納品に関する要領・基準
safety…「見える化」「好事例」集
(一社)日本道路建設業協会 環境・安全委員会 安全部会
kizyun…各種基準類
電子納品関係要領・基準(国土交通省 国土技術政策総合研究所 発行)
• 電子納品等運用ガイドライン【土木工事編】
• 工事完成図書の電子納品等要領
• 事前協議チェックシート(土木工事用)
• 電子媒体納品書
• デジタル写真管理情報基準
• CAD 製図基準に関する運用ガイドライン(案)
DVD収録の内容は 2015 年3月現在のものです。最新情報については各ホームページなどで
ご確認下さい。
• 事前協議・成果品・発注図面チェックシート
• CAD 製図基準(案)
注意事項
• 土木工事の情報共有システム活用ガイドライン
• 付録DVD中に掲載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。
【本編】
• 道路工事完成図等作成要領(第 2 版)
• 付録DVDをお使いになる前に必ず「初めにお読み下さい」をお読み下さい。
【巻末資料】
• 道路工事完成図等作成要領(第 2 版)
• ブラウザや環境によっては、正しく動作しない場合があります。
• チェック結果記録
• ‌付録DVDの使用によって生じたいかなる損害も、当協会は一切の責任を負いませんので、
あらかじめご了承下さい。
道路工事現場
道 路 工 事 現 場
工務ハンドブック
工務ハンドブック
2015 年 改 訂 版
参考資料
機械/安全用品イラストデータ
提出書類様式
「見える化」
「好事例」集
2015年 改 訂 版
︵一社︶日本道路建設業協会
一般社団法人
日本道路建設 業 協 会
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