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国学と民衆思想
第 47 講 国学と民衆思想 国学と民衆思想 ① 解説 契沖は江戸中期の国学者で、徳川光圀の命により万葉集の注釈書である『万葉代匠記』を著 し、荷田春満など以後の国学者に影響を与えた。 ②「ますらおぶり」は賀茂真淵が理想としたもの。 ③古義を明らかにし、日本の古代精神を探求したのは荷田春満である。 ④儒仏を排除した復古神道を体系化して広めたのは平田篤胤である。 a=② b=③ 解説 a 賀茂真淵の著書は『万葉考』 『国意考』。国意とは、儒教・仏教の影響を受けない純粋な日本 固有の道の意味で、復古思想を説いたものである。 ①は安藤昌益(48講)、③は日 (44講)、④は石田梅岩の著書である。 b 賀茂真淵は、『万葉集』には儒仏の影響を受ける以前の日本人の自然な感情が表れていると 考え、そこには自然で素朴で大らかな心(高く直き心)が表現されていると主張した。 ①各人がそれぞれの職分につとめることを主張したのは石田梅岩である。 ②万人直耕の自然世(平等な社会)を理想としたのは安藤昌益である。(48講) ④士農工商は「天の一物」であると主張しているのは、①と同様に石田梅岩である。 6 第 47 講 国学と民衆思想 a=① b=② 解説 a 賀茂真淵が『万葉集』に見いだした理想的な精神は、男性的で素朴でおおらかな「ますらを ぶり」である。彼は、平安時代以降の女性的で繊細な表現である「おやめぶり」を批判して いる。 b 本居宣長の死後の門人を自称し復古神道を体系化したのは平田篤胤である。 ③ 解説 本居宣長の代表的著書は『古事記伝』『玉勝間』『源氏物語玉の小櫛』である。 江戸時代の国学者と著書は以下の通り 契 沖 『万葉代匠記』 荷田春 『創学校啓文』 満 賀茂真 『万葉考』『国意考』『歌意考』 淵 本居宣 『古事記伝』『玉勝間』『源氏物語玉の小櫛』 長 平田篤 胤 7 たま の み はしら 『霊能真 柱 』『古道大意』『古史伝』 第 47 講 国学と民衆思想 ③ 解説 から ごころ 本居宣長は、中国から伝来した儒教や仏教などに影響を受けた心を「漢 心 」と批判し、純 粋な日本古来の「真心」を取り戻さなければならないと主張した。 ④ 解説 本居宣長は、人の心が「ものごと」に触れた時の感情の動きを「もののあわれ」と呼び、そ れを知ることは、人が生きる道徳のもとであると説いた。 ①朱子学の抽象的な理を批判し、天地を「一大活物」と捉えたのは伊藤仁斎である。 ②朱子学が否定する日常的な欲望や感情を自然なものであるとし、武士の指導者としての 道徳(士道)を説いたのは山鹿素行である。 ③愛敬の心を持ち、「孝」を重視したのは中江藤樹である。 ② 解説 資料文に「善人も悪人もおしなべて」「善人だからといって善い所へ生まれることはない」 という部分が、②の「現世での行いによって死後の世界が決定されるということはない」に 相当する。また、資料文の「儒教や仏教は・・・理屈を述べている」と言っているので、これ も「いつわりの救済の道に走ってはならない」という部分に重なる。 ①「死を忘れて楽しく生きるべき」という部分は見られない。 ③儒教や仏教は・・・理屈を述べているのだから、「修行が必要」は誤りである。 ④黄泉の国という「区別」があるので誤りである。 8 第 47 講 国学と民衆思想 a=② b=④ 解説 a 国学者の著書は問4の解説を参照のこと。 ①は契沖、③は荻生徂徠、④は中江藤樹である。 b 平田篤胤は江戸末期の国学者で、復古神道を体系化して広めた。それは、儒教や仏教などの 外来思想を排除し、日本古来の精神を取り戻すことをめざしたもので、幕末の尊王攘夷運動 や明治維新における日本人の民族意識形成に影響を与えた。 ①「ますらをぶり」「高く直き心」は賀茂真淵の説明である。 ②江戸時代の思想家である富永仲基の説明であるが、講義では扱わない。 ③天皇のもとにすべての民が集結して忠誠を尽くすという「一君万民論」を唱え、松下村塾 では久坂玄瑞・高杉晋作・伊藤博文・山県有朋など多くの志士を輩出したのは、吉田松陰 である。48講で学習する。 ① 解説 日本では、古来より精神的基盤として清明心・正直・誠の精神が尊ばれた。 ②本地垂迹説の説明としては、神と仏が逆になってるので誤り。 ③神仏習合はありえるが、特別に親鸞の浄土信仰(つまり浄土真宗)のみと合体したのでは ない。 ④垂加神道のように、儒教と神道の融合をめざしたものも見られるので「対立」は誤り。 9 第 47 講 国学と民衆思想 ② 解説 石田梅岩は商人の道徳として正直と倹約を説き、暴利をむさぼらない営利活動は正当である として商人の生き方を肯定した。 か かえ ①孔子は己に克ちて礼に復るを仁とした。 ③日本独特の道徳観念である。 そくいん しゅう お じ じょう ぜ ひ ④孟子の四徳で、その端緒が惻隠の心・ 羞 悪の心・辞 譲 の心・是非の心の四端である。 ② 解説 心学を打ちたてたのは石田梅岩である。 ④ 解説 石田梅岩は、各人がそれぞれの職分に努めること、正直と倹約、知足安分などの町人道徳を 説いた。 ①二宮尊徳の思想である。48講で学習する。 ②安藤昌益の思想である。48講で学習する。 ③「誠」「仁」「愛」を重視したのは伊藤仁斎である。 10 第 48 講 西洋文化の受容とその他の江戸時代の思想家 西洋文化の受容とその他の江戸時代の思想家 ② 解説 佐久間象山はアヘン戦争で清がイギリスに敗北したことに衝撃を受け、西洋科学技術の導入 と開国論を説いた。 ①安藤昌益が理想とした、万人直耕の自然世。 ③一身独立・一国独立の理念は、49講で学習する福沢諭吉をあらわすもの。 ④儒教や仏教を理屈ばかり説く堅苦しい精神的態度とし、その影響で日本人の生き生きとし た感情が抑圧されていると批判したの本居宣長の考えに近い。 a=② b=③ 解説 a 佐久間象山のいう「東洋道徳・西洋芸術」や、横井小楠の「堯舜孔子の道を明らかにし、西 洋機械の術を尽くす」は、東洋の精神的伝統の上に、西洋文化を知識・技術として摂取しよ うというものであり、そうすることによって国家の独立と国力の充実をはかろうとした。 これについて最もふさわしいのは、「両者を兼ね合わせる必要がある」といっている②が正 解であることが分かる。 b 「堯舜孔子の道を明らかにし、西洋機械の術を尽くす」のキーワードから横井小楠であるこ とが分かる。 11 第 48 講 西洋文化の受容とその他の江戸時代の思想家 ③ 解説 消去法も併用しながら正解を導き出そう。 「西洋が明らかにした多くの学術は要するにみな実理であるから,まさに我々の儒学に役立 てることができる」「西洋の軍事機器をはじめ各種の技術を十分に活用してこの世を営み」 と見えることから、佐久間象山・横井小楠の二人が、西洋の科学技術を取り入れながら、東 洋の精神的伝統も発展させていこうという考えの持ち主であることが分かる。 ①「修己治人」とは、為政者みずからが高い道徳を身に付けることで周囲を感化し国家を統 治するという、孔子による徳治主義の思想であるから、「実理」とは無関係である。 ②「上下定分の理」を説いたのは朱子学の林羅山である。 ④「洋学に惑わされず」という部分が誤りである。 ④ 解説 吉田松陰は「一君万民」を唱え、天皇に対してすべての民が忠を尽くすべきであると説いた。 これは江戸幕府よりも天皇のほうが上であるというもので、幕府支配を根幹から揺るがすも のであり、幕末の尊王攘夷運動にも影響を与えた。 ①「上下定分の理」を説いたのは林羅山である。 ②厳格な「敬」の実践を説き、また、儒学と神道の融合をはかった垂加神道を唱えたのは、 山崎闇斎である。 ③「正直と倹約」を商人の徳としたのは石田梅岩である。 12 第 48 講 西洋文化の受容とその他の江戸時代の思想家 ① 解説 「我が国の君主に忠を尽くす勤皇の精神」という部分に着目できれば正解が分かる。 ②「愛」「忠信」を説いたのは古学の伊藤仁斎である。 ③万人直耕の自然世を理想とし、武士や町人を不耕貪食の徒と批判したのは安藤昌益である。 ④「分に応じた倹約」 (分度)、 「富を社会に還元」 (推譲)によって「天地や他者の恩恵に報 い」る(報徳思想)を説いたのは二宮尊徳である。 ③ 解説 安藤昌益は階級や貧富の差のない万人直耕の自然世を理想とした。 ①先王の道(古代中国の聖人による治世)を理想としたのは荻生徂徠である。 ②「正直と倹約」を商人の道徳と説いたのは石田梅岩である。 ④「士道」を武士の道徳として説いたのは山鹿素行である。 ③ 解説 安藤昌益は、①身分や差別のある人為的社会を「法世」と批判し、②万人が直耕する平等な 社会を「自然世」として理想化した。そして、④自然世を法世に堕落させたのは、儒教や仏 教、神道などの伝統的な教学であるとして批判した。 ③仏道実現のため、職業への精励を説いたのは江戸時代初期の禅僧である鈴木正三。 (講義では扱わない) 13 第 48 講 西洋文化の受容とその他の江戸時代の思想家 ④ 解説 自然の営みである「天道」と、人の営みである「人道」の恩に徳で報いるというのが、二宮 尊徳の報徳思想である。 ①「自利」は出家と修行による自己の悟りをめざす小乗仏教の、「利他」は他者の救済をめ ざす大乗仏教の考えである。 ②「孝」は時・場所・身分に応じて実践するという中江藤樹の考えである。 ③万人直耕の「自然世」を理想とし、人為的につくられた身分制度を「法世」と批判したの は安藤昌益である。 14 第 49 講 明治期の代表的思想家① 明治期の代表的思想家① ④ 解説 ア・男女同権の一夫一婦制を主張し、自らも契約結婚をしたのは森有礼(明六社の社長)。 森有礼は 摩藩の出身で初代の文部大臣をつとめたが、大日本帝国憲法発布の日の朝に暗殺 された。 イ・フィロソフィを「哲学」と訳したのは西周。ほかにも「主観」 「客観」 「理性」 「帰納」 「演 繹」などの語訳を考案し、西洋哲学移入の基礎をつくった。幕末には阿蘭陀に留学した経験 をもち、徳川慶喜の側近としても活躍した。 ④ 解説 福沢諭吉は独立自尊の精神を重視し、『学問のすゝめ』の中で「一身独立して一国独立す」 と述べて、民権と国権との確立を同時に求めた。 ④ 解説 福沢諭吉は下級武士の出身であったことから、封建制度(身分制度)を厳しく批判した。 『学問のすゝめ』冒頭でも「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」とし て、人は生まれながらに平等な人権が与えられているという天賦人権論に基づく独立自尊の 精神を尊重した。 ①は身分の高い低いをあらわす言葉。②は古くからの習慣をかたくなに守ること。 ③は明治新政府が 15 摩や長州など限られた藩出身者で要職が独占されてしまったこと。 第 49 講 明治期の代表的思想家① ⑤は旧民法において、戸主権と一家の財産を相続する制度で、原則的には長男にその権利が 認められていた。⑥は48講で学習した佐久間象山の言葉「東洋道徳・西洋芸術」。 ④ 解説 福沢諭吉は、日本が植民地とならずに独立を維持するためには、まず一人一人が独立自尊の 精神(独立心)を育み、そのための数理学(西洋の近代科学)を学ばなければならないと説 いた。 ④ 解説 資料文に「文明の後るる者は先だつ者に制せらるるの理」「自国の独立如何の一事」と見え ることから、④の内容がふさわしいと分かる。 ①佐久間象山の「東洋道徳・西洋芸術」をあらわす内容となっている。 ②三宅雪嶺らの国粋主義の内容となっている。 ③支配される理屈は「誤り」としているところが、資料文の内容としては誤りである。 中江兆民は、「民権これ至理なり・自由平等これ大義なり」として、民権は万国共通で適 用されるものであるという立場から、西欧列強による植民地支配を批判した。 ③ 解説 1885 年の『時事新報』に掲載された「脱亜論」は、主宰者である福沢諭吉の考えが反映され ているといわれている。いつまでも近代化しようとしない中国・朝鮮を批判し、そのような アジアの悪友とは手を切って、文明国である西欧諸国と同様な形で隣国に接するべきである と説いた。この背景には、福沢が支援していた朝鮮の改革勢力の敗北(壬午事変・甲申事変) がある。 16 第 49 講 明治期の代表的思想家① 福沢諭吉=① 西村茂樹=③ 解説 福沢諭吉は儒学批判を行い、文明の進歩思想から社会をとらえた。 西村茂樹は、道徳教育の欠如を憂慮して国民道徳論を発表した。 ②第50講で学習する新渡戸稲造の思想。著書の『武士道』は英文で、武士道を日本精神の 支柱と海外に紹介された。 ④抵抗権を盛り込んだ私擬憲法である「東洋大日本国国憲按」を作成したのは、土佐の自由 民権運動家である植木枝盛である。 ⑤儒学を批判し、儒学や仏教を「漢意」として排除し、日本古来の精神に立ち返るべきであ ると説いたのは本居宣長である。 ① 解説 西村茂樹は佐久間象山のもとで洋学を学び、のち森有礼に招かれて明六社に参加した。 『日本道徳論』では、国民道徳は儒教を根幹とし、これに西洋哲学の長所を取り入れて再建 するべきであると説き、西洋文化に心酔していた当時の日本人に自覚と反省をうながした。 ① 解説 中江兆民の代表的著作物は『民約訳解』(ルソーの『社会契約論』を漢訳)、『三酔人経綸問 答』、『一年有半』がある。 ②は福沢諭吉、③は植木枝盛、④は西村茂樹である。 17 第 49 講 明治期の代表的思想家① ③ 解説 中江兆民の思想は、民権には為政者から与えられる恩賜的民権と人々が自らの力で獲得する 恢(回)復的民権があるとした。フランス革命のような恢(回)復的民権を理想としながら も、当時の日本がおかれた条件においては、恩賜的民権を育てながら、やがては恢(回)復 的民権へと移行させるべきであると考えた。 ①人民が恩賜的民権を「大切に守り」という部分は誤りである。 ②為政者が人民に権利を恵み与えることは「ありえない」という部分が誤りである。 ④恩賜的民権を実質的なものにしていくためには、為政者ではなく人民の力で育てていかな ければならないので誤りである。 ロック=⑥ アダム・スミス=④ 中江兆民=② 解説 ロックは、生命・自由・財産の所有権は誰にも奪われない自然権として重視した。 アダム・スミスは、各自の自由な利益追求が「神の見えざる手」に調整されると考えた。 中江兆民は、民権には恩賜的民権と恢(回)復的民権があると考えた。 ①はスペンサーの社会進化論、③は一般意志を強調したルソー、⑤はミルの他者被害(危害) の原則、⑦はロールズの公正としての正義である。 18 第 50 講 明治期の代表的思想家② 明治期の代表的思想家② ③ 解説 ア・内村鑑三と新渡戸稲造はともに札幌農学校出身でキリスト教徒、アメリカに留学して武 士道精神に着目したという共通部分が多い。今回は、「武士道」の語を海外へ紹介した とあるので、『武士道』を英語で著した新渡戸稲造がふさわしい。 イ・植村正久は日本プロテスタント教会の指導者で、東京神学社を創設した。 井上哲次郎はドイツ観念論哲学で、高山樗牛とともに日本主義を唱えた。国家主義の立 場からキリスト教を反国体的と排撃し、内村鑑三の不敬事件に際しては、「教育と宗教 の衝突」と題してキリスト教を攻撃した。 ① 解説 武士道の清廉潔白は精神がキリスト教の真理を実現する土台であるとして「武士道に接木さ れたるキリスト教」といったのは内村鑑三であるが、『武士道』を著したのは新渡戸稲造。 ②正文。イエス(Jesus)と日本(Japan)は矛盾するものではないとする「二つのJ」。 ③正文。教会や儀式にとらわれない「無教会主義」。 ④正文。内村鑑三はアメリカでの生活を通して、その拝金主義や打算に満ちた物質文明に失 望し、清潔で真面目な道徳精神が息づく日本にこそ、キリスト教が根付くことを期待した。 19 第 50 講 明治期の代表的思想家② ② 解説 内村鑑三はイエス(Jesus)と日本(Japan)は矛盾するものではないと主張した。さらに、 「武士道に接木されたるキリスト教」というように、イエスへの純粋な信仰によって、西洋 化・近代化の中で失われがちな日本人の道徳的精神を再生させようとした。 ①「矛盾する」という部分が誤りである。 ③「対立する」という部分が誤りである。さらに後半は福沢諭吉にみられる脱亜入欧。 ④前半部は正しいが、「清明心を再生」の部分が誤りである。 ① 解説 「聖書の言葉に直接向き合う」という無教会主義、 「イエスと日本に自分の生涯をささげる」 という二つのJから内村鑑三であることが分かる。 ②同志社を設立したのは新島襄である。 ③安部磯雄や木下尚江らキリスト教社会主義者で、1901 年に最初の社会主義政党である社会 民主党を結成したが、治安警察法により禁止された。第51講で学習する。 ④『武士道』を著し、「太平洋のかけ橋」となることをめざしたのは新渡戸稲造である。 ① 解説 孫文については講義で扱っておらず、やや難問である。消去法で正解に近づこう。 ②マザー・テレサについて後半部分は正しいが、「インド独立と民族解放の運動」を行った のはガンディーである。 ③孫文は中国において辛亥革命を指導した人物であるが、キリスト教には帰依しておらず、 また彼の唱えた三民主義とは、民族(民族としての自覚) ・民権(人民主権の確立) ・民生 (生活向上のための施策)をさす。 20 第 50 講 明治期の代表的思想家② ④キング牧師はバス=ボイコット運動や仕事と自由のための大行進など、多くの人々を率い て公民権運動をはじめとする人種差別撤廃運動を指導したので、「力(パワー)を不必要 なもの」とはみていない。また、非暴力主義は主張したが、無抵抗主義ではない。 ① 解説 北村透谷は「実世界(現実の世界)」から区別された「想世界(個人の内面的世界)」の独立 を説き、「想世界」において根源的な内部生命の要求を実現しようとした。 ④ 解説 ロマン主義は、旧来の因習的な道徳や形式・規則をしりぞけて、自由な感情・想像力を表現 する文学・芸術運動である。 ①旧来の道徳に「従うために」ではない。②「理性」よりも感情を優先させる。③「現実を ありのままに直視する」のは自然主義文学の立場。 ② 解説 夏目漱石は、外圧による文明開化である「外発的開化」ではなく、自然発生的な文明である 「内発的開化」であるべきだと主張した。 21 第 50 講 明治期の代表的思想家② ① 解説 夏目漱石の「自己本位」は、伝統的社会関係から解放され自我の内面的要求にしたがって生 きることで、それまでの他者に迎合する浮草のような「他人本位」の生き方に対する言葉で ある。さらに、自我の欲求である個人主義を貫こうとするとエゴイズム(自己中心主義)が ともない他者と衝突してしまうので、「他者を尊重」しながらエゴイズムを克服しなければ ならないともいっている。 ④がまぎらわしいが、これは自然主義文学をあらわす内容である。 ② 解説 夏目漱石は自己本位に基づく個人主義を主張した。それは、自己のみならず他者の主体性を も尊重し、エゴイズム(自己中心主義)とならないようにしなければならないという考えで あった。 ①「利己心」はエゴイズムに通ずるものであるかた、これを発揮するのは間違い。 ③第51講で扱う西田幾多郎の考え。 ④「宇宙・自然を我が身で直接感受する」とはいっていない。 ① 解説 夏目漱石は晩年、東洋的な境地である則天去私を唱えた。これは、自己の執着から離れ、す べてを包み込むような自然に自分をまかせることで、静かに一切を受け入れる態度を肯定し たもの。 ②森 外の諦念(レジグナチオン)の説明である。 ③西田幾多郎の説く、主客未分の純粋経験の説明である。 ④和 哲郎の間柄的存在の説明である。 22 第 50 講 明治期の代表的思想家② ① 解説 森 外の諦念は、問11の②にもみられた。「むやみに自我を主張するのではなく、現実的 な世俗社会の中で生きる自己をありのままに受け入れ、そこに安んじようとする考え方。」 ②は夏目漱石の則天去私の内容である。 ③「現実から逃れる」という部分が誤りである。 ④「社会的要請に応えることに自らの理想を見いだ」すというような、前向きの概念ではな い。 23 第 51 講 日本の独創的思想,その他の思想 日本の独創的思想、その他の思想 ③ 解説 西田幾多郎のいう純粋経験は、主観と客観がいまだ区別されていない(主客未分)具体的・ 直接的な経験で、我(自己)と物(対象)が対立・分離する以前の根本的な経験をさす。 コンサートにおけるCさんの場合、自分(自己)と歌手(対象)が区別された状態で、さら に「改めて」という経験以後の状態で喜びをかみしめているので、「主客未分」の状態であ る「純粋経験」には当たらない。 ①画家と風景が一体となり、未分の状態である。 ②我を忘れて没頭した状態となっている。 ④物心がつく前の赤ん坊は、我(自己)と物(対象)との区別がついていない。 ④ 解説 第50講で学習したキリスト者の新渡戸稲造は、武士道精神はキリスト教を受け容れる素地 となりうると考えた。同じような考えは内村鑑三にもみられる。よって選択肢の④はキリス ト教と武士道の精神が逆になっている。 ①正文。折口信夫は柳田国男の民俗学を継承し、従来の枠組みにとらわれず、国文学・民俗 学・芸能史にまたがる研究をおこなった。日本の神は共同体の外部から訪れる存在でとし て「まれびと(客人)」と表現したことは第39講で学習した。 ②正文。鈴木大拙は西田幾多郎とは旧友で、英文で禅に関する書物を刊行し、欧米の諸大学 で講義をおこない、日本文化と禅思想を広く海外に紹介した。 ③第50講で扱った武者小路実篤をあらわすキーワードは、トルストイに傾倒・白樺派の指 導者・理想主義文学・人道主義・自給自足の理想的共同体である「新しき村」を建設であ 24 第 51 講 日本の独創的思想,その他の思想 る。 ③ 解説 和辻哲郎の倫理学は「人間の学」とよばれ、それを象徴するのが「間柄的存在」である。 人間は独立した個人であることを自覚しながらも、それだけでは決して存在できず、人と人 との関係(間柄的存在)においてのみ人間たり得るというものである。また倫理は、単に個 人だけの問題ではなく社会だけの問題でもなく、個人と社会との弁証法的関係において成立 するとされる。選択肢の③には、 「統一・分離・結合」 「社会と個人との対立的な統一」とい う弁証法的関係がみられるので、これがふさわしいことが分かる。 ①「人間を束縛がなければ生きられない」とまでは見ていない。 ②夏目漱石の「個人主義」の内容である。 ④「個性を発揮させなければならない」という部分は、 「間柄的存在」としては誤りである。 ④ 解説 問3で確認したように、和 哲郎の間柄的存在は「独立した個人でありながら」「人と人と の関係(間柄的存在)においてのみ人間たり得る」「個人と社会との弁証法的関係において 成立」ということを念頭に置いてみる。 ①「不合理な感情や行動を否定」「完成される機能的組織」という部分は、個人と社会との 弁証法的関係にふさわしくない。 ②「不信や裏切りという個の背反の可能性を一切もたない純粋な自他和合」という部分がや はり弁証法的関係にふさわしくない。 ③「双務的契約を結ぶ」という西洋的な発想ではない。 25 第 51 講 日本の独創的思想,その他の思想 和辻哲郎=⑥ 柳宗悦=④ 解説 和辻哲郎は『古寺巡礼』で、日本文化は中国・朝鮮・インド・西洋を積極的に受容した「重 層的構造」と指摘した。 柳宗悦は無名の「民芸」に着目するとともに、朝鮮美術も高く評価した。 ①は柳田国男、②は西田幾多郎、③は岡倉天心(講義では扱わない)、⑤は三宅雪嶺の説明。 ④ 解説 柳田国男によると、日本人は古来、死者の霊は村を見下ろす山にとどまって子孫や共同体を 見守り、やがては神の地位まで昇ると考えられた。 ①「黄泉の国」へ行くというのは『古事記』などにみられる発想である。 ②日本神話にみられる古代日本人の霊魂観で、大国主神は島根県の出雲大社に祀られる。 ③古代インドにおける輪廻転生の考え方。 ① 解説 問6で確認した通り、柳田国男は死者の霊魂を「身近に慣れ親しんだ場所に留まり、子孫と も食事を共にするもの」と考えた。 ②「浄土に往生」「仏壇」という仏教的な発想はない。 ③明治以後の国家神道、または靖国神社の内容となっている。 ④「まれびと」は折口信夫に関する記述。 26 第 51 講 日本の独創的思想,その他の思想 ④ 解説 幸徳秋水は明治期の社会主義者で、軍国主義・帝国主義を批判する『廿世紀之怪物帝国主義』 を著した。明治天皇の暗殺計画に関与した罪で大逆罪に問われて死刑となった。 ①「抵抗権を認める私擬憲法」とは「東洋大日本国国憲按」のことで、植木枝盛の説明。 ②公害問題に身を投じたのは、足尾銅山鉱毒事件に生涯をささげた田中正造。 ③実学、つまり数理学の重要性を説いたのは福沢諭吉。 ③ 解説 吉野作造は、当時危険とされた国民(人民)主権ではなく、天皇主権の明治憲法下での民衆 の政治参加を主張した。その内容は普通選挙と政党内閣の実現を骨子とするものであった。 ①「中立」「中道」「国民を主体」という部分がふさわしくない。 ②「民定憲法の制定」、④「国民主権の確立」は説いていない。欽定憲法である明治憲法の 枠内(天皇主権のもと)での民衆の政治参加を主張した。 ③ 解説 平塚らいてう(雷鳥)は代表的な女性解放運動家。青鞜社を設立し、雑誌『青鞜』の創刊号 では「元始女性は実に太陽であった、真正の人であった」として女性の社会的地位の向上を 訴えた。また、与謝野晶子との間では母性保護論争をくりひろげた。 ①高群逸枝は女性史研究家。(倫理の教科書には登場しない) ②与謝野晶子は明治から昭和にかけてのロマン(浪漫)派の歌人。夫の鉄幹とともに創刊し た『明星』や歌集の『みだれ髪』などが有名。 ④福田(景山)英子は岸田俊子らと活躍した女性自由民権運動家。 27 第 51 講 日本の独創的思想,その他の思想 ② 解説 『青鞜』創刊号に掲げられた有名な一節である。設問にあげられた部分の続きも含めて確認 してみよう。「元始女性は実に太陽であった、真正の人であった。今、女性は月である。他 に依って生き、他の光によって輝く病人のような蒼白い顔の月である。」 つまり、女性には本来、素晴らしい能力が備わっているにもかかわらず、封建的社会の中で は、結婚など男性に依存しなければ生きて行けない、他から光を当てられなければ自ら輝く ことができない月のような存在となってしまっているという意味である。従来の封建的な男 女関係を打破して「新しい女」をめざしたのが平塚らいてうである。よって、この内容にも っともふさわしいのは②となる。 ④ 解説 丸山真男は福沢諭吉の思想研究を通じて独立の精神を重視した。 ①『日本道徳論』で儒教思想を根幹とする国民道徳を説いたのは西村茂樹である。 ②「内発的な開化」と唱えたのは夏目漱石である。 ③「風土」に着目したのは和 哲郎、さらに文章の内容は「和魂洋才」の説明である。 28 第 52 講 大衆社会とその特徴① 大衆社会とその特徴① ② 解説 大衆とは、匿名の多数者からなる組織されていない人々の集合をさす。彼らは、非対面的・ 非人格的な世界に生き、マスコミなどに受動的な姿勢をとり、非合理的な態度に傾きやすい とされている。その場に居合わせた非合理的な「群衆」や、合理的な判断力をそなえた「公 衆」とは区別される。②の選択肢は、リースマンが指摘した他人指向型のあらわれである。 ①その場に居合わせた非合理的な「群衆」の説明である。 ③近代以前に典型的に見られる「伝統指向型」の性格である。 ④非対面的でありながら合理的判断力をそなえた「公衆」の説明である。 ② 解説 ある行動を誘発する音楽をかけるという技術が利用されている。 ①③④はそれぞれ、「人々を操作する技術」とはいえない。 ③ 解説 官僚制(ビューロクラシー)は、主観的な判断をもち込まず、決められたルールに従って効 率的に仕事を行うという特徴をもつため、近代社会における巨大組織の運営に欠かせないシ ステムとされた。しかしその反面、ルール(規則)そのものが目的化してしまったり、組織 が硬直化する危険性がある。 ①「個性や自発性が重視」されることはない。 29 第 52 講 大衆社会とその特徴① ②部署ごとの専門性が重視されるのであって、「非専門性が特徴」ではない。 ④官僚制に限らず、どのような組織にも見られる特徴である。 ウェーバー=⑥ フロム=② リースマン=⑤ 解説 ウェーバーは官僚制についての研究なので⑥。 フロムは『自由からの逃走』を著した精神分析学者。自由がもたらす孤独と不安に絶えきれ ず、大衆に埋没して服従や従属に安心を求める現代人の心裡を分析したので②。 リースマンは人間の社会的性格を伝統指向型・内部指向型・他人指向型に分類したので⑤。 ①は「主体的真理」をめざしたキルケゴール。 ③は社会規範から逸脱したものを「狂気」として排除するという内容からフーコー。 ④講義では扱わないガセット(スペインの哲学者)の思想。 ② 解説 ノーマライゼーションは、高齢者や障碍者が健常者と同じ生活空間を共有できるようにつと めることで、段差や敷居をなくすバリアフリーやユニバーサルデザインを含む。 ①NPO法は 1998 年に施行されている。 ③「高齢者が携わるのが基本」という部分が誤りである。 ④あらかじめ用意されたプログラムから選択しなければならないわけではない。 ③ 解説 「公的な福祉活動全体は次第に減少の方向に向かっている」という部分が誤りである。 高齢化社会の到来により、国や自治体による福祉政策の充実も求められている。 ①正文。無償の地域貢献はもちろんボランティア活動である。 30 第 52 講 大衆社会とその特徴① ②正文。1998 年にNPO法が施行されたが、常勤者の報酬が極度に低かったり、金銭の流れ や実体が不明確なNPOがあるなど問題点が指摘されている。 ④正文。青年海外協力隊は、国際協力事業団が発展途上国に派遣するボランティアである。 ④ 解説 介護職員の人手不足が深刻なのはその通りだが、大型福祉施設への集中化ではなく、むしろ 逆に在宅介護のための支援サービスの充実に力が入れられている。また、高齢者を慣れ親し んだ土地から引き離すのは良くないので、施設の統廃合も好ましくない。 ④ 解説 バリアフリー政策を充実させる自治体が増えてきた。低床バスや路面電車、駅のエレベータ ーや公共施設などのスロープなど、多く目にするようになってきた。 ①敷居や階段をなくすのがバリアフリーである。 ②問7でも確認した通り、施設よりも在宅での介護に力が入れられつつある。 ③「義務」を求めるというのはおかしい。 a=③ b=① c=④ d=④ 解説 a 平均寿命とは、「生まれたばかりの0歳の子どもが、平均してあと何年生きられるか」をし めすもので、平均余命ともいう。これを示しているものは③である。 ①「死亡した人々」ではない。②日本人の平均寿命は、ここ数年世界最高の水準である。 ④厚生労働省発表による日本人の平均寿命の年次推移では、男女の差が5歳を超えている機 関が長く続いている。 31 第 52 講 大衆社会とその特徴① b 高齢化のスピードが他国と比較して著しく速いのが日本の特徴である。 65歳以上人口が7%(高齢化社会)から14%(高齢社会)になるのにスウェーデンでは 85年かかったのに対し、日本はわずか24年であった。 ②がスウェーデン、③がアメリカ、④が韓国である。 c 施設を嫌う高齢者が多いのは事実であるが、まだまだ在宅介護のサービスが完全に行き届い ている状態ではなく、また介護休暇制度もまだまだ浸透しているわけではないので、現実に は老人ホームの施設不足は問題となっている。 ①医療財政は大きな問題となっている。②町や場所によってはバリアフリーの不徹底な部分 がまだまだ見られる。③公的年金制度も未払いが大きな問題となっている。 d 「現在の生活に満足している」は70歳以上が 69.5(男)・76.1(女)であるのに対して 40歳代では 65.6(男)・71.7(女)と70歳以上の方が高い。 「充実感を感じている」は70歳以上が 60.6(男)・65.4(女)であるのに対して40歳代 は 67.5(男)・75.1(女)と40歳代の方が高くなっている。 32 第 52 講 大衆社会とその特徴② 大衆社会とその特徴② ④ 解説 「本名の公開を必須とする法律が制定された」は誤りである。 ①正文。コンピュータによって作られた仮想現実(バーチャル・リアリティ)に没頭し、 現実社会における人間関係が希薄になる若者の増加が問題となっている。 ②正文。新しい情報機器によりもたらされる膨大な情報を取捨選択する能力であるメディア リテラシーが求められるようになっている。 ③正文。ソフトウェアの違法コピーや音楽データのダウンロードについて、著作権の保護が 問題となっている。 ④ 解説 独裁者によって過酷な奴隷状態に置かれることを「管理社会」とは呼ばない。 ①正文。国家や体制側によって情報が独占され、ごく一部(内部)の者が政治的・経済的に 有利となる危険性がある。 ろうえい ②正文。現在でもなお、個人データの漏洩によるプライバシーの侵害が問題となっている。 ③正文。リップマンが指摘した通り、情報操作によってマスコミは都合の良いイメージを大 衆に抱かせることが可能である。 33 第 52 講 大衆社会とその特徴② ① 解説 問1の③で確認した通り、違法コピーなどが著作権侵害となることが問題となっている。 ②「個人に関する情報の公開が大幅に進展」してしまっては、個人情報・プライバシーの侵 害となってしまう。 ③長時間にわたるパソコン作業などが、ストレスや体調不良をもたらすことがある。 ④「情報操作を要望している」という部分が誤りである。 ② 解説 欲望に対する無限の刺激が、現代の消費社会の特徴である。 ①情報はほぼ無制限に提供され続けるので、情報の消費が鈍ることはない。 ③インターネット上の情報を意図的に操作するステルス・マーケティングなども問題となっ ている。 ④通信販売やインターネット・ショッピングでは、売り手と買い手の間で取引においてトラ ブルが発生することがある。 ② 解説 資料文2行目に「同時に受信と送信ができるようになる」と双方向の通信技術について触れ ており、4行目には「二十四時間体制の監視下」、さらに5行目以降には情報・思想統制に ついて触れている部分がある。 ①疑似イベントとは、企業や団体が宣伝効果などを考え、マス=メディアに取り上げられる ことを意識して、意図的・人工的に仕組むイベントのことである。今回の設問である「監 視社会」とは直接関係しない。 ③仮想現実(バーチャル・リアリティ)ではなく、現実に市民が国家や警察の監視下におか 34 第 52 講 大衆社会とその特徴② れる危険性を述べている。 ④不正アクセスや情報漏洩についての記述は見られない。 ② 解説 電磁波や有害物質など人体に直接影響を及ぼすものは、「仮想現実(バーチャル・リアリテ ィ)」「生身の他者との関係は現実味が薄くなっている」という内容には当てはまらない。 ①正文。「素顔が見えない者同士の節度のない中傷合戦」などは、まさに「生身の他者との 関係は現実味が薄くなっている」をあらわしている。 ③正文。 「テレビ番組の追体験」 「ファインダー越しにのぞいて回る」という部分は、仮想現 実(バーチャル・リアリティ)のあらわれである。 ④正文。 「継続性を欠いた広く浅い人間関係」 「他者との衝突や軋轢をさける」という部分は、 「生身の他者との関係は現実味が薄くなっている」をあらわしている。 ④ 解説 インターネットは国境を越えてつながるものであり、特定の興味・趣味をもつ人々がコミュ ニティを形成することができる媒体(メディア)でもある。 ①「公権力の擁護」はマス=メディア本来の使命ではない。 ②ハッカーや不正アクセスなどにより、個人情報が漏洩する危険性がある。 ③インターネットの普及により、人々が必ずしも主体的になるとは限らない。 ② 解説 メディアの普及により観光客が減少したという事実はないであろう。 ①正文。著作権侵害の問題についてはすでに触れたとおり。 35 第 52 講 大衆社会とその特徴② ③正文。衛星放送を通じて他国のテレビなどが視聴できるようになったことが、独裁国家や 社会主義国家の情報統制に限界をもたらした。その反面、メディアには常に情報操作の危 険性はつきまとう。 ④仮想現実(バーチャル・リアリティ)の弊害の一端であろう。 ④ 解説 ア・誤 総数では、 「防災・防犯のためであれば,積極的に個人情報を共有・活用すべき」 と答えた者は 29.3%(約 30%)であるから,ほぼ 3 人に「1人」である。 イ・正 総数では、「防災・防犯のためであっても,個人情報を共有・活用しない方がよ い」と答えた者は 6.8%であるから,10 人中 1 人(つまり 10%)に満たない。 ウ・正 「防災・防犯のためであれば,必要最小限の範囲で個人情報を共有・活用しても よい」と答えた者の割合は,男性 56.1%、女性 62.4%であり女性の方が高い。 エ・誤 年齢別に見ると,「防災・防犯のためであれば,積極的に個人情報を共有・活用 すべき」と答えた者の割合は,40∼49 歳(27.6%) ・50∼59 歳(28.8%)である のに対し、それより若い 30∼39 歳が 30.6%と高くなっているので、 「年齢層が高 くなるにつれ高くなっている」というのは誤りである。 ① 解説 ナショナリズムは民族主義・国民主義・国家主義ともいわれ、民族の統一や独立などを目的 とする思想や運動のこと。第一次世界大戦後、1930 年代のドイツでは特に顕著にあらわれ、 ナチ党(ナチス)の台頭やユダヤ人などの大量虐殺につながった。 文章の冒頭に「国家意識や民族意識を過度に強調する思想」とあることから分かる。 ②は自己中心主義、利己主義。③はイギリス経験論の伝統を受け継いだアメリカ的な哲学で、 行動を重視し、知識を有用性から捉える。第32講ではパース、ジェームズ、デューイを学 習した。④は議会制民主主義を通しての漸進的な社会主義運動。ウェッブ夫妻やバーナード 36 第 52 講 大衆社会とその特徴② =ショウらによるフェビアン協会の考え。 ③ 解説 「恣意的な蔑称や呼称」も典型的なステレオタイプにあたるので、 「除外される」は不適切。 ①メディアは往々にしてステレオタイプの拡散を助長する。 ②ある民族や特定の集団に対して否定的なイメージを作りだすことがある。 ④ナチ党(ナチス)がドイツ人のナショナリズムを扇動するときに、ドイツ人(アーリア人) の優秀性をうったえると同時に、ユダヤ人などを劣等なものとした宣伝などはその典型例 である。 ④ 解説 ベトナム戦争においてアメリカ軍が使用した枯葉剤は、その後、人体や環境に甚大な影響を 及ぼし、奇形児などがみられた。また湾岸戦争のときには、海に原油が流出して環境破壊が 問題とされた。 ①ハイテク兵器によるピンポイント爆撃がある程度は可能となったが、まだまだ誤爆などに よる一般市民の犠牲は絶えない。 ②マス=メディアによる戦時の情報操作(都合の良い部分だけを伝え、不都合なものは伝え ないなど)は、今でも問題として残っている。よって「正確に把握」は誤りである。 ③パレスチナ問題、中国によるチベット侵略、旧ユーゴスラビアやアフリカなど、自民族中 心主義(エスノセントリズム)に基づく虐殺行為は今も後を絶たない。 37 第 52 講 大衆社会とその特徴② ③ 解説 資料文に、東洋人は「ありのままに見られ,注目されることはまれであった」と見える。 よって③の「客観的に研究され」という部分が誤りである。 サイードのいうオリエンタリズムは、無知や誤解に基づく一面的なアジア理解が、西洋のア ジアに対する偏見を生み出し、植民地支配を正当化することとなったという批判である。 ①西洋寄りの観点から構成された東洋観、②東洋は・・・保守的で奇妙な世界として扱われ、 ④東洋を特定の見方で研究、という部分はそれぞれ正しい。 ① 解説 異文化を奇異なものとして排除するのではなく、正確な知識を得ることによって理解を深め る態度として正しいものとなる。 ②国際化という名のもとに、無批判・無条件に独自の文化を捨て去るというのは正しくない。 ③「郷に入っては郷に従え」という態度は正しいが、日本の習慣はしきたりを「忘れて・・・ 改めたい」というのは「自らの文化的伝統を尊びながら」という観点からは行き過ぎであ ろう。 ④他国の宗教を別のものに変えるべきだという点は、相手の立場を尊重しておらず、異文化 理解の趣旨に反している。 38