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習近平の反腐敗運動における摘発対象 者の関係ネットワークと政治的影響
習近平の反腐敗運動における摘発対象 者の関係ネットワークと政治的影響 王 嘉 州 (義守大学公共政策與管理学科教授) 【要約】 習近平政権が発足して 1 年 8 か月、既に副省長・副部長級以上の 高官 42 人が取り調べを受けている。習近平が進める強力な反腐敗運 動 の目的は何 なのか。摘 発対象者に 共通する関 係ネットワ ークは 存 在 するのか。 関係ネット ワークへの 調査はどの ような政治 的影響 を 及 ぼすのか。 本論は関係 スキーマを 用いて帰納 法により習 近平の 反 腐 敗運動を研 究した。そ の結果、同 運動の目的 が民心の獲 得、異 端 者の排除、および公開処罰による威信の確立であることが分かった。 「 新四人組」 のうち令計 画・党中央 統一戦線部 長のみいま だ取り 調 べを受けていないが、周辺では既に 5 人が取り調べを受けている。 周永康・前政治局常務委員のグループは計 15 人が取り調べを受けて い る。今後、 反腐敗運動 はさらに広 がる可能性 もあり、或 いは法 に よ る国家統治 が反腐敗運 動に取って 代わる可能 性もある。 習近平 の 強 力な反腐敗 運動は既に 党の執政エ リートの分 裂を引き起 こして い る 。この分裂 が中国の政 治体制の転 換につなが るかどうか の鍵は 、 習 近平が腐敗 一掃に民衆 の力を必要 とするかど うかにある が、今 の ところその確率は高くない。習近平が地方官僚 18 人を摘発したこと が、既に地方に対する威嚇効果を生んでいることから、これまで度々 地 方政府の抵 抗にあって きた中央政 府のマクロ コントロー ル政策 の 推進が期待される。 キーワード:本籍地、台頭地、現職地、法による国家統治、政治体 制の転換 -29- 第 43 巻 3 号 問題と研究 一 はじめに 中 国共産 党幹 部の汚 職腐 敗は最 高指 導者が これ までず っと 解決で きなかった難題である。胡錦涛は中国共産党第 17 回全国代表大会(以 下「十七大」)で発表した政治報告の中で、中共の腐敗状況について、 主 に党員幹部 の不正、形 式主義、官 僚主義、贅 沢な浪費、 腐敗の 横 行 が依然深刻 だと述べた 。胡錦涛は 、反腐敗は 「人心の向 背と党 の 生 存に関わり 、党が始終 しっかり取 り組まなけ ればならな い重大 な 政治的任務である」と考えていた 1。しかし、腐敗状況は胡錦涛政権 時 代、逆に更 に悪化して いった。そ こで、習近 平は総書記 に就任 し た際、「多くの事実が物語っているように、腐敗問題が深刻化は最終 的 に必ずや党 や国の崩壊 をもたらす 。われわれ はこのこと に気付 か な ければなら ない。ここ 数年、党内 で発生した 重大な規律 違反事 案 は 非常に悪質 で、政治的 影響は極め て大きく驚 くものがあ る」と の 認識を示した 2。 習近平が述べた反腐敗の重要性は「政治腐敗(political corruption) が政治の衰退(political decay)をもたらすことを防止する」と簡略 化することができる。いわゆる政治腐敗とは、その意味を主に 3 つ のカテゴリーに分けることができる。1 つ目は公共職位論である。同 理 論では政治 腐敗を公共 的な役割に おける規範 に違反し、 職権を 利 用して私利をはかる行為と考える。2 つ目は市場論で、これは政治腐 1 胡錦濤「高舉中國特色社會主義偉大旗幟為奪取全面建設小康社會新勝利而奮鬥—在 中 國 共 產 黨 第 十 七 次 全 國 代 表 大 會 上 的 報 告 」『新華網』 、2007 年 10 月 24 日、 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-10/24/content_6938568.htm。 2 習近平「緊緊圍繞堅持和發展中國特色社會主義 學習宣傳貫徹黨的十八大精神—在 十八屆中共中央政治局第一次集體學習時的講話」『新華網』、2012 年 11 月 18 日、 http://news.xinhuanet.com/2012-11/19/c_123967017.htm。 -30- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 敗 を「レント シーキング 」行為、つ まり公的権 力に働きか けて市 場 利益を得ようとする行為と考える。3 つ目は公共利益論で、政治腐敗 と は役人が違 法に金儲け をし社会に 損失を与え その利益を 損なう 行 為と考える 3。政治学で政治腐敗を検討する場合は通常、公共職位論 が 採用され、 政治腐敗と は賄賂、閨 閥関係、汚 職などを含 む、職 権 を利用して私利をはかる行為と見なされる 4。いわゆる「政治の衰退」 とは、政府能力や合法性が低下し 5、政権の政策実行能力および社会 の変革要求を反映する能力が失われることをいう 6。しかし、習近平 の 反腐敗運動 の目的はこ のような共 産党政権の 合法性を維 持する た めだけのものなのだろうか。或いは他の思惑があるのだろうか。 2013 年、中国各級紀律検査・監察機関に寄せられた陳情・告発は 1,950,374 件で、立件は 172,532 件、また党紀・政紀違反で処分され たのは 182,038 人だった。処分を受けた県・処級以上の幹部は前年比 36.3%増の 6,400 人余りに上った 7。しかし、最も注目された習近平 の反腐敗成果は、2014 年 7 月 31 日までに既に 42 人の副省長・副部 長 級以上の高 官を摘発し たことであ る。これに 対し、胡錦 涛が第 一 期 5 年の任期中に摘発した副省長・副部長級以上の高官は 28 人で あった 8。習近平が総書記に就任して 1 年 8 か月。その摘発の成果は、 3 Arnold J. Heidenheimer, Michael Johnson, and Victor T. Levine (ed.), Political Corruption: 4 J.S. Nye, “Corruption and Political Development: A Cost-Benefit Analysis”, The American A Handbook (New Jersey: Transaction Publishers, 1989), pp. 8~10. Political Science Review, Vol. 61, No. 2, June 1967, p. 419. 5 6 J.S. Nye, “Corruption and Political Development: A Cost-Benefit Analysis”, pp. 418~419. David Wurfel, Filipino Politics, Development and Decay (Ithaca: Cornell University Press, 1988), p. 274. 7 「老虎蒼蠅一起打 十八大以來查辦案件工作綜述」『人民網』、2014 年 1 月 9 日、 http://fanfu.people.com.cn/BIG5/n/2014/0109/c64371-24074503.html。 8 王嘉州「固權與發展?胡錦濤反貪腐邏輯分析」 『東亞研究』第 40 卷第 2 期(2009 年 -31- 第 43 巻 3 号 問題と研究 官 僚の汚職問 題の深刻さ が日に日に 明らかにな っただけで はなく 、 習 近平の反腐 敗への積極 性も明らか になった。 これら摘発 を受け た 副 省長・副部 長級以上の 高官の背後 には、共通 する関係ネ ットワ ー ク が存在する のだろうか 。それらの 関係ネット ワークは政 治にど の ような影響を与えるのだろうか。 上述した 3 つの問題を明らかにすべく、本論の第二章では、習近 平 の反腐敗運 動の目的を 考察し、そ の目的が主 に一党独裁 の維持 、 自 身の権力の 強化および 中央政府が 推進する政 策の円滑な 遂行 の 3 つ を含むこと を指摘する 。第三章で は関係ネッ トワークの 分析指 標 を 示し、「新 四人組」相 互関係を検 討する。第 四章では、 取り調 べ を 受けた副省 長・副部長 級以上の高 官と「新四 人組」の関 係ネッ ト ワ ークを分析 する。第五 章では習近 平の反腐敗 運動の政治 的影響 に つ いて説明す る。同影響 には、反腐 敗運動の更 なる推進或 いは法 に よ る国家統治 が反腐敗運 動に取って 代わる可能 性、社会の 動乱の 激 化 によって政 治改革が促 進する可能 性、および これまで度 々地方 政 府 の抵抗にあ ってきた中 央政府のマ クロコント ロール政策 を推進 で きる可能性が含まれる。第六章では研究成果を概括し結論を述べる。 二 習近平の反腐敗運動の目的 中国共産党幹部の政治腐敗は汚職・収賄、流用、浪費、職権濫用、 不 法所得、職 務怠慢、投 機取引、財 務規律違反 、密輸、道 徳的堕 落 の 10 タイプに分けることができる 9。政治腐敗が経済に与えるマイ ナスの影響は非効率、資源の浪費、企業の政府に対する信頼の喪失、 7 月) 、頁 37~39。 9 Yan Sun, Corruption and Market in Contemporary China (Ithaca, N.Y.: Cornell University Press, 2004), pp. 26~37. -32- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 資本流出、投資の歪み、技術の放棄、対外援助の中断の 7 項目に分 け ることがで きる。政治 に対するマ イナスの影 響は社会的 公正の 破 壊 、国民の信 頼損失、政 治不安、抑 圧的な措置 の誘発、政 策実施 の 阻 害、統治能 力の弱体化 、社会革命 の誘発、軍 事の接収管 理、人 種 的バランスの崩壊の 9 項目に分けることができる 10。これらマイナス の 影響は政治 の衰退を招 く。つまり 、政府能力 および合法 性が低 下 し 、政権の政 策実行能力 および社会 の変革要求 を反映する 能力が 失 わ れる。従っ て、習近平 が反腐敗運 動の目的と して公に述 べてい る 理 由は政権の 安定、つま り中国共産 党政権が打 倒されるこ とを防 ぐ ということである。 中共による 一党独裁体 制の維持は 中共指導者 の一貫した こだわ り である 11。鄧小平時代は、経済発展を通して社会の安定を維持した上 で、中共の支配体制を維持しようとした 12。江沢民および胡錦涛時代 は 、社会の安 定を維持す ることで経 済発展を維 持し、その 上で中 共 の支配体制の維持を目指した 13。つまり、共産党一党独裁体制維持の 大 きな柱は社 会の安定と 経済発展で あった。そ うであるな ら、習 近 平 が中共政権 の安定を図 るためには 、施政の重 点を社会の 安定と 経 10 M. McMullan, “A Theory of Corruption”, Sociological Review, Vol. 9, No. 2 (July 1961), pp. 181~201; J.S. Nye, “Corruption and Political Development: A Cost-Benefit Analysis”, pp. 421~423; David H. Bayley, “The Effects of Corruption in a Developing Nation”, Western Political Quarterly, Vol. 19, No. 4 (December 1966), pp. 724~726. 11 林佳龍、徐斯儉「退化的極權主義與中國未來發展」刊於林佳龍主編『未來中國—退 化的極權主義』 (時報文化、2004 年) 、頁 20。 12 吳玉山「現代化理論 vs.政權穩定論:中國大陸民主發展的前景」 『政治科學論叢』第 9 期(1998 年 6 月)、頁 451。 13 Yu-Shan Wu, “From Reform to Bureaucratic Stability in the PRC,” Issues and Studies, Vol. 33, No. 8 (August 1997), pp. 81~104; 王嘉州「固權與發展?胡錦濤反貪腐邏輯分析」、 頁 32~33。 -33- 第 43 巻 3 号 問題と研究 済 発展に置く べきで、汚 職腐敗への 取り締まり は部レベル の高官 を 警 鐘として数 人摘発する にとどめて おけばいい ものの、な ぜ国家 級 副 職幹部(全 国人民政治 協商会議副 主席の蘇栄 および元中 央軍事 委 員 会副主席の 徐才厚)と 国家級正職 幹部(元政 治局常務委 員の周 永 康 )まで強硬 に摘発した のだろうか 。本論は習 近平が強力 に反腐 敗 運 動を進める 理由を、権 力移行の過 程で反対勢 力に直面し たため と 考える。 習近平は中国共産党第 18 回全国代表大会(以下「十八大」)で第 五 代・中国共 産党総書記 に選出され たが、そこ までの道の りは決 し て 平坦ではな く、むしろ 脅威に満ち ていた。現 在までに明 るみに 出 て いる情報に よると、同 じ「紅二代 」だった薄 熙来(中共 中央政 治 局 委員、重慶 市委員会書 記=当時) と周永康( 中共中央政 治局常 務 委 員、中共中 央政法委員 会書記=当 時)が習近 平の就任を 阻止し よ う と陰謀を企 てた。この 陰謀は王立 軍が成都の 米国領事館 に亡命 を 求めて駆け込んだことで明らかになった 14。薄熙来は「王立軍事件」 の影響を受け、2012 年 3 月 15 日に中共重慶市委員会書記を解任され、 4 月 10 日には中共中央委員と政治局委員の職務が停止され、さらに は中共中央紀律委員会の調査を受けた。その後、9 月 28 日に党籍剥 奪・公職追放処分となり、10 月 26 日に最高人民検察院の立件捜査を 受けた。2013 年 7 月 25 日、済南市人民検察院は薄煕来を収賄、汚職、 職権濫用の容疑で済南市中級人民法院に起訴した。公判審理は 8 月 22 日から 26 日まで行われ、9 月 22 日無期懲役の判決が言い渡され た。 「薄熙来事件」は胡錦涛と習近平が共同で対処したことから、 14 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 (領袖出版社、2014 年) 、頁 105~106。 -34- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 習近平の反腐敗の目的が共産党の救済だけではなく、核心的地位 の強化にも重きが置かれていたことが分かる 15。薄熙来は陳良宇お よび陳希同と同じく中共中央政治局委員と直轄市の市委書記を務 め、その任期中に中共中央から停職および免職の処分を受け、検 察院に起訴され法廷審理が行われている。当該 3 人が高級官僚だ ったにもかかわらずこのような結末を迎えた主な原因は、中央に 逆らい、かつ統治権威を脅かしたからである。江沢民は総書記に 就任して 6 年後に、やっと陳希同の中央政治局委員の職務を停止 して立件審査を行うことができた。江沢民は就任 4 年後に陳良宇 の中央政治局委員の職務を停止して立件審査を行うことができた 。 習近平は胡錦涛の協力を得て、就任前に薄熙来の中央政治局委員 の職務を停止して立件審査を行い、就任 1 年以内に薄熙来の罪を 確定させた。これは習近平が反腐敗運動を通して既に核心的地位 を固めることに成功したことを表している。 ただ、薄熙来の有罪確定が習近平の核心的地位を既に固めたと はいえ、それが枕を高くして寝られるということにはならない。 薄熙来の支持派がまだ残っているからである。2012 年下半期、中 共上層部の間で「新四人組」が現れて習近平の執政地位に取って 代わるとの話が流れた。「新四人組」とは、前述の周永康および薄 熙来に、徐才厚(中央軍事委員会副主席=当時)と令計画(中央 弁公庁主任、中央書記処書記=当時)を加えた 4 人で、このうち 周永康がリーダーとされている。薄熙来は周永康に働きかけ「十 八大」で中共中央政治局常務委員への就任、さらには中共中央政 法委員会書記の後任を狙っていた。周永康は薄熙来に働きかけ「十 八大」後に親族の利益を保護しようとした。薄熙来と周永康は 15 同上。 -35- 第 43 巻 3 号 問題と研究 2014 年の中国共産党第 18 期中央委員会第 4 回全体会議で、党内 民主を理由に習近平を総書記の地位から廃し、薄煕来を後継者に 推挙しようと計画していた 16。 計画通りの選挙結果を確保するためには、令計画が代表を務め る「団派」が重要な鍵を握っていた。薄熙来は令計画と同郷(本 籍は共に山西)であり、重慶市の市政プロジェクトを通じて令計 画の親族に経済的利益を図っていた。また、周永康も四川の派閥 の部下である李春成を通して令計画に経済的利益を図り、味方に 引き入れることに成功していた。令計画はこのネットワークを利 用して「十八大」で中共中央政治局常務委員に就任しようと企ん だ 17。令計画は胡錦涛が最も信頼する「側近中の側近」だったにも かかわらず、その並外れた野心によりこの政変計画への参加に踏 み切ったことから、北京の政治エリートからは「中南海最大の野 心家」と見られていた 18。徐才厚は薄熙来および周永康と密接な関 係にあり、政変計画が軍に打倒されず確実に成功するよう責任を 負った。薄熙来は早くに大連市長を務め、徐才厚の故郷で地方行 政官となり、経済的な利益供与を通じて徐才厚との深い絆を築き 上げた。この利益供与は薄熙来が遼寧省長および商務部長を務め ている間続けられた。周永康と徐才厚は「維穏」での仕事を通し て関係を深め、利害を共にする関係へと発展した。徐才厚はこの ネットワークを通じて「十八大」後の中央軍事委員会副主席就任 を企てた 19。 習近平の反腐敗運動の 3 つ目の目的は中央政令の円滑な施行 16 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 、頁 108~109。 17 安三仁『新四人幫』 (紐約:哈耶出版社、2014 年)、頁 14~18。 18 汪風『大網收緊令計劃』 (香港:外參出版社、2014 年) 、頁 78。 19 林雲『習近平辣手殲軍頭』 (香港:南風窗出版社、2014 年)、頁 47。 -36- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 である。利害が一致しないことから、地方が中央政策に反対する のは決して珍しくない 20。江沢民時代にしろ胡錦涛時代にしろ、政 策を推進する際は常に地方主義の抵抗に直面してきた 21。特に、習 近平が就任する際、現職地が地方である政治局委員は 11 人いたが、 「十六大」と「十七大」では 10 人だったことから、習政権が直面 した地方勢力は胡錦涛時代を上回る。各省の中でも上海市と天津 市の中央政策に対する影響力は「強力影響型」に属する。また、 上海、天津、北京、広東、新疆の 5 つの省市区の書記は、三期連 続で政治局委員が当選しており、その政治的地位の重要性が現れ て い る 22。 中 央 政 府 が 地 方 政 府 の 抵 抗 に あ っ た 際 の 対 応 方 法 は 3 つに分類できる。1 つ目は中央が政策を変更し地方の支持を得る 23。 2 つ目は中央が政策内容をきちんと整理するよう命令を発布し、 地方が自身の利益に従い政策を解釈している状態を是正させる 24。 3 つ目は地方の抵抗が高まった際、中央は専属的権限である人事 権を行使して地方官僚の入れ替えを行う 25。薄熙来の事案の公開審 20 Jing Vivian Zhan, “Decentralizing China: Analysis of Central Strategies in China’s Fiscal Reforms,” Journal of Contemporary China, Vol. 18, No. 60 (June 2009), pp. 447~449. 21 王嘉州「財政制度變遷時中央與地方策略互動之分析—以分稅制與廣東省為例」 『中國 大陸研究』第 46 卷第 5 期(2003 年 9 月) 、頁 81~103。黃淑嫆「地方急轉型 挑戰中 央政策」『中國時報』2009 年 1 月 16 日、版 A13。 22 王嘉州「中央集権体制への傾倒か:第 18 回共産党大会後の中国における中央と地方 の関係」『問題と研究』第 42 卷第 2 号(2013 年 6 月)、132~133 ページ。 23 Christian Göbel, “Uneven Policy Implementation in Rural China,” The China Journal, No. 24 Chiachou Wang, “Political Interest Distribution and Provincial Response Strategies: 65 (January 2011), pp. 71~73. Central-Local Relations in China after the 17th National Congress of the CPC,” China: An International Journal, Vol. 11, No. 1 (April 2013), pp. 36~37. 25 Maria Edin, “State Capacity and Local Agent Control in China: CCP Cadre Management from a Township Perspective”, The China Quarterly, No. 173 (March 2003), pp. 35~52. -37- 第 43 巻 3 号 問題と研究 理と罪の確定、および省長・部長級以上の高官の汚職調査は全て 中央権威の現れであり、これにより中央政府が 3 つ目の対応策を 使用するという地方政府の観測が高まることで中央政策の推進に 有利に働く。 以上の論述に基づき、さらに胡錦涛の反腐敗論理を参考にすると 26、 習近平の反腐敗運動の主な目的が 3 つあることが推測できる。1 つ目 は主に民心を獲得することにより一党独裁を維持する。2 つ目は主に 異 端者を排除 することで 自身の権力 強化を図る 。習近平の 異端者 排 除 の対象は主 に周永康、 薄熙来、徐 才厚および 令計画派閥 の部下 で ある。そして、3 つ目の目的は主に公開処罰により威信を確立し中央 の政策を円滑に進めることである。 三 「新四人組」の関係ネットワーク 関係ネット ワークは、 中共エリー ト政治研究 においてよ く用い ら れる分析モデルである 27。関係は資源分配に影響を与えることができ る社会資源と定義することができ 28、今なお共産党の政治エリートの 行 動 に 効 果 的 な 影 響 を 与 え て い る 29 。 関 係 は ツ ー ル ( instrumental dimension)、礼儀(etiquette dimension)、モラル(moral dimension) および感情(emotional dimension)の 4 つの側面に分類することがで 26 寇健文「中國政治情勢:高層政治的演變」丁樹範主編『中國大趨勢:2003-2004』(新 新聞文化公司、2004 年)、頁 22~27。 27 Cheng Li, “Jiang Zemin’s Successors: The Rise of the Fourth Generation of Leaders in the PRC,” The China Quarterly, No. 161 (March 2000), pp. 1~40. 28 陳俊杰『關係資源與農民的非農化』 (北京:中國社會科學出版社、1998 年 11 月) 、頁 35。 29 Xuezhi Guo, “Dimensions of Guanxi in Chinese Elite Politics,” The China Journal, No. 46 (July 2001), p. 69. -38- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 き る。ツール の関係は損 得勘定でで きており利 益交換とい う目的 が 伴 う。礼儀の 関係は中国 の「人情」 という概念 の上に成り 立って お り、かつ個人が社会のネットワークに調和する必要性からきている。 モ ラルの関係 は主に「忠 誠心」と「 正義感」に 支えられて いる。 感 情の関係はもともと「気持ち」と「恩情」からきており、「人情」と 同じく中国文化において重要な社会文化概念に属する 30。中国人は従 来「人間関係」を重んじ 31、本籍地、台頭地および現職地は人間関係 の主な構築要因となっている 32。 本 籍地は 習慣 的に「 どこ どこの 人」 と言わ れ、 名簿に は必 ず記載 されることから 33、情報収集する上で利便性を具える。本籍は代々の 血 縁関係、婚 姻関係の所 在であるこ とから、同 郷者は互い に世話 を し 合う。伝統 文化に基づ き中共幹部 は本籍地の 利益の世話 をする 傾 向がある 34。この種の「同郷がゆえに親しくなる」という概念は、同 郷を非公式政治(informalpolitics)における重要な要素となり 35、ひ いては昇進の助けとなる 36。「新四人組」のうち薄熙来と令計画は同 郷 で、それぞ れ山西省定 襄県と山西 省平陸県の 出身である 。周永 康 の本籍は江蘇無錫、徐才厚は遼寧瓦房店人である。 30 Xuezhi Guo, “Dimensions of Guanxi in Chinese Elite Politics”, pp. 72~87. 31 Lucian W. Pye, The Spirit of Chinese Politics (Cambridge: The M.I.T. Press, 1970), p. 171. 32 王嘉州「中共『十六大』後的中央與地方關係—政治利益分配模型之分析」 『東吳政治 學報』第 18 期(2004 年 3 月) 、頁 161。 33 例えば『中國共產黨大辭典』『中共人名錄』など。 34 高新、『降伏「廣東幫」』 (香港:明鏡出版社、1999 年 9 月) 、頁 278。 35 Lowell Dittmer, “Chinese Informal Politics,” The China Journal, No. 34 (July 1995), pp. 1~34. 36 Victor C. Shih, Christopher Adolph, and Mingxing Liu, “Getting Ahead in the Communist Party: Explaining the Advancement of Central Committee Members in China,” American Political Science Review, Vol. 106, No. 1 (March 2012), pp. 166~187. -39- 第 43 巻 3 号 問題と研究 中 共幹部 は本 位主義 に基 づいて 本籍 地のた めに 利益を 勝ち 取る。 あ らゆる省委 員会書記或 いは省長は 自発的もし くは受動的 に当該 地 域の利益代表となる 37。さもなければ国民からの推戴が得られず、自 身の「政治資金」が不足し 38、その後の昇進の機会が減ってしまう 39。 謝淑麗(スーザン・L・シャーク)の有名な「経済改革の政治論理」 は 、まさに中 共中央委員 会委員を指 標とし現職 地を依拠と した、 中 央と地方の相互活動の分析である 40。本論で現職地とは中共幹部が立 件 審査を受け た時点での 職務の所在 地または機 関を指す。 当該幹 部 が 既に退職し ていた場合 は退職前の 職務の所在 地または機 関をも っ てこれに代える。「新四人組」の現職地は薄熙来が重慶市(市委書記)、 周永康は退職前の担当機関である中共中央政法委員会(書記)、徐才 厚も退職前の担当機関である中央軍事委員会(副主席)、そして現時 点 でまだ取り 調べを受け ていない令 計画は、現 職機関であ る中共 中 央 統一戦線工 作部(部長 )および中 国人民政治 協商会議全 国委員 会 ( 副主席)で ある。ただ し、令計画 が習近平へ の権力移行 を阻止 し よ うとする陰 謀に参加し た時点での ポストは、 中共中央辦 公庁主 任 および中共中央書記処書記である。 権力基盤を 固めるため 中共幹部は 台頭地の利 益も考慮す る。地 方 や 下級幹部は 通常、中央 や上級幹部 の中から自 身の保護者 を見つ け る ことで自身 の利益を確 保し昇進を 果たす。中 央や上級幹 部(指 導 者 )は、地方 や下級幹部 の支持者を 得ることで 、中央或い は上級 官 37 王紹光、胡鞍鋼『中國國家能力報告』(香港:牛津大學出版社、1994 年)、頁 125。 38 何頻、高新『中共新權貴—最新領導者群像』(香港:當代月刊、1993 年)、頁 442。 39 鄭永年『江澤民的政治遺產:在守成和改革之間』 (新澤西:八方文化、2002 年) 、頁 151。 40 Susan L. Shirk, The Political Logic of Economic Reform in China (Berkeley: University of California Press, 1993), pp. 90~91. -40- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 庁における自らの地位の強化をはかる 41。「新四人組」の台頭地は現 職 地を除いた 省部級正職 以上の職務 の所在地も しくは機関 である 。 な ぜなら、彼 らの現職地 は地方では 既に省委員 会書記か省 長、中 央 で は部長であ り、まさに 単独責任者 となって上 へと上り始 めた時 期 だからである。 薄熙来の台頭地は 2 か所あり、順に遼寧省(省長)と中華人民共 和国商務部(部長)である。周永康は 4 か所で、順に中国石油天然 気総 公司(総経 理)、国土資 源部(部長 )、四川省( 省委員会書 記 ) および公安部(部長)。徐才厚は 6 か所で、順に第 16 集団軍(政治 委員)、解放軍報社(社長)、済南軍区(政治委員)、中共中央軍事委 員会紀律検査委員会(書記)、中国人民解放軍総政治部(主任)およ び中共中央書記処(書記)。令計画は 2 か所で、順に中共中央辦公庁 (主任)および中共中央書記処(書記)である。 上述の分析に基づき、「新四人組」の本籍地、現職(退職)地およ び台頭地を表 1 のように整理することができる。薄熙来は他の 3 人 と それぞれ緊 密な関係に ある。薄熙 来は周永康 の後継者で あり、 中 共 中央政法委 員会書記の 後任を望ん でいた。ま た、薄熙来 と令計 画 は同郷である上、2 人の父親(薄一波と令狐野)は長年の親友である。 令 計画が山西 から共産主 義青年団中 央宣伝部に 抜擢された のは、 ひ とえに薄一波のおかげである 42。そして、薄熙来はかつて徐才厚の地 元 (遼寧)で 省長を務め 、経済的な 利益の供与 を通して徐 才厚と 深 い関係を築いた。 41 吳國光、鄭永年『論中央-地方關係』 (香港:牛津大學出版社、1994 年) 、頁 39。 42 同上。 -41- 第 43 巻 3 号 問題と研究 表1 「新四人組」の関係ネットワーク 氏名 本籍 現職(退職)地 台頭地 薄熙来 山西 重慶市 遼寧省、商務部 徐才厚 遼寧 中央軍事委員会 第 16 集団軍、解放軍報社、済南軍区、 中国共産党中央軍事委員会紀律検査委 員会、中国人民解放軍総政治部および 中国共産党中央書記処 周永康 江蘇 中国共産党中央政法 中国石油天然気総公司、国土資源部、 委員会 令計画 四川省および公安部 山西 中共中央統一戦線工 中共中央辦公庁および中国共産党中央 作部、中国人民政治 書記処 協商会議全国委員会 ( 出 典 )百 度百 科 四 習近平の反腐敗運動摘発対象者の関係ネットワーク 習近平が 2012 年 11 月に中国共産党総書記に就任してから 2014 年 7 月 31 日までの間、汚職、生活風紀問題或いは八項規定の精神に違 反 したとの理 由で立件審 査ひいては 処罰された 副部長級以 上の幹 部 は、計 42 人に上る(表 2 を参照)。当該リストは中共中央紀律検査 委 員会および 中華人民共 和国監察部 ホームペー ジのデータ をもと に 整 理したもの である。メ ディア報道 のみで上述 のホームペ ージに 公 開されていないデータは、統計範囲としない 43。 43 例えば、マスコミの報道によると李文喜(遼寧省政治協商会議副主席)がすでに中 央紀律検査委員会に双規(強制捜査)され、北京に出頭し取調べを受けている。ま た吳永文(湖北省人大常委會副主任)も中央紀律検査委員会により北京に出頭を求 -42- 2014 年 7.8.9 月号 1 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 習近平の反腐敗運動摘発対象者の行政ランク 取り調べを受けている中共幹部 42 人のうち、行政ランクが国家級 正職者は周永康(元政治局常委)1 人(2.4%)である。国家級副職 は 蘇栄(前全 国人民政治 協商会議副 主席)およ び徐才厚( 元中央 軍 事委員会副主席、元政治局委員)の 2 人(4.8%)。省部級正職は 4 人(9.5%)で、蒋潔敏(国務院国有資産監督管理委員会主任)、李東 生(公安部共産党委員会副書記、同部副部長)、申維辰(中国科学技 術協会党組書記)および李崇禧(四川省政治協商会議主席)。省部級 副職は 35 人(83.3%)で、このうち 30 人(85.7%)が地方幹部、4 人(11.4%)が中央幹部、2 人(5.7%)は国有企業の幹部である。 2 習近平の反腐敗運動摘発対象者の本籍地 取り調べ(調査/摘発した)を受けている中共幹部 42 人の本籍は、 山西省、遼寧省、山東省および湖南省が最も多く、それぞれ 4 人 (9.5%)ずつとなっている。「新四人組」のうち、薄熙来と令計画の 本 籍は山西省 である。取 り調べを受 けている山 西籍幹部に は劉鉄 男 (国家発展改革委員会副主任)、申維辰(中国科学技術協会党組書記)、 令政策(山西省政治協商会議副主席)および杜善学(山西省副省長) が 含まれる。 このうち令 政策は令計 画の実兄で ある。遼寧 省は薄 熙 来の台頭地の 1 つである。取り調べを受けている遼寧籍幹部には「新 四人組」の徐才厚のほか、李春城(四川省委員会副書記)、衣俊卿(中 共 中央編訳局 局長)およ び陳鉄新( 遼寧省政治 協商会議副 主席) を 含む。 江蘇省および湖北省は各 3 人(7.0%)。取り調べを受けた江蘇籍幹 部 には「新四 人組」であ る周永康の ほかに、倪 発科(元安 徽省副 省 められ取調べを受けている。 -43- 第 43 巻 3 号 問題と研究 長 )および季 建業(南京 市長)が含 まれる。四 川省、重慶 市、内 モ ンゴル、吉林省、河北省および雲南省は各 2 人(4.8%)、北京市、天 津 市、安徽省 、江西省、 河南省、黒 竜江省、広 西省および 広東省 は 各 1 人(2.4%)となっている。 3 習近平の反腐敗運動摘発対象者の台頭地 取り調べを受けている中共幹部 42 人のうち、「新四人組」の徐才 厚と周永康を除いた 40 人の台頭地は、最初に就いた省部級副職の職 務 の所在地ま たは機関と し、さらに それぞれ「 新四人組」 との関 係 を分析する。 台頭地は山西省が 4 人(10%)と最も多く、申維辰(2001 年)、金 道銘(2006 年)、令政策(2008 年)および杜善学(2011 年)を含む。 申 維辰は令計 画と同郷と いうだけで なく、かつ て郷里で職 務に就 い て おり、さら には中国共 産主義青年 団(共青団 )の出身で ある。 申 維辰が中央宣伝部副部長に昇進したのは(2010 年)令計画の助力で ある 44。金道銘は中央紀律委員会から山西省委員会常務委員および山 西 省紀律委員 会書記へ昇 格後、山西 省の令計画 の親族の利 益に便 宜 を 図ったこと から、令計 画の山西省 における利 益のスポー クスマ ン と見なされた 45。令政策と杜善学は本籍だけでなく官僚キャリアも山 西 省であり、 申維辰およ び金道銘と 同じく「山 西人グルー プ」に 分 類される。令計画は「山西人グループ」の保護者と見なされた 46。 台頭地が江西省および四川省者はそれぞれ 3 人(7.5%)である。 江西省で台頭したのは趙智勇(2002 年)、陳安衆(2008 年)および 44 汪風『大網收緊令計劃』 、頁 44。 45 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 、頁 359~361。 46 汪風『大網收緊令計劃』 、頁 90~91。 -44- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 姚木根(2011 年)である。この 3 人は蘇栄派閥の部下である。趙智 勇は蘇栄が江西省委員会書記を務めていた際(2007~2013 年)の秘 書 長であり、 陳安衆と姚 木根の昇進 は蘇栄が抜 擢した。蘇 栄は長 期 に わたり蒋潔 敏と協力関 係にあった ことから、 周永康とも 関係を 築 き高い評価を得た。ゆえに周永康グループのメンバーと見なされた 47。 四川省の台頭者は李崇禧(2000 年)、郭永祥(2002 年)および李 春城(2003 年)である。李崇禧は周永康の四川省委員会書記時代の 秘 書長および 辦公庁主任 であった。 李崇禧が省 委員会副書 記に昇 格 し た後は、副 秘書長であ った郭永祥 が秘書長に 抜擢された 。郭永 祥 は 周永康の「 腹心秘書」 で、石油閥 出身である だけでなく 、周永 康 が 国土資源部 部長を務め ていた際の 辦公庁主任 でもあった 。また 周 永 康が中央に 選出された 際、四川省 委員会常務 委員に昇進 し、周 永 康 の四川省に おける代理 人となった 。李春城は 周永康が四 川省委 員 会 書記をして いた期間に 見る見る昇 進した。成 都市副市長 から瀘 州 市 委員会書記 となった後 、半年も経 たないうち に成都へ戻 って成 都 市委員会副書記、副市長、市長代理を務め、市長にまで上りつめた。 周 永康が中共 中央政治局 委員、中央 書記処書記 、中央政法 委員会 副 書 記および公 安部部長に 就任しても 、依然とし て四川省へ の影響 力 を 維持できた のは、李春 城を四川省 委員会常務 委員および 成都市 委 員会書記に抜擢したからである 48。ゆえに、李春城は周永康派閥の部 下と見られた。 台 頭地が 中国 石油、 海南 、青海 、安 徽、湖 南、 湖北、 雲南 および 黒竜江に属する者は各 2 人(5.0%)で、このうち周永康と関係のあ 47 「蘇榮與蔣潔敏的『鬼打牆』」『中國評論月刊網路版』 、2014 年 6 月 20 日、http://hk. crntt.com/crn-webapp/mag/docDetail.jsp?coluid=29&docid=103247255。 48 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 、頁 132。 -45- 第 43 巻 3 号 問題と研究 る者が中国石油、海南および青海の 3 か所で台頭している。 中国石油で台頭したのは王永春(2011 年)および李華林(2013 年) である。周永康の最初の台頭地が中国石油で、1967 年から 1998 年ま で 石油業界の 職務を歴任 したことか ら、共に周 永康の子弟 兵と見 な さ た。王永春 は周永康が 大慶油田で 働いていた 時のアシス タント だ っ たことから 周永康の腹 心と呼ばれ た。また、 李華林は周 永康の 中 国石油副総経理時代の専任秘書である 49。 青海省で台頭したのは、蒋潔敏(2000 年)と毛小兵(2012 年)で ある、蒋潔敏は青海省副省長に昇格する前、石油業界で 28 年(1972 ~2000 年)キャリアを積み、4 年後に再び中国石油に戻って副総経 理に就任し(2004 年)、さらには総経理(2006 年)および董事長(2011 年 )にまで昇 格した。ゆ えに蒋潔敏 は周永康の 中国石油の 後継者 と 見なされた 50。毛小兵のキャリアは青海省から離れたことがなく、蒋 潔 敏が青海省 で務めてい た際の主管 業務の部下 であり、蘇 栄とは 青 海省委員会書記を務めていた時に往来があった 51。 海南省で台頭したのは譚力(20 年)および冀文林(20 年)である。 譚 力は周永康 が四川省委 員会書記を 務めていた 期間に成都 市委員 会 常 務委員、宣 伝部部長か ら、広安市 委員会書記 へ昇格した 。冀文 林 は国土資源部(1998~1999 年)、四川省省委員会(2000~2003 年) から公安部(2003~2007 年)まで 10 年にわたり周永康に付き従えた ことから周永康の「携帯秘書」と見られた 52。 49 50 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 、頁 210~221。 儲百亮、安思喬「國資委主任蔣潔敏落馬、調查指向周永康」『紐約時報中文網』 、2013 年 09 月 02 日、http://cn.nytimes.com/china/20130902/c02corruption/。 51 王姝、侯潤芳「蘇榮、蔣潔敏曾多次視察毛小兵工作」『新京報』、2014 年 7 月 16 日、 http://www.bjnews.com.cn/news/2014/07/16/325695.html。 52 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 、頁 191~197。 -46- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 台 頭地が 雲南 省の沈 培平 と張田 欣、 および 湖北 省の陳 柏槐 と郭有 明 は、ネット 上では周永 康への経済 的な利益の 供与で取り 調べを 受 け ていると報 じられた。 しかし噂や 憶測にすぎ ないため分 析の対 象 に含めない。湖南省の童名謙と陽宝華、黒竜江省の付暁光と衣俊卿、 および安徽省の韓先聡と倪発科は、「新四人組」との関係を裏付ける 証拠がない。 台頭地が上述以外の地域の幹部は 14 人が取り調べを受けた。この うち 2 人は周永康と、1 人は令計画と関係があり、11 人は「新四人 組 」との直接 的な関係を 裏付ける証 拠がない。 周永康グル ープの メ ン バーは蘇栄 と李東生で ある。蘇栄 と周永康の 関係は、前 述した よ う に蒋潔敏を 通じたもの である。李 東生の副部 級における 台頭地 は 国 家広播電影 電視総局( 副局長)で あるが、正 部級の台頭 地は公 安 部(2009 年当時副部長)であり、これは周永康が抜擢しただけでは なく周から直接指導も受けた 53。周永康はさらに李東生を「十八大」 後の公安部部長の後任に強く推挙した 54。令計画グループのメンバー は 劉鉄男であ る。劉鉄男 は国務院東 北地区等旧 工業地帯振 興指導 小 組 弁公室(副 主任)で台 頭し、令計 画が率いる 「西山会」 へ加入 し た 後、さらに 実権を具え た国家発展 改革委員会 (副主任) に就任 し た 55。 53 同上、頁 293~295。 54 王春山『周永康集團』(領袖出版社、2014 年) 、頁 118~121。 55 汪風『大網收緊令計劃』 、頁 34~35。 -47- 第 43 巻 3 号 問題と研究 表2 「十八大」後に立件審査された副部級以上の幹部 氏名 1 2 3 4 5 6 行政ラ ンク 前職 本籍 台頭地 調査 時期 訴因 処分 関係ネ ットワ ーク 職務上の便宜 四川省 党籍剥奪・公 四川省成 を利用した不 2012 年 職追放、およ 党委員 李春城 副部級 遼寧 都市委員 当利益の追求 周永康 び司法機関 会副書 12 月 会書記 および収賄、 に送致 記 腐敗堕落 黒竜江省 中央編訳局 中共中 2013 年 衣俊卿 副部級 央編訳 遼寧 委員会宣 生活風紀問題 局長の職務 1月 伝部部長 を解任 局局長 国務院東 北地区等 職務上の便宜 国家発 党籍剥奪・公 旧工業地 を利用した不 展改革 2013 年 職追放、およ 劉鉄男 副部級 山西 帯振興指 当利益の追求 令計画 委員会 5月 び司法機関 導小組弁 および収賄、 副主任 に送致 公室副主 道徳的堕落。 任 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 安徽省副 2013 年 安徽省 倪発科 副部級 江蘇 収賄 に送致して 省長 副省長 6月 立件捜査並 びに強制措 置 党籍剥奪・公 四川省 職務上の便宜 職追放、違法 四川省委 人大常 員会常務 2013 年 を利用した不 な所得の没 郭永祥 副部級 山東 周永康 当利益の追求 収および司 委会副 委員、秘 6 月 および収賄 法機関に送 主任 書長 致 内モンゴ 党籍剥奪・公 内モン ル自治区 職追放、無期 ゴル統 内モ 共産党委 懲役判決、政 2013 年 王素毅 副部級 一戦線 ンゴ 員会常務 汚職・収賄 治的権利の 6月 部部長 ル 委員、統 終身剥奪、全 長 一戦線工 個人財産の 作部部長 没収 -48- 2014 年 7.8.9 月号 氏名 7 8 9 行政ラ ンク 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 前職 本籍 台頭地 調査 時期 訴因 広西チ ワン族 自治区 広西チワ 職務上の便宜 政治協 ン族自治 2013 年 を利用した不 李達球 副部級 商会議 広西 区政治協 7月 当利益の追求 副主 商会議副 および収賄 席、区 主席 総工会 主席 中国石 職務上の便宜 中国石油 油天然 天然気集 2013 年 を利用した不 王永春 副部級 気集団 吉林 当利益の追求 団公司副 8 月 公司副 および収賄 総経理 総経理 中国石 中国石油 油天然 天然気集 2013 年 重大な紀律違 李華林 副部級 気集団 湖北 団公司副 8 月 反容疑 公司副 総経理 総経理 国務院 国有資 青海省副 2013 年 産監督 10 蒋潔敏 正部級 山東 省長 管理委 8月 員会主 任 職務上の便宜 を利用した不 当利益の追求 および収賄 江蘇省 南京市 江蘇省南 委員会 京市委員 2013 年 汚職・職権濫 11 李建業 副部級 江蘇 副書 会副書 10 月 用 記、市 記、市長 長 貴州省 貴州省委 委員会 員会常務 2013 年 収賄および職 12 廖少華 副部級 四川 常務委 委員、遵 10 月 権濫用 員、遵 義市委員 -49- 処分 関係ネ ットワ ーク 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 に送致 党籍剥奪・公 職追放、およ 周永康 び司法機関 に送致 組織調査中 周永康 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 に送致して 周永康 立件捜査並 びに強制措 置 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 に送致して 立件捜査並 びに強制措 置 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 に送致して 第 43 巻 3 号 問題と研究 氏名 行政ラ ンク 前職 本籍 台頭地 調査 時期 訴因 処分 関係ネ ットワ ーク 義市委 会書記 立件捜査並 員会書 びに強制措 記 置 湖北省 党籍剥奪・公 湖北省政 政治協 2013 年 職務怠慢およ 職追放、およ 13 陳柏槐 副部級 湖北 治協商会 商会議 11 月 び収賄 び司法機関 議副主席 副主席 に送致 職務上の便宜 党籍剥奪・公 湖北省 湖北省副 2013 年 を利用した不 職追放、およ 14 郭有明 副部級 湖北 副省長 11 月 当利益の追求 び司法機関 省長 および収賄 に送致 黒竜江 省政府 亜布力 免職並びに リゾー 黒竜 黒竜江省 2013 年 八項規定の精 副省級から 15 付暁光 副部級 ト指導 江 副省長 12 月 神に違反 政局級へ降 小組常 格 務副組 長 党籍剥奪・公 職追放、およ 江西省 び司法機関 江西省政 人大常 2013 年 周永康 16 陳安衆 副部級 収賄 に送致して 治協商会 委会副 湖南 12 月 立件捜査並 議副主席 主任 びに強制措 置 党籍剥奪・公 職追放、およ 湖南省 び司法機関 湖南省政 政治協 2013 年 17 童名謙 副部級 に送致して 湖南 治協商会 職務怠慢 商会議 12 月 立件捜査並 議副主席 副主席 びに強制措 置 公安部 国家広播 党籍剥奪・公 共産党 電影電視 2013 年 職追放、およ 18 李東生 正部級 山東 周永康 収賄 委員会 総局)副 12 月 び司法機関 副書 局長 に送致して -50- 2014 年 7.8.9 月号 氏名 行政ラ ンク 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 前職 本籍 台頭地 調査 時期 記、副 部長 訴因 処分 関係ネ ットワ ーク 立件捜査並 びに強制措 置 新疆ウイ グル自治 全国政 区党委員 治協商 会常務委 会議経 19 楊剛 副部級 河北 員、ウル 済委員 ムチ市党 会副主 委員会書 任 記 四川省 四川省委 政治協 員会常務 20 李崇禧 正部級 四川 商会議 委員、秘 主席 書長 職務上の便宜 を利用した不 党籍剥奪・公 当利益の追 2013 年 職追放、およ 求、賄賂要求、 12 月 び司法機関 収賄、および に送致 姦通。 2013 年 重大な規律違 免職並びに 12 月 反容疑 組織調査 周永康 職務上の便宜 を利用した不 海南省副 党籍剥奪・公 内モ 当利益の追 海南省 省長 職追放、およ 2014 年 21 冀文林 副部級 ンゴ 周永康 求、賄賂要求、 び司法機関 副省長 海南省副 2 月 ル 収賄、および 省長 に送致 姦通。 陝西省 陝西省政 政治協 2014 年 22 祝作利 副部級 河南 治協商会 商会議 2月 議副主席 副主席 山西省 委員会 山西省委 副書 員会常務 記、山 2014 年 23 金道銘 副部級 西省人 北京 委員、省 2月 紀律委員 大常委 会書記 会副主 任 24 沈培平 副部級 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 雲南省 雲南省副 2014 年 重大な規律違 免職並びに 雲南 副省長 3月 反容疑 組織調査 省長 -51- 令計画 第 43 巻 3 号 問題と研究 氏名 行政ラ ンク 25 姚木根 副部級 26 申維辰 正部級 27 宋林 副部級 28 毛小兵 副部級 29 譚棲偉 副部級 前職 江西省 副省長 中国科 学技術 協会党 組書 記、常 務副主 席 華潤集 団董事 長、党 委員会 書記 青海省 委員会 常務委 員、西 寧市委 員会書 記 重慶市 人大常 委会副 主任 本籍 江西 台頭地 調査 時期 訴因 処分 江西省副 2014 年 重大な規律違 免職並びに 3月 反容疑 組織調査 省長 山西省委 員会常務 2014 年 重大な規律違 免職並びに 山西 委員、宣 3月 反容疑 組織調査 伝部部長 関係ネ ットワ ーク 周永康 令計画 華潤集団 董事長、 2014 年 重大な規律違 免職並びに 山東 党委員会 4 月 反容疑 組織調査 書記 青海省委 員会常務 2014 年 湖南 委員、西 収賄 4月 寧市委員 会書記 重慶 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 に送致して 周永康 立件捜査並 びに強制措 置 重慶市副 2014 年 重大な規律違 免職並びに 市長 反容疑 組織調査 5月 党籍剥奪・公 職追放、およ び司法機関 に送致して 立件捜査並 びに強制措 置 江西省 党籍剥奪、副 職務上の便宜 委員会 省級から科 江西省副 2014 年 を利用した不 31 趙智勇 副部級 常務委 河北 員へ降格、お 周永康 省長 6月 当利益の追求 員、秘 よび違法な 書長 所得の没収 職務上の便宜 湖南省 を利用した不 湖南省政 政治協 2014 年 当利益の追求 30 陽宝華 副部級 湖南 治協商会 商会議 5月 と収賄、およ 議副主席 副主席 び姦通。 -52- 2014 年 7.8.9 月号 氏名 32 33 34 35 36 37 38 39 行政ラ ンク 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 前職 本籍 台頭地 調査 時期 全国人 吉林省委 民政治 員会常務 2014 年 蘇栄 副国級 協商会 吉林 委員、秘 6 月 議副主 書長 席 山西省 山西省政 2014 年 政治協 令政策 副部級 山西 治協商会 商会議 6月 議主席 主席 山西省委 2014 年 山西省 杜善学 副部級 山西 員会常務 副省長 6月 委員 広東省 委員会 常務委 広東省副 2014 年 万慶良 副部級 員、広 広東 省長 6月 州市委 員会書 記 元政治 局委 第 16 集 2014 年 員、中 徐才厚 副国級 遼寧 団軍政治 央軍事 6月 委員 委員会 副主席 海南省委 海南省 員会常務 2014 年 譚力 副部級 重慶 副省長 委員、宣 7 月 伝部部長 安徽省 安徽省政 政治協 2014 年 韓先聡 副部級 安徽 治協商会 商会議 7月 議主席 主席 雲南省 雲南省委 委員会 員会常務 2014 年 張田欣 副部級 雲南 常務委 委員、宣 7 月 員、昆 伝部長 -53- 訴因 処分 関係ネ ットワ ーク 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 周永康 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 令計画 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 令計画 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 収賄 党籍剥奪お よび司法機 関に送致 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 党籍剥奪、副 職務上の便宜 省級から副 を利用した不 処級非指導 当利益の追求 的職務へ降 周永康 第 43 巻 3 号 問題と研究 氏名 行政ラ ンク 前職 本籍 台頭地 調査 時期 訴因 処分 関係ネ ットワ ーク 明市委 格、および違 員会書 法な所得の 記 没収 天津市 天津市政 政治協 2014 年 重大な規律違 免職並びに 40 武長順 副部級 商会議 天津 治協商会 7月 反容疑 組織調査 議主席 主席 遼寧省 遼寧省政 政治協 2014 年 41 陳鉄新 副部級 遼寧 治協商会 商会議 7月 議副主席 副主席 元政治 中国石油 局常務 天然気総 2014 年 委員、 42 周永康 正国級 江蘇 公司総経 7 月 中央政 理 法委員 会書記 重大な規律違 免職並びに 反容疑 組織調査 重大な規律違 立件審査 反容疑 ( 出 典 )百 度百 科 五 習近平の反腐敗運動の政治的影響 本論の第二章で既に習近平の反腐敗運動の主要目的 3 つを指摘し た。1 つ目は主に民心を獲得することにより一党独裁を維持する。2 つ目は主に異端者を排除することで自身の権力強化を図る。3 つ目は 主 に公開処罰 により威信 を確立し、 中央政策を 円滑に進め ること で ある。以下に当該 3 方面から前章で述べた反腐敗の結果を整理し、 その政治的影響を分析する。 1 習近平の反腐敗運動の行方 民心の獲得について、習近平は反腐敗運動の結果、3 つの突破口に -54- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 より民心を十分につかんだ。1 つ目は、「刑は常務委員に上らず」と いう慣習を破り、元政治局常務委員の周永康を摘発した。2 つ目は軍 中 の「大トラ 」を打ち倒 し、元中央 軍事委員会 副主席の徐 才厚を 摘 発した。3 つ目は取り調べを受けた副省長・副部長級以上の高官が 1 年 8 か月で 42 人と、胡錦涛時代の 5 年で 28 人を大きく上回り、高 官 の取り調べ 人数として は記録を突 破したこと である。特 に周永 康 への取り調べを世論は「反腐敗にペナルティエリアがなくなった」 「 刑が常務委 員にも及ん だ」と評価 している。 当該ニュー スの中 国 人の浸透率は 99.63%、満足度は 97.35%に達した 56。 習近平は目下、反腐敗運動により国民の高い支持率を得ているが、 今度はどのように進んでいくべきか。本論では 2 つの可能性がある と考える。1 つは反腐敗運動を更に広げる可能性である。周永康が中 国 共産党の権 力の核心に 踊り出るこ とができた のは、曾慶 紅およ び 江沢民の抜擢である。特に曾慶紅は石油閥の黒幕のトップと言われ、 親族の汚職金額は 100 億元に達し、さらには周永康に政変計画の共 謀 を 暴 露 さ れ て い る 57。 こ れ は 同 じ く 調 査 を 行 う べ き で は な い か 。 「 刑は常務委 員に上らず 」という慣 習は破った が、それだ けでは 民 心 を満足させ られない。 なぜなら、 周永康は退 任した政治 局常務 委 員である。現職の常務委員に汚職問題はないとでもいうのだろうか。 例 えば、「中 国新聞の汚 職グループ の総黒幕」 と言われて いる劉 雲 山(政治局常務委員、中央党校校長) 58の調査は行わないのか。 56 莊慶鴻「打虎月刻入歷史 輿情熱度超戶籍改革」『中國青年報』、2014 年 8 月 4 日、 版 3。 57 琮鈺「周永康被抓供出曾慶紅」 『新唐人』 、2014 年 7 月 31 日、http://www.ntdtv.com/ xtr/b5/2014/07/31/a1126826.html。 58 鐵流「劉雲山是中國新聞貪腐集團的總後台」『明鏡新聞』、2014 年 8 月 1 日、 http://www.mirrorbooks.com/MIB/news/news.aspx?ID=N000040259。 -55- 第 43 巻 3 号 問題と研究 2 つ目は法による国家統治の定着である。周永康の立件審査が発表 された同日、中共中央政治局は第 18 期中央委員会第 4 回全体会議の 10 月開催と、同会議の主要議題「法による国家統治の全面的推進に お ける重大な 問題の研究 」を決定し た。中共中 央は法によ る国家 統 治 の 重 要 性 と し て 、「 国 家 ガ バ ナ ン ス の シ ス テ ム と 能 力 の 近 代 化 を 実現するうえでの必然的要請」であり、「わが党の執政と国家の振興、 国民の幸福と安寧、党と国家の長期安定に関わる」という 2 つの認 識を示した 59。法による国家統治の主張は中共「十五大」で既に取り 上げ られており 、そこには 「法による 国家統治の 主体は人民 群衆」、 「 法による国 家統治の客 体は国事、 経済的文化 的取組みお よび社 会 事業 」、「 法によ る国家統治 の法で最も 重要なのは 憲法と法律 」と の 認識が含まれていた 60。つまり、法による国家統治を再度持ち出した の は焦点をそ らすのが目 的なのだろ うか。それ とも真の改 革を目 指 すのだろうか。この観察指標は 3 つ設定することができる。1 つ目は 人権活動家を解放し冤罪にきちんと対応するかどうか。2 つ目は腐敗 した「紅二代」を法に照らして公平に裁くかどうか。そして 3 つ目 は 立憲政治を 批判せず「 立憲政治の 要となる制 度の要素と 理念は 資 本 主義とブル ジョアジー の独裁にの み属し、社 会主義人民 民主制 度 には属さない」との考えを捨てるかどうかである 61。 59 「中共中央政治局召開會議決定召開十八屆四中全會」 『新華網』、2014 年 7 月 29 日、 http://news.xinhuanet.com/politics/2014-07/29/c_1111854271.htm。 60 「 依 法 治 國 」『 人 民 網 』、 http://dangshi.people.com.cn/BIG5/165617/173273/10357240. html。 61 楊曉青「憲政與人民民主制度之比較研究」『紅旗文稿』、2013 年 5 月 21 日、 http://theory.people.com.cn/n/2013/0522/c40531-21566974.html。 -56- 2014 年 7.8.9 月号 2 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 習近平の反腐敗運動とエリートの分裂 異端者の排除について、「新四人組」の中で令計画のみいまだ取り 調 べを受けて いない。し かし、同一 グループに 属する実兄 の令政 策 (山西省政治協商会議副主席)、正部級官僚の申維辰および副部級官 僚の金道銘、杜善学、劉鉄男の 5 人は既に取り調べを受けている。 習 近平の異端 者排除の焦 点は周永康 グループで あり、取り 調べを 受 けた副部級以上の官僚は計 14 人に上る。この中には副国級 1 人(蘇 栄)と正部級 3 人(蒋潔敏、李東生および李崇禧)も含まれる。当 該官僚 14 人の現職地は全国人民政治協商会議、国務院国有資産監督 管 理委員会、 中国石油、 公安部、四 川省、江西 省、海南省 および 青 海省が含まれる。 習 近平の 異端 者排除 のタ ーゲッ トは このよ うに 広く、 行政 ランク も 高く、さら には誘発す る反発力も 特別大きい 。現在既に 発生し て いるのは社会不安の高まりである。新疆ではこの 1 年間半の間に動 乱が次々と発生した。2013 年 4 月にはマラルベシ県で警察と住民の 衝突により数十人が死傷し、6 月にはピチャン県で暴動が発生し 35 人の死者が出た。さらに 10 月には天安門前の金水橋でテロ事件が発 生 し、 12 月に はサイ バッ グ郷で 襲撃 事件が 発生 し、ウ イグ ル 族 14 人と警官 2 人が死亡した。2014 年 4 月にウルムチ駅で発生した爆発 テロ事件では 3 人が死亡、79 人が重軽傷を負った。5 月にウルムチ 市 にある 公園 北街付 近の 朝市で 起き た爆発 事件 で は 43 人 が死亡 し 94 人が負傷した 62。7 月にヤルカンド県で発生した暴力テロ事件では、 無辜の民衆 37 人が死亡、13 人が負傷、また暴徒 59 人が射殺され、 62 「習近平一月三次大動周永康地盤」 『新紀元週刊』第 381 期(2014 年 6 月 12 日)、 http://www.epochweekly.com/b5/383/13661p2.htm。 -57- 第 43 巻 3 号 問題と研究 容疑者 215 人が拘束された 63。新疆ウイグル自治区書記の前任者であ る 王楽泉およ び現職の張 春賢は共に 周永康の部 下であり、 周永康 は 満場一致で選出されて第 18 回全国代表大会に出席した。このことか ら 、新疆は周 永康の政治 基盤であり 、上述の動 乱は周永康 グルー プ が或いは関与している可能性もある。 新疆以外でも、2014 年 3 月 1 日、雲南省昆明市の昆明駅で無差別 襲撃事件が起き、死者は 32 人、負傷者は 143 人に上った。この事件 は曾慶紅が計画したと見られている。また、6 月 10 日に国務院新聞 弁公室が「『一国二制度』の香港特別行政区における実践」白書を発 表した。『一国二制度』の定義に香港の自治権を縮小する変更を加え、 「 外部勢力の 香港を利用 した中国へ の内政干渉 」に対し警 鐘を鳴 ら した。これに対し香港市民が強く反発。6 月 22 日の行政長官選挙を めぐる民主派団体の模擬投票に 78 万人が参加し、7 月 1 日の大規模 な市民デモには 51 万人が参加した。この事件は江派の政治局常務委 員 ・張徳江お よび劉雲山 が共同計画 したと見ら れている。 以上の 事 件 は全て、社 会の動乱を 故意に引き 起こして国 内および国 際的な 世 論 の不満の声 を煽り、さ らには習近 平を打倒す ることが目 的とさ れ ている 64。 以 上の事 件か ら中共 の支 配エリ ート の分裂 が既 に始ま って いるこ と が分かる。 習近平は改 革派で、取 り調べを受 けている中 共高官 は 保 守派と考え ることがで きる。この 分裂は中国 の政治改革 に役立 つ か 否か、その 鍵は習近平 が腐敗一掃 に民衆の力 を必要とす るか否 か 63 「中國公布新疆莎車襲擊細節 擊斃暴徒 59 人」『BBC 中文網』 、2014 年 8 月 2 日、 http://www.bbc.co.uk/zhongwen/trad/china/2014/08/140802_xinjiang_attack_detail_released .shtml。 64 趙邇珺「逮捕江澤民的日子在逼近」 『大紀元』 、2014 年 7 月 4 日、http://www.epochtimes. com/gb/14/7/4/n4192586.htm。 -58- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 に あると本論 では考える 。民衆の力 を借りれば 、中国の民 主主義 へ の 移行が期待 できる。な ぜなら、理 論上支配階 級は権利を 自ら人 民 に 移譲しない が、支配階 級の分裂と 闘争は人民 に政治動員 の機会 を 提 供するから である。民 衆を動員後 、改革派は 政治的権利 を人民 に 移 譲しなけれ ば社会不安 を招くと考 え、社会的 、政治的改 革を堅 持 す るかもしれ ない。この ように改革 派と保守派 の衝突を招 き、改 革 派と民衆の動員提携が促進し、改革の出現をもたらす可能性がある 65。 し かし、今の ところ上述 の理論の予 言が実現す る確率は低 い。な ぜ な ら、習近平 は人民の力 を動員して 保守派を抑 えつけては いない か らである。 3 習近平の反腐敗運動と円滑な政令施行 公開処罰に よる威信の 確立につい て、習近平 が取り調べ を進め て いる副部級以上の官僚の現職地は、地方者が計 18 人(42.9%)で、 天 津市、重慶 市、広東省 、内モンゴ ル、遼寧省 、安徽省、 江蘇省 、 陝 西省、湖北 省、湖南省 、貴州省、 雲南省、黒 竜江省およ び広西 チ ワン族自治区の 14 省市区に分布している。習近平のこのような強大 な 反腐敗運動 は地方に対 する威嚇効 果を生むが 、かと言っ て今後 は 号令さえ下せばあとは左団扇といくのだろうか。 中 央政府 のマ クロコ ント ロール 政策 に対し て繰 り返さ れる 地方の 抵 抗は、江沢 民および胡 錦涛政権時 にも遭遇し た難題であ る。地 方 政 府は合理的 経済人であ り、その行 動は強烈な 日和見主義 の傾向 を 具えている 66。従って、地方政府の合理的選択というのは投資規模を 65 Adam Przeworski, Democracy and Market: Political and Economic Reforms in Eastern Europe and Latin American (Landon: Cambridge University Press, 1991), pp. 66~72. 66 李軍杰、鍾君「中國地方政府經濟行為分析—基於公共選擇視角」 『中國工業經濟』第 193 期(2004 年 4 月) 、頁 27。 -59- 第 43 巻 3 号 問題と研究 最大限に増やすことである。固定資産投資は 1 億元増加するごとに、 GDP を約 0.6635 億元増やすことができる 67。地方政府は税収を増や し失業率を下げた上で 68、さらに昇進につながるだけではなく 69、レ ントシーキングによる収入ももたらされ 70、当該地域の競争力を維持 できる 71。 上述した経済発展観は GDP を急速に成長させることができるが、 同 時に産業構 造の不均衡 、所得分配 の不平等、 都市と地方 の格差 、 地 域開発の不 均衡、自然 環境の悪化 、エネルギ ー資源の消 耗など の 問題も伴う。そこで、習近平は不正・腐敗に反対し清廉を呼びかけ、 公 開処罰によ り威信を確 立した後、 評価指標に 変更を加え ること で 中央権力の円滑な行使を図った。2013 年 12 月、中共中央組織部は「地 方 の党・政府 指導グルー プと指導幹 部の政績評 価制度の改 善に関 す る通知」を発表した。これにより、今後は GDP とその伸び率だけで 政 績を評価せ ず、かつ、 回収困難な 不良債権を 残した者は 処分対 象 となり離任後も責任が問われることになった 72。 この通知が 発表される や否やこの ような上意 下達的な政 策は効 果 67 張仲梁等著「通貨膨脹、投資與經濟增長—關於宏觀調控背景的計量分析」 『管理世界』 68 夏傑長「地方政府:推動經濟過熱的重要因素」 『改革』第 129 期(2004 年 5 月) 、頁 69 Hongbin Li and Li-an Zhou, “Political Turnover and Economic Performance: The Incentive 2004 年第 9 期(2004 年 9 月) 、頁 9。 20。 Role of Personnel Control in China,” Journal of Public Economics, No. 89 (September 2005), pp. 743~1762. 70 龐明川「中央與地方間博奕的形成機理及其演進」 『財經問題研究』253 期(2004 年 12 月) 、頁 59。 71 劉大志、蔡玉勝「地方政府競爭、資本形成與經濟增長」 『當代財經』243 期(2005 年 2 月) 、頁 21。 72 「政績考核新規:盲目舉債留爛帳 離任也要追責」『新華網』、2013 年 12 月 9 日、 http://news.xinhuanet.com/politics/2013-12/09/c_118484433.htm。 -60- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 が すぐに現れ た。北京、 河北、甘粛 、チベット 、福建およ び内モ ン ゴ ルなどの省 市区では、 経済成長目 標を引き下 げることを 既に明 確 に 示した。こ のうち最も 代表的なの は内モンゴ ルである。 内モン ゴ ルは 2002~2009 年の GDP 平均成長率が全国 1 位の 17.6%で、2004 年には 20%前後にまで達していた。2013 年の年成長率は 12%だった ものの、内モンゴルは中央政策に従い 2014 年の目標値はわずか 9% に設定した 73。このことから、習近平は中央政府のマクロコントロー ル 政策に対し て繰り返さ れてきた地 方の抵抗と いう難題を 解決で き る可能性がある。 六 おわりに 習近平総書 記は就任す るや否や反 腐敗の重要 性を強調し た。そ の 目 的は単に中 共政権の合 法性を維持 するためだ けなのだろ うか。 或 いは他に考えがあるのだろうか。習近平は就任 1 年 8 か月の間に副 省長・副部長級以上の高官 42 人を取り調べた。これら高官の背後に は 共通する関 係ネットワ ークが存在 するのだろ うか。これ らの関 係 ネ ットワーク はどのよう な政治的影 響を及ぼす のだろうか 。以下 に この 3 つの問題に対して本論を根拠に分析し、その結果を概括する。 中国共産党 幹部の政治 腐敗は政府 能力および 合法性を低 下させ 、 政 権の政策実 行能力およ び社会の変 革要求に対 する反映能 力を失 わ せ る。従って 中共指導者 の反腐敗運 動における 公的な理由 は政権 の 安 定である。 しかし、習 近平が強力 に反腐敗運 動を展開す る理由 は 権 力移行の過 程で「新四 人組」とい う反対勢力 に直面した ためで あ る 。また、江 沢民時代に しろ胡錦涛 時代にしろ 、政策を推 進する 際 73 「棄 GDP 崇拜下基層 地方紛降 GDP 目標」 『多維財經網』、2014 年 1 月 15 日、 http://economics.dwnews.com/big5/news/2014-01-15/59374930.html。 -61- 第 43 巻 3 号 問題と研究 は 常に地方主 義の抵抗に 直面したが 、習近平が 就任する際 に直面 し た 地方勢力は 胡錦涛時代 を上回って いた。従っ て、中央機 関の専 属 的 権限を通じ て権威を現 すことが更 に必要であ る。まとめ ると、 習 近平の反腐敗運動の目的は主に 3 つある。1 つ目は主に民心を獲得す ることにより一党独裁を維持する。2 つ目は主に異端者を排除するこ と により自身 の権力強化 を図る。習 近平の異端 者排除の対 象は周 永 康、薄熙来、徐才厚および令計画派閥の部下である。そして、3 つ目 の 目的は主に 公開処罰に より威信を 確立し、中 央の政策を 円滑に 進 めることである。 習近平が取り調べを行った副省長・副部長級以上の高官 42 人の本 籍地は、山西省、遼寧省、山東省および湖南省が最多で各 4 人であ る 。「 新 四 人 組 」 の う ち 薄 熙 来 と 令 計 画 の 本 籍 地 は 山 西 省 で あ る 。 「新四人組」の徐才厚と周永康を除いた他の 40 人の台頭地は山西省 が最も多く計 4 人、江西省と四川省は各 3 人となっている。令計画 は 「山西人グ ループ」の 保護者と見 なされた。 台頭地が山 西省 の 3 人は共に蘇栄派閥の部下である。四川省の 3 人は共に周永康グルー プのメンバーである。台頭地が中国石油、海南省、青海省、安徽省、 湖南省、湖北省、雲南省および黒竜江省に属するのは各 2 人である。 このうち周永康の関係者は中国石油、海南省および青海省の 3 か所 で台頭した。他の 14 か所で台頭した者のうち、2 人は周永康と、1 人は令計画とつながりがある。「新四人組」のうち令計画のみいまだ 取り調べを受けていないが、令計画の周辺では既に 5 人が取り調べ を受けている。周永康グループは計 15 人の副部級以上の高官が取り 調べを受けた。 周 永 康 へ の 汚 職 容 疑 の 追 及 に 対 す る 世 論 の 満 足 度 は 97.35% に 達 し 、習近平は 民心の獲得 に成功した 。今後、反 腐敗運動は 更に進 め ら れ、現職の 政治局常務 委員である 劉雲山が標 的になる可 能性も あ -62- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 る 。或いは法 による国家 統治が腐敗 摘発運動に 取って代わ る可能 性 も ある。習近 平の強力な 反腐敗運動 は既に党の 執政エリー トを分 裂 させている。この分裂が中国の政治改革につながるかどうかの鍵は、 習 近平が腐敗 一掃に民衆 の力を必要 とするかど うかにある 。もし 民 衆 の力を借り れば、中国 の民主主義 への移行が 期待できる 。しか し 今 のところそ の可能性は 高くない。 習近平が摘 発した高官 のうち 現 職地が地方の高官は計 18 人(42.9%)、14 省市区に分布しており、 既 に地方への 威嚇効果が 生まれてい るため、こ れまで度々 地方政 府 の 抵抗にあっ てきた中央 政府のマク ロコントロ ール政策の 推進が 見 込めるからだ。 本 研究の 一部 の論点 は中 共内部 の運 営状況 に関 係して おり 資料ソ ー スを明記し た。しかし 、作者が仮 名のものも あり真実に 基づい て い るかどうか 疑問視され る恐れもあ る。例えば 「新四人組 」とい う 呼 び名、薄熙 来と周永康 の政変計画 、周永康と 新疆ウイグ ル自治 区 の 動乱の関係 、張徳江お よび劉雲山 と香港自治 権縮小の関 係は、 本 論 で論理的に 分析し証拠 立てている ためその合 理性を有す る。さ ら に 本論の執筆 過程におい て筆者は多 方面での検 証も行った 。多く の 情 報は既にイ ンターネッ トで見つけ ることがで きるが、も し専門 書 があれば筆者は出来る限りそれを探して引用した。この他、2014 年 8 月、中共の反腐敗運動の焦点が山西省に集中し、「新四人組」でた だ 1 人摘発されていない令計画にも周囲から徐々に捜査の手が伸び て いるようで ある。従っ て一部の観 点は現時点 で市民権を 得てい な いが今後の検証が期待されるものである。 (寄 稿 : 2014 年 8 月 10 日、採 用 : 2014 年 9 月 11 日 ) 翻 訳 : 西方 亜希 子 ( フリ ーラ ン ス 翻訳 者) -63- 第 43 巻 3 号 問題と研究 習近平反貪對象之關係網絡與政治影響 王 嘉 州 (義守大學公共政策與管理學系教授) 【摘要】 習近平上任一年八個月,已查辦 42 位副省部級以上高官。習近平 強 力反腐的目 的為何?遭 查辦者是否 存在共同的 關係網絡? 查辦這 些 關 係網絡將產 生哪些政治 影響?本文 採用關係模 式,輔以歸 納法研 究 後 發現,習近 平反貪腐之 目的乃爭取 民心、排除 異己與開鍘 立威。 在 「 新四人幫」 中僅剩下令 計劃尚未查 辦,但已有 五位同黨遭 查辦。 周 永康集團共計被查辦 15 位。未來反腐可能更上層樓,或以依法治國取 代 運動反腐。 習近平強力 反腐已造成 中共執政菁 英出現分裂 。此一 分 裂 ,能否有助 於中國政體 轉型,關鍵 在於習近平 是否需要藉 助民間 力 量反腐,不過目前機率不高。習近平查處 18 位地方官員,已對地方產 生威嚇作用,故可望解決中央宏觀調控政策屢遭地方抗拒的難題。 關鍵字:籍貫地、崛起地、現職地、依法治國、政體轉型 -64- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 Xi Jinping’s Anticorruption Campaign Against Guanxi Networks and the Related Political Influence Chia-Chou Wang Professor at the Department of Public Policy and Management, I-Shou University 【Abstract】 Within 1 year and 8 months of Xi Jinping becoming the General Secretary of the Communist Party of China, 42 senior officials at deputy positions above the provincial and ministerial levels have been prosecuted for corruption. This study investigated Xi’s purpose for actively combating corruption, whether shared guanxi networks existed among the prosecuted officials, and the political influences generated by Xi’s investigation into these networks. By adopting a relational model and an inductive approach, this study found that the purposes of Xi’s anticorruption campaign were to gain public support, to eliminate dissidents, and to establish his power. In the new Gang of Four, only Ling Jihua has escaped prosecution; however, 5 of his allies have been prosecuted, and 15 members in Zhou Yongkang’s group have been prosecuted. In the future, the anticorruption campaign may be expanded or replaced by the principle of the rule of law. Xi’s strong anticorruption measures have led to a division among the ruling elite. However, whether the split can facilitate the transformation of the communist regime in China depends on whether Xi’s anticorruption measures require the support of civil society, the possibility of which is currently low. Xi’s -65- 第 43 巻 3 号 問題と研究 prosecution of 18 local officials has effectively intimidated local governments; therefore, the problem of local governments frequently resisting the macro-control policies of the central government is likely to be solved. Keywords: Place of Ancestry Origin, Place of Current Position, Place of Rise to Power, Regime Transition, Rule of Law -66- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 〈参考文献〉 王嘉州「中央集権体制への傾倒か:第 18 回共産党大会後の中国における中央と地方の 関係」『問題と研究』第 42 卷第 2 号(2013 年 6 月)。 「中共中央政治局召開會議決定召開十八屆四中全會」『新華網』、2014 年 7 月 29 日、 http://news.xinhuanet.com/politics/2014-07/29/c_1111854271.htm。 「中國公布新疆莎車襲擊細節 擊斃暴徒 59 人」『BBC 中文網』、2014 年 8 月 2 日、 http://www.bbc.co.uk/zhongwen/trad/china/2014/08/140802_xinjiang_attack_detail_release d.shtml。 「老虎蒼蠅一起打 十八大以來查辦案件工作綜述」『人民網』、2014 年 1 月 9 日、 http://fanfu.people.com.cn/BIG5/n/2014/0109/c64371-24074503.html。 「依法治國」『人民網』、http://dangshi.people.com.cn/BIG5/165617/173273/10357240.html。 「政績考核新規:盲目舉債留爛帳 離任也要追責」『新華網』、2013 年 12 月 9 日、 http://news.xinhuanet.com/politics/2013-12/09/c_118484433.htm。 「棄 GDP 崇拜下基層 地方紛降 GDP 目標」『多維財經網』、2014 年 1 月 15 日、 http://economics.dwnews.com/big5/news/2014-01-15/59374930.html。 「習近平一月三次大動周永康地盤」『新紀元週刊』第 381 期(2014 年 6 月 12 日)、 http://www.epochweekly.com/b5/383/13661p2.htm。 「蘇榮與蔣潔敏的『鬼打牆』」 『中國評論月刊網路版』、2014 年 6 月 20 日、http://hk.crntt. com/crn-webapp/mag/docDetail.jsp?coluid=29&docid=103247255。 『中共人名錄』 『中國共產黨大辭典』 王姝、侯潤芳「蘇榮、蔣潔敏曾多次視察毛小兵工作」『新京報』、2014 年 7 月 16 日、 http://www.bjnews.com.cn/news/2014/07/16/325695.html。 王春山『周永康集團』(領袖出版社、2014 年) 。 王紹光、胡鞍鋼『中國國家能力報告』(香港:牛津大學出版社、1994 年)。 王嘉州「中共『十六大』後的中央與地方關係—政治利益分配模型之分析」『東吳政治學 報』第 18 期(2004 年 3 月)。 王嘉州「固權與發展?胡錦濤反貪腐邏輯分析」『東亞研究』第 40 卷第 2 期(2009 年 7 月) 。 王嘉州「財政制度變遷時中央與地方策略互動之分析—以分稅制與廣東省為例」『中國大 陸研究』第 46 卷第 5 期(2003 年 9 月) 。 安三仁『新四人幫』 (紐約:哈耶出版社、2014 年)。 何頻、高新『中共新權貴—最新領導者群像』(香港:當代月刊、1993 年)。 吳玉山「現代化理論 vs.政權穩定論:中國大陸民主發展的前景」 『政治科學論叢』第 9 期 (1998 年 6 月) 。 吳國光、鄭永年『論中央-地方關係』 (香港:牛津大學出版社、1994 年) 。 -67- 第 43 巻 3 号 問題と研究 李軍杰、鍾君「中國地方政府經濟行為分析—基於公共選擇視角」 『中國工業經濟』第 193 期(2004 年 4 月)。 汪風『大網收緊令計劃』 (香港:外參出版社、2014 年) 。 林佳龍、徐斯儉「退化的極權主義與中國未來發展」刊於林佳龍主編『未來中國—退化的 極權主義』 (時報文化、2004 年) 。 林雲『習近平辣手殲軍頭』 (香港:南風窗出版社、2014 年)。 紀偉仁『中國式清算—習近平玩殘老虎』 (領袖出版社、2014 年) 。 胡錦濤「高舉中國特色社會主義偉大旗幟為奪取全面建設小康社會新勝利而奮鬥—在中國 共 產 黨 第 十 七 次 全 國 代 表 大 會 上 的 報 告 」『 新 華 網 』、 2007 年 10 月 24 日 、 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-10/24/content_6938568.htm。 夏傑長「地方政府:推動經濟過熱的重要因素」 『改革』第 129 期(2004 年 5 月) 、頁 20。 高新、『降伏「廣東幫」』 (香港:明鏡出版社、1999 年 9 月) 。 寇健文「中國政治情勢:高層政治的演變」丁樹範主編『中國大趨勢:2003-2004』(新新 聞文化公司、2004 年)。 張仲梁等著「通貨膨脹、投資與經濟增長—關於宏觀調控背景的計量分析」『管理世界』 。 2004 年第 9 期(2004 年 9 月) 習近平「緊緊圍繞堅持和發展中國特色社會主義 學習宣傳貫徹黨的十八大精神—在十八 屆中共中央政治局第一次集體學習時的講話」『新華網』、2012 年 11 月 18 日、 http://news.xinhuanet.com/2012-11/19/c_123967017.htm。 莊慶鴻「打虎月刻入歷史 輿情熱度超戶籍改革」『中國青年報』、2014 年 8 月 4 日、版 3。 陳俊杰『關係資源與農民的非農化』 (北京:中國社會科學出版社、1998 年 11 月) 。 琮鈺「周永康被抓供出曾慶紅」 『新唐人』 、2014 年 7 月 31 日、http://www.ntdtv.com/xtr/ b5/2014/07/31/a1126826.html。 黃淑嫆「地方急轉型 挑戰中央政策」『中國時報』2009 年 1 月 16 日、版 A13。 楊曉青「憲政與人民民主制度之比較研究」『紅旗文稿』、2013 年 5 月 21 日、 http://theory.people.com.cn/n/2013/0522/c40531-21566974.html。 趙邇珺「逮捕江澤民的日子在逼近」 『大紀元』 、2014 年 7 月 4 日、http://www.epochtimes. com/gb/14/7/4/n4192586.htm。 劉大志、蔡玉勝「地方政府競爭、資本形成與經濟增長」 『當代財經』243 期(2005 年 2 月) 。 鄭永年『江澤民的政治遺產:在守成和改革之間』 (新澤西:八方文化、2002 年) 。 儲百亮、安思喬「國資委主任蔣潔敏落馬、調查指向周永康」『紐約時報中文網』 、2013 年 09 月 02 日、http://cn.nytimes.com/china/20130902/c02corruption/。 龐明川「中央與地方間博奕的形成機理及其演進」 『財經問題研究』253 期(2004 年 12 月) 。 鐵流「劉雲山是中國新聞貪腐集團的總後台」『明鏡新聞』、2014 年 8 月 1 日、http://www. mirrorbooks.com/MIB/news/news.aspx?ID=N000040259。 Bayley, David H., “The Effects of Corruption in a Developing Nation”, Western Political -68- 2014 年 7.8.9 月号 習近平の反腐敗運動における摘発対象者の関係ネットワークと政治的影響 Quarterly, Vol. 19, No. 4 (December 1966). 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