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被疑者の公開捜査について
各管区警察局広域調整担当部長 警 視 庁 関 係 部 長 殿 各 道 府 県 警 察 本 部 長 (参考送付先) 庁 内 関 係 各 局 部 課 長 警 察 大 学 校 長 原議保 存期間 5年(平成33年3月31日まで) 有 効 期 間 一種(平成33年3月31日まで) 警 察 庁 丁 刑 企 発 第 2 7 号 警 察 庁 丁 少 発 第 4 3 号 平 成 2 8 年 3 月 2 8 日 警 察 庁 刑 事 局 刑 事 企 画 課 長 警 察 庁 生 活 安 全 局 少 年 課 長 被疑者の公開捜査について(通達) 被疑者の公開捜査については、「被疑者の公開捜査について」(平成10年10月1日付け警 察庁丁刑企発第136号)及び「少年被疑者及び人定が明らかでなく少年の可能性が認めら れる被疑者の公開捜査について」(平成15年12月11日付け警察庁丁少発第191号、警察庁丁 刑企発第238号)により運用してきたところであるが、最近における犯罪情勢の変化等に 伴い、下記によることとしたので、その運用に遺憾のないようにされたい。 なお、前記2通達は、廃止する。 記 1 公開捜査の意義 この通達において被疑者の公開捜査とは、被疑者の発見、検挙及び犯罪の再発防止を 目的として、被疑者の氏名又は画像、捜査用似顔絵等の捜査資料を不特定多数の者に公 表することにより、積極的に国民の協力を求める捜査手法をいう。 したがって、例えば、報道機関等を通じ広く一般に公表するような場合は、被疑者の 氏名のみでも公開捜査に含むが、被疑者の立ち回りが予想される箇所(以下「立ち回り 先」という。)に限定し、ちらし等を配布して行う個別の協力依頼は、ここにいう公開 捜査に含まない。 2 公開捜査の要件 公開捜査は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合において、犯罪反復のおそれ、 捜査上の必要性、被疑者の名誉、信用、プライバシー等(以下「名誉等」という。)へ の影響等の諸要素を総合的に勘案して行うものとする。 (1) 次のいずれかの事件であること。 ア 凶悪事件 イ 財産犯のうち、犯行の手段、方法が悪質で被害額も相当多額にわたり、又はわた ることが見込まれる事件 ウ 反社会性の強い集団の構成員と認められる者により敢行された事件 エ その他社会的危険性があり、又は社会的反響の大きい事件 (2) 公開する人物を被疑者と認める根拠が十分にあること。 前記(1)の事件について、指名手配が行われていることを要する。ただし、人定が 明らかでないなどの理由により指名手配が行われていないときであっても、犯罪反復 のおそれが極めて高いなど公開捜査の必要性が特に高い場合には、各種証拠、資料に 基づいて、公開する人物を前記(1)の事件の被疑者と認めるに足りる十分な理由があ ることを確認の上で、公開捜査を行うことができる。 (3) 成人の被疑者であること。 少年法第61条(記事等の掲載の禁止)の趣旨に鑑み、原則として成人の被疑者であ ることを要する。 しかしながら、少年被疑者の公開捜査は一切認められないというものではない。 少年被疑者の公開捜査は、捜査段階において少年の氏名等が周知されることになる ことから、少年法第22条第2項(少年審判の非公開)及び第61条(記事等の掲載の禁 止)、犯罪捜査規範第209条(報道上の注意)等の規定に照らし、慎重な配慮がなされ なければならないが、少年自身の保護と社会的利益との均衡、捜査の必要性等の諸要 素を総合的に勘案してその要否を判断し、必要かつ適切と認められる場合には、例外 的にこれを行うことが許される。 例えば、凶悪事件であって、その手段、方法が特に悪質で、犯罪反復のおそれが高 く、社会的にも大きな不安を与えており、被疑者を発見、検挙するために捜査上他に とるべき手段がない場合等前記規定の趣旨を考慮しても社会的利益が強く求められる 場合である。 また、人定が明らかでなく少年の可能性が認められる場合は、必ずしも少年被疑者 の公開捜査と同列に論ずる必要はないが、被疑者が少年である可能性にも十分な配慮 が必要であり、当該個別具体的な事件に応じ、その内容、公開捜査に代替する手段、 被疑者の推定年齢、少年である可能性の程度、公開の具体的手法といった諸要素を総 合的に勘案し、公開捜査の要否を判断すること。 なお、当然のことながら、いまだ被疑者が特定されていない以上、まずは、被疑者 を特定すべく可能な限り捜査を尽くすこと。 3 公開捜査の時期、方法等 (1) 警視庁及び道府県警察(方面)本部(以下「本部」という。)の対象事件の捜査を 主管する所属の長(以下「事件主管課長」という。)は、被疑者の追跡捜査の状況、 犯罪反復の可能性、捜査上の支障等を総合的に検討するとともに、必要により、警察 庁の事件主管課長と協議した上で、公開捜査の必要性を判断し、個々の具体的事案に 応じて、報道機関、インターネット、ポスター、ちらし等各種の広報媒体の特性を考 慮した効果的な時期、手法を選定すること。 なお、インターネットの普及に伴い、公開捜査に際してホームページやソーシャル ・ネットワーキング・サービス等を活用する場合、公開した被疑者の写真等を第三者 が複製し、インターネット上に残存するおそれがあることに配意すること。 (2) 公開する事項は、既に特定された被疑者の場合は、正確な資料により確認できた被 疑者の氏名、年齢、身体的特徴、職業、出身地、犯罪事実の概要等被疑者を特定し得 る必要最小限度のものとし、いまだ人定が特定されていない被疑者の場合は、捜査に より判明した被疑者の推定年齢、身体特徴、着衣、所持品、犯罪事実の概要等被疑者 を特定する上で有効と認められる必要最小限度のものとする。 なお、被疑者の素行、経歴、精神的障害及び家族関係に関する事項並びに参考人等 に関する事項は公開しないこと。 (3) 公開捜査に当たっては、被疑者の氏名の公開のほか、個々の具体的事案に応じて写 真・防犯カメラ画像等の画像記録(以下「写真等」という。)やイラスト、捜査用似 顔絵、音声記録等を活用すること。特に、写真等を公開する場合は、被疑者の写真等 であることを十分確認すること。 なお、少年被疑者(人定が明らかでなく少年の可能性が認められる場合を含む。) の公開捜査に当たっては、少年の保護の要請を尊重する観点から、 ○ どのような資料(写真等、イラスト、捜査用似顔絵、身体的特徴、音声記録等) を公開するのか。 ○ どのような広報媒体を活用するのか。 等について慎重に検討し、特に、写真等を公開しようとする場合は、例えば、捜査用 似顔絵を公開するなど被疑者の名誉等の侵害の程度が低い資料の公開を先行させた 後、なお効果が得られない場合に写真等を公開するなど、十分に検討すること。 (4) 公開捜査に当たっては、被害者はもちろん、被害者・被疑者の家族等の関係者や被 疑者本人の名誉等を尊重し、社会的に相当かつ妥当な方法で行うこと。特に、犯罪事 実の概要を公開する場合には、捜査上の支障に加え、被害者等の関係者の名誉等に十 分配慮すること。 4 公開捜査の管理 (1) 審査等 本部の指名手配業務を主管する所属の長(以下「手配主管課長」という。)は、事 件主管課長からの依頼に基づき、公開捜査の対象、必要性、時期、方法等について厳 正に審査すること。 なお、手配主管課長は、少年被疑者の公開捜査に当たっては、事前に警察庁(少年 課及び刑事企画課)及び管区警察局(広域調整第一課)と協議すること。ただし、犯 罪反復のおそれが極めて高い場合で、急速を要し、協議するいとまがないときは、こ の限りでない。この場合において、公開捜査したときは、事後速やかに報告すること。 (2) 関係記録の整備等 手配主管課長は、公開捜査の経過等を記録した簿冊を整備するなど、公開捜査の状 況を把握、管理し、公開捜査に基づく民間通報への対応や公開捜査の解除に伴う措置 等が迅速的確に行われるよう周知徹底を図ること。 5 その他 (1) 誤手配の防止 公開捜査を行っての誤手配は、関係者の名誉等を著しく侵害することから、指名手 配事実の疎明資料等はもとより、公開事項を十分に確認するなど、誤手配の絶無を期 すこと。 (2) 被疑者検挙後等における留意事項 被疑者を検挙するなど公開捜査の必要がなくなった場合は、公開した被疑者に係る ポスター、写真等の速やかな撤去や削除を行うとともに、報道機関への告知を確実に 行うなどの解除措置を徹底すること。 また、公開捜査を行った被疑者が少年であった場合の検挙に係る報道発表について は、少年法第61条、犯罪捜査規範第209条等の趣旨を踏まえて行うこと。 (3) 立ち回り先に対する協力依頼 立ち回り先に対して行う協力依頼は、関係者等の名誉等の尊重の見地から慎重を期 するとともに、依頼先の選定に当たっては、当該事件の捜査状況、罪種、被疑者の行 動実態等を総合的に検討の上、立ち回りの蓋然性が高いものに限定すること。また、 立ち回り先にちらし等を配布する場合は、立ち回り先以外の者の目に触れないよう取 扱いについて十分な指導を行うこと。 なお、配布先が全国又は数都道府県に及ぶなど極めて多数にわたる場合には、公開 捜査に準じて取り扱うこと。