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ザンビア共和国 ザンビア投資促進プロジェクト − トライアングル・オブ

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ザンビア共和国 ザンビア投資促進プロジェクト − トライアングル・オブ
ザンビア共和国
ザンビア投資促進プロジェクト
− トライアングル・オブ・ホープ −
中間レビュー調査報告書
平成 23年 4 月
(2011年)
独立行政法人国際協力機構
ザン事
ザンビア事務所
JR
11-01
序
文
ザンビア共和国(以下、「ザンビア」と記す)政府の VISION 2030 では、2030 年までに中所得
国をめざすことが謳われており、銅資源に偏重した経済・産業構造からの脱却をめざして、ザン
ビア政府は、投資の増加を通じて経済の多角化及び経済成長を図るため、投資家に対するインセ
ンティブの付与や複合的経済特区(MFEZ)の計画・整備など、投資家に魅力的な環境整備に努
めています。
こうした状況のもと、我が国は、「南南協力を通じた投資促進環境整備プロジェクト」を 2006
年 7 月から 2009 年 3 月まで実施しました。2008 年 11 月には、同プロジェクトに係る終了時評価
がザンビア側と合同で実施され、情報整備が実践されたことや投資事業が生まれたことなどに高
い評価を得ました。一方で、ザンビアの投資促進を担う機関として 2007 年に発足したザンビア開
発庁(Zambia Development Agency:ZDA)の能力強化を中心に、12 アクションアジェンダの完了
をめざすためのモニタリング及び助言について、更なる支援の必要性が確認されました。
JICA は、2009 年 8 月から 2012 年 8 月までの 3 年間、ZDA を中心とする投資促進の実施体制が
強化されることにより、ザンビアが効果的かつ持続的に投資促進を実施できるようになることを
めざし、本プロジェクトを実施しています。
今般、プロジェクト開始より 1 年半が経過したため、中間レビューを行うことを目的として、
2011 年 1 月から 2 月にかけて調査団を派遣し、ザンビア政府関係機関及び民間投資家と協議を行
いました。本報告書は、その評価結果を取りまとめたものであり、今後のプロジェクトの実施・
展開に、更には類似プロジェクトに活用されることを願うものです。
本調査にご協力とご支援をいただいた内外の関係各位に対し、心から感謝の意を表するととも
に、引き続き一層のご支援をお願いする次第です。
平成 23 年 4 月
独立行政法人国際協力機構
ザンビア事務所長
鍋屋
史朗
目
序
文
目
次
地
図
次
略語表
評価調査結果要約表
第1章
中間レビュー調査の概要 ·················································································· 1
1-1
調査団派遣の経緯 ························································································ 1
1-2
調査団の目的 ······························································································ 2
1-3
調査団の構成と調査期間 ··············································································· 2
1-4
主要面談者 ································································································· 2
第2章
中間レビュー調査の実施方法 ············································································ 5
2-1
評価グリッドの作成 ····················································································· 5
2-2
合同評価 ···································································································· 5
2-3
評価の範囲 ································································································· 5
2-4
評価の最終取りまとめ ·················································································· 6
第3章
調査結果 ······································································································· 7
3-1
プロジェクトの投入実績 ··············································································· 7
3-2
プロジェクトの実績 ····················································································· 7
3-3
プロジェクトの実施プロセス ········································································ 12
第4章
4-1
評価結果 ······································································································ 13
評価 5 項目による評価結果 ··········································································· 13
4-1-1
妥当性 ····························································································· 13
4-1-2
有効性 ····························································································· 14
4-1-3
効率性 ····························································································· 14
4-1-4
インパクト ······················································································· 15
4-1-5
持続性 ····························································································· 15
4-2
結
論 ······································································································ 16
4-3
提
言 ······································································································ 16
4-4
プロジェクトの後半部に向けた留意事項 ························································· 20
第5章
団長総括 ······································································································ 21
第6章
官民連携団員所感 ·························································································· 23
-1-
付属資料
1.調査日程 ········································································································· 27
2.M/M(中間レビュー報告書) ·············································································· 30
3.生産性運動(カイゼン運動)の現状 ····································································· 80
4.2011 National KAIZEN Conference 報告書(和文・英文) ·········································· 85
-2-
略
語
表
略語
正式名称
和訳
APO
Asia Productivity Organization
アジア生産性機構
C/P
Counterpart
カウンターパート
FDI
Foreign Direct Investment
海外直接投資
FNDP
Fifth National Development Plan
第五次国家開発計画
JICA
Japan International Cooperation Agency
国際協力機構
JJIC
JJ International Consultants
(マレーシア人コンサルタント)
JPC
Japan Productivity Centre
(財)日本生産性本部
JV
Joint Venture
ジョイント・ベンチャー
MACO
Ministry of Agriculture and Cooperatives
農業協同組合省
MCT
Ministry of Communication and Transport
通信・運輸省
MCTI
Ministry of Commerce, Trade and Industry
通商貿易産業省
MFEZ
Multi Facility Economic Zone
複合的経済特区
MIDA
Malaysia Industrial Development Agency
マレーシア産業開発庁
MLSS
Ministry of Labour and Social Security
労働社会保障省
M/M
Minutes of Meeting
協議議事録
MMMD
Ministry of Mines and Minerals Development
鉱山・鉱物資源開発省
MoE
Ministry of Education
教育省
MoFNP
Ministry of Finance and National Planning
財務・国家計画省
MoH
Ministry of Health
保健省
MOU
Memorandum of Understanding
合意書
MTENR
Ministry of Tourism, Environment and Natural
Resources
観光・環境・天然資源省
NORTEC
Northern Technical College
国立技能短期大学
NPDD
National Productivity Development
Department
国家生産性開発局
ODA
Official Development Assistance
政府開発援助
OECD
Organization for Economic Co-operation and
Development
経済協力開発機構
OJT
On the Job Training
オン・ザ・ジョブ・トレーニング
PAPA
Pan African Productivity Association
汎アフリカ生産性協会
PDM
Project Design Matrix
プロジェクト・デザイン・マトリック
ス
PFI
Policy Framework for Investment
投資のための政策枠組み
PO
Plan of Operation
プロジェクト活動計画書
PPP
Public Private Partnership
官民連携
PSDRP
Private Sector Development Reform
Programme
民間セクター開発改革プログラム
S/C
Steering Committee
ステアリング・コミッティ-
SME
Small and Medium Enterprise
中小企業
SNDP
Sixth National Development Plan
第六次国家開発計画
TICAD
Tokyo International Conference for African
Development
アフリカ開発会議
TOH
Triangle of Hope
トライアングル・オブ・ホープ
WTO
World Trade Organization
世界貿易機関
ZACCI
Zambia Association of Chambers of Commerce
and Industry
ザンビア商工会議所
ZAM
Zambia Association of Manufacturers
ザンビア製造業協会
ZDA
Zambia Development Agency
ザンビア開発庁
ZIC
Zambia Investment Centre
ザンビア投資センター
ZIPP
Zambia Investment Promotion Project
ザンビア投資促進プロジェクト
ZNPC
Zambia National Productivity Centre
ザンビア国家生産性向上センター
評価調査結果要約表
1.案件の概要
国名:ザンビア共和国
案件名:ザンビア投資促進プロジェクト
-トライアングル・オブ・ホープ-
分野:民間セクター開発
援助形態:技術協力プロジェクト
所轄部署:ザンビア事務所
協力金額(評価時点):13,202 千円
先方関係機関:大統領府、内閣府、通商貿易
産業省、ザンビア開発庁
(R/D):2009 年 8 月 21 日
3 年間(2009.8.21~2012.8.20)
協力期間
日本側協力機関:なし
他の関連協力:
1-1 協力の背景と概要
ザンビア共和国(以下、「ザンビア」と記す)は、その独立以来、銅資源に偏重した経済・産
業構造を有しており、産業の多角化が長年の課題となっている。2008 年 7 月に銅の国際価格が
史上最高値を記録するなど、鉱物資源の国際価格の上昇に後押しされ、近年のザンビアは平均
5~6%の GDP 成長率を確保し、安定した経済成長を経験していた。しかし、2008 年後半に起
こった世界金融危機に端を発し、銅などの鉱物資源の国際価格が急落した。ザンビア国内の鉱
業セクターに大打撃を与え、企業倒産や多くの失業者を生む事態となり、実体経済への影響が
出た。銅を含む鉱物資源価格は再び最高値圏に回復しているものの、国際市況に依拠する不安
定な状況を打開するため、ザンビア政府は改めて投資の増加を通じて経済の多角化及び経済成
長を図るため、投資家に対するインセンティブの付与や複合的経済特区(MFEZ)の計画・整
備など、投資化に魅力的な環境整備に努めている。
国際協力機構(JICA)は、ザンビア政府の要請に基づき、「南南協力を通じた投資促進環境
整備プロジェクト〔トライアングル・オブ・ホープ(TOH)プロジェクト〕」を 2006 年 7 月に
開始した。同プロジェクトでは、南南協力の観点から、マレーシア国コンサルタントの派遣を
通じ、同コンサルタントの助言に基づく投資環境整備に必要な 12 政策のアクションアジェンダ
が確実かつ適切に実施されるためのモニタリング及び助言、投資家に必要な情報整備及びその
公開、並びに投資促進活動に係る技術支援を 2009 年 3 月まで実施した。
2008 年 11 月には、TOH プロジェクトに係る終了時評価がザンビア側と合同で実施され、情
報整備が実践されたことや投資事業が生まれたことなど、高い評価を得た。一方で、ザンビア
の投資促進を担う機関として、2007 年に発足したザンビア開発庁(ZDA)の能力強化を中心に、
12 アクションアジェンダの完了をめざすためのモニタリング及び助言について、更なる支援の
必要性が確認された。
かかる状況のもと、JICA は、2009 年 8 月から 3 年間、本プロジェクトを実施し、ZDA を中
心とする投資促進の実施体制が強化されることにより、ザンビアが効果的かつ持続的に投資促
進を実施できるようになることをめざしている。
1-2 協力内容
(1)上位目標
国内外からの外国投資が促進される。
i
(2)プロジェクト目標
投資家に好ましい環境が整備される。
(3)成果
<変更前(詳細計画策定調査時のもの)>
1)ZDA の組織・能力構築(職員のマインドの変化)
2)ZDA の情報機能強化(セクターやプロジェクトのプロファイル作成、投資に係る所
要手続き情報、投資誘致活動用の情報・各出版物の質向上)
3)民間セクターとの関係構築(官民の相互理解促進、セクタープロファイルやプロジェ
クトプロファイルの共同作成)
4)投資環境改善に係る政策提言・助言(TOH の実施促進、政策・規制枠組みの改善)
<変更後(中間レビューで見直したもの)>
1)他の関連省庁と連携して、ZDA が投資家のための質の高いサービスを供給できるよ
うになる。
2)投資促進ミッションの派遣を通じて海外直接投資(FDI)促進のための ZDA の能力が
向上する。
3)TOH アクションアジェンダの円滑な実施がなされる。
(4)投入(評価時点)
1)日本側
・長期専門家派遣(プロジェクト運営管理/研修マネージメント) 1 名
・短期専門家派遣(組織強化支援) 2 名
・マレーシア人コンサルタント(投資促進) 2 名
・ザンビア人コンサルタント(TOH コーディネーター) 1 名
・研修員受入れ 2 名
・ローカルコスト負担 13,202 千円
2)相手国側
・カウンターパート配置 21 名
・土地・施設提供:有(研修・ワークショップなどの会場)
・ローカルコスト負担:有(研修・ワークショップなどに係る経費の一部、海外投資促進研修
に係る派遣費用の一部など)
2.評価調査団の概要
調査者
調査期間
団長/投資促進
本間
徹
JICA 国際協力専門員
官民連携
鈴木
一規
経済産業省貿易経済協力局技術協力課
課長補佐
カイゼン活動支援
小木曽
協力企画
石亀
敬治
JICA 産業開発部民間セクターグループ
産業・貿易課 主任調査役
評価分析
森
真一
IMG コンサルタント
2011 年 1 月 17 日
伸行
2 月 11 日
元キャノン株式会社人事本部
人材開発センター担当部長
評価種類:中間レビュー
ii
3.評価結果の概要
3-1 実績の確認
3-1-1 プロジェクトの成果
(1)成果 1:ZDA の組織・能力構築(職員のマインドの変化)
1)ZDA 職員のマインドセットの変化と民間セクターの満足度の上昇
投資家によると、ZDA は彼らの要請に対して迅速に対応していたとのことである。
また ZDA 職員の自己分析によると、専門家やコンサルタントとの日々の業務や ZDA
内部で行われた 11 グループ(44 名の職員)によるカイゼン活動を通じて、ZDA 職員
のマインドセットがより顧客本位になったとのことである。
(2)成果 2:ZDA の情報機能強化(セクタープロファイルやプロジェクトプロポーザル作
成、投資に係る所要手続き情報、投資誘致活動用の情報・各出版物の質向上)
1)セクタープロファイルの作成
農業、エネルギー、コンピューターの 3 分野のセクタープロファイルが完成してお
り、今後、皮革、鉱業、観光、教育、保健、木材・木材加工、製造業の7分野が策定
される予定(2011 年 2 月時点)。
2)プロジェクトプロポーザルの作成
ZDA からの公募、そして ZDA との 1 対 1 のコンサルテーションを経て、ザンビア
国内の 14 社が海外企業向けのジョイント・ベンチャー(JV)プロポーザルを ZDA に
提出した。なお、本件については、マレーシア人コンサルタントが作成した JV プロ
ポーザル作成に係るガイドラインが使用された。
3)投資に必要なプロセスの情報整備
ベースライン調査(ZDA から受けたサービスの内容・数、ZDA の投資ライセンス
の取得にかかった日数・取得の難易度)、及びトレーサー調査(製造業の投資に必要と
されるライセンスの種類と所要日数)を実施した。
4)出版物の質向上と ZDA の活動の認知度向上
マレーシア産業開発庁(MIDA)の資料を参考に、より内容が充実した「投資ガイド
ブック」が発行され、“Cost of Doing Business”を改訂中(2011 年 2 月時点)。投資家か
らはガイドブックが有効であったとの意見がある一方で、ZDA はウェブサイトから入
手可能な本ガイドブックのダウンロード記録が得られず、使用人数や頻度などは不明
である。
(3)成果 3:民間セクターとの関係構築(官民の相互理解促進、セクタープロファイルや
プロジェクトプロファイルの共同作成)
1)官民の相互理解の向上
ZDA は、ザンビア商工会議所(ZACCI)と合同でワークショップを開催して、上記
(2)3)のベースライン調査及びトレーサー調査の結果を民間企業に対して発表す
る予定である。
ZDA は、政府の他の機関と合同で、四半期ごとに 1 回、1 つの州において 100 名程
度の企業家を相手に、ZDA の活動の紹介や意見交換を行う啓発ワークショップを実施
してきており、相互理解は向上しているものと思われる。
2)セクタープロファイル及びプロジェクトプロファイルの民間セクターとの共同作成
セクタープロファイルについては、民間セクターとの共同作成の意義は特段ない。
iii
それぞれの実績については、(2)成果2の1)2)に記載のとおり。
(4)成果 4:投資環境改善に係る政策提言・助言(TOH の実施促進、政策・規制枠組みの
改善)
1)TOH アクションアジェンダの実施促進
プロジェクト雇用のザンビア人 TOH コーディネーターにより、TOH アクションア
ジェンダのレビュー会議が、頻繁に開催されており、これを通じて TOH アクション
アジェンダの実施及び省庁間の調整が促進された。TOH アクションアジェンダという
プラットフォームの存在により、投資というセクター横断的イシューが、各省の政策
の中に反映されるようになり、ビジネス環境や投資促進が各省の政策の中で高い優先
度をもって取り扱われるようになってきている。
2)投資のための政策枠組み改善
TOH アクションアジェンダの実施を通じて、政策枠組みが改善の方向に向かってい
る。マレーシア人コンサルタントの提供する、マレーシアの経験に基づいたアドバイ
スは、各省がビジネス環境や投資促進における自らの役割などについて、新しい考え
方をもち、それを政策に反映させ実現させるうえで大きく貢献してきている。
3-1-2 プロジェクト目標
<プロジェクト目標>
投資家に好ましい環境が整備される。
さまざまな要因がビジネス環境に影響を及ぼすことから、ザンビアのビジネス環境の向上
に対する本プロジェクトの貢献度合いを、他の要因から切り離して議論することは困難であ
る。さらに、プロジェクトによるインパクトが未だ十分に発現していない段階で、プロジェ
クトの成果と投資環境の向上との因果関係を判断することも困難であり、プロジェクト目標
の達成度を判断することは時期尚早である。
3-2 評価結果の要約
(1)妥当性
ザンビア政府の Vision 2030 や第六次国家開発計画(SNDP)において、投資環境整備、
行政能力の向上、投資増が重要であるとされており、「ZDA 戦略計画(2009-2011)」では、
効果的な投資促進のため、同組織の能力改善の必要性が強調されている。また、日本政府
の「アジア・アフリカ投資促進会議(2004)」「開発イニシアティブ(2005)」、及びアフリ
カ開発会議(TICAD)IV の「横浜行動計画(2008)」などにおいても、投資促進や民間セク
ター開発への支援表明・実施を通じ重視されてきている。したがって、本プロジェクトは、
ザンビア・日本両政府の開発計画、援助計画と高い整合性があると判断される。さらに、
TOH アクションアジェンダで導入されたモニタリングやフォローアップのメカニズムは、
各関連省庁に対して、投資促進を省の政策として実施するための推進力として機能してお
り、また調整機能も果たしていることから、これら関係省庁のニーズにも合致しており、
妥当性は高い。
(2)有効性
インタビューを行った投資家によれば、投資環境全般は著しく向上しているとのことで
あるが、本プロジェクトの影響については不明である。また、投資家は、ZDA によるファ
iv
シリテーション活動や ZDA 職員の迅速な対応を高く評価しており、これはプロジェクト
の実施が影響している可能性が高いが、有効性についてはプロジェクト終了時に確認が必
要である。
(3)効率性
日本側の投入については、ZDA の能力開発に関するオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)
がこれまで十分ではなく、ZDA 職員の能力開発が限定的なものにとどまっている。一方、
TOH アクションアジェンダのモニタリングについては、ザンビア人コンサルタントをコー
ディネーターとして雇用し、ステアリング・コミッティ(S/C)議長との密接な関係を保ち
ながら実施しており、効率性は高い。また、日本人専門家(プロジェクト運営管理/研修
マネージメント)の配置も適正である。
ザンビア側の投入については、ZDA を除く関連省庁が職員の投資ミッションの出張旅費
を負担したほか、その他の経費はザンビア側と日本側とで共同で負担されてきており、基
本的な費用は負担されてきた。一方、関連省庁における予算不足によって、TOH アクショ
ンアジェンダの実施が遅れていることは否めず、効率性は中程度である。
(4)インパクト
フェーズ 1(TOH プロジェクト)の時点より、本プロジェクトの成果としてマレーシア
からの投資が 2 件実現している。また、ザンビアにおける投資プレッジ額は、2010 年には
43 億米ドルと、2005 年の 17 倍になっており、雇用については、2008 年及び 2009 年にラ
イセンスを受けた投資により、54,000 人の雇用が創出される見込みである。投資促進につ
いて、TOH に関連する省庁の政策における主流化が徐々に進んでいることから、これらの
省庁が今後もビジネス環境の改善、投資の促進に取り組み続けていくことが期待されるこ
とから、インパクトは高いと見込まれる。
(5)持続性
「Vision 2030」にあるように、投資促進がザンビアの政策で高い優先度が付されているこ
とから、今後もザンビア政府が投資促進政策を維持し、国内のビジネス環境の向上、そし
て ZDA の能力強化継続していくことが十分に想定される。
また、ザンビア政府は、TOH アクションアジェンダの S/C をプロジェクト終了後も維持
する意図を表明していることから、持続性は高いと判断される。
3-3 効果発現に貢献した要因
(1)計画内容に関すること
本プロジェクトは、技術協力プロジェクト「南南協力を通じた投資促進環境プロジェク
ト」の後継案件であり、同案件の教訓、①政治的なハイレベルのコミットメント、②OJT、
③関係省庁の能力強化、④アジアの経験、⑤アジア・アフリカ協力の枠組みにおける投資
促進支援を取り入れた計画となっている。
(2)実施プロセスに関すること
アクションアジェンダそのもの、そして TOH コーディネーターが果たしているモニタ
リングや調整の機能により、投資というセクター横断的なイシューが各省の政策の中に次
第に「主流化」された。
v
3-4 問題点及び問題を惹起した要因
(1)計画内容に関すること
1)成果 1 及び成果 3 の活動が明確に示されておらず、かつ、成果 1、2、3 の構成に重複
がみられた。
2)ZDA の能力開発については、投資促進業務を通じてマレーシア人コンサルタントが主
に実施し、日本人専門家(プロジェクト運営管理/研修マネージメント)が研修につい
ては支援する計画であったが、日々の業務に関する OJT を行い得る日本人専門家がこれ
まで配置されておらず、ZDA 職員の能力開発が限定的なものにとどまっている。
3)各省庁におけるライセンスや規制の問題は、これまでプロジェクトの所掌範囲外とさ
れてきたが、ザンビアにおける投資を促進していくうえでは、これらは重要な要素であ
る。
(2)実施プロセスに関すること
1)関係省庁の次官が S/C への出席を求められていなかったため、ZDA における能力開発
のみが S/C の議論を占めるようになってしまい、結果として TOH アクションアジェン
ダの実施を政策決定レベルで推進していく体制が失われてしまった。
2)TOH アクションアジェンダ及び民間セクター開発改革プログラム(PSDRP)は、投資
促進という共通の目的及び活動をもっており、また S/C も同じメンバーであるにもかか
わらず、これまで 2 つのプログラム間では実質的な調整が行われてきておらず、限られ
たリソースが有効に活用されていない。
3-5 結論・提言
本プロジェクトにおいては、以下の提言に沿って、適切な対策を講じられれば、今後プロジ
ェクト目標を達成することが可能となると判断できる。
(1)TOH アクションアジェンダのレビュー
TOH アクションアジェンダの 298 提言のうち約 40%が完了。約 30%が完了はしていな
いものの一定の進捗が認められており、比較的短期間に実施可能なものは実施されてきた。
一方において財政的な問題や外的要因に帰するものなど、プロジェクト終了時までに実施
を完了することが困難となっている提言もあり、したがって TOH アクションアジェンダ全
体を見直し、今後取るべき対応策について検討を行う必要がある。
(2)S/C の組織改編と大統領特別顧問によるアド・ホック会議の実施
本プロジェクト実施のために設定された TOH S/C は、①TOH アクションアジェンダの
推進とモニタリング、②ZDA で行われている投資促進活動の能力開発の両者を監督する責
任をもっていたが、TOH アクションアジェンダに関係すべき各省の次官の出席が基本的に
求められてこなかったために、②のみ S/C で議論される結果となっていた。TOH アクショ
ンアジェンダの提言の多くが各省の政策の中にすでに反映されていることにかんがみて、
同アクションアジェンダは、基本的に政府の枠組みの中で監督・モニタリングされるべき
である。したがって、大統領府特別顧問によるアド・ホック会議を通じて監督や省庁間の
調整を図るのが、最も効率的・効果的である。
vi
(3)TOH アクションアジェンダを推進するワーキング・グループの導入
現行の TOH アクションアジェンダの実施体制では、関係省庁にリエゾン・オフィサー
が配置され、省内における提言の実施責任を負っている。一方、提言を実施するためのア
クションが複数省庁にまたがる場合は、協力体制が構築されずに実施が滞ってしまうこと
が確認された。そこで、こうしたアクションを処理する場合には、リエゾン・オフィサー
及びその他の関係機関の職員によりワーキング・グループを形成して、共同責任の協力体
制を組んでいく必要がある。
(4)各省における投資促進の担当者の配置
ZDA は、外国投資に対する最初の窓口として機能しているが、個々の職員は投資家から
受ける技術的な質問に答えるために必要な知識を必ずしも備えておらず、また関係省庁へ
の投資家紹介もシステマティックに行われていない。そこで、TOH アクションアジェンダ
のリエゾン・オフィサーを、投資家に情報提供を行うための各省の窓口とし、彼らがその
都度十分な知識をもった職員と協力して対応していく体制を構築する必要がある。
(5)ZDA の能力開発を行う日本人専門家の配置
ZDA の職員の能力は強化されつつあるが、顧客である投資家に質の高いサービスを提供
できるようになるようにまでには未だ至っていない。ZDA 職員の能力開発については、投
資促進業務を通じてマレーシア人コンサルタントが主に実施し、日本人専門家(プロジェ
クト運営管理/研修マネージメント)が研修を支援する形で実施されてきたが、日々の業
務に関する OJT を行い得る専門家がこれまでいなかったことにより、ZDA の能力開発が十
分な成果を上げてこなかったと判断されることから、①(サブ)セクタープロファイルの
作成、②ZDA 各局間のモニタリング、レポーティングシステム導入、③投資プロジェクト
のトラッキング、モニタリングシステム導入、④投資促進資料の整備、⑤投資家用ユーザ
ー・フレンドリーマニュアルの整備を OJT により指導できる日本人専門家を配置する必要
がある。
(6)他ドナーとの連携
本プロジェクトと PSDRP との連携が必要であることは、多くの関係者より指摘されて
おり、TOH コーディネーターと PSDRP コーディネーターとの間で、定期的な会合を行う
ことにより、両プログラムの重複を避け、限られたリソースを有効に活用する必要がある。
vii
第1章
1-1
中間レビュー調査の概要
調査団派遣の経緯
ザンビア共和国(以下、「ザンビア」と記す)は、その独立以来、銅資源に偏重した経済・産
業構造を有しており、産業の多角化が長年の課題となっている。2008 年 7 月に銅の国際価格が史
上最高値を記録するなど、鉱物資源の国際価格の上昇に後押しされ、近年のザンビアは平均 5~
6%の GDP 成長率を確保し、安定した経済成長を経験していた。しかし、2008 年後半に起こった
世界金融危機に端を発し、銅などの鉱物資源の国際価格が急落。ザンビア国内の鉱業セクターに
大打撃を与え、企業倒産や多くの失業者を生む事態となり、実体経済への影響が出た。銅を含む
鉱物資源価格は再び最高値圏に回復しているものの、国際市況に依拠する不安定な状況を打開す
るため、ザンビア政府は改めて、投資の増加を通じて経済の多角化及び経済成長を図るため、投
資家に対するインセンティブの付与や複合的経済特区(Multi Facility Economic Zone:MFEZ)の
計画・整備など、投資化に魅力的な環境整備に努めている。
国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)は、ザンビア政府の要請に基づき、
「南南協力を通じた投資促進環境整備プロジェクト〔トライアングル・オブ・ホープ(Triangle of
Hope:TOH)プロジェクト〕」を 2006 年 7 月に開始した。本プロジェクトは、南南協力の観点か
ら、マレーシア人コンサルタントを活用し、同コンサルタントの助言に基づく投資環境整備に必
要な 12 政策の実施に向けたモニタリング及び助言、投資家に必要な情報整備及びその公開、並び
に投資促進活動に係る技術支援を 2009 年 3 月まで実施した。TOH プロジェクトは、当初、内閣
府、通商貿易産業省(Ministry of Commerce,Trade and Industry:MCTI)とともにザンビア投資セ
ンター(Zambia Investment Center:ZIC)をカウンターパート(Counterpart:C/P)機関として開
始したが、2007 年 1 月に ZIC を含む 5 つの機関が統合し、新設されたザンビア開発庁(Zambia
Development Agency:ZDA)が C/P 機関となった。ZDA は、他政府機関や民間と連携して、ザン
ビアの投資促進の中心的な役割を担うことが期待されているが、統合前の 5 つの機関・機能の効
率的な情報共有及び情報整備の体制が不十分であり、外部からの情報紹介に適切に対応できてい
ないなど、組織体制が脆弱であった。また、職員の実践的な経験不足から、民間からの十分な信
頼が得られておらず、統合効果が十分に発揮されていない。
2008 年 11 月に TOH プロジェクトに係る終了時評価がザンビア政府と合同で実施され、総評と
して高い評価を得る一方で、ZDA の能力強化(人材育成、関係政府機関・民間との連携強化、情
報整備・管理能力の強化)を中心に、12 アクションアジェンダの完了をめざすためのモニタリン
グ及び助言について、更なる支援の必要性が確認された。
そのような状況のもと、JICA は、2009 年 8 月から 2012 年 8 月までの 3 年間の予定で、ZDA を
中心とする投資促進の実施体制が強化されることにより、ザンビアが効果的かつ持続的に投資促
進を実施できる体制構築が行われることを目的とし、「ザンビア投資促進プロジェクト -トライ
アングル・オブ・ホープ-」を開始した。
1
1-2
調査団の目的
本中間レビュー調査は、プロジェクト開始後1年半を経過し、プロジェクトの成果・目標達成
状況などの実績を確認し、評価 5 項目に沿って評価を行うとともに、今後のプロジェクト実施・
運営に向けた方向性を提言することを目的とする。具体的調査項目は以下のとおり。
(1)プロジェクト・デザイン・マトリックス(Project Design Matrix:PDM)に沿ってプロジェ
クト活動の進捗、成果達成状況、実施プロセスを確認する。また、必要に応じ、指標の追加・
数値目標設定など、PDM の修正及びプロジェクト活動計画(Plan of Operation:PO)の変更
を行う。
(2)評価 5 項目(妥当性、有効性、効率性、インパクト、持続性)の観点からプロジェクトの
成果、実施上の課題を確認した。また対処法に関しては、プロジェクトチーム及びザンビア
側関係機関と協議する。
(3)評価結果に基づき、今後関係機関が対処すべき事項について提言として取りまとめる。
(4)調査結果を合同評価報告書として取りまとめ、協議議事録(Minutes of Meeting:M/M)に
てザンビア側の合意を得る。
1-3
調査団の構成と調査期間
担当分野
氏名
所属
現地滞在期間
団長/投資促進
本間
徹
JICA国際協力専門員
2月3日~11日
官民連携
鈴木
一規
経済産業省貿易経済協力局
技術協力課 課長補佐
2月3日~11日
カイゼン
活動支援
小木曽
元キャノン株式会社人事本部
人材開発センター担当部長
1月31日~2月25日
協力企画
石亀
敬治
JICA産業開発部産業・貿易課
主任調査役
2月3日~11日
評価分析
森
真一
IMGコンサルタント
1月17日~2月11日
1-4
伸行
主要面談者
(1)大統領府(State House)
Dr.Richard Chembe
Special Assistant to the President
(2)内閣府(Cabinet Office)
Mr.C.Evans Chibiliti
Deputy Secretary to the Cabinet
(3)財務・国家計画省(Ministry of Finance and National Planning:MoFNP)
Dr.Situmbeko Musokotwane
Minister
2
(4)通商貿易産業省(Ministry of Commerce, Trade and Industry:MCTI)
Mr.Buleti G. Nsemukila
Permanent Secretary
Mr.Chibwe Chisala
Senior Economist
(5)観光・環境・天然資源省(Ministry of Tourism, Environment and Natural Resources:MTENR)
Mr.Peter Banda
Tourism Development and Research Officer
(6)保健省(Ministry of Health:MoH)
Mr.Amadeus Mukobe
Principal Economist, Private Sector Coordination
(7)鉱山・鉱物資源開発省(Ministry of Mines and Minerals Development:MMMD)
Mr.Delax. D. Chilumbu
Deputy Director, Mines Development Department
(8)通信・運輸省(Ministry of Communication and Transport:MCT)
Mr.Lubashi Munukayumbwa
Information Technology Specialist
(9)教育省(Ministry of Education:MoE)
Mr.Oscar Shitima
Planning Officer
(10)農業協同組合省(Ministry of Agriculture and Cooperatives:MACO)
Mr.Martin Sishekanu
Chief Land Husbandry Officer
(11)ザンビア開発庁(Zambia Development Agency:ZDA)
Mr.Andrew Chipwende
Director General
Mr.Florence Mumba
Director of Research, Planning and Policy
Mr.Muhabi Lungu
Director of Investment Promotion and Privatization
(12)フィンランド大使館(Embassy of Finland)
Mr.Ville Luukkanen
Counsellor
(13)民間セクター開発改革プログラム(Private Sector Development Reform Programme:PSDRP)
Ms.Kayula Siame
Programme Coordinator
(14)在ザンビア日本大使館(Embassy of Japan)
Mr.Akio Egawa
Ambassador
Mr.Kaoru Tsurita
Counsellor
(15)ザンビア商工会議所(Zambia Association of Chambers of Commerce and Industry:ZACCI)
Ms.Prisca M. Chikwashi
Chief Executive Officer
3
(16)タタ・ザンビア(TATA Zambia Limited)
Mr.S M Arora
Executive Director
(17)ヒル・トップ病院(Hilltop Hospital)
Prof.Munkonge
Prof.Joseph Kasonde
(18)タジ・パモジ・ホテル(Taj Pamodzi Hotel)
Mr.Ravi Pillai
General Manager
(19)日立建機ザンビア(Hitachi Construction Machinery Zambia Co., Ltd.)
Mr.Yoji Akaike
President
(20)JICA 投資促進プロジェクト(JICA ZIPP TOH Project)
Mr.Dato J. Jegathesan
Seniov Consultant
Ms.Datin Sivalalita Jegathesan
Assistant Consultant
Mr.Kiyoshi Adachi
Institutional Capacity Enhancement Expert
Ms.Maki Niioka
Project Administration/Training Management Expert
Mr.Griffin K. Nyirongo
TOH Coordinator
(21)JICA ザンビア事務所(JICA Zambia Office)
Mr.Shiro Nabeya
Resident Representative
Mr.Yuichi Matsushita
Assistant Resident Representative
4
第2章
2-1
中間レビュー調査の実施方法
評価グリッドの作成
本中間レビュー調査では、PDM に基づき、達成度、実施プロセス、評価 5 項目(妥当性、有効
性、効率性、インパクト、持続性)を検討するために、評価グリッドを作成し、各項目に関して
評価を行った(評価グリッドは、合同評価報告書添付資料 6 参照)。
<評価 5 項目定義>
視点
具体的アプローチ
妥当性
プロジェクトの妥当性は、相手国政府の開発政策とニーズに関して、プロジ
ェクト目標と上位目標が的確であったかどうかをレビューすることにより検
証する。
有効性
有効性は、プロジェクト成果とプロジェクト目標との関係を明確にし、実施
されたプロジェクトによってどの程度目標が達成されたかを評価することに
より検証する。
効率性
プロジェクト実施の効率性は、タイミング、質的、量的な観点からプロジェ
クトのインプットとアウトプットトの関係に着目し、分析を行う。
インパクト
プロジェクトのインパクトは、プロジェクトによってもたらされた影響(正・
負、想定・未想定の両方の点から)を評価する。
持続性
持続性は、プロジェクトの成果が案件終了後どの程度持続可能かを検討し、
組織・制度面、財務面、技術面を中心に評価を行う。
2-2
合同評価
本中間レビューは、日本側とザンビア側両方のメンバーからなる合同評価チームにより、上記
評価グリッドに基づき、プロジェクトの実施状況についてレビューと評価がなされた。評価のた
めの調査はおおむね 3 つの手法により実施された。すなわち、文献調査、質問票調査、関係者へ
のインタビュー〔プロジェクト専門家・コンサルタント、ステアリング・コミッティー(Steering
Committee:S/C)メンバー、ザンビア側関連省庁における TOH アクションアジェンダのリエゾン・
オフィサー、民間企業〕による。合同評価チームは調査結果を分析し、評価基準に従い包括的評
価を実施した。
2-3
評価の範囲
本プロジェクトは、ZDA の能力開発と、TOH アクションアジェンダの実施モニタリングの 2
つのコンポーネントから構成されている。インタビューに際しては、ZDA の能力開発については
ZDA の職員、TOH アクションアジェンダについては関連省庁のリエゾン・オフィサーを対象とし
て行い、プロジェクト専門家・コンサルタント及び S/C のメンバーについては、両者についての
質問を行った。
ZDA の能力開発については、投資促進に関係する部分にのみ投入が行われてきたことから、そ
れらを中心として評価を行う一方で、ZDA の運営全体に関する問題点についても、持続性を確保
する観点より概括的な分析を行った。
5
TOH アクションアジェンダについては、本アクションアジェンダの存在意義やモニタリングの
方法の是非や改善方法についてインタビューを行う一方で、個々の提言の実際の進捗状況につい
ては(膨大な作業及び検証が必要となるため)評価の対象としていない。
2-4
評価の最終取りまとめ
合同評価調査団による評価結果はドラフト評価レポートに取りまとめられ、日本とザンビアの
代表者によってレビューが行われたあと、最終的に合意に至り、ザンビア側を代表して内閣府官
房副長官、日本側を代表して中間レビュー調査団長により署名が交わされた。
6
第3章
3-1
調査結果
プロジェクトの投入実績
日本側の投入としては、専門家・コンサルタントの派遣(投資促進のマレーシアコンサルタン
ト、プロジェクト運営管理/研修マネージメントの長期専門家、組織能力向上(カイゼン活動)
の短期専門家、ザンビア人 TOH コーディネーター)、事務機器、旅費・研修・通信及び交通とい
ったローカルコストの負担が、計画通りに行われた(合同評価報告書添付資料 9,15 参照)。
ザンビア側の投入としては、ZDA のカウンターパート及び関連省庁からのリエゾン・オフィサ
ーの配置(合同評価報告書添付資料 10 参照)、S/C の構成メンバーの配置が計画通りに行われ、
ZDA 及び大統領府内に執務スペースが提供され、プロジェクトの実施がスムーズに行われた。ま
た、ザンビアの関連省庁はインド及びマレーシアへの投資促進ミッションへの参加費用を自らの
予算で支出しており、一方で ZDA の職員の出張経費は日本側で負担した(合同評価報告書添付
資料 13 参照)。その他の投資促進ミッションで必要とされた会場費などの経費は、ザンビア側と
日本側の共同で負担した。
3-2
プロジェクトの実績
現在の PDM では成果 1 及び成果 3 の活動が明確に示されておらず、かつ成果 1、2、3 の構成
に重複がみられることから、本項では成果 2 の実績について記載し、その後、1、3、4 の順に記
載することとする。
(1)成果 2 より多くの投資促進情報が集まる。
<成果 2-1
セクタープロファイルの作成>
マレーシア人コンサルタントの指導のもと、ZDA では投資促進のためのツールとして「セ
クタープロファイル」を作成している。中間レビュー時点では、農業、エネルギー、コンピ
ューターの 3 分野のセクタープロファイルが完了しており、今後、皮革、鉱業、観光、教育、
保健、木材・木材加工、製造業の 7 分野が作成される予定である。中間レビューにおいてイ
ンタビューを行った投資家からは、これらのセクタープロファイルはセクターの概観を得る
には有用であるが、投資家にとって必要な情報を必ずしも網羅していないというコメントが
得られた。今後は、ザンビア国内において現地調査や企業訪問を行ってセクタープロファイ
ルの内容を充実させるとともに、一部のセクターについてはサブサクターのプロファイルを
作成していくことが必要と判断される。
<成果 2-2
プロジェクトプロポーザルの作成>
ZDA からの公募、そして ZDA との1対1のコンサルテーションを経て(マレーシア人コ
ンサルタントが作成したジョイント・ベンチャー(Joint Venture:JV)プロポーザル作成に係
るガイドラインが配布された)、ザンビア国内の 14 社が海外企業向けの JV プロポーザルを
ZDA に提出した(合同評価報告書添付資料 12 を参照)。これらのうち、Yatu Foods Ltd.の紅
茶のプランテーション、ヒル・トップ病院のクリニック、Evelyn Hone College 音楽学部につ
いては、関心をもった海外企業との対話が開始されている。
7
既述のように、JV プロポーザルを提出した企業数や実際の成果は未だ十分なものとはいえ
ないが、それは ZDA が 50 万米ドル以上の投資ライセンスを受けた大企業と免税措置を受け
た零細企業などとの関係は維持しているものの、中間に位置する多くの中小企業(Small and
Medium Enterprise:SME)との関係を有していないこと、またザンビア国内企業の多くが一
般に海外企業との JV を組むことにあまり積極的でないこと(これについては啓発活動が必
要となる)が主たる理由と考えられた。今後 ZDA では、セクタープロファイル、ないしサ
ブセクタープロファイルを作成するうえで企業へのインタビューを予定していることから、
この機会を利用して中小企業との連携を深めていく必要がある。
今後、プロジェクトの活動を通じて、より多くの企業から新たに JV プロポーザルの提出
を受けたうえで、その中からインドやマレーシアの企業家の関心を惹く可能性のあるものに
ついては、ZDA の投資促進ミッションへの同行を促す予定となっている(民間企業は自費に
よる参加)。
<成果 2-3
投資に必要なプロセスの情報整備>
本プロジェクトでは、マレーシア人コンサルタントの指導のもと、ベースライン調査(ZDA
から受けたサービスの内容・数、ZDA の投資ライセンスの取得にかかった日数・取得の難易
度)、及びトレーサー調査(製造業の投資に必要とされるライセンスの種類と所用日数)をロ
ーカルコンサルタントに実施させており、最終報告書が 2010 年 5 月に提出された。今後、製
造業以外の分野についても、必要となるライセンスの種類や所用日数を調査して、その結果
を、投資家向けのユーザーフレンドリーなマニュアルへとまとめていくことが必要となる。
またその過程において、ライセンス発行手続きを迅速にする方法について明らかにし、それ
を関係省庁に提言していくことも有意義であると考えられる。なお、民間セクター開発改革
プログラム(Private Sector Development Reform Programme:PSDRP)において行われている
「ビジネスライセンスリフォーム」の一環として、投資に関係するライセンスをすべて列挙
したうえで、必要でないライセンスを廃止する活動が行われていることから、PSDRP との定
期会合といった機会を設けて、同プログラムとの情報交換を実施していくことが必須となる。
<成果 2-4
投資促進のターゲット国の分析>
本成果については、活動内容やその目標が明確でなかったため、中間レビュー時点までに
特段の活動は行われていなかった。特定のインフラ開発への投資を目的とした官民連携
(Public Private Partnership:PPP)投資ミッション 1は別として、ZDA の投資促進ミッション
では、不特定の企業を対象にザンビアの一般的な投資環境や諸セクターの開発状況を紹介す
るにとどまっている。そこで今後は、セクタープロファイルや国内企業からの JV プロポー
ザルを出発点として、投資促進ミッションが向かう国においてターゲットとすべきセクタ
ー・企業を一定程度絞り込んだうえで投資促進ミッションを出すことを目標に、そのために
必要とされる準備作業をプロジェクトで支援することを提言する。
1
PPP が MCTI ではなく MoFNP の所管となっていることから、PPP 投資促進ミッションも MoFNP が中心となって行われている。
8
<成果 2-5
出版物の質向上と ZDA の活動の認知度向上>
マレーシア人コンサルタントの指導のもと、マレーシア産業開発庁(Malaysian Industrial
Development Agency:MIDA)の資料を参考にして、より内容の充実した「投資ガイドブック」
が発行され、“Cost of Doing Business”が現在改訂中である。本中間レビュー調査でインタビュ
ーを行った投資家より、投資ガイドブックが有用であったという感想が得られた一方で、
ZDA のウェブサイトから入手可能である本ガイドブックのダウンロード記録が ZDA で得ら
れないことから、実際にどの程度本ガイドブックが参照されたのかについては知ることがで
きない状態にある。
ZDA は 2008 年に“Procedures and Guidelines for Obtaining Investment License”を作成し、訪問
してきた投資家に配布しているが、本ガイドラインは ZDA のホームページには載せられて
いない。一方のクライアント・チャーターは、ZDA のウェブサイトには載っているものの、
リンクが悪く容易にはアクセスできない。ZDA のホームページを、今後、より充実させてい
く必要がある。
<成果 2-6
ZDA 職員の投資促進業務の実践的研修>
マレーシア人コンサルタントの指導のもと、投資促進ミッションがインドにおいて 2 回(う
ち 1 回は PPP 合同ミッション)、マレーシアにおいて 1 回(PPP 合同ミッション)、タイにお
いて 1 回行われた。また、投資促進セミナーについては、インドにおいて 4 回、マレーシア
において 1 回、ザンビアにおいて 1 回行われた。なお、タイでの投資促進ミッションにおい
て、同国企業家が一般的に海外への投資にあまり積極的でないことが感じられたことから、
タイは投資促進の対象国としては除外することとし、インド及びマレーシアをターゲット国
として活動を続けることとなった。
プロジェクトを通じたインド及びマレーシアにおける投資促進ミッションの成果として、
以下のものがあることが確認された。
・インドから10 社、マレーシアから 6 社がザンビアを訪問して、ビジネスについて協議を行
った。
・48 のビジネスのプロポーザルないしアイデアが浮上した。
・13 の合意書(Memorandums of Understanding:MOU)が署名された。
・インドの企業に対して 3 つの投資ライセンス(医療 2、製造業 1)が発行され、マレーシア
の企業に対して 2 つの投資ライセンス(通信 1、教育 1)が発行された。
・プロジェクトのフェーズ 1 からの継続的な活動を通じて、マレーシアからの投資が通信分
野において 10 百万米ドル(雇用 105 名)、教育分野において 214 百万米ドル(雇用 135 名)
実現した。
(2)成果 1:ZDA の能力が強化される
上記「成果 2
より多くの投資促進情報が集まる」での記載内容のとおり、セクタープロ
ファイル、投資促進ミッション、国内企業による JV プロポーザルの作成支援などを通じて、
ZDA の職員の能力開発が行われた。当初の PDM によれば、上記の活動などを通じて、以下
9
の 2 つの成果が達成されることが期待されていた。
<成果 1-1
ZDA 職員のマインドセットの変化と民間セクターの満足度の上昇>
中間レビューにおいてインタビューを行った投資家より、ZDA は彼らの要請に対して迅速
に対応していたという反応が得られた。また、ZDA 職員の自己分析によれば、JICA プロジ
ェクトにおいて派遣された専門家やコンサルタントとの日々の業務や ZDA 内部で行われた
11 グループ(44 名の職員)によるカイゼン活動を通じて、ZDA の職員のマインドセットが
より顧客本意となったということである。
当初の PDM によれば、ZDA の職員のマインドセットが、クライアント・チャーターの実施
を通じて顧客本意のものとなることが期待されていたものの、投資ライセンスの発行を除け
ば、ZDA の投資促進活動に関するクライアント・チャーターに記載されているほとんどの業
務は、目標として設定された時間をモニタリングできないものとなっている2。そもそも、ク
ライアント・チャーターを ZDA のホームページに載せるのみで ZDA の職員のマインドセッ
トを向上できるわけではなく、マインドセットを向上させるためには、より明確な人事管理
システムがむしろ必要であると判断される。
<成果 1-2
内部コミュニケーションの促進>
当初の PDM によれば、
「ファイルと書類の共通フォーマット化」及び「定期的な会議の開
催」が ZDA 内部のコミュニケーションを向上させることが期待されていた。しかしながら、
ZDA 内部のコミュニケーション不足のそもそもの原因は、2007 年に 5 機関が統合されて設
立された ZDA において、所掌業務全体をモニタリング、レポーティングするための基本的
なシステムが未だ構築されていないことにある。これについては、ZDA 長官も認識している
ことから(しかしながら、それを自ら構築するだけの時間的余裕が本人にないため)、日本人
専門家に各局レベルでの業務を観察してもらい、必要な業務改善の指導をしてほしいという
希望が出されている。
(3)成果 3:民間セクターと機能的に連携する。
<成果 3-1
官民の相互理解の向上>
ZDA は、ザンビア商工会議所(Zambia Association of Chambers of Commerce and Industry:
ZACCI)と合同でワークショップを開催して、
「成果 2-3
投資に必要なプロセスの情報整備」
で作成したベースライン調査及びトレーサー調査の結果を民間企業に対して発表する予定で
あるが、それ以外にはプロジェクトで支援している投資促進活動について、民間企業に説明
したり意見交換したりする場はこれまで設けられていない。
ZDA は政府の他の機関と合同で、四半期ごとに 1 回、1 つの州において 100 名程度の企業
家を相手に、ZDA の活動の紹介や意見交換を行う啓発ワークショップを行ってきている。今
後、こうした機会を通じて、本プロジェクトで作成される投資促進に関する資料や成果につ
2
電話の応対:即時、E メールでの応対:1 日、土地確保のファシリテーション:1 日といったモニタリングの困難なものがほ
とんどである。
10
いて民間企業に紹介し、意見交換を通じてフィードバックを得ることが必要である。
<成果 3-2
セクタープロファイル及びプロジェクトプロファイルの民間セクターとの共同
作成>
セクタープロファイルについては、民間セクターとの共同作成をする意義は特段ないと判
断され、実際の活動内容・成果は「成果2-1
セクタープロファイルの作成」のとおりとなっ
ている。プロジェクトプロファイルについては、
「成果 2-2
プロジェクトプロポーザルの作
成」に記載のとおり。
(4)成果 4:投資のための政策枠組みが改善する。
<成果 4-1
TOH アクションアジェンダの円滑な実施>
プロジェクトからのインプットであるザンビア人の TOH コーディネーターにより、TOH
アクションアジェンダのレビュー会議が、各省別にリエゾン・オフィサーを招いて頻繁に開
催されており、これを通じて TOH アクションアジェンダの実施及び省庁間の調整が促進さ
れてきたことが確認された。TOH アクションアジェンダというプラットフォームの存在意
義として、投資というセクター横断的なイシューが、各省の政策の中に反映されるようにな
り(貧困、環境、ジェンダーといったセクター横断的イシューが各省の政策の中で「主流化」
されていくのと同じアプローチといえる)、結果として、ビジネス環境や投資促進が各省の政
策の中で高い優先度をもって取り扱われるようになってきていることが確認された。
各省の政策決定・実現のキーパーソンである次官が、これまで S/C への参加が求められて
こなかったこともあり、これまでの S/C ではほとんど ZDA の能力開発や、インド、マレー
シアでの投資促進活動のことのみ協議されてきた(合同評価報告書添付資料 16 を参照)。こ
れにより、今後は S/C の役割を含む、プロジェクト全体の実施体制を再検討する必要性があ
ると判断された。
プロジェクトでは、現在の TOH アクションアジェンダの実施に対するモニタリングを支
援しているが、本モニタリングの手法についていくつかの問題が確認された。40%程度の提
言が「完了」とされているものの、本来求められているインパクトを達成するためには、当
初想定されていた以上のアクションをとらなければならないものもあり、それらについては
新たなアクションを明確化し、開始する必要がある。また、関係省庁として実施可能である
すべてのアクションを行い、かつ期待されたインパクトが発現しつつあるにもかかわらず、
提言の瑣末な部分(妥当性の低いもの、現実的でないものなど)が完了していないがために
「未完了」というレッテルを貼られている提言もある。さらに、TOH アクションアジェンダ
の、達成された提言数を全体の提言数で除した「40%」と表現される達成度についても、個々
の提言の重要性・価値を考慮したものでないことから、本来の「達成度」を表したものとは
言い難い。したがって、TOH アクションアジェンダ全体を見直し、今後取るべき対策につい
て検討を行うときがきていると判断される。
11
<成果 4-2
投資のための政策枠組み改善>
プロジェクトの投入である専門家・コンサルタントの支援により、TOH アクションアジェ
ンダの実施を通じて、政策枠組みが改善の方向に向かっている。マレーシア人コンサルタン
トの提供するマレーシアの経験に基づいたアドバイスは、ザンビアの状況と整合するものが
少なくない。各省がビジネス環境や投資促進における自らの役割などについて新しい考え方
をもち、それを政策に反映させ実施させるうえで大きく貢献してきたことが、各省からのイ
ンタビューを通じて明らかとなった。
3-3
プロジェクトの実施プロセス
関係者へのインタビュー及び資料などの分析を通じて得られた合同評価調査団の見解は、ZDA
への能力開発のための活動・成果が未だ十分でないというものである(「4-2-2
有効性」を
参照のこと)。その最大の原因として、ZDA の能力開発は、投資促進業務を通じてマレーシア人
コンサルタントが主に実施し、日本人専門家(プロジェクト運営管理/研修マネージメント)の
研修については支援を実施してきたが、日々の業務に関するオン・ザ・ジョブ・トレーニング(On
the Job Training:OJT)を行い得る日本人専門家がこれまで配置されておらず、マレーシア人コン
サルタントによって示された「What」に対して「How」が指導されてこなかった結果、ZDA 職員
の能力開発が限定的なものにとどまっているということが分析の結果挙げられた。
また、「成果4-1
TOH アクションアジェンダの円滑な実施」で記載されたとおり、関連省庁の
次官が S/C への出席を求められていなかったことにより、ZDA における能力開発のみが S/C の議
題を占めるようになってしまった。結果として、TOH アクションアジェンダの実施を政策決定
レベルで推進していく体制が失われてしまったことから、TOH アクションアジェンダの推進に
ついては新たな枠組みを考える必要が生じている。
12
第4章
4-1
評価結果
評価 5 項目による評価結果
4-1-1
妥当性
本プロジェクトの妥当性は、以下の理由により高いと判断される。
ザンビア「Vision 2030」では、2030 年までに中所得国になることを謳っている。目標を実現
するためには、国内外の投資を増加させることが重要であり、投資家に魅力的な投資環境の整
備と関係政府機関の行政能力の向上が必要であることが明記されている。また、「第五次国家
開発計画(2006-2010)(Fifth National Development Plan:FNDP)」及び「第六次国家開発計画
(Sixth National Development Plan:SNDP)」においても、経済成長の加速化のため
(2011-2015)
には、民間セクターとの協力のもと、投資環境を整備し、投資を増加させることが重要である
としている。これにより、プロジェクトはザンビアの国家政策と整合している。
本プロジェクトは C/P 機関である ZDA のニーズとも一致している。2008 年に策定された
「ZDA 戦略計画(2009-2011)」では、ザンビアの投資促進を効果的に行うためには、ZDA の能
力改善が必要であることが強調されている。また、TOH アクションアジェンダで導入されたモ
ニタリングやフォローアップのメカニズムは、各関連省庁に対して、投資促進を省の政策とし
て実施するための推進力として機能しており、また調整機能も果たしていることから、これら
関連省庁のニーズとも整合している。
本プロジェクトは、最終裨益者である投資家のニーズとも整合している。本中間レビューに
おいてインタビューを行った投資家はすべて、基礎情報の提供やファシリテーションといった
ZDA のサービスの向上が、彼らがザンビアへの投資を考慮するうえで不可欠な要素であると述
べている。
日本の ODA 大綱(2003)では、持続的成長を達成するために、開発途上国の貿易、投資及
び人の交流を活性化し、政策立案、制度整備や人づくりへの協力を重視している。投資促進や
民間セクター開発については、「アジア・アフリカ貿易投資会議(2004)」「開発イニシアティ
ブ(2005)」及びアフリカ開発会議(Tokyo International Conference for African Development:
TICAD)IV における「横浜行動計画(2008)」などの表明・実施を通じ重視されてきている。
また、南南協力、特にアジア・アフリカ協力についても、上記イニシアティブや行動宣言を通
じて重視されてきている。投資促進は、JICA のザンビアにおける事業展開計画に示された優先
分野の1つでもある。
プロジェクトでは、MIDA やマレーシア及びインドの投資家と強いつながりをもつマレーシ
ア人コンサルタントを用いている。あわせて、マレーシアの発展の経験は、ザンビアの開発の
方向性を探るうえで非常に参考になっている。一方において、JICA もまたさまざまな国で投資
促進の能力開発の経験を蓄積してきており、これは日本の技術的な優位性でもあることから、
ザンビア政府から JICA に対して、本プロジェクトの残りの半分の期間において、日々の業務
を通じて ZDA の投資促進の能力開発を支援できる日本人専門家の派遣が要請されている。
13
4-1-2
有効性
さまざまな要因がビジネス環境に影響を及ぼすことから、ザンビアのビジネス環境の向上に
対する本プロジェクトの貢献度合いを、他の要因から切り離して議論することは極めて難しい。
さらに、プロジェクトによるインパクトが未だ十分に発現していない現在の段階で、プロジェ
クトの成果と投資環境の向上との因果関係を判断することも非常に難しい。以上にかんがみて、
「投資家に望ましい環境が整備される」というプロジェクト目標がプロジェクト終了時までに
達成することが可能か否かを、現段階において議論することは、時期尚早であると判断される。
中間レビューにおいてインタビューを行った投資家によれば、ザンビアの投資環境全般(政
治・経済的安定度、治安、行政手続きなど)は著しく向上しているとのことである。実際に、
“世銀 Doing Business 報告書 2011 年度版”によれば、ザンビアは世界における 10 の優れた改革
実施国の1つであるとされている。“starting a business”については、同報告書 2010 年度版の 93
位から 2011 年度版の 57 位と大きく上昇したが、これは企業登記の際に求められる最低資本金
の額がゼロとなるような制度改革が PSDRP の支援により行われたためである。PSDRP は、ま
たライセンスの数を減らし、ライセンス手続きの合理化のための活動を行っていることから、
「投資家に望ましい環境」の整備にも影響を及ぼしていると考えられる。
また、中間レビューにおいてインタビューを行った投資家は、ザンビア政府の行政手続きは
投資家にとって非常に障害が低いと答えており、これには TOH アクションアジェンダの実施
がそれに一部貢献していると考えられる。投資家はまた、ZDA によるファシリテーション活動
(投資ライセンスの発行、プロジェクトの候補地の紹介、ビザの取得促進など)や ZDA 職員
の迅速な対応を高く評価しており、これらにはプロジェクトの実施が影響している可能性が高
い。しかしながら、投資家は ZDA 以外の関連省庁の職員からの反応が遅いこともまた指摘し
ていることから、投資家を支援するうえでの責任をもつべき担当者を各省に設置することが必
要であると判断される。
ZDA の職員の能力開発に対するプロジェクトの成果は未だ限られており、日常的な OJT を
通じて ZDA の職員の能力開発を今後支援していく必要がある。また、投資促進ミッションの
結果浮上してきた投資プロジェクトやアイデアに対して、ZDA の職員のフォローアップが足り
ないという意見と十分であるという意見の両者が出てきたが、そもそも ZDA のマネ-ジメン
ト層が投資プロジェクトやアイデアを明確な形でモニタリングできるシステムがないことが
確認されたことから、こうしたシステムを構築することが問題の解決に結びつくと考えられる。
各省庁におけるライセンスや規制の問題は、これまでプロジェクトの所掌範囲外とされてき
たが、ザンビアにおける投資を促進するうえでこれらは重要な要素であることから、プロジェ
クト後半部ではこれらの問題に対しても、何らかの活動を行っていくことが望まれる。
4-1-3
効率性
本プロジェクトの効率性は、以下の理由により中程度と判断される。
日本側の投入については、「3-3
プロジェクトの実施プロセス」に述べたように、ZDA
14
の能力開発のための日々の業務に関する OJT を行い得る日本人専門家が配置されておらず、そ
れによって ZDA 職員の能力開発が限定的なものにとどまっていると判断された。一方におい
て、TOH アクションアジェンダのモニタリングについては、ザンビア人のコンサルタントをコ
ーディネーターとして採用し、S/C の議長でもある大統領特別顧問と密接な関係を保ちながら
業務が行われており、この部分についての効率性は高い。日本人の専門家の配置も適正である
と判断された。
ザンビア側の投入については、ZDA を除く関連省庁が職員の投資促進ミッションの出張旅費
を負担したほか、その他の経費はザンビア側と日本側とで共同で負担されてきており、基本的
に必要な費用は負担されてきたといえる。
関連省庁における予算不足によって、TOH アクションアジェンダの実施が遅れていることは
否めない。投資関係の業務が年々拡大していることに比して ZDA 全体における運営能力が不
足していることも、プロジェクト活動全般の実施に遅れが生じていることの原因となっている。
TOH アクションアジェンダ及び PSDRP は、投資促進という共通の目的及び活動をもってお
り、かつ両者の S/C のメンバーが同じであるにもかかわらず、これまで 2 つのプログラム間の
実質的な調整業務はほとんど行われてきていなかった。限られたリソースを有効に使うために
も、テクニカルコミティー会議を共同で開催するなど、定期的な対話を続けていくことが必要
である。
4-1-4
インパクト
プロジェクトの上位目標である「国内外からの外国直接投資が促進される」が、プロジェク
トの終了後 3~5 年以内に達成される見通しは高いと判断される。プロジェクトのフェーズ 1
の時点より、本プロジェクトの成果としてマレーシアからの投資が 2 件実現している〔通信分
野において 10 百万米ドル(雇用 105 名)、教育分野において 214 百万米ドル(雇用 135 名)〕。
また、ザンビアにおける投資プレッジ額は、2010 年には 43 億米ドルと、2005 年の 17 倍とな
っている。投資促進について、TOH に関連する省庁の政策における主流化が徐々に進んでいる
ことから、これらの省庁が今後もビジネス環境の改善、投資の促進に取り組み続けていくこと
が期待される。
2008 年及び 2009 年にライセンスを受けた投資により、54,000 人の雇用が創出される見込み
である。一方で、本プロジェクトの枠組みで促進された投資についてのマイナスのインパクト
は特段ない。
4-1-5
持続性
今後適切な措置が取られるのであればプロジェクトの持続性は確保され得ると判断される。
ザンビア「Vision 2030」において、国内外の投資を増加させることが重要であり、投資家に
魅力的な投資環境の整備と関係政府機関の行政能力の向上が必要であることが明記されてお
り、投資促進がザンビアの政策で高い優先度が付されていることから、今後もザンビア政府が
15
投資促進政策を維持し、国内のビジネス環境の向上、そして ZDA の能力の強化を継続してい
くことは十分に考えられる。
また、ザンビア政府は、TOH アクションアジェンダの S/C をプロジェクト終了後も維持する
意図を表明している。そのためにも、TOH アクションアジェンダの提言全体をレビューして今
後実施すべきアクションの焦点を絞りこむと同時に、モニタリング機能を合理化させ、プロジ
ェクトの支援なしで今後もアクションアジェンダの実施を促進していける体制を構築してい
くことが重要である。
ZDA の職員の入れ替わりは比較的少なく、プロジェクトで能力が強化された ZDA 職員の大
部分が、プロジェクト終了後も ZDA に残っていくことが期待される。2007 年に設立された ZDA
では、業務のモニタリングやフォローアップの機能が十分に確立されておらず、今後、日本人
専門家が中心となって、ZDA の各局での実際の業務運営方法を観察し、根源的な問題を把握し
て、効果的なモニタリング、レポーティングのシステムの導入を提言していくことが必要とな
る。
2009 年度以降の財務監査報告書が、中間レビュー時点で完成していなかったことから、ZDA
の財務状況を現段階で把握することはできなかった。しかしながら、ザンビア政府における投
資促進に対する高い優先度にかんがみて、今後もザンビア政府は ZDA に適正な額の予算を配
分していくことと判断され、当該予算と投資ライセンスなどによる自己収入によって、今後も
ZDA に特段の財務的問題は生じないものと考えられる。
ZDA 職員の能力は、投資家に対して高い質のサービスを提供していくには、未だ十分でない
と判断される。日常的業務を通じて ZDA に OJT を行っていく専門家を配置することにより、
能力開発を今後充実させていくことが必須である。
4-2
結
論
上述のとおり、本プロジェクトにおいて適切な対策を講じられれば、今後プロジェクト目標を
達成することが可能となると判断できる。
5 項目評価については、①ザンビア政府の国家政策、ZDA や関連省庁そして投資家のニーズ、
日本の援助政策とそれぞれ整合しており、本プロジェクトの妥当性は高い、②本プロジェクトの
有効性を判断するには時期尚早である、③ZDA の能力開発を行うための追加的投入が必要となる
ことから、プロジェクトの効率性は中程度である、④外国の投資家を惹きつけ、また多くの雇用
を創出することが見込まれることから、本プロジェクトのインパクトは高い、⑤適切な対策を講
じれば、本プロジェクトの持続性を確保できることが見込まれるという結果となった。
4-3
提
言
(1)TOH アクションアジェンダのレビュー
2006 年 2 月に TOH アクションアジェンダが作成されてから 5 年が経過し、当時 298 あっ
た提言のうち約 40%が「完了」したとされ、約 30%が「完了」はしていないものの一定の進
16
捗が認められたとされている。中間レビューで関連省庁において行ったインタビューによれ
ば、アクションアジェンダそのもの、そして TOH コーディネーターが果たしているモニタ
リングや調整の機能により、投資というセクター横断的イシューが各省の政策の中に次第に
「主流化」され、教育や医療といったこれまで投資とほとんど関係のなかった分野において
も、投資環境を整備する政策が採用されることとなってきた。
TOH アクションアジェンダの提言のうち、比較的短期間に実施可能なものは実施されてき
たが、一方において、財政的な問題(大型インフラへの投資など)、省庁間での歩調が取りに
くいもの(免税すると政府の歳入が減少するなど)、外的要因に帰するもの(海外投資家の決
定に依存するもの)、その他の理由から関連省庁の能力・権限を超えているために、プロジェ
クト終了時までに実施を完了することが困難となっている提言が数多く出てきている。また、
「3-2」の(4)
「成果 4-1
TOH アクションアジェンダの円滑な実施」に述べたように、
TOH アクションアジェンダの実施に対するモニタリングの手法についても、いくつかの問題
が確認された。したがって、TOH アクションアジェンダ全体を見直し、今後取るべき対策に
ついて検討を行うときがきていると判断される。
そこで、ザンビア政府がこれらの提言のレビューを行って、①「完了」と判断できるもの
(ただし、表面的な制度構築ではなく、インパクトが実際に出たことをもって「完了」とみ
なすべきである)、②すでに関係省庁の政策の中に組み入れられており、TOH のフレームワ
ークで引き続きモニタリングする必要のないもの、③PSDRP の枠組みで実施可能なもの、④
実施が実際に著しく困難であるもの、⑤今後も TOH のプラットフォームを活用して、プロ
ジェクトの期間の終了時まで継続的にフォローアップすべきものに分類するべきである。
TOH アクションアジェンダはそもそも民間セクターの代表者を招いて作られたものであ
ることから、その成果や今後取るべき指針について、一般のザンビア国民に対する説明責任
があるものと考えられる。そこで、できれば TOH アクションアジェンダ作成時のタスクフ
ォースのメンバーを招いて、上記に述べた提言のカテゴリー化を含めて TOH アクションア
ジェンダの進捗と今後のアクションについて発表し、議論するべきである。
(2)S/C の組織改編と、大統領特別顧問によるアド・ホック会議の実施
本プロジェクトの実施のために設定された TOH S/C は、①TOH アクションアジェンダの
推進とモニタリング、そして②ZDA にて行われている投資促進活動と能力開発、の両者を監
督する責任をもっていた。しかしながら、これらは別々のイシューであり、原則として参加
者が異なるものである。TOH アクションアジェンダに関係すべき各省の次官の出席が基本的
に求められてこなかったために、ZDA の能力開発のみ S/C で議論される結果となってしまっ
ていた。
TOH アクションアジェンダの提言の多くが各省の政策の中にすでに反映されていること
にかんがみて、同アクションアジェンダは、基本的に政府の枠組みの中で監督・モニタリン
グされるべきであり、したがって、大統領特別顧問によるアド・ホック会議を通じて監督や
各省間の調整を図るのが、もっとも効率的・効果的であると考えられる。大統領特別顧問が
17
会議を仕切ることにより、省庁間の利害が対立する問題も効果的に処理することができ、こ
の会議は TOH アクションアジェンダの実施の推進に大いに寄与するものと考えられる。
一方において、ZDA における能力開発や投資促進業務のほとんどは、基本的に ZDA の内
部(「投資促進のためのプロジェクト実行チーム」)で十分に処理されるべきことであり、S/C
は大きな方針を定める場であるべきである。
以上にかんがみて、大統領特別経済顧問、内閣副官房長官、MCTI 次官、及び JICA ザンビ
ア事務所長で構成される S/C は、JICA プロジェクト全体の最高意思決定機関として、TOH
アクションアジェンダ及び ZDA の能力開発の進捗の報告を受け、プロジェクトの大きな方
向性のみを決定する機関とすることを提言する(合同評価報告書添付資料 8 を参照)。
(3)TOH アクションアジェンダを推進するワーキング・グループの導入
現行の TOH アクションアジェンダの実施体制では、関係省庁においてリエゾン・オフィ
サーが配置されており、それぞれの省内において提言の実施の責任を負っている。この実施
枠組みの問題として、提言を実施するためのアクションが複数の省庁にまたがる提言につい
ては、協力体制が構築されずに実施が著しく滞ってしまうことが確認された。そこで、こう
したアクションを処理する場合には、ワーキング・グループをリエゾン・オフィサー及びそ
の他の関係機関の職員が形成して、共同責任の協力体制を組んでいくことを提言する。
(4)各省における投資促進の担当者の配置
ZDA は、外国投資家に対する最初の窓口として機能しているが、個々の職員は、投資から
受ける技術的な質問に答えるために必要な知識を必ずしも備えているわけではない。ZDA の
職員は、投資家からの要請に応えるために、関係省庁の職員に投資家を適宜紹介する役割を
担っているものの、必ずしもこうした活動がシステマティックに行われているわけではない。
そこで、TOH アクションアジェンダのリエゾン・オフィサーを、各省における投資家に情報
提供を行うための窓口とし、彼らが省内においてその都度十分な知識をもった職員と協力し
て、投資家からの質問・要請に対応していくという体制を構築することを提言する。こうし
たリファラルシステムを実質的に動かしていくためには、ZDA と関連省庁との間で、投資家
へのサポートをモニタリングし、フォローアップしていくシステムを作ることが必要となる。
(5)ZDA の能力開発を行う日本人専門家の配置
ZDA の職員の能力は強化されつつあるが、顧客である投資家に質の高いサービスを提供で
きるようになるためには未だ至っていない。ZDA 職員の能力強化については、投資促進業務
を通じてマレーシア人コンサルタントが主に実施し、日本人専門家(プロジェクト運営管理/
研修マネージメント)が研修については支援する形であったが、日々の業務に関する OJT を
行い得る専門家がこれまでいなかったことにより、ZDA の能力開発が十分な成果を上げてこ
なかったと判断されることから、プロジェクトの後半部においては、以下に述べる活動を
ZDA の職員に対して OJT により指導できる日本人専門家を配置することを提言する。
18
セクタープロファイルを作るプロセスにおいて、ZDA の職員の能力開発が行われてきてい
るが、現在準備している 10 のセクタープロファイルに加えて、日本人専門家の支援のもとで、
外国人投資家の興味を惹く可能性のある新たなセクタープロファイル、サブセクタープロフ
ァイルを作っていくことが必要である。セクターに関する情報の収集・分析の過程において、
関連省庁に配置されている TOH リエゾン・オフィサーの協力を得ることにより、彼らの投
資に関する知識を向上させることが可能であろう。
投資に関する業務量に比して、ZDA の業務実施能力が限られていることが、プロジェクト
活動の実施が全体として遅れている原因ともなっている。なかでも、長官を頂点とした、ZDA
全体の業務をシステマティックにモニタリングしフォローアップする仕組みが未だに構築さ
れていないことから、日本人専門家はZDA の各局における仕事の実施方法を観察し、問題を
特定してその原因を分析し、有効なモニタリング、レポーティングするシステムの導入につ
いて提言することが求められる。
インド及びマレーシアでの投資促進ミッションなどを通じて浮上してきた投資のアイデア
やプロジェクトについての情報が適切に管理されておらず、ZDA におけるフォローアップが
困難な状態となっている。投資プロジェクトをトラッキングし、モニタリングしていくため
のシステムをZDA においてデザインし、導入していくことが必要である。
投資促進機関である ZDA は、投資促進ミッションやセミナー、投資家との日常的なやり
とり、民間企業との会合、在外ザンビア大使館に新たに配置される商業アタッシェへのブリ
ーフィングといったさまざまな機会において配布する資料(パンフレット、プレゼンテーシ
ョン資料など)を取り揃えておくべきである。
ベースライン調査及び製造業についてのトレーサー調査が行われ、報告書が 2010 年 5 月に
提出されている。現在の製造業以外の主要分野におけるライセンスなどの取得手続きについ
ても(製造業の場合と相当程度の重複があると考えられるが)同様のトレーサー調査を行っ
たうえで、投資家用のユーザー・フレンドリーなマニュアルを作成して、ZDA のホームペー
ジに載せるべきである。また、調査を行っている段階で、各省における行政手続きが迅速化・
簡素化できる方法が明確になった場合には、当該省庁に対して提言を行ったうえで、必要に
応じて TOH アクションアジェンダのフレームワークを通じて、次官に実施を要請したりモ
ニタリングしたりすることも可能であると考えられる。
(6)他のドナーとの連携
本プロジェクトとPSDRP との連携が必要であることについては、インタビューの過程で多
くの関係者から指摘されている。TOH コーディネーターとPSDRP のコーディネーターとの間
で、定期的な会合を行うことにより、両プログラムの重複を避け、限られたリソースを有効
に使うことができることと予想される。既述の「(1)TOH アクションアジェンダのレビュー」
で述べたように、TOH の提言の中で PSDRP によって実施できる活動については PSDRP が実
施するように要請することが、両プログラムが連携するうえで最初にできることであろう。
19
投資環境に関して国際的に認知されているベンチマークである経済協力開発機構
(Organization for Economic Co-operation and Development:OECD)の「投資のための政策枠
組み」(Policy Framework for Investment:PFI)を、本プロジェクトにおいて利用することが
第 1 フェーズ(TOH プロジェクト)の終了時評価において提言されたが、MCTI、ZDA 及び
OECD はすでに PFI に基づいた投資政策レビューを OECD のプログラムで実施しており、ま
もなく当該レビューの結果が公表される予定である。フェーズ 2 の終了時評価の際には、こ
の結果をベンチマークとして用いることが有効であると考えられる。
(7)PDM の修正
上記の提言に従って、PDM を合同評価報告書添付資料 2 に示したように修正することを提
言する。
4-4
プロジェクトの後半部に向けた留意事項
<ZDA の能力開発のための日本人専門家の業務の実施方法について>
中間レビューにおいて、ZDA の職員に対して日常的な OJT を通じた能力開発を行う日本人専
門家の派遣について提言を行った。当該専門家の業務は多岐にわたり、PO では五月雨式にさま
ざまな業務を行うことが想定されているが、C/P の人数が限られており、多忙であることを考慮
すれば実際の作業は身体の空いている C/P を対象に、複数の業務を同時並行的に実施していくの
が最も効率的であることが予想される。
また、能力開発の観点からは、ZDA の C/P が自らの手で作業を行うことが大前提であるものの、
例えば、新しい PDM の活動 1-5 に示されている、関係省庁におけるライセンス発行手続きの調査
といった業務については、ZDA の通常業務の範囲を超えていることから、必要に応じて、日本人
専門家がローカルコンサルタントなどを用いて成果を上げていくことも念頭に置くべきである。
20
第5章
団長総括
大統領レベルの高いコミットメントにより省庁横断で投資促進のアクションを抽出し、モニタ
リングするシステムを確立した TOH アクションアジェンダ、マレーシアコンサルタントによる
強いドライビングフォース、南南協力を意識した協力枠組みなどにより、TICAD IV や世界貿易
機関(World Trade Organization:WTO)/OECD 貿易のための援助(Aid for Trade)、援助効果パリ
宣言関連会合等の国際会合の場でもしばしば案件事例として紹介されるなど、注目を浴びること
も多かった当案件も、フェーズ1の 3 年弱(2006 年 7 月~2009 年 3 月)に次ぐフェーズ 2 の 3
年間(2009 年 8 月~2012 年 8 月)の中間に差し掛かった。
今回の中間レビューのポイントは、ザンビア側関係者の多くから発揚されたオーナーシップを
いかに尊重し、残り 1 年半の期間で、当フェーズの主眼である ZDA の能力強化を地に足が着い
た形で進め、また TOH を実りある形でプロジェクト後に引き継ぐかという点に集約された。
ザンビアの投資環境は、最新の“世銀 Doing Business 報告書 2011 年版”において、サブサハラア
フリカ諸国では 7 番目にランクされ、また改革の進捗を示す Top Reformer のランキングでは世界
の 7 位に位置づけられるなど、改善が進んでいると評価されている。また、投資額(認可ベース)
も、2010 年には 2005 年の 17 倍の 43 億米ドルに達するなど、資源高に伴う経済成長を背景に順
調に伸びている。当プロジェクトは、マレーシアコンサルタントなどの尽力によりマレーシアの
大学による大型投資(2.1 億ドル)の誘致に貢献するなど、鉱業セクター以外の投資多様化に寄
与している。
こうしたなか、2007 年に ZIC を含む 5 機関の統合により、MCTI の傘下に設立された ZDA へ
の期待は高い。まだ若い機関であり、体制整備途上の側面は大きいが、今回、投資家などからの
インタビュー結果によれば、顧客への対応や(他国にありがちな)余計な邪魔をしないという点
において、比較的評判を得ている。カイゼン活動による業務環境改善の進展もみられる。他方、
庁内情報共有体制や案件進捗管理などが進んでいない、プレゼン資料などのマテリアルが貧弱で
顧客重視の状況になっていない、民間部門との関係構築が進んでいないなど、改善の余地も多く
指摘された。
ZDA のキャパシティ・ビルディングは、前述のとおり当フェーズの主眼であるが、現在の ZDA
の受容能力が不足していることもあり、マレーシアコンサルタントによる指導が、どちらかとい
うと C/P への指示という形で行われ、C/P の能動的な姿勢が引出されていない面も散見される。
したがって、膝詰めで C/P とともに課題を抽出し、丁寧に技術移転していくことのできる日本人
専門家(投資促進能力強化分野)による指導を望む声が多く聞かれた。また、当初の協力デザイ
ン(PDM)に、マインドセットなど抽象的なものが多く、具体的な活動をモニターしていきにく
い状況にあった。
こうしたことから、PDM を大幅に再整理するとともに、今般、ZDA の能力強化を大きく2つ
に分け、日常業務(Day-to-Day Activities:新 PDM による成果 1)については、具体的業務を特定
21
(サブセクタープロファイル作成、業務管理システム整備、投資モニタリングシステム整備、投
資促進ツールキット作成、許認可現況把握・投資家向けマニュアル作成、民間セクター聴取体制
整備の 6 点)して活動内容も詰め、これらを新たな日本人専門家による地道なキャパシティ・ビ
ルディングで支援することとし、他方、マレーシア・インドへの投資促進ミッション及びこれを
通じたキャパシティ・ビルディング(同成果 2)については、マレーシアコンサルタントによる
支援を行うという体制を提案し、ザンビア側の賛同を得た。
また、TOH アクションアジェンダのフォロー(同成果 3)については、開始から 5 年が経過し、
298 アクションの 40%が達成され、70%に進展がみられる一方、手詰まりになって久しいアクシ
ョンも多く、停滞感がある。また、ザンビア側のオーナーシップでより効率的に回していく体制
の整備への希求も高い。こうしたことから、全アクションの仕分け作業を担当省庁に実施しても
らい、完了した案件、単独省庁によるフォロー案件、ドナーグループ支援による PSDRP による
フォロー案件、そして引き続き TOH でフォローする案件などに仕分けし、S/C で整理・モニター
していく体制を提案、また実務レベルで関係機関がコーディネートしていきやすい組織体制を提
案し、これもザンビア側の賛同を得たところである。いずれにしても、これまで民間投資を活用
するとの意識が希薄であった教育・保健などの分野・省庁に、セクター横断イッシューとして投
資を主流化させた TOH の貢献は大きいと判断される。
当案件を当初から並々ならぬパワーで牽引してきたマレーシアコンサルタントについて、その
功績は高く評価できるところであり、衆目の一致するところであるが、現在のように投資がすで
に多く入ってきて、新たな投資の誘致よりもむしろ地に足の着いた協力が必要な段階においては、
その手法に対し、受け入れるザンビア側各機関の能力の限界もあって、「疲れ」が多くみられる。
一歩引いた形での関与を求める声が多数であった。案件終了時に、円滑にザンビア側が主導して
いける体制を育むためにも、移行期間として派遣日数を減じていくのが妥当であるというのが結
論である。
このほか、前述の PSDRP に関しては、重複点も指摘されており、TOH と PSDRP の連携を強化
すべきとの声も多く聞かれ、ザンビア側の効率的な投資環境整備体制のためにも、前述の TOH
仕分け作業を通じたアクションの PSDRP への移管や、コーディネーターレベルの定期会合など
の連携を加速化していくべきである。
また、国益への貢献との観点から、日本の対ザンビア投資促進と当案件とを結び付けていくべ
きとの見方もあるが、現実的には容易でないことが観察された。他方、先方から要望の高い、国
ごとの投資促進資料作成法の例題として日本を取り上げ、本邦研修に絡めて小規模のセミナーに
するなどの案を検討中である。進出済み日系企業に対して ZDA も多くのサービスを提供してお
り、間接的には貢献しているともいえる。
全体としては、本案件は妥当性、予測されるインパクト共に高く、改善の余地は多いものの、
おおむね順調に進捗しているといえる。今後 1 年半の地道な ZDA 能力強化活動・協力と、ザン
ビア側による TOH の運営体制の確立が、6 年間にわたる当協力の総仕上げとして鍵を握っており、
他案件にとっても参考になる協力として成果を達成できることを大きく期待するところである。
22
第6章
官民連携団員所感
ZDA と民間部門の連携に関しては、ZDA 長官によれば、ZDA 設立法に ZDA が民間部門と交流
を進めるよう規定されており、さまざまなチャネルを通じて対話が行われている模様である。例
えば、MCTI 主催の国内ビジネス評議を通して民間部門の意見を吸い上げるよう務めているほか、
調査・企画・政策局では観光産業、オーガニック協会などと会合をもっており、零細・小企業振
興局は民間投資を呼び込むため民間企業と銀行の仲介に励んでいる。そこで企業ニーズを探る対
話が行われている。また、国際的な企業ニーズについても、大統領が議長を務め著名な外国企業
が参加しているザンビア国際諮問会議を通して把握にも努めている。
セクタープロファイルに関しては、選定した 10 セクターのうち 3 セクターで完了している。
残り 7 セクターもまもなく完成する予定と述べている。セクターの範囲が広く情報も要約となる
ケースがみられる。具体的で説得力ある情報の提供に向けて範囲を絞ったサブセクター分析にも
力を注ぎ、投資家に魅力的にアピールするスキルの強化に努めることが求められる。
プロジェクトプロポーザルは、鉱山、農業、製造業、観光など 8 セクター14 企業から提案され
ている。3 件の提案に対して外国投資家から関心が示されている。主に零細・小企業振興局の起
業家プログラム、ビジネス開発プログラムなどの中で国内企業の外資ニーズを探っている。現状
では、JV、資本参加、金融支援などが主体であるが、技術導入、ライセンス供与などの企業ニー
ズも掘り起こしていったらよいと思う。
ZDA と民間部門の連携を通してセクタープロファイルとプロジェクトプロポーザルの作成を
推進しようとした狙いは着実に動き出している。今後は、その経験を積み重ねるなかで、投資家
に魅力的な情報を提供する ZDA 職員の能力が育成されていくことが期待される。
23
ザンビア共和国の概要
Republic of Zambia
【一般事項】
1.面積
75.3 万 Km2 (日本の 2 倍)
2.人口
1,346 万人(2010 推定)
平均年齢 16.5 歳、平均寿命 52 歳
14 歳以下 45%(1.01 男/女)
15~64 歳 53%(1.01 男/女)
65 歳以上 2%(0.70 男/女)
3.首都
ルサカ(Lusaka)、海抜 1,227m
人口約 140 万人、時差▲7 時間
4.民族
73 部族(ベンバ、ニャンジャ、トンガ等)
5.宗教
キリスト 50-75%、ムスリム/ヒンドゥ 24-49%
6.言語
ベンバ 30%、ニャンジャ 11%、トンガ 11%
(80%以上が英語を話せる)
7.HIV
110 万人(成人 15.2%、世界7位)
【経済】
8.GDP
128 億ドル(2009 推定)
、現地通貨ベース実質 6.3%増
1 人当り GDP 950 ドル(購買力平価 1,400 ドル)
9.GDP 部門構成(2009 推定)
農業 20%、工業 32%、サービス 48%
(労働人口比 85%
6%
9%)
インフォーマルセクター雇用者 79%(1999 年)
歳入 25 億ドル、
10.国家財政
歳出 29 億ドル、財政借金 GDP の 26%(2009 推測)
11.消費者物価上昇率 13.4%(2009 推定)、民間銀行プライムレート 22%(2009.12 推定)
50%(2000 推定)
、貧困率 86%(1993 年)
12.失業率
13.主 要 農 業
14.主要工鉱業
15.天然資源
16.貿易
トウモロコシ、モロコシ、米、ピーナッツ、菜種、野菜、花、たばこ、サトウキビ、キ
ャッサバ、コーヒー、畜牛、ヤギ、豚、家禽、ミルク、卵、皮革
銅鉱山・加工処理、建設、食品、飲料、化学品、繊維、肥料、園芸
銅、コバルト、亜鉛、鉛、エメラルド、金、銀、ウラニウム、水力
輸出 42 億ドル(2009 推定) 対日輸出 95 億円(2005 年)
(銅/コバルト 64%、コバルト、電力、たばこ、花、綿花など)
輸出先:中国 21%、サウジアラビア 10%、コンゴ 9%、韓国 8%、エジプト 8%
輸入 37 億ドル(2009 推定) 対日輸入 49 億円(2005 年)
(一般機械、輸送機械、石油製品、電力、肥料なと)
輸入元: 南ア 52%、UAE 8%、中国 6%、コンゴ 4%
データは CIA World Factbook を基礎にし、外務省国別情報、IMF、US-DOS 等のデータで補充。
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