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4 リモートセンシング画像による藻場分布把握技術の開発(第2報)

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4 リモートセンシング画像による藻場分布把握技術の開発(第2報)
(広島湾流域圏環境再生研究)
4
リモートセンシング画像による藻場分布把握技術の開発( 第2報)
宮野忠文,佐野誠,長谷川浩治,馬場祥宏,小黒剛成*,相田聡**,千葉良三***
(Research on the reformation of environment in Hiroshima Bay)
Development of technique for understanding of eelgrass distribution by remote sensing image (2nd Report)
MIYANO Tadafumi, SANO Makoto, HASEGAWA Koji, BABA Yoshihiro, OGURO Yoshinari, AIDA Satoshi and CHIBA Ryozo
The techniques for understanding of eelgrass distribution by remote sensing image were investigated. The main results are as follows;
(1) The pictures of eelgrass distribution were taken by the radio controller helicopter. As a result, we could measure an area of eelgrass
distribution from the photographic image.
(2) A supervised classification of satellite image of target region was performed. As a result, we obtained supervised classification result
corresponded with a part of eelgrass distribution map.
キーワード:リモートセンシング,衛星画像,空撮画像,無人ヘリ,藻場,アマモ
1
緒
言
広島湾は,太田川を背景にかき養殖を支えるなど高
から大崎上島付近( 豊田郡大崎上島町)の海域について
も解析を行った( 図 1) 。無人ヘリによる空撮画像,衛
星画像の解析について,詳細を以下に述べる。
い海洋生産性を維持しているものの,沿岸域では,環
境,水産資源の維持保全のために重要な役割を果たし
空撮画像における調査対象
飛渡瀬(江田島市大柿町)
ている藻場などが埋め立てや環境悪化により消失して
衛星画像における調査対象
三津口湾(呉市安浦町)
いる。沿岸域の環境維持に重要な藻場を保全する上で
藻場の分布情報を正確に把握することは重要である。
藻場の調査は従来潜水による調査を中心に行ってい
る。しかし,このような調査方法ではスポット,線的
に詳細な情報を得ることはできるが,広域的な分布情
衛星画像における解析事例
三津口湾∼大崎上島付近
1)
報を得ることは困難である 。
図1 調査場所
本研究では,これらの課題を解決すべく,無人ヘリ
コプタ(以下,無人ヘリ)と人工衛星により取得された
リモートセンシング画像からアマモ場の分布を把握す
2
る技術の開発を行う。
衛星画像による藻場分布調査の特徴は,10km から
100km 規模の広範な調査が可能であるが, 調査対象の
1)
2.1
無人ヘリによる空中撮影
調査場所,調査時期
無人ヘリによる調査場所は江田島市大柿町飛渡瀬
識別が難しい 。また,無人ヘリによる調査の特徴は,
とした。2004 年 8 月 12 日に潜水調査し,アマモ被度
数 100m 規模の範囲の調査が可能であり,
衛星画像で識
の高い領域が沿岸から約 50m の位置に長さ約 100m,
別することはできない小面積の藻場を調査する際に有
幅 20m にわたって分布しており
効である。
による調査を行うには適切であると判断した。
2)
,試験的に無人ヘリ
これらの特徴を踏まえ,本研究では,無人ヘリによ
アマモの分布密度が大きくなる繁茂期,潮位が低く
る空撮画像については広島湾沿岸など数 100m 程度の
なる大潮の時期,また天候 が比較的安定している時期
藻場分布を対象とし,調査場所は江田島市大柿町飛渡
を考慮に入れ,撮影日は 2005 年 5 月 23 日とした。
瀬とした。衛星画像については県域規模程度の広域的
な藻場分布を対象とし,
調査場所は三津口湾(呉市安浦
2.2
町三津口) とした。また,解析事例として,三津口湾
空 撮 に 使 用 し た 無 人 ヘ リ は ヒ ロ ボ ー( 株) 所 有 の
*
広島工業大学,**広島県立水産海洋技術センター,
***
ヒロボー株式会社
撮影方法
RMaxTypeⅡG(ヤマハ製),その概観を図 2 ,仕様を
表 1 に示す。
T1
T2
図2 無人ヘリ概観
表1
名称
最大搭載量
全長
全幅
全高
無人ヘリ仕様
RMax TypeⅡG
28kg
3,630mm(ロータを含む)
720mm
1,230mm
( a ) 空撮画像
( b ) 分類結果
図4 デジタルカメラによる直下画像
影されており,実測距離は 6.4m,図 4( a ) 上での画素
数は 342 であるので,
1 画素の辺の距離は 1.9×10 -2m,
1 画素の面積は 3.6×10 -4m 2 となる。
撮影にはデジタルビデオカメラおよびデジタルカ
次に,アマモ場の分類を行った。分類方法は教師付
メラ(500 万画素)を使用した。対象エリア全体を撮影
き分類を用いた。教師付き分類とは,対応する対象物
するためにカメラに俯角を付けた俯瞰画像,および詳
(クラス) の明らかな画像中の領域( トレーニングエリ
細な画像を取得するためにカメラを真下に向けて撮影
ア)からデータ( 教師データ)を抽出し,母集団の特徴
した直下画像の撮影を行った。俯瞰画 像の撮影では海
(統計量)を推定し分類する方法である 3) 。
面からの反射を防ぐためにデジタルカメラ,ビデオに
PL フィルタを取り付け撮影を行った。
図 4( a ) の空撮画像には海面や砂浜,海 藻の一種で
あるカゴメノリが撮影されており,それらを区別する
ために 13 地点を教師データとして,
教師付き分類を行
2.3
撮影結果および考察
デジタルカメラによる俯瞰画像を 図 3 に示す。 図 3
の中央付近にアマモ場が撮影されている。図 4( a ) に 8
枚の空撮画像を張り合わせ合成した直下画像を示す。
図 4( a ) の画像から分布面積を計測するために,画
像上の1画素あたりの距離を算出した。
図 4( a ) には海底に固定している竹さお T1,T2 が撮
った。その結果を図 4( b ) に示す。図 4( b ) において黒
のエリアはアマモと分類されたエリアを示している。
この分類されたエリアの画素数は約 5,640,000 で先
ほど算出した1画素あたりの面積から撮影されたアマ
モ場の面積を算出すると約 0.2ha となった。
この結果は,2.1 項で述べた現地調査の結果,長さ
約 100m,幅 20m のアマモ場であるという結果ともほぼ
一致している。
3
3.1
衛星画像による藻場分布把握
対象地域
衛星画像による調査場所は呉市安浦町三津口の三津
口湾( 図 1) を対象とした。三津口湾の藻場は 139ha と
県内最大の藻場であり,主に生育しているのはアマモ
である 4)ことから衛星画像による藻場分布把握を行う
には適していると判断し,調査対象とした。
図3 デジタルカメラによる俯瞰画像
3.2
使用データ
②藻場エリアの抽出について,どのバンドが藻場の
本研究では,水域の解析を行うため青バンドを含む
解析に有効なバンドかを把握するために, 図 5 の衛星
画像データをもち,過去のデータの利用が可能なこと
画像データのバンド 1 からバンド 7 について,それぞ
から,Landsat の衛星画像データを用いた。
れのバンドに関して教師付き分類(最尤法)を行った。
リモートセンシング衛星 Landsat-5 に搭載している
観測センサ TM(Thematic Mapper)センサの諸元を表
2に示す。
教師データは,図 5 に示すとおり,藻場ありエリア
と藻場なしエリアの2箇所とした。
バンド 1(青バンド)における教師付き分類結果を 図
表2 T M (T h e m a t i c M a p p e r )センサ諸元
観測センサ名
バンド 波長帯(μm)
TMセンサ
1
0.45∼0.52(
青)
(
Thematic Mapper)
2
0.52∼0.60(
緑)
回帰日数:
16日
3
0.63∼0.69(
赤)
4
0.76∼0.90(
近赤外)
5
1.55∼1.75(
中間赤外)
6
10.4∼12.5(
熱赤外)
7
2.08∼2.35(
中間赤外)
空間分解能 観測幅
30m
30m
30m
30m
185km
30m
120m
30m
6 に示す。図 6 において,黒のエリアは藻場ありと分
類されたエリアを示している。
アマモの繁茂期で,かつ潮位が低く,雲量の少ない
衛星画像として,1997 年 6 月 29 日( 潮位 115cm,雲量
30%),パス-ロウ:111-36(広島から岡山付近上空)の
衛星データを利用した。図 5 に解析に使用した三津口
湾付近の衛星画像を示す。
図6 衛星画像( バンド1) の教師付き分類結果
3.4
①
考察
藻場分布調査は,現地調査のほか漁業協同組合など
②
の関係機関に対する聞き取り調査を行い,さらに航空
写真によって確認する 4)といった方法が取られている。
本研究では,図 6 の分類結果と実際の藻場の分布状
況を比較するために,
衛星画像撮影日の約 10 ヶ月前の
図5 衛星画像( 撮影日:1 9 9 7 年 6 月 2 9 日)
1996 年 8 月 15 日に撮影された航空写真と比較を行っ
(教師データ:①藻場有,②藻場無)
た。図 7 に比較に用いた航空写真を示す。 図 7 には
1996 年 8 月 15 日の航空写真における教師あり分類に
3.3
データ解析( 三津口湾)
衛星データの解析には,衛星画像解析用ソフトウェ
ア(EARDAS IMAGINE8.7)を使用した。
解析手順は,①前処理として水深データによる解析
より抽出された藻場エリアも合わせて示しており,黒
のエリアで示している。
図 6 に示したバンド 1 の衛星画像の分類結果のうち,
図7に示す航空写真から分類された藻場エリアと一
エリアの絞り込み,②藻場エリアの抽出として教師付
き分類の順で行った。
①前処理として,藻場が水深の浅い沿岸域に分布す
ることを利用して水深の浅い海域を解析エリアとした。
解析エリアを絞り込むために,藻場が分布している
水深を調査した。
三津口湾から大崎上島付近において,
藻場分布データである脆弱沿岸海域図 5)と水深データ
である沿岸の海の基本図シェープファイル((財) 日本
水路協会海洋情報研究センター発行)を比較した結果,
水深 20m 以内の浅い海域に約 96%の藻場が分布してい
ることがわかったので,0 から 20m の水深の海域を解
析エリアとした。
図7 航空写真( 撮影日:1 9 9 6 年 8 月 1 5 日) に
おける教師付き分類結果
致する割合を正解率とし算出すると 82.5%となった。
黒の海域が藻場の分布している海域である。
バンド2からバンド7について,同様に衛星画像と
図 8 と図 9 を比較すると,三津口湾および大崎上島
航空写真の分類結果の比較を行い,正解率を算出する
付近の藻場はよく一致しているが,吉名沿岸での不一
と,表 3 のようになった。この表より,バンド 1 が藻
致度が大きく,全体としての正解率は 40.8%となった。
場の解析には有効であることがわかった。
これは藻場分布図の調査時期が明確でなく,解析を行
表3 各バンドにおける正解率
バンド1(青)
バンド2(緑)
バンド3(赤)
バンド4(近赤外)
バンド5(中間赤外)
バンド6(熱赤外)
バンド7(中間赤外)
3.5
った衛星画像の撮影日と異なるためと考えられる。
これらの課題を解決するためには,調査日が明確な
正解率
82.5%
49.0%
17.4%
32.6%
23.8%
24.3%
21.7%
藻場分布データと,同時期に撮影された衛星画像の比
較が必要と考えられる。
4
解析事例( 三津口湾∼大崎上島)
結
言
無人ヘリによる空撮画像および衛星画像のリモー
解析エリアを広げた場合の解析事例として三津口湾
トセンシング画像による藻場分布把握を行い,以下の
から大崎上島付近の衛星画像の解析を行った。使用し
ような結果が得られた。
た衛星画像は図 5 と同日のデータである。解析方法と
①江田島市大柿町飛渡瀬を対象地域として,無人ヘリ
しては,3.3 データ解析の項で述べた手法を用いた。
による空中撮影を行った。その結果,アマモ場を確認
藻場の解析に有効なバンド 1 を用いて,教師付き分類
できる良好な空撮画像を得ることができた。また,空
を行った結果を図8に示す。
撮画像からアマモ場の面積を取得することができた。
図 8 の分類結果について考察を行う。このエリアに
②呉市安浦町三津口湾の Landsat-5 により観測された
ついては,衛星画像の撮影日と同時期の航空写真がな
衛星画像の各バンドについて教師付き分類を行い,航
5)
いため,比較には図 9 に示す脆弱沿岸海域図 の生態
空写真から得られた藻場分布エリアと比較した結果
区分に関する情報図(調査年:1996,97 年)のうち藻場
(表 3) ,青バンドが藻場の解析に有効であることがわ
分布図を用いた。
かった。
今後,無人ヘリについては,実海域での藻場の空撮
を行い,H16,H17 年度に行った空撮手法および解析手
吉名
法の有効性を検証する。
三津口湾
衛星画像については,今年度行った解析手法が他の
時期の衛星画像に適用可能かを検証する。
大崎上島
文
献
1) (独)水産総合研究センター水産工学研究所:平成
15 年度水産工学関係試験研究推進会議水産基盤部
図8 衛星画像( バンド1) の教師付き分類結果
会報告書「藻場分布把握のための調査技術の現状と
課題」
2)宮野他:リモートセンシング画像による藻場分布把
吉名
握技術の開発(第 1 報),西部工技研究報告
三津口湾
48(2005),14
3) 日本リモートセンシング研究会:改訂版図解リモー
トセンシング,210
大崎上島
4) 環境庁自然保護局:第 4 回自然保護保全基礎調査
海域生物環境調査報告書,第 2 巻藻場
5) 環境省地球環境局:脆弱沿岸海域図,生態区分に関
する情報図,
図9 藻場分布図( 脆弱沿岸海域図: 1 9 9 6 - 9 7 年)
5)
http://www.env.go.jp/earth/esi/esi_title.html
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