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6.ダクタイル鋳鉄管との出会い

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6.ダクタイル鋳鉄管との出会い
随筆
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3
いと思っている。しかし海を愛する私には、
空に呼びかけ、波に語り終りを告げてくれる
自然に向って釣り特有のゆったりした気分を
渡り鳥を眺めながら糸を巻く、また明日に期
味わい、一筋の糸を大海に打ち振る気分は爽
待を寄せて。
快であり、手離すことはできない。視界を遮
官頭に申し上げた通りやっぱり文章はむつ
ぎるなにものもない広い海の果てから、波は
かしい。主体を構成する流れに乗ることがで
とどまることなく噛きを繰返し、釣りの歴史
きないまま終ってしまった。これが本来の私
を語りかけてくれる。夕日が沈む波の彼方に
であり、雑魚の魚交じりといわれる所以かも
鰯雲が色を染めはじめ、美しさはさらに増し
しれない。
品会ハガキのようである。またきっとくるぞと
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1
1
事の課長になって間のない頃であって、之ち
らにはいまだ十分な予備知識もないまま河井
さんのご説明を詳しく承わったのである。
当時、ガス事業は戦後の「戦前復帰の時代 J
から「拡張の時代」に移り、名古屋市および
周辺都市の都市ガス化を急速に行っていた時
代であって、導管の埋設延長は年々急増する
とともに、ガス輸送の長距離化に伴い輸送圧
力も高くする必要に迫られ、鋼管溶接による
輸送導管の建設もはじまっていた口それと同
時に都市開発工事も急速に増加し、鋳鉄管の
と 出金い
損傷事故も年々増加する傾向が見えはじめた
日寺代でもあった。
河井さんの説明を受けた私は、従来の鋳鉄
東邦瓦斯株式会社取締役副社長
都築五九男
管の概念からとても信ピられない気持と同時
に、もしそうであるならガス事業にとっても
画期的なことであるという期待で、興奮した
ことを今でもはっきりと憶えている。結局そ
の日は後日実物を見せていただき、またいろ
昭 和 29年 の あ る 日 、 久 保 田 鉄 工 の 当 時 研 究
いろな実験をしていただく約束でお別れした
所長をしておられた河井さん(現同社相談役)
のであるが、その後久保田鉄工武庫川工場で
が当社に和いでになって「今度久保田鉄工で
実物を見せていただいた。これが私とダクタ
は小口径のダクタイル鋳鉄管をっくりますよ J
イル鋳鉄管、との出会いである。
というお話をお聞きした。河井さんは研究所
当時、私がその採用について考えたポイン
長としてアメリカに赴かれ、小口径のダクタ
トは簡単にいえば次の点である。
イル管の鋳造について調査され、帰国されて
1.鋳鉄管(特に小口径管)の折損、亀裂の原
聞のない頃であったと記憶している。
因は、たとえば他工事などによって直接の
もう 30年 近 く 昔 の こ と で あ る か ら 河 井 さ ん
衝撃が加えられるような特殊の場合を除い
も、私もいまだ気鋭の青年であったといって
て、主として埋設管の基盤となる管底面の
も許していただけると思う。当時私は供給工
地盤の変化(局部的な沈下など)によって道
ダクタイル鉄管
7
4
昭和 5
8
. 5 第3
4号
路面などから加わる荷重に対する地盤反力
鉄管を使用することとし今日に至っている。
が部分的に失われるためである。
この結果、当社の全鋳鉄管の延長は今日では
2. し た が っ て 、 も し 埋 設 基 盤 に 変 動 が 生 ピ
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1年 当 時 の 約 4倍 に 増 加 し 、 一 方 道 路 の 埋 設
た場合、その管がその変動に追随するので
環境は当時に比べ非常に厳しいものになって
あれば、すなわちある程度の展延性を持つ
いるにもかかわらず、その折損、亀裂の件数
材料であれば折損、亀裂の大部分は防止で
は昭和 40
年頃から顕著な下降線をたどってい
きるはずである。
る。一方継手についてもちくじ進歩し、なん
そこで私は引張強度の方もさることながら、
年頃からか充填物も姿を消して気密性のきわ
その伸びの大きさの方にむしろ興味を持った。
めて高い、耐震性にも優れたものが開発され
ダクタイル鋳鉄の 4 %の 伸 び が 地 盤 沈 下 に 対
るに至ったことは本当に嬉しいことである。
してどのような意味を持つのかをいろいろ計
さて、私はここで水道、ガス関係の技術者
算してみた。その結果、通常考えられる路面
の方々に、鋳鉄管の経年劣化の問題に対する
下の地盤沈下に対して十分追随することが可
私見を述べさせていただきたい。私が「ダク
能であり、このことは小口径管ほど有利であ
タイル鋳鉄管との出会しりといった題材の中
って、比較的小口径管の多い当社(呼び径 500
でこのようなことを唐突に申し上げる理由は
mm以 下 ) に と っ て 、 特 に 有 利 で あ る と 考 え る
ダクタイル鋳鉄管を使用することの意義に重
ことができた。このことは小口径の全管の曲
要な関係があるからである。
げ実験を見せていただいてますます確信を深
めることができた。
次にごのような画期的な材料を使用するか
鋳 鉄 管 の 損 傷 が あ る と 、 よ く 「 経 年 劣 化J
とか「老朽 J の た め と い っ た 理 由 が も っ と も
らしく新聞紙上をにぎわすことがある。これ
らには、それにふさわしい、もっと高い圧力
が技術者から出た言葉とも思えないが、世間
のガスでも気密性を保持できる構造の継手を
では鋳鉄管も 30年 も す れ ば 劣 化 し て 使 い も の
考えるべきだと思った。そこで久保田鉄工と
にならなくなるものだと考えている人も多い
共同で「メカニカル継手」の委員会をつくる
ように思われる。
こととし、なん回か会合を聞いた。いろいろ
私はかつて、この鋳鉄管の経年劣化の問題
の構想、も描かれたが、今になって考えてみれ
に多少タッチしたことがあるが、数多くの掘
ば結局、従来使用していたガス型継手から一
上管を観察し、腐食の調査をし、テストピー
挙に飛躍した考え方を採用することはできな
スの圧壊試験を行った経験から、鋳鉄管の経
かった。もちろんゴムリングをもって気密性
年劣化と埋設経過年数との聞には有意な相関
を保持しようとしたのではあるが、継手から
性はなく、少なくとも経過年数が折損、亀裂
充填物をまったくなくしてしまう、というと
の主たる原因とはいい難いと考える口
ころまでは至らなかったのである。
古い物ほど破損率が僅かではあるが高いと
しかし、とにかく新しいメカニカル継手を
いう傾向はたしかに認められたが、それは強
開発して、当社は昭和3
1年 に ガ ス 事 業 と し て
度規格、鋳造技術の製作年代の相違によるも
は最初の実用管としてダクタイル鋳鉄、メカ
のであり、またあるいは古い埋設管ほど地盤
ニカル継手の管を延長1.930m をとにかく埋
沈下などの影響もより多く受けているからで
設したのである。続いて昭和3
2年 に は 、 継 手
あると考えられる口
の構造をさらに改造して輸送導管として延長
「鋳鉄管が経年的に劣化したから」、あるい
1万 5,
100mの埋設を行った。この輸送導管は
は「老化したから J というのと、「もともと製
鋳鉄管としては当時画期的に高い輸送圧力を
作年代の古い物は現在のものより強度の面で
f
寺つものであった。
その後ちくじダクタイル鋳鉄管の使用範囲
を広げ、昭和43年には全面的に夕、、クタイル鋳
も、鋳造技術の面でも劣るから」というので
は、基本的に相違するのである。
私は前にも述べたように、折損、亀裂の主
随筆
たる原因は埋設管の基盤となる地盤の変劫に
よる、という意見を持っているから、もし鋳
鉄管の経年劣化が物理的にきわめて小さいと
するならば、地盤変動に十分耐え得るダクタ
イル鋳鉄管は基本的に半永久的な寿命を持っ
ていると考えている。
僅かな「用語」の選択から誤解を生まない
ように、われわれ技術者も注意すべきであろ
つ
。
念のためであるが、特別な埋設環境にある
管路は特別な防食なり、防護措置をしなけれ
ばならないことはいうまでもないし、ダクタ
イル鋳鉄管が管として万能であると考えてい
るわけでもない。 使 用 目 的 、 場 所 、 埋 設 環 境
などに応じて材料を適切に選ぶことが必要で
あることはこれまたいうまでもない。
最後に、昭和 31 年 ~32 年に埋設したダクタ
イル鋳鉄管はすでに 26~27 年を経過したので
あるが、今までに一度も破損したこともなく
埋設時と外観上ほとんど変わらない姿で現存
していることをイ寸言己させていただき車冬わりと
したい。
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