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橡 生理評価を取り入れた舗装表面プロファイルの評価

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橡 生理評価を取り入れた舗装表面プロファイルの評価
V-042
生理評価を取り入れた舗装表面プロファイルの評価法に関する研究
中央大学大学院
大成ロテック
中央大学
学生会員
正会員
フェロー
奥津大樹
伊藤大輔
姫野賢治
1. 背景と目的
今日行なわれている路面の評価手法は道路管理者が工学的に判断する方法と道路利用者が実際に走行の
際に感じる乗り心地などをアンケート調査する方法に分けられる.しかしながら人間が判断すると評価する
人の主観的意見が反映されやすく,またアンケートでは極端な値の記入を避けるという傾向があり質の高い
モデルを構築することが困難だと指摘されている.
そこで本研究では道路利用者による車の乗り心地評価の客観性を高めるために,このような心理評価にか
えて脳波測定に基づいた生理評価を実施して路面性状を評価する方法の確立し,また人間の感情は「曖昧さ」
をもって表現されているのでこの曖昧さをファジィ推論によって評価することを目的とする.
2. 脳波測定
ここでの脳波測定(感性解析)は脳の中のことに直接的な目的,関心があるのではなく.生体に与えられる刺
激とそれに対する脳―中枢神経系の反応との対応関係をみるのが目的であり、そこから刺激の生体に対する
影響や刺激課題提示時の精神状態や心理状態を客観的に推定、評価することである.そして測定で求められた
脳波データを感性スペクトル解析することで被験者の 4 感情(喜怒哀楽)を求める.
そこで基礎研究として人間の五感(視覚,味覚,触覚,聴覚,
臭覚)に対する反応を見てみることにした.それぞれの五感に
対して互いに相反する影響が出ると思われる課題を 2 つずつ
行い,同時にSD 法による 7 段階のアンケート調査を実施した.
SD 法による結果は因子分析を行いそれぞれに影響する4 感情
の因子を決めた.また,多くの刺激下でその反応値は正規分布
に乗るということから,規格化を行い被験者同士の反応の大き
さを同じ尺度で比較した.(図1)結果にばらつきがあったが,
個人の好き嫌いよる影響を考慮するとそれぞれの因子に一致
して感性が示されていることがわかる.
図1
五感実験
3. 縦断プロファイルの測定
2000 年 9 月東京都文京区内の道路で非接触型レーザープロファイル測定車を用いて合計9 区間について
路面の縦断プロファイルを測定した.(図2)各区間の縦断プロファイルはそれぞれの区間 500m程度の
図2
測定区間配置図
図3
IRI 基準と各区間の IRI
キーワード:プロファイル,脳波測定,ファジィ理論
連絡先:〒112‐8551 東京都文京区春日 1-13-27 中央大学道路研究室
-84-
tel.03-3817-1796
土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
V-042
延長を 1cm ピッチで測定し,そのプロファイルデータから IRI を求めた.この指標は世界各国において舗装
のサービス性能を「乗り心地」で評価する際に一般的に用いられるものである.図3から 2 区間と 9 区間
の舗装が悪い状態であることがわかり,これに対して5 区間,6 区間が測定した区間内で良いものだという
ことがわかる.
表1
脳波測定条件
4. 測定結果
車種
普通乗用車,高級車,ワゴン車
表1の条件のもとで測定を実施した.図4は時速 30km 時の
速度
30km/h,60km/h
被験者 1,3 の 6 区間と 9 区間の生理評価値を比較したものを 被験者数
3人
示す.この図から同じ条件であっても被験者によって多くの違
いがあることとまた同車種であってもその時に示される生理
評価値が異なることがわかる.このようなことから,本研究にお
ける同一被験者での生理評価値の再現性は低いことがわかった.
しかし,このままではただ漠然とした結論しか求められていない
ので車の乗り心地に関する因子として stress と relaxの 2因子に
着目して車の乗り心地と路面性状との関係の検討した.
2 区間と4区間との比較を図5に示したが、2区間の方が relax
が高く,stress がわずかしか出ていない.よって2区間が4区間に
比べ悪い状態の舗装であることがわかる.しかし IRI の算出結果
図4 時速 30km における被験者 1
より 2 区間が最も舗装状態が悪い区間となり相反する結果となっ
と被験者 3 の生理評価値による比較
た.このようなことから,生理評価値のみでは路面を評価するこ
とが難しいと考える.したがって,同時に行った心理評価である
アンケート調査をさらなる因子として考慮することとする.
5. ファジィ理論
測定結果をファジィ推論による解析を行った.入力値は stress と
relax,そして生理評価値だけでは明確に乗り心地の状態を示すこ
とができないことから乗り心地によるアンケート結果の心理的因子
の 1 因子を加え合計 3 因子を 2 つのメンバーシップ関数を用いて解
析した.被験者ごとでは高い決定係数が示されたが,統合して判断
を行うと被験者ごとの結果よりも決定係数が低いものになってしま
った.(図6)しかしながら,ばらつきを持った生理評価値に対して
ある程度の決定係数を持つものを求めることができた.
4区間の生理評価値
被験者1
被験者2
被験者3
閉眼
開眼
閉眼
開眼
閉眼
開眼
0.795
0.748
0.664
0.482
0.841
0.728
0.812
0.789
0.563
0.505
0.759
0.632
0.813
0.764
0.564
0.503
0.764
0.631
0.805
0.763
0.573
0.504
0.765
0.648
b2g1-g1
g2b1-g1
g2b1-t1
g2b1-b1
0
0.2
y = -0.037x + 0.799
R 2 = 0.654
0.4
ファジィ評価値
6.結論
路面を 4 つの生理評価値で評価するのに十分な結果は得られなか
ったが,車の乗り心地に関する 2 因子での比較においては良い傾向
が得られた.これは実道という常に定常な状態を作り出せないこと
や微弱な電流を測定することから車の振動が多少なりとも影響して
いたとためと考えられる.また,ファジィ推論を用いることにより
路面性状の良否の判断に人間の生理と心理を考慮した評価結果が得
られた.しかし生理評価のみの評価を行うには多くの改良が必要で
あり今後の課題となった.
図5 速度 30km における2区間と
b2g1-g1
g2b1-g1
g2b1-t1
g2b1-b1
0.6
被験者1&3
閉眼
開眼
0.654 0.811
0.630 0.770
0.600 0.771
0.602 0.794
0.8
1
5
図6
10
15
20
IRI
推論結果と IRI による
決定係数の比較
参考文献
1)荒賀裕,武者利光:技術資料脳波による新たな感性解析法
2)武者利光:人が快・不快を感じる理由,河出書房新社
-85-
土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
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