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197号 [267KB pdfファイル]
1 :「 長浜市文化財展-
長浜市文化財展 - 長浜における
長浜 における渡来人
における 渡来人の
渡来人 の 足跡-」
足跡 -」
文化財保護センターでは、9月2日まで長浜城歴史博物館との共同開催で「長浜市文化財展-長浜におけ
とらいじん
そくせき
る渡来人の足跡-」を開催しています。
渡来人とは、古代の日本に中国大陸や朝鮮半島などから海を渡ってやってきた人びとです。寺院建築や仏
教などの新しい技術や思想を持ち込み、古代日本の文化・国家形成に大きな影響を及ぼしたと考えられてい
ます。長浜地域でも盛んに交流が行われていたと考えられており、過去の調査において貴重な資料が数多く
見つかっています。
本展示会では、長浜市内の渡来人に関わる遺跡について、その調査成果を遺物や写真によって紹介します
(第1部)
。そのほか、平成20年度に新たに指定された長浜市の文化財を紹介します(第2部)
。
皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひお越しください。
平成21年度「長浜市文化財展-長浜における渡来人の足跡-」
・主
催:長浜市文化財保護センター、長浜城歴史博物館
・開催場所:長浜城歴史博物館 2階展示室(長浜市公園町10-10)
・開催期間:平成21年7月18日(土)~平成21年9月2日(水)
・入 館 料:大人400円、小・中学生200円
・展示説明会:平成21年8月8日(土)午後1時30分から
・展示する資料は24点です。そのなかの一部を紹介します。
ご しゅ せん
1.五銖銭
鴨田遺跡
五銖銭
かも た
鴨田遺跡出土 直径2.6cm 厚1.2mm 重量2.74g
弥生時代中期 長浜市教育委員会保管
げんしゅ
かい こう
中国前漢の元狩五年(紀元前118)に初めて発行され、以後隋の開皇五
年(581)まで、約700年にわたり鋳造された通貨です。日本では西日本
で数点しか確認されておらず、大陸と当地域との交流を窺わせる貴重な
資料です。
おにがわら
2.鬼 瓦
や しま
八島廃寺出土 高さ22㎝ 幅23.4㎝ 白鳳時代 個人蔵
たん べん はち よう れん げ もん
単弁八葉蓮華文の四隅に人面を配した鬼瓦。この文様は、現時点で他
に例を見ないたいへん珍しいものです。個人によって発見・保管されて
いたもので、長浜市で公開されるのは今回が初めてです。
1
八島廃寺
鬼瓦
じゅうめん もん のき まるがわら
3. 獣 面文軒丸 瓦
か きた
柿田遺跡出土 直径17.0cm 白鳳時代
滋賀県立安土城考古博物館所蔵
さんじゅうこもん
はんにく ぼ
周縁に三重弧文を施し、その内側には想像上の獣面を大きく半肉彫り
にして表している、たいへん珍しい文様を持つ瓦です。その顔のつくり
し らぎ
ち こう じ
から新羅様式と考えられており、奈良県地光寺遺跡出土の瓦の系統を引
くものとされています。『長浜市史』の口絵に大きく写真が掲載されて
いますが、今回の展示は実物を見ることのできる貴重な機会です。
あぶみ
4. 鐙
柿田遺跡
じん ぐう じ
神宮寺遺跡出土 残存高15.5cm 幅14.0cm 厚1.7cm 古墳時代
獣面文軒丸瓦
長浜市教育委員会保管
鐙とは、乗馬する際に足を踏み掛けるために用いる馬具の一種です。
わあぶみ
神宮寺遺跡から出土したものは木製の輪鐙で、馬の背に吊す部分が欠損
しています。木製輪鐙は国内でも数点しか出土が確認されておらず、た
いへん貴重な資料です。
かんしきけい
5.韓式系土器
かき た
柿田遺跡出土 高さ36.0cm 直径35.0cm 古墳時代
長浜市教育委員会保管
は
じ
き
日本固有の土師器とは異なり、朝鮮半島の技術によって作られた土器
です。韓式系土器の中には、この甕のように鳥の足跡のような特徴的な
神宮寺遺跡
鐙
ちょうそく もん
タタキ目を有するものがあります。
このような特徴を持つ土器は 鳥 足文
土器と呼ばれます。
2:○
新 指定文化財紹介
か
じ
ご
や
か
じ ど うぐ
鍛冶小屋(鍛冶道具等を含む) 1件 2棟
ぶんぞう
内訳:文蔵鍛冶小屋 1棟(鍛冶道具12点を含む)
ま んよ
すみ ご
や
萬右鍛冶小屋 1棟(鍛冶道具240点、炭小屋1棟
そ せき
、旧礎石11点、貯水池を含む)
明治時代(19世紀後期~20世紀前期)
長浜市指定有形民俗文化財
柿田遺跡
韓式系土器
個人蔵
か
じ
や
前号に引き続き、平成20年度に新たに長浜市の指定となった鍛冶屋町に所在する有形民俗文化財の鍛冶小
屋(鍛冶道具等を含む)について紹介します。
か
じ くにつぐ
鍛冶屋町での鍛冶の始まりは、大和国宇多郡の鍛冶国次が室町時代にこの地に移住したことによると伝わ
の
か
じ
なりわい
ります。明治初年に編纂された『滋賀県物産誌』によると、多くの家が野鍛冶を生業としていたことが分か
ります。平成20年現在、集落内には5棟の鍛冶小屋が確認されますが、その多くは物置小屋として使用され
ているのが現状です。
お もや
けたゆき
はりゆき
鍛冶小屋は主屋から独立して建ち、敷地条件に関係なく東を正面としています。平面は桁行3間、梁行2
2
間の鍛冶作業場と、北面に鍛冶炭などを貯蔵する物置から構成されま
きりづまづくり
さんがわらぶき
うち や
ね
す。屋根は切 妻 造 、桟 瓦 葺 で、鍛冶作業場では土で塗り込めた内屋根を
おき や
ね
設け、この上へさらに屋根を掛ける置屋根形式とします。
鍛冶作業場の内部は土間で、鍛冶作業に必要な設備が据え付けられて
ひさし
います。内部に入ると、左が鍛冶作業場で、左側面 庇 の窓の前が鍛冶小
かなどこ
屋主人の場所となるハコマエです。ここを中心に鉄床を据え、向う鎚の
つちおき
ふいご
ひ どこ
た
立ち位置と鎚置があります。左に 鞴 ・火床、右に泥溜め(泥桶)・水溜め
文蔵鍛冶場内部
(焼入れ用)・水溜め(仕上げ用)、背面(庇の張り出し部分)に道具棚が
装備されています。ハコマエは古くはムシロを敷いて座って作業を行なってい
ましたが、昭和になって、土間に深さ60cm程度の穴を掘り、その中に立って作
業を行なうように変化しています。また、同時期頃に鞴に替わって電動送風機
が使用されるようにもなっています。入口を入った右部分は、鍛冶作業の燃料
となる鍛冶炭の貯蔵場所と考えられます。しかし繁忙期にはここも作業場とし
て使用され、北面に鍛冶炭などの貯蔵場所が増築されるようになったと考えら
れます。
現存している鍛冶小屋の建築年代については、部材の経年具合などから明治
時代(19世紀後期から20世紀前期頃)と推測されます。
はし
つち
鍛冶道具は、各鍛冶小屋によって種類と数量に違いはありますが、鉗、鎚、
たがね
せん
すみ か
ひ ど こ ほ
やすり
すみわりなた
すみおけ
文蔵鍛冶道具
すみとりみ
鏨 、鉄床、鏟、鞴、炭掻き、火床掘り、 鑢 、炭割鉈、鎚置、炭桶、炭取箕、
まんりき
はさみ
万力、トガネマワシ、 鋏 、用途不明の道具など20種類程度を確認できます。
ぶんぞう
1.文蔵鍛冶小屋
鍛冶小屋は、桁行3間、梁行2間の鍛冶作業場のみの古い形式を留めています。外観は近年に修理の手が
加えられていますが、内部は座って作業を行なうハコマエが残されていることは注目されます。建築年代は
部材の経年具合などから明治時代と推測され、鍛冶小屋の古式な形式を保持している貴重な建物です。
ま んよ
2.萬右鍛冶小屋
鍛冶小屋は、桁行3間、梁行2間の鍛冶作業場と桁行半間、梁行2間の物置から構成されます。現在の建
物は、西側の道路拡幅にともなってやや東へ移動していて、もとの位置には礎石が残されていて、移動前も
現状と同じ規模であったことが分かります。内部はハコマエ、鉄床、鎚置、水溜め、泥溜めが装置されてい
て、現在でも鍛冶作業が可能な状態で維持されています。建物を構成する部材は、古材の使用や後世の改造
萬右鍛冶小屋
萬右鍛冶小屋内部
3
萬右鍛冶道具
はしらぼくしょめい
などが認められますが、 柱 墨書銘の明治43年(1910)の建築と判断され、後に物置が増築されています。
鍛冶作業が可能な状態で維持されていること、さらに多数の鍛冶道具も残されていることから伝統的な鍛
冶作業の形態と鍛冶技術を後世に伝えることができる貴重な建物です。なお敷地内には、明治34年(1901)
に建築された主屋があり、鍛冶小屋に関連する炭小屋、貯水池も現存しています。(二宮)
※なお、長浜城歴史博物館で開催中の「長浜市文化財展」には、これらの鍛冶道具も出陳されていますので、
ぜひこの機会にご観覧ください。
ながはまじょう
との
3 : 長 浜 城 遺跡第193
遺跡第 193次調査
193次調査(
次調査 (殿町)
個人住宅建設に伴う試掘調査で、対象面積 165.79 ㎡に対し1か所の
トレンチを設定し、6.29 ㎡について調査を実施しました。
調査の結果、
現況面以下 0.6m までが暗灰黄色中礫混細砂、0.6m~0.8m
が黒色極細砂、0.8m~1mがオリーブ灰色中礫混細砂、1m~1.1mが
灰オリーブ色細砂、1.1m~1.4mが暗灰黄色極細砂、1.4m~2mがに
ぶい黄褐色シルト混細砂、2m以下が灰色細砂。遺構・遺物は確認で
きませんでした。(牛谷)
ながはまじょう
長浜城第193次
土層堆積状況
長浜城第194次
土層堆積状況
こうえん
4: 長 浜 城 遺跡第194
遺跡第 194次調査
194次調査(
次調査 (公園町)
個人住宅新築工事に伴う試掘調査で、調査対象面積 302.47 ㎡に対し
て3か所のトレンチを設定し、9㎡について調査を実施しました。
調査の結果、現況面以下 0.2mまでが砕石、0.2~0.7mまでが暗褐色
極細砂、0.7~1.0mまでが暗褐色細砂混極細砂で、1.0m以下で明灰褐
色極細砂混細砂の地山を検出しましたが、遺構や遺物は確認できませ
んでした。
(山本)
じんしょうじぼう
しんじょうてら
5:神照寺坊遺跡第59
遺跡第59次調査
59次調査(
次調査( 新 庄 寺 町)
神照寺坊遺跡は中世の寺院跡として周知されている遺跡です。今回
の調査はガス低圧管新設工事に伴う立会調査で、工事に立ち会い、土
層の堆積状況や遺構・遺物の有無を調査しました。
調査の結果、現況から0.45mの深さまで造成が施され、以下に黄褐
色粘土灰色粗砂が0.4mほど堆積していました。その後灰色の礫土が検
出されます。工事によっておよそ0.9mの掘削が行われましたが、遺
構・遺物は確認できませんでした。
(池嵜)
神照寺坊第59次
土層堆積状況
編集後記
今年度から始まった「長浜市文化財展」(会場:長浜城歴史博物館)は、今までの考古速報展と文化財保護強調月間特別展
を集約して、あらたに地元密着のテーマ性を持たせた展覧会です。長浜市新指定文化財もあわせて展示していますので、ぜひ
ご覧ください。
4
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