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第 2 章 被害の概要

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第 2 章 被害の概要
第2章
被害の概要
の表のように総数 6,434 名の死者と行方不明者 3 名、負傷
第 2 章 被害の概要
は、以下の表のように総数
6,434 名の死者と行方不明者 3 名、負傷
1 人的被害
1 人的被害
。
地震による人的被害は、以下の表のように総数6,434名の死者と行方不明者 3 名、負傷者43,792名
総数
34
)
表
兵庫県全体
神戸市
1であった。
人的被害
総数
3 6,434
者2
3
43,792
6,402
単位(;人)
兵庫県全体
死者
3
6,402
40,092
行方不明者
負傷者
3
4,571
表1 人的被害
総 数
神戸市 兵庫県全体
6,434
3
43,792
4,5712
14,6782
神戸市
6,402
4,571
3
2
40,092
14,678
40,092
14,678
(神戸市の
4,571 人の内に自殺者
7 名を含む)
(神戸市の4,571人の内に自殺者
7 名を含む) (消防庁確定報2006.5.19、兵庫県資料2006.12.27、神戸市資料2007.1.1)
(神戸市の
4,571 人の内に自殺者 7 名を含む)
006.5.19、兵庫県資料 2006.12.27、神戸市資料 2007.1.1)
庁確定報 2006.5.19、兵庫県資料
2006.12.27、神戸市資料 2007.1.1)
神戸市内で震災後の関連死(自殺者や独居死など)を除き、亡くなった方々の状況は下記の通り
自殺者や独居死など)を除き、亡くなった方々の状況は下
であった。
関連死(自殺者や独居死など)を除き、亡くなった方々の状況は下
まず、死亡者の年齢は図1に示すとおり60歳以上の割合が59%で高齢者に犠牲者が多かった。
は図
1 に示すとおり
60 歳以
示すとおり
60 歳以
者に犠牲者が多かった。
牲者が多かった。
図1 年齢別死亡
次いで、死亡原因は図 2 に示すとおり、圧死・窒息死したことの原因が全体の73%を占めてお
図 1 年齢別死亡
り、強い地震により瞬時に家屋が倒壊し、その下敷きになってなくなった人が多いことがわかる。
また震災後発生した51件の火災により、焼死したり、焼骨のみで発見されたなどが12%である。
図 1 年齢別死亡
図 2 に示すとおり、圧死・窒
なお、震災直後の午前 6 時までに犠牲となった2,222人の死亡原因は窒息死が81.8%である。
全体の 73%を占めており、強
すとおり、圧死・窒
屋が倒壊し、その下敷きにな
いことがわかる。また震災後
3%を占めており、
強
により、焼死したり、焼骨の
し、その下敷きにな
わかる。また震災後
図 2 死亡原因
である。
焼死したり、焼骨の
前 6 時までに犠牲となった
窒息死が 81.8%である。
。
図2 死亡原因
図 2 死亡原因
25
図3 1月17日午前6時までの死亡原因
(阪神淡路大震災記録誌より兵庫県監察医、日本法医学医師会の検視)
2 物的被害
物的被害の特徴としては、次のようなことがあげられる。
2.1 住宅被害の状況
2.1.1 住宅の滅失状況
震災前の1995年 1 月 1 日に存在し、1996年 1 月 1 日に滅失したと思われる民間住宅は全市におい
て約79,300戸であり、およそ15%の住宅が失われたことになる。また、公営住宅の解体戸数約2,500
戸を合わせると、全体で約82,000戸が滅失した。
区別にみると、長田区の滅失戸数が特に多く、続いて東灘区、須磨区、灘区の順となっている。
また、構造別の滅失状況をみると、木造の滅失 率が約40%、煉瓦・ブロックが約28%、RC・
SRCが約 6 %、軽量鉄骨その他が約10%であり、木造の滅失率が最も高いことがわかる。さらに、
滅失した住宅に対する構造ごとの構成比は木造が全体の約87%を占める状況であり、木造建物の被
害の多さが際立っている。
表1 住宅の滅失状況(神戸市調べ)単位:戸
区
存 続
総 数
東 灘
16,174
48,845
65,019
灘
10,050
33,280
43,330
中 央
5,964
38,271
44,235
兵 庫
7,984
30,237
38,221
長 田
23,301
36,186
59,487
須 磨
10,761
52,032
62,793
74,234
238,851
313,085
東灘~須磨 3,094
81,847
84,941
北
922
61,002
61,924
西
1,033
63,750
64,783
神戸市計 79,283
445,450
524,733
垂 水
26
滅 失
表2 構造別滅失状況(東灘~須磨区)
住 宅 戸 数
構 造
木造
煉瓦・ブロック
RC・SRC
軽量鉄骨その他
計
存 続
滅 失
小計
構成比
滅失率
b/c
a
b
c
95,245
64,331
159,576
87%
40%
489
194
683
0%
28%
134,529
8,724
143,253
12%
6%
8,588
985
9,573
1%
10%
238,851
74,234
313,085
100%
24%
2.1.2 住宅被害の分布状況
町丁目別の住宅被害の分布状況では、住戸の残存率が70%を下回る地域が、東灘、灘、兵庫、長
田、須磨区の平野部に広く分布しており、被害が比較的軽微であった残存率90%以上の地域は、各
区の山麓部に偏っている。また、中央区ではビルが倒壊するなど大規模な建物被害が発生したが、
住戸数が少ないため統計上は表れていない。
図1 住宅被害の分布
図1
住宅被害の分布
2.1.3 建築年次と被害の関係
2.1.3 建築年次と被害の関係
建築年次と被害との関係では、昭和 40 年代前半を境に、木造系、鉄骨系の全壊かつ滅失
建築年次と被害との関係では、昭和40年代前半を境に、木造系、鉄骨系の全壊かつ滅失率が急激
率が急激に下がっており、地震による被害は建築後 30 年以上の建物に顕著であったことが
に下がっており、地震による被害は建築後30年以上の建物に顕著であったことがわかる。
わかる。
また、RC系では、1970年以降減少傾向を示し、1979年以降はほぼ
0 に近い値で推移している。
また、RC 系では、1970 年以降減少傾向を示し、1979 年以降はほぼ0に近い値で推移し
なお、耐震設計については、1981年に建築基準法が改正され現行のものになっている。
ている。なお、耐震設計については、1981 年に建築基準法が改正され現行のものになって
いる。
27
図2 建築年次と被害の関係
2.1.4 被災建物調査について
応急危険度判定は、震災直後に建物の安全性に関する調査で外観より調査して「危険」は使用不
可として赤色、「要注意」は一時立ちのみ可として黄色、「使用可」として緑色のシールを建物に貼
り付け注意喚起を行った。調査者は神戸市の職員の建築関係技術者である。
り災証明書は災害救助法の適用にあたり、被害の度合いを認定するうえで発行を行った。
この「り災証明書」の発行にあたり、当初は全国・全世界から頂いた義捐金1,793億円を早急に
被災者に配分することを主な目的として発行しており、その善意を広く被災者に配分することか
ら、多少甘めに、且つ全国の都市の税務担当者の支援を受け 5 日間で調査を行った。
その後、税の控除や私立学校の授業料の免除、再建費用の借り入れ利息の低率適用、解体費用の
全額国費負担などがこの証明書でなされる処置が取られたため、相当数の再調査の申し出でがあ
り、その処理は半年以上かかってなされた。
災害実態緊急調査として、被災家屋の詳細状況について今後の建築行政に反映することを目的に
日本都市計画学会関西支部と日本建築学会近畿支部都市計画部会により 2 ヶ月間かけて行われた。
これらの調査の結果はそれぞれの目的が異なることもあり、被災直後の混乱期に調査を行ったも
のもあり、数値は異なっているが、表2が住宅等の被災の公式資料として各種報告書に記載されて
いる。
以上の人的・住宅被災の状況や数haに及ぶ火災で消失した区域を見た時、神戸市が進めていた戦
災復興区画整理事業や、都市の再構築として進めていた再開発事業や都市改造事業以外の地域での
被災が大きく、また建築基準法の耐震に関する基準が強化された1986年以前の古い建物が多かっ
た。
これらの1986年以前に建築された戸建てや長屋形式などは木造で、台風により屋根が飛ばされる
ことを防ぐため重さのある瓦で覆い、また、夏場の暑さを軽減するため風通しをよくしようと大き
な掃出し窓を有しているなど、日本古来の気候・風土に適合する形式のヘビーヘッドで、筋交いが
少ない構造は地震に対する抵抗力が不足していることから、1986年の建築基準法において、これら
の点は強化されたが、それ以前の建物は充分な補強がなされていなかったことが原因である。
言い換えれば、このような古い家に住まいする人は経済力に劣る高齢者が多く、耐震基準に劣る
老朽木造住宅が連担し、火災の延焼を防止する広い道路や公園が少い地域に被害が大きかったと言
28
える。
また、都市としての再構築事業を進めていた途上において震災にあったとも言える。
2.2 都市施設の被害と応急対応
2.2.1 都市施設の特徴と都市での役割(総論)
都市施設のうち「ライフライン(Lifeline)」とは、一般には道路、高速道路、鉄道、地下鉄道、上
下水道、ガス・電力、通信などの施設をさす。「都市施設」には公民館なども含まれると考えられ
るが、ここでは「都市施設」を広義のライフラインにとらえて考えることにする。
ライフラインは都市生活・都市活動に不可欠なものであり、都市の持つ利便性を高め、都市の魅
力を高める役割を果たしている。ライフラインはただ存在するだけでなく、利用者がいて一定の機
能を果たすことによって利便性をもたらす。その特徴をまとめると次のとおりである。
・水道・ガス・電力は供給系のライフラインであり、供給源である水源地・浄水場、ガス製造
工場・ガバナー、発電所・変電所から管路・架空線などの設備を通して供給される。
・下水道・通信は処理系のライフラインであり、家庭などにおいて需要が発生し、管路・ケー
ブルで処理対象を収集し、処理場・通信センターで処理し、放流されるか再度通信先に送信
される。
・道路・高速道路・鉄道は、交通系のライフラインであり、地点間が道路やレールで接続さ
れ、電車・バスなどの輸送手段が提供されることで機能を発揮する。
阪神淡路大震災では、多くのライフラインが機能しなくなり、都市での生活や産業活動に大きな
支障となった。ここでは、これらライフラインの「しくみ」と被害の概要について述べることにす
る。
2.2.2 道路の被害と応急対応
道路は大きく「高速道路」と「一般道路」に分類される。この地域では、阪神高速道路が東西に
通過し、都市間を結ぶ大動脈として機能しており、これに並行して国道2号・43号の幹線道路があ
る。その他の一般道路は、これらに接続して住居周辺の生活道路からの交通需要に対応している。
2.2.2.1 被害の状況
・道路の被害は、路面そのものの亀裂と盛り上がり、高架橋の落橋、盛土の崩壊、崖崩れ、家
屋・電柱等の倒壊による閉塞、液状化による土砂の噴出、地下ライフラインの破壊などがあ
る。このうちライフライン被害については別項で解説する。
・上記のような被害が生じると、交通の妨げとなり、車両が渋滞して機能しなくなる。
・また、道路は延焼を食い止める機能もあるが、狭い路地は延焼防止機能を果たさなかった。
・阪神高速道路については、一部区間の倒壊、落橋、橋脚の座屈、地中部の基礎の破損など多
くの被害を受けた。倒壊箇所については取り壊し再構築、軽度の座屈箇所についてはジャッ
キアップなどで高さ調整を行い、橋脚が鉄板などにより補強された。
2.2.2.2 応急対策
・道路管理者はすべての道路を通行止めにし、緊急点検をおこなって被害状況を把握するとと
もに軽微な補修で通行できるものは、緊急工事で通行可能にしていった。しかし、大きな被
29
害については、まず取り壊し・撤去、迂回路の確保、通行規制などが検討され、実施され
た。
・道路の応急復旧は復旧に必要な交通需要に対応する観点から東西幹線の確保に重点が置か
れ、国道43号線は復旧関係車両優先とし、許可書を必要とするようにし、一般交通は国道 2
号線のみであった。(当時、山手幹線は芦屋市で止まっていた。)
・路面の障害に対しては、亀裂や盛り上がりを部分的に解消して車両が通行できるように応急
復旧が行われた。
・高架橋については、一度取り壊し、あらためて架け替えられた。
・建物の倒壊は、建物が撤去されるまで機能しないため、幹線道路などでは早期に撤去された
が、生活道路では車両通行ができなかったり、幹線でも歩道だけの場合は後回しになった。
・崖崩れ・盛土崩壊なども応急的にそれ以上の崩壊を防止するとともに、水抜きやのり枠や杭
などに構造物による崩壊防止措置がとられて復旧された。
2.2.2.3 機能障害と生活への支障
・倒壊した建物、電柱や電線、橋梁損壊のため各所で道路が通行できなくなった。そのほかに
もクラックや段差、液状化による土砂の噴出などで通行が阻害された。これらの箇所は場所
により相当長期にわたり通行止めか一方通行、車線の規制などが行われつつ復旧が行われ
た。
・渋滞の発生は消防・警察、自衛隊などの緊急車両、またその他車両の走行に支障が出た。そ
のためバス・タクシーなどは公共交通機関としての機能を果たさなかった。
・道路下に埋設された水道管・ガス管などが破損し、ライフラインとしての機能に支障を生じ
た。
・もともと神戸市を東西に横断する道路は、国道 2 号線と43号線しかなく、阪神高速道路も不
通になったため、43号線を復旧・復興車両専用(許可車のみ通行可)、2 号線を一般車両と
した。やむを得ない措置とはいえ、このことも渋滞を大きくする原因となった。
・道路施設の被害は、閉鎖によりその他施設の復旧を遅らせるとともに、食料などの生活物資
の輸送にも大きな影響を生じ、当初にあっては、市民生活の維持に大きな障害となった。ま
た、消防・救急など緊急車両の通行にも支障が出た。
2.2.3 鉄道
2.2.3.1 京阪神の鉄道の状況
京阪神には、JR西日本および近鉄、南海、京阪、阪急、阪神の民鉄大手 5 社、北大阪急行、大
阪府都市開発、神戸高速鉄道、神戸電鉄、山陽電鉄の準大手、京都・大阪・神戸の地下鉄がある。
大阪駅を中心とした半径50km圏の鉄道の輸送人員は平成 5 年(1993年)に5,311,275千人であり、
その 4 割をJR西日本が占めている。
近畿圏における通勤・通学定期の利用者は約422万人/日であり、そのうち大阪市へは172万人/
日である。
2.2.3.2 被害の状況
被害は明石市から高槻市におよび、特に神戸市須磨区から西宮市の間には、JR西日本の東海道
本線・山陽本線、阪急、阪神があり、西から、JR新長田駅付近の盛土、神戸高速の大開駅(開削
トンネル)、元町~三ノ宮間の高架橋、JR六甲道付近の高架橋、阪神電鉄御影~西灘間の高架橋、
30
JR住吉~摂津本山間の盛土、JR芦屋駅の停車場設備、阪急電鉄西宮北口~夙川間の高架橋、阪急
伊丹駅付近の高架橋、阪急甲東園付近の山陽新幹線高架橋などに大きな被害があった。
この地震でもっとも被害を受けたのは橋梁であり、山陽新幹線で 8 ヶ所、在来鉄道と新交通シス
テムで24 ヵ所の合計32 ヶ所で落橋したほか、コンクリート高架橋の多数が損壊した。
トンネルについては、神戸高速の大開駅が大破したものの、山岳トンネルでは覆工のひび割れや
剥落があったが総じて被害の程度は軽かった。
電路設備は高架橋の落橋など土木構造物の被害に伴って、電柱や信号機などに被害が生じた。
また、車両基地では阪神電鉄の石屋川車庫が全壊して、41両の車両が全壊となった。JR西日本
では鷹取工場が、神戸新交通のポートアイランドの基地、北神急行の谷上車両基地にも被害があっ
た。
2.2.3.3 運転の休止状況
地震当日は、鉄道施設の被害によって全ての鉄道が運転を休止し、多くの旅客に影響がでた。鉄
道の不通区間は当初約640kmにおよんだが、2 日後には約半分が復旧した。大阪~神戸間のJR、阪
急、阪神の合計の輸送人員は 1 日45万人であるが、17日はすべてストップした。翌日から確認の済
んだ箇所から運転を開始し、少しずつ運転区間を延ばしていったが、神戸市の中心部は最後まで残
ることになった。この間、バスによる代行輸送を中心に対応したが、各停留所では長蛇の列ができ
混乱した。
2.2.4 電力
2.2.4.1 電力施設と緊急対応
この地域においては、関西電力㈱神戸支店が兵庫県東部地域および大阪府の一部を供給区域に
持っており、約202万口の需要家に年間約186億kwhの電力を供給している。
管内には、3 ヶ所の火力発電所と 1 ヶ所の水力発電所があり、154kV以上の変電所が12 ヶ所ある
が、福井県にある原子力発電所、富山県の水力発電所、和歌山県の火力発電所などで発電され、高
圧送電線を経由して都市に送られる比率も大きい。
送電設備は約93%が鉄塔であり、配電設備は他地域に比べて地中化率がやや高いものの、ほとん
どがコンクリート柱である。
2.2.4.2 被害の状況
地震発生時には、約260万戸の需要家で停電したが、直ちに被災設備を系統から分離し、健全箇
所から順次切り替え送電をおこない、約 2 時間後には約100万戸に低減させた。配電線の復旧にあ
たっては、道路事情、家屋倒壊、不在家屋の確認などに時間を要したが、6 日後の 1 月23日には応
急送電を完了した。
発電所については、原子力発電所、水力発電所には被害がみられなかったが、大阪湾沿岸の21箇
所のうち10箇所において被害が生じ、地震直後に12ユニットが自動停止し、176万kwの発電支障を
生じた。
変電所については、861箇所のうち50箇所で被害を受けた。大きなものでは変圧器・遮断機の破
損なども生じている。
送電設備では、架空施設で11線路の鉄塔、電線、がいしに被害を生じ、地中施設で102線路の
ケーブルや管路に被害を生じている。
配電設備では、高圧回線に649回線に被害があり、そのうち551回線が三宮営業所管内であり、被
31
害率は100%である。架空線についてはコンクリート柱の倒壊による断線が生じているが、建物の
倒壊に伴う二次的な被害も多く発生している。地中線については、やはり液状化した地盤に埋設さ
れた管路(特に石綿セメント管)に多くの被害が発生しており、地中配電線の人孔・手孔は全体の
約86%、管路は約78%がこのような地盤に集中している。
2.2.5 通信
2.2.5.1 通信施設のしくみ
通信施設は、交換機を設置した通信センタービルとお客様を結ぶ通信用ケーブルから構成され
る。通信用ケーブルには架空線と地下施設があり、架空線は電力などとともにコンクリート柱に架
設され、地下施設は、管路、マンホール、とう道等がある。管路はケーブルを保護するものであ
り、マンホールおよび小型のハンドホールは保守作業をおこなうために設置されている。
2.2.5.2 通信施設の被害
通信施設の被害は、架空線と地下施設の双方に発生している。架空線では、コンクリート柱の倒
壊・傾斜・沈下、家屋の倒壊などに伴って断線するが、主にお客様宅への引き込み部分で多くの被
害が出ている。
地下施設については、マンホール・管路ともに液状化した地区で被害があったものの通信ケーブ
ルそのものには被害がなく、サービス中断に至る被害は軽微なものであった。管路はやはり古い材
質のものに被害が大きかったが、最近のものは耐震対策が講じられており被害はほとんどなかっ
た。
なお、交換機については軽微な被害はあったものの機能的な影響を及ぼす被害は生じていない。
2.2.5.3 機能障害の影響
通信需要(トラヒック)の発生は、神戸市内で発生し市外・県外・国外へ向かうもの、逆に市
外・県外・国外で発生し市内に入ってくるもの、市内で発生し市内に通信されるものに分類でき
る。これらの通信需要は基地局(通信センタービル)に集約されるが、あまりに需要が集中すると
処理不能に落ち入り通信がストップする。この状態を「ふくそう」という。
地震直後には、これらが神戸市内において爆発的に発生し、阪神・淡路大震災時はふくそうが発
生し、通話が困難になった。
また、通信線の破損による不通も生じたので、一時的に衛星電話なども配置された。一般家庭の
回線より公衆電話がつながりやすく、人々は電話ボックスに行列をつくった。
2.2.5.4 緊急対応
地震当日から150名の応急処理班が組織され、通信ケーブル、電柱などの調査を実施した。電柱
などは道路の復旧、他社との共同架設で調整を要するなどしたため、サービスの復旧に重点を置
き、地震発生後、わずかな時間で臨時ファックスを含む無料の特設公衆電話を2800台設置した。ま
た18日には、1995年夏に開発されたポータブル衛星地球局 2 台も配備した。最も被害の大きかった
地区にも17日夜から復旧班が入り、18日午前中には交換機を全面回復させた。
その後も通信ケーブルの復旧に力を入れ、1 月31日には概ねサービスを回復した。また 2 月から
3 月にかけて全国からさらに多くの復旧部隊を投入し、本格的な設備復旧を行っていった。
32
2.2.6 ガス
2.2.6.1 ガス供給のしくみ
近年は中近東からタンカーで輸送した
LNG(液化天然ガス Liquefied Natural Gas)をガス化し、都
大阪ガスは近畿
2 府 4 県の570万戸にガスを供給しており、顧客数では95%が家庭用であるが、
市に供給している。
販売量では63%が工業用・商業用である。ガスの製造は、以前は合成によりガスを製造していた
LNG の受け入れは姫路と泉北でおこなわれ、高圧・中圧(A、B)およびガスホルダーにより需給
が、近年は中近東からタンカーで輸送したLNG(液化天然ガスLiquefied
Natural Gas)をガス化し、
調整しながら供給され、さらにガバナーで低圧に減圧されて各家庭に供給されている。このようなガ
都市に供給している。
ス供給輸送システムの模式図を図 に示す。
LNGの受け入れは姫路と泉北でおこなわれ、高圧・中圧(A、B)およびガスホルダーにより需
なお、現在、ガス導管に使用される材料は溶接鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ポリエチレン管である。
給調整しながら供給され、さらにガバナーで低圧に減圧されて各家庭に供給されている。このよう
圧力区分
運用圧力
なガス供給輸送システムの模式図を図
1 使用材料
に示す。
主な用途
る。
発電所へのガス供給
高圧
1.0~.4.0 MPa
鋼管(溶接)
長距離のガス輸送
なお、現在、ガス導管に使用される材料は溶接鋼管、ダクタイル鋳鉄管、ポリエチレン管であ
中圧 A
圧力区分
0.3~1.0 MPa
運用圧力
鋼管(溶接)
使用材料
中距離のガス輸送
主な用途
中圧
高圧B
MPa
1.00.1~0.3
~ .4.0 MPa
鋼管(溶接)
鋼管(溶接)
病院、工場等の大口顧客へのガス供給
長距離のガス輸送
発電所へのガス供給
0.3 ~ 1.0 MPa
鋼管(溶接)
0.1 ~ 0.3 MPa
鋼管(溶接)
ダクタイル鋳鉄管
ダクタイル鋳鉄管
0.01 ~ 0.025 MPa
鋼管(溶接、機械接合)
ダクタイル鋳鉄管
ポリエチレン管
ダクタイル鋳鉄管
中圧A
0.01~0.025 MPa
低圧
中圧B
低圧
中距離のガス輸送
鋼管(溶接、機械接合) 家庭用、中小業務用・産業用顧客への
病院、工場等の大口顧客へのガス供給
ガス供給
ポリエチレン管
家庭用、中小業務用・産業用顧客への
ガス供給
高い圧力のガス管
中程度の圧力のガス管
低い圧力のガス管
(1MPa 以上)
(0.1~1MPa 以上)
(0.1MPa 未満)
LNG
LNG
整
球形ガス
整
マイコン
タンカー
タンク
圧
ホルダー
圧
メーター
お客様
器
器
図1
ガスの製造と供給のしくみ
図1 ガスの製造と供給のしくみ
2.2.6.2
被害の状況
2.2.6.2 被害の状況
製造所は臨海部に位置しているため液状化などにより軽微な被害が生じたが、主要設備には影響な
製造所は臨海部に位置しているため液状化などにより軽微な被害が生じたが、主要設備には影響
く、操業は断続した。ガスホルダーでは、葺合供給所で最大加速度 833gal を記録したが被害はなかっ
なく、操業は断続した。ガスホルダーでは、葺合供給所で最大加速度833galを記録したが被害はな
た。このほかにも西宮、神戸、明石、北神戸、神崎川、千里の各供給所のガスホルダー(12基)に
かった。このほかにも西宮、神戸、明石、北神戸、神崎川、千里の各供給所のガスホルダー(12基)
はいずれも被害はなかった。
にはいずれも被害はなかった。
導管については、高圧は被害がなく、中圧は合計 106 ヶ所で被害があったが、古い材質や液状化地
導管については、高圧は被害がなく、中圧は合計106 ヶ所で被害があったが、古い材質や液状化
区などに限られており、溶接鋼管にはガスの漏洩はなく耐震性を示したといえる。一方、低圧導管の
地区などに限られており、溶接鋼管にはガスの漏洩はなく耐震性を示したといえる。一方、低圧導
被害は大きく、合計 26,459 ヶ所で被害があった。大半は家庭への引き込み管であり、管種はネジ鋼管
管の被害は大きく、合計26,459 ヶ所で被害があった。大半は家庭への引き込み管であり、管種はネ
である。現在主流のポリエチレン管には被害はなかった。
ジ鋼管である。現在主流のポリエチレン管には被害はなかった。
2.2.6.3
応急対応と生活への影響
地震当日、末端の低圧導管や家庭への引き込み管が多数破損しガス漏れも発生したので、二次災害
2.2.6.3 応急対応と生活への影響
を防ぐため 86 万戸へのガス供給を停止した。このため、暖房・給湯の熱源として利用できなくなり、
地震当日、末端の低圧導管や家庭への引き込み管が多数破損しガス漏れも発生したので、二次災
害を防ぐため86万戸へのガス供給を停止した。このため、暖房・給湯の熱源として利用できなくな
5
り、特に風呂に入れなくなるなどの支障が生じた。
33
2.2.7 水道
2.2.7.1 神戸市水道の特徴
神戸市水道の特徴としては、
①水源がない、大きな川がない(トンネルから自然流下)
水源の75%は阪神水道企業団を通じて琵琶湖・淀川に頼っており、2 本の送水トンネルが
生命線になっている。また、北区は自己水源の千苅ダムと兵庫県営水道の青野ダム、西区は
同じく兵庫県営水道の呑吐ダムから供給も受けている。
0 m ~ 300mまで均一水圧で給水するために、30mごとに区域分割(低層、中層、高層、
特別高層)。東西方向には、3 ~ 5 kmごとに分割。それぞれの分割された区域ごとに配水池
がある。
③テレメータ・コントロール
数多くの配水池・ポンプ場を奥平野の集中監視室から遠隔監視・制御している。
④阪神水道は高度浄水処理
阪神水道企業団から購入する水は高度浄水処理としてオゾン処理をされており、カビ臭の
分解やトリハロメタンの生成抑制に効果がある。
2.2.7.2 神戸市水道の被害
① 被害の概要
阪神・淡路大震災による神戸市の水道施設の被害箇所数および被害金額を表1に示す。これから
わかるように、最大の被害は配水管と給水管に関するものであり、庁舎そのものの被害も復旧に際
し大きな影響を与えた。また、直接的な被害は約290億円であるが、その他に間接的な被害(料金
収入の減少、起債に伴なう利子支払い)もあり、被害総額は約400億円程度になると見積もられて
いる。
表1 神戸市水道の被害状況
施設名
被害 (被害数/施設数)
復旧費用
備考
ダム
1
/ 3 ダム
浄水場
2
/ 7 浄水場
導水施設
2 系統*
送水施設
6 系統* 配水池
1
配水管
1,757 個所 / 4,002 km
給水管
89,584 個所 /650,000 lines
25
その他
本庁, 東部営業所等
41
合計
/43 km
/ 260 km
/ 119 個所
(億円)
*:導水・送水施設につい
てはそれぞれ 2 系統・ 6
系統が機能停止した。
70
19
135
290
被害の多かった管路については、水道システムの性質上、供給区域の地盤を選ぶことができず、
地盤の動きに追随できないことから弱い材質の管は管体が破損し、管体の強い管路(ダクタイル鋳
鉄管)には継ぎ手の抜けが生じて漏水した。このような被害は面的に分布している。(写真 1 参照)
また特徴的な被害として、水道局庁舎が破壊され、図面等の資料入手が容易でなくなり、復旧作
業の円滑な施工に支障を与えた。写真3-8-3には当時の本庁舎 6 Fの内部状況を示した。これは想定
外のことであり、送水管理のシステムを含めバックアップできる体制にすることが教訓として得ら
れた。
34
写真 1
水道管路の被害状況
写真1 水道管路の被害状況
写真
1 1水道管路の被害状況
写真
水道管路の被害状況
写真 2
水道庁舎の被害状況
また特徴的な被害として、水道局庁舎が破壊され、図面等の資料入手が容易でなくなり、復旧作業
の円滑な施工に支障を与えた。写真 3-8-3 には当時の本庁舎6F の内部状況を示した。これは想定外の
ことであり、送水管理のシステムを含めバックアップできる体制にすることが教訓として得られた。
写真2 水道庁舎の被害状況
写真
2 2水道庁舎の被害状況
写真
水道庁舎の被害状況
② 配水管の被害分析
② 配水管の被害分析
配水管破損事故の総数は、確認されたものだけで 1,757 件に達しており、その約 60%は管の継手部
配水管破損事故の総数は、確認されたものだけで1,757件に達しており、その約60%は管の継手
また特徴的な被害として、水道局庁舎が破壊され、図面等の資料入手が容易でなくなり、復旧作業
また特徴的な被害として、水道局庁舎が破壊され、図面等の資料入手が容易でなくなり、復旧作業
で発生している。発生場所の分布をみると臨海部、河川沿い、断層付近など地盤変位の大きい場所で
部で発生している。発生場所の分布をみると臨海部、河川沿い、断層付近など地盤変位の大きい場
の円滑な施工に支障を与えた。写真
3-8-3
には当時の本庁舎6F
の内部状況を示した。これは想定外の
の円滑な施工に支障を与えた。写真
3-8-3
には当時の本庁舎6F
の内部状況を示した。これは想定外の
生じている。また管種別にみるとダクタイル管(DIP)の破損件数が多いが、
発生率では古い鋳鉄管(CIP)
所で生じている。また管種別にみるとダクタイル管(DIP)の破損件数が多いが、発生率では古い
ことであり、送水管理のシステムを含めバックアップできる体制にすることが教訓として得られた。
の破損率(Damage Rate)が高い。
ことであり、送水管理のシステムを含めバックアップできる体制にすることが教訓として得られた。
鋳鉄管(CIP)の破損率(Damage Rate)が高い。
②②配水管の被害分析
これらのことから、配水管の耐震強化(更新)を検討するについては、大きな地盤変位が予測され
配水管の被害分析
これらのことから、配水管の耐震強化(更新)を検討するについては、大きな地盤変位が予測さ
る所に耐震管を使用しつつ、管路の更新をしていくのが望ましい。
配水管破損事故の総数は、確認されたものだけで
1,757
件に達しており、その約
60%は管の継手部
配水管破損事故の総数は、確認されたものだけで
1,757
件に達しており、その約
60%は管の継手部
れる所に耐震管を使用しつつ、管路の更新をしていくのが望ましい。
で発生している。発生場所の分布をみると臨海部、河川沿い、断層付近など地盤変位の大きい場所で
で発生している。発生場所の分布をみると臨海部、河川沿い、断層付近など地盤変位の大きい場所で
Damage Rate(件/km)
Pipe Damages(件)
生じている。
また管種別にみるとダクタイル管(DIP)の破損件数が多いが、
発生率では古い鋳鉄管(CIP)
生じている。
また管種別にみるとダクタイル管(DIP)の破損件数が多いが、
発生率では古い鋳鉄管(CIP)
Steel Pipe
Pipe
Body
の破損率(Damage
Rate)が高い。
の破損率(Damage
Rate)が高い。
Joint
DIP(A,K,T)
これらのことから、配水管の耐震強化(更新)を検討するについては、大きな地盤変位が予測され
これらのことから、配水管の耐震強化(更新)を検討するについては、大きな地盤変位が予測され
CIP
る所に耐震管を使用しつつ、管路の更新をしていくのが望ましい。
る所に耐震管を使用しつつ、管路の更新をしていくのが望ましい。
PVC
Pipe
0 Damages(件)
200
400
600
Pipe
Damages(件)
800
Damage Rate(件/km)
Rate(件/km)
1000 Damage
0
0.5
1
1.5
図2 配水管の被害と被害率
Steel
Pipe
図 2 配水管の被害と被害率
Pipe
Body
Steel
Pipe
Pipe
Body
<凡例>
Joint
<凡例>
Joint
DIP(A,K,T)
DIP(A,K,T)
※
Steel Pipe :鋼管
※ Steel Pipe :鋼管
※ DIP(A,K,T)はダクタイル鋳鉄管の継ぎ手の種類を示し、いずれも抜け出し防止機能のない種類を示して
CIP
CIP
いる。(DIP : Ductile
Pipe)
※ Iron
DIP(A,K,T)はダクタイル鋳鉄管の継ぎ手の種類を示し、いずれも抜け出し防止機能の
PVC
※ CIPPVC
: Cast Iron Pipe(ダクタイルでない鋳鉄管)
※ PVC:Poli-Vinyl Chloride(塩化ビニル管)
0 0 200
0.50.5
1 1
1.51.5
200 400
400 600
600 800
800 1000
1000 07 0
※ Pipe Bodyは管体破損、Jointは継ぎ手破損を示す。
図図
2 2配水管の被害と被害率
配水管の被害と被害率
<凡例>
③ 施設の形態と被害状況
<凡例>
※
Pipe
:鋼管
ライフラインは数多くの施設が複合して一つの機能を提供している。どれか一つが機能を失って
※Steel
Steel
Pipe
:鋼管
※※DIP(A,K,T)はダクタイル鋳鉄管の継ぎ手の種類を示し、いずれも抜け出し防止機能の
も困るが、最小限に被害にとどめるようバックアップの仕組みやリダンダンシー(冗長性)をもっ
DIP(A,K,T)はダクタイル鋳鉄管の継ぎ手の種類を示し、いずれも抜け出し防止機能の
て災害に対処することは可能である。神戸市水道も基幹施設と管路施設に大きく分けることができ
る。それぞれについて、地震被害に対する特徴を表
2 に比較した。基幹施設は個別に耐震設計を行
77
35
うことが可能であり、阪神・淡路大震災においても被害は少なかった。
表2 施設の形態と地震被害
基幹施設
管路施設
具体例
施設の配置
弱点
対策
トンネル
線状
断層
断層対策
浄水場、配水池
点
配水管
面的ひろがり
液状化に弱い、管路 管材質の耐震化
の絶対量(弱点)が ループ化
バックアップ
多い
給水管
線、建物単位
建物破壊
個別対策可能
管材質の耐震化
市内各所で配水管が破損し、水道水が流れ出し配水池が空になるとともに断水し、消防活動の支
障となった。
神戸市は75%の水を琵琶湖・淀川水系を水源とする阪神水道企業団に頼っているが、その阪神水
道も導水管が被災し、浄水場も被害を受けた。このため、神戸市への送水量が制約を受け、漏水・
復旧用水も含めた必要水量を送水できなかった。
配水管被害は地中にあるため、発見し補修していくことに多大な時間を要した。その間、断水が
続き市民生活に大きな支障をもたらした。
初期は、応急給水車を派遣し学校などで給水をおこなったが、動員できる車両には限界があり、
運搬できる量も少なかったので十分な給水はできなかった。
④ 断水に至る経過(物理的被害から機能的被害へ)
地震により配水管に生じた事故(管路破損、継ぎ手離脱等)は各地の管路に漏水を発生させ、配
水池においては異常な水の流出となって表れた。また、一方で入水量はさらに上流における被害に
より制約を受けた。この結果、配水池の水位は急激に低下し配水量が減り、配水池が空になった。
自然流下で輸送している管路も上流から次第に水がなくなり、高台の地区から断水状態になって
いった。
図 3 には、須磨区の板宿低層配水池(容量:10,000㎥)における水位記録を示した。また、図 4
には板宿低層配水池の供給地区である須磨区・長田区付近の水圧分布を午前 6 時と 6 時40分につい
てシミュレーション結果を示した。
5 時46分の地震発生から、わずか 1 時間程度で配水池水位がゼロになり、これに対応して、各地
で急速に水圧低下が発生していること、40分間にも水圧低下が広がっていっていることが示されて
いる。ただ、新長田の西側を通る配水幹線付近ではある程度の水圧が維持されていることもわか
る。
36
5 時 465分の地震発生から、わずか1時間程度で配水池水位がゼロになり、これに対応して、各地で
時 46 分の地震発生から、わずか1時間程度で配水池水位がゼロになり、これに対応して、各地で
急速に水圧低下が発生していること、
40 分間にも水圧低下が広がっていっていることが示されている。
急速に水圧低下が発生していること、
40 分間にも水圧低下が広がっていっていることが示されている。
ただ、新長田の西側を通る配水幹線付近ではある程度の水圧が維持されていることもわかる。
ただ、新長田の西側を通る配水幹線付近ではある程度の水圧が維持されていることもわかる。
<板宿低層配水池の例>
<板宿低層配水池の例>
分の地震発生から、わずか1時間程度で配水池水位がゼロになり、これに対応して、各地で
<板宿低層配水池の例>
95 年 01 月 16 日 06 時から 95 年 01 月 19 日 06 時まで表示
95 年 01 月 16 日 06 時から 95 年 01 月 19 日 06 時まで表示
15.0
配水池容量 10,000m
圧低下が発生していること、40 分間にも水圧低下が広がっていっていることが示されている。
4000
配水池容量 10,000m
4000
15.0
4000
3
3
4000
長田の西側を通る配水幹線付近ではある程度の水圧が維持されていることもわかる。
水位(m)
12.0
3200
3200
低層配水池の例>
9.0
9.0日 06 時まで表示
95 年 01 月 16 日 06 時から2400
95 年 01 月 19
3
2400
配水池容量 10,000m
2400
2400
15.0
4000
4000
6.0
1600
1600
12.0
3200
3200
6.0
1600
1600
3.0
800
800
9.0
2400
2400
図3
板宿低層配水池
6.0図 3 板宿低層配水池
1600
の水位と配水量
1600
の水位と配水量
0.0
0
0
06
06
0.0
0
0
12
18
00
06
12
18
00
06
12
18
00
06
06
12
18
00
06
12
18
00
06
12
18
00
06
1 月 16 日
1 月 17 日
1 月 18 日
1 月 16 日
1 月 17 日
1 月 18 日
(時/月、日)
(時/月、日)
図3 板宿低層配水池の水位と配水量
0.0
0
0
と配水量
水位(m)
配水量(m3/H)
入水量(m3/H)
3.0
800
800
3.0
800
800
層配水池
水位(m)
配水量(m3/H)
配水量(m3/H)
3
入水量(m /H)
入水量(m3/H)
12.0
3200
3200
板宿低層配水池
板宿低層配水池
12
板宿低層配水池
2.0
月見山
2.5 板宿
2.5
国道 2 号線
国道 2 号線
<2
2.0
1.0
山陽電鉄
須磨
午前 6 時 00 分 (WL:65m)
午前 6 時 00 分 (WL:65m)
大 阪 湾
2.5
新長田
1,000M
大 阪 湾
1,000M
3.0
>3
JR
3.0
2.5
2.0
国道 2 号線
2.5
2.0
<2
1.5
月見山
板宿低層配水池
2.0
板宿 2.0
山陽電鉄
国道 2 号線
国道 2 号線
1.5
1.0
1.5
1.0
新長田
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
午前 6 時 40 分 (WL:58m)
午前 6 時 40 分 (WL:58m)
新長田
1,000M
大 阪 湾
大 阪 湾
1.0
1.0
国道 2 号線
図4 板宿低層配水区域の水圧分布(午前6:00,6:40)
<2
図4
2.5
2.0
鷹取 1,000M
JR
鷹取
分 (WL:65m)
板宿低層配水池
板宿低層配水池
18
00
06
12
18
00
06
12
18
00
06
2.5 1板宿
板宿 2.0
1 月 16 日
月 172.5
日
1 月 18 日
板宿 2.0
2.5
2.0
板宿 2.5
2.0
2.0
(時/月、日)
1.5
2.0
1.5
2.0
2.0
1.5
2.0
2.0 月見山
月見山
山陽電鉄
1.0
月見山
山陽電鉄
山陽電鉄
1.0 月見山
須磨
須磨
山陽電鉄
須磨
須磨
2.5
新長田
新長田
2.5
鷹取
鷹取
新長田
鷹取
鷹取
3.0
>3
3.0
JR
JR
>3
3.0
JR
JR
3.0
板宿低層配水区域の水圧分布(午前
6:00,6:40)
図 4 板宿低層配水区域の水圧分布(午前
6:00,6:40)
午前 6 時 40 分 (WL:58m)
1,000M
大 阪 湾市民生活への支障
2.2.7.3
大 阪 湾
水道局本庁(災害対策本部)では、市民から寄せられた苦情電話をメモの形に残しており、その
断水人口当たりの苦情件数
2.2.7.3
市民生活への支障
断水人口当たりの苦情件数
総数は約2,500件になる。また、次項で示す復旧率から断水人口を算出し、苦情件数を断水人口で
市民生活への支障
2.2.7.3
図4
水道局本庁(災害対策本部)では、市民から寄せら
板宿低層配水区域の水圧分布(午前
6:00,6:40)
除した指標は、ある意味で単位断水人口当たりの苦情件数を示しており、市民の不満の強さを表現
水道局本庁(災害対策本部)では、市民から寄せら
れた苦情電話をメモの形に残しており、その総数は約
れた苦情電話をメモの形に残しており、その総数は約
している。
(図 5 )これをみると 4 週間を過ぎるあたりから不満の強さが上昇しており、定性的な
断水の苦情
2,500 件になる。また、次項で示す復旧率から断水人
断水の苦情
2,500 件になる。また、次項で示す復旧率から断水人
断水人口当たりの苦情件数 漏水の苦情
口を算出し、苦情件数を断水人口で除した指標は、あ
民生活への支障
口を算出し、苦情件数を断水人口で除した指標は、あ
漏水の苦情
る意味で単位断水人口当たりの苦情件数を示しており、
本庁(災害対策本部)では、市民から寄せら
る意味で単位断水人口当たりの苦情件数を示しており、
電話をメモの形に残しており、その総数は約
になる。また、次項で示す復旧率から断水人
9 断水の苦情
9
し、苦情件数を断水人口で除した指標は、あ
漏水の苦情
単位断水人口当たりの苦情件数を示しており、
図5
断水人口当たりの苦情件数
図5 断水人口当たりの苦情件数
9
図5 断水人口当たりの苦情件数
図5 断水人口当たりの苦情件数
37
「怒り、悲痛な声」に対応していることがわかる。したがって、とりあえずの復旧は 4 週間以内と
いうのが一つの目安といえよう。
表3 市民の声の時間的推移
市民の声(電話問い合わせの内容)
第 1 週目(1/18--24)
第 2 週目(1/25--31)
第 3・4 週目(2/1--14)
第 5 週目以降(2/15 ~)
詳しい情報がない
いつ水がでるのか?
復旧の見通しは?
給水車はいつどこに来る 避難所に給水タンクを設 水が十分給水されない
置してほしい(量・回数
のか(場所・時間)
を増やして)
我慢も限界だ
水くみがつらい、疲れた
知りたい
いらだち
不安・あせり
怒り・悲痛な声
2.2.8 下水道
2.2.8.1 下水道の役割と被害
下水道の役割としては、①生活環境の改善、公共用水域の水質保全、浸水の防除、下水道資源
(汚泥、ガス等)の活用、などがある。神戸市には下水処理場が 7 ヶ所、ポンプ場が23 ヶ所、汚水
管が3,300km、雨水管が480kmあるが、地震により機能に支障があったのは下水処理場 5 ヶ所、ポ
ンプ場が 6 ヶ所である。管渠については、被害の大きかった中心市街地の汚水管1,270kmを調査
し、約63kmをやり替えた。雨水管は377kmを調査し、約10kmを復旧した。
このうち最も大きな被害を受けたのは、東灘下水処理場であり、運河に隣接して立地しており護
岸などが崩れ機能停止に陥った。
2.2.8.2 生活への支障と対応
下水道の被害によって支障をきたす事象としては、まずトイレが使用できないことが大きな障害
である。トイレの問題は個人の体調の維持に係わり、個人のプライバシーなど極めてデリケートな
問題も含んでいるため、非常に切実な問題である。
災害時のトイレには、仮設トイレ、マンホールトイレ、穴と覆いだけのトイレなどがあるが、で
きるならば災害時に備えて仮設できるよう平素から準備しておくことが望まれる。
また、東灘処理場管内にあっても使用停止はせず、運河を簡易処理場に利用して下水受け入れを
続けた。
2.2.9 ライフラインの物理的被害と市民生活への影響
主要道路の交通量は、震災直後に以前の30%未満になっており、スムーズな救援物資の輸送や日
常生活の支障となっていたと推定できる。どうように鉄道網の寸断も震災前に比べて市民や物資の
移動を阻み、通勤・通学をはじめさまざまな都市活動の支障になった。
ライフラインの被害を、システムを管理する事業者の視点でみると、直接的な施設の物理的被害
とそこからもたらされる機能的な被害に分けることができる。また、物理的な被害については、地
上に見えるものと地下で見えないものの被害があり、地下施設の損傷箇所を発見し修理することは
容易ではなく、復旧が長期化する原因となった。
一般的に地下施設として管路を多用する水道・ガス・下水は、管路そのものが破壊され、継ぎ手
が抜け、地盤の力により管が切断されたためライフラインの機能停止がもたらされた。また、被害
箇所が特定しにくいため復旧の長期化を招いた。一方、構造物(配水池、ガスホルダー等)、電柱、
盤(配電盤、分電盤、制御盤)などの地上施設は目視で被害を確認でき、対応策を短時間にとれる
38
ため復旧見通しを比較的正確に見積もることができる。
表4 主なライフラインの物理的被害と機能的被害
物理的被害
地下施設
機能被害
地上施設
水道
管路破損(配水管、給水管 配水池1ヶ所破損
1757箇所以上)、
トンネル、
ガス
中圧導管(106件)
低圧導管(26,375件)
管路破損(中・低圧管)
通信(NTT)
電力
地上施設の被害は軽微
ケーブル損傷
鉄塔の損壊
事務所(神戸支店)
地中送電線
変電所、架空送電線
神戸市で72万戸断水
85.7万戸で供給停止
3 ~4日通話困難
(ふくそうのため)
公衆電話3500台不能
約260万戸で停電
水道・ガス・電気・電話などのライフラインの機能停止は、市民生活に特に深刻な影響を与え
た。逆に快適な都市生活がこれら都市施設の正常な機能のうえに成り立っていることを改めて認識
させられた。電気・通信は比較的短期に復旧ができたが、水道・ガス・下水は地中に埋設された管
路の被害が大きく、被害箇所がすぐにわからないため復旧は長期化した。
下水については、東灘処理場が機能不全になっていたり、管路が破損している箇所があることが
わかっていたが、使用禁止にしなかったため、各家庭ではプールの水などを用いて汚物を流し続け
ることができた。
鉄道については、当初、大阪~西明石間が不通になったが、線路や架線などの点検が進み、被害
が軽微な区間について運転区間を伸ばしていった。しかし、神戸市中心部は高架橋が落橋するなど
被害が大きく、通り抜けられるまでには長期間を要した。このため神戸市の都心を通過する人々は
非常に苦労することになった。さらに鉄道による貨物輸送量は大きく、神戸市への復旧関連物資の
輸送だけでなく、神戸を通過して関東方面、九州方面へ向かう貨物輸送にも多大な影響があった。
表5 市民の視点でみたライフラインの被害
一次的生活支障
日常生活への影響
水道
飲料・生活・都市活動用水が停止
生命の維持、生活・都市活動の停滞
ガス
暖房、給湯が止まる
風呂・シャワー・炊事
電気
暖房、照明、テレビ等がつかない
近代的生活ができない
電話
情報連絡が途絶
地域の孤立、情報不足
下水
水洗トイレが使用不能
道路
段差による通行不能、破壊された家屋によ (各所で通行止め)
る閉塞
高速道路
物資の輸送が大幅に制限
生活物資が届かない
鉄道(各社)
最初、大阪~西明石間運休
通勤・通学・移動の制約
(水があれば放流はできた)
3 産業の震災被害
阪神・淡路大震災は、神戸の産業面において大きな被害をもたらした。震災による直接被害額
は、市内の資本ストックだけでも、約 7 兆円(推計値)といわれている。これに交通機関の麻痺や
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取引先の被害など、震災の影響に伴う機会損失による被害がさらに加わり、市内だけでなく、日本
全体にも大きな影響を与えた。
市内企業のうち約 4 割が半壊以上の被害にあうなど、製造業から商業・サービス業に至るまで、
市内の殆ど全ての業種が大きな被害を受け、これらは事業所数の減少につながった。
3.1 大企業の被害
鉄鋼・造船といった大企業は、神戸の市街地の臨港部で発展してきたが、その本社等中枢建築物
は倒壊し、生産ラインはストップした。ある製造業の大手事業所での被害額は百億円から数百億円
ともいわれている。これら大企業は、神戸に再建するよりも、他の地域に機能を分散もしくは縮小
するなどして対応した例(神戸製鋼:高炉・加工部門を川崎市に移転、川重:商船建造部門を坂出
市に移転、住友ゴム・日本製粉:神戸工場の閉鎖)も見られた。体力のある大企業のリスク管理面
からすると苦渋の判断であったかもしれない。
3.2 中小企業等の被害
中小企業の被害について、鉄鋼、造船、機械、電機といった重厚長大産業の協力企業として高い
技術力と機動性を持つ機械金属加工業では、機械金属鉱業会加盟の418社中(1994年)の95%が震
災の被害を受けた。ただし、公害問題の影響もあり、1960年代以降、市街地の港の近くから郊外の
工場団地に進出・移転が進んでいたこと、或いは、市街地においても集団化などによる工場アパー
トへの移転が進んでいたことから、業界全体としての被害は軽減されたのではないかと思う。
ケミカルシューズについては、前述したとおり、神戸市の長田区・須磨区を中心に発展してき
た。建物の倒壊による被害は、東灘区・灘区など市域東側での被害が大きかったが、長田区・須磨
リアへの集積は、なんと約 1,600 社にのぼっていた。そして、そこには、石油製品で
区は、震災による火災の影響が最も大きかったエリアである。4,749戸という長田区での全焼した
あるビニール等の資材や、靴の底を付けるためのシンナーが含まれた糊など、可燃物
建物戸数は、全市の68%にのぼる。
が日常的に貯蔵或いは放置されていたので、ケミカルシューズ工場を中心に火災は一
火災被害がここまで大きくなった背景として、長田区・須磨区のまちは、第二次世界大戦の空襲
気にひろがったといわれている。また、大きな火災が同時発生するなど想定していな
で焦土と化し、戦後すぐに行われた区画整理事業で整備されたが、戦災から数十年が経ち、消防車
かったことに加え、当時の神戸は雨が少なく、水不足で川の水もなかったため、消防
も通ることのできない狭苦しい路地に老朽化した木造住宅が密集した住居エリアと、職住近接の都
士が現場に到着しても、水が出ないため消火活動ができないということもあった。
市型地場産業として集積していたケミカルシューズの工場エリアが近接していた。
そして、ケミカルシューズ産業は、その約 8 割が全半壊または全半焼するといった
メーカーや下請けなど関連企業を含めると、長田区南部を中心とする概ね
2 ㎢のエリアへの集積
壊滅的な被害にあった。被害総額は 3,000 億円と発表されている。
写真写真1 ケミカルシューズ産業の被害
1 ケミカルシューズ産業の被害
清酒産業については、神戸の臨海部周辺に発展してきたが、やはり臨港部というこ
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とで地盤が緩かったのか、大企業の製鉄所などほぼ同じエリアで同様に大き被害を受
け、50%以上の企業が全半壊した。昔のような木造の蔵はほとんどなかったので、震
災によって完全に倒壊した酒蔵はなかったが、蔵の内部のタンクなどの倒壊等を含め
は、なんと約1,600社にのぼっていた。そして、そこには、石油製品であるビニール等の資材や、
靴の底を付けるためのシンナーが含まれた糊など、可燃物が日常的に貯蔵或いは放置されていたの
で、ケミカルシューズ工場を中心に火災は一気にひろがったといわれている。また、大きな火災が
同時発生するなど想定していなかったことに加え、当時の神戸は雨が少なく、水不足で川の水もな
かったため、消防士が現場に到着しても、水が出ないため消火活動ができないということもあっ
た。
そして、ケミカルシューズ産業は、その約8割が全半壊または全半焼するといった壊滅的な被害
にあった。被害総額は3,000億円と発表されている。
清酒産業については、神戸の臨海部周辺に発展してきたが、やはり臨港部ということで地盤が緩
かったのか、大企業の製鉄所などほぼ同じエリアで同様に大き被害を受け、50%以上の企業が全半
壊した。昔のような木造の蔵はほとんどなかったので、震災によって完全に倒壊した酒蔵はなかっ
たが、蔵の内部のタンクなどの倒壊等を含めると、すべての酒造メーカーが被害を受けた。
また、市街地の商店街の1/3、市場の約半数がアーケードの倒壊や市場全体の火災といった甚大
な被害を受けた。
写真 2 酒造メーカの被害
また、市街地の商店街の 1/3、市場の約半数がアーケードの倒壊や市場全体の火災と
写真 2 写真2 酒造メーカの被害
酒造メーカの被害
いった甚大な被害を受けた。
また、市街地の商店街の 1/3、市場の約半数がアーケードの倒壊や市場全体の火災と
いった甚大な被害を受けた。
写真3 アーケードの倒壊
写真 3 アーケードの倒壊
その他にも、観光施設、宿泊施設、コンベンション施設といった集客施設や、漁港・
農地などの農漁業施設も多くの被害を受けた。
写真 3 アーケードの倒壊
その他にも、観光施設、宿泊施設、コンベンション施設といった集客施設や、漁港・
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農地などの農漁業施設も多くの被害を受けた。
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写真4 観光施設の被害
写真 4 観光施設の被害
の他にも、観光施設、宿泊施設、コンベンション施設といった集客施設や、漁港・農地などの農
3.3 社会資本の被害による産業への影響
漁業施設も多くの被害を受けた。
さて、震災直後から、日本のみならず世界のマスコミ各社は報道合戦を繰り広げた。
東京など関東圏でもテレビ・新聞のトップニュースは震災という状況が何日か続いた。
3.3 社会資本の被害による産業への影響
これらの報道により、首都である東京などに効果的に被災情報が伝わるという利点は
さて、震災直後から、日本のみならず世界のマスコミ各社は報道合戦を繰り広げた。東京など関
あったが、特に、テレビでは、どこかショー的に震災被害の悲惨な部分だけが注目さ
東圏でもテレビ・新聞のトップニュースは震災という状況が何日か続いた。これらの報道により、
れ、まるで神戸全体が壊滅してしまったかのように報道されていたように感じる。
こういった風評被害や、
「神戸には放火魔がいる。」
、
「神戸に窃盗団が出た。」といっ
首都である東京などに効果的に被災情報が伝わるという利点はあったが、特に、テレビでは、どこ
た心ないデマにより、神戸は怖いところだというイメージが生まれてしまった。震災
かショー的に震災被害の悲惨な部分だけが注目され、まるで神戸全体が壊滅してしまったかのよう
による大きな影響がなかった地域や、
「こんなときだからこそ」と元気にがんばってい
に報道されていたように感じる。
る人・企業はたくさん神戸にいたのに、神戸を訪れようと考える人は少なく、ホテル
こういった風評被害や、「神戸には放火魔がいる。」、「神戸に窃盗団が出た。」といった心ないデ
や旅館などにもキャンセルが相次ぎ、しばらくの間は、観光面で大打撃を受けた。
マにより、神戸は怖いところだというイメージが生まれてしまった。震災による大きな影響がな
また、交通被害の影響も深刻であった。神戸は陸路・海路ともに非常に至便なとこ
かった地域や、「こんなときだからこそ」と元気にがんばっている人・企業はたくさん神戸にいた
ろだが、阪神高速神戸線及び湾岸線等の高架道路の倒壊(神戸線〜96 年9月、湾岸線
のに、神戸を訪れようと考える人は少なく、ホテルや旅館などにもキャンセルが相次ぎ、しばらく
〜95 年7月)、市内各所での道路の陥没や歩道橋など構造物の落下、建築物倒壊等に
よる道路遮蔽、橋梁の被害による海上都市(人工島)へのアクセス寸断(神戸大橋〜
の間は、観光面で大打撃を受けた。
96 年7月、六甲大橋〜95 年9月、ポートライナー〜95 年7月・六甲ライナー〜95 年
また、交通被害の影響も深刻であった。神戸は陸路・海路ともに非常に至便なところだが、阪神
8月)など自動車交通面や、市街地に流入していた鉄道の寸断(JR〜95 年4月・阪急
高速神戸線及び湾岸線等の高架道路の倒壊(神戸線~
96年 9 月、湾岸線~ 95年 7 月)、市内各所で
〜95 年 6 月・阪神〜95 年6月)など交通ネットワークが麻痺していた状態が長期にわ
の道路の陥没や歩道橋など構造物の落下、建築物倒壊等による道路遮蔽、橋梁の被害による海上都
たった。また、港湾幹線道路の寸断やコンテナバース・岸壁等が殆ど使えなくなるな
市(人工島)へのアクセス寸断(神戸大橋~ 96年 7 月、六甲大橋~ 95年 9 月、ポートライナー~
95年 7 月・六甲ライナー~ 95年 8 月)など自動車交通面や、市街地に流入していた鉄道の寸断
4 6 月)など交通ネットワークが麻痺していた状態
(JR ~ 95年 4 月・阪急~ 95年 6 月・阪神~ 95年
が長期にわたった。また、港湾幹線道路の寸断やコンテナバース・岸壁等が殆ど使えなくなるなど
港湾施設等も大きな被害を受けた。これにより、神戸における物流が機能しなくなり、アパレルな
ど卸売を行っていた企業や、真珠など輸出を行っていた企業に大きな影響を与えた。
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ど港湾施設等も大きな被害を受けた。これにより、神戸における物流が機能しなくな
ど港湾施設等も大きな被害を受けた。これにより、神戸における物流が機能しなくな
り、アパレルなど卸売を行っていた企業や、真珠など輸出を行っていた企業に大きな
り、アパレルなど卸売を行っていた企業や、真珠など輸出を行っていた企業に大きな
影響を与えた。
影響を与えた。
写真5 高速道路の倒壊
5 高速道路の倒壊
写真 5 高速道路の倒壊写真
写真 6 コンテナバース・岸壁の被害
写真6 コンテナバース・岸壁の被害
写真 6 コンテナバース・岸壁の被害
このように、震災直後の神戸の経済活動は一時的にストップしたといっても過言ではない。特
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に、建物・設備等の被害が経営の存続に直結する中小企業においては、様々な支援策が行われたに
も関わらず、非常に厳しい状況に追い込まれた。震災が発生した1995年から 2 年間で、神戸市に本
社を置く企業の倒産件数は336件あったが、このうち震災が直接の引き金となって倒産したものは、
その26%・87件にも上る。また、それら87件のうち従業員10名以下の中小企業が占める割合は77%
となっている。
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