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一般演題(ポスター)

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一般演題(ポスター)
Abstracts of The 107th Annual Meeting of the Japanese Association of Anatomists
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
一般演題(ポスター)
(Poster Session)
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-073
舌下神経と舌神経の交通枝 −ヒトとニホンザルとの比較
H-076
新しい頭部離断術式の提唱
○緒方 重光、峰 和治、田松 裕一、島田 和幸
(鹿児島大学 歯学部 口腔解剖学2)
○児玉 公道、小泉 政啓、川井 克司、本間 智、時吉 聡介、熊谷 芳宏
(熊本大学 医学部 解剖学第一講座)
舌筋の運動を支配する舌下神経と舌前方2/3の知覚を支配する舌神経の間には交
通枝が存在するが,これまで詳細な観察はほとんど行われていない。そこで今
回,ヒトとニホンザルについて両神経の交通枝に関する基本的な所見を採取し,
比較・分析を行った。材料は日本人成人5体1 0側とニホンザル5体1 0側の舌で,
実体顕微鏡を用いて水浸下で舌尖まで神経の剖出を行った。
その結果,ヒトとニホンザルともに,通常容易に観察される舌骨舌筋の表層
(舌外交通枝)以外に,舌深部のオトガイ舌筋中(舌体交通枝)と舌尖部(舌尖
交通枝)で明瞭な交通が見られた。ヒトでは,外舌筋(小角舌筋,舌骨舌筋,
茎突舌筋)に分布する数本の外側枝が舌下神経の本幹から分岐した後に,舌神
経との舌外交通枝を形成していた。ニホンザルでは,舌下神経本幹から直接出
る外側枝が1∼2本と少なく,舌外交通枝の途中から舌骨舌筋と茎突舌筋に分
布する多くの筋枝が出ていた。ニホンザルの舌下神経と舌神経には,舌根部で
本幹から分岐するかなり太い枝があり,それらが舌内で神経叢状の構造をつく
っていた。しかし,肉眼的に観察される全体的な神経分布は,ヒトに比べて疎
であった。
解剖学実習の術式は、通常の手術術式のレベルと異なり実習用に考案された術
式である。それは解剖学を修めるということにおいてのみ許されるもので、術
式には一層の注意が払われなければならない。その中でも頭部を頚部から外す
作業には、特に厳密な術式と指導が求められる。頭部を後頭顆と環椎との間で
分離する方法は、西・浦「実習人体解剖図譜」によるものであリ伝統的な術式
である。河西「解剖学アトラス」の術式は基本的にこれである。一方寺田・藤
田「解剖実習の手びき」では、山田が金沢大学で開発した環椎と軸椎との間で
分離する術式が採用されている。更に山田は術式の改定を進め「実習解剖学」
に詳しく述べられている。しかし最近各大学での術式を散見すると、第4頚椎
で軟部組織諸共切断するという安直な術式を実施したり、解剖学上の観察目的
とは関係なく作業手順だけが先行している場合が見られる。今回、山田の術式
にさらに改良を加えてたのでその実際を紹介する。術式の原則は、鰓弓成分は
頭部に、体壁成分は胴体(頚部)に残すことにある。この理念は西・浦、山田
と引き継がれたものであり、術式の中に解剖学的事項が貫かれている点で、極
めて優れたものである。その上で、軟部組織の切断を最少限に押さえ、椎弓の
除去も環椎だけにして脊髄は切り離さず胴体に残す。また環軸関節が直視下で
剖出できる。作業手順とその必然性について述べる。
H-074
手掌の神経の手根部における通過様式および末梢指縁分布
○1川島 友和、2 佐藤 健次、1佐藤 二美、1佐々木 宏
(1東京女子医科大学 医学部 解剖学教室、
2
東京医科歯科大学 大学院 保健衛生学研究科 形態・生体情報解析学)
H-077
Production of polyclonal antibodies against perivascular
macrophage in the rat brain microvessels
○Tomoko Nakazawa、Shunichi Morikawa、Megumi Nishikawa、
Eizo Aikawa、Taichi Ezaki
(Department of Anatomy and Developmental Biology, Medical School, Tokyo
Women's Medical University, Tokyo, Japan)
手掌の神経は、多くの成書を参照しても、屈筋支帯に対して正中神経は深層、
尺骨神経は浅層を通過すると記載され、その固有掌側指神経は、正中神経が母
指外側縁から第4指内側縁、尺骨神経が第4指外側縁から小指外側縁と記載さ
れ、この層序・末梢分布に関して変異はないように思われる。 Kleinert(1971)
が尺骨神経管症候群という用語を提唱し、正中神経と同様に尺骨神経にも扼害
が存在することを述べたが、Olaveら (1999)のように尺骨神経の層的走行異常例
が報告されるばかりである。 そこでわれわれは、屈筋支帯ならびにこれに付
着する小指球筋群に注目して、これらに対する尺骨神経ならびに正中神経の通
過様式および末梢指縁分布に関して57体101側を対象に調査を行った。 その結
果、正中神経は全例で屈筋支帯の深層を走行していた。尺骨神経は通常の屈筋
支帯の浅層を走行するものは84例であり、その指縁分布によって5型に分類でき
た。一方、屈筋支帯や小指球筋群の一部を引っ掛けるものが、1 7例(1 6 . 8%)
に観察され、それほど稀でない。これらの例での腕神経叢の形態、正中-尺骨神
経吻合(いわゆるMartin-Gruber 吻合)などの有無の解析を行ったが有意差は
ない。したがって、正中神経と異なり尺骨神経は、腕神経叢などの近位部、上
腕・前腕などの経過とは無関係に末梢指縁分布および手根部の層序に関して
様々なvariationをもつといえよう。
We have reported that isolated and cultured perivascular macrophages (FGP
cells) may reflect those in vivo(Nakazawa et al, Neurosci Lett 2001). In this
study, we produced polyclonal antibodies by immunizing rabbits with those
isolated FGP cells. The immune sera were checked every 2 weeks after the
first immunization for their titer against FGP cells. The immune sera were
used for the immuno-staining in the brain tissue sections of Wistar rats. To
distinguish FGP cells from endothelial cells and smooth muscle cells of
microvessels, we double-stained the anti- FGP cell antibodies with either
FITC conjugated tomato lectin (Vector Lab.) (Morikawa, et al, Am J Pathol., in
press) or Cy3 conjugated anti-alfa smooth muscle actin (Sigma Aldrich). The
polyclonal antibodies only reacted with FGP cells but not with endothelial
cells and smooth muscle cells, although their specific reaction titer was
relatively low. It would be very helpful to use such specific antibodies in
studies on the immunobiological significance of FGP cells both in vivo and in
vitro.
H-075
Sympathetic cardiac nerves entering the aortic porta
of humans
H-078
Hapten-Carrier抗原によってマウス膝窩リンパ節に誘発される
反応性濾胞形成と免疫応答
○1Shigenori Tanaka、1Shuangquin Yi、
Takashi Shimokawa、2Toshio Nakatani
(1Department of Anatomy and Neuroembryology, University of Kanazawa,
Kanazawa, Japan、2School of Health Science, Faculty of Medicine, Kanazawa
University, Japan)
1
Cervical Cardiac Nerves Entering the Arotic Porta in HumansS TANAKA1, S
YI1, T SHIMOKAWA 1, T NAKATANI 2 Dept Anat Neuroembryo 1, Sch Health
Sci2, Univ Kanazawa Univ, Kanazawa, KanazawaIn the present study, 8 in total
cadavers were used. The uppermost cervical portion of the sympathetic trunk
was found to emit a number of nerve branches, which coursed directly
downward as far as the lowermost portion of the common carotid artery. Some
of these nerves continued their downward course until the aortic arch wall,
where they ended almost entirely. A large number of cardiac nerves arose
from the middle, inferior cervical and vertebrate ganglia, and also from the
interganglionic portion of the sympathetic trunk. Some of these cardiac nerves
communicated with those of the vagus nerve. Around the subclavian artery,
they formed a perivascular nerve plexus, with which thoracic cardiac nerves
originating from the uppermost thoracic portion of the sympathetic trunk
communicated. From this plexus, a number of caridac nerves arose and entered
finally the aortic porta of the heart.
○堀江 香恵子、永田 英二、平本 正樹、星 素
(日本大学 医学部 解剖学講座)
本研究の目的は、抗原刺激後の所属リンパ節における反応性濾胞形成の機能的
意義を解析することである。実験は、マウス足底に抗原としてハプテンーキャ
リア(ジニトロフェニルーヘモシアニン、DNPーKLH)を投与後、膝窩リンパ
節を経時的に採取し、濾胞新生の過程と関連させながら特異抗体産生細胞の動
態、濾胞内特異抗体局在を免疫組織化学的に追跡した。また8週後に再度抗原
刺激を加えた場合における新生濾胞の態度と血清特異抗体量の変動についても
検討した。抗原投与5日から7日にかけて髄索では特異抗体産生細胞が増加し
てくるが、既存濾胞内では胚中心が発達し、7日以降中等度に特異抗体が局在
した。一方、この時期リンパ節には濾胞が形成されてくるが、新生濾胞内の抗
体局在は微弱であった。再度の抗原刺激では、5日後殆どの濾胞が強い抗体局
在を示し特異抗体価が上昇した。別の実験群として、アルミナ吸着DNP-KLHま
たはアルミナ吸着 phytohemaaglutininを投与し、8週後 DNP-KLHで刺激した。
前者では、初回にDNP-KLHを投与するよりも多数の濾胞が新生され、再度の刺
激によって特異抗体の局在や抗体価も増大した。後者では、別の抗原によって
形成された多くの新生濾胞も既存濾胞と同様に、DNP-KLH投与後7日で殆どの
濾胞内に特異抗体を中等度に局在させた。以上のことから、抗原刺激による反
応性濾胞形成は免疫応答をより効果的に行う場を提供するものと考えられた。
J.A.A.
61
解剖学雑誌 第77巻 抄録号 2002年3 月
H-079
マウスリンパ節高内皮細静脈およびリンパ球表面に発現する
ICAM-1およびLFA-1αの局在
○中島 民治、林 春樹、菊田 彰夫
(産業医科大学 医学部 第1解剖学講座)
リンパ球のリンパ節へのホーミングにおいてはリンパ球はリンパ節高内皮細静
脈( H E V )表面でのローリングに続いて強固な接着段階に入るといわれている。
その際の強固な接着段階でのリンパ球のHEV高内皮細胞 (HEC)への接着機構を
研究するためにインテグリンLFA-1αおよびそのリガンドであるICAM-1の局在
を検討した。
【材料と方法】ICR系雌性マウスの腸骨下リンパ節の300μm厚の切
片を固定後、抗CD11aおよび抗CD54モノクローナル抗体、ビオチン化二次抗体
を用いて順次処理後、ストレプトアビジン結合コロイド金( 3 5 n m )で標識した。
標識金は二次電子像と反射電子像によって確認した。
【結果と考察】HEC表面に
はICAM-1が均一に分布していたが、HECに接着したリンパ球上にはLFA-1αの
局在を示すコロイド金が見られ、その分布はリンパ球の細胞体の細胞表面上の
みならず、微絨毛にも分布していた。HEV上でローリング後、強固な接着段階
に入ったリンパ球は HEC表面に細胞体によって接着するだけでなく、微絨毛に
よる接着も重要な働きを有していることが示唆された。
H-080
マウス腸骨リンパ節および腰リンパ節における
ホーミングリガンドの発現
○林 春樹、中島 民治、菊田 彰夫
(産業医科大学 医学部 第一解剖学講座)
マウスのリンパ節の高内皮細静脈( H E V )には末梢リンパ節アドレッシン
(PNAd)が発現しリンパ球のL-selectinと相互作用することでホーミングを仲介
す る . 一 方 , 粘 膜 付 随 リ ン パ 組 織 の パ イ エ ル 板 の H E V と粘膜固有層には
MAdCAM-1が発現しα4β7インテグリンと相互作用する.また,パイエル板
の排導リンパ節である腸間膜リンパ節には PNAdとMAdCAM-1の両者が発現す
ることが明らかにされてきている.本研究は生殖器粘膜を含む骨盤内臓,尾部,
殿部,後肢の排導リンパ節である腸骨リンパ節及びそのリンパを受け後腹膜領
域の排導リンパ節である腰リンパ節におけるホーミングリガンドの発現局在を
免疫組織化学的に調べた.ICR雌性マウスの腸骨リンパ節,腰リンパ節,顔面
リンパ節,上腕リンパ節,パイエル板および腸間膜リンパ節の凍結切片を作製
し,抗PNAd抗体(MECA79)
,抗GlyCAM-1抗体(CAMO2),抗MAdCAM-1抗
体(MECA367)を用いた免疫組織染色を行った.腸骨リンパ節と腰リンパ節の
全てのHEVはPNAd およびGlyCAM-1を発現していたが,MAdCAM-1の発現は
認められなかった.腸骨リンパ節は生殖器粘膜からの排導リンパ節でもあるが,
ホーミングリガンドの発現様式は,粘膜組織がリンパの上流域にあり粘膜アド
レッシンのMAdCAM-1とPNAdを発現する腸間膜リンパ節とは異なっていた.
H-081
H-082
Pseudopod of megakaryocyte in senescent mouse spleen
○Kiyoshi Shimizu、Jinzo Yamada
(Department of Anatomy, Tokyo Medical University, Tokyo, Japan)
Since the contour of megakaryocyte in the spleen is obscured by many
myeloid cells, it is unknown whether or not the pseudopod of megakaryocyte,
which is a region of platelet production, exists in the extrasinus. In the
senescent spleen, the number of lymphoid cells decreased and the
erythrocytopoesis stops. To determine whether or not the pseudopod exists in
the extrasinus, we observed the senescent spleen. The animals used were
male, 30 months of age, of the IVCS strain. The spleen was fixed by perfusion
with Karnovsky fixative. Tissue blocks were postfixed with osmic acid,
embedded in Epon. Tissue sections were stained with uranium and lead,
viewed with an electron microscopy. The pseudopod of megakaryocyte
existed in the extrasinus as well as in the intrasinus. Th budding from the
residual megakaryocyte was observed. Any cytoplasmic dissociation was not
observed. These results indicated that the platelet production occurred in the
extrasinus as well as in the intrasinus. According to the open theory, the
platelets produced in the extrasinus may be conveyed to the intrasinus by
virtue of the blood flow.
H-083
Ultrastructure and localization of T lymphocytes and B
lymphocytes in the vaginal tonsils of the laboratory shrew
(Suncus murinus)
○Kazuyoshi Sakai、Genzoh Isomura
(Fujita Health University College)
We reported the Acta Anatomica Nipponica, 76 (2001), that the laboratory
shrew had tonsil-like structures near the vagina bilaterally. We made an
ultrastructural study and immunocytological study to identify the localization
of T- and B- lymphocytes in the vaginal tonsils of the laboratory shrew.The
vaginal tonsils were found near the entrance of the vagina bilaterally, consist
of epithelial layer and a lymph nodule. The epithelial layer was composed of
three to five layers, where lymphocytes, plasma cells, and neutrophils were
invading into, forming unit of a few invading cells. The cytoplasm of plasma
cell was filled with well-developed rough endoplasmic reticulum. Tlymphocytes were scattered in the vaginal tonsils, but did not form thymus
dependent area in the vaginal tonsils. B-cells existed in most area of the
lymph nodule. These results suggest that the vaginal tonsils have a function
as local immune response.
H-084
胸腺におけるICAM-1、LFA-1、MHC-II、TCRの
三次元的微細局在
免疫マウスリンパ組織の高内皮細静脈における
接着分子発現様式の変化
○久保田 英、崔 麗、荻原 直子、城倉 浩平、佐々木 克典
(信州大学 医学部 解剖学第一講座)
○東家 一雄、木村 通郎
(関西鍼灸短期大学 解剖学教室)
【目的】胸腺上皮細胞とリンパ球との相互作用にはMHCクラス以外に様々な細
胞接着分子が関与している。今回、胸腺におけるI C A M - 1、L F A - 1、M H C - I I、
TCRの発現およびそれらの関係を免疫SEM法を用い三次元的に解析した。【材
料と方法】マウスを麻酔後低温(4℃)のUW液にて還流し、胸腺を摘出した。胸
腺の切断面を低温のUW液で洗浄後、U W液で1 0倍に希釈した一次抗体 ( a n t i ICAM-1、anti-LFA-1、anti-MHC-II、anti-TCR)と一時間反応させた。再び洗浄
し、次に同じように希釈した20nmの金粒子をもつ二次抗体と反応させ、固定し
た。臨界点乾燥装置で乾燥後、オスミウムプラズマコーターで3nmの厚さでコ
ーティングし、走査電子顕微鏡(JSM-6000F)を用い反射電子法で観察した。また、
同一試料をanti-ICAM-1(10nmの金粒子)、 anti-MHC-II(20nmの金粒子)に反応さ
せたもの、anti-LFA-1(20nmの金粒子)、 anti-TCR(10nmの金粒子)に反応させた
ものを上記と同様の方法で試料作製した。【結果】ICAM-1、MHC-IIはともに胸
腺上皮細胞には認められたが、リンパ球上には認められなかった。一方、LFA1はリンパ球上に点在して認められ、胸腺上皮細胞には認められなかった。
T C Rは、現段階ではリンパ球上に少数しか認められていない。二重染色では
M H C - I Iが多く認められた領域にはI C A M -1も多く発現していることがわかっ
た。
【結論】胸腺のICAM-1、LFA-1、MHC、TCRの発現の三次元的な観察に免
疫SEM法が有用であった。
末梢リンパ節(PLN)とパイエル板(PP)へのリンパ球再循環現象は、高内
皮細静脈(HEV)内皮上に発現する接着分子の接着特異性とリンパ組織実質に
発現するケモカインの遊走活性により調節されている。通常、成熟マウスPLN
のHEV内皮( PLN-HEV)には非粘膜型接着分子GlyCAM-1が、PPのHEV内皮
(PP-HEV)には粘膜型接着分子MAdCAM-1がそれぞれ恒常的かつ選択的に発
現しており、それら接着分子発現様式の特性が非粘膜型あるいは粘膜型リンパ
球再循環経路の維持、調節に重要と考えられている。しかしながら、マウスを
皮下免疫後に二次応答を惹起すると、所属リンパ節を含む PLN-HEVの一部にお
いて通常は殆ど発現されていないMAdCAM-1が陽性反応を示すことが解った。
組織切片上では同一HEV内において MAdCAM-1陽性内皮と陰性内皮がモザイ
ク状に観察され、それら内皮細胞間に h e t e r o g e n e i t yが認められた。さらに、
MAdCAM-1陽性内皮では細胞膜上で全周性に発現が観察され、通常PP-HEVで
認められる内腔面への発現極性を欠いていた。一方、同刺激個体PP-HEVでは、
通常は観察されないG l y C A M - 1が一部の内皮上で発現していることが解った。
これらの所見から、免疫応答時にはPLN、PP双方でHEV内皮接着分子の発現様
式が変化し、非粘膜型と粘膜型リンパ組織間を部分的に交差する特有のリンパ
球再循環経路が形成される可能性が示唆された。
62
J.A.A.
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-085
H-088
Rat carotid bodies in hypocapnic-, isocapnic,
and hypercapnic hypoxia
腎間質における抗原提示細胞と線維芽細胞の動態
○1 細山田 康恵、2 栗原 秀剛、2 坂井 建雄
(1千葉県立衛生短期大学 栄養学科、2順天堂大学 医学部 第一解剖学)
【目的】ラット腎間質に存在する抗原提示細胞と線維芽細胞が、糖尿病・高コレ
ステロール食において示す変化を検討する。【材料および方法】8週齢SD系雄
ラットの腎臓を灌流固定後、低温脱水法により試料を作成し、腎間質の細胞を
光学および電子顕微鏡にて観察した。また、抗原提示細胞の樹状細胞とマクロ
ファージに関して、特異抗体を用いた免疫染色を行い、健常ラットと高コレス
テロール食投与ラットにおける差異を検討した。【結果および考察】健常な腎間
質には、免疫機能を有する樹状細胞と線維芽細胞が観察された。樹状細胞は、
線維芽細胞に比べ不規則な短い突起が見られ、突起内は明るく見えた。線維芽
細胞の突起が基底膜に接する部位では、アクチンフィラメントが基底膜に平行
に走行していた。高コレステロール食投与ラットでは、脂肪滴をもった細胞が
間質に増えることが電顕的に観察された。免疫染色において、単球/マクロフ
ァージを認識するED1陽性の細胞が増加し、MHC class II分子を認識するOX6
陽性の細胞はほぼ消失していたことから、樹状細胞がマクロファージに置き換
わったことが示唆される。
H-086
Immunolocalization of experimental murine AA amyloidosis.
○1 Tatsumi Kusakabe、2 Hideki Matsuda、1 Kiyoshi Shiroishi、
Tadashi Kawakami、1 Toshifumi Takenaka、4 Yoshiaki Hayashida
(1Department of Sport and Medical Science, Kokushikan University, Tokyo, Japan、
2
Department of Otorhinolaryngology, Yokohama City University School of Medicine,
Yokohama, Japan、3Department of Physiology, Kitasato University School of Medicine,
Sagamihara, Japan、4Department of Systems Physiology, University of Occupational
and Environmental Health, Kitakyushu, Japan)
3
The carotid body of the chronically hypoxic rat was found to be enlarged
several folds, although the rate of vascular enlargement in the hypercapnic
hypoxic carotid body was smaller than in the isocapnic- and hypocapnic
hypoxic carotid bodies. The distribution and abundance of substance P (SP)-,
calcitonin gene-related peptide (CGRP)-, vasoactive intestinal polypeptide
(VIP)-, and neuropeptide Y (NPY)-immunoreactive nerve fibers was compared
between the hypocapnic-, isocapnic, and hypercapnic hypoxic rat carotid
bodies. In chronically hypocapnic- and isocapnic hypoxic carotid bodies, the
density per unit area of parenchymal VIP-immunoreactive fibers were
significantly increased, and the density of NPY fibers were unchanged. While
in chronically hypercapnic hypoxia, the density of parenchymal NPY fibers
were significantly increased, and the density of VIP fibers were unchanged.
These results suggest that different levels of arterial CO2 tension change the
peptidergic innervation in the carotid body during chronically hypoxic
exposure.
H-089
Abnormalities in pericytes on blood vessels and
endothelial sprouts in mouse tumors
○1Mie Kuroiwa、2 Kimiko Aoki、 3 Naotaka Izumiyama
(1Department of Oral Histology, School of Dentistry, Showa University, Tokyo,
Japan、2Department of Clinical and Molecular
Pharmacokinetics/Pharmacodynamics, School of Pharmaceutical Sciences,
Showa University, Tokyo, Japan、3Department of Clinical Pathology, Tokyo
Metropolitan Institute of Gerontology, Tokyo, Japan)
○1Shunichi Morikawa、2 Peter Baluk、
2
Donald M. McDonald、1 Taichi Ezaki
(1Department of Anatomy and Developmental Biology, Tokyo Women's
Medical University、2Cardiovascular Research Institute, University of
California, San Francisco, USA)
AA amyloidosis which is one of the systemic amyloidosis is characterized by
the deposition of amyloid fibrils in the extracellular matrix of various organs.
The components of amyloid fibril are made up of amyloid P component,
chondroitin sulfate proteoglycan, heparan sulfate proteoglycan and AA
amyloid protein. Relation between the components of amyloid fibril and the
cells associated with amyloidgenesis is not clearly understood. After
administration of an amyloid-inducing agent to mice, the production of
amyloid was examined by carrying out immunohistological study.
ICR female mice were given an intraperitoneal injection of an emulsion of M.
Butyricum in Freund complete adjuvant. Serum amyloid A (SAA) was
measured. Praffin and frozen sections of the spleen were immunostained with
anti-components of amyloid fibrils and macrophages and observed with a
fluorescent microscope. Subsequently, the ultrastructures of tissues were
examined with an electron microscope.
The amyloidosis was induced in the marginal zone in spleen. SAA levels and
macrophage numbers of spleen increased. The macrophages were associated
with the production of components of AA amyloid fibrils.
Endothelium of tumor vessels has well documented alterations, but it is less
clear whether pericytes on these vessels are abnormal or even absent. Here
we report that alpha-smooth muscle actin (SMA) and desmin-immunoreactive
pericytes were present on > 97% of blood vessels viewed by confocal
microscopy in 100-micron thick sections of three different spontaneous or
implanted mouse tumors. These cells had multiple abnormalities: Unlike
pericytes on capillaries in normal pancreatic islets, which expressed desmin
but not SMA, pericytes on capillary-size vessels in insulinomas in RIP-Tag2
transgenic mice expressed both desmin and SMA. Furthermore, pericytes in
RIP-Tag2 tumors, as well as those in MCa-IV breast carcinomas and Lewis
lung carcinomas, had an abnormally loose association with endothelium and
extended cytoplasmic processes deep into the tumor tissue. Pericytes also
covered 73-92% of endothelial sprouts in the vessels of three tumors
examined. Indeed, pericyte sleeves were significantly longer than the sprouts
themselves in all tumor types. We conclude that pericytes are present on
most tumor vessels but have multiple abnormalities, and may be involved in
sprout growth.
H-087
The dual spiromuscularis coexisting in both the hepatic
and the portal venous systems of catfish liver
H-090
VMH破壊による胃のグレリン産生・分泌への影響と形態観察
○1 Somjintana Tourtip、2 Koumkrit Pisetpaisan、1 Somluk Asuvapongpatana、
3
Natthiya Sakulsak、3 Ittipon Poungpet、
4
Takayoshi Miyaki、1,5 Wichai Ekataksin
(1Liver Research Unit Department of Anatomy, Faculty of Science, Mahidol University,
Bangkok, Thailand、2 Department of Anatomy, Faculty of Veterinary Medicine,
Kasetsart University, Bangkok, Thailand、3Department of Anatomy, Faculty of
Medicine, Naresuan University, Pitsanuloke, Thailand、4 Department of Anatomy,
Juntendo University School of Medicine, Tokyo, Japan 、5Department of Anatomy,
Tokyo Medical and Dental University School of Medicine, Tokyo, Japan)
Despite its undetermined role, the presence of "throttle" musculature in hepatic vein
has been repeatedly reported in various species, e.g. dog, seal, raccoon, turtle, and
carp. We found an unusual coexistence of spiromuscularis along both afferent and
efferent systems in livers of a catfish (200-500 g), Clarius macrocephalus, a freshwater fish strongly tolerant to air exposure. The hepatic vein displayed a helical
arrangement of smooth muscles with a pitch of 30-150μm and a muscular tooth of
10-50μm. The portal vein exhibited a less distinct spiral, with a 20-120μm pitch and
1 0 - 4 0μm tooth. While the portal were continuous with porta hepatis which
possessed a hepatopancreatic tissue, the hepatic did not, but continued into vena
cava. Histological profiles were misleading as the biliary and arterial structures
accompanied both systems alike. Although it is not known how such structural
peculiarities contribute to life, we disagree against Elias and Sherrick (1969) who
stated the spiral muscles "represent a hazard" to the species. (Aided by Thailand
Research Fund BRG4380002, and National Science and Technology Development
Agency RBD-TGIST Fellowship Program).
○1櫻井 純子、1 井上 修二、2 中里 雅光、2 伊達 紫、
3
寒川 賢二、 4 舟橋 久幸、4 塩田 清二
(1共立女子大学 栄養生理学、2宮崎医大 第三内科学、
3
国立循環器病センター研究所、4昭和大学医学部 解剖学)
【目的】 胃から分泌されるグレリンは空腹時に血中で増加する。満腹中枢であ
る腹内側核(VMH)破壊により、グレリンがどのような変化をするのかを明ら
かにする目的で、VMH破壊による胃壁グレリンの産生・分泌の動態を機能形態
学的に調べた。【方法】SD系雌ラットを用い、VMH破壊ラットとSham群を
作成した。胃組織を2%PFAで灌流固定を行い、浸漬固定後に、20%及び30%
sucrose/PBS溶液中に浸漬して組織片を急速に凍結させ、クリオスタットで凍
結切片を作成した。胃の各部位をグレリン抗体で免疫染色し、免疫反応陽性部
位や染色強度の変化について観察した。【結果】VMH破壊後の胃壁におけるグ
レリン産生・分泌をノーザンブロット法及びラジオイムノアッセイ法を用いて
調べたところ、グレリンのmRNA量の増加及びタンパク量の減少が認められた。
V M H破壊後に腸管粘膜上皮の肥厚や膵細胞の増殖が観察されることから,
VMHはグレリンを介して、この過程に何らかの関与をしている可能性が示唆さ
れる。現在、VMH破壊後の胃壁におけるグレリン産生細胞の形態学的変化をin
situ hybridization法および免疫組織化学法を用いて検索中である。
J.A.A.
63
解剖学雑誌 第77巻 抄録号 2002年3 月
H-091
マウス顎下腺の形態形成過程での腺腔形成に先がけ観察される
終末芽中心での細胞分裂活性の上昇
H-094
ラット胃底腺領域におけるグルココルチコイド受容体, HSP 90及び
HSP 70の局在に関する免疫組織化学的検討
○松浦 幸子、小澤 英浩
(松本歯科大学 歯学部 口腔解剖学第二講座)
○冨樫 弘一、小澤 一史、西 真弓、河田 光博
(京都府立医科大学 第一解剖学教室)
唾液腺の発生は口腔粘膜上皮からの上皮索の陥入に始まり上皮索が分岐し分枝
の先端から終末芽terminal budが形成されこれが最終的に終末部(腺房)となる。
終末部の中心に腺腔が開口することが外分泌腺の形態形成にとっては最終の仕
上げとなる。上皮索の分枝過程branchingでの上皮間葉相互作用による調節系の
詳細が明らかになりつつある一方、上皮集団である終末芽の中心に起こる腺腔
形成の機構に関しては不明な点が多い。我々は外分泌腺での腺腔形成の機構を
明らかにする目的でマウス顎下腺の形態形成過程の詳細を検索している。胎生
14日(E14d)−17dのICRマウスから経時的に顎下腺を採り出し細胞増殖、アポ
トーシスの動態を検索した。E14−15dで終末芽が急速に形成されE15−16dに腺
腔が出現してくる。この期間を通じて上皮実質にアポトーシスを示唆する知見
はTUNEL法あるいは電顕観察によっても得られず、終末芽中心での細胞死によ
る腺腔出現の可能性は否定された。これとは対照的に腺腔出現の直前、終末芽
の中心部に周辺すなわち間葉に面する部位に比べ高頻度に分裂像が観察された。
分裂活性の上昇はE15dの腺腔が形成されない終末芽中心で顕著であり、E16dの
腺腔が既に形成された終末芽においては腺腔に突出する形で分裂像が観察され
た。上皮塊中心での分裂活性の上昇が、直接その後の腺腔形成の引き金になる
のか、その調節系を含めさらに解析中である。
【目的】Heat shock protein (HSP)はストレスによって誘導される一方、非スト
レス条件下でも分子シャペロンとして様々な細胞内シグナル伝達に関与してい
る。グルココルチコイド受容体はリガンド非存在下ではHSP90やHSP70などの
分子と結合し細胞質中に存在するとされているが、消化管細胞での分布は不明
な点が多い。今回我々はラット胃底腺領域における、GR、HSP90、HSP70の局
在様式を検討、考察した。【方法】9週齢雄ウィスター系ラットを 4%パラホルム
アルデヒドを含む固定液にて還流固定後、胃底腺領域を摘出、凍結切片を作製
し、抗GR抗体、抗HSP90抗体、抗HSP70抗体を組み合わせ、二重免疫蛍光染色
を施行し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。【結果】 GR免疫反応は腺頚部か
ら腺底部に分布する細胞の核に存在し、特に形態的に壁細胞と思われる細胞で
明瞭に観察された。一方、 HSP90及びHSP70の免疫反応はGR陽性を示す細胞の
細胞質にほぼ共発現する傾向を示し、GR同様、壁細胞と思われる細胞でより強
い染色性を示す傾向が得られた。【考察】非ストレス条件下ラット胃底腺領域に
おいてGR、HSP90、HSP70が同一細胞、特に壁細胞内に共存することが示唆さ
れた。細胞防御に働くとされるHSPと潰瘍増悪因子であるグルココルチコイド
の受容体が酸分泌細胞に共存することはストレス性胃潰瘍を考える上で興味深
い所見と思われた。
H-092
ラット唾液腺筋上皮細胞の共焦点レーザー顕微鏡観察
○盛口 敬一、猿渡 れい、大野 紀和
(愛知学院大学 歯学部 解剖学第一講座)
【目的】ラットの三大唾液腺についてALPase活性検出後、反射モードによる共
焦点レーザー顕微鏡にて筋上皮細胞を観察した。
【方法】ラットの舌下腺、顎下腺、耳下腺を摘出し、2%グルタルアルデヒドに
よる6 0分の固定を行った。次にくえん酸鉛法(20mM β- g l y c e r o p h o s p h a t e、
3.9mM MgSO 4、2mM lead citrate、Tris buffer pH 8.5) によるALPase活性検出
(30分)後、Carl Zeiss LSM 410 共焦点レーザー顕微鏡、反射モードにより観察
した。
【結果】舌下腺の筋上皮細胞はやや大型の細胞でその突起は分泌部の腺上皮細胞
をおおい、それに比べ顎下腺の筋上皮細胞は細い突起を有して腺上皮細胞をお
おっていた。一方耳下腺では活性は認められず、したがって筋上皮細胞は存在
しなかった。
【考察】以上の結果よりラット三大唾液腺の筋上皮細胞の形態が異なることが共
焦点レーザー顕微鏡反射モードにおいても明らかとなった。同様の観察は一般
的に走査型電子顕微鏡にて行っているが、簡便な操作手順により観察できる共
焦点レーザー顕微鏡は、今後筋上皮細胞の機能形態を調べる際の有用な方法と
なると考えられる。
H-093
ラット耳下腺の発育に伴って生じる筋上皮細胞の分布の
変動について
○池田 利恵、相山 誉夫、辻村 俊也、岡本 圭司
(日本歯科大学 歯学部 解剖学第2講座)
【目的】唾液腺を構成する腺房や介在部導管の周囲には,筋上皮細胞が存在して
いる.筋上皮細胞の分布密度は分泌物の粘性が高い腺ほど発達する傾向がある
ため,漿液腺である成熟した耳下腺では,筋上皮細胞は介在部導管周囲には相
当数認められるものの,腺房周囲ではきわめて少い.生後早期のラット耳下腺
に出現する筋上皮細胞の細胞増殖活性と細胞死の有無を明らかにすることによ
り,耳下腺の発達に伴って筋上皮細胞の分布がどのように変化していくかを検
討した.【材料と方法】生後 0日から12週齢のWistar系ラットの耳下腺を使用し
た.ラットを 2群に分け,一方にはBrdUを腹腔内投与した後,抗アクチンモノ
クローナル抗体と抗BrdUモノクローナル抗体を用いて二重染色を施した.他方
にはTUNEL染色を施した.【結果と考察】筋上皮細胞は,生後 3週までは腺房
と介在部導管の周囲に多数認められたが,その後徐々に減少し,成熟した耳下
腺では腺房の周囲にはほとんど認められなくなった. BrdU陽性を示す筋上皮細
胞は比較的少なく,TUNEL陽性を示す筋上皮細胞はほとんど認められなかった.
以上の結果から,耳下腺の発達に伴って腺房周囲の筋上皮細胞が減少していく
傾向が明らかになったが,これは筋上皮細胞が細胞死を起こしたためではなく,
細胞増殖活性が腺房細胞や導管の上皮細胞と比べて低いために生じた可能性が
示唆された.
64
J.A.A.
H-095
マウスの顎下腺とその周囲結合組織に分布する毛細血管の
三次元構造
○1大澤 弘一、2 相山 誉夫、3 内田 稔
(1日本歯科大学 大学院歯学研究科 口腔外科学講座、2日本歯科大学 歯学部 解剖学第2講座、3日本歯科大学 歯学部 総合診療科2)
目的:顎下腺の主要血管の血流を遮断すると腺房細胞の大多数が消失する。し
かし、腺体辺縁部の細胞は消失せずに残る。この現象は腺体辺縁部への栄養供
給は栄養血管以外からの経路が考えられる。そこで、今回、顎下腺への血液供
給を担う主要血管とその周囲のいわゆる被膜の結合組織に分布する血管との関
連を調べる目的で血管構築を立体的に観察した。方法:実験材料は生後6∼8
週ICRマウスを使用した。シリコンラバー(MICROFIL)を注入した群とレジ
ン(MERCOX)を注入した群を作成した。ネンブタール麻酔下にて開胸し、心
臓より 0.9%生理食塩水を環流し血液を除去した。その後、前者はシリコンラバ
ーを注入し、顎下腺及びその周囲組織を含め摘出後、通法に従って固定、アル
コール脱水、サリチル酸メチルに浸漬し、透視標本を作製、実体顕微鏡による
観察を行った。後者は、レジン(MERCOX)を注入した後、10%ホルマリン固定、
8NHCl処理、OSO 4で後固定、その後通法に従ってアルコール脱水、臨界点乾燥、
SEM観察を行った。結果:顎下腺小葉辺縁部では毛細血管はループ状を呈し、
腺房を包み込むように走行していた。一方、顎下腺周囲結合組織の毛細血管は
主に顎下腺の長軸及び斜め方向に並行している様子が観察できた。両者の間に
は交通はみられなかった。したがって腺体辺縁部に残存する腺房細胞の栄養供
給は主として周囲結合組織毛細血管からの浸透によるものと考えられた。
H-096
Organogenesis of small intestine in vitro, especially effects
of tenascin on the reorganization of the small intestinal cells
from fetus mouse
○1 Eiko Murata、1 Yoshiko Asami、1 Hiroyuki Suda、1 Katsuhiro Yabe、
1
Keiko Fujita、 2 Masumi Akita、1 Katsuji Kaneko
(1Department of Anatomy, Saitama Medical School, Saitama, Japan、2Division
of Morphological Science, Biomedical Research Center, Saitama Medical
School, Saitama, Japan)
When the small intestine of fetus mouse is suspended into cellular units and
cultured at high density, an organoid is reformed. Namely, a villus like
structure is formed on the outer stratum of the cellular mass and a layer of
smooth muscle in the underlaying stratum of epithelium. Epithelial cells may
be converted into the epithelium on the outer stratum of the cellular mass or
into follicles inside of the cellular mass. In our previous studies we reported
that collagen fiber plays an important role in the reorganization as well as in
the maintenance of the small intestine. In the present study we confirmed
that tenascin was not manifested in 1day after the initiation of culture, while a
strongly positive reaction of this substance was observed in a part
immediately under the epithelial cells on the outer stratum as well as in the
site immediately under the epithelial cells of follicles inside of certain cellular
masses. Since no positive reaction of this substance was also observed in
certain sites surrounding follicles inside of the cellular mass, it was suggested
that the manifestation of tenascin is closely related with the differentiation of
epithelial cells.
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-097
胃・壁細胞における非ヘム鉄の蓄積
H-100
Immunohistochemical localization of taurine in the rat stomach
○正村 和彦、目黒 玲子
(弘前大学 医学部 医学科 解剖学第一講座)
○Nei Ma、Xiaohui Ding、Reiji Semba
(The Second Department of Anatomy, Mie University School of Medicine, Japan)
細胞と組織に含まれる鉄はヘム鉄と非ヘム鉄に区別される。非ヘム鉄は二価ま
たは三価の形を取って種々の分子と緩く結合している。このため、これらの鉄
はキレートされ得る。二価の非ヘム鉄はタンブル法で、三価の非ヘム鉄はパー
ル法で組織化学的に証明できる。これらの組織化学を灌流法で行うと結果は切
片で行うよりはるかに良い。さらにDABによる反応増強は前記の方法のみでは
検知できない鉄の存在を明瞭に視覚化する。この方法で、ネコの胃の壁細胞に
非ヘム鉄(二価と三価)が蓄積されていることが示された。
Immunohistochemical localization of taurine in the rat stomachNing Ma,
Xiaohui Ding, Reiji Semba(Dept. Anatomy, Mie Univ. Sch. Med) Recent
studies have shown that taurine may function for osmoregulation, membrane
stabilization, detoxification, antioxidation and as an inhibitory
neurotransmitter or neuromodulator. In the stomach, taurine has been
implicated in protective effects on gastric mucosa from lesions. However, its
localization in this organ has not been previously analyzed. The aim of this
study was to characterize distribution of taurine in the stomach, and to define
taurine-containing cells in this organ by immunohistochemical methods. An
immunohistochemical study using affinity purified antibodies against taurine
reveled that taurine was localized in parietal cells of the fundic glands. Some
of nerve cell bodies and fibers in the myenteric plexuses were also labeled.
Moreover, many stromal cells including fibroblasts, vascular endothelial cells
and macrophages were also stained. Results of the present study imply that
taurine may play important roles in the gastric secretion and motility.
H-098
Serotonin like immunoreactive cells in the main excretory ducts
of rat submandibular glands
H-101
Expression of glutathione S-transferaseα and multidrug
resistance protein 2 in bisphenol A-treated rat liver
○Kazuyoshi Higashi、Hideko Tsuzuki、Hiroyuki Hayashi、
Akira Kawata、Osamu Takahashi
(Department of Oral Histology, KANAGAWA Dental College, Yosuka,
Kanagawa, Japan)
Introduction: Epithelial cells of the main excretory duct (MED) of the rat
submandibular gland were immunohistochemically investigated. Materials and
methods: Ten adult male rats were anaesthetized with pentobarbital and
were perfused with 4 % paraformaldehyde fluid. MEDs were removed, and
frozen in liquid nitrogen. Cryosections were double-immunostained with
antibodies against PGP9.5 and chromogranin( A+B ) or serotonin, were
observed with confocal laser scanning microscope. Results and discussion:
PGP9.5 and chromogranin or serotonin immunoreactive cells were scattered
in the epithelium of MED. Intense immunoreactivity of PGP9.5 was observed
in their entire cytoplasm. Immunoreactive products for choromogranin and
serotonin were localized in the central area of cytoplasm. From these
observation, serotonin-immunoreactive cells were confirmed in the epithelium
of MED of rat submandibular gland. These cells in the MED may play
important roles in modification of the saliva.
H-099
マウス、ニワトリおよびカエルの消化器における
キチン分解酵素の組織発現 ○藤本 和歌子、岩永 敏彦
(北海道大学獣医学研究科 解剖学教室)
mammalian acidic chitinase(以下、AMCase)は2001年に、マウスとヒトで同
定された新規キチナーゼである。AMCaseのノザンブロット解析は進められて
きたが、組織学的研究はされていない。本研究ではAMCaseの組織発現をマウ
ス、ニワトリおよびウシガエルにおいてin situ hybridization法と免疫組織化学
によって明らかにした。 AMCaseは基本的には唾液腺、胃、肝臓の3箇所で
産生されていた。マウスでは耳下腺と腺胃、ニワトリでは腺胃と肝臓、カエル
では胃の腺部に発現していた。発現細胞は胃では主細胞の一部、唾液腺では腺
組織の終末部、肝臓では肝細胞と同定された。発生段階における発現を調べる
と、マウスでは離乳期に間に合うように、一方、ニワトリでは孵卵7日目の腺
胃形成過程においてすでに発現していた。また、本研究によりニワトリとカエ
ルのAMCaseのアミノ酸配列はマウス、ヒトのそれと高いホモロジー(約80%)
をもつことが確認できた。 胃と唾液腺の AMCaseのはキチンの消化ばかりで
なく、殺菌にも深く関わっていることが示唆される。ニワトリにおける発生初
期の発現は腺胃の分化にも何らかの影響を与えていると思われる。肝臓での
AMCaseは血中に分泌されているが、その働きは不明である。
○Hideaki Kudo、Yoshiaki Doi、Tomoko Nishino、Sunao Fujimoto
(Department of Anatomy, University of Occupational and Environmental
Health, School of Medicine, Kitakyushu, Japan)
Metabolic processes of bisphenol A (BPA) as an endocrine disrupters by
glutathione (GSH) is uncertain. GSH S-transferase (GST) is the phase II
xenobiotic metabolizing enzyme that catalyzes conjugation between various
ligands and GSH. Multidrug resistance protein (MRP) is the phase III
xenobiotic metabolizing pump that extrudes GSH-conjugates from cells. We
investigated expressions of GST α isoform (GSTα) and MRP type 2 isoform
(MRP2) in BPA-treated rat livers by means of both immunocytochemistry and
in situ hybridization. Six-week-old male rats were treated with an
intraperitoneal injection of BPA (20 or 40 mg/kg body weight/day) for 4 days.
GSTα-immunoreactivities (IR) were preferentially seen in hepatocytes of zone
III (perivenous zone), and MRP2-IR were seen on the hepatic cell membrane
facing to bile canaliculi of zone III in BPA-treated and control rat livers,
respectively. These IRs significantly increased in high dose (40mg/kg/day)
BPA-treated rats, followed by enhanced expressions of GSTα mRNA, in the
above hepatocytes. These findings indicated that BPA-treatment induced the
enhancement of GSTα and MRP2 expressions in hepatocytes of zone III in
rat livers.
H-102
Influence of bleach to the ultrastructure of human hair
○1,2 Takehito Imai、 2 Hideto Kawamura、
2
Masaru Kimura、2 Takashi Nakano
(1Fundamental Research Laboratory, General Research Institute, Hoyu Co.,
LTD., Aichi, Japan、2The First Department of Anatomy, Aichi Medical
University, Aichi, Japan)
Recently, as a part of fashion, the opportunity of chemical treatments of
hair, such as bleach as well as dyeing and permanent wave, is increasing. In
order to know the influence of chemical treatments, we studied the
ultrastructural changes of human hair by bleach with some commercially
available bleaching agents.
Untreated female hair was incubated for 40 min. at 30℃ in the ammoniac
bleach agent and a persulfate bleach. The hair was fixed with or without 1%
buffered osmium tetraoxide. Then the hair was processed for
electronmicroscopy.
There was no remarkable ultrastructural change of hair by treatment with
the ammoniac bleach agent in comparison with untreated hair. On the other
hand, the number of cuticular cell layer was decreased and the density of Alayer in the cuticular cell cytoplasm was extremely increased by the
treatment with persulfate bleach. The density of exocuticle was a little higher
than that of endocuticle. Furthermore, in the cortex, an ultrastructural change
suggesting streaming out of the melanin dye stuff was observed. These
changes appeared as the consequence of the treatment with persulfate bleach.
J.A.A.
65
解剖学雑誌 第77巻 抄録号 2002年3 月
H-103
アガマトカゲの味蕾の微細構造
○横須賀 宏之、石山 巳喜夫、吉江 紀夫
(日本歯科大学 新潟歯学部 解剖学第2講座)
【目的】化学受容器のひとつである味蕾は、無顎綱から哺乳綱まで、すべての脊
椎動物に存在する。そして、その形や構成細胞の種類に、動物綱の間で一定の
変異が見られる。今回、味蕾の比較形態学の一環として、アガマトカゲ(爬虫
綱、有鱗目、トカゲ亜目)舌の味蕾の微細構造を調べたので報告する。
【方法】エーテル吸入麻酔下で、2.5%グルタールアルデヒドと2%パラホルムア
ルデヒドの混合液により灌流固定し、舌を摘出した。試料をオスミウム酸で後
固定し、通法に従い脱水、エポキシ樹脂包埋後、薄切切片を作製し透過電顕で
観察した。
【結果と考察】味蕾は舌背の粘膜上皮内に散在し、洋梨形を呈する。透過電顕観
察により、味蕾の構成細胞は1型、2型、3型および4型細胞の4種類に分類さ
れた。1型細胞は暗調で、頂部細胞質に大型(直径約200-500nm)の顆粒を有
していた。2型細胞は明調で、神経線維と広い範囲で接近していた。3型細胞
はやや暗調で、細胞質内に有芯小胞(直径約80-110nm)を有し、神経とシナプ
スを形成していた。4型細胞は味蕾の基底部に位置する小型の細胞で、未分化
な構造を呈した。以上の所見より、本種の味蕾は哺乳類のそれにきわめて類似
することが明らかにされた。
H-104
H-106
ラット舌有郭乳頭味蕾および上皮におけるHsp27の神経変性・
再生過程における発現
○1山本 美由紀、2 天野 修、3 島田 真弓、1井関 尚一
(1金沢大学 医学系研究科 組織発達構築学分野、2明海大学 歯学部 口腔解剖学第二講座、3金沢大学 大学院医学系研究科 歯科口腔外科学分野)
Heat Shock Protein (Hsp)27 は低分子量ストレスタンパクの一種で、分子シャ
ペロンとして働き細胞の防御や修復、また増殖や分化に関わるとされている。
我々は末梢神経系のニューロンにHsp27が生理的条件下で発現していることを
報告した。また、重層扁平上皮はその基底層を除きHsp27を発現していること
が知られている。その重層扁平上皮から神経の誘導により分化する味蕾の、正
常および神経変性・再生過程におけるHsp27の発現を検索した。実験動物には
8週令雄ウィスター系ラットを使用した。正常動物並びに、両側の舌咽神経を
切断し1日から 12週間生存させた動物を固定した。舌の凍結切片を作製し、抗
Hsp27(Stress Gen社)抗体を用いて免疫組織化学的に検索した。正常ラットでは
強いHsp27免疫活性が有郭乳頭頂部および周辺部の重層扁平上皮の全層にわた
り認められた。有郭乳頭の輪状溝に面する上皮には弱い免疫活性が認められた。
味蕾ではごく一部の細胞に強い免疫活性が認められた。重層扁平上皮における
Hsp27の発現は神経切断後の変性・再生過程で変化は認められなかった。味蕾
においては神経再生後の味蕾再生過程で多数の免疫陽性細胞が出現し、再生が
完了するとその数は正常時のレベルに戻った。これらの結果から再生味蕾細胞
の増殖、分化に Hsp27が関わっていることが示唆される。一方、重層扁平上皮
におけるHsp27の発現は神経支配と無関係であると思われる。
H-107
Metallothioneins in rat taste bud
トノサマガエルの成長にともなう味蕾の数の変化
○1 Hiraoki Kanazawa、1 Chiyo Kawaura、1Mitsuhiko Homma、
2
Isao Hozumi、2 Zenjirou Matsuyama、2 Takasi Inutsuka、
3
Youko Uchida、4Akira Naganuma
(1Department of Radiological Technology, School of Health Sciences, Nagoya
University, Nagoya, Japan、2Department of Geriatrics and Neurology, Gifu
University School of Medicine, Gifu, Japan、3Department of Neuropathology, Tokyo
Metropolitan Institute of Gerontology, Tokyo, Japan、4Laboratory of Molecular and
Biochemical Toxicology, Graduate School of Pharamaceutical Sciences & Faculty of
Pharamaceutical Sciences, Tohoku University, Sendai, Japan)
○1 熊倉 雅彦、2 吉江 紀夫、1小林 寛
(1日本歯科大学 新潟歯学部 第一解剖、2日本歯科大学 新潟歯学部 第二解剖)
Metallothioneins (MTs) are proteins that bind transition metal ions such as
Cd2+ , Zn 2+ and Cu + and which have been implicated in the metabolism of
essential metals (Zn2+ and Cu +). MT-1, 2 are widely distributed in various
tissues and cell types, MT-3 is present mostly in CNS, MT-4 is epithelium of
skin, tongue and upper digestive canal. And Zn2+ plays important role in taste
transduction. We investigate the localization of MTs in taste buds of rats
using monoclonal antibodies. In these using antibodies, anti-MT-4 antibody
that was made by Naganuma et al. is a first one for MT-4. Rats were perfused
intracardially with 4% paraformaldehyde buffered with 0.1M phosphate. After
their tongues removed were cut to make frozen sections using a cryostat,
which were examined by the ABC immunohistochemical staining method.
The reaction products of MT-3 and MT-4 were observed in some cells of taste
buds. These findings suggested that the relation of taste transduction and
Zn2+.
H-105
【方法】舌を切り出した後に舌背を平らにした状態で Karnovsky 液で固定して、
写真撮影を行い、画像を取り込んで NIH Image によって舌の面積を測定した。
味蕾の数の計測は、定法にしたがって舌の走査電顕観察用試料を作成し、写真
撮影した後、写真上で個体別に味蕾の数を数えた。なお、各個体は麻酔した後、
体長を測定し、年齢査定はそれぞれの指の骨のパラフィン切片を作成して、ヘ
マトキシリン-エオジン染色を行い、骨の年輪を数えた。また、外形による性別
の判断が困難な性成熟前の個体は、生殖腺により雌雄の同定を行った。
【結果】ほとんどの個体で雌雄ともに体長と舌面積との間に正の相関関係が認め
られ、また、味蕾の数については、舌の面積が広くなるにつれて味蕾の数も増
加するという結果が得られた。また、舌面積の増大にともなう味蕾の分布は、
舌周辺部に密集し、中央部は分散するという傾向が認められた。
H-108
Clarification of radiation-induced taste disorders
2. The effect of fractionated irradiation.
○Chiyo Kawaura、Hiroaki Kanazawa、Mitsuhiko Homma
(Department of Radiological Technology, School of Health Sciences, Nagoya
University, Nagoya, Japan)
It's considerable problems that radiation-induced taste disorders after
irradiation on head and neck region. 3, 4, 5, 6, 7, 8 days after 40 Gy irradiation
and 2, 8, 15, 32 days after 4 Gy-10 times irradiation, rats were perfused
intracardially with 10% formalin and made hematoxylin eosin staining sections
for light microscopy or ultra-thin sections for transmission electron
microscopy. In three major salivary glands, acinus atrophy was observed
submandibular and parotid glands. These changes were increased day by day
after 40 Gy irradiation, but after 4 Gy-10 times, changes were observed only
at 2 and 32 days. At circumvallate papillae and taste buds, changes began 5
day (40 Gy). For the first, epithelium came thinner and bacteria propagated.
Next neutrophils invaded through epithelium. But in these changes, taste
buds kept their shapes. At 8 day (40 Gy), outlines of taste buds disappear. On
the course of 4 Gy-10 times, only at 8 day, epithelium thinned, at the other
times, almost no change. These findings indicated that radiation-induced taste
disorders were caused by salivary loss and sequentially morphological
changes in taste buds.
66
野外で採集したトノサマガエル Rana nigromaculata を材料に用い、カエル
の年齢および性別による味蕾の数の変化を調べたところ、味蕾の数はカエルの
年齢、性別を問わず、個体の体長と正の相関があるという結果が得られた(第
106回日本解剖学会で発表)。今回は、さらにパラメーターに個体別の舌の面積
を加えて、味蕾の数と舌の面積との関係を検討した。
J.A.A.
スナネズミ網膜における免疫染色による細胞の局在
○1今田 英己、2磯村 源蔵
(1藤田保健衛生大学 医学部 生理学第2教室、
2
藤田保健衛生大学 短期大学 解剖学教室)
スナネズミは網膜中心動脈の走行に特異的な特徴をもつ動物である。成獣スナ
ネズミの網膜で、 SP,5−HT,TH,GABAの4種類の抗体を用い、免疫組織化学
的に比較解析した。10週齢以上のスナネズミを使い、1%グルタールアルデ
ヒドを含む4%パラホルムアルデヒド液で灌流固定し、眼球摘出後同液で1日浸
漬固定した。その後スクロースに浸漬し、8∼16μmの凍結切片を作成し、
免疫染色(ABC法)と走査型電子顕微鏡で陽性部位の局在を比較観察した。視
神経線維,神経細胞の細胞,内網状層はSP,5ーHT,GABAで陽性を示し、特に神経
線維層・視神経細胞では強く陽性を示した。また、内顆粒層の一部の細胞体と
内網状層に伸びるその突起がTHで強く陽性を示し、GABAでは内顆粒層の一部
の細胞体と内網状層、そして外顆粒層の一部の細胞体の周りが陽性を示してい
た。
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-109
嗅細胞の分化成熟についての形態的解析
○野村 智幸、橋都 浩哉、牛木 辰男
(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 顕微解剖学分野)
【目的】嗅細胞は嗅上皮内で絶えず更新されることが知られている。しかし、嗅
細胞の分化成熟に関する形態変化については不明の点も多い。そこで本研究で
は、走査電子顕微鏡と光顕免疫組織化学を用いて嗅上皮の分化成熟についての
微細構造変化を明らかにする。【材料と方法】材料には主にマウスとラットを用
いた。灌流固定した鼻粘膜を摘出後、摘出標本の一部は、エポン包埋後に準超
薄切片を作製し、トルイジンブルー染色標本を光顕で観察した。他の摘出標本
は、KOH法による結合組織消化除去法と微小解剖を併用し、嗅上皮の鼻腔面、
側面あるいは基底面を露出し、走査電顕で観察した。【結果と考察】上皮側面の
走査電顕観察では、形態的特徴から嗅細胞、支持細胞、基底細胞、嗅腺の導管
細胞を区別することができた。基底部に位置する嗅細胞は、鼻腔面に達しない
短い樹状突起をもつものや、細く蛇行する樹状突起をもつものが多く、未熟な
嗅細胞と考えられた。一方、成熟した嗅細胞は上皮の比較的上方に細胞体を持
ち、樹状突起は太くまっすぐ鼻腔へ伸びて、よく発達した嗅小胞と嗅小毛を形
成していた。以上の所見を光顕および免疫組織化学による所見とも比較検討し、
嗅細胞の分化成熟の過程を明らかにする。
H-110
Histochemical change of mouse skin in the tissue remodeling
after moxibustion treatment.
○1,3 Yuki Menjo、 2 Miya Kobayashi、1,4Atsuhiro Hayashi、
1,5
Hiroaki Nakayama、1 Kunihiko Kobayashi
(1Department of Physical Therapy, Nagoya University School of Health
Sciences、2Dept Functional Histology, Nagoya Univ Graduate Sch Med、
3
Sukoyaka Acupuncture and Moxibustion Clinic、4Hayashi Judo Practice
Clinic、5Nakayama Judo Practice Clinic)
Moxibustion (MX) induces changes of cellular as well as interstitial
connective tissue profiles of the dermis. Mouse skin was treated with various
amounts of MX, and degeneration-regeneration process of the skin was traced
histochemically.
Anesthetized mice (ddy, 8w old, F, av. wt. 36.6 g) were depilated at the trunk
skin and were treated with MX (0.5−5 mg, cone or column). Skin fragments
were taken just after a treatment, 1 day after and just after consecutive
treatments with 1 day interval. They were fixed with Karnovsky's fixative
and sections were stained with hematoxylin and eosin, AZAN, silver or
toluidine blue.
With AZAN staining, collagen fibers were stained blue in the control
specimen while dermis was stained red just after MX. The red portion still
remained in the surface 1 day after. With silver staining, dermal connective
tissue was stained dark gray just after MX but the affected area returned to
deep red after 1 day. Toluidine blue staining showed the increase of
metachromatic mast cells with MX. By consecutive treatment or increasing
amount of MX, affected area were expanded and regeneration prolonged.
H-111
ラットメルケル細胞におけるmGluRの免疫組織化学的局在
H-112
ケニアボンゴの舌乳頭と結合織芯の微細構造に関する
比較形態学的研究
○小林 寛、熊倉 雅彦、吉村 建、鄭 金華
(日本歯科大学 新潟歯学部 解剖1)
偶蹄目ウシ科のケニアボンゴの舌背に分布する舌乳頭とそれらの結合織芯の構
造を検索し、これまでに調べた数種の偶蹄目のものと比較した。材料と方法ケ
ニアボンゴ(Tragelaphus eurycerus)雌の舌を使用した。死後10%ホルマリンで
固定し、組織の小片を採取し光顕用試料と走査電顕用試料を作製した。走査電
顕用にはHCl法で上皮層を結合組織から剥離し、さらにタンニン酸とOsO4にて
再固定し、凍結乾燥後、白金パラジウムを蒸着しS-800型走査電顕で観察した。
所見と考察ケニアボンゴの舌は筋肉に富み全体として棒状をなし、舌背の後半
部にはよく発達した舌隆起部(臼歯間隆起部)が存在し、そのうえに大型の円
錐乳頭が分布する。舌隆起部の後方の両外側にそって大型の有郭乳頭が数個ず
つ並ぶ。舌隆起部上の大型円錐乳頭は特に太くて長く、これらに混在して舌前
方部のものよりはかなり大型の茸状乳頭が舌隆起部の後半部に多く分布する。
この様に大型茸状乳頭が舌隆起部の上にまで多数分布することはケニアボンゴ
に特徴的である。糸状乳頭の外形は細長く先端の尖った主突起とその両側にあ
る短い数本の副突起からなる。茸状乳頭の頂上には少数ながら味蕾がみられ、
有郭乳頭は巾の広い輪状郭で囲まれているのが特徴的である。これまでに調べ
た偶蹄目の仲間のニホンカモシカ、プロングホーン、オオツノヒツジ、ウシな
どと比較した。
H-113
ラットの歯周組織におけるオキシタラン線維の発生
○井上 孝二、河合 桐男、佐藤 哲二
(鶴見大学 歯学部 解剖学第2講座)
【目的】本研究ではラット胎生期から成獣の歯周組織におけるオキシタラン線維
の分布様式について検討する.【材料と方法】ラット胎生期(歯胚形成開始期)
から成獣における各ステージの歯小嚢・歯根膜にみられるオキシタラン線維の
経時的変化を調べた.全身麻酔下で試料を摘出し、Zanbonin固定液にて浸漬固
定を行った.生後 14日以降の動物については灌流固定を行った.EDTA液にて
脱灰後、パラフィンに包埋し、6μmの薄切標本を作製した後、オキシタラン線
維・弾性線維・膠原線維の各線維染色を施した.【結果・考察】生後の切歯では
オキシタラン線維が舌側に多く分布し、主に歯軸と平行に走向していた.オキ
シタラン線維は舌側に比べ、唇側では著しい減少傾向を示した.臼歯の歯根部
ではオキシタラン線維は歯軸方向に平行な走向を示し、歯軸に対しほぼ垂直方
向に走る膠原線維とほぼ垂直に交叉していた.弾性線維染色を施した標本で弾
性線維はほとんど観察されなかった.生後1日と6日の臼歯歯胚の歯小嚢の領
域では、オキシタラン線維は歯胚を囲むように分布している線維と歯胚と歯槽
骨間を結ぶ走向を示す線維と2つのタイプがみられた.本研究では歯胚の形成
過程におけるオキシタラン線維の分布と機能歯におけるオキシタラン線維の分
布を比較することで、歯胚の発生過程におけるオキシタラン線維の変化につい
て考察する.
H-114
数種の動物の象牙質における石灰化球と石灰化機序との関連
○立花 民子、遠藤 真、名和 橙黄雄
(岩手医科大学 歯学部 口腔解剖学第二講座)
○三島 弘幸、岩佐 由香、山添 友子、横田 ルミ、小澤 幸重
(日本大学 松戸歯学部 第2解剖学教室)
[目的]メルケル細胞には三量体G蛋白のうちGqアイソフォームが局在するこ
とは既に報告した。今回は Gq蛋白と共役する膜受容体として代謝型グルタミン
酸受容体(mGluR)の免疫組織化学的局在について検討した結果を報告する。[方
法と結果]4% PFAまたはZamboni液で灌流固定したラットからWhisker pad
および口蓋を採取し、凍結またはパラフィン包埋切片とした。口蓋は一部は粘
膜のみを単離して凍結切片とし、他は10%EDTAで1週間低温・超音波脱灰を施
して凍結またはパラフィン切片とした。一次抗体には市販の mGluR1a,
mGluR2/3およびmGluR5を使用し、酵素抗体法、および蛍光抗体法にて染色し
た。Whisker padの洞毛頚部に分布するメルケル細胞と口蓋粘膜に分布する同
様細胞は、いづれも試料の調整法に関わりなくmGluR5抗体に対し陽性反応を示
し、他の2種の抗体には陰性であった。グルタミン酸はGqを介してメルケル細
胞の顆粒放出を調節している可能性が考えられる。なお、mGluR5様免疫反応の
強度は固定法により若干の相違が見られたが、脱灰による影響はなかった。同
じ条件で調整した試料で比較した場合、口蓋粘膜のメルケル細胞は常に洞毛の
ものより弱い反応強度を示した。これは、口蓋粘膜のメルケル細胞の多くが洞
毛のものとは異なり神経支配を欠くdendritic typeであるという事実と関連する
かも知れない。
【目的】本研究は,無根歯であるラットやウサギの切歯および有根歯であるヒト,
ウシ,オポッサムの歯,さらに多生歯性のワニの歯を用いて,象牙質の石灰化
球を比較し,石灰化球の形態や組成と石灰化様式との関連性について検討した。
【方法】用いた材料はラットやウサギの切歯およびヒト,ウシ,オポッサム,ワ
ニの歯である。歯は 10%中性ホルマリンにて固定後,歯科用デンタルエンジン
にて歯を切断し,5% NaClOにて脱有機処理を行い,石灰化球をSEMにて観察
し、さらにEDS分析を行った。
【成績・結論】歯冠部において,球状の石灰化球が認められ,ヒトやウシでは632μmの直径であった。オポッサムでは15-22μmの直径であった。ワニの石灰
化球は 4-10μmの直径であった。歯根部の根尖側では,石灰化球は認められず,
石灰化したコラーゲン線維が観察された。ヒトやオポッサムにおいて,石灰化
球のCa/Pでは歯冠部と歯根部で有意の差が見出された。球状石灰化は歯冠象牙
質でみられ,板状石灰化は歯根象牙質でみられる。石灰化球の有無や化学組成
の違いは石灰化様式と関連すると考えられる。セメント質が覆う象牙質におい
て,無根歯であるラットやウサギと有根歯であるヒトやウシにおいて,石灰化
球の形態や大きさが異なっていた。この差は歯の形成機構と関連があり,象牙
芽細胞の活性やその周囲の微小環境の違いによると推定される
J.A.A.
67
解剖学雑誌 第77巻 抄録号 2002年3 月
H-115
H-118
マイクロCTを用いた大臼歯髄室床に関する研究
○長門 里美、小野寺 政雄、藤村 朗、野坂 洋一郎
(岩手医科大学 歯学部 口腔解剖学第一講座)
【目的】最近、マイクロフォーカスエックス線CTを用いることで、簡便で非破
壊的に歯の内部構造を詳細に把握することか可能となり、歯髄の形態に関して
も多数の報告がなされている。しかし、この装置を用いた側枝に関する報告は
少ない。今回われわれは、マイクロCTを用いて大臼歯根分岐部において数本の
髄室床側枝の観察を試み成功したので報告する。【材料および方法】試料は、岩
手医科大学歯学部口腔解剖学第一講座所蔵の大臼歯を用いた。これらの歯はマ
イクロフォーカスエックス線CTの照射条件を、電圧値65kV・電流値300μAで
エックス線撮影を行い、20μm厚の二次元スライス像を入手する。その後、画
像処理ソフトにて歯髄腔・髄室床側枝を描出し、三次元再構築ソフトによるボ
リュームレンダリング法にて歯の外形および内景、特に側枝の三次元再構築像
を作製する。また、三次元的アニメーションを作製することであらゆる角度か
ら観察することが可能であった。【結果】大臼歯髄室床には40∼100μm径の数
本の側枝を認めたが、一本も認められないものも存在した。また、歯根表面に
孔が認められ象牙質内を歯髄腔に向かうもののうち、稀に盲端で終わっている
ものも認められた。これらの側枝の出現率を髄室床の部位別に報告する。
H-116
硬骨魚類軟質類と全骨類のエナメロイドの石灰化様式
○笹川 一郎
(日本歯科大学 新潟歯学部 解剖学第一講座)
【目的】硬骨魚類全骨類ガーパイクでは歯胚エナメル器にエナメル網状層と中間
層があり、軟質類ポリプテルスではエナメル網状層が認められ、真骨類の歯胚
構成とは大きく異なっている。この違いがエナメロイドの石灰化様式と関係す
るのかどうかを検討した結果を報告する。【方法】硬骨魚類軟質類ポリプテルス
と全骨類ガーパイクの各歯胚の組織構造を光顕と透過電顕で観察した。【結果】
1)エナメロイド基質形成期前期では基質は多量の膠原線維とその間にある細
網状の構造で満たされる。基質小胞が多数存在する。2)基質形成期後期では
基質小胞が少なくなり、かわって高電子密度の線維状構造が出現する。この線
維状構造は基質小胞に由来すると考えられる。3)最初に出現する結晶は基質
小胞内および線維状構造上に存在するので、線維状構造は基質小胞と同様に結
晶形成の場と考えられる。4)石灰化期にはエナメロイドー象牙質境から始ま
った膠原線維性石灰化はエナメロイド全体に広まる。同時に有機基質の分解と
脱却も始まる。5)以上の経過はガーパイクとポリプテルスでほぼ同様であっ
た。
【総括】全骨類ガーパイクと軟質類ポリプテルスのエナメロイド石灰化様式
の前半部分は真骨類魚類のそれと同様であった。エナメロイド基質に出現する
高電子密度の線維状構造は真骨類でも報告がある。
H-117
Three-dimensional(3D) architecture linking microfilaments to the
podosomes of isolated osteoclasts
○Toshitaka Akisaka、Hisaho Yoshida
( Department of Anatomy, Asahi University School of Dentistry, Hozumi, Japan)
In the present study, we used cell shearing, quick-freeze, freeze-drying,
and rotary replication to reveal the 3D-organization of the cytoskeletal
architecture in cultured osteoclasts. Electron mictographs were taken at ±8
゜ of specimen tilt on a goniometer stage. Anaglyph stereoscopic image-pairs
were obtained by computational means. Osteoclasts can adhere to the
substrate via discrete dot-like structures termed podosomes which are stained
by rhodamine phallodin for F-actin. After exposure of the cytoplasmic surface
of the ventral membrane by mechanical shearing, the organizational structure
of the podosomes was left behind in 3D by viewing through eye glasses with
blue-red filters. The individual podosomes were conical in shape and their
bottoms were directed toward the ventral membrane. In other cases, several
podosomes merged into tightly packed belt-like ones. The core of single
podosomes contained packed microfilaments with detergent-resistant
materials from which actin microfilaments appeared to radiate out in a rosette
fashion. Most actin microfilaments seemed to terminate at the membraneassociated particles, but others ended directly on the ventral membrane.
68
J.A.A.
自家骨軟骨移植後の軟骨下骨における移植細胞と
宿主細胞の動態の観察
○1大島 康史、2 松田 賢一、1 渡邉 信佳、1高井 信朗、2 河田 光博
(1京都府立医科大学 整形外科学、2京都府立医科大学 第I解剖学)
関節軟骨は修復能力が乏しいため、損傷されると本来の硝子軟骨で修復されず、
変性を生じる。これに対し、関節骨軟骨欠損の修復目的で自家骨軟骨移植が行
われており、良好な臨床成績が報告されている。移植片の軟骨下骨は壊死し、
力学的強度が低下するため、より強固な軟骨下骨の再構築が重要であるが、そ
の間の移植細胞と宿主細胞の動態については、両者の識別が困難であるため解
明されていない。そこで本研究では、移植細胞と宿主細胞を識別するモデルを
確立し、軟骨下骨の再構築がいずれの組織由来の細胞で行われるのかを観察す
ることを目的に、以下の実験を行った。野生型ラット大腿骨に作成した骨軟骨
欠損部に、トランスジェニックラットから採取した骨軟骨片を移植したモデル
と、トランスジェニックラット骨軟骨欠損部に、野生型ラット骨軟骨片を移植
したモデルの2群を作成した。移植後3週でin situ hybridizationを用いて導入遺
伝子を検出し、軟骨下骨での細胞動態を追跡した。移植後3週では、移植片の
骨細胞や骨髄細胞は生存しており、移植片骨髄腔に宿主細胞が侵入していた。
また、移植片と宿主間は、一部新生骨組織が認められ、移植細胞と宿主細胞の
両者によって構成されていることが確認でき、本研究の実験モデルの有用性が
示された。
H-119
Histochemical and immunochemical observations of the
intercellular substance in the aged human auricular cartilage
○1Kanako Hiroshige、2 Masato Imada、2Mutsumi Matsukawa、
1
Minoru Ikeda、2 Tomio Arikuni
(1The Department of Otorhinolaryngology, Nihon University School of
Medicine, Tokyo, Japan、2The Department of Anatomy, Nihon University
School of Medicine, Tokyo, Japan)
To elucidate chemical and morphological changes of aging on human auricular
cartilage, we have examined sulfated proteoglycans in the intercellular
substance by light and electron microscopy, using immunohistochemistry and
sulfated carbohydrate staining method: alcian blue (AB, pH 1.0). Specimens
were divided into a young adult group (Y-group, 16-30 y of age) and an aged
group (A-group, 50-79 y of age). On electron micrographs, the territorial
matrix of the Y-group was homogenous. However, the territorial matrix of the
A-group could be divided into two parts: the outer and the inner parts. The
inner part was similar to the territorial matrix of Y-group. The territorial
matrix of the Y-group was strongly stained around the lacuna with AB. In the
A-group, AB-stained images appeared as dots or a thin line less densely but
hyaluronidase (HA) treatment intensified AB stainability. Moreover, HA
treatment resulted in disappearance of chondoroitin sulfate in both groups
and showed a tendency for keratan sulfate in the A-group to increase. These
modifications of the matrix may be one of causes of age dependent structural
changes of the human auricular cartilage.
H-120
ラット顎関節における滑膜表層細胞の多様性
○河合 桐男、井上 孝二、佐藤 哲二
(鶴見大学 歯学部 解剖学第2講座)
目的と方法:関節包の内面を被覆する滑膜表層細胞は、滑液の産生・調節など
の滑液の恒常性維持に重要な役割を果たすことが考えられており、これまで多
数の研究がなされてきた。しかしながら、その形態学的研究は必ずしも十分に
なされていない。今回の研究では、滑膜の表層細胞の種類、ならびに滑膜への
神経および脈管支配の様式に着目した。実験動物として、6週齢ラット(♂)を
各種固定液で灌流後、顎関節を含む組織を採取し、EDTAで脱灰し、各種切片
を作製した。ヘマトキシリン・エオジン(H E)染色あるいはマクロファージ
(ED1, ED2)、主要組織適合性抗原クラス2( OX6)
、線維芽細胞(Vimentin)、基
底膜(Laminin)
、神経(PGP9.5, NSE)、Hsp25に対する抗体を用いて免疫組織
化学的に解析した。結果と考察:HE染色を施した標本では、1-3層の扁平な
いし多角形の細胞からなる滑膜表層細胞には、表層側に位置する酸好性細胞と、
より深層に位置する弱塩基好性の細胞が認められ、表層細胞直下には多数の脈
管系が認められた。前者の細胞群には、ED1、ED2、 OX6免疫陽性が認められ、
後者の細胞に、NSE、Vimentin、Hsp25陽性反応が、更にLaminin陽性反応物に
よる基底側の被覆が認められた。これらの多様な細胞群と神経および脈管支配
との関係について解析した。
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-121
H-124
妊娠中のラットに投与したフタル酸ジ-n-ブチルが
新生仔脳に及ぼす影響
○山門 一平、関口 雅樹、田中 理、花本 秀子、清木 勘治
(東海大学 医学部 形態学部門)
【目的】 我々は、内分泌撹乱作用が疑われているフタル酸ジ-n-ブチル( DBP)
を妊娠中のラットに経口投与し、新生仔脳への影響を形態学的に観察した。生
下時の形態的変化は日本解剖学会関東支部第89回学術集会で報告した。今回は
生下時と生後5日目を比較することで、胎児期の薬品暴露による出生後の影響を
検討した。
【方法】 実験群(DBP投与群)はコーン油に溶解したDBP、コントロール群は
コーン油のみをそれぞれ毎日(妊娠∼2 0日目)経口胃内チューブで投与した。
生下時と生後5日目の新生仔を麻酔下で灌流固定し、脳組織の前顎断切片を一般
染色と免疫染色とで観察した。
【結果】 生 下 時 で は D B P投 与 群 の 形 態 的 変 化 は 、 側 脳 室 周 囲 の c a u d a t e
putamen neuroepithelium(CPN)に比較的高頻度で観察された。コントロー
ル群と比較すると、肥厚は顕著であった。生後5日目のCPN肥厚度は、コントロ
ール群とDBP投与群との間に差はみられなかった。
【考察】 この実験結果から、 DBPの毒性が胎生期における脳の発生・分化に何
らかの影響を及ぼし、側脳室周囲のCPNに肥厚をもたらすことが判った。DBP
投与群では神経細胞の移動がコントロール群に比べて遅れるが、生後5日目で
は明らかな差は認められない。このことは、胎児期に生じた脳の発達の遅れが、
成長とともに取り戻されることを推察させるものである。
H-122
自然発症糖尿病KKAyマウス膵臓の膵島外内分泌細胞の観察
加齢と下垂体前葉、特に濾胞星細胞の形態変化
○黒野 智恵子、本多 信彦、曾爾 彊
(名古屋市立大学 医学部 第1解剖学教室)
我々はこれまでラット下垂体前葉濾胞星細胞について生後発生を追って細胞間
のギャップ結合を観察してきた。生後10日では雌雄ともギャップ結合は出現し
なく、15日から20日で現れ、成熟に伴って増加する。10日齢で去勢あるいは卵
巣摘出すると 45日齢になってもギャップ結合は出現しなく、性ステロイド(雄
にはテストステロン、雌にはエストラジオール)投与により回復あるいはそれ
以上に増加することはすでに報告してきた。また雄ラットの加齢による形態変
化についても2年齢の濾胞星細胞において脂肪滴の貯留や細胞間ギャップ結合
の減少を報告した。今回は雌ラットの2年齢までの濾胞星細胞の形態変化を雄
と比較して報告する。すなわち雄では15ヶ月齢から観察され 24ヶ月齢で増加す
る脂肪滴が、雌では6ヶ月齢から観察され月例をおって増加した。また2年齢
で雄と同様に細胞間ギャップ結合の減少、濾胞にコロイド貯留、細胞の退縮像
などを観察し、雄では観察できなかったアポトーシス細胞を処理していると考
えられる像も観察した。
H-125
性ホルモンによる副腎の5α-reductase mRNAの発現制御
○市川 安昭、山下 和雄
(日本医科大学 医学部 解剖学第一講座)
○上山 敬司、白澤 信行、伊藤 隆雄、鶴尾 吉宏
(和歌山県立医科大学 第1解剖学)
前回は糖尿病 KKAyマウス膵島の初期の形態変化を報告したが、今回は膵島以
外の膵組織に出現した膵内分泌細胞について観察した。KKAyマウス8、12
週令および対照として8週令のC57BL/6Jの雄を使用し、ザンボーニ液で灌流固
定後、膵臓をパラフィンまたはエポンに包埋し、光顕は各種免疫染色(インス
リン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド)を施し、電顕は型のご
とく観察した。 C57BLマウスでは膵島外組織(膵導管上皮および腺房細胞)に
グルカゴン分泌細胞(A細胞)以外の内分泌細胞を少数認めただけであったが、
KKAyマウス8週令(尿糖陰性)、12週令(尿糖強陽性)では、膵島内A細胞
は減少傾向を示すのに対し、膵島外では多数出現し、小塊を形成しているのも
観察された。KKAy8週令では、膵島に機能亢進したインスリン分泌細胞(B細
胞)の増生がみられたが、12週令では膵島中央部のB細胞の退行と膵島辺縁
部では機能亢進像が観察された。この時、膵島外のB細胞は対照よりもかなり
多く出現し、A細胞と共存し、新しい膵島を形成しているものもあった。
KKAyのソマトスタチン分泌細胞や膵ポリペプチド分泌細胞は、各膵導管上皮、
腺房細胞間にも多く出現しており、AおよびB細胞と同様に小塊を形成している
ものも観察された。これらのことは、この糖尿病動物膵島の激変に伴い膵導管
系から膵内分泌細胞の新生が起こることを強く示唆している。
【 目 的 】 5 α - r e d u c t a s e(5α-R) は t e s t o s t e r o n eを さ ら に 活 性 の 強 い 5 α dihydrotestosteroneに代謝する酵素である。副腎における5α -R mRNA (type
I) の発現の性ホルモンによる変化をin situ hybridization法で検討した。
【方法】
8週齢 W i s t a r雄あるいは雌ラットを用い、各々精巣、卵巣を切除後、さらに
testosteroneあるいはestradiolを補充、4週後に 4%パラホルムアルデヒドで潅
流固定、副腎を取り出し, 10μmの凍結切片を作成した。5α-R type I mRNA
の 発 現 を 、 3 5 S - d A T Pで 標 識 し た o l i g o n u c l e o t i d e p r o b e を 用 い て i n s i t u
hybridization法で検討した。【成績】無処置群では、5α-R mRNAは網状帯と球
状帯に発現していたが、性腺除去で束状帯の発現が著明に亢進し、testosterone
あるいはestradiol投与によって、発現は強く抑制された。【結語】5α-reductase
は性ホルモンにより、転写レベルで負に制御されている。
H-123
Morphological changes of the parathyroid gland in
the aged senescence-accelerated mouse (SAMP6)
○1 Huayue Chen、1Daisuke Hayakawa、2 Shoichi Emura、
1
Yuki Ozawa、3 Hideo Isono、1 Shizuko Shoumura
(1Department of Anatomy, Gifu University School of Medicine, Gifu, Japan、
2
Nursing Course, Gifu University School of Medicine, Gifu, Japan、
3
Heisei College of Medical Technology, Gifu, Japan)
Previously we reported that the secretory activity of the parathyroid gland
was stimulated in adult senescence-accelerated mouse (SAMP6). In the
present study, the parathyroid gland of SAMP6 mouse aged 8- and 12-months
was morphologically compared with that of the age-matched SAMR1 mouse.
In the parathyroid chief cells of SAMR1 mouse, the Golgi complexes were
moderately developed, numerous lysosomes and some myelin-like structures
were found in the cytoplasm. In SAMP6 mouse, the follicles were frequently
found in the parathyroid parenchyma. The follicle walls consisted of chief
cells, which contained well-developed Golgi complexes. Amorphous or
flocculent materials were observed in the lumen of the follicle. In the
parathyroid chief cells of the SAMP6 mouse, the Golgi complexes were well
developed and numerous secretory granules located near the plasma
membranes. Water-clear cells containing numerous vacuoles and crystalloid
bodies were also found in the parathyroid gland of the SAMP6 mouse, but not
in SAMR1 mouse. These findings suggest some differences between SAMP6
and SAMR1 in regard to the parathyroid activity of the aged mouse.
H-126
様々な培養間葉細胞に対するホルモン作用の効果
−脂肪細胞としての分化誘導−
○高橋 徳明、石関 清人、名和 橙黄雄
(岩手医科大学 歯学部 口腔解剖学第二講座)
『目的』我々はニワトリ血清因子(CKS)が培養メッケル軟骨細胞を脂肪細胞に機
能転換させることを報告した。本研究では、血清ホルモンによる脂肪細胞誘導
効果を検索するために、培養メッケル軟骨細胞を主体に様々な間葉細胞を用い
て、各種ホルモンの効果について検討した。『方法』材料はマウスメッケル軟骨
細胞と歯髄細胞、皮下由来線維芽細胞、3T3-E1細胞の培養間葉細胞を用いた。
細胞は1×104個の密度で播種し、様々な濃度のホルモン添加 mediumで炭酸ガス
培養し、ズダン染色と免疫染色を行った。一部の試料は電顕的に観察した。
『結
果』用いたすべてのホルモンで多少なりともズダン陽性の脂肪滴の形成が観ら
れたが、インスリンやデキサメタゾン単体での著明な誘導効果は何れの細胞に
も認められなかった。高濃度のテストステロンでメッケル軟骨細胞と3T3-E1細
胞に著しい脂肪形成が認められ、これらはLeptinとGPDHによる免疫染色にも
陽性であった。このような脂肪分化の旺盛な細胞では、脂肪滴が融合して典型
的な大型脂肪細胞に移行していた。『考察』ズダン陽性の脂肪滴形成能はテスト
ステロンで軟骨細胞と 3T3-E1細胞に著しく誘導された。この事とCKSとの因果
関係は未だに不明であるが、テストステロンは培養開始直後の何れの未分化型
間葉細胞に対しても同様の分化能を促進することから、脂肪細胞の初期分化に
何らかの関与が示唆された。
J.A.A.
69
解剖学雑誌 第77巻 抄録号 2002年3 月
H-127
マウスランゲルハンス島におけるカルニチントランスポーター
の発現
H-130
ラット食道神経系におけるneurokinin 1 receptor (NK1R)と
コリン作動性神経の関係
○甲斐 砂織、薬師寺 和道、伊藤 千鶴、年森 清隆
(宮崎医科大学 第1解剖学講座)
○藏本 博史
(京都工芸繊維大学 繊維学部 応用生物学科)
細胞が長鎖脂肪酸をエネルギーとして利用するには、カルニチンを介したミト
コンドリア内のβ酸化が必須である。そこには大きく4つのカルニチンシャト
ルシステムが存在する。そのひとつに細胞形質膜上のカルニチントランスポー
ター(OCTN2)があり、この機能障害は全身性カルニチン欠損症の原因とされ
ている。糖新生は脂肪酸酸化依存であるため、カルニチンの欠乏は容易に低血
糖(低ケトン性低血糖症)を生じる。糖新生を促進・抑制させるホルモン分泌
細胞の存在する膵臓は、遺伝子レベルでカルニチントランスポーターの存在が
確認されているが、トランスポーターの発現局在は不明である。そこで今回、
カルニチン依存性細胞を特定し、カルニチントランスポーターの局在を明らか
にすることを目的とした。C57B6マウスと全身性カルニチン欠損症のモデルマ
ウス( JVS)/30∼40週齢の膵臓をブアン固定し、組織をパラフィン切片とし
た。カルニチントランスポーター(O C T N 2)を認識する抗体(合成ペプチド
抗ウサギ抗体/ K266)を用いて免疫組織化学的酵素抗体法−ABC法・DAB反
応にて染色した。マウス膵臓はランゲルハンス島に発現していたのでその詳細
を報告する。
【この研究は徳島大学医学部桑島正道先生との共同研究である】
食道神経系には多数のサブスタンス P (SP) 含有神経が分布しているが、この神
経が食道内にどのように分布し、食道運動にどのような影響を及ぼすのかはよ
く判っていない。そこで、我々はS Pの受容体と考えられているneurokinin 1
receptor (NK1R) の食道内分布を検索することで、食道におけるSP含有神経の
機能的役割をより明確にできるものと考えた。今回、特に食道内に分布するコ
リン作動性神経と N K 1 R の関係を調べるため、免疫組織化学的に検討した。
NK1R 陽性反応は筋層間神経節の一部の小型から中型のニューロンに認められ、
これらのほとんどはDogiel I 型のニューロンに属していた。二重標識の結果、
NK1R 陽性ニューロンの76.5±9.3 % (n=4) が ChAT 陽性反応を示した。また、
NK1R/ChAT陽性ニューロンはChAT 陽性ニューロン全体の 13.9±2.9 % (n=4)
を占めていた。一方、ほとんどすべてのNK1R陽性ニューロンにはSP 陽性神経
終末との接触が認められた。以上の結果より、SP神経線維から放出されたSPは
NK1 receptorを介し、優位にコリン作動性ニューロンに作用し、食道神経系に
おける伝達あるいは食道運動に影響を及ぼすものと考えられる。
H-128
坐骨神経結紮後の脊髄神経節におけるNOSとストレス蛋白HSP27の
発現変化について
H-131
The ultrastructure and synaptic relationships of the orexin
receptor-1-like immunoreactive neurons
in the hypothalamic arcuate nucleus
○劉 文亭、平田 和穂、賀 建文、安岡 克倫、倉岡 晃夫、川渕 優
(九州大学大学院・医学研究院・形態解析学)
【目的】神経過敏症発症にNOが関与しているといわれているがその機構は不明
である。本研究ではラット坐骨神経に結紮を施し神経過敏モデルを作成し、術
後2日、1週、2週、5週、7週、9週後のL 5レベルの脊髄神経節における
neuronal NOSの発現変化およびストレス蛋白HSP27との関連について免疫組
織化学的に明らかにする。
【結果】NOSの発現は非術側において少数の小型ニュ
ーロン (約1%) に見られた。術側においては術後2日で小型のみならず大型ニ
ューロンにも認められ、NOS陽性ニューロンの数は増加した(約10%)。その後
NOS陽性細胞は更に増え、2週∼7週でピークを示し (約25∼30%)、NOS
の活性も著明に増加した。9週では、NOS陽性ニューロンの数および活性は減
少した。 N O SとH S P 2 7の二重染色においては、H S P 2 7の発現は非術側の小型
NOS陽性ニューロン内には見られないが、術後ほとんどのNOS陽性ニューロン
に共存していた。【結論】NOSとHSP27は結紮後ほぼ同時に発現しており、知覚
ニューロン内のNO産生機構へのHSP27の関与が明らかとなった。両タンパクが
神経過敏症発症に関与している可能性が示唆された。
H-129
ラット脊髄神経節細胞における神経栄養因子GDNFとBDNFの共存
○太田 啓介、猪口 哲夫、小林 正利、石橋 義広
(久留米大学 医学部 解剖学第二)
神経栄養因子 GDNF及びBDNFはどちらも脊髄後角で強い免疫陽性を示すこと
が知られており、これらは共に脊髄神経節細胞の小型ニューロンに由来し、ど
ちらもSubstance P陽性細胞と強く関連することが示されている。そのため小型
の神経節細胞ではGDNFとBDNFが共存している可能性が予想される。ここで
GDNFは終脳において軸索切除された錐体細胞の生き残りに働くことが知られ
ているが、それは内因性のBDNFの共存によって初めて発揮されるとの報告が
あり、両者の共存には何らかの意味がある可能性が示唆される。そこで今回
我々はコルヒチン処理を行った成熟ラット後根神経節を用いて、脊髄神経節細
胞における GDNFとBDNFの共存関係について検討を行った。これまでの報告
同様GDNFとBDNFは主に小型ニューロンで免疫陽性を示しており、隣接切片
による比較では、明らかに両神経栄養因子に対して陽性を示す細胞が多数存在
することが明らかになった。また過去の電顕的報告において両者は脊髄の
Rexed I∼II層の神経終末部でdence cored vesicle内に存在することが知られて
いる。そこで、本報告ではsubstance P, GDNF, BDNF 3者の共存関係を明らか
にし、その機能上の意味−特に侵害刺激の伝達との関連−を考察する。
70
J.A.A.
○Jian-lian Guan、Qing-ping Wang、Seiji Sioda
(Department of Anaromy, Showa University School of Medicine, Tokyo, Japan)
Orexins may regulate food intake through the orexin receptors in the
hypothalamic arcuate nucleus (ARC). However, although orexin receptors
have been reported in ARC, no electron microscopic report occurs. In the
present study, we report the results got in our laboratory. At the light
microscopic level, many orexin receptor-1-like immunoreactive (OXR-1-LI)
neurons and fibers were found in the ARC. At the electron microscopic level,
the OXR-1-LI neuronal perikarya were found as small type with large nuclei.
The mitochondria and nuclei were immunonegative in these perikarya. The
OXR-1-LI perikarya were often found receiving symmetric synapses from
immunonegative axon terminals. The mostly found OXR-1-LI profiles were
dendrites. They also received synapses from immunonegative axon terminals.
The synapses were both asymmetric and symmetric. The OXR-1-LI axon
terminals were rare and having their immunoreactivity mostly in the densecored vesicles. In rare cases, these OXR-1-LI axon terminals made synapses
on OXR-1-LI dendrites. Our results provided solid morphological evidence that
the orexin receptor-1 plays a great role in the food intake phenomenon in the
hypothalamic ARC.
H-132
ラット小腸筋層間神経切離後の神経再生とglial cell line-derived
neurotrophic factor (GDNF) およびRet の発現
○高橋 良彰、下田 浩、加藤 征治
(大分医科大学 医学部 解剖学第1)
【目的】消化管の神経回路における再生過程とその制御機構の一端を解明する目
的で、筋層間神経切離モデルにおける神経の再生過程を、各種組織化学的手法
を用いて検討した。【方法】ラット小腸の筋層間神経を切断し経時的に材料を採
取した。これより種々の組織試料を作成し、protein gene product (PGP) 9.5 お
よびS-100 蛋白に対する免疫染色および、電子顕微鏡による観察を行った。加
えて、神経系の発達、機能維持に関与するGDNFとその受容体分子であるRetに
対する免疫染色を行った。【結果】筋層間神経は術直後より変性を示したが、術
後1日目より断端に再生線維を認めた。術後3日目には断端近位のシュワン細
胞より伸びた突起が再生線維を包んでいた。以後、再生神経は伸長速度を早め、
術後7日目には対側切離端まで伸長していた。電顕による観察では、術後1日
目の再生線維は基底膜のみで被覆されていたが、3日目にはシュワン細胞に包
まれ、5日目には再生平滑筋に沿うように伸長していた。また、 GDNF、Retは
定常状態では、神経節のみに発現がみられたが、実験群においては再生神経に
も発現していた。【結論】筋層間神経切離後の神経再生において、その伸長にシ
ュワン細胞による被覆が重要な役割を果たしており、伸長の過程に再生平滑筋
が何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。また、GDNFは筋層間神経
の再生過程において重要な役割を果たしていることが示唆された。
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-133
慢性膵炎時の神経伸長はNGFとendothelinの
トーキングによっておこる!?
H-136
マウス精巣および精路におけるカルニチントランスポーター
(OCTN2)の発現
○高御堂 祥一郎、棚野 晃秀、田村 泰久、片岡 洋祐、渡辺 淳、山田 久夫
(関西医科大学 第1解剖・第3内科 再生医学難病治療センター)
○薬師寺 和道、甲斐 砂織、伊藤 千鶴、年森 清隆
(宮崎医科大学 医学部 第一解剖学講座)
慢性膵炎の本態は、膵実質の脱落とその部位の線維化の持続的進行であり、臨
床的には頑固な上腹部痛を特徴とする。病理組織所見として線維化とともに膵
内末梢神経束の数・径の増加がみられるため、疼痛症状との関連を考察する研
究者も多い。一方、膵内微少循環やinsulin分泌にendothelin(ET)が関与している
と考えられ、慢性膵炎の病態との関連が想定される。そこで、われわれは慢性
膵炎患者の手術標本を用いて、神経伸長に関わるとされるNGFとその高親和性
受容体 TrkAおよび低親和性受容体p75、さらにmature endothelins(mETs)と
endothelin A受容体(ET-AR)の膵内局在を免疫組織化学的に検討した。NGFは
化生した導管で陽性、外分泌腺房・ラ氏島細胞で弱陽性である一方、その受容
体T r k Aは神経線維末端(とくに神経周膜)に強陽性であった。それに対して
mETsは神経線維末端で強陽性、化生した導管・外分泌腺房・ラ氏島細胞で陽
性であったが、その受容体 ET-ARは化生した導管・外分泌腺房・ラ氏島細胞で
陽性であった。以上の結果から両者がparacrine的に働いていると考えられる。
慢性膵炎時の神経伸長において、膵細胞側からのNGFと神経末端側からのETに
よって相互にトーキングをおこなっていると推察される。
カルニチンはミトコンドリア基質内で起こる長鎖脂肪酸のβ酸化に必須の分子
である。細胞外のフリーな L-カルニチンはカルニチントランスポーター
(OCTN2)を介してミトコンドリア外膜まで取り込まれる。その後、カルニチン
パルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)によってアシルCoAからアシル-L-カ
ルニチンが合成され、β酸化に至るカスケードが引き起こされると考えられて
いる。我々はこれまでにOCTN2の機能障害が原因でおこる全身性カルニチン欠
乏症の動物モデルであるjunvenile visceral steatosis(JVS)マウスにおいて、
精巣上体内で精子通過障害が起こることを報告した。今回、精巣および精路に
おけるOCTN2の局在を明らかにすることを目的とし、C57B6マウスとJVSマウ
スの精巣・精巣上体・精管をブアン潅流固定後、パラフィン包埋し抗 OCTN2抗
体(合成ペプチド 抗ウサギ抗体)を用いて免疫組織化学的《S-ABC法・DAB
反応》にて検討したので報告する。【この研究は徳島大学医学部桑島正道先生と
の共同研究である。
】
H-134
Carbonic anhydrase in canine male reproductive tract
○Masao Asari、Nobutsune Ichihara、
Takefumi Ishikawa、Toshiho Nishita
(Department of Anatomy 1, Azabu University, Kanagawa, Japan)
The distribution of cytosolic carbonic anhydrase isozymes (CA-I,-II, and -III) in
the canine male reproductive tract were studied to elucidate the location of
positive cells, and to discuss cellular function by use of immunohistocytochemical methods. Virtually no immunoreaction of CA isozymes was
seen in the testis, except for Sertoli cells which were evident for CA-III.
Moreover, some epithelial cells in the initial and middle segment of the
epididymis and prostate intensively stained for CA-II. The positive-staining
cells in the epididymis were characterized as slender cells with numerous
small vesicles in the apical region of cells(possibly narrow cell). The functional
significance of cells suggests that they are involved in proton secretion and
luminal acidification. Thus specific immunostaining for CA isozymes in canine
male reproductive organs suggests the proton in semen may mainly originate
from Sertoli cells, epididymal narrow cells and prostate. Secreted proton ions
are required for maintaining spermatozoal stability and may provide an
ionically balanced environment at the distal portion of the vagina at the time
of ejaculation.
H-135
Development of the blood-testis barrier in the mouse is delayed
by diethylstilbestrol but not by β-estradiol 3-benzoate.
H-137
ラット精巣に対するニコチンの作用
○花本 秀子、長戸 康和、中野 まゆみ、清木 勘治
(東海大学 医学部 形態学部門)
我々は母親のニコチンの習慣的摂取が仔の生殖機能へ及ぼす作用を検討してい
る。今回、母親が摂取したニコチンが仔の精巣の発育にどのような影響を及ぼ
すかを形態学的に観察した。その結果、ニコチンを摂取したラットから生まれ
た仔の精巣の組織像から興味ある所見が得られたので報告する。【方法】8週齢
からメスSDラットにニコチンを飲水中に 0.005%あるいは0.0005%加え自由摂取
させた。10週齢で正常オスラットと交配し、妊娠から授乳期間中においても
ニコチン水を与え続けた。生まれた仔の一部は5週齢で精巣を摘出し、他は5
週齢から通常飲水で飼育し11週齢で精巣を摘出した。得られた試料は薄切し、
HE染色あるいは免疫組織化学的にFibronectin染色をほどこした。【結果】ニコ
チン投与した母親から生まれた仔の精巣において一部の精細管で精子形成細胞
の脱落が認められた。また精祖細胞とセルトリ細胞の間に間隙が認められ、精
祖細胞の変性像が観察された。
H-138
前立腺細胞におけるアンドロゲン受容体の細胞内分布と
GFP変異体を用いた動態イメージング
○Ikuyoshi Hosoi、Yoshiro Toyama、Mamiko Maekawa、Shigeki Yuasa
(Department of Anatomy and Developmental Biology, Graduate School of
Medicine, Chiba University)
○1中内 博夫、2 落合 育雄、2 松田 賢一、 1鴨井 和実、
1
水谷 陽一、1三木 恒治、2 河田 光博
(1京都府立医科大学 泌尿器科学教室、2京都府立医科大学 第1解剖学教室)
Mice were treated with 1μg/individual of diethylstilbestrol (DES) or with
the same dose of β-estradiol 3-benzoate (E2B) on alternate days from 1 to 11
days of postanatal age. In the control mice, the germ cells differentiated into
spermatids as early as 21 days. Formation of the blood-testis barrier (BTB)
was observed as early as17 days. Spermatogenic cells in the DES-treated mice
showed delayed meiosis and first differentiated to spermatids on 28 days.
BTB was not formed until 28 days in the DES-treated mice, and a delay in the
functional maturation of BTB was confirmed by intercellular tracer
experiments. Spermatogenic arrest at meiotic prophase may be attributable
to the DES-induced defective formation of BTB. No delay of meiosis or BTB
formation was detected in the E2B-treated mice. Thus, DES and E2B might
exert different effects on the Sertoli cells in spite of their common estrogenic
action.
前立腺細胞はアンドロゲン受容体によってその機能形態の制御を受けているこ
とが知られている.今回,われわれは前立腺細胞におけるアンドロゲン受容体
の局在を明らかにするとともに,green fluorescent protein (GFP)変異体である
yellow fluorescent protein (YFP)を用いてその細胞内動態を明らかにした.ヒ
ト前立腺癌細胞株であるL N C a P,D U 1 4 5,P C - 3に対し, R T - P C R法を用いて
RNAレベルのアンドロゲン受容体の検出を行い,さらに抗アンドロゲン受容体
抗体を用いた免疫染色によって蛋白レベルの発現を検討した.また,YFPとア
ンドロゲン受容体のキメラ蛋白(YFP-AR)をそれぞれの細胞株に強制発現さ
せ,培養液中にテストステロンを加えてその細胞内動態を検討した. RT-PCR
法および免疫染色においてLNCaPではアンドロゲン受容体の発現を認めたが,
DU145,PC-3では検出されなかった. YFP-ARはアンドロゲン非存在下ではい
ずれの細胞株においても細胞質に分布し,テストステロン投与によりLNCaPだ
けでなくDU145,PC-3においてもすみやかに核に移行した.これらの細胞株に
おけるアンドロゲン受容体の動態の差異について考察した.
J.A.A.
71
解剖学雑誌 第77巻 抄録号 2002年3 月
H-139
立体再構築によるラット腎乳頭先端部集合管の空間配置の観察
○渡辺 定博
(神戸市看護大学 基礎医学系)
腎臓では尿細管をはじめとする複雑な管系が立体的に配置されており、特定の
管系の空間配置を立体的に再構築できれば、腎組織の理解がさらに深まるもの
と考えられる。しかしひとつの糸球体から腎乳頭尖端に至る尿生成経路全体を
立体再構築することは、切片の取り扱いやパソコンの処理能力などの関係から、
現実的にはいろいろな困難が伴う。そこで今回は、腎乳頭付近の集合管の立体
的配置に限って、立体再構築を試みた。<方法>成熟ラットの腎臓をブアン固
定してパラフィン連続切片を作成した。マッソンゴールドナー染色を行った後、
C C Dカメラで画像をパソコンに取り込み、P h o t o s h o pで画像処理を行った後、
立体再構築ソフト( VoxBlast)を利用して立体再構築を行った。<結果>ラッ
トの腎乳頭は基本的に一つである。その先端部付近の連続切片から、5本前後
の乳頭管およびそこから分岐する集合管系について追跡した。各乳頭管からは
腎乳頭尖端直下で分岐する集合管をはじめとし、いろいろな高さでの分岐が見
られた。さらに、1本の乳頭管から分岐した集合管群は全体としてひとつのグル
ープを形成し、隣接する別の乳頭管から分岐した集合管と絡み合う様子は見ら
れなかった。従って、腎乳頭付近においては、各乳頭管とそこから分岐する集
合管群は、明確に分離された複数の空間領域を占めて存在していることが観察
された。
H-140
Laminin α2鎖欠損マウス(dy3k /dy3k)における
骨格筋筋腱結合部の形態学的検討
H-142
損傷筋の筋線維とサテライト細胞におけるSTAT3と
Akt蛋白の活性化
○1上 勝也、2 仙波 恵美子
(1大阪体育大学 健康科学、2 和歌山県立医科大学 第二解剖)
損傷筋の再生は増殖因子やサイトカインにより制御されていることはよく知ら
れているが、筋再生過程において増殖因子やサイトカインの下流で活性化され
る細胞内シグナル伝達分子の検討はなされていない。そこで、本研究はリン酸
化STAT3(P-STAT3)とAkt蛋白(P-Akt)に焦点を当て、筋再生過程における
これらの時間的・空間的発現変化を明らかにすることを目的とした。正常筋線
維には検出されなかった P-STAT3とP-Aktの発現は損傷3時間後に c-met陽性サ
テライト細胞核に認められたことに加えて、損傷に抗して壊死していない残存
筋線維の筋核も認められた。損傷1日後にはPCNAあるいはMyoD陽性を示す増
殖サテライト細胞核にもP-STAT3とP-Aktの陽性反応が認められた。損傷3日後
には残存している基底膜内にcdkインヒビター p21あるいはMyoD陽性サテライ
ト細胞が観察され、これらのサテライト細胞にはP-STAT3とP-Akt陽性反応は
消失した。これらの結果は、STAT3とAktは分化前のサテライト細胞と残存筋
線維において活性化され、筋再生過程に重要な役割を演じていることを示すも
のである。
H-143
Colocalization of choline acetyltransferase and neuropeptides in
the intrinsic neurons in the lower airway of the rat
○仁科 裕史、依藤 宏
(防衛医科大学校 解剖学第二講座)
○Dwi Liliek Kusindarta、Yoshio Yamamoto、
Yasuro Atoji、Yoshitaka Suzuki
(Laboratory of Veterinary Anatomy, Gifu University, Gifu, Japan)
【目的】 dy3k/dy 3kマウスは骨格筋基底膜の重要な構成成分であるLaminin2のα
鎖を完全欠損したノックアウトマウスであり、Laminin2欠損型筋ジストロフィ
ー(CMD)のモデルマウスとして有用である.dy3k/dy3k では骨格筋の基底膜が完
全欠損していることが知られているが、基底膜を欠いた状態で筋収縮力がどの
ように細胞外マトリックスに伝達されているかは興味ある問題である.我々はこ
の点を明らかにするためdy3k /dy3k の筋腱結合部を電子顕微鏡により検索するこ
とにした.【方法】 dy3k/dy3k とその野生型マウスをリンゲル液にて還流後、カコ
ジル酸緩衝2.5% glutaraldehyde,2% paraformaldehyde固定液により灌流固定し
た.横隔膜、下肢の長指伸筋の筋腱結合部を含む部位を樹脂包埋後超薄切し透過
型電子顕微鏡で観察して野生型と比較検討した.【結果】1.dy3k/dy3k では筋腱
結合部には不連続かつ薄いものの基底膜様の構造が認められた.2.筋腱結合部
にみられる指状の筋線維の分岐は殆ど認められなかった.【考察】以上の所見か
らLaminin 2以外の構成要素により基底膜の代替物が形成され、不完全ながら筋
収縮力を伝達していることが示唆された.筋線維の指状分岐が乏しいことから、
十分な収縮力の伝達が阻害されている可能性も考えられた.
The purpose of this study was to examine colocalization of choline
acetyltransferase (ChAT) and neuropeptides in the intrinsic neurons of lower
airway of the rat. Double immunofluorescent staining was performed using
antibodies against protein gene product 9.5 (PGP 9.5), choline
acetyltransferase, neuropeptide Y (NPY), vasoactive intestinal peptide (VIP),
substance P (SP), and calcitonin gene-related peptide (CGRP). Almost of all
PGP 9.5 immunoreactive (-IR) nerve cell bodies were ChAT-IR. Most of
ChAT-IR nerve cell bodies were NPY-IR. VIP-IR nerve cell bodies, that were
rarely observed in the airway, were also immunoreacted for ChAT. Some
ChAT-IR nerve fibers in the smooth muscle layer and tunica adventitia
showed immunorectivity for NPY, VIP, SP and CGRP. The results suggest
that intrinsic neurons of the rat lower respiratory tract are mainly
cholinergic, and that some neuropeptides play modulatory roles for the
cholinergic neurons.
H-141
甲状腺機能低下が骨格筋の傷害や再生に及ぼす影響
○小澤 淳也、甲斐 悟、安孫子 幸子、松浦 奈津江、川真田 聖一
(広島大学 医学部 保健学科)
【目的】骨格筋の傷害と再生が、甲状腺機能低下により影響されるかどうか調べ
た。【材料と方法】甲状腺機能低下ラットは、 1 5 日間メチマゾール水溶液
(0.025%)を与え、傷害後も投与した。8週齢の正常および甲状腺機能低下雄ラ
ット計 6 0匹を麻酔し、阻血あるいは筋を切断した。阻血群は左後肢を阻血し、
ヒラメ筋を採取した。筋切断群は、前脛骨筋の表層部を横断し採取した。試料
は、処置後3、5、7、14日に採取し、ホルマリンで固定後、パラフィン包埋した。
前脛骨筋は、電顕試料も作製した。【結果】メチマゾール投与後18、22日には、
血清遊離T3、T4は、著しく低下していた。4時間の阻血で、正常ラットのヒラ
メ筋線維は大部分が壊死に陥ったが、甲状腺機能低下ラットでは、壊死線維は
少なく筋線維の多くが生存した。前脛骨筋切断後3日には、正常ラットでは多く
の筋管細胞が見られたが、甲状腺機能低下ラットではまれだった。筋切断後5、
7、14日には、光顕では正常群と甲状腺機能低下群で差は認められなかったが、
電顕では、甲状腺機能低下ラットで筋原線維形成が遅れたり、筋節の構造が乱
れていた。【考察】甲状腺機能低下により、骨格筋の阻血に対する抵抗性が高ま
り、筋再生時の筋管細胞形成が遅れたり筋原線維形成に影響があることが示さ
れた。
72
J.A.A.
H-144
MT1-MMP遺伝子ノックアウトマウスにおける肺胞形成不全
○1入江 一元、2 岡田 明子、1敦賀 英知、1坂倉 康則、3 清木 元治、1矢嶋 俊彦
(1北海道医療大学 歯学部 口腔解剖学第一、2科学技術振興事業団 ERATO
関口細胞外環境、3東京大学 医科学研究所 腫瘍細胞社会学)
MT1-MMPは膜貫通領域をもつマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)で,
コラーゲンやラミニン,フィブロネクチンなどの細胞外基質を分解するととも
に,MMP-2やMMP-13などの他の可溶性 MMPsを活性化することが報告されて
おり,細胞外基質のリモデリングに重要な酵素である.MT1-MMP遺伝子ノッ
クアウトマウス( MT1-/-)では結合組織の代謝異常による線維症や関節炎,骨
量減少症,矮小発育症が報告されているが,器官形成や器官の形態維持とMT1MMPの関係についての詳細は不明である.そこで,今回我々はMT1-MMPによ
る細胞外基質のリモデリングと形態形成や形態維持の関係を検索する目的で,
結合組織の変化が形態形成や形態維持に影響しやすい肺に着目し,形態学に比
較した.MT1-/-の肺ではI型,II型の肺胞上皮細胞ともに認められたが,扁平な
I型肺胞上皮は少なく,立方形のものが多く,ワイルドタイプで見られるような
毛細血管内皮と肺胞上皮細胞からなる肺胞の血液空気関門の形成は少なかった.
また,これらの肺胞中隔には多くのコラーゲン線維や弾性線維が認められた.
以上のことはMT1-/-の肺では細胞外基質の形成と分解のバランスがくずれ,細
胞外基質が増加し,成熟した肺胞形成ができなかったことを示唆する.
第107回日本解剖学会総会・全国学術集会
H-145
原子間力顕微鏡によるヒト染色体の微細構造解析
○星 治、岩井 孔良、牛木 辰男
(新潟大学 大学院医歯学総合研究科 顕微解剖学)
【目的】ヒト染色体の立体微細構造解析については、レプリカ法や走査電子顕微
鏡による解析が行われてきたが、標本作成法の制約や観察法の限界からまだ不
明の点も多く、その高次構造については数種のモデルが提唱されたままである。
本研究では、分裂中期の染色体について、トリプシン等の特殊な処理をできる
だけ行わない標本を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)によりその高次構造を解析
する。【材料と方法】ヒト末梢血のリンパ球を培養し、コルヒチン処理と低張処
理を行い、メタノール酢酸で固定した。この懸濁液をスライドグラス上に滴下
して染色体を展開し、ギムザ染色後に緩衝液中で光顕観察を行った。その後、
1%タンニン酸水溶液と1%オスミウム酸の処理により染色体内の蛋白成分を強
く固定し、脱水・臨界点乾燥を行いAFMで観察した。一部の標本は走査電顕観
察も試みた。【結果と考察】光顕で均一に染色された染色分体をAFMで観察す
ると、表面にはやや突出する部分と横に走る細い溝が認められた。高倍率では、
染色体内に直径約50nmの線維構造物が観察された。この線維は屈曲しながら染
色体内にパッキングされていた。第一染色体に関してGバンド染色標本と比較
したところ、 AFMで太く突出してみえた部分はGバンド陽性部位に一致する傾
向にあった。さらにQバンドとの比較も行い、染色体の高次構造との関連につ
いて考察を加える。
H-293
Application of supersensitive immunohistochemistry
to autoimmunostain
○Kazuhisa Hasui、Fusayoshi Murata
(The Second Department of Anatomy, Kagoshima University Faculty of
Medicine, Kagoshima, Japan)
The sensitivity of indirect immunohistochemistry has improved by
introducing catalysis of biotinylated tyramide by peroxidase and antigen
retrieval (AR). We modified ImmunoMax method by Merz et al, by
suppressing non-specific reaction with animal serum, rinsing at high
temperature and masking endogenous biotin and established the
supersensitive method in the ordinary processed human lymph node and skin
tissue. This trial aimed to apply our method to the autoimmunostaining for
standarization of the supersensitive method with co-operation of DAKO Japan.
Without rinse at high temperature, the autoclave AR method the process by
DAKO autostainer yielded a great amount of endogenous biotin products in
human glandular epithelial cells, squamous cells and lymphocytes. With the
water bath AR method heating sections in 0.01 M citrate buffer pH 6.0 at 95℃
for 40 min, heating rinse buffer at 29℃ and elongation of biotin masking time
to 25 min, the endogenous biotin products diminished. The present
m o d i f i c a t i o n h a s o p e n e d t h e g a t e f o r t h e wide application of the
supersensitive indirect immunohistochemistry to autoimmunostaining.
H-146
Co-localization of GABAA receptor and glycine receptor
immunoreactivity on the trigeminal motoneurons of rats
in the course of their development
○Hiroyuki Hayashi、Hideko Tsuzuki、Akira Kawata、
Kazuyosi Higashi、Koji Takahashi、Osamu Takahashi
(Department of Oral Histology, Kanagawa Dental College, Yokosuka, Japan)
GABA and glycine are thought to be major inhibitory neurotransmitters.
This study was undertaken to demonstrate co-localization of GABAA receptor(GABA-R-LI) and glycine receptor - like immunoreactivity (Gly-R-LI) in the
trigeminal motor nucleus (Vm) during their postnatal development.
Experiments were carried out on female Wistar rats of 0 to 35 days old.
Animals were perfused transcardially, and serial frozen sections were made
through the brain stem. GABA-R-LI and Gly-R-LI were detected with
immunohistochemical double fluorescent methods. At 7 days old Gly-R-LI
profiles were aggregated in the dorsolataral part of Vm. They were seen on
the cell membrane of the somata and the proximal dendrites, and some cells
were also labeled with GABA-R-LI. In 28 to 35 days old animals Gly-R-LI was
almost disappeared in confine of Vm but GABA-R-LI were still observed on
almost all motoneurons of Vm neuronal cell. These results suggests that
receptors for inhibitory neurotransmitters shift their distribution in the
transition phase from suckling to biting behavior of the rat.
H-147
Disrupted α-MSH secretion from pars intermedia in a cold
environment is regulated by NPY- and TRH-neurons
of hypothalamus in Xenopus laevis
○1 Yoshikazu Tonosaki、1 Keiji Nishiyama、
1
Hiroyuki Yaginuma、2 Eric W Roubos
(1Department of Anatomy, School of Medicine, Fukushima Medical University,
Fukushima, Japan、2Nijmegen Institute for Neurosciences, Department of Cellular
Animal Physiology, University of Nijmegen, Nijmegen, The Netherlands)
Low temperature induced a disrupted α-MSH secretion from pars intermedia
(PI) of pituitary in vivo and darkened a skin color of white-adapted Xenopus
laevis contrary to a background adaptation. In this study we examined a
regulating process of a cold induced α-MSH release from the PI. A direct
cold stimulus to the PI did not increase the α-MSH release in vitro. Therefore
we focused a regulation of central nervous system, and analyzed activated
neurons of hypothalamus in a cold environment using Fos (as neural active
indicator) double fluorescence immunocytochemistry with NPY or TRH. Fos
expression decreased in NPY-containing neurons of ventrolateral area of
suprachiasmatic nucleus (SC) at 3 days of 5゜C cold exposure in white
adapted Xenopus laevis as compared with the control of 22゜C, but increased
in TRH-containing neurons of magnocellular nucleus (Mg). We conclude that
low temperature induces inactivation of the NPY-neurons in the SC and
activation of the TRH-neurons in the Mg of Xenopus laevis , then α-MSH of
the PI is released to darken skin color with disruption of background
adaptation.
H-148
異種分子構造・同一香気分子群における供与性電子密度
○石川 陽一、角田 幸子、酒井 真、Afraz Quraish 、
楊 俊麗、小田 哲子、岸 清
(東邦大学 医学部 第一解剖)
【目的】ニオイ分子のニオイ情報とはなにかを解明するために、a) 各種のニオイ
分子内の電子供与性反応部位とその強さ、およびb) その分子の調香師のニオイ
の種類と強さに関する判定との関係を統計学的に解明してきた。今回は、異な
る分子構造で同一香気をもつ分子群の反応性とヒトのニオイ識別との関係を解
析した。【方法】ビターアーモンド、ジャスミン、バラ、桂皮、ベルモット、シ
トロネラール、リナロール、レモン、緑茶、および果実様香気の10種類の香気
をもつイソブテニール基とフェニール基を母核とする20分子(Sturn, W., 1962)、
およびカカオ香気をもつ13種類の分子(Boelens, H. and Heyde, J., 1973) の供与
性電子密度(福井謙一ら、 1954)の分布をCACheプログラム (Oxford, Version
3.8) で解析した。各分子の供与性電子密度と調香師のニオイの種類の判定との
関係を判別分析法、t検定で解析した。【成績と結論】同一香気を持つ分子は、
結合距離を同じくする位置に共通の電子供与性反応点を持つこと、ニオイの違
いによってこれらの反応点の反応活性が異なることが明らかとなった。
H-149
Expression of porcine myocilin in ocular tissues and glaucoma
○1 Setsuko Noda、1Naoko Takayasu、1 Yumi Takanashi、
2
Hideo Tsukamoto、3 Nobuyoshi Shimizu
(1Department of Nursing, School of Health Science, Tokai University, Isehara,
Japan、2Division of Molecular Science,School of Medicine,Tokai University、
3
Department of Molecular Biology, School of Medicine,Keio University)
Purpose and Methods:To study the normal role of myocilin and the
mechanisms by which this gene cause glaucoma, we developed and
characterized an antibody against a portion of a smaller paused domain in
exon 2 of porcine myocilin and investigated the expression of myocilin in the
porcine ocular tissues by Western blot analysis and immunohistochemical
staining using the light and electron microscope. Results and Conclusions:By
Western blot analysis, the peptide antibody recognized a distinct major band
in fresh samples from retina and optic nerve. By immunohistochemistry,
immunoreactivity for myocilin was observed predominantly in the axons of
optic nerve ganglion cells and optic nerve axons. Therefore, myocilin gene
mutation and change of myocilin are likely to affect the architecture of the
optic nerve head and induce various forms of glaucomatous optic nerve
damage.
J.A.A.
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