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技術記事 MS-2124 - Analog Devices

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技術記事 MS-2124 - Analog Devices
技術記事
MS-2124
.
高速 ADC の AC 動作を理解する

 

(1)
著者: David Kress, Director of Technical
ここで、q は LSB の大きさで、N は出力ビット数です。この波
形の振幅の RMS 値は単純に振幅を 2 の平方根で割った値です。
Marketing, Analog Devices, Inc.

要約
回路設計者は一般的なコンバータの AC 性能特性と概念―量
子化、サンプリング、信号対ノイズ比+歪(SINAD)、有効ビ
(2)
そして量子化ノイズの RMS(実効値)は次式で与えられます。

ット数(ENOB)、アパーチャ・ジッター・ノイズ、歪み積、ス
(3)
プリアス・フリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)—を理解す
る事により、性能、コストなどの各種設計目的を達成するため
のコンバータ部品選定を的確に行えます。
量子化ノイズの RMS 値に対するフルスケール信号の RMS 値
の比が ADC の理想の SNR となり、デシベルで表します。

生、医療、自動車そして工業部門でさえ、それらに使
用されているますます多くの電気製品にデータ、音声
通信、オーディオ、画像処理に必要な高速信号技術が
利用されるようになりました。これらのアプリケーシ
ョンではそれぞれ違う帯域の信号が処理され、それに応じて異
なるコンバータ構成が使用されますが、候補となる ADC(A/D
コンバータ)を比較したり、特定回路の性能の評価を行う時、
いくつかの特性はそれらのアプリケーションに共通になりま
す。得に、これらの異なるアプリケーション部門に従事してい
る回路設計者は彼らのシステム性能を制限する可能性がある
いくつかの汎用コンバータの AC 性能特性に関わっています。
民


















(4)


この式は N ビットコンバータの理論的な限界を表している事
を念頭においてください。現実の量子化回路ではこのレベルの
性能は得られません。実際のコンバータには他にノイズ源があ
ります;しかしこの値を候補となる ADC を判定するための参
考として使う事ができます。
量子化
すべての ADC は時間的、振幅的に連続の入力信号を受け入れ、
量子化された離散時間のサンプルを出力します。ADC の 2 つ
の機能(量子化と標本化)はアナログ信号領域からデジタル信
号領域へ効率的な変換を行いますが、各々の機能はコンバータ
の AC 特性に影響を与えます。
デジタイザが連続入力信号を分解できるコード数は有限なの
で、その出力にはのこぎり波の形の誤差関数が生じます。のこ
ぎり波のエッジは ADC のコード変化部分に一致します。
量子化誤差のベスト・ケースのノイズ分布の結果を推測するた
めに、完璧なデジタイザへフルスケール・サイン波を入力する
事を考えます。
図 1.(上)標本化回路はベース・バンド信号 fa(青)の影像(赤)
を発生させ、サンプリング周波数 fS とその高調波からオフセット
をもって現れます。
(下)スペクトル・オフセットは ±fa と同等です。サンプリング・
レート近くで生じる信号、ノイズそして干渉スペクトルはベー
ス・バンド内に折り返されます。影像は又さらに上のナイキスト
領域にも現れます。
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利
の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標
は、各社の所有に属します。※日本語資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。
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February 2011 | Page 1 of 4
MS-2124
技術記事
標本化
標本化回路の特長の中で最も良く知られている事はサンプリ
ング・レートの半分(fS/2)以上の周波数で起こる折り返し信号
エネルギーの特性です。(ナイキスト周波数と呼ばれる)この 1/2
サンプリング・レートの制限はスペクトルをナイキスト領域と
呼ばれる同じ大きさの区域に分割します。第1ナイキスト領域
は DC から fS までです。第 2 ナイキスト領域は fS/2 と fS の間
のスペクトル範囲です。以下同様です。
現実には、標本化回路により信号は全ナイキスト領域に折り返
されます。
例えば、周波数 fa のベース・バンド信号のイメージ(影像)
は fS ± fa、 2fS ± fa などのように現れます(図 1,上)。似たよ
うに、サンプリング周波数近くに存在する信号は第1ナイキス
ト領域に折り返されます。その信号の影像は第 3 と第 4 のナイ
キスト領域にも同様に現れます(図 1,下)。従って標本化回路
に対象とする領域以外のナイキスト領域の入力信号エネルギ
ーが加わると、単純な折り返しにより、注目のナイキスト領域
にその信号の影像が現れます。
(図 1 の下で fa として示したように)帯域外信号のエネルギ
ーは目的とされている信号源から来るとは限りません。その代
わりに、このエネルギーはノイズ源(帯域外干渉源、又は目的
とされている入力信号を駆動する回路素子によって生じた歪
み積)から来る可能性もあります。
これはお客様のアプリケーションで要求される歪み特性を求
める時、重要な検討課題です。
標本化回路入力の前段の信号処理回路にべースバンド・アン
チ・エリアシング・フィルタを接続する事により標本化回路に
侵入してくる帯域外信号エネルギーの量を減らすことができ
ます。理論的にはデジタル化したい最高周波数の2倍の周波数
でサンプリングする事ができる事になりますが、いわゆるブリ
ックウォール・フィルター(遷移帯域がゼロのフィルタ)はア
ナログ領域には存在しません。オーバーサンプリング( 2fS 以
上の周波数でサンプルイングする)によりアンチ・エイリアシ
ング・フィルタの遷移帯域にいくらかのスペクトル上の余裕を
つくる事ができます。
もし ADC の量子化ノイズが AC 入力信号と相関がなければ、
ノイズは第1ナイキスト領域に分布します。このような場合、
又オーバーサンプリングによりナイキスト領域が拡大され、実
効量子化ノイズが減り、サンプリング・レートを 2 倍にするご
とに S/N 比(信号対ノイズ比)が 3 dB 改善されます。この場
合固定通過帯域のアンチ・エイリアシング・フィルタを想定し
ています。十分なオーバーサンプリングが施されれば、アン
チ・エイリアシング・フィルタは帯域外信号を減衰させる事が
でき、折り返された影像をノイズ・フロア以下に保つ事ができ
ます。
入力信号がサンプリング周波数の約数にロックしていると、量
子化ノイズがナイキスト領域を通して均一のエネルギー分布
としては現れない事に注意してください。この場合、量子化ノ
イズは信号の高調波の周辺にかたまって現れます。従って、サ
ンプリング・レートを選ぶ時にはアプリケーションで使われる
信号のスペクトル特性を注意深く考慮する必要があります。
SINAD
と ENOB
歪み積や帯域外スペクトル成分からの折り返しがノイズ・フロ
ア以下に保たれないと、これらは SINAD(信号対ノイズ+歪)
に影響を及ぼします。SINAD はコンバータのデータシートに
は入力信号の特定条件のもとに dB で表示されています。
(ADC
の AC 特性としておそらくもっとも一般的に引用されている)
コンバータの ENOB(有効ビット数)は単純に SINAD を dB の
代わりにビットで表したものです:




(5)
歪み積と折り返し信号エネルギーがノイズ・フロア以下に保た
れている場合は、SINAD = SNR となります。
この場合、式 5 は単純に式 4 を N について解く式に並べ変え
ただけです。 もっと一般的なケースは SINAD < SNR となる
場合です。コンバータの SINAD は動作条件と信号条件に影響
されるので、お客様のアプリケーションで観測される SINAD
(そして、それに対応した ENOB)はそのアプリケーション上
で ADC がどのように駆動されているかに寄ります。
ENOB はしばしば引き合いに出されますが、高速コンバータの
性能を述べるには不十分です。高速コンバータにはかなり多く
のパラメータがあり、どの1つの値も仕様表に記述されている
全体像を掴む事はできません。お客様が数字の重要性に過度に
依存しない限り、候補となるコンバータを比較するのに、
ENOB は妥当なスターティング・ポイントになります。
図 2.候補となる高速 ADC の間での比較で、ENOB は(荒くであれ
ば)便利ですが、SINAD 対周波数を示す特性曲線はコンバータの
特性についてより深い理解を提供します。
(多くの高速コンバータのデータシートには表示されている)
SINAD 対周波数特性曲線はもっと価値があります(図 2)。こ
れらの特性曲線を利用する事により、製造メーカーがデータシ
ートの特性表を作成するために選んだ特定の周波数ではなく、
お客様のアプリケーション上で対象となる周波数での少なく
ても標準的な性能を理解する事ができます。
February 2011 | Page 2 of 4
MS-2124
技術記事
式 7 を書きなおすと次のようになります。
アパーチャ・ジッター・ノイズ
前述したように式 4 を導いた量子化ノイズの計算では理想的
なデジタイザを想定しております。ここではノイズのない信号
とクロック源が使用されると仮定しています。実際の回路では、
信号は前段の信号処理回路で加わるノイズと歪み積といっし
ょに ADC 入力に印加されます。ノイズの内容は通常量子化ノ
イズと相関がないので二乗和平方根で加わります。




(6)

(8)
コンバータ内のジッター源に加え、お客様のアプリケーション
回路に起因するジッター源がある事に注意してください。それ
故、回路が達成する真の性能はコンバータの選択と回路設計の
他の部分の品質(得にクロック発振回路と回路基板レイアウ
ト)の両方の関数になります。
指定された ENOB での最大周波数に対し、ジッターがどのよ
うに影響するかの感触をつかむために、それぞれ 1 ps と 2 ps
のジッター・ノイズがパラメータを制限する他の性能を左右す
る 2 つのシステムを考えます。
ここで en(i)は m 個の互いに相関のないノイズ源をもつシステ
ムの中の1つの影響を及ぼしているノイズ源からのノイズで
す。
影響を与えるノイズ源の1つはサンプリング・クロック・エッ
ジのタイミングの不確定性(アパーチャ・ジッター・ノイズに
なります)に起因します。このノイズは標本化回路が AC 信号
を(いわば移動している目標に向かって)取得する事からもた
らされます。サンプリング・エッジのタイミングの変動の結果
は、標本化回路が取得する振幅の統計分布(ノイズ)になりま
す(図 3)。信号周波数が高ければ高いほど、信号の傾斜又は
スルーレートが大きくなり、エッジ・タイミングの指定された
変化での振幅誤差はより大きくなります。つまり、指定された
大きさのアパーチャ・ジッターでの影響は信号周波数に依存し
ます。
式 8 を書き直す事により、指定のジッターに対して規定の
ENOB(又は SNR)が得られる最大信号周波数を計算する事が
できます。
表 1.互いに 2 倍違うジッター時間をもつ2つのシステムの比
較
ENOB
SMR (dB)
fMAX (tj = 1 ps)
fMAX (tj = 2 ps)
(bits)
20
122
124 kHz
62 kHz
18
110
496 kHz
248 kHz
16
98
1.98 MHz
9.93 kHz
14
86
7.94 MHz
3.97 MHz
12
74
31.7 MHz
15.8 MHz
10
62
127 MHz
63.5 MHz
歪み積
信号処理系統の非直線性は数々の歪み積----得に HD2(2 次高
調波歪)、HD3(3 次高調波歪)、IMD2(2 次相互変調歪)、IMD3
(3 次相互変調歪)----を発生させます。リニア回路の歪は信号
が能動素子のリニア動作範囲の限界に近づくと徐々に増して
いく傾向にあります。コード空間が突然終わる ADC はこれに
当てはまりません。
従って予定している入力振幅に対し低歪の量子化を望むので
あれば、十分な範囲の入力スパンをもたせる事が重要です(特
に複雑な広帯域信号を処理する場合)。結局、SNR の最適化
を希望する場合は、クリッピングを避けるために、バランスの
とれた信号スパン・ヘッドルームをとるように公称入力振幅を
選択する事になります。
図 3.アパーチャ・ジッター(サンプリング時間の不確定性)は、
ジッター時間中の信号変化により信号周波数に依存するノイズ振
幅を生じます。
アパーチャ不確定性による SNR









(7)
名前が示すとおり、高調波歪みは信号周波数の倍数の周波数で
信号ノイズを発生します。それに対し、相互変調歪みは 2 種類
以上の周波数(実際にはあらゆる複合波形)で構成された信号
を印加した場合の信号処理回路の非直線性に由来し、入力信号
の和と差を生じます。
ここで、f は信号周波数で、 tj は rms アパッチャ・ジッターで
す。候補となる ADC の中で選択する時、問題は信号の周波数
が決められていて、達成しなければならない SNR が指定され
ている時、お客様のアプリケーションにおいて許容できる最大
アパーチャ・ジッターは何かです。
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MS-2124
技術記事
狭帯域のアプリケ―ションでは厳密に調整されたアンチ・エイ
リアシング・フィルタを使う事によりある程度の高調波歪み積
と IMD2 の付加的な成分さえも減衰させる事ができます(図
4)。一方 IMD3 の差の成分(2f2 – f1 と 2f1 – f2 に現れる)は信
号スペクトル以内に現れるので致命的になります。
図 4. 5 MHz と 6 MHz の 2 トーン入力信号は HD2 (10 MHz と 12
MHz にて)、HD3 ( 15 MHz と 18 MHz にて)、IMD2 (1 MHz と 11
MHz にて)、 IMD3 (4 MHz と 7 MHz にて)を生じます。
これらの中で、 IMD3 積はソース信号に隣接しているので、アン
チ・エイリアシング・フィルタで減衰させるのは最も難しい事で
す。
SFDR
SFDR(スプリアスフリー・ダイナミック・レンジ)は単純に
コンバータのフルスケール・レンジ(dBFS) 又は入力信号レベ
ル(dBc)と比較したワースト・ケース・スペクトル・ノイズの
大きさです。ADC を比較する時は、リファレンス・レベルと
動作条件、信号条件の両方を確認してください。データシート
の仕様を直接比較する場合はレファレンスと信号が一致して
いなければなりません。(図 5)
2011
図 5.コンバータ製造メーカーは SFDR 性能を規定するために、コ
ンバータのフルスケール(dBFS)を基準にするか又は特定の入力信
号振幅(dBc)を基準にします。従って数値の比較をする前に候補
となるコンバータが同じ基準で規定されているか確認してくださ
い。
SFDR はコンバータの仕様表に数値データとして表示されて
いますが、大きさそのものはサンプリング・レート、信号振幅、
信号周波数、同相動作点がパラメ―タになっています。実際の
アプリケーションの条件と類似した動作と信号条件でのコン
バータの性能をつかむために、候補となっているコンバータの
特性曲線を確認してください。
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February 2011 | Page 4 of 4
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