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配布資料 - 福山大学
1 備後6大学連携講座 14 平成28年10月開講 福山大学 備後地域の食文化と 次世代に伝え継ぎたい家庭料理 福山大学 生命工学部 生命栄養科学科 准教授 石井 香代子 2 【 本日のお話 】 1.日本の食文化 2.ユネスコ世界無形文化遺産に 3.変わりつつある日本の食事 4.日本の家庭料理と食文化 5.備後地域の食文化と料理 6.伝え継ぎたい家庭料理 3 1.日本の食文化 4 日本食の起点 1.古代 狩猟から農耕へ稲作の始まり 2.中世 農耕・稲作・仏教の伝来・肉食 3.近世 稲作・商業・肉食・魚食 4.近代、現代へ 養殖・稲作・脂肪食・ 肉食・魚食・小麦粉食 5 日本食の歴史 アジアのなかの日本食 日本食といえば、米を思い浮かべる。朝鮮半 島でも中国、東南アジアの国々でも、米が食べ られており、そして日本でおかずと言えば、今 でこそ肉の消費量は増えたが、やはり魚の イ メージが強い。こうした米と魚は、基本的には 東南アジア・東アジアというモンスーン アジア の大きな特徴で、高温多湿で大量の水が 必要 で、そこには魚が棲むことから、米と魚の文化 が生まれた。 6 食材の歴史(米) 東南アジアと日本(地図) 米の伝来 日本 米飯食の国々 東南アジア、 中国、朝鮮半島 朝鮮半島から九州 へ渡り、各地へ 7 日本食文化の進展 その1 大饗料理(平安時代) 最も古い料理様式、神様への供え物・祝い料 理。貴族が大臣に任じられた時や正月などに、天 皇の親族を招いて行う儀式料理。味付けは塩・ 酢・醤油を自ら混ぜて付けて食べた。 精進料理(平安~鎌倉時代) 肉食忌避の思想に基づいた高度な調理技術は、 僧侶から一般にも広まる。禅院の僧侶たちで彼ら は広い意味で料理人、伝統的な包丁人ではなかっ た。中国からの移入によって成立した。 8 日本食文化の進展 その2 本膳料理(鎌倉~江戸時代) 大饗料理の儀式的要素と精進料理の技術的要 素とが組み合わされたもの。ここに本格的な料 理様式が成立した。七五三という奇数の膳 組を 基本とする。 懐石料理(江戸時代~) 懐石料理は、茶の湯の発達に伴うもので、茶 会でお茶を最も美味しく楽しもう とする精神か ら生まれた。とくに茶の湯は、禅院の茶礼と関 係が深く、 精進料理の系譜にも繋がっており、 味覚面のみならず精神面も重視された。 9 和食の定義について 日本料理との違い 日本料理というと、一般的には料理屋 さんで出される料理のことを指す。 和食の定義 家庭で出される料理を一般には和食と 呼ぶ。 料理は、飯、汁、副菜3種の一汁三菜 10 和食の組合せ 一汁三菜 一番、基本になる 組合せ ※香の物(漬物)あり 本膳料理 11 箸の文化 和食を支えているのがお箸。箸のみを使い、ご 飯を食べるのは日本人だけ。 奈良時代にピンセットのような形から始まり、 現在の形に変化した。日本人の器用さの原点! 椀に口を付けて食す様式である。また、汁はす するように食す。 箸は個人所有が基本である。 (アジア圏では共有するので 個人所有はない) 嫌い箸と言って、箸の使い方は 躾として重要視されていた。 12 ちなみに正しい箸の持ち方、 出来てます?! 13 年中行事を大切に守る 祭りや人との関わり 季節の行事を楽しむ、季節を感じる 14 2.ユネスコの 世界無形文化遺産に 15 2014年(平成25年12月) ユネスコ 世界無形文化遺産に認定された 世界無形文化遺産に申請。和食という料理 のみでなく、食文化も含めている 16 日本食の認定内容 1.多彩で新鮮な食材とその持ち味の尊重 2.健康的な食生活を支える栄養バランス 3.自然の美しさや季節の移ろいの表現 4.正月などの年中行事との密接な関わり 17 1.多彩で新鮮な食材 南北に長く、海、山、里と表情豊 かな自然が広がる日本の国土。 各地で地域に根差した多彩な食材が 用いられ、素材の味わいを生かす調 理技術・調理道具が発達している。 18 19 2.健康的な食生活 一汁三菜を基本とする食生活は栄養 バランスがとりやすく、だしの うま味や発酵食品をうまく使い、 動物性油脂の摂取量をセーブ。 日本人の長寿や肥満防止に役立って いる。 20 発酵食品やうま味の素・栄養バランス 栄養の合言葉: 何でもか頼りなく食べま しょう、和食のバランスOK 21 3.自然の美しさ、季節の移ろい 季節の花や葉などで料理を飾り付 けたり、季節に合った調度品や器を 利用するなど、自然の美しさや四季 の移ろいを表現することも和食文化 の特徴の一つです。 22 秋の風景、食材、料理 23 4.正月などの年中行事との関わり 日本の食文化は、年中行事と密接に 関わって育まれてきました。 自然の恵みである「食」を分け合 い、 食の時間を共にすることで、家族や 地域の絆を深めてきました。 24 家族で過ごす 正月祝い膳、お屠蘇、雑煮 25 ちょっと、いっぷく 江戸時代では、米はお金の替わり 年貢 米が税金に、支払いに 石高(こくだか)は、表高(おもてだか)と 内高(うちだか)に分かれ、 一石は、150㎏(1年間に食べられる量) 今のお金に換算すると、75,000円也 (10㎏が、5,000円) 各藩の格付けにも利用 26 3.変わりつつある 日本の食事 27 最近の食料自給率 聞き取り 調査時期 出展:農水省HPより転記 28 国別の食料自給率(平成21、23年) 農水省HPより 29 正月にお節を 食べた人の割合 1/4は食 べてない 1日1回はお米を 食べたい人の割合 半分近くは 食べない でもOK 農水省HP:「博報堂生活総研「生活定点2012」より 30 昭和37年➡平成22年 穀類支出金額 の変遷(約50年間) 金額は増え てますが‥ 農水省HP:総理府統計局「家計調査年報」より転記 31 食糧費に占める外食と中食の割合 農水省HP:総理府統計局「家計調査年報」より転記 32 今から約40年前の 給食 現在の給食 給食写真:無料サイトより掲載 先割れスプーンを使う 箸を使う 33 4.日本の家庭料理と 食文化 34 日々取れたものを食していたが 野菜と魚介類の二大食 料理を作ることが減り つつあるのが危惧され 材に支えられる食文化 る。 である。 昭和40~50年代か 日本人の暮らしに深く ら洋食が家庭にも浸透 関わる稲・米。 し、カレーライスなど が普及した。今後はカ レーライスが家庭料理 になるのでは? すきやき、トンカツも 家庭料理になるでしょ う、将来には…。 35 祭りや祝いなど年中行事と 食生活が関連していた 自然の尊重‥自然の恵みに感謝。「いただ きます」「ごちそうさま」 自然の神様へのお供え、祖先を敬う 人々との付き合い‥薄くなりかけている? ハレの日で健康と長寿を願っていたが、 現代では日常的にハレの日の食事になっ た。 ハレの日、ケの日の区別が無くなった。 家族が大家族から、核家族へ変化するに連 れ、伝承される家庭料理が少なくなった。 36 日本の稲作は健在か? 平成27年度98% (食用100%)で自給率か らいうと健在のようです。 ホッ! 37 5.備後地域の 食文化と料理 38 『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料 理・広島県』の聞き書き調査・研究 調査の目的は、家庭料理の記録、保存を行 い、最終的にレシピを残したい。 平成25年から、昭和30~40年代に食 べられていた料理について、日本調理科学 科会特別研究として、農文協(出版社)と共同 で聞き取り調査を行った。 学会員が各地域に出向いて、そこで暮らす 60~80歳代の方々にインタビューして 食生活と当時の料理、行事との関わりにつ いてまとめた。 39 広島県の中の備後地域 広島県地図 福山市、尾道市、三原市、府中市、 世羅町、神石高原町を聞き取り調 査。 ★福山グループによる 広島市 安芸地域 備後地域 40 料理の選定基準 1)1960~1970(昭和35~45)年頃までに 定着していたもの。今から40年程前 2)地域の気候・風土や暮らしに基づくも の(ハレ食も日常食も含む) 3)聞き書きによるエピソードの存在(言 い伝え、由来、マナー・食べ方、思い出 など) 4)県全体を代表するように料理を選定 (100種類を選定) 41 備後地域・福山市の料理 日常食:主食はご飯や炊き込みご飯だっ た。大豆は野菜と一緒に煮てよく食べ た。大麦、小麦は小麦粉と交換した。麦 みそ、醤油自家製。川魚は干してだし に、鮒めし、うなぎも食べた。鯖、鯵、 鰆、鱧、ままかり、ひらなどの魚をよく 食べた。 行事食:「七草」せりやなずな等、畑に あるものを入れた。お祭りの前夜祭には うずみや、巻き寿司、バラ寿司。「婚 礼」には鯛めんを食した。 42 備後地域・福山市の料理 ばら寿司(魚あり) ぶり雑煮 うずみ 43 備後地域・福山市の料理 白和え 鯛そうめん くわいの唐揚げ 煮じゃあ 44 備後地域・尾道市 (山間部) 日常食:主食は押し麦ごはんと野菜類が中心であっ た。麺類は購入。はったい粉は自家製。朝食:麦 飯・味噌汁・目指し、昼食:麦飯・野菜煮〆・お浸 し、間食:ふかし芋、炒り空豆、夕食:麦飯・野菜料 理・干し魚程度。一汁一菜が中心。煮干しいりこの みを様々な料理に使用した。いりこはおやつにもそ のまま食べた。 行事食:正月:ブリを1本買って蔵に吊るし保存し ながら大事に食べた。旧正月は餅つき、雛祭り:あ られ、ひし餅、端午の節句:ちまき、柏餅、盂蘭盆: 素麺のみ。行事ごとにちらし寿司を作って中身は牛 蒡や人参位を入れ、錦糸卵も飾った。 45 備後地域・尾道市の料理 島しょ部、沿岸部 しば寿司 漬け込み 作業の様子 たこの軟らか煮 でべらの乾燥 たこ飯 46 山菜のお浸し いぎす豆腐 おお汁 あずま 47 備後地域・三原市 島しょ部、沿岸部 たこの天ぷら 茹でたてのたこ 山間部 ぬりつけ みかん餅 48 府中市 日常食:麦飯(麦飯を炊いて、弁当には底の 白いごはんを入れ。おかずは大根を煮たもの など野菜を炊いた料理 行事食:しろみて(田植えが終わった時)に また、ぬりつけ(餅をついて、あんこをつけ たもの)、破竹の煮物(破竹+手掘りのじゃ がいも+たまねぎの葉)、さばの煮つけを食 べた。 49 備後地域・神石高原町 こんにゃく(芋)の刺身 柏餅 ふきのとうのごま酢合え 50 備後地域・世羅町 日常食:昭和30年代には、野菜、豆は 畑で取れたものを自給、また、保存して おいて使った。おかずは野菜が主体で、 季節に採れた野菜を、あげやいりこを入 れて炊いた。今と比べるて野菜の種類も 少なかった。 行事食:正月のおもち、田植えでは、 大きなおはぎ(黄な粉のおはぎ)を重箱に入 れて田んぼに持って行った。 51 備後地域・世羅町 いわし漬け 「郷土料理としてい わし漬けがあるが、 現在の住宅事情な ど家庭で作る事は 難しいと思う」と聞 書き調査の時言わ れた。 世羅町の「カメリア」 で販売されている。 既製品の鰯漬け 鍋料理に したところ 52 備後地域の食材の特徴 瀬戸内海の産物 魚介類(生,干し) 特に鯛やたこ 各種貝類 海藻類 だしの煮干し 農産物 米 野菜類 小麦粉 柑橘類 肉類、畜産物 鶏肉、いのしし肉 豊かな食材に恵まれている 地域である 53 6.伝え継ぎたい 家庭料理 54 備後地域で残していきたい料理 うずみ、たこ飯 ばら寿司 あずま、しばずし 藤飯、鯛そうめん えびみそ くわいの唐揚げ へらへら団子 べろ団子 煮じゃあ こんにゃく料理 いぎす豆腐 しばずし しょうゆめし 白和え(こんにゃく, 山菜) ぬた(わけぎ、竹輪・ かまぼこ、干椎茸、茹 でたこ) あずま(おから寿司) 55 主食類(米飯料理) 藤飯(黒豆) 祭りの大豆飯 たこ飯 ばら寿司 うずみ 56 主菜(主におかずになる) あずま寿司 でべらの焼き物 たこのぬた 57 副 菜(主に野菜料理) ふきのとうの天ぷら こんにゃくの白和え 58 副 菜(主に野菜料理) でべらのなます こんにゃくのみ そべったり ぜんまいの煮物 べろ団子(間食) 59 汁 物 ずいき団子汁 鰯漬けを使った鍋料理 野菜もたっぷり! 60 家庭料理再現をして下さった皆様 聞き取り調査から、実際の 料理までを再現しました。 福山市食生活改善推進員、 福山市保健所健康推進課の 方々にも、大変ご協力いた だきました(写真なし) 61 🌸最後にひと言🌸 買い物に行く、料理を考える、 料理を作る、誰かと食事を共にす る、 こんな日常の営みがずっと続いて 行きますよう願っています。 🌸調査した料理が本になります! 季刊誌「うかたま」別冊にて、料理別で全国 の家庭料理を紹介します。 乞うご期待❤ 62 聞き書き調査に携わった 日本調理科学会 広島県学会員 福 山 グ ル ー プ 福山大学 高橋知佐子、近藤(桒田)寛子、石井香代子 木村安美(現中村学園大学)、渕上倫子 中国学園大学 山口享子 福山市・三原市・尾道市、府中市、神石高原町を担当 広島女学院大学 渡部佳美、奥田弘枝 鈴峯女子短期大学 岡本洋子、政田圭子、原田良子 広島文教女子大学 木村留美 広島文化学園短期大学 前田ひろみ、村田美穂子、 海切弘子 地域に生活される方々 63 参考文献、資料 熊倉和夫編 和食-日本人の伝統的な食 文化ー 農林水産省発行 和食編集委員会編(農林水産省): 和食WASHOKU、マガジンハウス編集 日本調理科学会 「次世代に伝え継ぎた い家庭料理」調査結果より 農林水産省HP:和食関連記事 64 ご清聴ありがとうございました