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160号 - 愛媛県立宇和島南中等教育学校
人権だより 2010.7.16 宇和島南中等教育学校 人 権 教 育 部 № 160 感受性 教育研究部 近藤可奈子 く 「汲む」 茨木のり子 大人になるというのは 大人になってもどぎまぎしたっていいんだな すれっからしになることだと ぎこちない挨 拶 あいさつ 思い込んでいた少女の頃 失語症 みにく 醜 く赤くなる なめらかでないしぐさ た ち いふるまい 立居振 舞の美しい 子供の悪態にさえ傷ついてしまう 発音の正確な 頼りない生牡蠣のような感受性 素敵な女のひとと会いました それらを鍛える必要性は少しもなかったのだな なま が き み す ば ら そのひとは私の背のびを見透かしたように 年老いても咲きたての薔薇 なにげない話に言いました 外に向かってひらかれるのこそ難しい 柔らかく あらゆる仕事 ういうい 初 々しさがたいせつなの すべてのいい仕事の核には 人に対しても世の中に対しても 震える弱いアンテナが隠されている きっと…… 人を人と思わなくなったとき だ らく 堕落が始まるのね わたしもかつてのあの人と同じくらいの年になり お 墜ちてゆくのを 隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました ました たちかえり 今もときどきその意味を 私はどきんとし ひっそり汲むことがあるのです そして深く悟りました 私の好きな詩を紹介します。それは、茨木のり子さんの「汲む」という詩です。詩 の中でも特に好きなのは、「頼りない生牡蠣のような感受性」という部分です。生牡 蠣のようにぷるぷるとした、小さな刺激にも敏感に震える感受性。それはつまり、 自分の喜怒哀楽や人の痛み、喜びにさえ震える心のことを言うのでしょう。 この詩の語り手である「私」は「すれっからし」になること、言い換えると「心 を鈍感にすること」が「大人になること」だと考えていました。しかし「素敵な女 のひと」の言葉を聞き、いくら年を重ねても、本当に大切なのは、自分や人の心の 揺れに敏感である「生牡蠣のような」感受性を持ち続けることなのだと悟るのです。 疲れた時、自分のことで精一杯になりそうな時、私はこの詩を思い出し、ゴムの ように鈍く固くなった自分の心を見直します。詩中の「薔薇の花」の部分にもある ように、柔らかな感受性を刺激の多い人との関わりの中で保つことは簡単ではあり ません。読書や人権学習など、自分や他者の生き方とじっくり向き合うような時間 を持ちながら、人が生まれ持つ柔らかな感受性を、保ち、育んでいきたいものです。 この木何だかわかる? 校長室の前にある木ね。 ・・・ 日本の木ではないよね ち うね 杉原千畝って 書いてある ??? 第2次世界大戦の初期、ナチスによるユダヤ人虐殺が繰り広げ られ、多くのユダヤ人が難民としてヨ-ロッパ各地に流出してい ました。その中には、日本を経由してアメリカ等への脱出を希望 するユダヤ人が多数おり、杉原千畝さんが勤めていたリトアニア 領事館にもビザ(入国査証)の発行を求めて多くのユダヤ人が殺 到しました。杉原氏は外務省の「ビザ発行はならぬ」との指示に 背いて、28日間必死でビザを発行しつづけました。人の命を何 よりも大切にした行動です。このビザ発行により約六千人のユダ ヤ人の命が救われたのです。前期生が使う『歴史教科書』P.203 でも取り上げられているよ。 「私は外務省の命令にそむいてでも、 領事の権限で、ビザをだすこと にする。」 「ここに百人の人がいたとしても、私たちのようにユダヤ人を助けよう とは考えないだろうね。 それでも私たちはやろうか。」 〈千畝さんの言葉〉