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講義資料 (第9回) 内田

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講義資料 (第9回) 内田
2014/12/15
神経・筋疾患の病理
Department of Veterinary Pathology
筋組織の生検の病理検査(医学領域)
・凍結標本による検索が基本。
・複数の特殊染色や酵素染色を実施する必要がある。
末梢神経組織生検(医学領域)
・グルタルアルデヒド固定プラスチック包埋標本が基本。
・通常のホルマリン固定パラフィン標本に加え、
神経の解きほぐし標本による観察が必要とされる。
獣医学領域では、通常の生検と同様の処理が殆ど
Department of Veterinary Pathology
神経・筋組織生検を考える前に
 どの様な手順を踏んで病理生検に進むのか?
 組織はどのように処理すべきなのか?
 どれぐらいの精度で診断可能なのか?
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
神経・筋組織生検適応と部位の検討
適応の妥当性の検討
・犬種特異的なmyopathyあるいはneuropathyが多い(確認は?)
・家族歴など遺伝的背景の有無(検査方法や組織保存方法に影響)
・一般的身体検査、神経学的検査、血液生化学的検査(必須)
・電気生理学的検査および神経学的検査
筋疾患:筋原性vs.神経原性、全身性vs.局所性)
神経疾患:中枢性、末梢性、運動系、感覚系、あるいは自律神経系?
疾患リストの作成と採取方法・保存方法
・遺伝性疾患の場合、凍結材料の保管が望ましい
・採取場所の検討
・採取組織の処理方法の検討
Department of Veterinary Pathology
神経・筋組織生検組織の固定
(ホルマリン固定・パラフィン標本)
 神経(N2と記載)と筋(M1と
記載)の組織生検。それぞれの
両端が注射針で割りばしに固定
されている。
 ホルマリン固定の場合はこの様
に、神経・筋の過剰な収縮によ
る組織のゆがみが生じないよう
に処理する。
 可能であれは神経の近位・遠位
の方向を識別してマークしてお
くことが望まれる。
Department of Veterinary Pathology
筋組織生検の凍結標本とパラフィン標本の相違
筋組織の凍結標本(a, 10μm)とパラフィン標本(b, 2μm)のHE像。凍結標本
は、筋線維の状態(萎縮の程度など)が観察しやすく、パラフィン標本では
組織像がシャープで、間質に浸潤した個々の細胞形態(この写真には認めら
れない)や血管の病変などの描出が容易である。
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
筋・神経組織生検の凍結標本とパラフィン標本の相違
組織の種類
筋
凍結標本
パラフィン標本
神経
パラフィン標本
染色方法
目的
脂肪染色(Sudan Black B, Oil red Oなど)
過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色
脂質蓄積
糖原蓄積、基底膜の観
察
酵素染色(ATPaseなど)
I型筋・II 型筋の 分布確
認
免疫染色(ジストロフィン、メロシン、ザルコグリカン、 主 要 な 筋 ジ ス ト ロ
ジストログリカン、エメリンなど)
フィー関連蛋白の発現
状態確認
マッソン・トリクローム染色
間質結合組織と筋線維
の観察
リン・タングステン酸ヘマトキシリン(PTAH)染色
横紋筋構造と間質結合
組織の観察
抗デスミン免疫染色
筋線維の状態の観察
PAS染色
ルクソール・ファスト青(LFB)染色
マッソン・トリクローム染色
抗ニューロフィラメント免疫染色
抗Iba-1免疫染色
末梢性ミエリンの描出
ミエリン全般の描出
膠原線維増生の評価
軸索の観察
マクロファージ評価
Department of Veterinary Pathology
筋凍結標本による検索が不可欠あるは望ましい検索
筋の凍結標本を用いた酵素染色(ATPase pH10.4 )の染色像と抗ジストロフィン
抗体による免疫染色像(DAB発色)。
酵素染色によりI型筋とII型筋のモザイク構造が確認できる。
免疫染色により、筋膜に一致したジストロフィンの局在が観察され、ジストロ
フィン異常に起因する筋ジストロフィーではこの染色性が減弱もしくは消失する。
Department of Veterinary Pathology
筋型のモザイク構造確認の意義
Type groupingの検出
I型筋とII型筋はそれぞれ固有の神経
により支配されモザイク構造を形成
する。
ある特定神経が障害されると、その
支配を受けていた筋型の筋線維が特
異的に萎縮消失する。
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2014/12/15
神経原性筋萎縮の際の群萎縮Group atrophy
ある特定神経が障害されると、その支配を
受けていた領域の筋線維が群をなして萎縮
消失する。
Department of Veterinary Pathology
神経組織の特殊な検索方法
*神経疾患治療マニュアル http://www.treatneuro.com/ より転載
末梢神経組織の検索には、電子顕微鏡用の組織固定・包埋semi thin 標本のトル
イジンブルー染色による観察を実施する(ミエリン・軸索の観察に優れる)。ま
たオスミウム固定組織のときほぐし標本を作製して実施される。医学領域の神経
生検では前者は必須項目とされる。
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
イヌの主な筋疾患
Department of Veterinary Pathology
動物筋疾患の大分類
(1)炎症性筋疾患
感染症や免疫学的背景をもって筋が障害される疾患群。
(例)好酸球性筋炎、多発性筋炎、イヌの咀嚼筋炎
(2)神経原性筋疾患
上位・下位の運動神経障害に起因する2次的筋萎縮。
(例)馬運動神経病、幼獣型脊髄性筋萎縮症
(3)筋原性筋疾患
筋の1次的障害に起因する筋萎縮、変性、壊死。栄養性、
中毒性、労働性、代謝性、遺伝性(筋ジストロフィー)に分類。
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(1)炎症性筋疾患(原因不明の疾患群)
①好酸球性筋炎 Eosinophilic myositis
ウシ、ヒツジ、イヌで発生がみられるが、反芻獣とイヌでは
病態・病理発生が異なると考えられる。
イヌ:特にジャーマン・シェパードの咬筋炎。ミオシンに対
する自己免疫疾患が疑われている。
②免疫介在性筋炎 immune-mediated myositis
獣医領域ではイヌで報告が多い。関連疾患として多発性筋炎、
皮膚筋炎、咀嚼筋炎、眼筋炎など。これらの疾患の一部では
抗核抗体や抗筋抗体が確認されることもある。
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2014/12/15
好酸球
性筋炎
住肉胞
子虫症
好酸球
性筋炎
Department of Veterinary Pathology
イヌの主な炎症性筋疾患
1. 免疫介在性筋症
Department of Veterinary Pathology
咬筋炎masticatory muscle myositisの病理発生
 2M筋線維は肉食動物ならびにヒト以外の霊長類の咀嚼
筋に存在するため、イヌに特異性の高い筋疾患であり、
病理診断は臨床症状、抗2M筋自己抗体の有無等を加味
した上で実施する。
 病理学的には筋線維の変性壊死とリンパ球、形質細胞、
および組織球系細胞の浸潤と特徴とする。
 CD20、BLA36などのB細胞の表面抗原に陽性を示す
Bリンパ球の浸潤が優勢であり、本筋炎の病理発生には
自己抗体を介した免疫応答が非常に重要と考えられる。
 慢性期には、間質結合組織の増生と筋組織の変性消失
が顕著となるため、生検診断の価値は乏しい。
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2014/12/15
咬筋炎masticatory muscle myositisの病理像
Department of Veterinary Pathology
咬筋炎masticatory muscle myositisの病理像
Department of Veterinary Pathology
多発性筋炎 Polymyositisの病理発生
 イヌの多発性筋炎の病理所見:特発性多発性筋炎の活
動的病変としては、筋線維の変性壊死、間質における
リンパ球、組織球系細胞、および形質細胞等の単核細
胞浸潤が特徴的に認められる。
 免疫染色により炎症細胞の表面抗原を検索すると、T細
胞の浸潤が優勢であることが特徴である。
 本疾患では特異的な自己抗体が検出されないことが多
いこと、T細胞では特にCD8陽性細胞が多いことなど
から、病理発生として、細胞傷害性T細胞が筋組織傷害
に重要な役割を担っていると考えられている。
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2014/12/15
多発性筋炎 Polymyositisの病理像
Department of Veterinary Pathology
多発性筋炎 Polymyositisの組織像
Department of Veterinary Pathology
皮膚筋炎 Dermatomyositisの病理発生
 コリーあるいはシェトランド・シープドッグに発生。
 筋組織の間質にリンパ球と組織球系細胞の浸潤を特徴
とするが、小血管中心の炎症所見が皮膚および筋で認
められる場合がある。
 炎症細胞の主体はT細胞と組織球系細胞である点は多発
性筋炎と類似するが、T細胞では特にCD4陽性細胞が
多いとされている。
 このため液性免疫による免疫複合物Immune complex
の血管壁沈着が血管病変あるいは皮膚病変の形成に関
与すると考えられる。
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2014/12/15
皮膚筋炎 dermatomyositisの病理像
Department of Veterinary Pathology
外眼筋炎extra ocular myositisの病理発生
 臨床症状とCT検査所見などより外眼筋の腫大が確認
される。診断の確定は困難なため、リンパ腫等の疾
患を除外した上で、免疫抑制療法に対する反応を確
認する。
 外眼筋炎が疑われた症例の血清に骨格筋組織の横紋
に反応する自己抗体を検出した例があった。
 Western blot法等による詳細な抗原定性は実施して
いないため、本抗体の抗原や疾患との関連は不明で
あるが、組織検索を実施することが困難な部位であ
るため、本疾患における自己抗体の有無については、
今後も検討の価値があると考えられる。
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外眼筋炎extra ocular myositisの病理像
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
ウェルシュ・コーギーの炎症性筋症の病理発生
 Pembroke Welsh Corgi犬の舌萎縮を特徴とする疾
患は、炎症性筋疾患と思われる
 炎症巣ではB細胞と組織球系細胞が優位であり、IgG
やC3沈着が認められる点は咀嚼筋炎に類似する。
 蛍光抗体法の結果より、本疾患の発生機序には抗横
紋自己抗体が関与していると思われる。
 Western blot法の結果により、症例によって血清中
自己抗体には多様性があることがわかった。特に主
要抗原として42kDaの蛋白質の関与が示唆された。
 骨格筋に分布するCreatin kinase mitchondrial 2
等の蛋白が自己抗体の標的抗原と考えられる。
Department of Veterinary Pathology
ウェルシュ・コーギーの炎症性筋症の病理像
Department of Veterinary Pathology
ウェルシュ・コーギーの炎症性筋症の病理像
剖検後の舌のパラフィン標本HE組織像。
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2014/12/15
ウェルシュ・コーギーの炎症性筋症の病理像
大腿筋と側頭筋の剖検時組織像。炎症所見が主に大腿筋で確認される。
Department of Veterinary Pathology
ウェルシュ・コーギーの炎症性筋症の自己抗体
b
a
(kDa) 50
40
心
臓
肝
臓
肺 胃
腎
臓
脾 舌
臓 筋
咬 大 脳
筋 腿
筋
c
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多発性関節炎・多発性筋炎症候群の病態
 ミニチュア・ダックスやジャーマンシェパード
等で散見される。
 非びらん性多発性関節炎と多発性筋炎が併発。
 全身性エリテマトーデス(SLE)と類似するが血
清中の抗核抗体は陰性。
 四肢関節の腫脹と痛み及び全身性の筋萎縮。
 病理学的には血管周囲炎に随伴した筋変性が認
められる。
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2014/12/15
多発性関節炎・多発性筋炎症候群の病理像
Department of Veterinary Pathology
多発性関節炎・多発性筋炎症候群の病理像
Department of Veterinary Pathology
症例紹介①:
イヌ、シェットランドシープドッグ、8y3m、♂×
臨床事項
 主症状は開口不全。脚弱もみとめられる。
 ステロイドの治療に反応が乏しい。
 筋生検(側頭筋)を実施。
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2014/12/15
生検した筋組織像
Department of Veterinary Pathology
生検した筋組織像
Department of Veterinary Pathology
病理組織像のまとめ





筋肉組織に変性・萎縮等の変化は乏しい。
組織内の末梢神経組織に著変はない。
線維化や炎症を示唆する所見なし。
血管アミロイドの沈着の意義は?
関連文献なし。
現在のところ診断不明
予後等も・・・?
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2014/12/15
イヌの主な炎症性筋疾患
2. 感染性炎症性筋症
Department of Veterinary Pathology
感染性炎症性筋症
イヌやネコにおける感染性炎症性筋症の原因
原虫:ネオスポラ(イヌ)、トキソプラズマ(ネコ)
細菌:レプトスピラ、クロストリジウム
リケッチア:エーリヒア
ウイルス:ネコ免疫不全ウイルス
寄生虫:フィラリア、住肉胞子虫
真菌:スポロトリコーシスなど
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ネオスポラ感染症における筋組織の病理像
 病理学的にネオスポラ感染による筋炎あるいは神経炎
の病態は多彩。
 活動期の病変では、組織球系細胞、リンパ球、形質細
胞および好中球等の多彩な炎症細胞浸潤と、筋線維の
壊死が認められる。
 病変中に、原虫の偽シストが観察されることがあるが、
採取組織が限られる生検では、しばしば原虫体を確認
することが困難で非特異的な筋炎として診断される場
合が多い。
 筋生検において、殆ど炎症反応を欠いた組織中に偶発
的に原虫のシストが観察されることもある。
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
ネオスポラ感染症における筋組織の病理像
Department of Veterinary Pathology
イヌの主な筋原性筋疾患
・筋ジストロフィー
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筋ジストロフィーに関連する主な分子
ザルコグリカンの分布
エメリンの分布
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2014/12/15
主な筋ジストロフィーの分類
1)Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)
X染色体劣性遺伝。進行性筋変性。致死的。ジストロフィン完全欠損。
2)Becker型筋ジストロフィー(BMD)
X染色体劣性遺伝。DMDに比べ緩慢な進行。ジストロフィン不完全欠損。
3)肢体型筋ジストロフィー(LGMD)
常染色体優性(LGMD-1)/劣性遺伝(LGMD-2)。 複数疾患を含む。遺
伝子座が解明されたものよりABC順を付して細分類化。LGMD-1の原因は
規則性が乏しいが、LGMD-2の多くはザルコグリカン類やラミニンα2欠
損に起因する。
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新しい筋ジストロフィー分類概念(原因タンパク別)
(1)ジストロフィン異常症 (Dystrophinopathy)
Duchenne型(DMD) , Becker型(BMD)
(2)ザルコグリカン異常症 (Sarcoglycanopathy)
LGMD-2C、D、E、及びF
(3)メロシン異常症 (Merosinopathy)
LGMDの一部、先天性非進性(非福山型)
(4)カルパイン異常症 (Calpainopathy)
LGMD-2A
(5)ディスフェルリン異常症 (Dysferlinopathy)
LGMD-2B
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イヌの筋ジストロフィー
 Dystrophin異常に関連する症例を中心に非常に多くの研
究がなされている。
 国立精神・神経センターではゴールデン・レトリバーの
コロニーが維持され、基礎研究に利用されている。
 Dystrophin以外の分子に関する報告は比較的少ない。
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2014/12/15
ネコの筋ジストロフィーの病態
 比較的症例数が少ないため、詳細な研究が進んでいない。
 これまで、dystrophin, beta-sarcoglycan, Laminin
α2の減少あるいは消失に起因する例が報告されている。
 病態がヒトと異なる場合が多いとされる。
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筋ジストロフィー(Dystrophin欠損)
Department of Veterinary Pathology
イヌの筋ジストロフィー(Dystrophin欠損)
Dystrophin免疫染色
Laminin α2免疫染色
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2014/12/15
ネコの筋ジストロフィー(Laminin α2欠損)
Department of Veterinary Pathology
筋ジストロフィー(Laminin α2欠損)
Department of Veterinary Pathology
筋ジストロフィー(Laminin α2欠損)
Normal
Affected
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
産業動物の代表的神経原性筋
疾患
ウマ運動ニューロン病
Equine motor neuron diseases
1990年にJ.F.Cummingsらにより始めて報告された運
動失調を特徴とするウマの疾患で、北米での症例数が
圧倒的に多い。脊髄、脳幹の運動ニューロンが系統的
に変性・消失し、これに伴う運動失調、筋萎縮が生じる。
原因は不明。ヒトの萎縮性側索硬化症(ALS)との類似性
が指摘されている。遺伝性側面は不明。
運動ニューロン病
運動ニューロン病
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2014/12/15
馬運動ニューロン病における大群萎縮
ウシのアカバネ病
Spinal cord (C1)
LFB-HE
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アカバネ病の矮小筋症
矮小筋症
(3)筋原性筋疾患 Myogenic myopathy
筋原性筋病変の分類
①栄養性筋症
ビタミンE・セレニウム欠乏症(白筋症)、I型筋障害。
②中毒性筋症
モネンシン、コジポール中毒(病変は白筋症に類似)、I型筋障害。
③労働性筋症
筋色素(ミオグロビン)尿症、II型筋障害。
④代謝性筋症
ライソソーム蓄積症(糖質・脂質蓄積症)。ウシでは糖質蓄積。
⑤遺伝性筋症(筋ジストロフィー)
遺伝性かつ進行性の筋萎縮・変性疾患群。
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ウシ白筋症(心筋型)
ウシ白筋症の硝子様変性
イヌ・ネコの主な末梢性神経疾患
1.炎症性疾患
2.腫瘍性疾患
3.変性性疾患
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
1.炎症性末梢神経疾患
①特発性炎症性疾患
 変性あるいは炎症などにより、脊髄根あるいは神経節が
障害された状態を根神経症radiculoneuropathyという。
イヌでは特に犬種に特異性のない炎症性疾患が比較的好
発する。
 脳神経では特発性の三叉神経炎が認められる。
 免疫介在性末梢神経障害については、早期治療により症
状の改善が期待できるため診断的治療を優先すべきであ
る。
 病変が慢性化すると炎症病変は減弱し、髄鞘の脱落と
シュワン細胞および線維芽細胞の増生が顕著となり、非
可逆的病変が主体となる。
Department of Veterinary Pathology
主な炎症性根神経症
○
・
・
・
急性多発性神経根炎
別名:アライグマ猟犬麻痺
ヒトのGuillain-Barre症候群に相当
脊髄神経腹根、末梢神経が病変部位
○
・
・
・
慢性多発性神経根炎
慢性の進行性/回帰性の運動・感覚末梢神経障害を示す
末梢神経、脊髄神経根・神経節が病変部位
脊髄背索に二次的な脱髄と軸索変性を呈する
○
・
・
・
神経節神経根炎
別名:感覚神経症 ~ Sensory neuropathy ~
末梢神経、脊髄神経背根、脊髄神経節が病変部位
脊髄背索に二次的な脱髄と軸索変性を呈する
Department of Veterinary Pathology
主な炎症性根神経症の障害部位
疾患
急性多発性
神経根炎
慢性多発性
神経根炎
神経節神経根炎
脊髄神経腹根
脊髄神経根
神経節
脊髄神経背根
神経節
病変分布
Department of Veterinary Pathology
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多発性神経根炎(慢性)
Department of Veterinary Pathology
多発性神経根炎(慢性)
Department of Veterinary Pathology
神経節神経根炎(sensory neuropathy)
Department of Veterinary Pathology
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神経節神経根炎(sensory neuropathy)
Department of Veterinary Pathology
神経節神経根炎(sensory neuropathy)
sensory
Motor
Department of Veterinary Pathology
症例紹介②:イヌ、ポメラニアン、オス、1y7m
09年4月
2回目の6種ワクチン接種→視力障害、運動機能障害を呈する
同月中旬
眼科・MRI 検査で視神経に異常、肉芽腫性髄膜脳炎の所見
→プレドニゾロン療法開始
→視力は改善するも対光・威嚇反射の低下など異常は続く
9月
後肢の異常(ナックリング、不全麻痺)は継続
→MRIで病変は検出されず、視神経の異常所見は消失
11月
後肢の異常はさらに悪化→滑りやすい床では起立不可能
12月
前肢にも麻痺やナックリング
10年3月
努力性呼吸
4月7日
斃死
R
R
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
症例の病理所見
Department of Veterinary Pathology
症例の病理所見
Department of Veterinary Pathology
症例の病理所見
Department of Veterinary Pathology
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症例の病理所見
 脊髄神経根・節、 脊髄灰白質、三叉神経、視神経で炎症細胞浸潤
 炎症細胞は、T細胞、B細胞、形質細胞、マクロファージが主体
 脊髄神経根・節、三叉神経で脱髄、軸索変性・消失
 視神経で、髄鞘や軸索の消失、グリアの増生
・ 多発性神経根炎
・ 三叉神経炎
・ 視神経炎
併発?
Department of Veterinary Pathology
1.炎症性末梢神経疾患
②感染性疾患およびリンパ腫
 感染性の炎症性末梢神経疾患としては、イヌではジステン
パーウイルス感染症とNeospora caninum感染症の鑑別
が重要。
 これらの感染症については抗体のチェックやPCRによる
遺伝子検査等を組織生検の前に検討することが望まれる。
 原虫については特に採取された組織中に病原体が必ずしも
観察されない可能性が高い。
 末梢神経に局在するリンパ腫も発生するため、クローナリ
ティーの確認や免疫染色により特定クローン増殖の有無を
確認する。
Department of Veterinary Pathology
ネオスポラによる神経炎
HE染色
抗ネオスポラ抗体による免疫染色
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
神経原発リンパ腫
Department of Veterinary Pathology
イヌ・ネコの主な末梢性神経疾患
1.炎症性疾患
2.腫瘍性疾患
3.変性性疾患
Department of Veterinary Pathology
イヌの多発性神経症polyneuropathy
先天性:犬種に特有・遺伝性が多い。Lysosome病を含む。
後天性:原因はさまざま。
(1)免疫介在性炎症性疾患
(2)感染性・中毒性
①原虫疾患(ネオスポラ症)
②中毒(ヘビ毒、アクリルアミド、植物毒etc.)
(3)代謝性
①糖尿病性、甲状腺機能低下症etc.
②腫瘍随伴性paraneoplastic syndrome
(4)特発性
Department of Veterinary Pathology
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2014/12/15
多発性神経症の病理的アプローチ
 病理学的には障害の主体が、ミエリン鞘あるいは神経
突起のいずれに存在するのかを確認する。
 方法としてはミエリン鞘の状態をLFB-HE染色で、軸
索の状態を抗ニューロフィラメント免疫染色により評
価し、病変の主体が脱髄によるものか神経突起に存在
するのかを確認。
 病名の判断は臨床事項、傷害された神経の分布、およ
び病理組織像を総合的に判断する。
 疾患特異的な病理所見は非常に少ない。
 電気生理学的に上記を判断することは可能で、病変分
布は病理的検索では判断できないため、まずこれらの
非侵襲的な検査が優先されるべき。
Department of Veterinary Pathology
甲状腺機能低下症関連性neuropathy
 ヒトでは甲状腺機能低下症患者の72%で様々なレベルのポリニューロパ
チーを呈す。
 イヌでは進行性の四肢不全麻痺、筋萎縮、脊髄反射の低下などを起こす。
 死因としては喉頭麻痺、巨大食道症が多い→誤嚥の原因に
診断:血清中fT4濃度のみにより診断
fT4が低値で症状があっても、他の甲状腺機能低下症の症状がない例もある)
治療:甲状腺ホルモン製剤の投与により症状が2〜3ヶ月で回復した例も報
告されている。喉頭麻痺、巨大食道症は治療に反応しないことが多い
病理:感覚神経が侵されることが多い(脱髄、軸索変性)
原因:末梢神経性神経症の原因は不明
Schwan cellに対する傷害、軸索輸送障害(モデルラットで報告あり)
Department of Veterinary Pathology
糖尿病性neuropathy
 ネコで多い(イヌにもある)
 イヌでは症状が潜在性のことが多い
<診断>
・血糖値
<治療>
・インスリン投与
・インスリン感受性改善薬 など
<病理>
・髄鞘の変性・脱落が顕著、軸索変性も
LFB-HE
MTC
→髄鞘の脱落と再生を繰り返し、最終的には繊維化
<原因>
・ソルビトール蓄積説
・IGFs関連説
・酸化ストレス説
Department of Veterinary Pathology
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甲状腺機能低下と糖尿病関連neuropathyの病態
Department of Veterinary Pathology
多発性神経症の具体的な症状は多様(運動神経、感覚神経、自律神経)
原因も様々(遺伝性、中毒性、代謝性、腫瘍随伴性、免疫介在性、感染性)
臨床症状のみからこれらの原因を鑑別するのは困難
→現在手元にある症例を病理学的に検討し、それらの特徴を比較してみた。
Breed
Dog 1
Gender Onset Death
Border collie female
Major clinical signs
3m
1y1m
hindlimb ataxia, pain sensability loss,
megaesophagus, chewing front paws,
aspiration pneumonia
Dog 2
Chihuahua
male
1y7m
1y9m
salivation, bilateral eyelid reflex reduction,
continuous penis prolapse, ataxia,
forelimb paralysis, vertebral pain
Dog 3
Beagle
male
3y
11y
paddling-gait, bradycardia,
hypothyroidism, aspiration pneumonia
Department of Veterinary Pathology
病理組織所見の比較
Department of Veterinary Pathology
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病理組織所見の比較
Department of Veterinary Pathology
病理組織所見の比較
Department of Veterinary Pathology
病理組織所見の比較
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2014/12/15
病理組織所見の比較
Neurofilament免疫染色 (L4 level, nerve roots)
Dog 2
Dog 3
Control
sensory
motor
Dog 1
Department of Veterinary Pathology
病理組織所見の比較
Department of Veterinary Pathology
3症例の病理組織所見の主な相違
Dog 1(ボーダー・コリー)
Axonal Swelling & hypomyelination (後肢主体)
Dog 2(チワワ)
Fibrosis & Giant axon(前肢主体)
Dog 3(ビーグル)
Edema & Cholesterol deposition(四肢)
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2014/12/15
病理像のまとめ
●Dog1とDog2に関しては、遺伝性の末梢神経疾患である可能性が高い。
-ヒトCharcot-Marie-Tooth病ではこれまでに44種の遺伝子異常が発見され、
最近では原因遺伝子ごとに疾患分類。
⇒CMT病の分類を参考にすれば、イヌ遺伝性PNの原因遺伝子を特定可能?
Ex) ERB2, MPZ, PMP22など
●Dog3(ビーグル)→甲状腺機能低下症に関連した末梢神経疾患。
-水腫を特徴とする末梢神経病変は過去のヒト/イヌ/ラットでの報告と一致。
-コレステリンの沈着についての報告はない:脂質代謝の異常が原因?
●いずれの症例も末梢神経を主体として障害される ⇒ polyneuropathy
しかし、その病理学的特徴やその分布は三者三様。
⇒今後更に症例を蓄積し、それぞれの原因を特定していけば、
臨床現場で末梢神経障害を示す動物を診断する際、病変分布の違いや
末梢神経の病理像の特徴から原因をある程度推定できる?
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