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地方都市郊外におけるニュータウンのオールドタウン化問題――仙台都市
地域社会・地域問題(6) 地方都市郊外におけるニュータウンのオールドタウン化問題 仙台都市圏を事例に ○東北大学 大井慈郎 東北工業大学 木村雅史 東北大学 松原 久 1.目的・方法 本報告は、宮城県仙台市および宮城県黒川郡富谷町を事例に、「中心部」と「郊外」の関係性に ついての再検討から、地方都市郊外の諸問題を分析する際の論点を提示する。 昨今、三大都市圏と地方都市圏を問わず、郊外地域の高齢化やニュータウンのオールドタウン化 が指摘されている。三大都市圏と地方都市圏では、郊外地域におけるニュータウンの開発時期を初 めとした諸要因が異なることが先行研究で指摘されるが、高齢化・オールドタウン化は、日本の高 齢化率の上昇とも相まって進行している(東北産業活性化センター 2008)。こうした問題に対して、 地方都市の郊外住民に対するアンケート調査をはじめとした研究が、複数の地域で実施されている。 その結論はほぼ一様であり、地方都市郊外の特徴として、①公共交通機関の未整備、②第二世代の 転出、③家族・親族の近居傾向、などが指摘されている(長沼・荒井・江崎 2008; 中澤 2010)。 本研究の調査対象地、宮城県仙台市の郊外にある富谷町に関しても、小金澤孝昭・阿部美香子(2013: 36)が「第二世代の流出を抑えることと、新たな若い世代の流入を獲得することが、高齢化が深刻 化する郊外住宅地の維持にとって重要となっている」と指摘している。先行研究は、 「三大都市圏」 と「地方都市圏」という対比関係を用いて分析を行っている。だがしかし、「地方都市」特に「地 方都市郊外」に対する考察が十全ではなく、地方都市の「中心部」と「郊外」の関係性が十分に考 慮されていない。その結果、調査対象の都市が、あたかも都市機能的に完結し、独立しているかの ように描いている。 2.結果・結論 本調査地の富谷町を論じる際に「地方中枢都市・仙台市の都市圏」とするか、独立した「地方中 小都市」とするかで、議論する問題が異なる。結論から述べれば、富谷町は、仙台市中心部と切り 離すことができない「仙台市の都市圏」である。富谷町は、昼間人口差および産業構造といった側 面で仙台市に大きく依存している。加えて、富谷町民は、教育、医療、消費などといった目的で富 谷町と仙台市を行き来する。田原祐子・荒井良雄・川口太郎(1996: 98)が東京大都市圏の事例から 郊外高齢者による「必ずしも距離の近接性が最優先されるわけではなく、市内及び隣接市町村程度の広 がりの中で選択が行われている」ことを指摘するように、富谷町にも病院はあるが、定期的に仙台市 内の東北大学病院にも通院するのである。だが、三大都市圏に比べ、圏域が狭く、他に選択肢がな い地方都市圏の状況から、中心部への一極集中が生じ、依存度が高まるである。 以上のように、郊外地域の高齢化・ニュータウンのオールドタウン化をはじめとした地方都市郊 外の諸問題を分析する際、 「中心部」と「郊外」の関係性を組み込む必要がある。 本稿の一部は、2013 年度東北大学文学部社会調査実習の成果に基づいている。本社会調査実習では、 「子育て」 「高齢者」 「介護」という 3 つのテーマに基づき、計 50 名の富谷町民へ半構造化調査を実施 した。その結果から地域福祉の現状分析し、富谷町の持続可能性を検討した。 277