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ok0407:cgo【法務労務】グレーマッケット.doc

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ok0407:cgo【法務労務】グレーマッケット.doc
注:本レポートはジェトロが契約している現地弁護士、会計士等の専門家が作成したものであり、内容につ
いてのお問合せにはお答えできない場合があります。また、お答えできる場合でも内容によっては有料とさ
せていただく場合があります。
JETRO 法務情報 2004 年度 1 号
グレーマーケット時代 知的財産権をどう保護するか
1. はじめに: グローバリゼーション、テクノロジー、グレーマーケット製品の問題
テクノロジーの発展は、世界各国のつながりを深めたと同時に、商標、著作権、特許など、知的財産
権の侵害も増加させた。インターネットは、世界中で日々の欠かせないひとこまとして生活に溶け込
み、距離を隔てた者同士を瞬時に結びつけることが可能である。当初は躊躇する人の多かったオンラ
インショッピングも日増しに利用客を増やし、マウスをクリックするだけで、数日後には自転車や、
ネックレスやオーブントースターが届けられる。しかし、こうしたサービスの利用客のうち、これら
の商品が実際にどこから発送されているかに思いを馳せる者は少ない。現実として、今届いたトース
ターオーブンは、メーカー、又は諸規制の正式な承認を受けていない製品である可能性もある。
グレーマーケット
とは、正式な準拠すべき法規のない取引をいう。わかりやすくいえば、
ーマーケット製品(又は、
並行輸入
)
グレ
とは、日本国内消費者に向けて製造された正式商標付の
製品が、米国の商標権保有者、或いは同製品の製造メーカーの承諾を得ていない第三者によって、米
国に輸入されてしまったものを指す。例えば、米国のトラクターメーカーが日本向けに日本の仕様に
基づいて製造した製品が、並行輸入業者を通じて、商標権保有者の承認なしで、アメリカに輸入され
てしまう場合を考えていただきたい。その場合、アメリカの消費者は、製品についている商標が製造
メーカのものであれば、本来は日本仕様に製造されたものであり、米国仕様ではないということを、
知らずに購入する場合が少なくない。
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著作権、特許についてもグレーマーケットが存在するが、ここでは主に、商標に焦点をあてて、グレ
ーマーケット問題について考えたい。グレーマーケットが存在する大きな理由は、日本国内での販売、
マーケティング用として日本で売り出された製品と、米国向け製品の価格差にある。貨幣価値の違い
をはじめ、製品の品質、特徴、ワランティー、メーカーからのサービス内容など、全てがグレーマー
ケットでの利益の要素となるのである。さらに日本で販売され、中古品となった製品が米国に輸入さ
れる場合もある。
一般的に、グレーマーケットでの販売は、需要の高さから、有名商標の製品が選ばれる場合が多い。
輸入業者は、日本で米国より安い価格で購入して米国に輸入し、かなりのマージンを乗せて、しかし、
米国での小売価格より安く、これらの製品を販売する。中古品を一手に買い集めてアメリカに販売す
る場合の利益マージンは、かなり高いものになることは想像がつくであろう。これにより、輸入業者
は利益を収め、購入者はほしいものを安価に買えるため、満足するという構図になる。
2. 初回販売の原理
米国の知的財産権関係の法律では、「初回販売の原理」により、一般に製品の初回の販売がなされた
時点で、知的財産権の保有者は知的財産に関するコントロール権を失うとされる。その製品を買った
者と、それに続いて転売する者は、知的財産権の所有者の承諾をとらず、製品を使用することができ
る。平たく言えば、一旦ソニーのウォークマンの新品を買った消費者が、その後、それを友達に売ろ
うと、それはソニーにコントロールできるものではない。この法理は、知的財産権保有者の権利を守
ることも重要だが、その権利が、一般大衆への製品提供を制限するものであってはならないという概
念に基づくものである。知的財産権は、究極的には、利益を生み出すために与えられるもので、一定
期間の独占的権利を持つことは、その製品の創作に対して報酬を与えることを意味するものでなけれ
ばならず、市場競争にマイナス影響を与えるものであってはならないという考えが背後にあるからで
ある。
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しかし、この初回販売の原理は、グレーマーケットという別のレベルでの問題を生み出している。例
えば、ある有名な商標の所有者が米国で初めての販売を行った場合、それ以降、その商品に対するコ
ントロールはなくなってしまうのが現実である。グレーマーケットの支持者は、グレーマーケットの
輸入業者はこれらを買い入れ、米国に輸入する権利を有すると主張する。この論拠は、商標保有者が
初めての販売を行った時点で、その生産、初販が日本国内外かに関わり無く、知的財産権は、世界的
に、又は国際的に消滅するという考え方がある。これに反し、米国内で生産され、初販した場合には、
米国内の再販に限り、商標のコントロールは失われるが、海外へその製品が再販される場合は、商標
所有者のコントロールが、再び復活するという考え方がある。前者の見方では、グレーマーケット製
品によって消費者に格安商品が提供され、市場競争は高まると主張する。後者の考え方は、グレーマ
ーケット製品はアメリカ人の職を脅かし、長年、知的財産権保有者が築いてきた信用を利用し、不当
に利益を得るものであるため、消費者をだますものであるとして反対する。グレーマーケット製品を
消費者が受け取る場合、商標は正式なものだが、その製品は正規の意味で本物とはいえない。当然、
海外での販売用に作られた製品は、米国販売用の製品とは異なる。例えば、パッケージのような些細
なものかも知れないし、安全面で、たとえば地理的な環境が異なるゆえに、海外では必要とされてい
ない安全具が米国では必要とされているというような、実質的に重要な差を持つものであるかも知れ
ない。場合によっては、説明書が外国語であったり、外見、匂い、味等が、販売されるはずだった国
の嗜好に合わされていることもある。そのため、グレーマーケットの反対派は、外国向け製品の逆輸
入は、顧客に誤解や混乱を生じさせることになり、米国の商標保有者にとってマイナス影響となる、
と主張している。
3. K-Mart の決定
税関(U.S. Customs and Border Protection、米国関税国境警備局)は、知的財産権保有者に、グレーマー
ケット製品の輸入に対する保護措置を設けている。が、米国最高裁は、税関がグレーマーケット製品
を規制することについて、次に詳しく説明するランハム法との関連性を述べていない。K-Mart 対カル
ティエ事件(貴金属店のカルティエとは無関係)と呼ばれる事件は、グレーマーケットに関し、税関
3
を司る連邦規制法の見方と強制力について、最高裁が、これまでの矛盾点を解決した事件である。同
事件での裁定は、グレーマーケットに関する最も重要な裁定とされている。
K-Mart対カルティエ事件とは、米国のメーカー、販売店等による米国商標権保護連盟が、連邦裁判所
に提起した一連のグレーマーケット関連訴訟のひとつである。同連盟は、1930 年の関税法、及びラン
ハム法により、グレーマーケット製品に対する税関での入国取締りを求めて、米国政府、財務長官、
米国税関局長を訴えたが、米国内での転売製品販売に携わっている大型量販店のK-Martと、ニューヨ
ークのカメラ小売店、47th Street Photoもこれに被告として加わった。同連盟に関係した訴訟の 1 つであ
るK-Mart対カルティエの訴訟事件で、米国最高裁判所の述べたコメント内容が、その後、グレーマー
ケット製品の輸入に関する基準となっている。
最高裁は、K-Mart 事件において、グレーマーケット製品の例として 3 通りの状況を区別している。
まず、ケース 1 は、米国内の業者が、自国での商標権を持つ外国の商標権所有者から商標権を買い、
商標製品の外国向け製品を米国内で売るものである。この外国業者によって、商標製品が米国に輸入
され、又は、外国内で、米国に輸出する第三者の業者に販売することもある。裁判所は、これらの製
品の米国市場への入国は、違法であるとした。
ケース 2 は、米国内の会社が商標権を持ち、その製品が外国で製造され、この二者が、親子会社、系
列会社等、同じ利害関係にある場合である。この場合、米国の商標と同一商標を持つ製品が輸入され
ることになる。裁判所は、この輸入については是認した。この形式の輸入は、
例外
同社的な取引のため
とされる。
ケース 3 は、米国の商標権保有者が、外国の独立メーカー対して、特定の工場で商標権の使用を認め、
そのメーカー、又は第三者によって、これらの製品が米国に輸入されるものである。裁判所は、この
ケースに対して、外国の業者は、米国の商標権保有者の承認がある場合に限り、米国内へ商品を輸入
できるとした。
4
上記の通り、K-Mart の訴訟事件は、グレーマーケット製品は、基本的にアメリカには輸入できないと
した裁定となっている。
4. 救済
A. 法的救済
米国の商標権保有者はランハム法、1930 年の関税法によって、グレーマーケット製品の輸入を防
止、又は禁止することができる。ランハム法 42 条(15 U.S.C. §1124)は、商標権、名称権を侵す
製品の輸入を、以下の通り禁止している。
「1930 年の関税法 526(d)条の場合を除き、国内メーカー、商社、又は、条約、協定、
法規によって、米国民に適用されるのと同様の権利を認められた外国のメーカー、商社
の名称、又は、本法に従って登録された商標を複製、模倣したり、一般に対して、これ
らがあたかも米国製であると思わせたり、或いは、製造国以外の国で製造されたと思わ
せたりしている輸入品は、いかなる米国税関でも入国を許可しない」
ここでの争点は、グレーマーケットの製品は、ランハム法によって
知的財産権侵害
とみなされ、
それにより、知的財産保有者が法的措置を取ることが出来るか、という点である。ランハム法上で
侵害を成立させるには、製品、サービスの販売、配布、宣伝により、製品の出自に関して、一般消
費者を混乱させたり、誤解させたり、欺いたりするものでなければならない。
グレーマーケット反対派は、製品の出自について大きな混乱が生じるので、知的財産保有者に対し
て権利の侵害であるとする。例えば、ウェブサイトから商品を購入した一般消費者は、普通、これ
がグレーマーケットの製品だとは思わない。外国向け製品であるために、アメリカの消費者が予想
していたものと違っていた場合、消費者は、その製品が外国に向けて作られたものとは思わず、そ
の違いが、米国の知的財産権保有者によって作り出されたものである、とみなすことになる。そし
て、その違い故に、消費者が購入した製品に不満を持った場合、たとえ原因は、その製品が本来外
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国向けに製造されたからであるとしても、結果として、商標権の価値を落とし、従って、米国商標
権の意義に悖るものとなる。
米国最高裁はこの問題に関して裁定を下していないが、その他の裁判所では、グレーマーケット製
品は、ランハム法 42 条による知的財産権侵害とならないとした例もある。例えば、Olympus Corp.
対 United States 事件では、米国第二巡回控訴裁判所が、「同法の条文をそのまま解釈すると、同法
で禁じているのは
複製、又は模造品
りグレーマーケット製品は
模造品
であり、本物の輸入を禁じてはいない」としている。つま
ではなく、米国消費者向けではなく、たとえば日本向けに作
った製品であるという違いはあるものの、
本物
には変わりないので、ランハム法の抵触にはな
らない、とした意見である。
ランハム法 42 条は、米国法に基いて知的財産権を保護される国内、国外のメーカー、商社は、税
関に登録することにより、税関で侵害製品の輸入を取締ることができるとしている。
さらに米国のメーカー、商社、及び、米国と条約、協定等によって同様の知的財産権保護を認
められている国のメーカー、商社は、知的財産権保護の目的で、名称、住所、製品の原産国、
商標登録書のコピーを税関に登録しておけば、それを侵害するような製品の輸入を取締ること
ができる。
1930 年の関税法 526 条(19 U.S.C. §1526)では、同条(d)項の場合を除き、米国居住者によって米
国特許商標庁(U.S. Patent and Trademark Office)に登録された商標のある製品を
する製品
と定義して、外国で製造された
米国商標を表示する製品
米国商標を表示
の輸入を禁じており、また、
税関に登録している場合は、米国入国の時点で、商標権保有者の承認書がない限り、外国で製造さ
れた製品を米国に輸入することは違法であるとしている。(同条(d)項でいう例外とは、個人的
な使用目的であり、販売目的でない場合、特定の種別、数量の輸入には、上記の規定が適用されな
い、というもの。)
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B.
税関での商標登録
商標、トレードネーム、著作権を米国税関に登録することは、あらゆる点で、これらの知的財産権
保有者にとって有意義である。一度登録をすれば、登録は全米全ての税関で登録を確認でき、知的
財産権保有者の更なる要請がなくとも、税関によって取締ることができる。この方式のよいところ
は、一度登録すれば、特定の輸送物に対する警告を税関にいちいち発しなくてもよいところである。
その一方、特定の輸送物に対する取締り要請も可能である。税関に登録をした全ての知的財産権保
有者は、税関で侵害を防止するという救済が得られる。税関は、侵害製品、模造品に対して、(1)
模造品の差し押さえ、(2) 商標侵害製品の国外撤去、又は、金銭的、或いはその他の援助、指示を
した者に、民法上の罰金を課す、(3) 登録商標に酷似した商標を持つ製品の没収、を行う権利を持
つ。
税関のこれらの取締りに対して輸入業者に出来ることは、商標保有者からの輸入が許可されたこと
の証明、これまでに問題になっていないことの証明を提示するか、それができなければ、製品の差
し押さえとなり、これを返却してもらうためには、侵害している商標を除去、たとえばトレードマ
ークを消したり、製造者名がわからないようにする手段しかない。
商標の税関への登録申請は、Intellectual Property Rights Branch, U.S. Customs Service, 1300
Pennsylvania Avenue, NW., Washington, DC 20229 に書面で届け出る。申請には、申請者のタイトル
を表示した登録証、登録のコピー5 部、商標登録 1 件につき$190(又は、登録が複数のクラスにな
る場合、1 クラスにつき$190)を添える。また、申請書には、(a) 名称、会社住所、商標権保有者の
国籍(保有者が複数の場合、全員について記載。事業体の場合は、設立国、州など、法的管轄権の
ある自治体)、(b) 登録商標を表示した製品の製造場所、(c) 商標使用を許可している外国人、外国
企業の名称と住所、(d) 同じ利害関係にある外国の親子、兄弟会社等のリスト。
グレーマーケット製品からの保護を享受する場合、税関への商標登録の一部として、米国向け製品
と海外向け製品に、材料や実質的な違いを設けている製品の場合、それらの違いを明記して登録す
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ることが出来る。税関は、グレーマーケットに対する保護を実施するか否かを決定する前に、これ
らの要請を調査する。この保護方式は、ワシントン D.C.巡回控訴裁判所の Level Brothers 対 United
States 事件を基にしており、 Level ルール保護
と呼ばれる。これは、米国の洗剤メーカーLevel
Brother Company が、在イギリスの関連会社の製品が米国に輸入された際に、米国税関が輸入禁止
を怠ったとして訴えたもの。裁判所は、これらの製品の違いを「それぞれの嗜好、状況に合わせた
もの。米国向けは泡立ちが高く、匂いも異なり、また、着色料も、米国向けは FDA(U.S. Food and
Drug Administration、米国食品薬品局)の認可を得ているが、英国向け洗剤では得ておらず、米国
向け洗剤には、消臭目的で細菌発育抑制剤を用いている。英国向け製品の台所用洗剤は、泡立ちが
低く、また、米国向けは、殆どの米国の都市がそうであるため、
は、英国で一般的な
硬水
軟水
用であるが、英国向けで
用に作られている」と説明している。
Lever Brother Company は、当該輸入が消費者を混乱させるものと主張した。証拠として、同社の米
国向け格安製品と見込んで当該輸入品を購入し、その製品効果に落胆したというアメリカの消費者
からの手紙を提示した。これに対し、米国税関は、当該製品は、米国の商標権保有者と同じ利害関
係にある海外の関係会社によって作られたものであるため、米英の製品が同一のものでなくとも当
該輸入品は「本物」であるため、輸入禁止取締りの対象にはならないと主張した。税関の論旨は、
関連会社によって製造されたものは、ランハム法 42 条に禁じられる「複製、模造」ではないため、
「本物」であるというものである。裁判所はこの税関の主張を退け、「本質として異なる製品は、
同じ商標であっても、アメリカの消費者の観点から見て、本物ではない」とした。また、ランハム
法 42 条は、「米国の正式な商標を持つが、本質として違うものである場合、その製品が米国外の
本国で本物であっても、また、生産者が米国知的財産権保有者と同じ利害関係にあっても、その輸
入を禁じる」としていることをその根拠とした。(税関による商標登録の詳細については、19 CFR
133.2、及び、133.3 参照)
5. まとめ
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グレーマーケットは複雑な問題である。製品の多国籍化を促進し、市場を活性化するものであるとし
て、グレーマーケットを奨励する考えもあれば、消費者に混乱を引き起こすため、商標権保有者にと
って有害であるとする考え方もある。グレーマーケットを通じた違法輸入による侵害から、保護を要
する知的財産権保有者は、商標を米国特許商標庁に登録し、上記した通り、税関に商標を登録するこ
とが必須である。
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Summary
テクノロジーの発展と、グローバリゼーションに伴い、米国の知的財産権保有者は、グレーマーケッ
ト製品の輸入により、権利侵害にさらされている。グレーマーケット製品とは、正規の法律が存在し
ていないために、諸法のあらゆる解釈によって、違法でもあり合法でもあるという、曖昧な輸入製品
をさし、特に顕著なのが、いわゆる知名度の高い商標製品に関するものである。例えば、外国の消費
者向けに外国で発売した洗剤が米国に転売されたり、日本製の中古作業用車両が、米国に転売された
りする、などが挙げられる。物価の差によって、輸出入業者が利益を得る仕組みだが、知的財産権保
有者の権利を脅かすものとして、懸念されている。
しかし、グレーマーケット製品については、知的財産権を侵すものであるという意見の一方で、本物
の廉価版の提供によって消費者は満足し、市場が活性化されるため、自由競争の原理に沿ったもので
あるという意見も多い。裁判所の見解はケース・バイ・ケースで、グレーマーケットを明快に取締る
法律は、存在していないのが現状である。
そこで、米国の知的財産保有者は、自衛策として、税関によって侵害製品の輸入を阻止することがで
きる。特許商標庁への登録と、税関への届出により、税関がそのネットワークを用いて、登録された
商標製品が許可なく米国へ入国することを禁止するメカニズムである。これにより、知的財産権侵害
製品は税関から内へは入れず、米国での正規の知的財産権保有者の権利が保護されることになる。
米国で、グレーマーケット製品の知的財産権侵害に保護を望む場合、特許商標庁への登録と税関への
届出は必須と言える。
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